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フィールドワーカーによる「使い倒し」方 (アジ研 図書館を使い倒す 最終回)

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Academic year: 2022

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フィールドワーカーによる「使い倒し」方 (アジ研 図書館を使い倒す 最終回)

著者 重冨 真一

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization (IDE‑JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名 アジ研ワールド・トレンド

巻 245

ページ 71‑71

発行年 2016‑02

出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL http://doi.org/10.20561/00039643

(2)

71  アジ研ワールド・トレンド No.245(2016. 3)

足で集めたインタビュー記録なのである。 会研究であり、そのコアになる資料は、自分の 方をしたことがない。私の専門はタイの農村社 ばしば登場するが、私はそうした「使い倒し」 だし、それをむさぼり読む喜びを語る碩学がし 本連載には、希有な資料をアジ研図書館にみい ーザー」といわれると、少々戸惑いを感じる。 同じ言葉を聞かされていた。しかし「ヘビーユ ており、その末期になると、時々図書館員から は、私は昨年三月まで三〇年近くアジ研に勤め ルに書かれていた執筆依頼理由であった。じつ ったので」というのが、連載担当者からのメー   「重冨さんは(図書館の)ヘビーユーザーだ

タイの動静と香りを、現地と数日しか遅れるこがタイで作った分析視角を当てはめてみる。そ教授)   すのである。毎日毎日、新しい新聞を広げて、外の農村を垣間みる機会が与えられると、自分(しげとみしんいち/明治学院大学国際学部 ず体調に異常をきたす。そしてあの頃を思い出っているのだろうと思い始めた。実際にタイ以る。 いやアジ研自体の価値を高めていると思ってい年間繰り返してきたことができなくなると、まイメージができたとき、今度は他の国はどうな 昨年四月からできなくなった。ほぼ毎日、三〇回り始めた。何年かあとにタイ村落の全体的な者であり、その存在こそがアジ研図書館、歩く強 つわもの いるオジサン」に過ぎないのであった。それがの村はどうなっているのだろうと思い、村々をアジ研の図書館員は、みな現地語を操り現地を じ時間に同じ場所で出会う「犬を散歩に連れてゆるコミュニティ・スタディ)をしたあと、他図書館員が集めてくる資料もまた、膨大である。 よりも「ルーチンユーザー」。いわば、毎日同とつの村に住み込んでその村の全戸調査(いわきました」と、心のなかで一礼したのだった。 返す。だから私は、「ヘビーユーザー」というは私の研究スタイルと関わるのだが、はじめひあなたのおかげでこの資料を手にすることがで   で読んで、次の日に返却する。それを毎日繰りなぜタイ以外の国のところに行くのか。これの顔が目に浮かび、「ありがとうございました。 イ語と英語の現地紙を一部ずつ借り出し、自宅とに一種の当惑を感じる理由である。もないものである。とっさにアジ研の先輩数名 夕方五時頃になるときまって図書館に行き、タの点も、私が「ヘビーユーザー」と呼ばれるこのない文献だった。それはタイのどの図書館に 私が毎日のように図書館に現れたからであろう。たのは他の国に関する文献の書架であった。こりに研究してきたつもりであったが、みたこと   「ヘビーユーザー」という誤解が生じたのは、ーに行くのはむしろまれで、もっぱらさまよっ本棚でみつけた。タイのコメについてはそれな 私は上の階にもよく行った。タイ資料のコーナタイの籾市場についての古びた資料をアジ研の   新聞が置かれているのは図書館一階なのだが、地ではみつけられない資料もある。つい先日も、 書館は、おそらく世界に二つとないであろう。集めてきた資料がある。そのなかにはもはや現 もか」といわんばかりに集めて開架している図研創設以来、何百人もの研究者が現地を歩いて 能な情報になった。こうした現地紙を「これでのようにしていまあるのかを知っている。アジ   た情報とつながったときに、私なりの理解が可アジ研の内部にいた私は、それらの資料がど 聞が伝える情報は、フィールドワークで得られ大きな世界へとつないでくれる触媒である。 タイ社会の理解があって可能になった。逆に新地面を歩き回って仕事をする私を、つねにより えられていたのではなく、調査地の背後にある囲んで保護してくれる布団のようなものである。 ルドワークは、調査地で得られた情報だけに支の宝庫というよりも、私の研究を幾重にも取り   礎体力を作り出す「穀物」である。私のフィーだから私にとってアジ研図書館は、研究材料   実際、現地紙というものは、地域研究者の基膨らませる支えになる。 となく感じることのできた、幸せな日々を。私がフィールドで得たアイデアをもとに空想を も豊富な資料が置かれている。それらの資料は、 館に行く。その書架には、どの途上国について ルドから帰ってくると、さっそくアジ研の図書

  重冨 真一

しろい!」とからだが震えるのである。フィー

フィールドワーカーによる「使い倒し」方

して、あてはまらないところがあると、「おも

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