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関係性を支える子育て支援 : 親子の関係性に着目 して

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(1)

して

著者 和田 美沙子

雑誌名 東京家政大学附属臨床相談センター紀要

巻 9

ページ 47‑61

発行年 2009

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010053/

(2)

関係性を支える子育て支援 一親子の関係性に着目して一

和 田 美沙子

  APractice of Child−Care−Support to Improve Relationships

−Focusing on the Relationship between Parents and the Child一

Misako WADA

要 約

 本研究の目的は、子育て支援としての「ひろば」実践において、実践者がどのように親子の関係性に対する支援を行 っているかを明らかにすることにある。主体的な検討が行われてきた「ひろば」実践を取り上げ、実践者へのライフス トーリー・インタビューを行い、そこで得られたライフストーリーの分析を行った。その結果、3つの特徴があること が明らかになった。

 第一に、それぞれの親の子育ての仕方を保障しつつも、子どもの行為の意味を説明するなど、子どもを理解するため の手掛かりを提示する直接的支援が行われていた。第二に、「ひろば」における遊びの環境を充実させることによって、

親と子の関係性を向上させる支援が行われていた。そして最後に、葛藤やネガティブな感情を伴う様々な関係性の生じ る状況において、親と子の関係性そのものを支えるための支援が行われていた。このような支援は、安定した親子関係 の構築という長期目標を踏まえつつ、また「親の成長」を支えるものとして捉えられていることが明らかとなった。

キーワード:子育て支援、親子、関係性、「ひろば」

1.はじめに

 本論の目的は、実践の在り方に関する一般化を 目指すことではなく、ひとつひとつの出来事に対 して主体的に自らその在り方を検討してきた「ひ ろば」実践に着目し、実践者の考える親子の関係 性を支える支援について、明らかにすることであ

る。筆者はこれまでに、ここで取り上げるC先 生の子育て支援観に着目し、研究を行ってきた。

これらの研究において、C先生が主体的に実践の 在り方を検討してきたこと、C先生の「ひろば」

実践における支援観とは、出会いの場と子育ての 日常性に着目した親子の「育ち」を目指すもので あること等を明らかにした(和田・戸田,2006;

和田,2008)。本論は、このようなC先生の「ひ

家政学部児童学科627資料室

ろば」実践に関する支援観の研究の一部であり、

親子の関係性という側面に着目したものである。

 子育て支援の取り組みは、主に①子育ち支援、

②親育ち支援、③親子関係支援、④子育て環境支 援、などの側面に分けることができる(山縣,

2008)。特に近年では言語的コミュニケーション が成立する以前の子どもへのかかわりに戸惑い を感じる保護者が多く見られ、親の育ちを促す子 育て支援の取り組みが求められている。しかし、

子育ては親と子という相互の関係が基盤となり、

両者が相互に影響を及ぼし合う中で営まれるも のである。つまり、子どもの育ち、親の育ちを個 別に捉えるのではなく、これらの両方の視点のバ

ランスを考慮しつつ支援を行うことが必要とな

る。特に、乳幼児期の子育て支援を考える際には、

このような親子の関係性を視野に入れ、安定した

(3)

関係性を築くことが大きな課題であると言える

(土谷,2004)。

 子どもの育ちと親の育ち、更には親子関係をも 同時に支援することが可能となる子育て支援の

取り組みとして、「ひろば」型子育て支援がある。

「ひろば」とは、乳幼児の在宅子育て親子が日常

的かっ自由に利用できる常設の子育て支援施設 であり、近年急速にその数が普及してきた。現行 制度における「ひろば」には、地域子育て支援拠

点事業1)がある。これは、①子育て親子の交流の 場の提供と交流の促進、②子育て等に関する相談、

援助の実施、③地域の子育て関連情報の提供、④ 子育て及び子育て支援に関する講習等の実施、の 4つを基本事業とするものである。この事業は、

平成20年度には設置数7,025ヵ所が計画されて

おり2)、「子ども・子育て応援プラン」に掲げる

平成21年度目標値6,000ヵ所を上回っているこ

とから、そのニーズの高さがうかがえる。

 このような「ひろば」にはスタッフが常駐し、

多くの「ひろば」では地域住民や学生等、多様な 立場の人々がその実践に参加している。また、

「ひろば」実践は制度に先行して実践が行われて

きた経緯があり、制度的背景によって様々な名称 で呼ばれている。本論では、地域子育て支援拠点 事業だけでなく、自治体独自事業、あるいは大学 附属施設等、制度によらずこのような取り組みの

全体を指して「ひろば」と呼ぶこととする。

 「ひろば」では、日々スタッフが母親の育児ス

トレスや負担感を緩和できるよう働きかけたり、

子どもの育ちに必要な環境を提供したりと、親子 双方への支援を行うことになる。このような「ひ

ろば」の利用は親のストレス、不安感を軽減させ たり、孤立感を解消させたりすることに加え、親 子関係の向上にも役立つことが指摘されている

(櫃田,2003;渡辺,2006)。また、本論におけ

る「ひろば」のひとつである地域子育て支援セン ターに関する研究では、保育所が保育の専門性を 生かして地域の身近な相談施設として機能しつ つあること等が明らかにされている(現代保育問 題研究会,1998;柏女ら,1999,2000;太田・中

山,2000;金子,2007;吉田,2007)。

 「ひろば」における親子の関係性に関する先行 研究として、吉見(2005)は子育て当事者である 親として児童館の「ひろば」における参与観察を 行い、親と子の関係性について考察している。こ こでは主に、子どもの育ちを促すための親として の行動の仕方について述べており、子どもの育ち に応じた親と子のかかわりを「ひろば」において 育てていくことの重要性を指摘している。一方、

中野(2002)は子育て支援における保育士や幼稚 園教諭の役割として、親子関係の調整役を挙げて おり、子どもの行為の意味を解説、代弁すること によって親の成長を促すことの必要性を指摘し ている。さらに土谷ら(2002)は、保育所や幼稚 園において子どもの様子から親子関係が懸念さ れる場合に、親への援助が行われるという傾向を 明らかにしている。そして、乳児期の親子関係の 形成を支える場として、親子が気軽に集える場、

つまり本論における「ひろば」を挙げている。こ れらの先行研究では、子育て支援の場、特に保育 所や幼稚園では保育の専門性を生かしつつ乳幼 児期の親子の関係性を支援する必要性が指摘さ

れている。しかしながら、子育て支援の実践者が、

どのように親子の関係性を捉え、どのような支援 を行っているのかを明らかにしたものではない。

 そこで本論においては、「ひろば」実践者の考 える親子の関係性を支える支援について明らか

にする。「ひろば」実践は歴史が浅く、「保育所保

育指針」のような支援の目的や原理原則を示す共 通のガイドラインはない。そのために、各「ひろ

一48一

(4)

ば」において試行錯誤の中で支援の在り方を検討 し、実践を行っているのが現状である。ここで取 り上げるC先生は、A保育園において地域子育て 支援センター事業創設年度から「ひろば」を開始

し、「ひろば」担当者並びに主任保育士として、

「ひろば」実践の中心的役割を担ってきた。また、

2001年からは公設保育所の委託を受け、B保育園 園長として新たに地域子育て支援センターを立 ち上げた。A保育園およびB保育園におけるC 先生の「ひろば」実践は、10年以上に及ぶもの である。「ひろば」最初期から主体的に検討を重 ねてきたこのような実践を取り上げることは、

「ひろば」実践の在り方を考える上で、手掛かり

となると考える。

ll.研究方法

1.対象者

 中国・四国地方の私立B保育園園長であるC 先生を取り上げる。C先生は18歳で私立A保育 園に就職し、27歳で主任保育士となる。1995年 にはA保育園において、地域子育て支援センター 事業を開始し、「ひろば」を成立させた。2001年 より同法人が公設B保育園の運営委託を受け、B 保育園園長に就任した。同時にB保育園内に地域 子育て支援センターを立ち上げ、長年勤めてきた A保育園の「ひろば」実践を持ち込んだ。C先生 はA保育園の「ひろば」開始時の担当者及び主任

保育士であり、B保育園では園長として「ひろば」

実践の在り方を検討してきた。制度に先立って

「ひろば」の必要性を捉え、試行錯誤しつっ「ひ ろば」を実践してきたA保育園、新たに「ひろば」

を立ち上げたB保育園の両実践において、中心的

役割を担ってきた。

 C先生は地域子育て支援センター事業の制度

化と同時に、つまり「ひろば」実践の最初期から、

都市部の先駆的な実践に学びつっも地方モデル として自分の地域に求められる「ひろば」のあり 方について主体的に検討を重ねてきた実践者で

ある。

2.研究方法

 実践者の考え方を明らかにするために、ライフ ストーリー・インタビューを用いた。ライフスト ーリーとは、個人が経験した出来事やその経験に ついての人生物語であり、語り手自身の解釈によ

って意味づけ、組織化されたものである(やまだ,

2000)。ライフストーリー・インタビュ・…一・は、聞

き手と語り手との応答を通して、自発的な発話の 中から経験した出来事やその経験の仕方を知ろ

うとするものである。

 語られたライフストーリーは、聞き手と語り手 との関係性の中で相互行為によって生成され(桜 井,2003)、ここでは語り手にとっての経験的真 実を重視する。従って、予め研究の枠組みを設定 し、その限りにおいて語り手に回答を求めるので はなく、自由な語りの中から語り手自身の解釈の 仕方を知り、それに沿って分析を進めることを前 提としたインフォーマルな会話形式でインタビ

ュー 行った3)。

3.実施方法

 語り手の自由な語りを引き出すための大まか なテーマのみを設定し、自発的に語られた内容に 対して柔軟に質問を行う形式でインタビューを 行った。実施時間は各回約90分程度であるが、

合計すると4時間に及ぶ日もあった。

 C先生を最初に訪れたのは2005年9月であり、

2006年3月14日、15日、26日、2007年8月27 日、30日、9月1日、2008年2月23日、25日の 日程でインタビューを実施した。併せて、訪問の 際には「ひろば」においてフィールドワークを行

った。

(5)

 実施場所は語り手に負担のないよう勤務先や 自宅、空港等で行い、許可を得てICレコーダー

で音声データを記録した。

 このようにして得られた各インタビューの音 声データにっいて、発話内容をできるだけ忠実に 書き起こしたトランスクリプトを作成した。本論

において分析の対象とするのは、2006年3月14 日及び15日、2007年8月30日のインタビュー

である。

 尚、調査の実施からトランスクリプト作成まで

の過程は、全て筆者自身が行った。

形は変わってきて、問題も変わってくるけど、

子育てってずっと続くものだと思うから、今、

厚労省や保育園がやっている子育て支援がそ の問題だけではないと思うんですね①。杢当

の支援というのは、小学校に行ってからも、

中学校に行ってからも、子どもの発達とか、

子どもを理 するというか子どもと親との関 係がどうあったらいいのかっていうことを、

保育所の子育て支援の間に子どもと母親とは 別の人格で、子育てって、子どもが育ってい くというのはこういう風にっていうことを理 璽Lエ②。最初の土台がお母さんに伝わって 皿.研究内容

1.C先生の子育て支援観

 「ひろば」実践を行うにあたり、C先生は子育 て支援の意義や目的をどのようなところに見出 しているのだろうか。まずは、長期的な視点にお けるC先生の子育て支援の考え方を示すインタ

ビューを引用してみたい。

 尚、インタビュー引用部分の「筆」は筆者、「C」

はC先生、()は筆者による補足を示す。

【インタビュー112006.3.15

C:0歳から就学前までが子育てではなくて、一  番顕著に現れるのが0,1,2歳くらいで、お  母さんがしんどいと思ったり、子どもが小さ  いから虐待のこととか色んなことがあって、

 子育てって大変だっていうことで、子育ての  応援をしようっていうことになっているかも  しれないけど。小学校へ入ると、小学校生活  の中の子育ての不安とか学習不安とか、子ど  も同士の関係とかまた違った形で、小学校時  代の子育ての大変さっていうのがあると思う  んです。じゃ、中学校、高校、大学に入った  ら消えるかといったら消えないと思うんです。

いたら、問題が変わってきても、親子のあれ っていうのは、小学校へ行っても、中学校へ 行っても継続して支援できるんじゃないかな と思うんです③。例えば、子どもが思い通り にならなくって、わ一って泣いて怒って親を 困らせるっていうことがあったとしたら、

「今は何を言ってもダメだから、子どもが落 ち着くまでしばらく見守ってみようか」とか

「泣き方が変わったらかかわってみようか」

とか。で、ちょっと泣き止んだら、「どうして ほしかったの?」って話をしようとかって。

これは1つのことでも、何歳になっても子ど

もの思いを聞こうと思う親の姿勢があったら、

パニックになってちょっと落ち着いたときに、

「お母さんはこうこうだったけど、あなたは どうしたかったの」「じゃあ、この部分は聞け

るけど、この部分はお母さんの言うこと聞い

て」って折り合いをつけることだと思います。

親子の人間関係って④。(中略)皆ム瞠 んだから、考え方も違うし、やりたいと思っ てることも違う。でも、個を尊重するってい うことはそういうことだと思うんです。小さ いときからのやりとりで子どもも育ち、親も

一一T0一

(6)

聞き方を、子どもの考えを理解する⑤。「あな

たの考えはお母さん聞くよ。お母さんの考え

も聞いてね」っていうことが小さいときから、

養われていくべきだと思います。

 まず、C先生の考える子育て支援とは、制度上 保育所が直接支援の対象とする乳幼児期という 時期のみを対象とした取り組みではないことが わかる(下線部①)。C先生は乳幼児期の子育て を長期に渡る子育ての土台を形成する時期とし て位置づけ、保育所の行う子育て支援は「小学校 へ行っても、中学校へ行っても継続して支援でき る」ものであることの必要性について述べている

(下線部②、③)。つまり、単に子どもにとって

のリスクや親の負担の大きい乳幼児期の子育て を乗り切れるような支援に終始することなく、長 期的視点で捉えた場合に最も重要なこの時期に、

子育ての「最初の土台」を構築することを積極的 に支援していく必要があると考えているのであ る。そしてここで述べている子育ての土台とは、

親が子どもを一人の人格を有する存在として「尊 重する」姿勢をもち、親子が互いに相手の意見を 聞きながら「折り合いをつける」ことのできる親

子関係を示している(下線部④、⑤)。

 C先生の子育て支援観とは、単に子育ての最も 大変な時期を負担軽減等によって支援するだけ でなく、長期的スパンにおける乳幼児期の固有性 や重要性を踏まえた上で、子育ての「土台」とな る安定した親子関係の構築を目指すものである。

そしてこのような子育て支援観とは、「子どもの 最善の利益」や子どもの権利を保障する立場にあ

る保育士としての価値観に基づくものであると

言える。

2.「ひろば」実践の意義

 このような子育て支援観のもとで展開される

「ひろば」実践について、C先生はその活動の意 義や目的をどのように捉えているのだろうか。次 に、子育て支援としての「ひろば」実践の成立過 程に関するインタビューを考察してみたい。【イ ンタビュー2】は、保育所の行う子育て支援活動 のうち、「ひろば」という実践の必要性を感じた 理由について尋ねた際に語られたものである。

【インタビュー2】2006.3.15

C:一般保育のお母さんたちも、一生懸命働いて  わが子を迎えに来たときに、「ああ、やれや  れ」って尻もちをついたようにべったりと保  育室に座って、先生と今日の出来事を話した  り、子どもの様子を見てお母さんがホッとす  るっていう所は、一般保育の中でもいっぱい  見られていたので。いつも家庭で一対一で向  き合っている親子や、大人と話がしたいと思  っていたり、子ども同士で遊ばせたいと思っ  ている親がいると思ったんですね。きっと、

 支援センター(本論における「ひろば」)も特 別なものではなくて、一般保育に来ている親 子(の姿を見る中)で、私たちが広げたいと 思っていた部分だったんだと思うんです⑥。

例えば、お迎えのときにお母さんがホッとし ていつ帰るんだろうと思うほど、わが子が遊 んでいる姿を見たり、昼間見えなかった部分 を先生から話を聞くことでお母さんは仕事か ら切り替えたり、自分が見ていない子どもの Zを想像しながら、先生から話を聞くことは、

子育てのものすごいエネルギーになるんじゃ

 ないかと思ったんです⑦。

筆:乳児の遊び場というよりは、お母さんたちが  ホッとできる場所ということを第一に考えた  んですか?

C:お母さんたちがホッとできる場というのは、

(7)

やっぱり子どもが落ち着いて遊べる場だと思 うんですね。いくらお母さんがホッとしたい と思っていても、子どもがギャーギャー言っ ていたらホッとできないから、「お母さんが ホッとできる場=子どもの遊び場」ではない かなと思います⑧。

 C先生の「ひろば」実践開始の背景には、子ど もの遊ぶ姿を見たり子どもの話を聞いたりする ことが「子育てのものすごいエネルギー」になる

のではないかという思いがあった(下線部⑦)。

「ひろば」の対象は保育所を利用する親子とは異

なり、在宅の子育て親子ではあるが、子どもの遊 ぶ様子を見ることが子どもに対する肯定的な感 情を高めたり、「ホッとできる」安心感をもたら したりするのではないか、とC先生は考えたの

である。

 A保育園の「ひろば」成立期にあたる1995年 は、エンゼルプランに基づく子育て支援施策が展 開された時期であり、当時は少子化対策としての 保育サービスの拡充が推し進められていた。ここ では重点課題として「仕事と子育ての両立支援」

が第一に掲げられており、子育て支援の取り組み は保育サービスの拡充が中心であった。また、A 保育園ではエンゼルプラン以前より一時保育を 開始していたが、保育所では地域の子育て支援と して一時保育事業や育児相談活動などの取り組 みが推進された。このような制度の流れの中で、

C先生は子育て支援としての「ひろば」を「特別

なものではなく」、親が「ホッとでき」、かつ「子

どもが落ち着いて遊べる場」として位置づけてい

たのである(下線部⑥、⑧)。

 C先生の「ひろば」実践とは、一時的に親を子 育てから解放するのではなく、親と子を一体とし てとらえ、両者が充実して過ごすことのできる場

の提供という取り組みとして成立したものであ った。そしてこのような場において親子が相互に かかわり、親が前向きに子育てに取り組めるよう になる点に「ひろば」実践の意義を見出していた

と言える。

3.子どもの発達に適した環境の提示

 それでは、C先生の考える「ひろば」における 親子の関係性に対する支援とは具体的にどのよ

うなものなのだろうか。【インタビュー3】は、親

たちが求めているのは実はほんの小さなことで はないかという語りの文脈において、話された内 容である。

【インタビュー3】2006.3.14

C:例えば家でね、お母さんと子どもが一対一で 向き合っていてしんどいって思ってるときに ここに来て、子どもが自分で色んなおもちゃ を見つけて遊ぶ。ひたすら15分、20△と電 車で遊んでいる。そのZをお母さんが見て、

「親が何かをしなくっても、子どもは遊べる

ものがあれば遊ぶんだ、その傍らにいて子ど もが振り向いたときに相槌を打ったり、目を 合わせてうなついたりすると、子どもは安心 して遊べるんだ」ということがわかると、子 どもが愛しくなるじゃないですか⑨。いっも

「お母さん、お母さん」って言っている子が、

親から離れて自分の遊びをするということだ

けでも、「この子は遊べない」と思っているお

母さんにとっては、目先の変わったおもちゃ があって遊べるっていうことは、それだけで 子も親も、すごく安心するんじゃないか⑩っ ていう思いがあって。ここに来る子どもたち の年齢に合ったおもちゃ選びにも、ものすご く気を遣い、思いをかけて子どもの遊ぶ道具 を選んでいきたいと思っているんです。子ど

一52一

(8)

もがいいおもちゃでじっくり遊ぶということ

が体験ができて、「あっ、こんなおもちゃで、

子どもは30分も遊ぶんだ」「この子はこんな

ものが好きなんだ」ということがわかると、

お母さんも自分の家でも高価なものだからす ぐには買えなくても、それに似たようなもの を選ぶと思うんですね⑪。支援センターで子 どもが遊ぶ姿は、子どもはものすごく色んな ことを学んでいると思うから、そのおもちゃ を親に知らせたいという思い、このおもちゃ で子どもはこんな風に遊ぶんだ、その遊びを 通して子どもはこんな風に育つんだというこ とを、目で親に知ってほしいという思いがあ

るんです。

 C先生は、「ひろば」に子どもが充実して遊ぶ ことのできる環境を構成することによって、家庭 で「お母さんと子どもが一対一で向き合って」い る親子の密着した状況を解消し、さらには親子の 関係性に変化をもたらすことができると考えて

いることがわかる(下線部⑨)。「ひろば」は、親

が一時的に子育てから解放される一時保育等の 預かり型の保育サービスとは異なり、親子が一緒 に過ごす場である。従って、ここでは親が子ども の遊びにかかわる必然性が生じることになる。し かし、子どもが「自分で」「15分、20分と」充実

して遊ぶことができる環境を構成すると、親が

「相槌を打ったり、目を合わせてうなついたりす る」だけで子どもが「安心して遊べる」ことから、

親子の応答的なかかわりを継続しつつも、遊びを 媒介として適度な距離を保った関係性が生じる

のではないか、と考えているのである(下線部⑩)。

 同時に、家庭とは異なる充実した遊びの環境を 用意し、子どもが自発的に遊ぶ姿を引き出すこと は、親の不安を解消したり、「子どもが愛しくな

る」ことにつながるのではないか、という思いが 読み取れる(下線部⑨)。また、C先生は「ひろ ば」において「子どもがいいおもちゃでじっくり 遊ぶ」姿は、親に子どもの育ちに適した、あるい は子どもが好む遊びや玩具について伝える機能 を果たし、家庭における玩具選びの参考になると

考えているのである(下線部⑪)。

 このように、C先生は家庭における日常的な親 子の関係性に変化をもたらすことを意図しつつ、

子どもが自発的に遊ぶことのできる「ひろば」環 境を構成していることが明らかになった。また、

C先生はこのような支援が、親の子どもに対する 肯定的な感情を高めると同時に、遊びの重要性や 育ちに適した玩具について伝える機能を果たす

ことを期待していると言える。

4.「ひろば」におけるスタッフの役割

(1)子育てを楽にする子ども理解

 次に、日々親子にかかわる「ひろば」スタッフ の行う支援について、C先生はどのように考えて いるのだろうか。まず、「ひろば」における親の

育ちに関する語りの一部である【インタビュー4】

を考察してみたい。

【インタビュー4】2006.3.14

筆:以前「親育ち」という視点で伺ったんですけ  ど4)、お母さんたちに自分で気づいて「育っ  てもらう」ための工夫があるのかなと、感じ  たんですけれど。

C:結局は、親と子って離れられないから、支援

 センターや保育所っていうのはその子の一生

にとっては、わずかな時間。そのわずかな時

間に子も親も、ものの考え方とか、子どもと

のかかわり方みたいなものを確立させるまで

は無理だけど、「あんな考えもあるかな」と触

れることが必要かなと思うんですね⑫。例え

(9)

ば、積み木で遊ぶ子どもの姿から、何が育っ ているかはなかなか伝えられない。でも、通 信やちょっとした会話の中で、「こんな風に 積める様になったっていうことは、指先も頭

も、玄何学的なものが理解できているんだね」

とか「三角と三角を合わせて四角になるって わかっているのはすごいね」って横で声をか U6⑬ことによって、お母さんが「このこと

ってすごいんだ」っていうことがわかったら、

何か嬉しいでしょ⑭。紐通し1つにしても、

「あ、紐通ししてる」っていうんじゃなくて、

紐を通して持ち換えるっていうことが、どれ だけ子どもの指先の機能が発達しているかっ ていうことを伝える⑮ことによって、子ども の遊びは子どもを育てる大切な道具なんだっ ていうことがわかったら、かかわり方も、与 えるおもちゃも変わってくるんじゃないかな と思うんです⑯。子どものしている事の意味 がわかると、子育てが楽になるんじゃないか

血と⑰。ぎゃ一っと泣き騒いだとしても、「今

この子がこうして表現しているけど、この子 が本当に訴えたいことは何なんだろう。ちょ っと落ち着くまで様子を見ようか」って待て るのと、何とかこの騒いでるのを抑えたいと 思って叱るのか。子どものしている事の意味

を、私は伝えたいと思っているんです⑱。

 C先生は、「ひろば」や保育所が関与する乳幼 児期とは「わずかな時間」ではあるが、この時期 に保育の専門職である保育士の保育観や子ども へのかかわり方に触れることの必要性について 述べている(下線部⑫)。B保育園の「ひろば」

スタッフは、長年保育に携わった経験を有する保

育士である。【インタビュー4】からは、このよう

な「ひろば」スタッフが子どもの遊ぶ様子を見な

がら「ちょっとした会話の中で」、その姿がどの ような発達を示すのかを解説するようなかかわ

りを行っていることがわかる(下線部⑬、⑮)。

 このような支援のメリットについて、第一に、

親が子どもの育ちの状況を理解し、子どもの行為 を肯定的に評価できると、子どもの何気ない姿を

「嬉しい」と感じることができるのではないかと 考えている(下線部⑭)。つまり、「どれだけ子ど

もの指先の機能が発達しているか」といった発達 の状況や、子どもが遊ぶという行為の中で「何が 育っているか」といった遊びの発達的意義をスタ ッフが伝えることによって、親の子どもの見方を 肯定的なものへと変化させることを意図してい るのである(下線部⑯)。また、このような子ど もの育ちを支えるものとしての遊びの価値を親 が理解できると、実際の子どもへの「かかわり方 も、与えるおもちゃも変わってくる」のではない

かと、C先生は期待しているのである(下線部⑯)。

 第二に、スタッフが前述のような子どもの理解 の仕方のモデルを例示すことで、親が子どもの発 達プロセスや行為の意味を理解できるようにな

ると、子育てが「楽になる」のではないかという

思いが読み取れる(下線部⑰)。子どもの行為の 意味が理解できると、例えば子どもが「ぎゃ一っ と泣き騒いだ」場面でも、子どもの「表現」から

「本当に訴えたい」気持ちや要求、主張等を理解

することができると考えているのである(下線部

⑱)。子ども理解を助ける支援は、単に保育士と しての価値観に基づいて「子どもの視点」から親 に変化を求めようとするものではなく、子どもと の関係において負担が軽減されることから、親に とっても有効なものであると捉えているのであ

る。

 【インタビュー4】からは、子どもの育ちに対 する肯定的な見方を提示すること、そしてこのよ

一一T4一

(10)

うな育ちを支えるものとしての遊びについて理 解を促すことを、C先生は「ひろば」スタッフの 役割として捉えていることが明らかになった。そ してこのような支援が、親の子育ての楽しさを実 感させ、子どもとの関係における負担感を軽減す

ることにつながるものとして考えていることが わかった。ただし、このような支援は「あんな考 えもあるのかな」という表現に見られるように

(下線部⑫)、保育士の価値観を親に押し付ける

ものではなく、各家庭にそれぞれの子育ての考え 方があることを認めた上で、子ども理解のひとつ のモデルとして提示しようとする姿勢がうかが

える。

(2)親としての経験を支える「寄り添う」支援

 親子の関係性とは、それぞれの親と子の組み合 わせによって生じるものであり、親子の組み合わ せによって形成される親子の関係性は何通りに もなる。そして個々の関係性は、子どもの発達的 変化や親子相互のかかわりの経験を積み重ねる 中で、時間の経過とともに変化していくものであ

る。

 「ひろば」では、このような特性を有する親子 関係に加えて、親同士、子ども同士、親とわが子

以外の子ども等、様々な関係を有することとなる。

「ひろば」の利用の仕方は任意であるために、そ

の時々によって異なる、不特定多数の親子が居合 わせることになるからである。このような他の親 子とのかかわりにおいて、特に子ども同士のけん かや物の取り合いといった場面で、親は困惑した

り、相手の親に気を遣う余りわが子に必要以上に 注意を与えたりと、その対応に苦慮することが多

い。

 【インタビュー5】は、「ひろば」において2歳 の子ども同士のトラブルが親同士のトラブルへ

と発展したという事例に関する語りである。わが

子を傷っけられたと不快を示したEさんに対し て、Fさんがその原因をつくったわが子に何度も 謝るよう促したが、子どもには悪意が無かったた め最後まで頑として謝罪をしなかった。Fさんが わが子にかわって謝罪を述べたが、Eさんはわが 子を傷つけた子ども本人が謝らないことに納得 がいかず、怒って「ひろば」を去ってしまったと

いう事例である。

【インタビュー5】2007.8.30

C:今こんな小さな子ども同士のトラブルだけど、

 この子が大きくなるまでに幾つかそういう修 羅場というか、お母さんが悔しい思いをした り、出すぎで失敗したなと思うときがあった り。私たちもそうだけど、お母さん自身が子 どもを介していろんなかかわりがあって、親 がきちんと話さないといけないときがあった り、子どもに任せるときもあり、かけひきが あるんだと思います。それが、親としての成 長だと思うんですね⑲。だけど、スタッフが いつも中に入って「こちらはこんな思いだっ たよ。こちらはこんな思いだったよ。それは

子どもの発達でね。」という介入の仕方もある

かもしれないけど⑳、お母さん自身がちょっ

と離れてみて「あ一大人気なかったな」とか

「もっと子ども同士でできたのに」って思う ことが、その人の成長につながるのかなと⑳。

「あなたがちゃんと謝らなかったから、お母

さんがこんな」って子どもにあたるよりは、

お母さんが「(子どもに対して)謝らないとい

けないよね」って言いながらも、時間をおい

てどこかで冷静になって、「私の方が大人気

なかったわ」って思えるのは、すごい大きな

成長ですよね⑳。どれだけその居場所が安心

できるかっていうのは、スタッフが白黒つけ

(11)

ないっていうことと、親子を否定的に見ない、

肯定的に支援する⑳ということ。ついつい、

経験者であったり、わかってる分説教したく

なったり、「それはね」とかって自分の発達論

みたいなものを語りたくなる。経験があれば あるほどね。それをぐっと み込むというこ

とがスタッフの力量。本当は知ってるんだけ ど知らないふりをするというか。本当は知っ ているんだけど、お母さんの今の気持ちに寄 り添うことが、スタッフの気にしないといけ ないところかなと⑳。

 C先生は「子どもを介していろんなかかわり」

を経験する中で、「修羅場」のような場面に直面 する機会は避けられないことであるとし、親が

「悔しい思い」をするような葛藤の体験を、「親

の成長」につながるチャンスとして捉えている

(下線部⑲、⑳)。「ひろば」スタッフは、場の利

用の仕方や子ども同士のトラブルの場面におい て、親同士の関係を調整する役割を担う。C先生 の「ひろば」においては、保育士であるスタッフ が子ども同士のけんかの場面に介入することで、

親同士のトラブルを未然に防ぐことも可能であ ったと考えることができる。あるいはトラブルへ の対応方法として、スタッフが仲介役として両者 の親の思いを代弁し、関係を取り持っような支援 の仕方もあるかもしれないが(下線部⑳)、ここ

では親が「時間をおいてどこかで冷静になって」、

わが子に無理に謝らせようとした自分の態度に っいて「私の方が大人気なかった」と内省できる

ことを「大きな成長」と表現している(下線部⑳)。

このような場面に立ち会うスタッフの態度とし てC先生が重視していることは、このような親 の行動を「否定的に見ない」こと、そして「自分 の発達論みたいなもの」を「ぐっと飲み込」み、

親の経験している感情に「寄り添う」ということ である(下線部⑳、⑳)。

 【インタビュー4】においては保育の専門性を 生かして、積極的に子どもの行為の意味や発達の 見方について伝えていくことの必要性を述べて いたが、このような親子の関係性についてはそれ ぞれの親の行動の仕方を尊重し、そこで経験され るネガティブな感情や葛藤を支えることをスタ

ッフの役割であるとしているのである。つまり、

ここではあくまでそれぞれの親子の問題として、

親としての行動を尊重し、第三者としての介入を

控えることが優先されるということである。

 このように、「ひろば」における支援者の役割 には、親と親、あるいは親と子の間で生起する葛 藤場面に付き合いながら親の内省を支え、「親の

成長」を促すという側面があることがわかる。

N.全体考察

 C先生の考える子育て支援の長期目標とは、親 子がそれぞれに「人格」をもつ対等な存在として お互いの意見に耳を傾けながら、「折り合いをっ ける」ことのできる親子関係を構築することであ った(下線部④、⑤)。このような見通しを持ち ながら、C先生は親子を一体として捉え、両者が 遊びを通して相互にかかわり合いながら育つこ

とのできる場として、「ひろば」実践を展開して

いることが明らかとなった。ここでは、「ひろば」

における親子の関係性に対する支援についてよ り詳細に検討するために、①スタッフによる直接 的支援、②環境の提示による間接的支援、③関係 性に対する支援、の3つに分けて考察してみたい。

1.スタッフによる直接的支援

 まずは、「ひろば」において直接的にスタッフ が行う支援について考えてみたい。C先生の子育 て支援観の特徴は、親に子どもの発達の道筋や行

一56一

(12)

為の意味を理解してもらうことを目的としつつ も、それぞれの親の子育てに対する価値観や行動 の仕方を尊重する姿勢にあると言える。【インタ

ビュー−4】からは、長期の子育てにおいて保育所

が関与するのは「わずかな時間」ではあるが、そ の間に「『あんな考えもあるかな』と触れること

が必要かなと思う」と述べており(下線部⑫)、

保育士であるスタッフの行動や子どもの行為の 解釈の仕方を提示することは、あくまで親が自分 なりの子育てを行う上でのひとつのモデルとし

て位置付けていることが読み取れる。その方法は、

一方的に「こうすべき」として指導的に提示する のではなく、「ちょっとした会話の中で」「横で 声をかける」というものである(下線部⑬)。つ まり、子どもの幸せを願う保育士の立場から、親 に子どもをよりよく理解してもらうことを願い つつも、保育の理論や適切な行動のモデルを教示 するのではなく、親子が「ひろば」で過ごす中で 子どもが示す具体的な姿に寄り添いながら、その

意味を伝えていくという方法である。

 このような支援とは、単に「子どもの視点」に 立って子どものために親に変化を求めるもので はなく、親にとっても大きな意味をもつものであ ることを指摘している。つまり、「子どものして いる事の意味がわかると、子育てが楽になる」と

C先生は考えているのである(下線部⑭)。

 これは、「ひろば」が直接的に支援の対象とす る乳幼児期が独特の発達を示す時期にあること や、十分な言語コミュニケーションがとれないこ

と等による子育ての大変さが、単に緩和されると いうことだけではない。C先生は、子どもの「表 現」から「本当に訴えたいこと」がわかると、親 子が対立した場面においても、「人格が違う」存 在である子どもとの「小さいときからのやりと

り」の積み重ねの中で、「折り合いをつける」こ

とができるようになると考えているのである(下 線部④、⑤、⑬)。つまり、C先生の「ひろば」

実践の長期目標である親子の関係性を支える基 盤となるものとして、このような直接的支援が行

われていると言える。

2.環境の提示による間接的支援

 次に、「ひろば」という環境の提示による間接

的支援について考えてみたい。【インタビュー3】

では、C先生が子どもの発達に適した環境を構成 することによって、家庭とは異なる子どもの姿を 引き出し、親子の関係性に変化をもたらすことが

できると考えていることが明らかとなった。

 子どもが自発的に遊ぶことのできる環境は、第 一に家庭における密着した親子の関係を、適度な 距離を保った関係へと変化させる。つまり、子ど

もが自発的にかかわる環境を用意し、子どもが

「親から離れて自分の遊びをする」状況を作るこ

とによって(下線部⑩)、親と子の間に適切な距 離を作り出すことができるということである。

 第二に、子どもが自発的に遊ぶ姿を引き出すこ とは、子どもの発達状況を見えやすくする。子ど もが充実して遊ぶ環境がない場合には、親への関 心が集中し親子が密着した状況が生じやすい。加 えて、家庭における遊びは日常的に繰り返し行わ れるために飽きやすく、空間も遊び相手も限られ ている。そもそも、子どもの年齢発達や興味に応 じた環境を構成することは、何らかの手掛かりが 無ければ難しい。このような環境において見られ る子どもの姿から、わが子が「遊べない」あるい は「遊ばない」と感じ不安になるケースは少なく

ない。

 C先生は「ひろば」において子どもの自発的に

遊ぶ姿を引き出すことは、このような親の不安を

解消し、また家庭において子どもの遊び環境を構

成する際の手掛かりを示すという点で有効であ

(13)

ると考えているのである。

 さらに、このように親子の関係に適切な距離を 伴って子どもが充実して遊ぶという状況は、親の 子どもに対する肯定的感情を高めることにつな がるという考えがうかがえる(下線部⑨)。加え て、他のインタビューにおいてC先生は「子ど もがコツコツと遊んでいるところに親がかかわ って、一緒に遊ぶという事の方が子どもも親も育 っんじゃないか」という思いから、子育て支援活 動を一時的に親が楽しみを享受するようなイベ ントにはしたくないと述べている(和田,2008,

p.121)。つまり、C先生は親に子育てにおける主

体性を求めっつも、「ひろば」という環境を構成 することによって、自然と親が子どもに応答的に かかわる状況を生み出し、また子どもに対する肯 定的感情を高めることで、親子の関係性が向上す

るような間接的支援を意図していると言える。

3.関係性に対する支援

 「ひろば」は、開所時間内に不特定多数の親子 が自由に利用するため、それぞれの親子の利用頻 度も利用時間帯も異なる。従って、居合わせる親 子が互いに顔見知りであるとは限らず、そこには 親子の関係性だけでなく、親同士の関係性、子ど

も同士の関係性、あるいは地域ボランティアとの 関係性など、様々な関係性が生じることとなる。

「ひろば」における親子の関係性を考える際には、

親と子といった二項関係だけでなく、その子、そ の親が関与する周囲の親や子どもとの関係を媒 介とした関係が生じることとなる。ここでは、支 援スタッフによる直接的支援のうち、このような

関係性に対する支援を取り上げてみる。

 まず、C先生は先に述べたような親同士の関係

の中で生じる様々な経験を、「親としての成長」

の機会として肯定的に捉えている。「ひろば」利 用者である親同士の関係調整と言うとき、【イン

タビュー5】のようなトラブルを防ぐために介入 するという方向性も考えられる。しかし、C先生 は親同士がぶっかる局面も子育てに伴う出来事 の一つとして捉え、そこで経験する葛藤や子ども に対するネガティブな感情に寄り添うことを支

援者の役割であると述べている(下線部⑲、⑳)。

その際には保育の専門職としての介入を控え、ト ラブルの発端となった子ども同士のけんかの意 味や発達的意義などについて説明するのではな く、そのことで経験している「お母さんの今の気 持ち」を理解しようとする態度を優先させるべき

であると考えている。つまり、「子どもの視点」

から、無理に子どもに謝罪させるよりも、まずは 子どもがそのような行為に至った理由を察する べきであるといった指摘を親に対して行うので はなく、わが子の行動によって相手の親から責め られ、悔しい思いや親としての自尊心を傷つけら れた心情に目を向け、「親の視点」に立って共感

を示すことを重視しているのである。

 このように、C先生の関係性に対する支援とは、

親の主体的な経験を重視し、その中で生起する葛 藤やネガティブな感情に寄り添い、支えようとす

るものであると言える。そしてこのような支援が、

親の内省を促し「親としての成長」をも支えるこ とにつながると考えていることが明らかになっ

た。

V.おわりに

 本論では、C先生のインタビューの考察を通し て、「ひろば」実践における親子の関係性に対す る支援について考察した。ここで明らかになった ことは、「ひろば」という場において子どもの発 達を支える環境を構成し、そこで見られる子ども の行為の意味や発達の状況を伝えることによっ て、それぞれの親と子との関係性を安定したもの

一58一

(14)

にするための支援が行われていることであった。

このような支援とは、それぞれの親の自分なりの 子育ての方法を保障しつつも、C先生の保育士と しての価値観に基づく望ましいかかわり方や子 どもの理解の仕方を学び取るための環境を、直接 的あるいは間接的に提示することによって行わ れていた。このような支援は、子どもとの関係に おける親の負担を軽減させることが期待され、長 期に渡る親子関係の基盤を構築することに役立 つものとしてC先生は捉えていた。

 「ひろば」実践は近年急速にその数が充実しつ っあるが、その支援内容については未だ一定の質 を確保できる程の検討がなされていないのが現 状である。C先生の親子の関係性を支える「ひろ ば」実践は、リスクの高い乳幼児期を乗り切るた めに直接的に子育ての負担を軽減するような一 時的な支援ではなく、長期的文脈において安定し た親子関係を構築することを目的とした子育て の「最初の土台」を支えるものであった。そして その方法とは、教育や指導によって画一的な「良 い親」になることを求め、その結果子どもとの良 好な関係性を作るといったものではなく、「ひろ ば」という環境を有効に活用し、それぞれの親と 子の関係性そのものを支えることによって、安定

した関係を目指すものである。「ひろば」環境に おける子どもの行為の意味や遊びの重要性に関 する理解を助けることにより、子どもへの肯定的 な見方や適切なかかわりを引き出すこのような 支援の在り方は、今後の「ひろば」実践を検討す

る上で示唆に富んでいる。

 加えて、このような支援は親の主体性を前提と した親としての「育ち」を促し、また一人の人間 としての「成熟」をも促す可能性を有することが 示唆されていた。C先生はインタビュー中で、

「親の成長」という表現を用いていたが、「ひろ

ば」実践における親の「育ち」を支える支援とは、

どのように考えられ、また具体化されているのだ ろうか。この点に関する検討を今後の課題とした

い。

1)従来の地域子育て支援センター事業、つどい  の広場事業、児童館における子育て支援活動を

 それぞれ「センター型」、「ひろば型」、「児童館

 型」として平成19年度より再編したもの。B  保育園の「ひろば」は「センター型」である。

2)厚生労働省雇用均等・児童家庭局「特集平成  20年度児童福祉関係予算案の概要」こども未  来2008,4.p.6−14

3)筆者が「ひろば」実践にかかわっていた経緯  から、インタビュアーとしてB保育園の実践に  かかわりつつも、意見を求められた際には共に

 考える姿勢をとった。

4)2005年9月に、B保育園の「ひろば」におい

 てフィールドワークを行った。

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謝辞

 お忙しい中、多くの時間を割いてインタビュー にご協力下さいましたC先生に、心より御礼申

し上げます。また、度重なる訪問を受け入れて下 さいましたB保育園の諸先生方に感謝申し上げ ます。最後になりましが、ご多忙の中、丁寧にご 指導下さいました戸田雅美教授に厚く御礼申し 上げます。

Abstract

 The aim of this study was to reveal how a practitioner can improve the relationship between parents and the child in the hiroba practice of child−care−support. I picked up the certain practices of hiroba which had been reflectively considered and analyzed the practitioner s life stories apPeared in the life story lnterVleWS.

 From this study, it turned out that there were three key features about hiroba . First, the practitioner illustrated how to understand a child sacts as the direct support fbr the parents, agreeing that each of the families had their own thoughts about child care. Secondly, she tried to improve the relationship between the parents and the child through the environment used fbr the child splay. Thirdly, she tried to support the relationship itself in situations which caused di伍culties in relations of attendants. The aim of these supports measures was to promote the fbrmation of a steady parent−child relationship and growth of the parents .

Key words:child and family support,parents and the child, relationship, hiroba

参照

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