水工学論文集,第53巻,2009年2月
現地観測に基づく小川原湖の底質環境と ヤマトシジミの分布に関する考察
OBSERVATION ON THE RELATIONSHIP BETWEEN THE BOTTOM SEDIMENT OF LAKE OGAWARA AND THE DISTRIBUTION OF CORBICULA JAPONICA
藤原広和
1・玉井翠
2・奥山紘平
2・河野翔太
2・長崎勝康
3・細井崇
4Hirokazu FUJIWARA, Akira TAMAI, Kohei OKUYAMA, Shota KAWANO, Masayasu NAGASAKI and Takashi HOSOI
1正会員 博(工) 八戸工業高専准教授 建設環境工学科 (〒039-1192 青森県八戸市田面木上野平16-1)
2学生会員 八戸工業高専専攻科 建設環境工学専攻 (〒039-1192 青森県八戸市田面木上野平16-1)
3青森県水産総合研究センター内水面研究所 (〒034-0041 青森県十和田市大字相坂字白上344-10)
4小川原湖漁業協同組合 (〒039-2406 青森県上北郡東北町旭北四丁目31-662)
Researches in the past have shown that water quality in Lake Ogawara is closely influential on the egg-laying and hatching of the Corbicula japonica. Yet as benthos including Corbicula japonica react sensitively to the change of the bottom sediment, it is important to grasp the bottom sediment, too. This research treats the connection between the habitat of Corbicula japonica and the bottom sediment in Lake Ogawara. From the research the following results were mainly gained. The bottom sediment which is suited for the habitat of Corbicula japonica is shallower than depth of water 5m, under amount of mud 10% and under ignition loss 3~4%. The amount of mud has a strong interrelation with ignition loss.
Key Words : brackish lake, Corbicula japonica , larvae release, bottom sediment, ignition loss, total sulfur
1. はじめに
本研究の対象である小川原湖は,青森県の東部に位置 する汽水湖で,国内有数のヤマトシジミの産地である.
小川原湖では,かつて年間約3,000トンのヤマトシジミ を漁獲していたが,ここ数年で漁獲量は激減し,2007年 の漁獲量は約1,500トンであった.漁獲量がここまで減 少したのは,近年,小川原湖のヤマトシジミの資源量が 減少傾向にあり,これに伴って小川原湖漁協が漁獲制限 を実施しているためである.漁獲制限による漁家収入の 減少は深刻な問題であり,安定した漁獲量を維持するた めには,ヤマトシジミの資源量と生息環境を把握し,適 切な漁獲管理や増殖対策を行っていく必要がある.
既往の研究1),2),3)によって,湖内の水質環境はヤマトシ ジミの産卵・発生と密接な関係があることが明らかとな っているが,ヤマトシジミをはじめとするベントス(底 生生物)は,底質の変化に敏感に反応するため,底質環 境の把握も重要である.そこで本研究では,小川原湖の ヤマトシジミの資源量調査および湖底表層部の底質調査
を行い,小川原湖の底質環境とヤマトシジミの生息との 関連について考察した.
2.小川原湖の概要
図-1に小川原湖の概要図を示す.小川原湖は青森県東 部の太平洋岸に面した湖面積63.2km2,湖容積714× 106m3,湖岸総延長67.4km,最大水深約25m,平均水深 約11mの汽水湖である.田沢湖や支笏湖に代表される火 山活動によって形成された湖(カルデラ湖)とは異なり,
入江の一部が海面の低下と湾口の砂丘の発達によって形 成された海跡湖である.流入河川は高瀬川(七戸川),
砂土路川,土場川,姉沼川などで,湖の南西部に集中し ている.これに対し,流出河川は湖北東部の高瀬川のみ で,高瀬川の河口約5.7km上流には放水路が開削されて いるが,洪水時以外はゲートが閉められている.高瀬川 河口からは,大潮および高潮時に太平洋から塩水が流入 し,河口から小川原湖の区間は顕著な感潮河川の様相を 呈している.これにより,小川原湖にはヤマトシジミ,
水工学論文集,第53巻,2009年2月
ワカサギ,シラウオ,ウナギ,ウグイ,マハゼ,ヌマガ レイなど,淡水性,汽水性,広塩性の魚種が多数生息し ており,多様な水産資源に恵まれている.また,2001年 に行われた湖内の水生植物調査では,日本の汽水湖では 唯一マリモの近縁種であるウィットロキエラ属サリナも 確認されており,小川原湖の豊かな生態系を裏付けてい る.
3.現地観測
(1) 資源量調査
資源量調査は,図-2に示す湖内6つの地区において計 89の調査地点を設定し,2002~2007年の8月に実施した.
これらの調査地点は,小川原湖においてヤマトシジミの 主な漁場となっている水深10m以浅のポイントであり,
後に記す底質調査も合わせて行った.調査は,エクマン バージ採泥器(15cm×15cm)により各2回の採泥後,
1mm目合いのふるいに掛かったものをサンプルとして,
その殻長と重量を測定した.この調査より,小川原湖で 市場出荷の目安となる殻長18.5mm以上と18.5mm未満の 単位面積当たり個体数と単位面積当たり重量を求めた.
また,単位面積当たりの平均重量に小川原湖の水深10m 以浅の面積を乗じて推定資源量を算出した.
(2) 底質調査
底質調査は,図-2に示す89地点において2002年,2004 年,2006年の8月にエクマンバージ採泥器(15cm× 15cm)によるサンプリングを行い,湖底表層の堆積物
について粒度組成,乾泥率,強熱減量(IL)の分析を 行った.また,2007年,2008年は図-3に示す73地点にお いて,同様にエクマンバージ採泥器によるサンプリング を行い,湖底表層の堆積物について含水比,密度,粒度 組成,IL,pHの測定を行った.さらに,赤のポイント で示した地点については,全硫黄の測定も合わせて行っ た.2002年,2004年,2006年の底質調査は,ヤマトシジ ミ資源量と底質環境の関係を明らかにすることを目的と しており,2007年,2008年の底質調査は湖全域の底質分 布を把握することを目的としている.本論文では2002年,
2004年,2006年の調査による粒度組成,IL,および2007 年,2008年の調査による全硫黄について述べる.
4.結果および考察
(1) ヤマトシジミの資源量と分布特性
図-4に,資源量調査による小川原湖のヤマトシジミ資 源量と漁獲量の推移を示す(漁獲量は小川原湖漁協によ るもの).小川原湖のヤマトシジミ資源量は2002年の調 査以来,毎年減少傾向が続き,2002年に約30,000トン だった資源量は,2005年には約14,000トンまで減少した.
これに伴い,小川原湖漁協では,ヤマトシジミの発生場 所と考えられているイカト地区の禁漁区化や資源量調査 結果に基づく漁獲量制限などの対策を実施している.ま た,2005年からは湖南部を中心にヤマトシジミの浮遊幼 生や稚貝を放流する種苗放流事業が行われている.主に これらの成果と考えられるが,2005年まで減少していた 資源量は2006年に増加に転じ,2007年は25,000トンまで
C1 C2 C3 C4 C5
C6 C7
C8 C9 C10
C13 C11 C12
C14 C15 I9
I10 I8 I11
I7 I6 I5
I13 I4 I12
I3 I2 I1 I14
I15
S1 S2 S4S3 S5 S6 S8 S7
S9 S10 S11
S13 S14 S12
M12
M5 M4 M3
M2 M6
M7 M8 M9 M11 M10 M13 M14 M15
M1 T7
T4 T6 T3
T5 T2 T1
T9 T10
T13 T14
T11T15 T12
T8
H1 H2
H3 H5 H4
H6 H7 H8
H9 H10 H11
H12 H15 H14 H13
イカト地区 セモダ地区
三沢灘地区
タカトリ地区 島口地区
舟ヶ沢前地区
I9 I10
I8 I11
I7 I6 I5 I13I4 I12I3
I2 I1 I14
I15 M12
M5 M4 M3 M2 M6
M7 M8 M9 M11M10 M13 M14 M15
M1 C1
C2 C3 C4 C5 C6 C7
C8 C9 C10
C13 C11C12
C14 C15
H1 H2 H3 H5 H4
H6 H7 H8 H9 H10 H11
H12 H15 H14 H13
S2S1 S4S3 S5 S6 S8S7 S10S9 S11 S13 S14 S12 T10
T7 T4T6 T3
T5 T1 T2
T9
T13 T14
T11T15 T12
T8 内沼
田面木沼
太 平 洋 高瀬川
砂土路川 姉沼 花切川
土場川 高瀬川
(七戸川)
最深部 5m 10m 15m 20m
2km
図-3 底質調査地点 図-1 小川原湖概要図 図-2 資源量および底質調査地点
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000
2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年
漁獲量[t]
推定資源量[t]
18.5mm以上資源量[t]
18.5mm未満資源量[t]
漁獲量[t]
図-4 ヤマトシジミ資源量と漁獲量の推移
図-5 殻長別個体数の推移
0 50 100 150 200 250 300 350 2002年
2003年 2004年 2005年 2006年 2007年
単位面積当たりの個体数[個/m2]
殻長 [mm]
回復している.しかし,商品サイズである18.5mm以上 の資源量は現在も減少傾向が続いており,2002年時は全 資源量の半分以上が商品サイズであったが,2007年は全 体の1/4まで減少している.これらの結果から,現時点 での漁獲量の増加は望めないと考えられる.漁獲量は 2002年の2,800トンから2007年は1,500トンまで減少して いる.
図-5は,2002~2007年のシジミの殻長別個体数の推移 を示している.小川原湖の市場出荷の目安である
18.5mm以上の個体数は,2002年以降減少傾向にある.
一方,18.5mm未満の個体数は2004年まで減少していた が,2005年に1.5~6.5mmの個体が前年の約80倍に増加 し,その個体が2006年,2007年と徐々に成長しているこ とが確認できる.ヤマトシジミの成長速度は,生息域に よって異なり4),5),島根県の宍道湖では1年で7mm程度,
2年で15mm程度に成長すると報告されている.3年目以 降は成長が緩まるが,これらから考えると,3~4年で
18.5mmに成長すると考えられる.しかし,2004年に発
生したと考えられる2005年の1.5~6.5mmの個体は,3年後
の2007年には,まだ商品サイズに達していない.した がって,小川原湖のヤマトシジミは,宍道湖の個体より 成長速度が遅いのではないかと考えられる.2005年以降 は,新規加入の個体数が安定しており,これらの個体が 順調に成長すれば,2008~2009年には商品サイズの個体 数が増加すると考えられる.
図-6は,湖内のヤマトシジミ個体数の分布である.こ 図-6 ヤマトシジミ個体数の分布
2002年8月 2003年8月 2004年8月
2005年8月 2006年8月 2007年8月
2km 山崎
タカトリ グルメ桟橋
蓼内
大瀬 姉戸
図-7 種苗放流地点
放流地点 2005年 2006年 2007年 3ヵ年合計
蓼内 2憶9468万 3億2220万 ― 6億1688万
山崎 3億8477万 3億0426万 ― 6億8903万
グルメ桟橋 2億0918万 4626万 ― 2億5544万
姉戸 4億1278万 3億2619万 ― 7億3897万
タカトリ 5億9362万 5億1258万 77億5974万 88億6594万
大瀬 ― 9億4189万 23億5092万 32億9281万
合計 18億9503万 24億5338万 101億1066万 144億5907万
表-1 種苗放流数
C1 C2 C3 C4 C5
C6 C7
C8 C9
C10 C13
C11 C12
C14 C15 I9
I10 I8
I11 I7 I6 I5
I13 I4 I12
I3 I2 I1 I14
I15
S1 S2 S4S3 S5 S6 S8 S7
S9 S10 S11
S13 S14 S12
M12
M5 M4 M3
M2 M6
M7 M8 M9 M11 M10 M13 M14 M15
M1 T7
T4 T6 T3
T5 T1 T2
T9 T10
T13 T14
T11T15 T12
T8
H1 H2
H3 H5 H4
H6 H7 H8
H9 H10 H11
H12 H15 H14 H13
イカト地区 セモダ地区
三沢灘地区
タカトリ地区 島口地区
舟ヶ沢前地区
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
通過質量百分率[%]
1000<
500- 250- 125- 63- 63μm>
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
通過質量百分率[%]
1000<
500- 250- 125- 63- 63μm>
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
通過質量百分率[%]
1000<
500- 250- 125- 63- 63μm>
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
通過質量百分率[%]
1000<
500- 250- 125- 63- 63μm>
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
通過質量百分率[%]
1000<
500- 250- 125- 63- 63μm>
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
通過質量百分率[%]
1000<
500- 250- 125- 63- 63μm>
図-8 湖底表層部における粒度組成
れより,ヤマトシジミの分布状況を知ることができる.
資源量が減少傾向にあった2003年,2004年は,生息密度
が1,000個/m2以上の領域が湖北部のイカト地区やセモダ
地区の一部に限られていたが,2005年から徐々に個体数 が増加し,2006年以降は湖内全域で1,000個/m2以上の領 域が確認できる.
図-7および表-1は,ヤマトシジミの増殖対策として,
2005年から実施されている種苗(浮遊幼生および稚貝)
放流事業の放流地点および放流個体数を示している.種 苗放流事業は湖南部を中心に行われており,2007年は タカトリと大瀬で計100億個以上の種苗が放流された.
ヤマトシジミ個体数の分布図より,2006年以降は湖南部 で個体数が急激に増加しているが,これは2004年に浮遊 幼生が大量発生した3)ことに加えて,種苗放流によって 放流された個体が影響していると考えられる.
(2) 小川原湖の湖底環境とヤマトシジミの生息
図-8は2006年8月の底質調査による湖底表層部の粒度 組成である.湖北部および中部のイカト,セモダ,三沢 灘,舟ヶ沢前地区では粒径125~500μmの細砂,中砂分 の含有率が高く,ヤマトシジミの生息密度が高いイカト,
三沢灘地区では125~250μmの細砂を多く含んでいる.
また,湖南部の島口,タカトリ地区では粒径63μm以下 の泥分の含有率が高く,特に湖南西部のタカトリ地区で は半数の調査地点で泥分の含有率が90%を超えている.
図-9は2002年,2004年,2006年の8月の底質調査によ
る湖底環境とヤマトシジミの生息密度との相関を示した ものである.これより,小川原湖においてヤマトシジミ が生息する範囲は,おおよそ水深9m以浅,泥分率30%未 満,IL5%未満であることが分かる.また,特に多くの ヤマトシジミが生息している範囲は,水深5m以浅,泥 分率10%未満,IL3~4%未満である.中村6)は,宍道湖に おいてヤマトシジミが生息する範囲はシルト・粘土含有 量50%未満,IL14%未満であり,生息密度が1,000個/m2 以上の好適範囲はシルト・粘土含有量10%未満,IL5%未 満であると述べている.これより,小川原湖においてヤ マトシジミが生息する泥分率,ILは宍道湖よりやや低く,
1,000個/m2以上生息する範囲は宍道湖とほぼ同様か,や
や低いことが分かった.これ以降,本論文では小川原湖 におけるヤマトシジミの好適環境を泥分率10%未満,
IL3~4%未満として考察する.底質環境とヤマトシジミ の生息密度との相関は泥分率が最も強く,相関係数は -0.419,ついでILの-0.418,水深の-0.304であった.
図-10は,泥分率とILの相関を示したものである.本 研究では,泥分率とILのどちらがヤマトシジミの生息に 大きく影響するのか明らかにすることはできなかったが,
泥分率とILの相関係数は0.936で高い相関があることが 分かった.
図-11 a) ~ f) は2006年における地区別の水深,泥分率,
ILとヤマトシジミ資源量密度の関係である.まず,湖北 東部のイカト地区および湖東部の三沢灘地区では,すべ ての地点で泥分率,ILがいずれも好適環境の条件を満足
しており,底質環境は良好であるといえる.一方,湖北 西部のセモダ地区および湖西部の舟ヶ沢前地区では水深 が8mより深くなると泥分率,ILが高くなり,ヤマトシ ジミがほとんど生息していないことが分かる.また,湖 南東部の島口地区では水深3m以深からバラツキがあり,
水深が浅くても泥分率,ILが高い地点がみられる.湖南 西部のタカトリ地区では,水深3m以深で泥分率,ILが 高くなっている.湖南部で泥分率,ILが高いのは,高瀬 川(七戸川),土場川,砂土路川などの流入河川や姉沼 からの流入土砂によるものと考えられる.
図-9 底質と資源量の関係
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000 10,000
0 2 4 6 8 10 12
ヤマトシジミ生息密度[個/m2]
水深 [m]
n = 267 r = -0.304
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000 10,000
0 20 40 60 80 100
ヤマトシジミ生息密度[個/m2]
泥分率(63μm>)[%]
n = 267 r = -0.419
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000 10,000
0 5 10 15 20
ヤマトシジミ生息密度[個/m2]
IL [%]
n = 267 r = -0.418
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
0 20 40 60 80 100
IL[%]
泥分率(63μm>)[%]
n = 267 r = 0.936
図-10 泥分率とILの関係
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000
生息密度[個/m2]
0 10 20 30
IL[%]
0 25 50 75 100
泥分率[%]
0 5 10 15
水深[m]
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000
生息密度[個/m2]
0 10 20 30
IL[%]
0 25 50 75 100
泥分率[%]
0 5 10 15
水深[m]
a) セモダ地区 b) イカト地区
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000
生息密度[個/m2]
0 10 20 30
IL[%]
0 25 50 75 100
泥分率[%]
0 5 10 15
水深[m]
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000
生息密度[個/m2]
0 10 20 30
IL[%]
0 25 50 75 100
泥分率[%]
0 5 10 15
水深[m]
c) 舟ヶ沢前地区 d) 三沢灘地区
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000
生息密度[個/m2]
0 10 20 30
IL[%]
0 25 50 75 100
泥分率[%]
0 5 10 15
水深[m]
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000
生息密度[個/m2]
0 10 20 30
IL[%]
0 25 50 75 100
泥分率[%]
0 5 10 15
水深[m]
e)タカトリ地区 f) 島口地区
図-11 地区別の水深,泥分率,ILと資源量
図-12 a) ~ f) は2002~2006年の泥分率の経年変化であ る.イカト地区および三沢灘地区では,ヤマトシジミの 生息に適した底質環境が維持されているが,セモダ,
舟ヶ沢前およびタカトリ地区では一部地点で泥分率が増 加しており,底質の悪化がみられる.また,島口地区で は,泥分率が減少している地点が多くみられる.
図-13は,2007年,2008年の底質調査による全硫黄の 分析結果である.全硫黄は,水深5m以浅,5~15m,15m 以深で明確な差が見られ,それぞれ5m以浅では0.10未満
~0.58mg/g(姉沼の沼口を除いた場合),5~15mでは1.82
~4.98mg/g,15m以深では20.50~21.10mg/gであった.姉 沼の沼口では水深5mで9.20mg/gとなっているが,これは 姉沼からの有機物負荷や湖水の停滞性により還元的な底 質が分布しているためと考えられる.水産用水基準に照 らし合わせると,湖南部では大部分が汚染がかった泥や 汚染泥に分類され,ヤマトシジミをはじめとするベント スの生息にはあまり適さない底質が分布していると考え られる.
5.おわりに
本研究により得られた主な知見は以下の通りである.
(1) 小川原湖のヤマトシジミ資源量は2006年以降回復傾
向にあるが,商品サイズである18.5mm以上の個体は 依然として減少傾向にある. 2005年以降は新規加入 の個体数が安定しており,2008~2009年には商品サイ ズの個体増加が期待できる.
(2) 2005年以降は,湖南部で急激に個体数が増加してい
るが,これは2004年に浮遊幼生が大量発生したこと に加えて,種苗放流事業によって放流された個体が 影響していると考えられる.
(3) 小川原湖の湖底環境は,湖北部および中部のイカト,
セモダ,三沢灘,舟ヶ沢前地区では125~500μmの細 砂,中砂分を多く含み,湖南部の島口,タカトリ地 区では63μm以下の泥分を多く含む場所が多いこと がわかった.
(4) 小川原湖においてヤマトシジミが生息する範囲は,
水深9m以浅,泥分率30%未満,IL5%未満であり,特 に多くのヤマトシジミが生息している範囲は,水深 5m以浅,泥分率10%未満,IL3~4%未満であった.ま た,生息密度が1,000個/m2以上の好適範囲の泥分率,
ILは,宍道湖とほぼ同様か,やや低いことが分かっ た.泥分率とILの相関係数は0.94で,強い相関があ ることが明らかになった.
(5) ヤマトシジミの生息に適した底質環境は,湖東部 のイカト,三沢灘地区では水深10m以浅,湖西部の セモダ,舟ヶ沢前地区では水深8m以浅,島口,タカ トリ地区では水深3m以浅であった.
参考文献
1) 高杉奨,藤原広和,沼邉武志,二木幸彦,長崎勝康:小川原 湖における水質環境およびヤマトシジミの生息状況について,
水工学論文集,第49巻,pp.1561-1566,2005.
2) 久保田光彦,藤原広和,長崎勝彦,吉田由孝,細井崇:小川
原湖における水質・底質環境およびヤマトシジミの生息状況 について,海岸工学論文集,第53巻,pp.1091-1095,2006.
3) 玉井翠,藤原広和,久保田光彦,長崎勝康,濱田正隆,榊昌
文:小川原湖の水域環境およびヤマトシジミの発生について,
水工学論文集,第52巻,pp.1255-1260,2008.
4) 川島隆寿,山根恭道,山本孝二:神戸川産ヤマトシジミの成 長と宍道湖産ヤマトシジミとの形態の相違,島根県水産試験 場研究報告,第5号,pp.94-102,1988.
5) 中村幹雄:日本のシジミ漁業,その現状と問題点,たたら書 房,p.5,2000.
6) 中村幹雄:宍道湖におけるヤマトシジミCorbicula japonica
PRIMEと環境との相互関係に関する生理生態学研究,島根
県水産技術センター報告,第9号,pp.18-57,1998.
(2008.9.30受付)
0 20 40 60 80 100
泥分率[%]
2002年 2004年 2006年
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泥分率[%]
2002年 2004年 2006年
a) セモダ地区
c) 舟ヶ沢前地区
e) タカトリ地区
b) イカト地区
d) 三沢灘地区
f) 島口地区
図-12 泥分率の経年変化
0.25 2.80 - 3.17 20.50 3.23 4.40 0.16
1.82 0.11 4.98
9.20 2.40
4.65
<0.10 0.58
-
姉沼 - 5m
10m 15m
図-13 全硫黄調査結果
最深部:21.10
[単位:mg/g]