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窯芸 作陶及び釉薬の研究 : 釉薬の発色における媒 熔原料と銅との関連

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(1)

窯芸 作陶及び釉薬の研究 : 釉薬の発色における媒 熔原料と銅との関連

著者 中里 純江

雑誌名 東京家政大学生活科学研究所研究報告

5

ページ 25‑45

発行年 1982‑03

出版者 東京家政大学

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00009741/

(2)

(写真一1)

大皿「蝶」

(写真一2)

花 器

(  ij二真一3}

中里純江作品

(3)

(1)土灰による青織部粕テストピース

       { tj二真一4 )

      ・ ノ匠よ り訂司で†・N{ll

(2)石灰石による

  青織部粕テストピース醇郎5・

      ・左より調合Nu 1

(3)炭酸バリウムによる

       青織部紬テストピース

・左より調合N〔己 (写真  6)

(4)青織部粕テストピース 吻璽 7)

(5)青織部粕テストピース ^:監捜.−8〕

辰砂粕テストピース

      ( 与二s .(− 9)

   A表一6    B

1/r:12、三一7

{イ臼表一8

表一9 表一10

/左℃,表一11

〔右1一表一一12

新しい粕薬のテストピース

(4)

窯芸 作陶及び紬薬の研究

粕薬の発色における媒熔原料と銅との関連 中 里 純 江*

Coramic Art−Studies of Ceramies and Glaze The Relations between Solvent Materials and Copper   in Coming out of the Calor of the Glazes

Sumie NAKAzATo

緒 言

 この二年間皿や壷の大物をはじめ茶道具,雑 器にいたるまで古陶を研究すると共に,作陶技 術を高め,独自の作風を作り上げるよう努力し てきた。その作陶における発表は「二陶展」と して第一回を昭和55年12月15日から12月20日ま で銀座「はまの屋画廊」において,又第二回を 昭和56年12月8日から12月13日まで銀座「イス ズ画廊」において行なった。

 紬薬は焼物に多くの美感を与える大切なもの であるが,近年化学的な分野からの研究も進め られ科学薬品も新たに紬原料として用いられる ようになってきた。そこで主な粕原料の性質と 役割を調べ,伝統的な原料の他に化学薬品を媒 熔原料に用いて酸化炎焼成においては青織部粕 の,又還元炎焼成においては辰砂粕の銅の発色 の相異を研究した。この他銅を用いて新たな色 調の粕薬の調合を試みた。

1 作陶の研究

 作陶の研究では日本の古陶を中心に研究を行 ない,様々な粘土や紬薬を用いて日常生活に潤 いを与えるような作品を作るよう努力してきた。

*東京家政大学生活科学研究所研修生

二陶展を開催して二年間の作陶の成果を発表し た(二陶展の模様参照)。 写真一1〜3,11〜21 は出品した作品の一部である。

 写真一1は透明粕と姫青紬を用いて模様を描 いた直径42cmほどの大皿「蝶」である。

 写真一2は左右が姫青粕を施こした花器で,

中央は特殊なろくろ成形による天目粕を施こし た花器である。

 写真一2,12は高さ45cmほどの大きな鶴首で あるが,首の長さと太さのバランスが難かしく,

又粕掛けにも熟練を要する。

 写真一13は姫青純をたまり掛けにした長径45

㎝ほどの大皿で,写真一一14は銅を添加した紬薬 を流し掛けにした直径40c皿ほどの大皿であるが,

これらは一年ほどたつと細かな貫入が入り美し い粕調となる。写真一15も貫入紬を施こした作 品である。

 写真一16〜21は急須や湯呑,抹茶茶碗,皿,

壺などであるが,最も高度な技術を要するのは,

急須とティーポットである。そそぎ口や取っ手 のバランスによって使いやすさが決まり,又こ れらを取りつける作業も乾燥や形状が微妙に作 用するからである。

 装飾的な大皿や壷をはじめ雑器にいたるまで 広範囲に作陶を行なって来た。そしてこれらの 陶器を使いやすくしかも美しく仕上げるようそ

(5)

れそれの工程において技術を高め,さらに独自 の作風を作り上げるよう努力したが二年間では 思ったほどの成果を上げることはできなかった。

しかしこれからも益々美しく,しかも使いやす い陶器を作るよう努力したいと思っている。

姫 青 粕 壺 (写真一11)

鶴  首 (写真一12)

たまり掛け大皿 (写真一13)

大皿「青山」 (写真一14)

大皿,壼 (写真一15)

(6)

皿,壺

 中里:窯芸一作陶及び紬薬の研究

(写真一16)      茶碗,香炉

茶 器 (写真一17)

水指,茶碗 (写真一18)

(写真一19)

茶碗,壺 (写真一20)

ティーポット (写真一21)

(7)

皿 紬薬の原料と役割

  1 塩基性原料

(1) 7ルカリ類

 紬薬に用いるアルカリ類はソーダ,カリ,リ チウムの化合物で大部分が不溶性である。アル カリは強力な熔融剤であり,熔融した粕の流動 性を増し,顔料の発色を促進するための重要な 成分であると共に,融液の屈折率を増し光沢を 著しくする。又粕に用いるアルカリ成分の種類

と量とは直接粕の亀裂(貫入)に影響する。

 A ソーダ化合物

 1)食塩  粕原料としては食塩粕に最も多く   利用される。ときにブリットの脱色剤に用   いられる。

 2)炭酸ソーダ  (ソーダ灰)主要原料とし   て多く用いられる。

 3)硝酸ソーダ  強力酸化剤なのでブリット   の原料によく用いられる。

 4)瑚砂  瑚砂は酸化ナトリウム16.3%,酸   化瑚素36. 5%o,結晶水47. 2%からなり水に   溶ける。753℃で結晶水を失うがこれを焼   瑚砂又は熔融瑚砂と称している。水に溶け   るが無毒である。瑚砂は非常に強力な媒熔   剤で,紬調合物に用いる物質をすべて熔か   すことができる。

5)カレヅトー窓ガラスや壕ガラスを粉砕し   たもので,泥漿としておくと数時間で沈澱   し固化してしまう欠点がある。

6)ソーダ長石,曹長石  天然に純粋なもの   はほとんどなく,石英,酸化鉄,微量の石   灰とマグネシアを含有している。熔融剤と   しても耐火剤としても使用するが,紬成分   と融着温度とに左右される。ソーダ長石は   カリ長石に比較して,紬薬を熔けやすくす   るが光沢は劣る。

 7)氷晶石一王法榔によく用いられ,粕薬には   あまり用いられない。強力な熔剤であり,

  ・しかも乳濁剤である。

 B カリウム化合物

 カリはソーダとその化学的性質は類似する が,熔融状態や粕薬の化学的,機械的性質は,

かなり異っている。ソーダをカリで相当量置 換すると,紬は光沢を増し膨張係数を減少す

る。

1)炭酸カリー一少量の塩化カリと硫酸カリを  含む。水溶性なのでブリットにして用い,

 強力な媒熔剤で光沢のある色紬をつくる。

2)硝酸カリ,硝石一酸化剤として使用する。

3)カリ長石一天然に純粋なものはほとんど  ない。鉱物名は結晶の形により正長石,又  は微斜長石という。働きはソーダ長石と同  じであるが,粕の性質と顔料の発色に違い  が生じる。

C リチウム化合物

 強アルカリでソーダとカリに類似した化学 作用をもつ。ソーダをリチウムで置換すると 比重の低下,熱膨張率の低下,流動性の増加,

熔融温度の低下,軟化温度と固化温度の低下,

焼成時間の減少をはかることができる。又粕 にリチウムが入ると光沢が増加し耐酸性が増

す。

1)リチア雲母  弗素が入っているため熔融  が促進される。

2)リチア輝石  陶器粕に入れると貫入抵抗  性が増し衝撃強度及び熱衝撃抵抗性が増す。

3)アムブリゴナイト  急速に熔融を促進さ  せ,光沢を著しくする弗素と燐酸とが多い。

 又特に乳濁粕に利用される。

4)葉長石(ペタライト)  リチア輝石と同  じく,陶器紬に用いると貫入抵抗性が増入  し,急熱急冷に対する抵抗性や衝撃強度を  大きくする。

5)炭酸リチウムー水には少量しか溶けない。

 熔融剤となる作用が強く,又O. 5%入れて  も粕薬の流動性が変化し,表面張力は減少  するのでピンホールは少なくなり光沢を増

 す。

6)アルミン酸リチウムー白色粉末,砿榔上  粕及び陶磁器顔料に用いられる。

(8)

中里:窯芸一作陶及び粕薬の研究

7)弗化リチウムーリチウム含有量の最も多  い化合物で不溶性で強力な熔融剤である。

8)珪酸リチウムーチタソ紬の熔融温度を下  げるために用いられる。

9)チタン酸リチウムー紬の被覆力及び顔料  の発色状態を変えずに焼成温度を低下させ  ることができる。

10)ジルコン酸リチウムータイル及び衛生陶  器に用いる。無鉛粕に0.5%〜1.5%o添加す  ると光沢を増し,同時にピンホールや粕面  の荒れを防止する。

(2) アルカリ土類金属化合物 A 石灰化合物

 石灰化合物はほとんどすべての粕薬に含ま れているが,石灰化合物が紬の基礎成分とな

るのは次の理由による。

。摩耗に対する抵抗性を増す。

。風化に対する抵抗性を増し,水の溶解に対  する抵抗性を増し,さらに薄い無機酸の溶  液に対する抵抗性を増す。

。アルカリの作用に比較すると引張り強度を  増し,熱膨張係数を著るしく低下させる。

 すなわち貫入を防止する。

 粕調合物内ではある組成範囲内で石灰は粘 土及び石英と赤熱温度で激しく反応し始める が,その媒熔剤としての作用はsk 4 a(1160℃)

及びそれ以上で最もよく示される。熔けた粕 の流動性は高温になるに従って著るしくなる。

石灰がある安定範囲より多くなると粕の耐火 度は増し,微晶質の結晶が分離してくる。こ れがマット粕をつくる普通の方法である。こ の結晶は灰長石である。石灰はskO10a(900

℃)以上で用いるすべての紬に対して重要な 成分の1つである。特に炭酸カルシウムは比 重が小さく,粕泥漿中で浮遊し,しかも比重 の大きな原料を浮遊させる役目をする。又粕 の屈折率を大きくするので光沢をよくする。

1)炭酸カルンウムー天然には鉱物として主  に石灰石,大理石,白亜等が産出する。

2)沈降性炭酸カルシウムー諸工業の副産物

 として又は主要原料として製造されている。

3)胡粉  石灰石の微粉砕したもので粒度に  よっていろいろと名称がある。

4)鼠石灰一灰色非晶質石灰岩でところによ   り化石を含んでいるものがある。わが国で  広く使用されているもので岐阜県不破郡赤  城町に産出する。

5)泥灰土一不純で非常に微細な軟質の石灰  質粘土である。

6)白雲石,ドロマイトーCaO,MgOをとる  ための原料として用いられる。

7)燐酸カルシウムー燐灰石と骨灰が最も使  われ,乳濁剤である。

8)珪酸カルシウム  天然には珪灰石として  産出する。CaSio3は石灰珪酸塩中最も熔  融温度が低く融点は1250℃〜1300℃,天然  のものは1540℃位である。

9)弗化カルシウムー螢石として産出し,強  力な媒熔剤であり,使用量により乳濁作用  を示す。

10)塩化カルシウム  泥漿の粘度を調整し素  地に対する粘着をよくし,紬層の厚みを均  一にする。

B マグネシウム化合物

 長石,石灰石,珪砂など紬原料として使用 するため,マグネシウム化合物は粕薬に含ま れている。マグネシアは低温度では耐火剤と して働き,高温度では著るしい媒熔剤となり 粕の流動性を増す。又熱膨張係数をはるかに 低下させる。

1)炭酸マグネシウム  マグネサイト(Mg・

 CO3)を用い,わずかに水溶性である。

2)ドロマイトー貫入を防止する。

3)滑石  表面張力を大きくし酸,アルカリ  に対する抵抗性を増す。

C ストロンチウム化合物

 一般に炭酸ストロンチウムを用いるが,水 に不溶性である。SrOを少量添加すると熔融 性を良好にし,1100℃以上では多量に加える

と媒熔剤として作用する。

(9)

  D 亜鉛化合物

 亜鉛は媒熔剤として働き,粕に光沢を与え,

発色団の作用を限定し,ときには乳濁性を与え る。添加量が多くなると耐火性となり熔融をさ またげる。

 1)酸化亜鉛,亜鉛華一亜鉛成分として陶磁   器に用いられる唯一の成分である。亜鉛華   は使用する前に蝦焼(1200℃)しなけれぽ   ならない。又飽和させると結晶紬となる。

 2)金属亜鉛一外装タイルや煉瓦の製造に用   いられる。

  E バリウム化合物

 条件によってはバリウムは他のアルカリ金属 よりもさらに強力な媒熔剤となる。バリウム粕 をつくる場合は,人体に無害なBaCO3を用いる。

 1)炭酸バリウムー強力な媒熔剤となる。

 2)硫酸バリウムー重晶石として産出する。

  あらかじめ炭素を加え焼成し,それからブ   リットにして粕原料に用いる。

  F 弗素化合物

 弗素化合物は敢螂工学で使用されているが,

粕原料としては毒性のため一般的でない。又高 温粕には揮発するため用いられない。

  G 鉛化合物

 塩基性酸化物として最も広く用いられている のは鉛化合物である。シリカ及び瑚酸と容易に 化合し完全にガラスになりうるもので鉛珪酸熔 融物は次に示す特徴をもっている。

 ・屈折率が高いため光沢が著るしい。

 ・アルカリに比較して熱膨張係数を減少する   が鉛含有量が多くなると逆に大きくなる。

 。引張り応力に対して延びが大きい。

 。熔融物の粘度が減少する。

 。熔融温度範囲が著るしく広くなるのでわず   かな成分の差は問題にならない。

 次のような欠点もある。

 。毒性をもつため使用量が制限されるかブリ   ットにして用いる。

 。調合によっては食物の酸でおかされる。

 。ある種の鉛粕では大気中に長期間さらすと

      ガスのため表面に薄い膜をつくり光沢を失  ってくる。

 。生鉛粕は還元されると金属鉛が析出し灰色  から黒色になる。

 。鉛の含有量が多くなると粕面の耐磨耗性が  著るしく減少してくる。

 。鉛を含有する粕の強度は,アルカリ土類金  属の量が減少してくると一般に小さくなる。

1)方鉛鉱一無害である。硫黄が硫酸塩をつ   くりやすく,粕には部分的に乳濁性となる。

2)リサージ,黄色酸化鉛,密陀僧一これら   は珪酸と容易に反応してガラスをつくる。

  このため粘土素地表面を熔かし,素地によ   く熔着する。

3)鉛丹,赤色酸化鉛一鉛丹が珪酸塩熔融物   として重要視されるのは,酸素量が多いの   で還元を受けにくいからである。

4)鉛白,塩基性炭酸塩一粒子が微細なため   粕泥漿として用いられる。400℃位で分解   し水分と炭酸ガスを放出する。そのためピソ   ホールや発泡の原因となる。

5)鉛珪酸塩一低火度のブリヅトである。揮   発が少なく毒性の危険が少ないため使用し   やすい。

 H アルミニウム化合物

 アルミニゥム成分の入らない粕はない。粕が ガラス状態にあるときアルミナは融液の流動性 を調整し,熔着したときの安定性を保つために 必要な成分である。

 粕におけるアルミナの効果は次のようである。

 。粕の硬さ,その他の機械的性質を増加する。

 。風化を含む化学的作用に対する抵抗性を増   加する。

 。ブリット粕では貫入防止に利用される。

 1)アルミナーAI203は水酸化アルミニウム   を蝦焼してつくる。素地によく付着し,熔   融の初期における反応も容易である。

 2)粘土とカオリンー粕には欠かせない成分   であり,特徴は次のようである。

  。粕泥漿を懸濁させる。

(10)

中里:窯芸一作陶及び粕薬の研究  。紬泥漿を素地に粘着させる。

 。乾燥素地に施紬するときに紬にみられる   収縮を制御する。

3)長石,陶石,さぼ,蝋石一これらから粕  薬のアルミナ成分を求めることも多い。

 1 瑚素化合物

瑚酸を紬原料に使用する理由を次に示す。

。ほとんどすべての珪酸塩熔融物と混り得る。

。着色酸化物に対して強力な媒熔剤となる。

。使用量により,熱膨張率を低下させ,多く  なると熱膨張率を増加させる。

。高温度になると流動性を増す。

。他の成分の結晶化を防ぐ。

1)瑚酸  水溶性の軟らかい偏平の結晶,結  晶水は100℃で失われ赤熱状態で熔融し無  水物B203になる。粕式における位置がAI203  の所にあったり,Sio2の所にあったりする。

2)瑚砂一熔融温度750℃。湿気を吸収する。

 J アンチモニー化合物 乳濁剤又は着色剤として使用する。

1)酸化アンチモソ,三酸化アンチモンー硫  アンチモン鉱を適当な雰囲気内で焙焼して  つくる。毒性をもつが紬にすれば無害。

2)ネーブル黄一ペイント顔料に広く使用さ  れているが,粕にもそのまま使える。

3)アンチモン酸ソーダー1000℃以上で焼成  される紬には用いられない。黄色及びオレ  ンジ色を出す。

 2 酸性原料

(1) シリコソ化合物

 酸素を除けばシリコソはすべての紬のうちで 最も重要な成分である。シリカは他の多くの酸 化物と自由に化合し,特に塩基とは容易に化合 して複雑な珪酸塩を形成する。これらの珪酸塩 は次に示す特性を持つ。

 。過冷却融液としての常温における望みの光   学的,機械的諸性質を具備できる。

 。調合により,ガス,水,アルカリ酸に対し   て大なる抵抗性をもたすことができる。

 。大部分のガラス状組成においてSio2含有   量は調合物の50%oを超えている。

 一般的な糟の法則では粕組成中のシリカが増 加すると次のようになる。

 。熔融温度が高くなり,耐火度が増す。

 。粘度が高くなるため流動性は減少する。

 。熱膨張係数が低下する。

 。硬度と強度が増す。

  A シリカ,珪酸

 種々の形態の結晶として天然に産出するが,

石英は常温で安定な形であり,陶磁器の素地及 び紬の原料として用いられ,大部分の遊離シリ カはほとんどが結晶として存在する石英である。

又石英は1400℃で繰返し加熱するとクリスト・ミ ライトに変わる。石英の他に珪酸,珪砂,珪岩,

フリントがある。

  B 珪酸ソーダ

 水ガラスといわれているものでソーダとシリ カの比率によっていろいろなものができる,主 として粘着剤に用いる。

  C 天然の珪酸塩

 粕のシリカ分は粘土,カオリン,蝋石,長石,

陶石,その他からもとる。

(2) チタニウム化合物

 チタニウムはシリコンとよく似た作用をし,

発色と不透明性に対する作用は類似する。熱膨 張係数の因子は普通酸化物の中位にある。

  A ルチル,金紅石

 Tio2の不純のものでFeO 1〜25%を含む。

ルチルは象牙色及び黄褐色の素地に対する乳濁 剤として広く利用され,又陶歯の黄味がかった 色調を出すのに用いられる。

  B 酸化チタニウム

 結晶粕に重要な成分であり,下絵ノ具を作る のにも用いられる。

  3 中性成分

 塩基性原料と酸性原料の中で,酸化アルミニ ウム,酸化棚素等が中性成分となる。これらは 条件により,塩基性としての働きをしたり,酸

(11)

性としての働きをするため中間酸化物又は両性 酸化物と言われている。他に酸化第二鉄,酸化 クロム,酸化アンチモン,酸化マソガンが上げ

られる。

 粕薬を構成している原料は塩基性と酸性に大 別しさらに中性成分に細別されている。紬薬と は塩基性成分と酸性成分を混合し塩基と酸の反 応によりガラスを生成し,そのガラスの性質を 調整するために中性成分を加え調合したもので

ある。

 紬薬に最も大切な中性成分はアルミナ(Al,・

03)であるが,これが紬i薬とガラスとの最も違 うところである。アルミナは熔けている粕の流 動性を調整し,素地に融着したときの安定性を 保つのに必要な成分である。もし粕薬にこのよ うな性質がないと,粕は素地に一様な厚さに付 着せず流れてしまう。

 原料は数多くあるが,光沢,透明,マット等 いろいろな粕調を出すためには,それぞれの性 質を良く理解し使い分けをしなけれぽならない。

又原料の中には有効な媒熔剤や着色剤として用 いられているが,毒性があり,人体に非常に有 害なものがあるため,製品の用途によっては十 分注意、しなくてはならない。

皿 粕の毒性

 粕原料及び顔料に用いられているものの中で 毒性をもつ金属は,鉛,アンチモン,砒素,亜 鉛,銅,カドミウム,バリウム等である。これ らは上絵ノ具やブリット粕に使用されているの で,食器に利用する場合は特に注意しなければ ならない。

  1 鉛

 鉛は古くから紬原料として用いられており毒 性を持つ金属の中で最も良く知られている。そ のため食酸に対する溶解の対策もよく研究され ている。

 酷酸鉛として服用したときの急性中毒の致死 量は20〜509である。これはPbとして11〜279

に当り,毎日続けて服用するならば1日約163mg の鉛が必要である(ドイツ薬局法による)。し かしここで明確に区別すべきことは,急性中毒 と慢性的に投薬されたときの状態である。鉛は 人体に蓄積される金属に属し,連続して鉛を摂 取すると危険であり,毎日の鉛摂取量が1〜2 mgですでに臨界の量である。

 鉛を含む粕の有毒性に対しては,次にあげる 三つの観点から判断すべきである。

 a.融液中の酸化鉛の濃度

 b.溶解させる液体に対する鉛溶出量  c.この溶出経過が繰返し行なわれるもので    あるか。

 aの問題に対しては,現在それほど高濃度の 鉛を含む粕を食器には用いていないので問題は ないが,彩飾顔料ブリットには特に注意しなけ れぽならない。

 bについては鉛を含む粕の溶解度は大きいこ とを認識すべきである。実用上は問題にしなく てもよい程度の溶解度の鉛紬が作られているが 完全に不溶性ではない。鉛粕のかかった陶器を 使用するときは,あらかじめ煮沸すると酸に対 する溶解が減少することもある。

 cについては実験によりたしかめる問題であ る。(1931年)のFunkとMieldsの実験による と,紬上顔料は何回酸処理を行なっても溶解度 が減少することはなかったといっている。又鉛 の溶出は3回ないし5回の酸処理を行なえば,

その後の溶出はみられないという。Haffnerと Pawletta(1953年)の研究結果もある。

 各国に鉛溶出に関する衛生規準は色々あるが わが国では昭和34年12月28日号外,厚生省告示 第370号で食品衛生法として規格基準に制定さ れている。

  2 亜鉛

 亜鉛化合物が人体に有害であることは知られ いるが,今日まで粕や磁榔について何ら規定は 定められてはいない。Petzold(1954年)が4%

酷酸溶液による珪榔煮沸実験を行なったが完全

(12)

中里:窯芸一作陶及び紬薬の研究

に溶出が止まることはないという研究報告が出 されている。亜鉛は有効な粕原料であり,種類 によってはかなりの量を含んでいるが,酢酸に

よる溶出量は相当大きいものである。

  3 砒素

 陶磁器にはほとんど用いられず,麩榔では鉄 板との付着性を良くするためと乳濁性を与える ためによく用いられる。Schultheis(1949年)

の実験による砒素の溶出量は少ないが,幼児の 食料を入れる容器に用いるべきではないと報告

している。

  4 アンチモン

 アンチモンの衛生上の問題は麩榔工業ではよ く検討されているが陶磁器粕ではあまり広く用 いられていない。アンチモン酸化物は5価の場 合(Sb205)(NaSbO3)は無毒であるが,3価の

アンチ(Sb203)では著しい毒性を持つため何 価の酸化物として紬中に存在しているかが重要

な問題である。HauptとPoPP(1927年)あるい は,BeckとSchmidt(1928年)らの研究によ ると,アンチモンの5価酸化物を調合物に入れ て熟成させると,この一部が還元されて3価に なるが,SbO3をブリヅトにすると一部はSb205 に変わる。この酸化,還元反応はブリットの組 成,熔融温度,熔融時間及び粕の粉砕度が決定 的な重要性を持っている。たとえぽ熔融された

5価のアンチモンは温度が高くなり,熔融時間 が長くなると3価に変わってくる。さらに焼成 条件によっても酸化や還元の程度が異なってく

る。従ってアソチモンがどのような形で紬原料 として用いられても,食物と接触させるような ものには使用すべきでない。紬に酸化アンチモ ンの入った器を煮沸すると,溶出されるものは 常に3価のアンチモンである。もし酸化アンチ モソを用いるならばブリットにせずミル添加と

して5価のアソチモンを使用する。

 5 銅

銅は毒性の強い金属であるが,原料としては

着色剤として用いられるに過ぎない。CuOを含 む黒色紬の場合弱酸によってかなり抽出される。

しかし繰返し酸処理すると溶出量は著しく減少

する。

  6 カドミウム

 カドミウム化合物は著しい毒性を持っており 微量でも有害である。赤色や黄色の低火度ブリ ット粕をかけた食卓用器は注意しなければなら ない。カドミウム化合物は酸にある程度溶解す るものである。それゆえ酸処理によって溶出さ れるものであるとみなければならない。

  7 バリウム

 可溶性のバリウムは著しく有毒である。銅や セレンと異なりバリウムは,粕原料として広く 使用されているため注意しなけれぽならない。

バリウムを繰返し酸による煮沸処理を行なって も非常に多量の溶出を示すものである。

 有効な粕原料として毒性のある金属を現在多 く使用していることは明らかである。又今回の 研究においても銅は呈色剤,炭酸バリウムは強 力な媒熔剤として多量に用いたが,粕を作る側 のものとして,これらの使用は慎重でなければ ならない。そしてこれらに代る原料を研究して ゆく必要がある。

]V 粕薬の発色における媒熔  原料と銅との関連

 銅を着色剤として調合した粕薬は,酸化炎焼 成では緑色に発色して青織部粕と呼ばれ,還元 炎焼成では赤色に発色して辰砂粕と呼ぼれてい る。これらの粕調は焼かれた窯,時代によって 微妙に異なっている。そして現在焼かれている 各地の窯元や陶芸家の作品にもさまざまな紬調 や色調がみられる。これは用いる粕原料,素地 土又焼成炉,焼成過程などが紬調にさまざまな 影響を与えるためである。そこで媒熔原料が銅 の発色にどれほどの影響を及ぼすかに着目し,

(13)

各種粕薬の調合を行ない粕調及び発色効果の研  部粕の調合を行ない。酸化炎焼成及び還元炎焼 究を行なった。       成を行ない木灰による銅の発色状態を調べた。

  1 青織部紬における      媒熔原料と銅との関連

 青織部粕の色は,酸化第二銅が透明粕に熔け て一部が粕薬の成分と化合し,残りの銅分が細 かい粒子となって粕中に浮遊している状態で得

られるものである。この色調が媒熔原料により,

どのように変化するか見るため,石灰石,炭酸 バリウム,木灰などを増減させた粕調合物を酸 化炎焼成及び還元炎焼成して銅の発色状態と粕 調を調べた。

   長石について

 長石はほとんどの紬薬の主要原料として用 いられているが,長石には粕の組成に必要な 多くの塩基性成分,酸性成分が含まれている ため長石単味で粕薬にする場合がある。熔融 温度は種類によって異なるが1100℃〜1250℃

内外である。このように長石は非常に媒熔能,

力のある粕原料であるが,光沢,つや消,乳 濁マット粕等望む紬調を作り出すために他の 塩基性原料,酸性原料を:補うのである。

表一1 1255℃酸化炎焼成後の色調,粕調

U−

8 9

fi

調

やや暗い緑色 渋い黄緑色系の緑色 灰色に濁った黄緑色 褐色がかった黄緑色 濁った緑色

黄緑色,表面がギラギ ラしている。

やや暗い緑色 渋い黄緑色 黒味がかった黄緑色 濃い黄緑色

調

冷たい光沢,濃淡のムラ 光沢,濃淡のムラ 光沢,細かい濃淡のムラ 鈍い光沢

柔らかな光沢 光沢

滑らかな光沢 柔らかな光沢 鈍い光沢 ブクあり 光沢

 (1)木灰による青織部粕

 表一1の調合では長石,陶石,木灰,ワラ灰 酸化第二銅を用いて古くから使われて来た青織  表一1 青織部粕調合比

 1

福島 長石

草石天陶

30.0

土灰

60.0 70.0

ワラ灰

10.0 カオ

リン 珪石 酸化銅

5.0 5.0

(写真一4参照)

2 3 4 5 6 7 8 9 10

30.0

40.0

50,0 50.0 50,0 50.0

70.0

32.0 50.0 30.0

50. 0

35.0 50.0 30.0 10.0 50.0

50.0

10.0 25.0

20.0

10.0 30。030.0

5.0 5.0 5.0 8.0 5.0 8.0 4.0 4.0

 1〜8は前述のように昔から青織部粕として 調合されてきたものであり土灰を用いた透明緬 に酸化銅を加えて得られる色調である。灰によ る織部紬は全体に黒っぽい渋味のある緑色にな った。そして濃淡にムラのある粕調になったが これは灰紬の特徴であるといえる。又これらの 調合は,表面に銅が析出してギラギラしている。

市販されている青織部粕にも同じ状態になるも のがあるが,時によりこのギラギラが作品をだ いなしにする事がある。この場合,銅の調合比 を少なくするよう工夫すればよい。

   これらの調合を還元炎により焼成した結   果,酸化炎焼成の時よりギラギラが増し,

  わずかに褐色がかっただけで色の変化はほ とんどない。つまりこの調合は還元がかか

りにくいといえる(銅の添加量にもよる)。

9の調合は土灰を減少させ,酸性原料であ るワラ灰に代えて珪石を調合し,さらにヵ オリンを加えた。珪石が多すぎてよく熔け 合わずブクが出てしまった。10では9の調 合に土灰を増加し調整した。結果は光沢の ある粕調となり,色調もかなり変化した。

このことから銅の発色に変化を与えるもの は媒熔剤だけでなく,他の使用原料におい

(14)

中里:窯芸一作陶及び粕薬の研究

ても条件により微妙に変化する事を改めて確i認

した。

 (2)石灰石による青織部粕

 表一2の調合では媒熔原料である石灰石の添 加量を外割りで増減させ石灰石による銅の発色 状態を調べるとともに珪石の添加量も外割りで 増減させ石灰石,珪石の青織部粕に与える影響 を調べた。

表一2 青織部粕調合比

2570℃であり,他の成分との・ミラソスがくずれ たため逆に熔けが悪くなったのである。いかに 媒熔原料といえども添加量によっては,返って 紬調を損うことになる。このように粕i薬をより よく熔かすためには成分のバランスが重要であ り,又望む焼成温度によって調合を順次変えて 行く必要がある。しかしマット粕や結晶紬は粕 のバラソスを崩すことにより得られるのである。

 7〜9においてはわずかに長石を増加させ粕 調を見たが,ほとんど変化は見られなかった。

,轡

 1 2 3 4 5 6 7 8 9

福島長石

50.0 50.0 50.0 50.0 50.0 50.0 65.0 70.0 70.0

石灰石

10.0 20.0 30.0 50.0 10.0 50。0 20.O 20.0 30.0

カオリン 珪 石

10.0    30.0

10.0   30.0 10.0   30.0 10.0 10.0 10.0 10.0 10.0 10.0

30.O 45.0 45.O 30.0 30.0 30.0

酸化銅

4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0

表一2 1255℃酸化炎焼成後の色調,紬調

 (3)炭酸バリウムと石灰石による青織部粕  表一3の調合では媒熔原料に炭酸バリウム,

及び炭酸バリウムと石灰石を同時に用いた。そ して石灰石,炭酸バリウムの添加量を増減させ て銅に対する発色効果及び粕調の変化を調べて

みた。

 表一3 青織部紬調合比

NTo.  色 調

1褐色がかった黄緑色 2黄色味帯びた黄緑色 3黄緑色

4黄緑色 5黄緑色 6やや暗い黄緑色 7黄緑色 8白っぽい黄緑色 9白っぽい黄緑色

調

鈍い光沢 光沢,透明 光沢,透明 鈍い光沢,マット調 熔けが悪くマット調 柔らかい光沢 柔らかい光沢 柔らかい光沢 柔らかい光沢

。轡

 1

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

福島 長石 50.0 50.0 50.0 50.0 50.0 50.0 50.0 50.0 50.0 50.0 50.0 50.0

石灰石

5.0 10.0 5.0 15.0 5.0 15.0 5.0 15.0 5.0 15.0

 炭酸 バリウム

カオ リン 10.0 10.0 10.0 10.0 10.0  10.0 20.0  10.0 20.0  10.0 25.0 25.0 30.0 30.0 40.0 40.0 40.0

10.0 10.0 10。0 10.0

珪石

30.0 30.0 30.0 30.0 30.0 30.0 30.0 30.0 30.0 10.0  30.0 10.0  30.0 10.0  30.0

酸化銅

4.0

4. 0

4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0

       (写真一5参照)

 以上の結果から石灰石の量を増加するに従い 暗い感じの緑色から光沢の良い黄緑色の色調に 変わってきた。良好な粕調となるのは調合3で 石灰石の含有量は全体の25%である。しかし石 灰石の添加量が多くなり過ぎると粕は熔けずマ ット粕になる。これは石灰石単味の熔融温度が

表一3 1255℃酸化炎焼成後の色調,粕調 漁一1一2﹇3一4一5一6 色   調

黄緑色 黄緑色 黄緑色 緑に近い黄緑色 青味帯びた緑色 青味帯びた緑色

 粕    調 柔らかい光沢 柔らかい光沢 柔らかい光沢 柔らかい光沢 光沢,透明感あり 光沢,透明感あり

(15)

7

00一Qゾ10一11︸12

青味帯びた緑色 鮮やかな青緑色 鮮やかな青緑色 鮮やかな青緑色 特に鮮やかな青緑色 特に鮮やかな青緑色

光沢,透明感あり 光沢,透明感あり つややかな光沢 つややかな光沢 つややかな光沢 つややかな光沢       (写真一6参照)

 炭酸バリウムのみを媒熔原料に用いた調合は 1と12であるが,1の色調は石灰石のみを使用 した:場合と同じく黄緑色であったが,12の33%

添加した場合には青緑色となり光沢も増した。

この結果から炭酸バリウムは強力な媒熔剤であ ると共に着色剤の発色に及ぼす影響は大きいこ とがわかる。

 2〜4の調合では炭酸バリウムの含有量は10

〜17%oであるが,柔らかな光沢の黄緑色の粕調 となった。5〜6の調合では炭酸バリウムは17

〜19%であるが光沢のある青味を帯びた粕調と なり,7〜11の調合では炭酸バリウムの含有量 は24〜30%であるが,透明感のあるつややかな 光沢の鮮やかな青緑色となった。炭酸バリウム の添加量を増すにしたがい色調は黄緑色から青 緑色に変化し,又粕も良く熔け合ってつややか な光沢となった。このことから炭酸バリウムの 添加量も銅の発色に及ぼす影響が大きいことが わかる。又この調合では石灰石と共に炭酸バリ ウムを添加しているが,数種の媒熔原料を共に 用いる大きな利点は,より粕薬を滑らかに熔か すことである。

同量添加し,3種の原料による銅の発色効果の 比較を行なった。

 表一4 1260℃酸化炎焼成後の色調,紬調

恥1 調 濁った濃い緑色

灰色がかった黄緑色

澄んだ濃い緑色

調

透明感があり鈍い光沢,

柔らかな肌合

透明感があり鈍い光沢,

柔らかな肌合

鈍い光沢,柔らかな肌合       (写真一7参照)

 これらの調合では媒熔原料の添加量があまり 多くないため,全体が柔らかな粕調となった。

これらの調合の中では3の亜鉛華を用いたもの が最も銅を美しい緑色に発色させた。

 (5)釜戸長石による青織部粕

 表一5の調合では福島長石に代え釜戸長石を 用いて銅の発色の相違を調べた。

 表一一一5 青織部粕調合比

1 2 3

釜戸 長石 50.0 50.0 50.0

石灰石

オンカリ

10.0 10.0 50.0  10.0 50.0 10.O

珪石

30.0 30.0 30.0

酬銅

4.0

酸化

3.0 3.0 3.0

酸化 チタン

2.0

 (4)炭酸バリウム,マグネサイト,亜鉛華     による青織部粕

 表一4の調合では媒熔原料に石灰石の他にそ れぞれ炭酸バリウム,マグネサイト,亜鉛華を  表一4 青織部粕調合比

表一5 1260℃酸化炎焼成後の色調,紬調

調

乳濁し,灰色がかった 青緑

乳濁し,ブルーがかっ た黄緑色

やや乳濁し,安定した 黄緑色

調 やや光沢のあるマット調

マット調

柔らかな落ちついた粕調

      (写真一8参照)

 福島長石を使用した時と比較するとわずかに 熔けが悪い。又色調はややブルーがかっている。

      2の調合では石灰石を外割で増加

,轡

 1

2 3

福島 長石

。炭酸 バリウム 50.0   5.0 50.0 50.0

マグネ サイト

5.0

亜鎌1石灰石

5.0 5.0 5.0 5.0

カオ リソ 10.0 10.0 10.0

珪石1酸化銅

30.0  4.0 30.0 30.O

4。0 4.0

したところ滑らかなマット調とな り色調もブルーがかったきれいな 黄緑色に発色した。3は2の調合 にチタン(銅の発色に様々な作用 を及ぼす)を添加し発色状態を見

(16)

中里:窯芸一作陶及び紬薬の研究

たところ,2の薄い黄緑色からはっぎりとした 緑色に変わった。この結果から酸化チタソは銅 緑色の着色補助剤として使用できることがわか

った。

 又全体にブルーがかって乳濁しているが,こ れは酸化錫の添加及び釜土長石にソーダ分が多 いためこのような色調になったと思われる。光 沢が失なわれたのも釜戸長石によるものである。

 (6)青織部粕のまとめ

 銅の含有量は焼成温度,使用原料によって異 なり3〜8%で美しい色調となる。そして媒熔 原料により様々な色調となるが,木灰を用いる

と暗い黄緑色の渋い粕調となり,石灰石も同じ く黄緑色となるが光沢の美しい透明感のある粕 調となる。炭酸バリウムを用いた粕では鮮やか な青緑色となり著しい光沢となる。このように 銅は媒熔原料により黄緑から緑,緑から黄緑色 にそして青色にまで発色した。又酸化チタソを 添加することによってより鮮やかな緑色を得る

こともできる。

一一 Q一辰砂粕における

      媒熔原料と銅との関連

 一・般に辰砂とは天然に出る朱(硫化水銀)の ことであるが,陶磁器においては硫化水銀を顔 料に南いた粕ではなく,酸化銅,もしくは炭酸 銅を粕に添加し,還元炎焼成を行なって得られ る朱紅色の粕をいい,単に色が辰砂と似ている ために呼ばれたものである。代表的な辰砂紬は,

中国清朝康煕年代(1662〜1722年)の郎窯から 伝来した牛血紅(色ははでで強く,ルビーある いは生血色をしている),火焔紅(真紅の色の上 に青紫の煙がかかって炎のように見える色合)

桃花片(桃花紅ともいうがおだやかなうすい紅 色の辰砂糟)等が有名である。

 辰砂粕の赤は,酸化第二銅が還元されること によって酸化第一・銅となり,さらに金属銅とな って紬中にコロイド状態で分散されることによ り発色しているといわれている。しかし,ばっ

きりとした原因は解明されていない。

 辰砂紬は還元炎焼成によって得られる銅の色 合であると述べてきたが,実際にはそれほど強 い還元炎を必要とせず,炭酸ガス,窒素及び水 蒸気のような中性雰囲気が良いとされている。

燃焼を薪にすると燃焼ガスが酸化を防ぎ,薪か ら発生する水蒸気が中性雰囲気を作り,銅のコ ロイドを均一に分散させる。そして光の屈折,

反射によってその色調を鮮明にするといわれて いる。実際の実験では,電気炉を使用してガス による還元炎焼成を行なったので,この効果は 解明できなかった。ただしこの中性雰囲気に近 づけるために,還元に入った時期(900℃〜950

℃)に銅の酸化を防ぐための強い還元炎焼成を 行ない順次還元を弱めて焼成した。なお辰砂粕 は熔けすぎるくらい焼成したほうが発色すると いわれている。そして焼成後徐冷することが望 ましく,特に900〜700℃においてコロイドをよ く分散させるために一定時間保つと良い。後は 放冷することが原則となっている。

 辰砂粕には必ず酸化錫が添加されているがそ れは次のような働きのためである。酸化錫はす べての粕に対して乳濁剤として広く用いられて いるが,その理由は酸化錫は熔けずに分離して 乱反射を起こすためである(熔ける量は約1%

であるが微細粒子であれば8〜10%は粕に熔け る。)。又酸化錫は顔料への発色効果が大きいた め着色補助剤として広く用いられており辰砂紬 にも使用した。辰砂粕の着色剤は酸化銅又は炭 酸銅であるが,銅は高温で特に還元炎焼成の場 合に揮発しやすく,これを防ぐ為にも酸化錫は 有効な原料である。又酸化錫は還元されてでき た金属銅が再び酸化しないように酸素を引き受 け,粕中の表面は酸化されても,粕薬の中間や 下層の金属銅のコロイド状態を保護する役目を している。酸化錫の他に着色補助剤として働く ものには鉄や燐酸等がある。

 辰砂粕についても青織部粕と同じく媒熔原料 による銅の発色について調べた。

      (写真一9参照)

(17)

 (1)柞灰による辰砂粕

 表一6の調合では長石と柞灰及びワラ灰を用 いて柞灰による酸化銅(表一6A)及び炭酸銅

(表一6B)の発色状態を調べ,ワラ灰による 粕調の変化を調べた。

表一6 辰砂粕調合比

A

轡・

酸化銅1酸化錫 6

7一∩◎

福島長石 柞灰ワラ灰

銅が表面に現われた所 もあるが全体に灰色が かったピンク系 灰色がかったピンク 小豆色がかった灰色ピ

ンク

90.0 90.0

10.0 10.0

小豆色がかった灰色ピ ンク

1乳濁して柔らかな光沢

鈍い光沢,マット調

2 3 4 5 6 7 8 9

90.0 80.0 80.0 80.0 90.0 90.0

10.0 10.0 10.0 10.0

90.0

10. 0

10.0 10.0 10.0 10.0 10,0

鈍い光沢,マット調

0.3 0.5 1.0 0.3 0.5 1.0 0.3 0.5 1.0

鈍い光沢,マット調

3.6 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0

B

1 2 3 4 5 6 7 8 9

福島長石

90.0 90.0 90.0 80.0 80.0 80.0 90.0 90.0 90.0

柞灰

10.0 10.0 10.0 10.0 10.0 10.0

ワラ灰

10.0 10.0 10.0 10.0 10.0 10.0

酸化銅

0.3 0.5 1.0 0.3 0.5 1.0 0.3 0.5 1.0

酸化錫

3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0

表一6B 1265℃還元炎焼成後の色調,粕調

Na

調

中心は灰色で回りはピ ンク

中心は灰色で回りはピ ンク

全体にピンク ピンク系の暖かな色調 ピンク系の暖かな色調 所により灰色の部分が あり暖かなピンク 全体に灰色がかったピ

ンク

全体に灰色がかったピ ンク

全体に濃いピンク系の 赤色

調

光沢のある滑らかな粕調

光沢のある滑らかな粕調

光沢のある滑らかな紬調 柔らかな光沢

柔らかな光沢 乳濁し柔らかな光沢

鈍い光沢,マット調

鈍い光沢,マット調

鈍い光沢,マット調

表一6A 1265℃還元炎焼成後の色調,粕調

4

調

中心は灰色,

ンク

回りはピ

中心は灰色,回りはピ ンク

全体に灰色がかったピ ンク

全体に灰色がかった淡 いピンク

灰色系であるが濃いピ ンク系の赤色

調

光沢があり滑らか

光沢があり滑らか

光沢があり滑らか

乳濁して柔らかな光沢

乳濁して柔らかな光沢

 柞灰を用いた粕薬の色調は全体にピンク系の 暖みのある赤色となった。酸化第二銅を用いた 粕薬では0.3%ではやや淡い色調であるが,

α5%では非常に美しい赤色となった。しかし 1%添加すると所により銅が紬面に浮き上がり 紬調を損ってしまう。又炭酸銅では0.3%とO. 5

%ではやや淡い色調であるが1%では良好な赤 色となった。このことは炭酸銅を添加する場合 は酸化銅より多めに加える必要があり約1.6倍 ほど添加しなけれぽならないということである。

又炭酸銅の発色は酸化第二銅の発色に比べ鮮や かであるが,これは着色剤を使用する場合酸化 物より炭酸塩化合物の方が融け込む度合や分散 が良いためである。辰砂粕では炭酸塩化合物の 還元剤としての働きも見込んで炭酸銅を用いて いる。又4,5,6の調合ではワラ灰を添加した

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