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Table of Contents 1 はじめに 総則 本ガイドラインの目的 本ガイドラインの構成 本ガイドラインの適用範囲 本ガイドライン適用の前提条件 想定される本ガイドラインの活用者 本ドキ

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(1)

半導体ウェーハ加工プロセスの工程を

適正な状態に維持・管理するための

計測サンプリングに関するガイドライン

Guidelines for measurement sampling

properly to maintain and to manage

process of semiconductor wafer fabrication processes

Version 1.1

(2)

Table of Contents

1

はじめに...1

2

総則...2

2.1 本ガイドラインの目的...2 2.2 本ガイドラインの構成...2 2.3 本ガイドラインの適用範囲...2 2.4 本ガイドライン適用の前提条件...2 2.5 想定される本ガイドラインの活用者...2

3

本ドキュメントに関連する規格 ...3

4

計測サンプリング設計の基本的考え方...4

4.1 計測および計測サンプリングとは ...4 4.2 計測の目的...4 4.3 計測サンプリングの設計...4 4.4 計測サンプリング設計の基準となる情報 ...4 4.5 異常判定への対応...4 4.6 計測装置の管理...4

5

計測サンプリングに関する一般ガイドライン...5

5.1 抜き取り計測の前提条件 ...5 5.2 計測サンプリングの実行...5 5.3 検査ロットの設定...5 5.4 抜き取り方法の設計...5 5.5 サンプルサイズの設定 ...5 5.6 計測対象の決定...6 5.7 設計された抜き取り方法の検証と妥当性確認...6 5.8 抜き取り方法の合意形成 ...6 5.9 設計された抜き取り方法の運用開始後の評価...6

6

計測サンプリングに関する詳細ガイドライン...7

6.1 抜き取り計測の前提条件 ...7 6.2 母集団の考慮...7 6.3 検査ロットの設定...8 6.4 抜き取り方法の設計...9 6.5 サンプルサイズの設定 ...11 6.6 計測対象の決定...12 6.7 設計された抜き取り方法の検証と妥当性確認...13 6.8 抜き取り方法の合意形成 ...14 6.9 設計された抜き取り方法の運用開始後の評価...14

(3)

7

計測サンプリング導入手順例...15

7.1 計測サンプリングの目的と経緯の明確化( 4.1 節参照)...15 7.2 前提条件の確認...15 7.3 母集団の確認( 6.2 節参照)...16 7.4 検査ロットの設定( 6.3 節参照) ...16 7.5 必要な精度の決定...17 7.6 サンプリング法とサンプリング種類の決定...17 7.7 サンプルサイズの設定1) 6.4.1 節、 6.5 節参照) ...17 7.8 計測対象の決定( 6.6 節、 7.6.2 参照)...18 7.9 抜き取り時の計測結果判定のための基準値とルールの設定...18 7.10 抜き取り時の判定結果の取り扱い決定( 4.5 節参照) ...19 7.11 設計された抜き取り方法の検証と妥当性確認( 6.7 節参照) ...19 7.12 抜き取り方法の合意形成( 5.8 節参照)...19 7.13 計測の実施( 4.6 節、 7.2.3 節参照)...19 7.14 設計された抜き取り方法の運用開始後の評価 ( 6.9 節参照) ...20 7.15 コスト計算( 4.4 節参照)...20

8

参考文献...20

改訂履歴 版 日付 著者 Ver.1.0 2010.04.20 システム基盤技術プログラム Ver.1.1 2010.12.17 システム基盤技術プログラム

(4)

1 はじめに

半導体製品は、シリコン基板上に写真製版技術を何度も繰り返し用いることにより、トランジスタや配線等 の回路を立体的に形成してチップといわれる製品を1枚のウェーハ上に多数製造されたのち、チップごとに切 り分けられて個々の製品に組み立てることにより製造されている。 お客様に対して、半導体メーカは、設計された回路が定められた寿命の期間、論理設計通りに動作するこ とを製品の品質として保証している。このために半導体メーカは完成したチップに対して全チップ回路特性を 電気的にテストして、合格したものだけを出荷している(出荷検査における全数検査)。 近年、半導体製品の製造においては、上記の「出荷検査における回路動作特性の全数検査」だけでなく、 「工程を適正な状態に維持・管理する活動」に関しても顧客への説明の要求が強くなってきており、顧客によ る製造工場の見学・監査も頻繁に行われるようになってきている。 このような要求に呼応して、日本の半導体製品の製造では、品質重視と製造工程管理の両方の観点から 製造工程において多くの中間特性値の計測を導入してきた。 半導体製品の製造工程の一部であるウェーハ加工プロセスにおいても中間特性値の計測として、「ウェー ハ加工結果の計測」や「工程での加工調整量を算出するための計測」等、様々な計測を抜き取りにより実施 している。 本ガイドラインは工程管理担当者や工程処理条件決定担当者が工程の適正な状態を維持・管理するため に行う計測に関して、サンプルの抜き取りを合理的に行うための設計指針を示したものである。

(5)

2 総則

2.1 本ガイドラインの目的

本ガイドラインの目的は、工程の適正な状態を維持・管理するための中間特性値計測に関する抜き取り計 測の設計指針を示すことである。 本ガイドラインは、中間特性値の計測における適切な抜き取り方法を設計する際に関係者が講ずべき原 則的な措置を示したものであり、製造ラインの実態や多岐にわたる工程・品種等に則して抜き取り方法を設計 する際に積極的に活用されることを想定している。

2.2 本ガイドラインの構成

本ガイドラインでは、3 章で関連する規格、4 章ではガイドラインに含まれない計測サンプリング設計の基本 的考え方、5 章では計測サンプリングに関する一般ガイドライン、6 章では 5 章を補足する詳細内容、7 章で は実施中の計測に対し計測サンプリングを導入する際の手順例、8 章で参考文献を記す。

2.3 本ガイドラインの適用範囲

本ガイドラインは、半導体製品製造におけるウェーハ加工プロセスでの中間特性値の計測として実施され る「ウェーハ加工結果の計測」と「工程での加工調整量を算出するための計測」の抜き取り方法設計業務、抜 き取り方法見直しおよび変更業務に対して適用される。 本ガイドラインは、完成後のトランジスタ等の素子の電気特性値計測および、ウェーハ状態およびアッセン ブリ工程以降の製品チップ個々に対して行われる回路動作特性の検査業務には適用されない。

2.4 本ガイドライン適用の前提条件

本ガイドラインは、半導体製品の回路動作特性や素子の電気特性の計測が別途行われており、特に製品 チップの回路動作計測は全数検査を基本として運用されていることを前提としている。

2.5 想定される本ガイドラインの活用者

本ガイドラインは、計測の抜き取り方法設計業務における設計根拠、および設計手順や設計方法につい て示したものであり、抜き取り方法設計業務、抜き取り方法見直しおよび変更業務において積極的に活用さ れることを想定している。 具体的には、半導体製品製造に従事する者で、各社で呼称は異なる可能性はあるが、製品の設計者(規 格作成者)・プロセスエンジニア(計測技術適用者)・工程品質管理者(運用管理者)・製造担当者(計測作業 者)等が、本ガイドラインを参照することが望まれる。 また、半導体製品を購入する顧客の工場監査担当者等が本ガイドラインを参照することで、半導体ウェー ハ加工プロセスの工程の管理と制御のための中間特性値計測の抜き取り方法等を理解する一助となることが 期待される。

(6)

3 本ドキュメントに関連する規格

ISO/TS16949 :2002 自動車業界向けの品質マネジメントシステム規格 JIS Z 8101 :1999 統計-用語と記号-

JIS Z 8403 :1996 製品の品質特性-規格値の決め方通則 JIS Z 9008 :1957 計数連続生産型抜取検査

JIS Z 9015-1(ISO 2859-1) 第 1 部 :2006 ロット毎の検査に対する AQL 指数型抜取検査方式 JIS Z 9015-2(ISO 2859-2) 第 2 部 :1999 孤立ロット毎の検査に対する LQ 指数型抜取検査方式 JIS Z 9015-3(ISO 2859-3) 第 3 部 :1999 スキップロット抜取検査手順

(7)

4 計測サンプリング設計の基本的考え方

4.1 計測および計測サンプリングとは

本ガイドラインで扱う計測とは、膜厚、寸法、重ね合わせ、段差、欠陥検査、外観検査等、半導体ウェーハ 加工プロセスでの中間特性値を得ることを指す。 計測サンプリングとは、計測対象を抜き取りで抽出することである。

4.2 計測の目的

本ガイドラインで扱う計測に共通した最上位の目的は、工程の適正な状態を維持・管理することである。

4.3 計測サンプリングの設計

計測サンプリングは、計測を抜き取りで行っても工程を適正な状態に維持・管理できるように設計されなけ ればならない。 これにより、工程が異常となったときに、それを見逃さない管理のもとで生産されていることになる。反対に 工程に異常があったときに、異常を検出することである。これにより、異常が検出されない場合には、製品は 管理された工程のもとで生産されていることになる。

4.4 計測サンプリング設計の基準となる情報

計測サンプリング設計の基準として、製造工程中の基準値および、実力を示す統計量(平均値、メディアン、 標準偏差、レンジ、1/4~3/4 レンジ、歪度と尖度等)を使用する場合がある。 計測サンプリング設計を行うのに「技術的情報」「経験的に得られたパフォーマンス情報」およびサンプル から得られた「統計的な情報」等に基づき、コストダウンを図ったサンプリング条件を設計することが効果的で ある。

4.5 異常判定への対応

計測サンプリングを適用して、異常が判定された場合には、もれなく対応がとられることを確実にするシステ ムの構築が必要である。

4.6 計測装置の管理

計測装置は、管理されていることが必要である。

ISO/TS16949 の MSA(Measurement System Analysis)では、計測結果に存在する計測誤差の影響を解 析するため、統計的調査を実施することを要求している。

(8)

5 計測サンプリングに関する一般ガイドライン

5.1 抜き取り計測の前提条件

抜き取り計測の前提となる条件は、「工程が管理された状態である」ことである。工程を管理するとは、工程 の適切なパラメータを監視し、必要な制御等を行うことをいう。この工程の管理の結果、結果が安定した母集 団を継続的に形成するならばこれを管理された工程という。

5.2 計測サンプリングの実行

半導体ウェーハ加工プロセスにおいて工程が管理された状態にあるとき、形成された母集団を考慮して、 計測対象を抜き取る方法を設計し、計測サンプリングを実行することができる。

5.3 検査ロットの設定

ロットとは「等しい条件下で生産された品物 又は 等しい条件で生産されたと思われる品物の集まり」(JIS Z 8101-2)と定義されており、この定義に従って集められた検査対象から検査ロットを作ることが推奨される。 生産中に別の検査対象の生産等により、当該検査対象の生産に中断があった場合でも適切に工程が設 定され、上記の条件が満たされる場合にはそれらを集めて検査ロットを作ることができる。

5.4 抜き取り方法の設計

計測を検査ロットからの抜き取りで行う場合の方法は、製品および当該工程の特徴を把握した上で、目的 に合った手法を選択し、半導体メーカ自身で設計しなければならない。その際、設計の考え方や抜き取り方 法について ISO 規格や JIS 等を参考にすることができる。

5.5 サンプルサイズの設定

サンプルサイズ(サンプルの大きさ)は、検査ロットから取得するデータ数である。 検査ロットから抜き取るサンプルサイズは、工程のパフォーマンスを基に検査特性およびプロセス制御精度 を考慮して、必要な精度を確保する観点で決めることが望ましい。 したがって、サンプルサイズは工程の能力・同一検査対象の生産量等に応じて変わりうる。工程が安定し、 差が小さくかつ品質が良好であるならば、サンプルサイズを小さくすることが可能である。一方安定度が疑わ れる場合はサンプルサイズを大きくすることが必要である。

(9)

5.

5.6 計測対象の決定

サンプリング理論では、データはランダムでサンプリングして測定することが原則であり、サンプリングの種 類を選択し、サンプルサイズに合う数の計測対象を選ぶことになる。サンプリングの種類は JIS 等で決められ たものを使うことが一般的である。 半導体ウェーハ加工プロセスにおいては、製品特性、デバイス特性、プロセス特性、工程の能力等、様々 な状況や条件等に基づいて計測ポイントを決定することが必要となる。 5節のガイドラインに対応させ、必要な精度を確保する観点で、半導体製造メーカ自身で計測対象を決定 することが望ましい。

5.7 設計された抜き取り方法の検証と妥当性確認

設計された抜き取り方法は、いくつかの判断基準に基づいて事前に検証および妥当性を確認されることが 望ましい。

5.8 抜き取り方法の合意形成

設計された抜き取り方法は、導入前に関係者間で合意されていることが必要である。関係者とは、製品の 設計者(規格作成者)・プロセスエンジニア(計測技術適用者)・工程品質管理者(運用管理者)・製造担当者 (計測作業者)等、本ガイドラインの活用者のことである。

5.9 設計された抜き取り方法の運用開始後の評価

設計された抜き取り方法は、いくつかの判断基準に基づいて、運用開始後も定期的に評価されるべきであ る。 その結果、判断基準を満足していることを確認できれば、その方法はそのまま維持、継続することができる。 一方、運用されている抜き取り方法がこれらの判断基準を満足しなくなれば、その方法の見直しを行うべきで ある。 検査対象に変更がなされた場合には、その時点で新たな設定条件や特性に基づいて抜き取り方法を見 直すことが望ましい。

(10)

6 計測サンプリングに関する詳細ガイドライン

6.1 抜き取り計測の前提条件

以下、「5.1 抜き取り計測の前提条件」における「工程を管理する」に関し詳細を記す。 工程の管理には、生産の基本要素である4M(Man/Machine/Material/Method)について必要な内容が定 まっている状態に加え、必要に応じて以下のような管理活動の実行が含まれる。 5.1 抜き取り計測の前提条件 抜き取り計測の前提となる条件は、「工程が管理された状態である」ことである。工程を管理すると は、工程の適切なパラメータを監視し、必要な制御等を行うことをいう。この工程の管理の結果、結果 が安定した母集団を継続的に形成するならばこれを管理された工程という。 ① 材料特性の事前情報および前の工程での中間品質の計測結果 (膜厚、寸法、重ね合わせ、段差、欠陥検査、外観検査等)、作業環境(気圧等)により後の工程の パラメータを事前に調整するフィードフォワード ② 工程でのパラメータや中間品質の計測結果によって当該工程パラメータを調整するフィードバック ③ 中間品質の計測結果に基づいた製品および工程への処置(製品廃棄、装置停止等) ④ 装置のセンサー・計器類の計測値を用いた適切な装置監視

6.2 母集団の考慮

以下、「5.2 計測サンプリングの実行」における「母集団を考慮する」に関し詳細を記す。 母集団とは「考察の対象となる特性を持つすべてのものの集団」(JIS Z 8101-1)とされている。このことから 考察の対象となる特性が何であるかをはっきりさせておく必要がある。 半導体ウェーハ加工プロセスにおいては、考察の対象となる特性は加工出来栄えを指すと考えられる。し たがって、考察の対象は加工工程単位で異なり、特性も加工工程ごとに異なる。 本ガイドラインでは、加工出来栄えの計測を半導体製品の電気的な動作特性の計測と区別するために、 「中間特性値計測」と表現している。 半導体ウェーハ加工プロセスの中間特性値計測の母集団は上記より加工工程単位で異なり、計測すべき 特性も加工工程ごとに異なる。半導体ウェーハ加工プロセスの中間特性値計測の母集団は、それぞれの工 程の処理の特徴と計測の目的を考慮して半導体メーカ自身で決めることが望ましい。 例えば、処理条件が特徴の主要因である工程と、回路パターンレイアウトが特徴の主要因である工程と、 テクノロジノードが特徴の主要因である工程では、それぞれ異なる特徴を有する可能性があるので、工程ごと に考察の対象となる特性を決め、計測の母集団を設定する方法が考えられる。また半導体ウェーハ加工プロ セスの中間特性値計測は工程の監視を目的としたものと工程の制御を目的としたものがあり、必要な場合は 母集団を分けて設定することができる。 5.2 計測サンプリングの実行 半導体ウェーハ加工プロセスにおいて工程が管理された状態にあるとき、形成された母集団を考 慮して、計測対象を抜き取る方法を設計し、計測サンプリングを実行することができる。

(11)

6.3 検査ロットの設定

以下、「5.3 検査ロットの設定」に関し詳細を記す。 検査ロットの設定においては、検査対象となる「等しい条件下で生産された品物 又は 等しい条件で生産 されたと思われる品物の集まり」を半導体メーカ自身であらかじめ決めておく必要がある。検査対象の中から 検査ロットを設定する。検査ロットの設定根拠について、裏づけとなる理論や実績を基にした資料を残してお くことが望ましい。 一般に、半導体ウェーハ加工プロセスにおいては、製品はウェーハ上で複数個同時に作成される。またウ ェーハを複数枚集めてキャリアに入れて搬送単位とし搬送ロットを形成している。ウェーハ加工はこのキャリア 単位で装置に仕掛けられるので、加工ロットと認識されることが多い上、加工ロットを検査ロットとすることが簡 易的に行われている。しかし、JIS の定義に従えば、等しい条件下で生産されたと思われる品物を集めて検査 ロットを作ることは、必ずしも装置へ仕掛けた搬送ロットや加工ロットごとに検査ロットを設定することを意味して いない。 例えば、等しい条件下で生産された又は等しい条件で生産されたと思われる検査対象の中から、複数の 加工ロットを集めて検査ロットとし、検査ロットから抜き取ったサンプルの結果をそれぞれの加工ロットのデータ として使用できる。 検査ロットを複数の加工ロットから構成した場合は、検査ロットの結果が明らかになるまで構成している加工 ロットが処置可能な範囲に保持されることが必要である。 5.3 検査ロットの設定 ロットとは「等しい条件下で生産された品物 又は 等しい条件で生産されたと思われる品物の集 まり」(JIS Z 8101-2)と定義されており、この定義に従って集められた検査対象から検査ロットを作るこ とが推奨される。 生産中に別の検査対象の生産等により、当該検査対象の生産に中断があった場合でも適切に工 程が設定され、上記の条件が満たされる場合にはそれらを集めて検査ロットを作ることができる。

(12)

6.4 抜き取り方法の設計

本節では、半導体ウェーハ加工プロセスの特徴を考慮した抜き取り方法について詳細に記す。 5.4 抜き取り方法の設計 計測を検査ロットからの抜き取りで行う場合の方法は、製品および当該工程の特徴を把握した上 で、目的に合った手法を選択し、半導体製造メーカ自身で設計しなければならない。その際、設計の 考え方や抜き取り方法について ISO 規格や JIS 等を参考にすることができる。

6.4.1 サンプリング法

1)

(ランダムサンプリングと有意サンプリング)

一般にサンプリング法を大きく分類すると、ランダムサンプリングと有意サンプリングに分けられる。 ランダムサンプリングとは、「母集団を構成している単位体・単位量等がいずれも同じような確率でサンプル 中に入るようにサンプリングすること」と定義されており、どの対象が抜き取られやすい、あるいは抜き取られに くいというクセのない抜き取り方である。JIS や ISO の抜取検査の規格は、ランダムサンプリングを前提としてい る。(例外としては系統サンプリング:Dodge の CSP-1 を基にした JIS Z 9008 がある) 有意サンプリングとは、「確率が同じとは言えないようなサンプリング」と定義されており、やむを得ず有意サ ンプリングとなる場合と意図的に有意サンプリングにしている場合がある。 前者の場合の例としては、ランダムサンプリングを意図しているのだが、乱数表・乱数サイを使わずに適当 にサンプリングしたため、ランダムサンプリングにならないもの(Chunk(チャンク)と呼ばれている)や、等間隔 にサンプリングする系統サンプリングがあり、ランダムサンプリングと区別している。工場等におけるサンプリン グではこの方法が良く使われており、できるだけランダムサンプリングに近づくように努力することが望ましい。 ただし、工程が安定して製品のばらつきがランダムな誤差だけであれば、サンプルを等間隔で取ったとしても サンプルの結果はランダムサンプリングとみなすことができる。 一方、後者の場合として、工程が安定しておりさらに母集団の性質がよくわかっており、技術的理論や経 験的知識から代表と見られるサンプルが得られる場合には、意図的に有意サンプリングをすることで目的に 合った結果を得ることができる。例えば、プレス加工時の初物検査(技術的情報等からランダムにサンプンン グせず、意図的に初物数個を検査する)等がある。この方法では、サンプリング誤差を客観的に評価すること が不可能であり、方法を誤ると、調査する人の主観が入り易くなり、サンプルサイズ(サンプルの大きさ)を大き くしても代表性を高めることにならないという欠点を持っており、実施にあったってはこれらのことを十分に吟 味する必要がある。

(13)

6.4.2 階層サンプリング

半導体ウェーハ加工プロセスの中間特性値計測においては、設定された検査ロットから計測対象を抜き取 る際に、加工工程の特徴として装置の構造を考慮することが必要な場合がある。例えば、装置の種類ごとに その構造の特徴から加工結果に決まった傾向がある場合には、加工工程の特徴として偶然変動以外の加工 ばらつきが製品の中間特性値に対して存在することになる。このような、加工の特徴に対して決まった傾向に 関する技術的理論や経験的知識等があり、代表と見られるサンプルを狙って取った方が少ないサンプルで 目的に合った結果を得ることができるのであれば、その特徴を反映した抜き取りを設定することが望ましい。 決まった傾向が、ロット間・ウェーハ間・ウェーハ面内で個別に存在する場合には、必要に応じて階層分け を行い、階層別にその特徴を反映したサンプリング法を設定することが望ましい。半導体ウェーハ加工プロセ スでは、この方法がとられることが多い。 階層分けを行った場合には、設定根拠について、裏づけとなる理論や実績を基にした資料を残しておくこ とが望ましい。

6.4.3 抜き取り方法の設計

半導体ウェーハ加工プロセスにおいて、処理手順・加工特性に関して蓄積された技術的理論や経験的知 識を利用して抜き取り方法を設計する場合は、蓄積された技術的理論や経験的知識等を所有する半導体メ ーカ自身で設計しなければならない。この際必要に応じて、6.4.1節と6.4.2節を組み合わせて多段サンプリン グを設計することができる。 設計根拠については、裏づけとなる理論や実績を基にした資料を残しておくことが望ましい。 例えば、検査ロットから加工ロット単位でサンプリングをする際には系統サンプリングを用い、ロット内のウェ ーハ選択とウェーハ面内の計測箇所選択には技術的理論や経験的知識等から定点観測する有意サンプリ ングを用いる等がある。

(14)

6.5 サンプルサイズの設定

以下、「5.5 サンプルサイズの設定」に関し詳細を記す。 得たい情報の精度は、計測目的ごとに異なるので、目的に応じてサンプルサイズを決めることが望ましい。 サンプルサイズ(サンプルの大きさ)は、計測によって得られるサンプルからの情報(例えば、平均値等)の精 度に影響を与えるが、サンプリング法(ランダムサンプリング、有意サンプリング)も影響を与える可能性がある ことに留意すべきである。 ランダムサンプリングの場合はサンプルサイズを大きくすれば、それだけ母集団の姿を推定する精度が向 上するが、有意サンプリングは、6.4.1節に「サンプルサイズ(サンプルの大きさ)を大きくしても代表性を高める ことにならないという欠点を持っており、実施にあったってはこれらのことを十分に吟味する必要がある」と示し たとおり、サンプルサイズを大きくすることが必ずしも直接的な効果を生まない。したがって、サンプルサイズは サンプリング法を考慮して設定されることが望ましい。 特に有意サンプリングの場合には、技術的理論や経験的知識から、代表と見られるサンプルを得るために 必要なサンプルサイズを決定すべきで、むやみにサンプルサイズを大きくすることは望ましくない。 5.5 サンプルサイズの設定 サンプルサイズ(サンプルの大きさ)は、検査ロットから取得するデータ数である。 検査ロットから抜き取るサンプルサイズは、工程のパフォーマンスを基に検査特性およびプロセス 制御精度を考慮して、必要な精度を確保する観点で決めることが望ましい。 したがって、サンプルサイズは工程の能力・同一検査対象の生産量等に応じて変わりうる。工程が 安定し、差が小さくかつ品質が良好であるならば、サンプルサイズを小さくすることが可能である。一 方安定度が疑われる場合はサンプルサイズを大きくすることが必要である。

(15)

6.6 計測対象の決定

以下、「5.6 計測対象の決定」に関し詳細を記す。 半導体ウェーハ加工プロセスにおいてサンプルサイズに合う数の計測対象を決定する際に、6.4節記載の 階層サンプリングを用いる場合、検査ロットからの抜き取りは「加工ロットの選定」「ウェーハの選定」「面内計測 箇所の選定」の 3 段階でサンプルサイズを配分することができる。 サンプルサイズ=「加工ロット選定数」×「加工ロット内から抜き取るウェーハ枚数」×「面内計測箇所数」と なる。 「加工ロットの選定」は通常全ロットが対象(層別サンプリングに相当)となるが、工程が安定し加工ロットごと の差が小さくかつ品質が良好であるならば、サンプルサイズを小さくする方法として、スキップロットの考え方を 導入し、計測しない加工ロットを選定するサンプリング種類を選ぶことが可能である(運用上は計測する加工 ロットを選定するサンプリング種類を選ぶこととなる)。逆に、スキップロットをやめることはサンプルサイズを大 きくする(元に戻す)ことを指す。 このスキップロットによるサンプルの選定は「スキップロット抜取検査手順」(JIS Z 9015-3)の考え方を用い れば、ランダムサンプリングが通常であるが、計測しないロットの連続回数を一定の数で抑えるために、周期 的な選定方法として系統サンプリングをとることができる。 「ウェーハの選定」、「面内計測箇所の選定」については、サンプルサイズに合うようにウェーハの抜き取り 枚数と面内計測箇所数に必要な精度を確保する観点で配分することが望ましい。スキップロットによって選択 するロット数を減らした場合、サンプルサイズを保持するために「ウェーハの選定」、「面内計測箇所の選定」 で調整することも可能である。ランダムサンプリングも考えられるが、技術的に、目的に合った特定箇所を指定 することもあり得る。これを行うのは、システマティックな分布傾向がわかっており、意図的に特定の箇所を計 測する場合と、半導体ウェーハ加工プロセスの搬送装置、計測装置等の制約から、計測対象が限定される場 合がある。 これらを行う場合、裏づけとなる理論や実績を基にした資料を残しておくことが望ましい。 5.6 計測対象の決定 サンプリング理論では、データはランダムでサンプリングして測定することが原則であり、サンプリン グの種類を選択し、サンプルサイズに合う数の計測対象を選ぶことになる。サンプリングの種類は JIS 等で決められたものを使うことが一般的である。 半導体ウェーハ加工プロセスにおいては、製品特性、デバイス特性、プロセス特性、工程の能力 等、様々な状況や条件等に基づいて計測ポイントを決定することが必要となる。 5.5 節のガイドラインに対応させ、必要な精度を確保する観点で、半導体製造メーカ自身で計測対 象を決定することが望ましい。

(16)

6.7 設計された抜き取り方法の検証と妥当性確認

以下「5.7 設計された抜き取り方法の検証と妥当性確認」における「重点」および、チェックリスト例を記す。 検証および妥当性確認の重点には、「抜き取り計測にて工程を適正な状態に維持・管理できるか」,「計測 目的に見合うか」,「設計された抜き取り方法が妥当であるか」の3点がある。 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構、食品総合研究所による「食品のサンプリングに関す るガイダンス」6)にて提示されているチェックリストを参考に作成したチェックリスト例を以下に示す。 5.7 設計された抜き取り方法の検証と妥当性確認 設計された抜き取り方法は、いくつかの判断基準に基づいて事前に検証および妥当性を確認され ることが望ましい。 <チェックリスト例> 1. 計測結果はどの工程の加工結果を反映しているか、明確ですか。 2. 計測目的は明確になっていますか。(監視目的・制御目的・両方) 3. サンプリングする母集団は明確になっていますか — 母集団はそれぞれの工程ごとに処理の特徴を考慮して決定されましたか。 — 計測目的を考慮に加えましたか。 4. 検査ロットの設定は適切ですか。 — 同一検査ロットに含むことができる「等しい条件」を決めましたか。 — 等しい条件で生産したと思われる期間やロット数の条件を決めていますか。 — 設計された検査ロットの大きさに対して最大許容計測間隔等を考慮しましたか。 5. サンプルサイズの設定および計測対象の決定は妥当ですか。 — サンプリングは技術的理論や経験的知識を活用し、目的に合った結果を得るための代表と 見られるサンプルが得られるように意図的な有意サンプリングをしていますか。 9 指定に対して十分な技術的裏づけのある箇所を設定していますか。 9 得られた結果の解析方法は適切ですか。 — 有意サンプリングをしない場合、サンプリング誤差も考慮した十分なサンプルサイズですか。 9 ばらつきが分かっており目的精度を満たすサンプルサイズが計算されていますか。 — サンプルサイズに合わせて計測対象を決定する際に、半導体ウェーハ加工プロセスに特徴 的な階層について考慮しましたか。 — サンプリングの種類は妥当ですか。 9 例えば、系統サンプリング、単純サンプリング、層別サンプリング、多段サンプリング、 層の設定、段の設定等。 — 設定した抜き取り方法は、検査特性の要求や最大許容計測間隔等を満たしていますか。 6. 計測目的に必要な精度は決まっていますか。 — 事前に計測誤差情報はありますか。特に計測データ範囲での誤差の大きさは分かっていま すか。 — 必要な精度を満たす理論的サンプルサイズを検討しましたか。 7. その他 — 計測費用は予算内に収まりますか。 — 生産計画に悪影響を与えませんか。 — 説明に必要な資料・根拠は準備できていますか。

(17)

設計された抜き取り方法の運用開始後の評価では、工程能力(母集団の姿が変わることによる影響も含 む g Ch した

6.8 抜き取り方法の合意形成

以下、「5.8 抜き取り方法の合意形成」に関し詳細を記す。 設計された抜き取り方法の合意形成のためには、設計された計測サンプリングがガイドライン活用者それ ぞれの目的に対して最適化されていることが望ましい。 例えば、技術的データの収集目的のためだけに過剰な計測を行うことは、生産コストの観点からは望ましく ない。 計測に共通した最上位の目的は、工程の適正な状態を維持・管理することであることが基本的考え方であ ることに留意して合意形成がなされるべきである。 5.8 抜き取り方法の合意形成 設計された抜き取り方法は、導入前に関係者間で合意されていることが必要である。 関係者とは、製品の設計者(規格作成者)・プロセスエンジニア(計測技術適用者)・工程品質管 理者(運用管理者)・製造担当者(計測作業者)等、本ガイドラインの活用者のことである。

6.9 設計された抜き取り方法の運用開始後の評価

以下「5.9 設計された抜き取り方法の運用開始後の評価」における指標候補および、抜き取り方法を見直 した際の確認方法について記す。 )、製品歩留り、製品品質(電気特性)、装置品質、検査間隔等が判定における指標の候補となる。 これら指標に対する評価の結果や生産量の変化等から抜き取り方法を見直した場合、OC(Operatin aracteristic)曲線により検査特性がどう変わったかを確認したり、最大許容検査間隔を満たすかを確認 りすることを推奨する。 5.9 設計された抜き取り方法の運用開始後の評価 設計された抜き取り方法は、いくつかの判断基準に基づいて運用開始後も定期的に評価されるべ きである。 その結果、判断基準を満足していることを確認できれば、その方法はそのまま維持、継続すること ができる。一方、運用されている抜き取り方法がこれらの判断基準を満足しなければ、その方法の見 直しを行うべきである。 検査対象に変更がなされた場合には、その時点で新たな設定条件や特性に基づいてその方法を 見直すことが望ましい。

(18)

7 計測サンプリング導入手順例

実施中の計測に対し、計測サンプリングを導入する際の手順例を示す。

7.1 計測サンプリングの目的と経緯の明確化(4.1節参照)

計測サンプリングに移行する(計測サンプリングを採用する)狙いと検討経緯を記した資料を残しておく。 例えば、「“全加工ロットに対して検査をやっていたが、状態(結果)が安定してきたのに相変わらず全数デ ータを取っているのは無駄であり、コスト・生産能力の足を引っ張っているのではないか”とか“既に知見が得 られたので、今後は合理的な群(JIS Z8101-2)を設定し、検査ロットからのサンプルで管理することにした”の ニーズに応えるため、根拠あるサンプルサイズと抜き取りの方法を設定した。」等である。

7.2 前提条件の確認

7.2.1 計測の導入目的の確認(4.2節参照)

対象となる計測の導入目的を確認する。目的には次のものが考えられる。 — 計測結果で工程パラメータを調整するフィードバックを行う。 — 工程の監視や工程の制御を行う。 — 平均値、ばらつきを知る(推測:具体的には、点推定、区間推定をすることになる)。 — 工程の変化を検出する(検定:具体的には管理図を書くことになる)。 — 最悪値を知る(具体的には規格はずれがないことを少数のサンプルで判断する)。

7.2.2 計測の導入経緯の確認

計測の導入経緯を確認する。導入の理由が取り除かれていれば、計測を止める検討が可能となる。 計測を継続することになれば、計測サンプリングの導入を検討する。

7.2.3 計測項目の確認(4.1節参照)

対象となる計測項目を確認する。 計測項目として、4.1節記載の膜厚、寸法、重ね合わせ、段差、欠陥検査、外観検査等、半導体ウェーハ 加工プロセスの中間特性値がある。 計測の最上位の目的は工程の適正な状態の維持・管理であり、そのことが考慮され設定された計測項目 になっているか確認する。

7.2.4 計測方法の確認(4.1節参照)

対象となる計測項目に対し、使用計測装置や計測に要する時間等が考慮され、計測の目的にあった計測 方法が採用されていることを確認する。 例えば、「金属膜の膜厚はシート抵抗で計測する」、「積層膜の膜厚を計測する場合は単層膜を計測する 計測技術とは違う方法を採用する」、「配線幅は細い為 SEM(Scanning Electron Microscope)で計測する」等 である。

(19)

7.2.5 計測範囲・誤差情報の確認(4.6節参照)

計測目的にあった計測データを得るためには、計測技術や計測装置が持つ計測可能範囲と、加工目標 値周辺での計測誤差をあらかじめ確認しておく必要がある。 例えば、計測装置の仕様(スペック)や、MSA 等を用いて計測範囲・誤差情報を確認する方法がある。

7.2.6 計測結果の判定基準の確認(4.3節参照)

対象となる計測項目に対し設定されている、計測結果の判定基準を確認する。 例えば、製品設計で決まる基準としては、中間品質の機能限界(中間品質の値によって、最終製品の特 性値がその基準を超える限界)や、実力から決まる基準としては「±3σ」や、制御目的を達成するための基 準としては「APC が精度よく機能する範囲」がある。 判定基準が計測結果の使い方に応じて設定され、工程が異常となったときに、それを見逃さない管理がで きることを確認しておく。

7.2.7 工程が管理されていることの確認(6.1節参照)

工程が管理された状態であることを確認する。 例えば、生産の基本要素である4M(Man/Machine/Material/Method)について必要な内容が定まっている 状態であることおよび、それに加え必要に応じて以下のような管理活動が実行されていることを確認する。 ① 材料特性の事前情報および前の工程での中間品質の計測結果(膜厚、寸法、重ね合わせ、段 差、欠陥検査、外観検査等)、作業環境(気圧等)により後の工程のパラメータを調整するフ ィードフォワード ② 工程でのパラメータや中間品質の計測結果によって当該工程パラメータを調整するフィード バック ③ 中間品質の計測結果に基づいた製品および工程に処置を行う判定 ④ 装置のセンサー・計器類の計測値を用いた適切な装置監視

7.2.8 現状データの分析(5.1節参照)

結果が安定した母集団を継続的に形成していることを確認する。

7.3 母集団の確認(6.2節参照)

それぞれの工程の処理の特徴と計測の目的が考慮された、実用的な母集団になっているか確認する。 例えば、「複数の生産ロットを同時に、あるいは同一条件で処理され同一処理とみなせる方法で加工が行 われる場合は同一母集団とする」等である。

7.4 検査ロットの設定(6.3節参照)

検査ロットを設定し、その設定根拠について裏づけとなる理論や実績を基にした資料を残しておく。 検査ロットとして、例えば、等しい条件下で生産された又は等しい条件で生産されたと思われる複数の加工 ロットの集まりと設定することができる。

(20)

7.5 必要な精度の決定

設定した検査ロットから抜き取りによって計測値を得るということは、全数に対してデータを取得しないという ことであるので、取得しなかったロットやウェーハや面内の位置に関しては、何らかの補完を行ったり、母集団 に対しては推定を行う必要がある。したがって、必要な補完値や推定値に対して、計測によって得たい情報 が要求している精度を決定する。

7.6 サンプリング法とサンプリング種類の決定

7.6.1 サンプリング法の決定(6.4.1参照)

目的に合うサンプリング法(ランダムサンプリング・有意サンプリング)を計測工程ごとに決定する。

7.6.2 サンプリング種類の決定(6.4.2節、6.4.3節参照)

サンプリング法としてランダムサンプリングを選択した場合、サンプリングの目的や、コスト、サンプリングする ための予備知識の有無から単純サンプリング、二段サンプリング、多段サンプリング、層別サンプリング、集落 サンプリング等サンプリング種類を決定する。 有意サンプリングを選択した場合、技術的理論や経験的知識から代表と見られるサンプルを意図的に抜き 取る。例えば有意サンプリングにおいて、決まった傾向が、ロット間・ウェーハ間・ウェーハ面内で個別に存在 する場合には、必要に応じて階層分けを行い、その場合、階層ごとに、抜き取りにするか全数計測にするか 決定する。抜き取りをする階層においては代表と見られるサンプルの候補を決定する。 階層分けを行った場合には、設定根拠について、裏づけとなる理論や実績を基にした資料を残しておく。

7.7 サンプルサイズの設定

1)

(6.4.1節、6.5節参照)

サンプルサイズ(サンプルの大きさ)を設定する。 例えば、ランダムサンプリングを選択した場合、要求精度から必要なサンプルサイズを計算する。 一方、有意サンプリングを選択した場合、代表と見られるサンプルを得られるために必要なサンプルサイズ を設定する。有意サンプリングは、6.4.1節にあるとおり、サンプリング誤差を客観的に評価することが不可能 であり、方法を誤ると、調査する人の主観が入り易くなり、サンプルサイズを大きくしても代表性を高めることに ならないという欠点を持っており、実施にあったってはこれらのことを十分に吟味する必要がある。サンプルサ イズの大きさが精度を向上させないので、必要な推定量の精度は技術的理論や経験的知識から決めた代表 と見られるサンプルの代表度に依存する。 なお、工程の安定がさらに確認された場合、サンプルサイズの縮小(スキップロット等)を検討することも可 能である。

(21)

7.

7.8 計測対象の決定(6.6節、7.6.2参照)

サンプリング種類にあわせて、サンプルサイズにあう数の計測対象を決定する。 例えば、ロット間・ウェーハ間・ウェーハ面内で階層分けを行い、階層別にサンプリング法を設定する場合、 検査ロットからの抜き取りは「加工ロットの選定」「ウェーハの選定」「面内計測箇所の選定」の 3 段階でサンプ ルサイズ(サンプルの大きさ)を配分する。サンプルサイズは以下関係式で表すことができる。 サンプルサイズ=「加工ロット選定数」×「加工ロット内から抜き取るウェーハ枚数」×「面内計測箇所数」 ランダムサンプリングの場合、サンプルサイズに合う数の計測対象を各階層のばらつきを考慮して配分す る。 有意サンプリングの場合、例えば、加工ロットは全数とし、「ウェーハの選定」、「面内計測箇所の選定」につ いては、サンプルサイズに合うようにウェーハの抜き取り枚数と面内計測箇所数に7.6.2節で決定したサンプ ルの候補から必要な精度を確保する観点で配分する。 これを行う場合、裏づけとなる理論、実績を基にした資料を残しておく。

7.9 抜き取り時の計測結果判定のための基準値とルールの設定

7.9.1 抜き取り時の計測結果の判定方法と必要設定内容(7.2.6参照)

2.6節で確認した基準に対し、計測サンプリングへ移行することの影響を考慮する必要がある。 計測結果の判定方法には、計測結果を判定基準値に照らして不具合の発生の可能性を判定する方法と、 計測結果を時系列に集めてその傾向から母集団の変化を推定する方法がある。 計測結果を判定基準値に照らして判定する場合、設計情報や統計的品質管理の考え方等を参考にして 判定基準値を設定する必要がある。 計測結果を時系列に集めてその傾向から母集団の変化を推定する場合、統計的品質管理の考え方等を 参考にして、傾向判定を行うルールを設定する必要がある。

7.9.2 判定基準値の設定

判定基準値には、いくつかの決め方がある。その中から工程ごとにどれかの決め方を使って中間品質の判 定基準を設定する。下記に判定基準値の決め方の例を示す。 — 要求品質に合わせて決める これには、設計値の許容する範囲等を基準値に使う方法がある。ここでいう設計値とは半導体 製品の回路特性を満たすための設計値をさしており、装置の加工バラツキの実力等とは独立し て決められるものである。 — 工程平均に基づいて決める これには、管理図の手法がある。ただし、半導体のウェーハプロセスの場合、有意サンプリン グを用いていることが多く取得した計測結果の平均値および標準偏差が母集団の平均値およ び標準偏差と異なる場合を考慮して、設定された基準値の第一種および第二種の過誤について 検証しておく。

(22)

4.

7.9.3 判定ルールの設定

母集団の変化を推定する場合、傾向判定を行うルールを設定する。 例えば、時系列に集めてその傾向から母集団の変化を推定する方法として JIS Z 9021 にはシューハート 管理図に対して8種類の判定ルールが示されている(ISO 8258 に準拠)。 JIS には「判定ルール適用の際には、工程固有の変動を考慮して決めることが望ましい」との注釈が書かれ ている。工程固有の変動の考慮とは、群内変動・群間変動の特性を知り、必要な判定ルールを用いることを 指している。

7.10 抜き取り時の判定結果の取り扱い決定(4.5節参照)

抜き取り時の判定結果の取り扱いとして以下を決定する。 移行前に行っていた判定結果の取り扱いとの整合性がとれるように、判定結果が計測の目的を満足した場 合・満足しなかった場合の各々の処置を決めておく。 サンプルサイズの縮小や拡大の条件や計測対象の変更条件等を満足した場合・満足しなかった場合の 各々の処置を決めておく。

7.11 設計された抜き取り方法の検証と妥当性確認(6.7節参照)

検証および妥当性確認の重点である「抜き取り計測にて工程を適正な状態に維持・管理できるか」、「計測 目的に見合うか」、「設計された抜き取り方法が妥当であるか」を例えば、6.7節記載の<チェックリスト例>等 を用いて確認する。

7.12 抜き取り方法の合意形成(5.8節参照)

計測サンプリング導入に対し5.8節記載の関係者と合意する。

7.13 計測の実施(4.6節、7.2.3節参照)

6節記載の管理された計測装置を用い、計測に適した計測環境にて、7.2.3節にて確認した計測項目に対 しサンプルを計測してデータを得る。そのデータをもとに検査ロットの合否を判定したり、工程での加工調整 量を算出し加工結果を制御する。 取得したデータはトレーサビリティ(検査ロットと加工ロットと計測値の対応づけ等)を考慮し保存する。 なお、実施にあたっては、計測スキルを醸成するため、計測方法・手順の明確化・文書化および、計測作 業者への教育や意識付けを行っておく。

(23)

7.14 設計された抜き取り方法の運用開始後の評価 (6.9節参照)

設計された抜き取り方法に対し、運用開始後、例えば6.9節記載の指標(工程能力(母集団の姿が変わる ことによる影響も含む)、製品歩留まり、製品品質(電気特性)、装置品質、検査間隔等)を用いて判定をおこ ない、抜き取り方法を評価する。 例えばランダムサンプリングの場合、工程のばらつきを確認し、サンプルサイズが要求精度を満たすか再 確認し、必要に応じてサンプルサイズを増減させる。また、これまで得られた工程や階層や箇所の情報から有 意サンプリングへ移行の必要性の判断を行う。 一方、有意サンプリングの場合、特別に指定以外の場所のデータを収集して指定箇所が妥当であることを 定期的に確認し、必要に応じて計測箇所の追加・変更を行う。 なお、抜き取り方法が妥当でない場合の再設計は、例えば6.3~6.6節に従い行う。

7.15 コスト計算(4.4節参照)

計測に必要とするコストあるいはリスク発生による損失が許容できる限界値以下かどうかを計算する。 例えば、JIS Z 8403 付属書1「製品の品質とコストとのバランスのとり方」がある。

8 参考文献

1)加藤洋一(1984):『サンプリングと抜き取り検査』,日本規格協会. 2)飯塚悦功(2009):『現代品質管理総論』,朝倉書店. 3)永田靖 (2009):『統計的品質管理』 ,朝倉書店. 4)仁科健 (2009):『統計的工程管理』 ,朝倉書店, 5)(社)日本品質管理学会(2009):『新版 品質保証ガイドブック』,日科技連出版社. 6)独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構: 『食品総合研究所による「食品のサンプリングに関するガイダンス」』, (http://www.nfri.affrc.go.jp/yakudachi/sampling/purpose.htm)

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