クリプトスポリジウム症・ジアルジア
症等の原虫性下痢症
ii
目
次
Ⅰ 検 査 法 の 概 要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 診 断 手 順 一 覧 Ⅱ 形 態 学 的 診 断 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 顕 微 鏡 の 取 り 扱 い 《 ク リ プ ト ス ポ リ ジ ウ ム 症 の 診 断 》 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ 10 1. 検 査 材 料 の 採 取 2. 濃 縮 ・ 精 製 3. 観 察 《 ジ ア ル ジ ア 症 の 診 断 》 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 1. シ ス ト の 検 査 法 2. 栄 養 型 虫 体 の 検 査 法 《 サ イ ク ロ ス ポ ラ 症 、 お よ び イ ソ ス ポ ラ 症 の 診 断 》 ・・・・・・・・・・・・ 25 1. 検 査 の 概 要 と 臨 床 材 料 2. オ ー シ ス ト の 検 査 法 Ⅲ 遺 伝 子 検 査 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 1. 原 虫 検 査 に お け る 遺 伝 子 検 査 法 ポ イ ン ト 2. 主 な 試 薬 と 実 験 器 具 3. DNA の 抽 出 と 精 製 4. 制 限 酵 素 処 理 と 電 気 泳 動 5. 塩 基 配 列 決 定 《 ク リ プ ト ス ポ リ ジ ウ ム の PCR》 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 1. 各 種 プ ラ イ マ ー に よ る PCR 2. 単 個 の オ ー シ ス ト を 用 い た PCR 《 ジ ア ル ジ ア の 遺 伝 子 型 別 を 目 的 と し た PCR》 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 《 サ イ ク ロ ス ポ ラ の 検 出 ・ 同 定 を 目 的 と し た PCR》 ・・・・・・・・・・・・ 54 Ⅳ 免 疫 学 的 検 査 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 引 用 文 献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56 参 考 資 料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 591
Ⅰ 検 査 法 の 概 要
はじめに 原 虫 類 の 寄 生 に 起 因 する主 要 な消 化 器 疾 患 としてク リプトスポリジウム症 、ジ アルジア症 、赤 痢 アメ ーバ症 、サイクロスポラ症 およびイソスポラ 症 等 々が知 られ ている。これらのうち、前 3 疾 患 は平 成 11 年 4 月 1 日 に施 行 (平 成 15 年 10 月 16 日 一 部 改 正 、平 成 15 年 11 月 5 日 施 行 )された感 染 症 法 (感 染 症 の予 防 及 び感 染 症 の患 者 に対 する医 療 に関 する法 律 )において、 5 類 感 染 症 の全 数 把 握 疾 患 として病 原 体 サーベイランスの対 象 疾 患 に位 置 付 けられている。 病 原 体 としてのクリプトスポリジウム属 パルバム(遺 伝 子 型 が Ⅰ型 、Ⅱ型 のもの)は、感 染 症 法 に基 づく四 種 病 原 体 として適 正 な管 理 が求 められている(平 成 18 年 12 月 8 日 一 部 改 正 、平 成 19 年 6 月 1 日 施 行 )。クリプトスポリジウム等 は強 い塩 素 耐 性 を 有 し 水 系 感 染 が 問 題 となることか ら 、水 道 におけるク リ プ トスポリ ジウム等 検 査 法 が整 備 されている(健 水 発 第 0330006 号 、平 成 19 年 3 月 30 日 、厚 生 労 働 省 健 康 局 水 道 課 長 通 知 )。 糞 口 感 染 することか ら 性 的 接 触 や食 品 を 介 し た感 染 経 路 もあり、食 中 毒 事 件 票 における食 中 毒 病 因 物 質 の分 類 『その他 』の 欄 には「クリプトスポリジウム、サイクロスポラ、アニサキス等 」と例 示 されている (平 成 11 年 12 月 28 日 付 衛 食 第 166 号 、衛 乳 第 248 号 、衛 化 第 66 号 、厚 生 省 生 活 衛 生 局 食 品 保 健 課 長 、乳 肉 衛 生 課 長 、食 品 化 学 課 長 通 知)。 しかし、統 計 上 はクリプトスポリジウム等 原 虫 症 の国 内 の報 告 は工 業 先 進 国 を 含 む海 外 諸 国 での報 告 に比 べて桁 違 いに少 なく、検 査 診 断 の 重 要 性 が指 摘 さ れる 1)。 原 虫 性 下 痢 症 の 診 断 に あた っ ては 、 感 染 症 法 の 施 行 当 初 よ り顕 微 鏡 に よ る 検 便 検 査 、す なわ ち 形 態 学 的 な検 査 が 第 1 選 択 であっ た 。 抗 原 検 出 と 遺 伝 子 検 出 は有 用 性 が報 告 されており、平 成 23 年 4 月 1 日 に届 出 基 準 に加 えられた (平 成 23 年 3 月 4 日 付 け健 感 発 0304 第 1 号 厚 生 労 働 省 健 康 局 結 核 感 染 症 課 長 通 知 )。報 告 数 の少 ない、しかし実 際 の患 者 数 が多 いと 想 定 される原 虫 性 下 痢 症 の 検 査 診 断 の 機 会 を 増 やすに は 、複 数 の検 査 法 が整 備 さ れて いる こ と が 有 用 と考 え ら れ 、 ま た 適 切 な 検 査 診 断 が 行 われれば 、顕 微 鏡 検 査 法 に 限 定 する理 由 はない。一 方 、事 前 に試 薬 の備 蓄 や使 用 期 間 の制 限 からコストの上 昇2 を招 いたり、難 しい糞 便 由 来 の PCR に偽 陰 性 の恐 れがあったり、特 定 の原 虫 に 特 化 した検 査 では他 の寄 生 虫 卵 が検 出 できなかったり等 々の理 由 から、当 面 は 顕 微 鏡 検 査 が 主 に 使 用 され 、顕 微 鏡 検 査 の 重 要 性 は現 在 も 大 きく変 化 し てい な い と 考 え ら れ る 。 本 マニ ュ ア ルで は 、 顕 微 鏡 検 査 を 中 心 に 説 明 し 、 製 品 取 扱 説 明 書 や論 文 に詳 細 が記 述 されているその他 の検 査 法 については参 考 に留 め た。 顕 微 鏡 検 査 は 、多 分 に 経 験 や 習 熟 度 が 問 題 と なる 領 域 とい え る。と ころが わ が国 では 原 虫 性 下 痢 症 は比 較 的 稀 な疾 患 で、経 験 を積 むことが 難 し い分 野 で ある。本 マニュアルの作 成 にあたっては この点 を最 大 限 に考 慮 し 、初 心 者 であっ ても本 マニュアルを参 照 しながら 実 務 が こなせるよう心 がけた 。なお、赤 痢 アメ ー バ症 の診 断 法 については別 のマニュアルにまとめられている。 原 虫 感 染 に起 因 す る 下 痢 症 ( 赤 痢 アメ ー バ 症 を 除 く) は 、 いず れも さま ざま な 程 度 の非 血 性 水 様 下 痢 を主 症 状 としており、臨 床 所 見 からの区 別 は困 難 である。 以 下 のケースでは原 虫 性 下 痢 症 を検 討 対 象 とすべきである。 1. 原 因 細 菌 やウイルスなどが検 出 されない下 痢 症 の場 合 2. 下 痢 症 、特 に海 外 旅 行 者 の下 痢 症 で、既 知 の腸 管 病 原 体 を検 出 した症 例 にあってなお説 明 のできない腹 部 症 状 を持 続 する場 合 3. 集 団 下 痢 症 にあって通 常 の病 原 体 が検 出 されない場 合 4. 免 疫 不 全 宿 主 にあって長 期 間 持 続 する原 因 不 明 の下 痢 症 の場 合 検査の進め方 顕 微 鏡 検 査 によ る原 虫 検 査 の基 本 は 、主 に患 者 便 を検 査 試 料 とし 、試 料 中 に原 虫 (オーシスト、シスト、場 合 によって栄 養 型 虫 体 )を 顕 微 鏡 下 で検 出 するこ とによる。検 査 手 技 としては 、検 査 試 料 をそのまま試 料 とする直 接 塗 抹 法 と 、(オ ー)シストを濃 縮 ・精 製 することで検 出 感 度 を高 める集 嚢 子 法 とに分 けられる。ま た、得 られた試 料 を無 染 色 のままで観 察 する方 法 (直 接 観 察 法 )と 、染 色 法 (蛍 光 抗 体 法 等 )とにも 分 けることができる。これらの組 み合 わせのうちで最 も簡 便 な 方 法 は直 接 薄 層 塗 抹 法 +蛍 光 抗 体 染 色 法 で、この方 法 は 少 量 の糞 便 材 料 を 直 接 スライ ド グラスに 取 っ て生 理 食 塩 水 など等 張 液 で希 釈 し 、蛍 光 抗 体 試 薬 と 混 合 し て蛍 光 顕 微 鏡 観 察 するもの であ る。蛍 光 抗 体 で染 色 され る(オー)シスト
3 以 外 に 、 自 家 蛍 光 を 発 す る 虫 卵 の 検 出 、 微 分 干 渉 顕 微 鏡 下 では 運 動 性 を 有 す る栄 養 型 虫 体 の 検 出 に も 有 効 で あ る 。し か し な がら 、 この 方 法 では 微 量 の 検 査 試 料 しか扱 えないことや、食 物 残 渣 など夾 雑 物 が多 量 に含 まれ る標 本 から極 めて小 さな(オー)シストを検 出 しなくてはならず、(オー)シストの特 徴 的 な内 部 構 造 を観 察 するのが困 難 となり、充 分 な検 査 精 度 が保 証 されない難 点 がある。した がって、原 虫 性 下 痢 症 の 確 定 診 断 にあた っては集 嚢 子 法 の 併 用 が必 須 と考 え る。 集 嚢 子 法 には遠 心 沈 殿 法 、浮 遊 法 、免 疫 磁 気 ビーズ法 等 があるが、本 マニュ アルでは 遠 心 沈 殿 法 を一 義 的 に選 択 するよう推 奨 している。その理 由 は、遠 心 沈 殿 法 では 検 査 試 料 の 調 製 段 階 でホル マリ ン水 を 用 いた 希 釈 ・ 固 定 が行 わ れ ることから、検 査 担 当 者 への感 染 事 故 が回 避 できる利 点 があるからである。そ の 他 、糞 便 中 の未 消 化 の 脂 肪 分 が 除 去 され ることに よ り観 察 が容 易 となる利 点 も ある。 分 子 疫 学 的 な解 析 のための PCR の試 料 調 製 など高 度 な精 製 が必 要 な際 に は、浮 遊 法 、免 疫 磁 気 ビーズ法 が有 用 である 。ちなみに、現 時 点 における PCR 等 の遺 伝 子 検 査 法 は、顕 微 鏡 法 検 査 による診 断 の後 に、感 染 経 路 の特 定 等 の 分 子 疫 学 的 解 析 に用 いられている。 便 中 の病 原 体 抗 原 検 出 では、 主 に患 者 便 を検 査 試 料 とし、原 虫 由 来 の抗 原 を ELISA 法 、イムノクロマト法 により検 出 する。 ところで、原 虫 性 下 痢 症 の検 査 方 法 は 原 虫 種 の如 何 を 問 わず基 本 的 に同 じ 方 法 が 適 用 さ れ る。 し た が っ て 、 本 マニ ュ アルで は ク リ プ ト スポ リ ジウ ムの 検 出 方 法 を中 心 に説 明 し、ジアルジア他 の原 虫 の検 査 に関 しては特 筆 すべき点 につい て虫 種 別 に項 を立 てて説 明 した。また、各 検 査 機 関 にあっては顕 微 鏡 の整 備 状 況 に 格 差 が あ るも の と 推 測 さ れ る 。 そ こ で 、 別 表 に 顕 微 鏡 の 整 備 状 況 に 応 じ て 選 択 すべき基 本 的 な検 査 法 をまとめておいた。なお、これら原 虫 類 の(オー)シス トは糞 便 中 に常 に排 出 されるとは限 らないことから、可 能 ならば日 を置 いて 3 回 程 度 の繰 り 返 し 検 査 が推 奨 さ れ る 。また 、 検 査 の実 施 に 制 限 が ある 機 関 では 、 確 定 診 断 に際 して国 立 感 染 症 研 究 所 はじめ他 の関 係 機 関 の協 力 を要 請 するこ とも選 択 肢 の1つと考 えられよう。
4 〔 別 表 〕
原 虫 性 下 痢 症 の 診 断 手 順
注1 クリプトスポリジウムおよびジアルジアの同 時 染 色 用 蛍 光 抗 体 試 薬 が市 販 さ れている。FITC の特 異 蛍 光 は B 励 起 下 で観 察 。 注2 サイクロスポラおよびイソスポラに対 する蛍 光 抗 体 試 薬 は開 発 されていない が 、 両 原 虫 の オ ー シ スト 壁 は 自 家 蛍 光 を 有 する の で 蛍 光 顕 微 鏡 下 で ス ク リ ーニングすることができる。自 家 蛍 光 は UV 励 起 下 で観 察 。 顕 微 鏡 の 整 備 状 況 基 本 的 手 順 手 順 の 概 説 蛍 光 装 置 + 微 分 干 渉 装 置 + 生 物 顕 微 鏡 遠 心 沈 殿 法 + 蛍 光 抗 体 染 色 ( 湿 式 ) 1. 遠 心 沈 殿 法 で 精 製 濃 縮 2. 蛍 光 抗 体 法 ( 湿 式 ) で 染 色注 1 3. 蛍 光 顕 微 鏡 下 で ス ク リ ー ニ ン グ注 2 4. 微 分 干 渉 顕 微 鏡 で 確 認 蛍 光 装 置 + 生 物 顕 微 鏡 遠 心 沈 殿 法 + 蛍 光 抗 体 染 色 + 抗 酸 染 色/ヨ ー ド 染 色 1. 遠 心 沈 殿 法 で 精 製 濃 縮 2. 蛍 光 抗 体 法 ( 湿 式 ) で 染 色注 1 3. 蛍 光 顕 微 鏡 下 で ス ク リ ー ニ ン グ注 2 4. 別 途 作 製 の 抗 酸 染 色 / ヨ ー ド 染 色 標 本 で 確 認 微 分 干 渉 装 置 + 生 物 顕 微 鏡 遠 心 沈 殿 法 + ネ ガ テ ィ ブ 染 色 + 抗 酸 染 色/ヨ ー ド 染 色 1. 遠 心 沈 殿 法 で 精 製 濃 縮 2. ネ ガ テ ィ ブ 染 色 標 本 で ス ク リ ー ニ ン グ 3. 微 分 干 渉 顕 微 鏡 で 確 認 4. 別 途 作 製 の 抗 酸 染 色 / ヨ ー ド 染 色 標 本 で 確 認 生 物 顕 微 鏡 遠 心 沈 殿 法 + ネ ガ テ ィ ブ 染 色 + 抗 酸 染 色/ヨ ー ド 染 色 1. 遠 心 沈 殿 法 で 精 製 濃 縮 2. ネ ガ テ ィ ブ 染 色 標 本 で ス ク リ ー ニ ン グ 3. 別 途 作 製 の 抗 酸 染 色 / ヨ ー ド 染 色 標 本 で 確 認5
Ⅱ 形 態 学 的 診 断 法
顕 微 鏡 の取 り扱 い
顕 微 鏡 に よる検 査 は 経 験 ・習 熟 を 必 要 とする かもし れ ないが、検 鏡 時 間 は 一 般 的 な 遺 伝 子 増 幅 時 間 に比 べて短 く、今 もなお 迅 速 な検 査 法 で あ る。 本 試 験 方 法 で 用 いる 顕 微 鏡 には、蛍 光 装 置 、微 分 干 渉 装 置 、20、40、100 倍 の対 物 レンズがあることが望 ま し い。このほか、粒 子 サイ ズ測 定 のため に、接 眼 ・対 物 スケールあるいは 測 定 機 能 付 き の顕 微 鏡 カメラ等 を付 属 させる。良 好 な像 を得 るには 装 置 のおよそ全 てを操 作 すること が必 要 である。指 で回 せるところは調 整 が必 要 な場 所 、六 角 レンチを使 うネジは観 察 で は調 整 しない場 所 と区 分 すると理 解 しやすい。 10 倍 の対 物 レンズなら、対 物 レンズとプレパラートはぶつからずにフォーカス合 わせを 行 うことができる。一 旦 フォーカスが合 えば、他 の倍 率 に変 更 してもフォーカスは微 調 整 で済 む。対 物 レンズの 60 から 100 倍 、時 に 40 倍 が油 浸 オイルを使 用 する油 浸 レンズ で、対 物 レンズにOIL の刻 印 があれば油 浸 レンズと見 分 けることができる。油 浸 レンズで は光 学 解 像 度 が格 段 に高 くなり、細 部 を 観 察 で きる。油 浸 オイ ルを 一 度 使 用 すると試 料 から取 り除 けないので、油 浸 オイルに代 わ ってアニソールを使 用 することがある。アニ ソールは容 易 に試 料 からふき取 ることがで きる。油 浸 オイ ル等 の使 用 後 は、レ ンズペー パーでレンズからオイルを拭 きとる。レンズペーパー以 外 の紙 は、細 かな石 が入 っていて レンズ等 を傷 つけるので使 用 しない。エタノールは接 着 剤 を溶 かしてレンズ等 を壊 す恐 れがあることから使 用 せず、所 定 のレンズクリーナーを使 用 する。 陥 りや すい誤 りの 一 つ は、 光 量 を 開 口 絞 りで 調 整 する ことで 、 本 来 、 光 量 は光 源 電 圧 とその直 後 の減 光 フィルターで調 整 する。開 口 絞 りは、コントラスト、解 像 度 、焦 点 深 度 の調 整 に使 用 する。 開 口 絞 りを 絞 るとコントラストは増 すが、 解 像 度 が低 下 し て像 は 汚 くなる。より詳 細 に言 え ば、焦 点 深 度 が深 くなり、見 え る範 囲 が深 く厚 くなるから物 が 折 り重 なって見 えづらくなる。従 って、観 察 ・写 真 撮 影 にはなるべく開 口 絞 りを 開 け、絞 るのはわずかに留 める。 試 料 を観 察 する際 、フ ォーカスを合 わせた後 に、試 料 に光 を当 てるコンデンサーレン ズの高 さと中 心 位 置 を 調 整 し、より高 い解 像 度 が得 られ るようにする。 明 視 野 観 察 、微 分 干 渉 観 察 に 必 要 で 、 蛍 光 観 察 に は 関 係 し な い 。 こ の 調 整 方 法 は 発 明 者 ( ア ウ グ ス6 ト・ケーラー1866~1948)の名 前 からケーラー照 明 と呼 ばれている。 <ケーラー照 明 法> (1) 顕 微 鏡 に染 色 標 本 をのせて焦 点 を合 わせる。 (2) 視 野 絞 りを絞 り、視 野 に絞 りの影 を確 認 する。その際 、開 口 絞 りを適 度 に絞 ると、 視 野 絞 りの影 が見 やすくなる。 (3) コンデンサーを 上 下 して、視 野 絞 りの影 が最 も シャープに見 え る位 置 に合 わせ る。 (4) 視 野 絞 りの開 口 部 を視 野 の中 心 に位 置 させる(センタリング)。 (5) 視 野 絞 りを開 ける。その際 、開 口 率 を 80%程 度 に設 定 すると対 物 レンズのもつ 解 像 力 がほぼ完 全 に引 き出 される。 (6) 対 物 レンズをかえた場 合 には視 野 絞 りを絞 って、絞 りの影 が明 瞭 に見 えることを 確 認 する。 ① 蛍 光 顕 微 鏡 装 置 落 射 型 と透 過 型 の 2 種 類 があり、現 行 の顕 微 鏡 の多 くは落 射 型 である。落 射 型 は不 透 明 な支 持 体 上 の標 本 でも観 察 が可 能 である。個 々の蛍 光 色 素 は、特 有 の励 起 波 長 の照 射 により、励 起 光 より長 波 長 の蛍 光 を発 する。したがって、染 色 に用 いた蛍 光 色 素 にあわせて、励 起 波 長 と観 察 波 長 が選 択 される。 ② 微 分 干 渉 装 置
微 分 干 渉 装 置 はポラライザー(偏 光 板 )、DIC 用 コンデンサー、DIC プリズム、DIC 用 対 物 レ ンズ、 ア ナ ライ ザ ー (偏 光 板 )か らなり、そ れ らが生 物 顕 微 鏡 に 組 み込 まれ る。光 源 として偏 光 が用 いられ、光 線 が標 本 を通 過 する際 に標 本 中 の光 学 的 厚 さの差 によっ て生 じる光 路 差 (二 次 光 線 の位 相 の差 )をコントラストの差 (あるいは色 の差 )に変 換 する 装 置 で、像 としては物 の左 上 が明 るく右 下 に影 がある、といった見 え 方 をする。 プリズム の調 整 で影 の強 弱 や色 調 を調 整 したり、影 の方 向 を逆 にして左 上 に影 があって右 下 が 明 るい状 態 に変 化 させ たりすることができる。装 置 の組 み合 わせが決 まっており、そのと おりに使 用 しないと微 分 の効 果 が得 られず、単 なる明 視 野 観 察 になってしまう。
7 <FITC 蛍 光 染 色 試 料 における顕 微 鏡 の使 い方 の例 > 1. 10 倍 対 物 レ ン ズ で フ ォ ー カ ス を 合 わ せ る (1) 高 圧 水 銀 ラ ン プ と 本 体 ( ハ ロ ゲ ン ラ ン プ ) の 電 源 を 入 れ 点 灯 を 確 認 、 蛍 光 シ ャ ッ タ ー が 閉 じ て い る こ と を 確 認 (2) ス ラ イ ド を ス テ ー ジ に 乗 せ る (3) ハ ロ ゲ ン ラ ン プ の 明 る さ を 調 整 し 、 明 視 野 、 あ る い は 微 分 干 渉 観 察 を 行 う (4) フ ォ ー カ ス を あ わ せ る ( 泡 、 大 き な 粒 子 、 カ バ ー ガ ラ ス の ふ ち で あ わ せ や す い ) (5) 接 眼 レ ン ズ の 目 の 幅 、 視 度 、 椅 子 の 高 さ を 調 整 2. 20 倍 対 物 レ ン ズ で ス ラ イ ド を 精 査 す る (1) 対 物 レ ン ズ を 20 倍 に 切 り 替 え 、 フ ォ ー カ ス を 確 認 す る (2) 蛍 光 観 察 B 励 起 に 切 り 替 え る ① ハ ロ ゲ ン ラ ン プ を 消 す ② 微 分 干 渉 の フ ィ ル タ ー 、 偏 光 板 と DIC プ リ ズ ム を 外 す ③ 蛍 光 フ ィ ル タ ー を B 励 起 フ ィ ル タ ー に 切 り 替 え ④ 蛍 光 シ ャ ッ タ ー を 開 け る (3) ス ラ イ ド を 精 査 し 、ア ッ プ ル グ リ ー ン に 光 る 5μm( ク リ プ ト ス ポ リ ジ ウ ム ) な い し 10μm( ジ ア ル ジ ア ) の 粒 子 を 探 す ① 微 動 ハ ン ド ル を 動 か し て フ ォ ー カ ス 面 上 下 方 向 に も 注 意 を 払 う ② G 励 起 で 粒 子 が 赤 色 に 光 ら な い 、 植 物 で は な い こ と を 確 認 す る ③ DAPI 染 色 し て い れ ば U 励 起 で フ ォ ー カ ス を 移 動 し な が ら 核 を 観 察 ④ ( サ イ ク ロ ス ポ ラ 、 イ ソ ス ポ ラ 、 そ の 他 の 虫 卵 は U 励 起 で 精 査 し 、 赤 痢 ア メ ー バ 栄 養 体 と シ ス ト 並 び に ジ ア ル ジ ア 栄 養 体 は 微 分 干 渉 像 を 精 査 す る ) 3. 40 倍 対 物 レ ン ズ を 使 用 し て 、 微 分 干 渉 で 内 部 構 造 を 観 察 す る (1) 蛍 光 シ ャ ッ タ ー を 閉 じ 、 B 励 起 蛍 光 フ ィ ル タ ー を 外 す (2) 微 分 干 渉 の フ ィ ル タ ー 、 偏 光 板 と DIC プ リ ズ ム を 入 れ る (3) 対 物 レ ン ズ を 40 倍 に 切 り 替 え 、 対 応 す る コ ン デ ン サ ー に 切 り 替 え る (4) ハ ロ ゲ ン ラ ン プ の ス イ ッ チ を 入 れ 、 光 量 を 調 整 、 フ ォ ー カ ス 確 認 (5) コ ン デ ン サ ー の 高 さ を 調 整 す る ( ケ ー ラ ー 照 明 ) ① 視 野 制 限 絞 り を 絞 る ② 視 野 に 見 え る 絞 り の ふ ち を 見 て( 見 に く い 場 合 は 開 口 絞 り を 少 し 絞 り )、 は っ き り 見 え る 位 置 に コ ン デ ン サ ー 高 さ 、 中 心 を 合 わ せ る ③ 視 野 制 限 絞 り を 視 野 一 杯 よ り 少 し 大 き く 開 く (6) 解 像 度 を 得 る た め に 開 口 絞 り を 開 け る (7) フ ォ ー カ ス を 移 動 し な が ら 内 部 構 造 を 観 察 (8) 対 象 が 規 定 の 大 き さ で あ る こ と を 確 認 (9) 必 要 に 応 じ て DIC プ リ ズ ム を 調 整 し 、 影 の 強 さ と 方 向 を 変 え る 4. ( 必 要 に よ り ) 60、 100 倍 対 物 レ ン ズ を 使 用 し て 内 部 構 造 を 観 察
8 (1) ス ラ イ ド に ア ニ ソ ー ル ( ま た は 油 浸 オ イ ル ) を 一 滴 落 と し 、( ス テ ー ジ を 下 げ な が ら ) 対 物 レ ン ズ を 切 り 替 え 、( ス テ ー ジ を 戻 し た ら ) 対 物 レ ン ズ を 少 し 左 右 に 揺 ら し て な じ ま せ る (2) 対 応 す る コ ン デ ン サ ー に 切 り 替 え る (3) フ ォ ー カ ス を 合 わ せ る (4) コ ン デ ン サ ー 高 さ 調 整 ( ケ ー ラ ー 照 明 ) (5) フ ォ ー カ ス を 移 動 し な が ら 内 部 構 造 を 観 察 (6) 必 要 に 応 じ て DIC プ リ ズ ム を 調 整 し 、 影 の 強 さ と 方 向 を 変 え る 5. ( 必 要 に よ り ) 写 真 を 撮 影 す る (1) 写 真 撮 影 装 置 を 準 備 す る (2) 先 に 蛍 光 像 を 撮 影 す る ① 偏 光 板 と DIC プ リ ズ ム を は ず し 、 蛍 光 フ ィ ル タ ー を 入 れ る ② 撮 影 の 感 度 、 秒 数 は 陽 性 コ ン ト ロ ー ル で 確 認 し て お く 、 例 え ば 標 準 感 度 で 1 秒 の シ ャ ッ タ ー 速 度 ③ 撮 影 の XY 位 置 と フ ォ ー カ ス は 微 分 干 渉 で 合 わ せ て お く ④ 光 路 を カ メ ラ 100% に 切 り 替 え る( ラ イ ブ 像 が 得 ら れ る カ メ ラ な ら 、微 分 干 渉 像 で フ ォ ー カ ス を 合 わ せ る ) ⑤ B 励 起 の 撮 影 を 実 施 、蛍 光 シ ャ ッ タ ー を 開 け 、カ メ ラ の シ ャ ッ タ ー を 押 し 、 撮 影 完 了 後 直 ち に 蛍 光 シ ャ ッ タ ー を 閉 じ る ( 退 色 が 早 い の で 蛍 光 を 当 て る 時 間 は 秒 単 位 に 抑 え る ) ⑥ 必 要 に よ り U 励 起 で 同 様 に 実 施 、 核 の 観 察 に は フ ォ ー カ ス を 若 干 ず ら し て 、 複 数 枚 撮 影 す る (3) 次 い で 微 分 干 渉 像 を 撮 影 す る ① 画 面 を 見 な が ら 特 徴 あ る 像 に な る よ う フ ォ ー カ ス を 合 わ せ て 撮 影 ② さ ら に フ ォ ー カ ス を ず ら し な が ら 沢 山 撮 影 ( 前 後 の 情 報 が 立 体 構 造 の 把 握 に 有 用 ) ( 画 面 を 見 な が ら フ ォ ー カ ス を 合 わ せ る こ と が で き な い 撮 影 装 置 の 場 合 、 微 動 ネ ジ を わ ず か に 動 か し な が ら 、 対 象 物 の 上 か ら 下 ま で の 断 層 写 真 を 数 十 枚 撮 影 し 、 後 か ら 必 要 な 像 を 選 別 す る ) ③ サ イ ズ 計 測 機 能 等 を 用 い て 対 象 の 大 き さ を 測 定 (4) 写 真 の ト リ ミ ン グ を 行 い 、 報 告 に 備 え る (Word な ど に 貼 る の で は な く 、 圧 縮 さ れ た tif や jpg フ ァ イ ル で 扱 う ) 6. 顕 微 鏡 の 後 片 付 け (1) 使 用 し た 油 浸 レ ン ズ を レ ン ズ ペ ー パ ー で 拭 く (2) 本 体 ( ハ ロ ゲ ン ラ ン プ の 電 源 )、 高 圧 水 銀 ラ ン プ の 電 源 を 切 る
9 C)微 分 干 渉 観 察 図 顕 微 鏡 主 要 操 作 部 位 顕 微 鏡 フ ル 活 用 術 イ ラ ス ト レ イ テ ッ ド 基 礎 か ら 応 用 ま で 、 稲 澤 譲 治 ら ( 秀 潤 社 ) よ り A)明 視 野 観 察 B)蛍 光 観 察
10
《
クリプトスポリジウム症 の診 断 》
クリプ トスポリ ジウム症 はク リプ トスポリ ジウム属 原 虫 の感 染 に 起 因 するも ので、 非 血 性 水 様 下 痢 を 主 症 状 とする 消 化 器 症 状 を呈 する 疾 患 である。その他 の症 状 としては、腹 痛 、倦 怠 感 、食 欲 低 下 、悪 心 などで、軽 い発 熱 を伴 う例 もある。下 痢 は一 日 数 回 程 度 から 20 回 以 上 の激 しいものまであり、数 日 から 2~3 週 間 持 続 する。抗 生 物 質 は無 効 であるが、免 疫 機 能 に異 常 がなければ自 然 治 癒 する。 一 方 、エイ ズを初 めとする免 疫 不 全 宿 主 には重 症 ・難 治 性 ・再 発 性 ・致 死 性 下 痢 症 を発 症 させる。本 症 はエイズ診 断 の指 標 疾 患 の1 つで、HIV 陽 性 者 で本 原 虫 感 染 による下 痢 が 1 カ月 以 上 持 続 した場 合 はエイズと診 断 される。下 痢 の程 度 は軟 便 ・泥 状 便 か ら水 様 便 まであるが 、免 疫 不 全 の 進 行 とともに重 症 化 する 傾 向 がある。重 症 例 ではコレラに見 られるような大 量 の水 様 便 や失 禁 を伴 う症 例 が報 告 され、直 接 死 因 となることもありえる。近 年 はエイズに対 しては多 剤 併 用 療 法 (HAART)による免 疫 機 能 の回 復 が行 われる。病 原 種 は Cryptosporidium parvum(人 獣 共 通 寄 生 性 の C. parvum ともっぱ らヒトから検 出 される C. hominis)が主 であるが、C. meleagridis の感 染 も知 られ るようになった。免 疫 不 全 者 では C. baileyi や C. muris の感 染 も考 えられる。 寄 生 部 位 は腸 管 、とくに小 腸 であるが、AIDS では膵 臓 、胆 道 、胆 嚢 、呼 吸 器 へ の感 染 も 報 告 されて いる。 ヒト以 外 でも多 くの哺 乳 類 、特 にその幼 獣 に感 染 が 認 められる。 ク リ プ トスポリ ジウムの 診 断 は 検 便 に よ りオ ー シ ス ト を 検 出 す る こ と に よ る 。 急 性 期 の 患 者 便 には多 数 のオーシストが排 出 されるが 2)、オー シ ス ト は 小 さ い た め に 通 常 の 顕 微 鏡 観 察 で は 見 落 とされる危 険 性 が 高 い。した がっ て、遠 心 沈 殿 法 (MGL 変 法 )や浮 遊 法 、密 度 勾 配 遠 心 法 (遠 心 浮 遊 法 )によりオーシストの濃 縮 ・精 製 を 行 い 、 さ ら に 得 ら れ た 試 料 を 蛍 光 抗 体 染 色 、抗 酸 染 色 、ネガティブ染 色 などで染 色 して 観 察 に供 すことが望 まれる。多 数 排 出 されてい 図 1 : シ ョ 糖 浮 遊 法 に よ り 患 者 便 か ら 検 出 さ れ た Cryptosporidium のオーシスト
11 る場 合 は簡 易 迅 速 ショ糖 浮 遊 法 3)、あるいは直 接 薄 層 塗 抹 法 +蛍 光 抗 体 染 色 により容 易 にスクリーニング可 能 である。最 も高 い検 出 感 度 が期 待 される方 法 は 蛍 光 抗 体 染 色 で、簡 便 な染 色 用 キ ットが 市 販 されてい る(検 査 試 薬 とし て未 承 認 のため保 険 適 用 外 である)。
1.検 査 材 料 の採 取
患 者 の 便 材 料 を然 るべき容 器 (試 験 管 、蓋 付 き採 便 管 等 で、保 存 培 地 の入 っていないもの)に数 グラム程 度 採 取 する。検 査 までに時 間 を要 する場 合 は検 体 を冷 蔵 庫 保 存 する。長 期 間 の 保 存 が 避 けられない場 合 には 、顕 微 鏡 検 査 には 10%ホルマリン水 で固 定 (後 述 の遺 伝 子 検 査 目 的 に試 料 を分 割 して冷 凍 保 存 ) する。可 能 であれば、後 述 の集 嚢 子を
行 ってから保 持 するように努 める。糞 便 量 に余 裕 があればオーシストを できるだ け多 く回 収 する。オーシストとし て保 存 して おくことで遺 伝 子 解 析 の結 果 、新 規 のタ イプであった場 合 に、オーシストの形 態 的 特 徴 を迅 速 に確 認 することができるし、遺 伝 子 検 査 にも都 合 が良 い。 検 査 材 料 の輸 送 上 の注 意 検 査 材 料 の輸 送 に際 しては、内 容 物 が漏 出 しないように適 切 に密 閉 し、冷 蔵 (4℃)あるいは冷 凍 (-20℃)で輸 送 する。クリプトスポリジウムと同 定 された後 に、試 験 研 究 等 を目 的 に生 きた状 態 のクリプトスポリジウムを取 り扱 う場 合 、 クリプ トスポリジウムは四 種 病 原 体 としての施 設 基 準 、保 管 、使 用 、運 搬 、滅 菌 等 の基 準 (厚 生 労 働 省 令 )の遵 守 が求 められ、事 故 の届 出 と災 害 時 の応 急 措 置 は法 律 上 の義 務 ・直 罰 に該 当 する。都 道 府 県 公 安 委 員 会 宛 の運 搬 の届 出 には該 当 しない。2.濃 縮 ・精 製
(1) 主 な器 具 および試 薬 類 ① 15 ml用 螺 子 蓋 付 きポリプロピレン製 スピッツ管 (以 下 、スピッツ管 ) ② ピペット ③ ガーゼ ④ 綿 棒12 ⑤ 60mmΦ程 度 のロート ⑥ 竹 串 、または割 箸 (以 下 、竹 串 ) ⑦ 金 属 性 ループ(直 径6 - 7mmのニクロム線 のループ) ⑧ 10%ホルマリン水 溶 液 (以 下 、ホルマリン水 ) ⑨ 酢 酸 エチル(試 薬 特 級 ) ⑩ 高 比 重 液 (本 文 中 に記 載 ) ⑪ ボルテックスミキサー ⑫ 遠 心 機 ⑬ 簡 易 濃 縮 キット(本 文 中 に記 載 ) (2) 遠 心 沈 殿 法 (MGL変 法 、あるいはFEA法 )注 1 1. 糞 便 検 体 を少 量 (≦1g)スピッツ管 に取 る。 2. ホルマリン水 を1ml加 えて竹 串 で糞 便 塊 を充 分 ほぐす。 3. 全 量 が5mlとなるようにホルマリン水 を加 え、ボルテックスミキサーで充 分 攪 拌 する。 4. 攪 拌 後 、室 温 に20分 間 以 上 放 置 して固 定 する。 5. 再 度 、 よ く 攪 拌 し て か ら ロ ー ト に4 枚 重 ね のガ ー ゼ を 敷 き 、 試 料 液 を ろ 過 す る。 6. ホルマリン水 でガーゼ上 のろ過 残 渣 を軽 く洗 浄 し、全 量 で8mlのろ液 をスピッ ツ管 に回 収 する。 7. ろ液 に2mlの酢 酸 エチルを加 え、密 栓 をして短 時 間 激 しく振 盪 ・混 和 する。 8. 速 やかに1,050×g (通 常 の卓 上 遠 心 機 で2,500~3,000rpm程 度 に相 当 )、 5分 間 遠 心 する。 9. 液 層 は上 から酢 酸 エチル層 、浮 遊 糞 便 層 、希 釈 液 層 、沈 渣 の4液 層 に分 離 する。 10. 予 め浮 遊 糞 便 層 を竹 串 等 で管 壁 から離 し、上 部 の3液 層 を捨 て、沈 渣 を回 収 する。さらに、スピッツ管 内 壁 の付 着 物 を綿 棒 で拭 き取 る。 11. 得 られた沈 渣 を直 接 顕 微 鏡 観 察 (400倍 以 上 の倍 率 )、又 は密 度 勾 配 遠 心 法 等 の試 料 に供 する。 注1 本 変 法 で は、①バイ オハザードの観 点 から、生 理 食 塩 水 での洗 浄 工 程 を 省 略 し て
13 いる。また、②エチルエーテルに替 え て、引 火 性 の低 い酢 酸 エチルを用 いている。 (3) 密 度 勾 配 遠 心 法 (遠 心 浮 遊 法 ) 1. スピッツ管 に比 重 1.2 のショ糖 液注 1 、 2を 4ml程 度 取 り、糞 便 を溶 いた試 料 液注 3を重 層 する。 2. 1,050×g で 10 分 間 遠 心 し、比 重 の異 なった 2 つの液 層 の界 面 付 近 を 新 しいスピッツ管 に回 収 する。 3. 充 分 量 の精 製 水 を加 えて希 釈 し、再 度 、遠 心 沈 殿 して沈 渣 を得 る。 4. 沈 渣 を顕 微 鏡 観 察 に供 する。 注1 ショ 糖 500g を精 製 水 650ml に溶 解 する。 注2 コロイ ド PVP 処 理 シリカ-ショ糖 混 合 液 (比 重 1.10)を用 いても良 い。液 の調 整 は、精 製 水 45mlにコロイド PVP 処 理 シリカ(Percoll またはそれと同 等 のも の)45mlと 2.5M ショ糖 液 10ml(8.55g のショ糖 を精 製 水 に溶 解 して全 量 を 10ml としたもの)を加 えて混 合 する。 注3 便 材 料 に 未 消 化 の 脂 肪 分 が 多 量 に 含 ま れ て い る 場 合 に は 、 検 体 を そ の ま ま で は 浮 遊 法 に 供 す る こ と が で き な い 。 前 処 理 と し て 遠 心 沈 殿 法 を 行 い 、 得 ら れた沈 渣 を試 料 とする。 (4)ショ糖 浮 遊 法 1. 0.5 ~ 1g の糞 便 材 料注 1を比 重1.2のショ糖 液注 2に溶 く。 2. 試 験 管 立 てに立 てた試 験 管 に糞 便 液 を満 たす。その際 、表 面 張 力 を利 用 して液 面 を試 験 管 よりも盛 り上 げる(後 に金 属 ループを使 用 する場 合 は、試 験 管 上 端 より下1cm位 まで満 たす)。 3. 20分 間 程 度 、室 温 に静 置 する。 4. カバーグラス(あるいは金 属 ループ)を液 最 上 面 に接 着 して、液 表 面 に浮 遊 してきたオーシストを回 収 する。 5. 直 接 、顕 微 鏡 観 察 に供 する注 3か、回 収 液 を十 分 量 の精 製 水 で希 釈 し、遠 沈 して沈 渣 を観 察 に供 する。
14 注1 下 痢 便 等 で 未 消 化 の 脂 肪 分 が 多 量 に 含 ま れ て い る 場 合 に は 、 前 処 理 と し て遠 心 沈 殿 法 を行 い、得 られた沈 渣 を試 料 とする。 注2 用 い る 高 比 重 液 の 組 成 に よ り 飽 和 食 塩 水 浮 遊 法 、 硫 苦 ( 硫 酸 マ グ ネ シ ウ ム ) ・ 食 塩 水 浮 遊 法 、 ショ 糖 液 浮 遊 法 など の 名 前 で 区 別 され る 。クリ プ ト スポ リジウムの検 査 では一 般 に比 重1.2のショ糖 液 が用 いられる。 注3 ショ糖 液 中 のオ ーシ スト は 通 常 の 顕 微 鏡 像 と 著 し く 異 なる。 観 察 に は 通 常 の 生 物 顕 微 鏡 を用 いる。 (5)簡 易 迅 速 ショ糖 浮 遊 法 1. スライドグラス上 に少 量 の検 体 を置 く 2. ショ糖 液 を加 えて混 合 する 3. カバーガラスを被 せて数 分 間 、静 置 する 4. カバーガラス付 近 に焦 点 を合 わせて、浮 いた粒 子 を 観 察 する (6)簡 易 濃 縮 キットと遠 心 浮 遊 法 を組 み合 わせた 方 法 1. 糞 便 か ら の 寄 生 虫 卵 な ど の 簡 易 濃 縮 キ ッ ト ( VERITAS : Parasep ; EVERGREEN : FECAL PARASITE CONCENTRATOR ) に 含 ま れ る遠 心 チューブに、糞 便 約 1g(小 指 頭 大 )と蒸 留 水 を適 当 量 加 えボルテックスミキ サーで十 分 撹 拌 後 に 遠 心 ろ 過 する 。この 操 作 で 糞 便 中 の 挟 雑 物 がキ ッ ト のメッシュで除 去 され、オーシストは沈 澱 物 中 に回 収 される。 2. 沈 澱 物 に少 量 の PBS を加 え使 い捨 てピペットを用 いてピペッティングしその 0.5~1ml を 15ml の目 盛 りつきプラスチック製 遠 沈 管 に入 れ、さらに比 重 1.2 のショ糖 溶 液 を 10ml まで加 えピペッティングする。 3. キャップを外 し、遠 沈 管 を少 し傾 けて蒸 留 水 を 13ml 程 度 まで使 い捨 てピペ ットを 用 いてゆっ くりと 重 層 する(ショ 糖 層 に 直 接 蒸 留 水 を 滴 下 すると界 面 層 が乱 れるの で、ピペット先 端 を 管 壁 につけて蒸 留 水 が管 壁 をつたってシ ョ糖 層 に流 れるようにする)。 4. 2,000 回 転 10 分 間 遠 心 するとオーシストなど寄 生 虫 卵 を含 む層 がショ糖 層 と水 層 の 境 界 にで き るの で、水 層 と とも に その 層 を 回 収 し 蒸 留 水 を 入 れた 別 の 15ml 遠 沈 管 に入 れる。
15 5. 撹 拌 後 に 2,500 回 転 10 分 間 遠 心 し、沈 澱 物 を 1.5ml のエッペンチューブ に採 取 して再 度 蒸 留 水 で遠 心 洗 浄 後 、2.5%重 クロム酸 カリウム液 などの保 存 液 中 で冷 蔵 保 存 する。 (7)免 疫 磁 気 ビーズ法 本 法 は 免 疫 反 応 を 利 用 し てク リプ トスポリ ジウムとジアルジアを 特 異 的 に磁 気 ビーズと結 合 させ、磁 力 に よ り回 収 する方 法 で、免 疫 磁 気 ビー ズ法 試 薬 と磁 石 等 が必 要 となる 。本 法 は 精 製 度 が 高 く、 高 感 度 な検 出 、核 酸 抽 出 用 試 料 の 精 製 に適 している。水 環 境 試 料 の検 査 用 に、製 品 が市 販 されている。
3.観 察
(1) 器 具 および試 薬 類 ① スライドグラス ② カバーグラス ③ ネイルエナメル(パラフィン類 を溶 かして用 いても良 い) ④ 生 物 顕 微 鏡 (微 分 干 渉 装 置 付 きが望 まれる) ⑤ 蛍 光 顕 微 鏡 (一 般 に落 射 型 が便 利 ) ⑥ 各 種 染 色 液 (本 文 中 に記 載 ) ⑦ 燐 酸 緩 衝 生 理 食 塩 水 pH 7.2(PBS) ⑧ 市 販 の蛍 光 抗 体 試 薬 (検 査 用 試 薬 として未 承 認 のため、保 険 適 用 外 )⑨ DAPI 保 存 液 :メタ ノール 1ml に DAPI (4',6-diamidino-2-phenylindole) 2mg を溶 解 する。密 閉 容 器 に入 れ、遮 光 して冷 蔵 庫 に保 管 する。使 用 に際 して DAPI 保 存 液 10μl を PBS 50ml に加 えて混 合 する。 ⑩ 水 溶 性 封 入 剤 (2) 直 接 観 察 1. 糞 便 希 釈 液 、又 は精 製 試 料注 1をスライドグラスに少 量 取 り、カバーグラスをか ける。 2. カバーグラ スの四 縁 を 封 じ て注 2、微 分 干 渉 顕 微 鏡注 3で観 察 する。通 常 の生
16 物 顕 微 鏡注 4では他 の粒 子 との区 別 は困 難 である。 注1 高 比 重 ショ 糖 液 中 の オ ー シス ト は 微 分 干 渉 装 置 で の観 察 に は 適 さ な い。 観 察 は通 常 の生 物 顕 微 鏡 を用 いるが 通 常 の像 とは著 しく異 なる。 注2 ネイ ルエナメル 、また はパ ラフィン類 を溶 かし てシールする。周 囲 をシールする こ とで試 料 液 の流 れが止 まり、観 察 が容 易 となる。 注3 微 分 干 渉 顕 微 鏡 は 一 般 の 生 物 顕 微 鏡 に 微 分 干 渉 装 置 を 組 み 込 ん だ も の で 、 光 源 に は 偏 光 が 用 いら れ る。 標 本 中 の 光 学 的 厚 さ の 差 に よっ て 生 じ る 光 路 差 (二 次 光 線 の位 相 の差 ) をコントラ ストの差 、または色 の差 に変 換 し て可 視 化 す る 顕 微 鏡 で あ る 。 顕 微 鏡 観 察 に 先 立 っ て 、 後 述 の ケ ーラ ー 照 明 法 に 準 じ た 照 明 の 調 整 が 重 要 で あ る 。 オ ー シ ス ト の 内 部 構 造 の 観 察 に 適 し て い る が 、 ス ク リ ー ニ ン グ に は 適 さ な い 。 標 本 作 製 上 の 注 意 点 は 被 検 物 が 重 積 し な い こ と 、 す な わ ち で き る だ け 希 薄 な 標 本 を 作 製 す る こ と 。 水 道 水 等 の 検 査 で は 原 虫 の 確 定 に用 いられている。 注4 被 写 界 深 度 を調 整 (コンデンサーの位 置 や開 口 絞 りの調 整 )し て、最 適 の像 を 得 ること。 <観 察 像 > オーシストは 類 円 形 (4.5~5.4 × 4.2~5.0μm)で、微 分 干 渉 顕 微 鏡 像 では オーシスト内 に 4 個 のスポロゾイトや残 体 、その他 に大 小 の顆 粒 が観 察 される。 高 比 重 ショ糖 液 中 の オーシストの 観 察 には通 常 の生 物 顕 微 鏡 を 用 いるが、 通 常 の 像 とは著 し く異 なる。 コンデンサーの 位 置 、開 口 絞 りなどを 適 正 に調 整 する と 、 屈 折 率 の 関 係 で オー シ スト は 薄 い ピン ク ~オ レ ン ジ 色 に 見 え る 。 そ の 際 、 酵 母 などは緑 色 に見 え るために 識 別 が可 能 である。なお、ショ糖 液 中 のオーシスト は内 部 構 造 の観 察 には適 さない。内 部 構 造 の確 認 や染 色 標 本 作 成 にはショ糖 液 を精 製 水 に置 換 する操 作 が 必 要 となる。また、ショ糖 中 のオーシストは長 時 間 おくと収 縮 したり、壊 れたり、特 にホルマリン固 定 した材 料 はより早 く見 えづらくな ったりすることがあり、観 察 に注 意 を要 する。 (3)蛍 光 抗 体 染 色
17 本 法 は免 疫 反 応 を利 用 してオーシスト壁 を特 異 的 に染 色 する方 法 で、観 察 に は蛍 光 顕 微 鏡 装 置 が 必 要 となる。本 法 は感 度 が高 く、スクリーニング法 として優 れている。染 色 方 法 には間 接 蛍 光 抗 体 染 色 法 と直 接 蛍 光 抗 体 法 の 2 つの方 法 がある。糞 便 等 の試 料 では染 色 工 程 の少 ない直 接 蛍 光 抗 体 法 が便 利 なので、 以 下 に説 明 する。 <湿 潤 試 料 の直 接 蛍 光 抗 体 染 色 (湿 式 )> 1. 精 製 材 料 を小 試 験 管 に取 り、少 量 の PBS に希 釈 ・混 和 する。 2. 必 要 量 (市 販 キットにより異 なるが、目 安 として試 料 の 1/10~20 量 )の蛍 光 抗 体 試 薬 原 液 を添 加 し、遮 光 して室 温 で所 定 時 間 (15~30 分 程 度 )反 応 さ せる。 3. 必 要 に応 じて、染 色 終 了 5 分 前 に適 当 量 の DAPI 染 色 液 を加 えて反 応 を続 ける。 4. 反 応 後 、PBS で遠 心 洗 浄 (1,050×g で 5 分 間 程 度 )し、沈 渣 に水 溶 性 封 入 剤 を滴 下 する。 5. スライドグラスにとり、カバーグラスを掛 けて、周 囲 をシールして顕 微 鏡 観 察 に 供 する。 6. 蛍 光 顕 微 鏡注 1(B 励 起 下 )で FITC の特 異 蛍 光 (緑 色 )を示 す粒 子 を観 察 す る。 7. DAPI 染 色 を行 った場 合 には UV 励 起 に切 り替 え、青 色 に染 まったスポロゾ イトの核 (4 核 )を観 察 する。 注1 広 帯 域 (long pass)の蛍 光 フィルターを用 いると夾 雑 物 が他 の色 調 を呈 し、観 察 が容 易 である。 <乾 燥 標 本 の直 接 蛍 光 抗 体 染 色 (乾 式 )> 1. スライドグラスに糞 便 材 料 、または精 製 試 料 を薄 く塗 布 して乾 燥 させる。 2. PBS で軽 く洗 浄 した後 、スライドグラスを湿 箱 に移 し、試 料 部 分 に蛍 光 抗 体 試 薬 を滴 下 、遮 光 して室 温 で所 定 時 間 (15~30 分 程 度 )反 応 させる。 3. 必 要 に応 じて染 色 終 了 5 分 前 に DAPI 染 色 液 を加 え、ピペットで静 かに液 を 撹 拌 、反 応 を続 ける。
18 4. 反 応 後 、PBS で丁 寧 に洗 浄 、充 分 水 を切 ってから封 入 剤 を滴 下 、カバーグ ラスをかける。 5. 蛍 光 顕 微 鏡 B 励 起 下 で FITC の特 異 蛍 光 (緑 色 )を示 す粒 子 を観 察 する。 6. DAPI 染 色 を行 った場 合 には UV 励 起 に切 り替 え、青 色 に染 まったスポロゾ イトの核 (4 核 )を観 察 する。 <観 察 像 > 蛍 光 抗 体 染 色 像 では緑 色 の特 異 蛍 光 を示 す粒 子注 1として観 察 される。オー シストの染 色 パターンは基 本 的 に辺 縁 部 の蛍 光 のみで、中 心 部 にはほとんど蛍 光 は認 められない。したがって、全 体 としてはドーナッツ状 の染 色 像 となる。 DAPI 染 色 を行 った場 合 には、UV 励 起 下 でオーシスト中 にスポロゾイトの核 が 4 核 明 瞭 に観 察 される注 2。 注 1 市 販 の 蛍 光 抗 体 試 薬 は 一 部 の 藻 類 等 と 交 叉 反 応 す る こ と が 報 告 さ れ て お り 、 環 境 試 料 では他 の方 法 による確 認 が必 要 である。 注 2 新 鮮 オーシストでは DAPI に染 まらない場 合 がある。 (4) ネガティブ染 色 蛍 光 顕 微 鏡 がない場 合 の便 宜 的 方 法 である。 <染 色 液 > ニューメチレン青 2.5g シュウ酸 カリウム・1水 塩 8.0g 精 製 水 500ml 上 記 の2薬 を精 製 水 に溶 解 し、ろ過 してから試 薬 瓶 に移 し、室 温 で保 存 する。 <手 順 > 1. スライドグラス上 に糞 便 材 料 、または精 製 試 料 を少 量 取 り、過 剰 のニューメチレ ン青 染 色 液 を加 えて攪 拌 する注 1 、 2 。 2. カ バ ー グ ラ スを か け 四 縁 を シ ー ル し てか ら100 ~200倍 で観 察 す る。観 察 には
19 生 物 顕 微 鏡 を用 いる。開 口 絞 り(コンデンサーに付 属 の絞 り)を絞 り込 み、焦 点 をわずか 上 方 にずら して観 察 すると、無 色 のオーシストは 青 い背 景 の 中 に(白 く)浮 かんでみえる。 3. オーシストらしい粒 子 が検 出 された場 合 には高 倍 率 で観 察 する。 4. 陽 性 と判 断 された試 料 については別 の方 法注 3でオーシストの確 認 を行 う。 注 1 試 料 に 対 し て 十 分 量 の 色 素 を 加 え る と 、 過 剰 分 の 色 素 が 残 っ て フ ィ ル タ ー の 役 目 を す る 。 細 菌 等 の 混 入 が 多 い と 色 素 が 消 費 さ れ て フ ィ ル タ ー 効 果 を 失 う こ と が あ る 。 18×18mmの カ バ ー グ ラ ス に 対 し て 試 料 の 量 は 10μl 以 下 程 度 にする。 注 2 沈 渣 の 一 部 を 別 の 試 験 管 に 取 り 、 色 素 液 と 混 和 し て か ら ス ラ イ ド グ ラ ス に 移 してもよい。 注 3 微 分 干 渉 顕 微 鏡 観 察 、抗 酸 染 色 、蛍 光 抗 体 染 色 法 など。 <観 察 像 > 細 菌 類 、酵 母 、その 他 の 食 物 残 渣 は濃 青 色 に染 色 されるが、オーシストは染 色 されない。液 中 に 過 剰 の色 素 が残 ることで、青 色 の背 景 の中 に無 色 のオーシ ストが 浮 いて見 え る。 高 倍 率 の 観 察 ではオ ーシストの内 部 構 造 が 不 均 一 で 、不 明 瞭 ながらスポロゾイト等 の内 部 構 造 が確 認 される。酵 母 や結 晶 様 構 造 物 等 が 同 じく白 く見 える場 合 があるが、経 験 を積 むと内 部 構 造 の違 いから区 別 される。 (5) 抗 酸 染 色 クリプトスポリジウムやサイクロスポラのオーシストは抗 酸 性 を示 すことから、抗 酸 染 色 が用 いられてきた。以 下 に一 例 として Kinyoun の石 炭 酸 フクシン染 色 法 を 紹 介 するが、抗 酸 染 色 法 はいろいろ改 良 されており、各 研 究 室 で常 用 し ている 方 法 があればその方 法 を踏 襲 すべきである。 <染 色 液 > ☆ Kinyoun の石 炭 酸 フクシン液 塩 基 性 フクシン 4 g
20 95% エタノール 20ml 石 炭 酸 8ml 精 製 水 100ml 塩 基 性 フクシンをエタノールに溶 かし、これに石 炭 酸 と精 製 水 の混 合 液 を加 え る。充 分 に攪 拌 した後 、ろ過 して褐 色 試 薬 瓶 に保 存 する。 ☆ Loeffler のアルカリ性 メチレン青 液 メ チ レ ン 青 0.3g 95% エタノール 30ml 0.01% 水 酸 化 カリ液 100ml エタノールにメチレン青 を溶 かし、水 酸 化 カリ液 を加 えて試 薬 瓶 に保 存 する。 <手 順 > 1. スライドグラス上 に糞 便 材 料 を直 接 、又 は精 製 試 料 を薄 く塗 抹 して風 乾 する。 2. メタノールで1~2分 固 定 し、乾 燥 する。 3. Kinyounの石 炭 酸 フクシン液 を試 料 塗 布 面 に載 せて5分 間 染 色 する。 4. 50%エタノールで染 色 液 を剥 がすように洗 浄 する注 1。 5. 精 製 水 洗 浄 後 、1%の硫 酸 水 で約 2分 間 、または標 本 から赤 い色 素 が溶 け出 なくなるまで脱 色 する注 2。 6. 水 洗 後 、Loeffler のアルカリ性 メチレン青 染 色 液 で1分 間 程 度 、後 染 色 する。 7. 水 洗 、乾 燥 後 にバルサム等 で封 入 して観 察 する。 注 1 染 色 液 の 表 面 に は 色 素 の 酸 化 膜 ( 不 溶 性 ) が 形 成 され るこ と が あ り 、 酸 化 膜 が 標 本 上 に 付 着 し ないよう に洗 い流 す。 多 量 に付 着 し た場 合 には50%エタノール 液 で漬 け洗 いする。 注 2 目 安 とし て、標 本 に混 在 している細 菌 類 の赤 味 がやや残 る程 度 まで 脱 色 す ると 良 い。 <観 察 像 > オーシストは淡 いピンクから赤 色 、さらに 濃 赤 色 に染 まる。染 色 状 況 は一 様 で
21 は なく、馬 蹄 形 に染 ま るも の が 多 い。同 時 に 染 まら ないオーシストも 少 なくない。 後 染 色 を強 めに行 うと赤 の色 調 は低 下 するが、内 部 が顆 粒 状 に染 め出 される。 結 果 の判 定 は他 の検 査 法 で得 られた結 果 を合 わせて総 合 的 に判 断 すべきであ る。ホルマリン処 理 されたオーシストは抗 酸 染 色 性 が低 下 するとの指 摘 もあるが 、 不 都 合 はないとも言 われる。 (6) ヨウ素 ・ヨウ化 カリ染 色 クリプトスポリジウムのオーシスト観 察 用 に改 良 した染 色 方 法 を紹 介 するが、利 用 可 能 な顕 微 鏡 が生 物 顕 微 鏡 に限 られている場 合 の便 宜 的 な染 色 方 法 である。 スクリーニング法 としては推 奨 できない。染 色 と熱 固 定 を同 時 に行 うことでオーシ スト内 部 とオーシスト壁 の存 在 を観 察 することができる。 <ヨウ素 ・ヨウ化 カリ液 > ヨウ素 5g ヨウ化 カリ 10g 精 製 水 100ml ヨウ 化 カ リ を 水 に 溶 か し 、 攪 拌 し なが ら ヨ ウ 素 を 徐 々 に 加 え て 完 全 に 溶 解 し 、 ろ 過 してから褐 色 試 薬 瓶 に密 閉 保 存 する。(市 販 の希 ヨードチンキで代 替 できる) <手 順 > 1. 精 製 試 料 を1.5ml用 サンプルチューブ等 に取 る。 2. 試 料 量 の1/2~1/3量 のヨウ素 ・ヨウ化 液 を加 えて、1~2分 間 熱 湯 に湯 煎 ・振 盪 する。 3. 試 料 をスライドグラスに取 り、カバーグラスをかけ、四 縁 をシールして観 察 する。 <観 察 像 > オーシストの内 部 構 造 が褐 色 に 染 色 される。熱 処 理 によっ て色 素 が内 部 に ま で浸 透 する。また 、オーシスト壁 と内 部 構 造 が 分 離 するた めにオーシスト壁 が 明 瞭 に観 察 で きるよ う に なる。酵 母 な どでは 細 胞 壁 の 分 離 は起 こ ら ないことか ら 明 瞭 に区 別 される。
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ジアルジア症 の診 断 》
ジアルジ ア症 (ラ ンブ ル鞭 毛 虫 症 )はジ ア ルジア 属 原 虫 の感 染 に起 因 する 消 化 器 疾 患 で、主 症 状 は激 しい水 様 下 痢 から軟 便 を認 め、少 数 寄 生 の場 合 はほ とん ど が 無 症 状 で 糞 便 中 に 持 続 的 に シ ス トを 排 出 す る 。 本 原 虫 の 感 染 は 患 者 糞 便 中 に 排 出 されるシストを 経 口 摂 取 することによる。シストを 排 出 するシスト保 有 者 (無 症 状 キャリアー)が他 のヒトへの感 染 源 として重 要 である。臨 床 的 に他 の 下 痢 症 と区 別 することは容 易 でない。病 原 種 は Giardia duodenalis(G. lamblia、G. intestinalis と synonym)である。 寄 生 部 位 は腸 管 、特 に十 二 指 腸 から空 腸 上 部 にかけてであるが、胆 嚢 や胆 管 粘 膜 にも寄 生 範 囲 が 拡 大 することがある。本 症 のリスクファクタ ーは発 展 途 上 国 へ の 渡 航 で あ る 。 ま た 、 男 性 同 性 愛 者 も リ ス ク グ ル ー プ を 形 成 す る 可 能 性 が あ る。 ジアルジア症 の診 断 は糞 便 中 の直 径 10μm 前 後 の楕 円 形 のシスト(嚢 子 )、 また は 栄 養 型 虫 体 (トロ フォゾイ ト、栄 養 体 ) を 検 出 することによ る。シストの観 察 方 法 と栄 養 型 虫 体 の 観 察 方 法 は異 なる。シストは一 般 に有 形 便 に認 められ、下 痢 便 では栄 養 型 虫 体 が検 出 される。また、十 二 指 腸 ゾンデ採 取 液 中 からも栄 養 型 虫 体 が検 出 される。
1. シストの検 査 法
(1) 検 査 材 料 の採 取 シストの検 出 を目 的 とした試 料 の採 取 方 法 はクリプトスポリジウムの検 査 材 料 の 採 取 を参 照 のこと。 (2) 濃 縮 ・精 製 基 本 的 にクリプトスポリジウムの検 査 法 に準 じ、 遠 心 沈 殿 法 (MGL変 法 )、密 度 勾 配 遠 心 法 (遠 心 浮 遊 法 )注 1 、簡 易 迅 速 ショ糖 浮 遊 法注 1 、免 疫 磁 気 ビーズ法 の 各 方 法 が適 用 できる。一 般 的 には遠 心 沈 殿 法 による集 嚢 子 が第 1選 択 となる。 注 1 ホルマリン等 で 長 期 に 固 定 されたシストは浮 遊 法 により回 収 しづらいことがある。23 (3) 観 察 1) 直 接 塗 抹 法 および蛍 光 抗 体 染 色 法 クリプトスポリジウムの検 査 法 に準 じて行 う。蛍 光 抗 体 試 薬 は直 接 法 用 の試 薬 が市 販 されている(検 査 試 薬 として未 承 認 のため保 険 適 用 外 である)。 <観 察 像 > シストは楕 円 形 (8~12 × 6~8μm)で、成 熟 したシストでは 4 個 の核 を持 つ。 主 に 泥 状 便 や 有 形 便 中 に 観 察 さ れ る 。 微 分 干 渉 顕 微 鏡 像 では 核 、鞭 毛 、 軸 糸 、曲 刺 等 が観 察 できる。 蛍 光 抗 体 法 で染 色 さ れた シストは 緑 色 の特 異 蛍 光 を 示 す粒 子 とし て観 察 さ れる。その染 色 パターンは辺 縁 部 の蛍 光 が強 く、中 心 部 にはほとんど蛍 光 が認 められない。DAPI 染 色 を行 った場 合 には 4 核 が観 察 される。 2) ヨウ素 ・ヨウ化 カリ染 色 法 利 用 可 能 な顕 微 鏡 が 生 物 顕 微 鏡 に 限 ら れる場 合 の 便 宜 法 としてヨウ素 ・ヨウ 化 カリ染 色 が用 いられている。 <染 色 液 > 13頁 (6)ヨウ素 ・ヨウ化 カリ染 色 を参 照 のこと。 <染 色 手 順 > 1. 糞 便 、または精 製 試 料 を1.5ml用 サンプルチューブ等 に取 る。 2. 試 料 量 の1/2~1/3量 のヨウ素 ・ヨウ化 液 を加 えて、撹 拌 する。 3. 試 料 をスライドグラスに取 り、カバーグラスをかけ、周 囲 をシールして観 察 する 。 内 部 構 造 が褐 色 に染 色 され、核 等 が観 察 可 能 となる。
2. 栄 養 型 虫 体 の検 査 法
(1) 検 査 材 料 の採 取 栄 養 型 虫 体 の検 出 を目 的 とする場 合 には試 料 の採 取 後 、速 やかに検 査 を行 う 必 要 がある。試 料 の希 釈 は生 理 食 塩 水 等 の等 張 液 を用 いる。検 査 までに時 間 を24 要 する場 合 は 検 査 材 料 を 冷 蔵 保 存 すべきであるが、栄 養 型 虫 体 の運 動 性 が冷 蔵 状 態 でどの程 度 保 持 されるかは不 明 である。観 察 に際 して温 めて観 察 する。 <直 接 塗 沫 法 > 1. 便 を生 理 食 塩 水 で希 釈 してスライドグラスに取 り、カバーグラスをかける。 2. カバーグラスの周 囲 をシールしてから顕 微 鏡 観 察 に供 する。 3. 観 察 に際 して、37℃程 度 に暖 めると栄 養 型 虫 体 の運 動 が活 発 となり検 出 し 易 い。 <十 二 指 腸 ゾンデ採 取 液 からの検 出 方 法 > 1. 十 二 指 腸 ゾ ン デ 採 取 液 を ス ピ ッ ツ 管 に 取 り 、 1,050 × g ( 汎 用 遠 沈 機 で 約 2,500rpm) 5分 程 度 遠 心 して沈 渣 を得 る。粘 稠 性 が高 い場 合 にはPBS等 で 希 釈 洗 浄 するとよい。 2. 沈 渣 をスライ ドグラ スに取 り、カバ ーグラスを掛 け、周 囲 を 封 じ てか ら 顕 微 鏡 観 察 に供 する。 <ギムザ染 色 > 1. 沈 渣 をスライドグラス上 に薄 く塗 布 し、速 やかに風 乾 する。 2. 充 分 乾 燥 させた後 に、メタノール固 定 (2~3 分 間 )する。 3. 薄 い液 で染 色 し、風 乾 後 、バルサム等 で封 入 し、顕 微 鏡 観 察 に供 する。 <観 察 像 > 栄 養 型 虫 体 は体 長 15~17μm、幅 5~7μm で左 右 対 称 の洋 梨 型 で、運 動 中 の原 虫 は“木 の葉 が舞 うようにヒラヒラ”とした動 きを呈 する。固 定 染 色 標 本 では 2 核 、4 対 8 本 の鞭 毛 、吸 着 円 盤 等 が観 察 される。猿 の面 容 に似 た特 徴 的 な形 態 を有 することから、モンキ-フェイスと形 容 される。
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サイクロスポラ症 、およびイソスポラ症 の診 断 》
サ イ ク ロ ス ポ ラ 症 お よ び イ ソ ス ポ ラ 症 は 、 Cyclospora cayetanensis お よ び Isospora belli の感 染 に起 因 する消 化 器 疾 患 である。いずれも臨 床 的 には他 の 下 痢 症 との区 別 は容 易 でない。寄 生 部 位 は腸 管 、特 に十 二 指 腸 から空 腸 上 部 にかけてである。 サイクロスポラ症 は、1996 年 から続 けて米 国 で中 南 米 産 のラズベリーを介 した 比 較 的 規 模 の大 きな分 散 型 集 団 感 染 (Diffuse Outbreak)が発 生 したことで有 名 となった。イソスポラはとくにエイズを初 め とする免 疫 不 全 宿 主 に発 症 するはげ しい下 痢 症 の原 因 微 生 物 として重 要 である。 いずれの原 虫 種 に おいても 患 者 の 糞 便 に 混 じっ て排 出 された オーシストは環 境 中 で一 定 の発 育 (スポロゾ イト形 成 )をし て感 染 性 を 有 するよう になる。この点 はクリプトスポリジウムやジアルジアとは大 きく異 なる。1.検 査 の概 要 と臨 床 材 料
診 断 は糞 便 中 のオーシストを検 出 することによる。サイクロスポラのオーシストは 直 径 8μm の球 形 で 、内 部 には 多 数 の 顆 粒 が観 察 され る。か つてこの原 虫 は "Cyanobacterium-like body"と呼 ばれたことがあり、形 態 的 に藻 類 に似 る。 イソスポラのオーシストは長 径 20~33μm 短 径 10~19μm のフットボール型 を呈 する。新 鮮 便 中 に検 出 されるオーシストは単 細 胞 である。このオーシストは大 きいことから見 落 とすことは稀 である。2.オーシストの検 査 法
基 本 的 にクリプトスポリジウムの検 査 法 に準 じる。 これら2種 の原 虫 に関 しては蛍 光 抗 体 試 薬 が開 発 されていない。しかしながら、 オーシスト壁 はUV 励 起 下 でいずれもネオン青 色 の自 家 蛍 光 を発 することから、 蛍 光 顕 微 鏡 観 察 による検 出 が第 一 選 択 となる。 なお、サイクロスポラのオーシストは抗 酸 染 色 で陽 性 に染 まる。26
Ⅲ 遺 伝 子 検 査 法
遺 伝 子 検 査 法 は、すでに各 種 の病 原 体 検 索 に用 いられている。 原 虫 類 の検 査 においても同 様 で、疫 学 的 調 査 への利 用 が進 んでいる。ここでは原 虫 検 査 に おける遺 伝 子 検 査 法 のポイント、特 に原 虫 あるいは検 査 材 料 の特 性 から生 ずる 問 題 点 について紹 介 する。1. 原 虫 検 査 における遺 伝 子 検 査 法 のポイント
遺 伝 子 検 査 法 の 利 点 は 、種 間 あるいは 種 内 の 遺 伝 学 的 変 異 を 知 ることがで きることで、これを利 用 することで汚 染 源 の特 定 などといった疫 学 的 に重 要 な情 報 を得 ることが期 待 できる。 腸 管 寄 生 性 原 虫 類 への適 用 に際 しての問 題 点 は 、壊 れにくい(オー)シストか らの核 酸 抽 出 である。また、糞 便 材 料 では目 的 外 の 核 酸 の混 入 が避 けられない ことや、PCR 反 応 の阻 害 要 因 も多 く含 まれていることが問 題 となる。いずれにせよ、 前 処 理 としての試 料 精 製 が 重 要 となる。また、反 応 に際 してはテンプレートの濃 度 範 囲 を広 く取 るなど、確 実 に反 応 を得 るための工 夫 が必 要 となる。 現 行 の解 析 法 は、検 出 された原 虫 を解 析 対 象 としてさらに詳 細 な情 報 を得 る ことを目 的 としているもので、検 出 を目 的 とするの はまだ一 般 的 ではない。一 方 、 水 環 境 試 料 中 の検 査 を 目 的 とし た 検 査 試 薬 が 市 販 さ れてい る。この 場 合 は 免 疫 磁 気 ビ ーズ 法 に よ り徹 底 し て 反 応 阻 害 物 質 を 除 き 、 その 上 で逆 転 写 反 応 を 行 って rRNA 分 子 を標 的 とした高 感 度 な増 幅 が行 われている。その他 、細 胞 培 養 と RT-PCR を応 用 した方 法 などが開 発 されている。詳 細 は文 献 等 を参 照 され たい。2.
主 な試 薬 と実 験 器 具 遺 伝 子 検 査 に共 通 する実 験 器 具 と試 薬 類 、および各 操 作 に必 要 なも のとに 分 けて示 した。 〔共 通 するもの〕 ① 0.5ml(又 は 0.2ml)PCR チューブ ② 1.5ml 遠 心 チューブ ③ 疎 水 性 フィルター付 きピペットチップ27 ④ 微 量 ピペット(10、200、1000μl) ⑤ 微 量 高 速 冷 却 遠 心 機 ⑥ 恒 温 水 槽 ⑦ 滅 菌 精 製 水 (DW/MiliQ 水 など)、 ⑧ TE バッファー(10mM, Tris-HCl, 1mM EDTA, pH8.0 ) 〔核 酸 抽 出 用 〕 ① 加 熱 用 ブロックヒーター(1.5ml チューブ対 応 ) ② 3M 酢 酸 ナトリウム ③ TE 飽 和 フェノール:フェノールを加 熱 ・融 解 し、等 量 の TE バッファーを加 え、混 合 し、その後 静 置 して、水 層 を除 く。この操 作 をもう一 度 繰 り返 し、 得 られたフェノールを TE 飽 和 フェノールとする。 ④ フェノール/クロロフォルム混 液 (TE 飽 和 フェノール:クロロフォルム:イソアミルアルコール=25:24:1) ⑤ 10% SDS ⑥ TritonX-100 ⑦ 10mg/ml proteinase K ⑧ エタノール ⑨ ミネラルオイル ⑩ 核 酸 抽 出 精 製 キット 〔PCR ならびに DNA 電 気 泳 動 用 〕 ① サーマルサイクラー ② 電 気 泳 動 装 置
③ Taq DNA polymerase キット ④ 抗 Taq 抗 体 ⑤ プライマー ⑥ 制 限 酵 素/専 用 バッファー ⑦ アガロース ⑧ TBE バッファーあるいは TAE バッファー ⑨ 泳 動 用 サンプルバッファー ⑩ DNA サイズマーカー ⑪ エチジウムブロマイド溶 液 (EtBr)
3. 核 酸 の抽 出 と精 製
原 虫 類 の(オー)シスト壁 は硬 く壊 れにくく、界 面 活 性 剤 の存 在 下 での加 熱 処 理 、超 音 波 処 理 、 凍 結 融 解 等 が 行 われている。核 酸 の抽 出 と 精 製 に は市 販 キ ットも利 用 される。 (1)DNA 精 製 キットを用 いた方 法 オーシストを多 数 認 める場 合 には 検 体 の 少 量 を、 あるいはキ ットの規 定 量 を 、 市 販 の DNA 分 離 キット(例 :QIAamp DNA Stool Mini kit)に用 いる。28
精 製 した DNA 試 料 を用 いて PCR を行 ったが DNA 増 幅 が見 られない、という ことがある。これは DNA 試 料 中 にまだ PCR 阻 害 物 質 が混 入 しているためと考 え られ、DNA 精 製 用 のカラムやグラスパウダー等 で再 度 精 製 をする場 合 もある。
(2)SDS を用 いた基 本 的 抽 出 方 法
SDS(Sodium Dodecyl Sulfate)は基 本 的 な抽 出 用 試 薬 として各 種 材 料 に利 用 されており、(オー ) シスト壁 の溶 解 に も有 効 である。ただし 、SDS はその後 の PCR 反 応 に阻 害 的 なために、充 分 な除 去 が必 要 となる。 <手 順 > 1. 20μl の試 料 を 160μl の TE buffer に浮 遊 し、さらに 20μl の 10%SDS を PCR チューブに入 れ、軽 く混 和 する。 2. ミネラルオイル(2 滴 )で液 面 をシールする注 1。1.5ml の遠 心 チューブを用 い る時 は蓋 をロックする。 3. 100℃のヒートブロックあるいは沸 騰 水 中 で 15 分 間 、加 熱 する注 2。 4. 室 温 にて 5 分 間 ほど冷 却 し、3,000rpm 程 度 で数 秒 、遠 心 する。 5. オイルの混 入 がないように、ピペットで水 層 部 分 をとり 1.5ml 遠 心 チューブに 回 収 する。 6. 10mg/ml Proteinase K 溶 液 を全 量 の 1/20 となるよう加 えて軽 く混 和 し、数 秒 遠 心 する。 7. 60℃で 1 時 間 加 熱 処 理 する。 8. 室 温 で 5 分 間 冷 却 する。 9. 400μl のフェノール/クロロフォルム混 液 を加 え、チューブを転 倒 混 和 する。完 全 に白 濁 するまで、穏 やかに混 和 する注 3。 10. 12,000×g、室 温 で 5 分 間 遠 心 する。 11. 水 溶 液 部 分 を新 しい遠 心 チューブに 300μl 程 度 回 収 する注 4。 12. 400μl のクロロフォルムを加 え、全 体 が混 ざるまで遠 心 チューブを転 倒 ・混 和 する注 5。 13. 12,000×g、室 温 で 5 分 間 遠 心 する。 14. 水 溶 液 部 分 を新 しい遠 心 チューブに回 収 する。
29 15. 約 400μl の上 清 に 40μl の 3M 酢 酸 ナトリウムと冷 99.5%エタノール 1ml を 加 え、2~3 分 間 混 和 する。 16. 12,000×g、室 温 で 15~20 分 間 遠 心 する。 17. 上 清 を捨 て、冷 70%エタノールを 1ml 加 え、2~3 回 遠 心 チューブを転 倒 ・ 混 和 する注 6。 18. 12,000×g、室 温 で 5 分 間 遠 心 する。 19. 上 清 を捨 て、再 び冷 99.5%エタノール 1ml を加 え 2~3 回 遠 心 チューブを 転 倒 する。 20. 12,000×g、室 温 で 5 分 間 遠 心 する。 21. 上 清 を捨 て、さらに 3,000rpm 程 度 で数 秒 、遠 心 する。 22. 管 底 に残 ったエタノールを除 き沈 殿 を自 然 乾 燥 させる注 7。 23. 100μl の TE バッファーを加 え、沈 殿 を溶 かす。 24. ‐20℃で保 存 する。 注1 オイ ルを滴 下 後 3,000rpm程 度 で数 秒 遠 心 し管 壁 のオイルを落 とす。オイルで シールすることで水 分 の気 化 を防 ぎ、DNA により PCR チューブ内 が汚 染 される ことを防 ぐ。 注2 加 熱 時 は内 圧 の上 昇 で必 ずフタは開 くので、固 定 して開 かないようにする。 注3 有 機 溶 媒 を 混 ぜ る と 直 ち に 白 濁 す る が 、 水 層 と す ぐ に 分 離 し て し ま う の で 、 全 体 的 に白 濁 が維 持 されるように遠 心 チューブを 1 秒 毎 程 度 に転 倒 する。3 分 間 ほど続 ける。 注4 上 か ら ゆ っ く り と 吸 引 ・ 回 収 し 、 界 面 付 近 の 浮 遊 物 を 回 収 し な い よ う に 注 意 す る。 注5 初 めの数 秒 間 強 くチューブを振 盪 する。その後 緩 やかに 2 分 間 ほど転 倒 混 和 を続 ける。 注6 上 清 は ピ ペ ッ ト で 除 去 す る 。 チ ュ ー ブ の 底 ま で 徹 底 的 に エ タ ノ ー ル を 除 去 す る 必 要 はない。50μl ほど残 して 70%エタノールを加 える。 注7 沈 殿 を取 らないように気 をつけて、エタノールは 10μl ほど残 しても問 題 ない。む しろ乾 燥 し すぎに注 意 する。