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2016年2月号コンテンツ
菅沼光弘氏インタビュー解説 文字起こし
00:00 こんにちは、リアルインサイトの中森です。本映像では2016 年 2 月号コンテン ツ菅沼光弘氏インタビューの解説をお届けいたします。菅沼氏インタビューの 解説を次の3 つに整理しました。1 つめが水爆実験の真実。2 つめが朝鮮半島統 一のシナリオ。3 つめが日本が取り組むべき緊急課題についてお届けいたします。 まず 1 つめ、水爆実験の真実ということなんですけれども、これは順番にまず 水爆実験の目的から見ていきたいと思います。それは北朝鮮政府の、金正恩の 声明文を見ていけばわかってくると菅沼氏はおっしゃっていました。その中で こういう風に書いてあるんです。自分の運命はもっぱら自力で守らなければな らないという鉄の真理。こういうのがあって、そしてそこで、我々の知恵、我々 の技術、我々の力に 100%依拠した自衛措置が必要であると声明文で言ってい るわけです。そうなるためには我が共和国は責任ある核保有国になる必要があ るということなんですね。ではなぜここまで自衛措置、責任ある核保有国とい うものにこだわるかというのは、真の平和と安全は、いかなる屈辱的な請託や 妥協的な会談のテーブルで成し遂げられない。これが声明文の中に書いてあり ます。これが意味するところは、つまり韓国に軍を展開する米国が話し合いに 応じないと。要はアメリカには妥協しないということなんですね。自分達は妥2014 Real Insight Inc. All rights reserved 本ドキュメントを無断転用、複写、転送することを禁じます。 2 協すればするほど、自分達の安全といったものが失われていくと。民族の独立 といったものが失われていくと。これは明白であるから話し合いではもうダメ だと。自分達が核保有国となって、ではそれをどうするのかというと、最終的 にはこのスライドの一番最後になるんですが、アメリカを交渉のテーブルにつ かせたいということなんです。アメリカの交渉のテーブル、何の交渉かという と、それは北朝鮮主導の朝鮮半島統一を達成するためなんですね。達成するた めに水爆実験を成功させ、最先端の核保有国となると。これが第一にあったと いうことなんですね。つまり核の小型化、水爆の開発を成功すれば後は潜水艦 の弾道ミサイル、SLBM を成功させれば基本的には相互確証破壊というものが 北朝鮮とアメリカの間で成立しますので、そうすることによって最終的にアメ リカを交渉のテーブルにつかせることができると。それが北朝鮮の今回の水爆 実験のひとつの狙いであったということなんですね。それでは次に、北朝鮮が 核技術、水爆を開発するレベルを高めていった経緯を簡単におさらいしたいと 思います。そもそも北朝鮮が核技術を持つようになったのは、終戦後日本の仁 科研究所の中の朝鮮人職員が、戦争が終わったので日本にいる必要がなくなっ た。そういった技術を持った人達が北朝鮮に帰ったと。そのまま自分の体と一 緒に核技術を持ち帰ったわけですよね。その持ち帰った核技術を旧ソ連でその 技術をさらに研鑽していった。そうすることによって核技術というものの開発 をどんどん進めていったというのが歴史的背景にあります。そういった意味で は北朝鮮が核技術、水爆の成功したかどうかは別として、水爆実験の発表まで いった。その発端としては日本の核技術があったわけです。それを大きく育て ていったのが旧ソ連であると。最大の貢献をしていったのは旧ソ連であると菅 沼先生はおっしゃっていました。そうした中で、冷戦が終わって1990 年代に核 開発の本格調査をアメリカが開始するわけです。 05:04 1980 年代から北朝鮮が核を開発しているという疑惑は持っていました。衛星写 真とかでわかっていたわけですね。そういった疑惑をもとに、本格調査を開始。 冷戦が終わった後、開始していったと。そういった時代の中で、決してイスラ エルはアメリカと敵対関係にあるわけではないわけですけれども、イスラエル はそういった中で北朝鮮に対してある取引を持ち込むわけですね。中東の核技 術の輸出をしないのであれば、それを禁止してくれるのであれば、水爆の開発 に協力しますよというバーターを持ちかけたと。北朝鮮はそれに応じたのであ
2014 Real Insight Inc. All rights reserved 本ドキュメントを無断転用、複写、転送することを禁じます。 3 ろうということなんですね。ただしかし、実態としてはイランに核技術・核開 発の協力をしていたということが今大体わかってきているわけですね。実際 2 月 7 日に発射した衛星と称するミサイルのカバーが、回収したカバーがイラン のロケットと酷似しているというのがわかっているわけです。そういった中で やはり北朝鮮はイランに対して核技術の開発の協力をしていたのではないかと いうことが固まってきているということなんですね。次に、このように水爆を 持つまでに至った北朝鮮があるんですが、その過程において、アメリカが本格 調査をして、中国に主導してもらって六者協議、六者会合とも言いますけれど も、そういう枠組みを作ったわけですよね。中国主導で、韓国、ロシア、アメ リカ、北朝鮮、日本。この六ヶ国によって、基本的には朝鮮半島の非核化。こ れを議論しましょうと。朝鮮半島を非核化するようにお互いの利害を調整しま しょうという枠組みを作ったわけですよね。その他にも、この六者協議では米 朝国交正常化、そして日朝国交正常化、あと経済・エネルギー協力、北東アジ アの平和・安全メカニズム、こういったものも話し合われていたわけです。し かし今回の北朝鮮の核保有によって、それはもう形骸化したことが明らかにな ったわけです。今後またこの六者協議をやろうとしても、目的は非核化という のは有り得ないわけですから、あとは如何にして IAEA、NPT に北朝鮮を引き 込むかという流れになってくるわけです。でもそれは本来の目的を達成できな いということは明らかですよね。こういった中にあって、この六者協議の枠組 みの中であって、それに関係ないフランスとかドイツ、イギリス、こういった ところが北朝鮮に対してアングラマネーを含む投資、開発。そういった緊密な 経済関係を結んでいると。こういった実態もわかっています。それではなぜ六 者会合、六者協議で朝鮮半島を非核化できなかったのかというのは、2 つ理由が あって、関係各国の利害が不一致。六者の中の利害が不一致したことがまずひ とつ。もう一つが投資・医療などの分野で緊密な関係を持つ欧州という存在が あるわけですね。別に北朝鮮としては、自分達が生きていくのに、応酬との緊 密な経済関係があれば政権はまず安泰であるということはわかっていると。国 としては疲弊していくかもしれないけれども、政権はまず安泰であるというの が、ひとつあるわけですよね。この2 つが意味することと言うのは、北朝鮮(朝 鮮半島)というのは、あらゆる国にとって、今も昔も地政学的・経済的に魅力 ある土地ということなんです。要は、北朝鮮(朝鮮半島)というのは、色んな 国が自国の影響下に置きたいと考えているわけですよね。ゆくゆく朝鮮半島が
2014 Real Insight Inc. All rights reserved 本ドキュメントを無断転用、複写、転送することを禁じます。 4 統一するのであれば、自分達の影響下で統一を達成したいということなんです。 アメリカ、あとは中国がその意志がはっきりとしているということなんですね。 またロシアはロシアで別の思惑があると。そういった中で、話し合いで決着が つくはずがないんですね。あまりにも利害が大きすぎて、話し合いで決着がつ くはずがない。そもそも六者協議といったものも、本来であれば朝鮮半島の非 核化というのがあったんですけれども、もともと六者、主にアメリカと中国が 自分達の影響下のもとに統一を達成しようとした思惑があるがゆえに、本来の 非核化というものは始めから達成はできなかったんですね。 10:28 これは当然の結果として今の六者協議の結果があるということなんです。では 朝鮮半島の統一といったものがいかにして進んでいくのかという、今後のシナ リオですね。これがインタビューであったと思いますので、それを簡単に整理 していきたいと思います。まず北朝鮮は統一に対してどのような構想を持って いるのか。どのような大義名分を持っているのかというと、朝鮮民族だけで統 一を達成したいと考えているわけですよね。そのための自衛のための核保有で あると明言しているわけです。一方韓国の方は、核を自前で持てない。アメリ カの核は持ち込まれていたとしても、核を自前で持てないということは、つま り自分達が主導して朝鮮半島を統一することはほぼできないわけですよね。ア メリカか中国に協力してもらって、その影響下に入って平和的統一を達成する しかないということなんですね。では、それぞれ北朝鮮は今どういう状況にあ るのか、関係各国とですね。というと、中国とは現在は相互不信に陥っている 状況であると見通しが立っていますよね。インタビューであった通り、北朝鮮 と中国の関係はおかしくなってきていると。日本へ入ってくる情報では中国が 北朝鮮をコントロールしているということになっているんですが、それはどう やら違うだろうと。おかしくなってきていると。どちらかというと、ロシアと 北朝鮮は昔から今に至っても、より緊密な経済・軍事関係を持っているという ことなんですね。さらに中国とロシアというのは、いずれ利害が対立してぶつ かることになるということを菅沼氏は予想しています。次に韓国ですけれども、 韓国はこの水爆実験があった時にはすでに中国と開かれていたホットライン、 これを活用しようしたんですけれどもうまく運用されなかったんですね。その 少し前、昨年末ですけれども、日本とはいきなり日韓慰安婦問題の合意に達し たと。こういった状況にあります。この日韓の合意については、日米韓で対中
2014 Real Insight Inc. All rights reserved 本ドキュメントを無断転用、複写、転送することを禁じます。 5 国の軍事的結束を固める狙いがあると菅沼氏はおっしゃっていました。現在の 統一に向けた北朝鮮と韓国の考え方、そして周囲の状況はこのようになってい ます。では北朝鮮と中国、この相互不信といったものは一体どこから来ている のかと申し上げますと、お互いの朝鮮半島をめぐる経済の協力体制のあり方な んですね。この北東アジアでどのような経済の協力体制を作っていくのか。経 済体制を作っていくのかというところで、まずこちらは中国の戦略なんですけ れども、中国は北東アジア、遼寧省とかあの辺り、北朝鮮と中国の国境沿いの 地域の中国側の方で、今開発を進めているわけです。ゆくゆくは朝鮮半島も自 分の経済圏に引き入れて、そこであくまで中国の利益になるように朝鮮半島と いうものを使っていきたいと考えているわけです。羅先経済特区といったもの が今、急速に投資が進み、そして開発が進んでいると。北朝鮮ですけれども、 羅先は。羅先経済特区も使いながら、あくまで中国の東北地域、ここに全ての 経済的な還流を帰結したいと考えているわけです。 15:08 一方北朝鮮は中国に全てを持っていかれるのはダメだというところですね。同 じくこのように、北東アジアで経済の協力体制を作っていきましょうという考 えは変わらないんですけれども、北朝鮮は中国に対して、ロシア、そしてこの 朝鮮半島、そして日本。こういった地域全体として経済的なつながりを強化し ていきたいと考えているわけです。そこはもちろん、日本もロシアも金政権、 金一族をコントロールしないと、干渉してこないという前提のもとなんですね。 そういった前提のもとに、このような考えをしていると。中国主導でこのよう な北東アジアの経済協力体制が作られてしまうと完全に金一族が、金政権が中 国のコントロール下に入ってしまうと。ゆくゆくは自分達が主導して統一を果 たしたいと、朝鮮半島の統一を果たしたいと考えるのであれば、もちろん如何 にして国の根幹となる経済を独立させるかということは普通考えますので、で はそこでできるだけ中国の影響を無くして、中国から離れて、自分達でちゃん と経済を作っていきたいと考えるのは、普通の主権国家としては普通のことで すよね。もちろん完全にバッサリ切るのではなくて、この中国北東部、東北部 の方で経済開発をしていくと。もちろんそこはそこで関係を持って行く。でも あくまで自分達が主体となって、ロシアと日本とも、こういう先進地域で経済 関係を結んでいくことが北朝鮮の国益になると考えているわけです。北東アジ アの経済の今後、どのように開発していくか、どのように投資を進めて、どの
2014 Real Insight Inc. All rights reserved 本ドキュメントを無断転用、複写、転送することを禁じます。 6 ようにお金をかけていくか、どのようにリターンをもらうかという考え方で中 国と北朝鮮というものは対立をしているということなんですね。ただこちらの 北東アジア地域経済協力体といった構想そのもの、戦略そのものは 2012 年に JETRO が調査したものですので、現在は少し変わっているかもしれませんが、 このような考えの相違があるということは明らかなんです。また話を少し戻し ますが、朴槿恵大統領、韓国は平和的統一を目指すと申し上げました。自分達 は核を持っていないから、そこで戦争をしたところで核を持っている国に1 対 1 で勝てるはずがない。それはわかっているので、アメリカか中国の影響下のも とで話し合いで、しかも自分達が主導になって統一を果たしたいと考えている。 これは可能性はゼロなんですね。何故かというと申し上げた通り、北朝鮮がア メリカもしくは中国の影響下のもとで統一を果たすことは絶対にしたくないか らですね。では話し合いによる統一が不可能であればあとは戦争による統一し かないですよと、菅沼先生はおっしゃっていました。それは核戦争なのか通常 兵器による絶対戦争なのかはわからないと。絶対戦争というのはお互いのどち らかが完全にせん滅させられるまで行う戦争ですよね。いずれにせよ究極的に はアメリカの軍事力によって北朝鮮が崩壊するでしょうとおっしゃっていまし た。しかし、このような結果は誰も望みませんと。当然日本も無関係ではいら れないわけですよね。日本の自衛隊もここに参加していくことになりますと。 そして核戦争になった場合は、日本は核戦争に対して準備をしておかなければ、 悲惨な結果が待っているということなんです。このような結果そのものは誰も 望まないということなんですね。核戦争になった場合というものを想定して、 日本も核を持とうよという話になってくると思うんですが。日本にはこういう 議論はないんですけれども、今韓国も何とかして米軍を引き止めているという 状況なんですが。日本もあるひとつのケースとして核を持ったとしても、そう いった場合、じゃあ米軍が日本にはもう米軍はいらないねと言って撤退すると。 20:11 こういうことがあった場合、では日本はどういう判断をするのかというところ ですよね。米軍に代わるような通常戦力というものを用意しておかないといけ ないということは当然の結果として見えてくるわけですよね。核戦争というの は滅多なことじゃ起きないわけですよね。核戦争をした場合、ほとんどの街、 国家としての機能がお互い失われますので、そういう選択は基本的に国家はし ないと。普通にまず外交の諍いで、その結果として戦争になってしまうのであ
2014 Real Insight Inc. All rights reserved 本ドキュメントを無断転用、複写、転送することを禁じます。 7 れば、通常兵器でまずは戦闘をするということになると。日本は核を持ちまし た、米軍は撤退しました。じゃあ日本の通常戦力はどの程度のものなんですか ということは、もっとここは議論しておかなければならないことなんですね。 そうすることによって、アメリカとの関係といったものも、もうちょっと見直 すことができると。これはひとつの考え方なんですけれども、日本は考えてい かないといけないんですね。菅沼先生もおっしゃっていましたけれども、核戦 争に対する準備はできているんですかということ。それはつまり通常兵器によ る戦争もそれに入ってくるわけです。核戦争は核戦争だけじゃなくて、シェル ターを作るとかそういう話ではなくて、さらに核戦争の前に、通常兵器による 戦闘で日本はどこまで戦えるんですかというところです。なので、このような 想定といったものは国民一人ひとりが少しずつ考えていかないといけないこと であるということになります。では、このような戦争による統一は望まないと いうことであって。つまり、どの国も望まないということは、起こる可能性は 低いということなんですよね。では、どのようにして朝鮮半島が統一されてい くのか。別のシナリオといったものがあったと思います。菅沼氏のインタビュ ーでですね。それは中国が絡んでくるんですけれども、中国が金正恩政権を転 覆させると、そういった工作を考えていましたよということなんですね。金正 日の時代からなんですけれども、金正恩を政権につける前に金正男を擁立しよ うとか、一種の傀儡政権を作ろうとしたと。自分達がコントロールしやすいよ うにですね。そういった動きがあって、中国も今後朝鮮半島の統一に絡んでく るのであれば、そういう工作を仕掛けてくると。そういう工作を仕掛ければ仕 掛けるほど、この金正恩が粛清をしていくと。自分の側近が中国の影響下にあ る人間だとわかれば粛清をしていく。そういった流れは続くんじゃないかとい うのがあったと思います。一方、朝鮮半島のアメリカ化を阻止したいと考えて いる勢力もいるわけですよね。何故かというとこの金正恩政権が転覆すると、 それが北朝鮮の崩壊につながりかねないと。北朝鮮が崩壊した場合、そうする と韓国が一気に攻め込んでくる。つまりアメリカが一気に攻め込んできて、そ こで朝鮮半島を統一するかもしれないと。そうした場合、朝鮮半島は一気にア メリカの影響下に入る、支配下に入る。そうした場合中国にとって都合が悪い と。そうならないために、金政権、金正恩を支援しましょうと。そういった意 見もあると。こういう風に朝鮮半島統一、北朝鮮の在り方をめぐって中国国内 でも対立がありますよということなんです。いたって金政権といったものは中
2014 Real Insight Inc. All rights reserved 本ドキュメントを無断転用、複写、転送することを禁じます。 8 国からの干渉は許さないと。金正恩は中国の干渉は許さないと、そういう姿勢 を取っているわけですね。そういった中、もう一個あったと思いますが、もし 統一すると、そうやって中国、アメリカの影響があるかもしれない。もしくは 北朝鮮が何らかの形で、戦争以外の何らかの形で朝鮮半島を統一するかもしれ ない。 25:00 そうなった場合、どっちが政権を主導していくんですか。政権を取るんですか という話なんですけれども。北朝鮮と韓国の今の政権の正統性というものを見 ていけばわかってくるとおっしゃっていました。まず先に韓国を見ていきます と、実は韓国は権力の正統性が定まっていないんですね。今のところ大韓民国 臨時政府、1919 年に樹立された日本の植民地支配から独立するために中国にい る朝鮮民族が設立した大韓民国臨時政府、これを継承すると韓国政府は言って いるわけです。大韓民国臨時政府は李承晩が初代大統領として継承したと。そ こから続いているということなんですね。ただしかし、朴正煕元大統領、今の 朴槿恵大統領の父親に当たる方ですけれども、この人が大韓民国臨時政府を継 承してきた当時の韓国政府を軍事クーデターによってひっくり返しているんで すね。革命で倒しているわけです。つまり、大韓民国臨時政府とは関係の無い 朴正煕軍事政権が出来上がってきていると。実際、今の朴槿恵大統領も朴正煕 元大統領の娘ですし、普通に見ていけば軍事クーデターを起こした軍事政権を 継承しているんじゃないですかと。大韓民国臨時政府を継承するというのは、 違うんじゃないんですかと。どっちが正統な政府、韓国政府はどっちを根拠に しているんですかと揺らいでいるわけですね。朴槿恵大統領は朴槿恵大統領で 光復軍といったものを名前を出してきて、そういった遺跡をめぐったりして何 とか大韓民国臨時政府に正統性を求めようとしていますけれども、それはまだ あまりにも根拠として弱いというところ。しかし一方、北朝鮮の方は抗日パル チザンを指揮した金日成が建国した国を継承していってますよと。つまり、三 代続く権力を正統に継承していってる国は北朝鮮の方だねということなんです ね。金日成が何者であるのかといった議論はまた別の次元になりますので、こ こでは申し上げませんが、金日成という人物・存在があって、三代続くひとつ の正統な政権が北朝鮮に出来上がっていますよというところなんです。つまり 政権の正統性は韓国よりも北朝鮮の方にあるということは実は自他共に認める ところなんですね。こういった状態の中で、韓国主導で統一した場合、そうな
2014 Real Insight Inc. All rights reserved 本ドキュメントを無断転用、複写、転送することを禁じます。 9 ってくると韓国政府、政権の正統性が揺らいでいる韓国政府が主導で統一して しまった場合は、朝鮮半島が米国か中国の影響下に入ってしまうんですね。た だでさえ自分達の正統性は弱い。核を自前で持っていない。そしていわゆる昔 からの時代主義ですよね。長いものに巻かれるという性格の外交がありますの で、必ずアメリカか中国の影響下に入った状態で朝鮮半島は統一されてしまう。 一方北朝鮮が主導で統一した場合は金一族が支配する朝鮮民族国家が建設され るということですね。朝鮮半島が朝鮮民族の独立国家として建設されるであろ うということなんです。どちらのシナリオが日本にとって国益となるのかとい うところは、ぜひ会員の皆さんも考えていただければと思います。朝鮮半島は 私達にとっても地政学的、経済的に非常に重要な地域になります。今日本が主 導して朝鮮半島を掌握すると、日本の政府、安倍首相が言ったらとんでもない ことになってしまいますので、そういう日本の意志というものは前には出てき ませんが、日本にとって朝鮮半島がアメリカ・中国の支配下に入ってしまうこ とがいいのか、それとも金一族、一つの朝鮮民族がそこで独立国家を作ってく れた方が日本の国益になるのかといったところは日本にとって重要な課題とな りますので、お考えいただければと思います。 30:10 そういった中で日本が取り組むべき緊急課題といったものを最後に菅沼先生が おっしゃっていたと思います。その課題というのは、日本の独自制裁が絡んで くるわけですね。1 月 6 日の水爆実験。そして 2 月 7 日のミサイル発射実験に 対して日本が独自制裁の復活を発表しました。独自制裁とは何かと言いますと 簡単に言うと、2006 年から実施している、一昨年一部緩和しているんですが、 ヒト・モノ・カネの流れを遮断する措置なんですね。日本から北朝鮮へのヒト・ モノ・カネを遮断する措置。今回インタビューでわかったことというのは、モ ノ・カネの流れを止めることは実質的に不可能なんですよということ。もう一 つが、ヒトの往来を遮断することはメリットよりもデメリットの方が大きいで すよということでした。それぞれについて説明していきたいと思います。こち らは貿易による日本から北朝鮮へのモノ・カネの動きの一つの例なんですね。 少し古い事例ではありますが、警察庁から公表されているものが数件しかなか ったのでその内の 1 件になります。これは凍結乾燥機という大量破壊兵器を作 るのに転用できる機械の不正輸出事件があったと。不正輸出そのものが行われ たのは 2002 年。2006 年に検挙されています。日本の独自制裁といったものが
2014 Real Insight Inc. All rights reserved 本ドキュメントを無断転用、複写、転送することを禁じます。 10 行われ始めた2006 年に検挙されたと。動きはわかっていたけれども、その時は そういう法律がなかったから公安もなかなか検挙が難しかった。法律ができた から検挙したという例になります。でもこれは氷山の一角なんですね。こうい うのがたくさんありますよと。簡単に説明しますと、北朝鮮の貿易商社が凍結 乾燥機を発注します。日本の貿易会社に対してですね。これは北朝鮮と貿易を する会社。基本的には在日朝鮮人の方が経営している会社になります。この凍 結乾燥機の発注を受けた東京都内の対北朝鮮の貿易会社が東京都内の別の貿易 会社に台湾を迂回輸出を依頼します。この凍結乾燥機を台湾に一回納品するわ けですよね。一回納品して、そこで一回台湾で終わったことになるんですが、 台湾の貿易会社が日本から輸出されることを前提にまた発注するわけです。そ れを再輸出。再輸出先はどこかと言ったら北朝鮮の貿易商社になってくるわけ ですね。このようにして、不正輸出といったものが、何件かあるわけですね。 もっとたくさんあると思いますが、なかなか公表されているのかわかりません ので、これはひとつの一件の例として挙げています。先程も申し上げた通り氷 山の一角ですので、このようにして今でも何らかの形で菅沼先生がおっしゃっ た通り、ここは台湾が例に出ていますけれども、マカオとか香港とかそういっ たところを利用してこのような貿易によってモノ・カネといったものが北朝鮮 に動いていくと。これは日本の独自制裁ではなかなか止めることができないん だよとおっしゃっていました。このように独自制裁によって検挙できた例もあ れば、あまりにも数が多すぎて、全てを押さえることはできないと。つまり実 質的にモノ・カネの動きを押さえることは不可能であるとおっしゃっていまし た。次にヒトの往来を遮断することのデメリットとは一体何なのかといったと ころですね。というのは、協力者を派遣して現地のナマの情報を入手できなく なってしまうというのが、大きなデメリットであるとおっしゃっていました。 この協力者というのはエージェントですね。日本人が当然北朝鮮に行くことも 大事なんですけれども、例えば朝鮮総連の人ですね。在日朝鮮人の方に協力者 になってもらって、日本の公安から働きかけて、何らかの工作をして、日本の 協力者になってもらって向こうに行って、そこで現地のナマの情報を取って帰 ってきてもらうと。 35:14 そういうことが非常にし辛くなってしまいますよねということなんです。これ はできるだけ、多くの人が交流をして情報を持って帰ってきてもらったほうが、
2014 Real Insight Inc. All rights reserved 本ドキュメントを無断転用、複写、転送することを禁じます。 11 日本の国益にとって大きなメリットになるわけなんですね。このようなヒトの 往来を遮断するというのは、ヒューミント、人的な情報収集、諜報活動の真の 目的を理解していないということが日本政府の欠点であるとおっしゃっていま した。ヒューミントの真の目的とは一体何なのかというと、何千人もの男女に よって集められた小さな情報のかけら(ピース)のひとつひとつをつなぎ合わ せること。これによってひとつのピースは無意味に見えても、完成したジグソ ーパズル、これが絶大な効果を発揮する。この完成したジグソーパズルが真実 といったものをそこに映し出すわけですね。これができなくなってしまうとい うことなんです。よくヒューミント、人が情報活動を行うと言ったら、スパイ と言えば 007 とかマタハリとかああいった人達を想像するかもしれませんが、 そうじゃなくて至って普通の人達が行うべきものなんです。その何気ない会話 を聞き取ってきたりとか、どこどこにどういうポスターが張ってあったとか、 誰がどんな服を着ていたとか。どういうところが立ち入り禁止になっていまし たよとか。そういったところ、何気ない風景といったものを全部集めて、少し ずつ集めて、それで情報、ヒューミントといったものは大きな力を発揮してい くわけです。このような我々がザ・リアルインサイトでお届けしているインタ ビューも、よくこのゲストの話は分かり辛いとか、主語とか述語が明確になっ ていなくて、話が飛んでとか、分かり辛いとかあるんですけれども、本当に大 事な情報といったものは、そんな分かりやすくなっているものじゃないんです よね。誰もが親切にここが大事ですよ、この情報大事ですよと言ってくれない んですよ。つまり、何気ない一言、何気ない中で分かり辛さは関係ないんです よね。自分でアンテナを立てて一つ一つ拾っていくことがインテリジェンスを 磨くことにつながっていくわけです。こういったものが非常に大事なんですね。 それが最終的に金正恩が何を考えているのかということがわかってくるわけで すよね。金正恩に直接聞くこと、金正恩の言葉を盗聴するとか、文書を盗むと か、そういったことはもちろんすごいことなんですけれども、それが全てでは ないんですね。無意味に思えること、ひとつ何か落ちている石ころに意味があ るかもしれないんです。そういったものがヒューミントの真の目的であって、 ヒューミント以外でも他の全てのイミントであり、コミントであり、あらゆる 情報活動はこのひとつひとつ、膨大な情報の集積によって作られていくものな んですね。こういった中で日本が取り組むべき緊急課題とは何か。モノ・カネ の動きも実質的には止めることができないと。そしてヒトの往来の遮断といっ
2014 Real Insight Inc. All rights reserved 本ドキュメントを無断転用、複写、転送することを禁じます。 12 たものも日本にとってはデメリットが大きいと。そういった中で、日本が独自 制裁復活を発表しましたと。そうしたら案の定北朝鮮が拉致問題の再調査を全 面中止してきましたと。これは日朝国交正常化なくして戦後処理は完結しない という日本政府の方針を逆手に取ったわけですね、北朝鮮が。日本の悲願、日 本の外務省の悲願と言いますか、最終的な目的といったのは戦後処理ですね。 それが最終ではないんですけれども、語弊がありますが、その外務省の大きな 目的のひとつとしては戦後処理といったものがあるわけです。戦後処理といっ たものは、まずは日朝の国交正常化。 40:02 そしてもう一つは北方領土問題ですよね。ロシアとまだ平和条約を結んでいな いわけです。このような戦後処理が完結していない。日本政府が拉致問題なく して日朝国交正常化なしと明言しているわけであって、拉致問題を人質に取っ てしまえば、その名の通り人質ですよね。拉致問題を解決しないよと言えば、 つまり日本政府、外務省は日朝国交正常化を達成できないということなんです。 これを北朝鮮は逆手に取って、じゃあ拉致問題再調査を中止するよと言ってき ているわけですよね。これは外交上の取引になってくるわけです。このように 日本が自分で自分の首を締めていく風になってきていると。保守と言われてい る世論も北朝鮮に制裁をせよと。北朝鮮のもっと首を締めて、懲らしめてやれ という世論がいわゆる保守という勢力から上がってきてはいるんですけれども、 実は北朝鮮の首を締めるんじゃなくて自分達の首を締めているのが本当は実態 なんですよね。最終的には私達が取り組むべき、日本が取り組むべき緊急課題 というのは、北朝鮮という独裁国家。一人のリーダーが、君主は自分達は共和 国と呼んでいますけれども、どう考えても向こうの方が君主国家ですよね。そ ういった君主国家である、独裁国家である金正恩。この真意をまず読み解く。 こういうインテリジェンス体制が必要なんですよね。独裁国家、君主国家であ れば、そこのリーダーが何を考えているのか。これさえ読み解ければ、後は外 交方針が立てられるということなんです。そのためにはやはりヒト、ヒューミ ントが基本にあるということなんですね。ヒトの往来っていうのは大事なんで すよという風に菅沼氏はおっしゃっていました。今回の解説の参考図書はスラ イドの通りです。以上で2016 年 2 月号コンテンツ菅沼光弘氏インタビューの解 説を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。