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Academic year: 2022

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Hokkaido University of Education

Title 「話合いの目的意識の形成」を促進する授業方法の検討

Author(s) 佐藤, 秋杜

Citation 学校教育学会誌, 第24号: 81‑90

Issue Date 2021‑09

URL http://s‑ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/12142

Rights publisher

(2)

北海道教育大学函館学校教育学会

学校教育学会誌第 24 号 2021.9

75

「話 話合 合い いの の目 目的 的意 意識 識の の形 形成 成」 」を を促 促進 進す する る授 授業 業方 方法 法の の検 検討 討

The Studies in this Class Promote Students’ Awareness of the Purpose of Discussion

佐藤 秋杜 SATO Shuto

函館市立八幡小学校 Hachiman Elementary School, in Hakodate

論 文文 概概 要要

本稿では、小学校における「話合い」指導の目的を「自己の考えを広げたり深めたり(まとめたり)

する意識の形成」と定め、筆者が「話すこと・聞くこと」領域で行った授業の概要と児童の話合いの 目的意識を促進する授業方法について述べる。検討の結果、①聞き手に着目した話合い指導 ②「話 すこと・聞くこと」領域における言語活動の工夫によって(児童の)話合いに対する目的意識の形成 が促進されることが示唆された。それらの検討結果をもとに小学校教諭の立場から小学校現場での

「話合い」指導の在り方について考察する。

キーワード:国語 話合い 主体的な学び 対話的な学び パネルディスカッション

1 ははじじめめにに

平成 29(2018)年3月に小学校学習指導要領が告示された。その中で「主体的・対話的で深い学び に向けた授業改善」を推し進めることが求められている。学習指導要領改訂に際して、当初「アクテ ィブ・ラーニング(Active learning)」の導入が検討されたが、最終的に「主体的・対話的で深い学 び」と、それを実現するための「(ペアやグループを含む)話合い」を重要視する授業の設計と展開 が求められるようになった。その経緯と、内包する課題等については拙稿1)で言及したので本稿では 省略する。筆者は、この「主体的・対話的で深い学びに向けた授業改善」が、単に「(ペアやグループ を含む)話合い」を学習(授業)の中に取り入れる事であると短絡されかねないことに懸念を抱いて いる。

実際、過去 2 年程の間に筆者の身のまわりでも「主体的・対話的で深い学びの授業改善」をテーマ に掲げる研究会が数多く見受けられるようになった。そして、そのような研究会に参加してみると「ど

The Examination of Teaching Methods Promoting Students’ Awareness of

the Purposes for Discussion

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75

「話 話合 合い いの の目 目的 的意 意識 識の の形 形成 成」 」を を促 促進 進す する る授 授業 業方 方法 法の の検 検討 討

The Studies in this Class Promote Students’ Awareness of the Purpose of Discussion

佐藤 秋杜 SATO Shuto

函館市立八幡小学校

Hachiman Elementary School, in Hakodate

論 文文 概概 要要

本稿では、小学校における「話合い」指導の目的を「自己の考えを広げたり深めたり(まとめたり)

する意識の形成」と定め、筆者が「話すこと・聞くこと」領域で行った授業の概要と児童の話合いの 目的意識を促進する授業方法について述べる。検討の結果、①聞き手に着目した話合い指導 ②「話 すこと・聞くこと」領域における言語活動の工夫によって(児童の)話合いに対する目的意識の形成 が促進されることが示唆された。それらの検討結果をもとに小学校教諭の立場から小学校現場での

「話合い」指導の在り方について考察する。

キーワード:国語 話合い 主体的な学び 対話的な学び パネルディスカッション

1 ははじじめめにに

平成 29(2018)年3月に小学校学習指導要領が告示された。その中で「主体的・対話的で深い学び に向けた授業改善」を推し進めることが求められている。学習指導要領改訂に際して、当初「アクテ ィブ・ラーニング(Active learning)」の導入が検討されたが、最終的に「主体的・対話的で深い学 び」と、それを実現するための「(ペアやグループを含む)話合い」を重要視する授業の設計と展開 が求められるようになった。その経緯と、内包する課題等については拙稿1)で言及したので本稿では 省略する。筆者は、この「主体的・対話的で深い学びに向けた授業改善」が、単に「(ペアやグループ を含む)話合い」を学習(授業)の中に取り入れる事であると短絡されかねないことに懸念を抱いて いる。

実際、過去 2 年程の間に筆者の身のまわりでも「主体的・対話的で深い学びの授業改善」をテーマ に掲げる研究会が数多く見受けられるようになった。そして、そのような研究会に参加してみると「ど

The Examination of Teaching Methods Promoting Students’ Awareness of the Purposes for Discussion

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のようにすれば話合いが盛り上がるか。」「どのようにすれば多くの子が発言できるようになるか」

といった、話し合わせるための技法(手管)について論じられることが多く、どのように子どもが変容 したのかについては論じられることが少ない、ということに疑念を抱いた。中央教育審議会答申(平 成 28 年 12 月)では、「主体的な学び」は「学習活動を自ら振り返り、意味付けたり」2)する学び、で あると述べている。したがって、答申では、学習者自身が「学習活動」つまり、「(ペアやグループを 含む)話合い」を「なぜ」行うのかといった「意味付け=目的意識」が自覚される必要性があること を示唆している。

また、「対話的な学び」については、「自己の考えを広げ深める」2)学びであると述べられている。

つまり、学習者が「自分の考えを広げたり、深めたりする」という目的のために「話合い」活動が行わ れるべきであると示唆している。そして、この「話し合うこと」の指導自体は、国語の「話すこと・聞 くこと」領域で指導することになっている。そこで、小学校での最高到達水準である第 5・6 学年の

「指導内容」を確認してみると「互いの立場を明確にしながら計画的に話し合い、考えを広げたりま とめたりすること」とある。

以上のことを踏まえると、小学校段階における「話合い」指導とは「自分の考えを広げたり深め(ま とめ)たりする」能力とその「目的意識」の涵養にあるといえそうである。つまり、「主体的・対話的 で深い学びに向けた授業改善」を目指して、いくら「話合い」活動を学習に取り入れたとしても、学習 者自身による「参加者としての意識形成」、つまり、「参加して話し合う理由と目的の明確化」が成さ れていなければ、児童が「主体的」に「対話」することは望めないと言えそうなのである。

そこで、本稿では、「話合い」指導の目的を「自己の考えを広げたり深めたり(まとめたり)する意 識の形成」と定め、その「目的意識の形成を促進する授業方法」について検討を行う。

2 実実践践のの内内容容 2.1 研究対象

筆者が勤務している公立小学校(児童数 380 名、学級数9)の第6学年(児童 54 名、学級数 2)の担 任学級児童 26 名(男子 15 名、女子 11 名)を研究対象とした。なお本研究の公表については学校長の 許可を得ている。

2.2 児童の実態

男女ともに仲がよく、協調性の高い集団である。(筆者は今年度からの受け持ちで4月には全学年 で学級編成を行っている。)年度当初から、話し手の目を見て聞いたり、発言者の方に体を向けて聞い たりする姿や発言者がどのような内容を話していたかの大意を他の児童に説明することができる姿 が見られ、話合いへの参加意識は高い集団であるように感じた。

ところが、対象児童集団に「あなたは話合いに参加していると思いますか。」というアンケート(無 記名式で 5 月に実施。評価に影響しないことを伝えている。)を実施したところ、学級の約 4 割の児 童(10/26 名)が「やや思わない」「思わない」と回答し、その理由として「話合いの時に自分の意見

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などを積極的に言ったりすることが出来ない」「みんなの前で話すことは緊張する」ことを挙げてい た。これは児童が、「みんなの前で話すこと=話合いに参加すること」という認識(思い込み)をも ってしまっていることに起因すると考えられる。更に、上記の理由を挙げた児童の多くは「あなたは 話し合うことが自分の学習に役に立つと思うか」という質問に対し、「思う」理由に「将来の役に立 つ」という漠然とした理由を挙げていた。この結果から教師と対象児童集団では、話合いの参加認識 に隔たりがあり、単にそれは対象児童集団の話合いへの目的意識の希薄さ(もしくは目的自体への無 関心さ)にあると考えた。したがって対象児童集団への目的意識の強化、および指導が必要であると 判断し、授業を構想した。構想段階での(筆者の)考えは以下の通りである。

図 1 話合いに関するアンケート(5 月実施)

授業を通して対象児童集団に「自己の考えが広がったり、深まったりしたと自覚できるような活動」

を体験させることによって、「話し合いに参加すること」の意義が、「自分が発言すること自体だけに あるのではなく、他者と話し合うことで(相手の話も聞くことで)、効率よく自己の考えを広げたり深 めたりすることができる。」という認識形成及びその実践意欲の強化を図り、主体的に対話をしてい こうとする児童の育成を目指す。

3 題題材材ににつついいてて 3.1 教科書による内容の取り扱いとその概要について

(筆者が勤める)函館市では教育出版の国語教科書を採択している。そこには(「ひろがる言葉 小 学国語 六上」、令和2年)では、「互いの立場や意図を明確にしながら計画的に話し合い、考えを広 げたりまとめたりすること」という学習目標の下『立場を決めて、主張を明確にしよう』という単元 が設定されていた。その単元では「話すこと・聞くこと」と「書くこと」の異なる2つの領域を組み 合わせて1つの単元を構成していた。

「話すこと・聞くこと」の話合いはパネルディスカッション形式で行うこと 3)を内容とし、「書く こと」では、(パネルディスカッションで)話し合ったことをもとにパンフレットにまとめる 4)とい

① あなたは話合いに参加 し て い る と 思 い ま す か。(N=26)

② あなたは、話し合う ことが自分の学習に 役に立つと思います か。(N=26)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

思う やや思う やや思わない 思わない

0% 20% 40% 60% 80% 100%

思う やや思う やや思わない 思わない

6 10 9 1

6 1

19

図1 話合いに関するアンケート(5月実施)

図5 話合いに関するアンケート(10 月実施)

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78 う内容になっている。

3.2 題材の工夫

筆者は、教育出版の単元構成をもとに以下2点の工夫を加えることにした。

① 単元の最後に児童一人一人が「提案文を書く」という言語活動を設定する。

② 論題を「未来の自動車」とする。

① については、

単元の最後に「提案文」を書く、という言語活動を設定することによって、本稿がねらいとする「話 合いの目的意識の涵養」が達成できると考えた。提案文を書く活動を単元の中に位置づけることで、

児童は次のような思考をたどると考えた。『まず、論題に対しての自分の提案(意見)を明確にする。

次に異なる立場(他者)の提案を聞き、異なる立場(他者)と自分の提案(意見)とを比較する。最後 に、比較・検討(理由付け)を通して、再度、論題に対して自分の提案(意見)をまとめ(提案文を書 く)る。』つまり、話し合った後に「提案文を書く」という言語活動を設定した場合、自分と異なる立 場(他者)の提案(意見)に対して「比較・検討」といった思考を働かせる必要がある。

そのことによって、異なる立場の提案(意見)を知ったり理解したりすること(すなわち考えの「広 がり」)や、自分の考えと他者の考えとを比較・検討した結果「どんな点で」優れているか、また、他 の人の考えが自分の考えよりも「どんな点」で優れているか、といった思考を働かせること(すなわ ち考えの「深まり」)ができると考えた。

② については、

先述したとおり、他者の考えと比較・検討を行うことで、児童自身が自己の考えを「広げたり」「深 めたり」するよう意図している。そこで、話し合う論題についても比較・検討の可能な論題がふさわ しい。そこで「地域の防災について考えよう」という論題ではなく、教育出版が以前パネルディスカ ッションの論題として扱っていた「未来の自動車を考えよう」5)(平成 29 年発行)という論題を扱う こととした。

3.3 単元について

次に授業の概要を述べる。単元を3次にわけて構成し、授業を行った。授業の概要は表1の通りで ある。1次で課題(単元の最後に一人一人が提案文を書くこと)を提示し、単元の見通しをもたせた。

その上で、「安全」「環境」「便利」の(3つの)視点を示し、どの視点から自分が未来の自動車を提 案したいのかを決めさせた。その上で同じ視点を選んだ者同士(3人)でグループを組ませ,全部で 9つのグループができた。その後、グループ毎に図書を使って、現状の課題や取組について調べ、自分 達が提案したい車について話し合わせた。2次では、それぞれのグループで考えた自動車を交流する のに“パネルディスカッション”という話合いの方法があることを伝え、グループ毎に練習を行った。

その後、(視点毎に)計3回のパネルディスカッションを行い、司会も自分達で行わせた。3次では、

話し合ったことをもとに、自分が選んだ「安全」「環境」「便利」という視点から、再度「20 年後の車」

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について考え、提案文にまとめた。その後、児童一人一人が書いた提案文を「未来郵便」という教師が 作った箱に自ら投函し、本単元の学習を終えた。

表 1 単元の概要

3.4 評価について

本稿のねらいを踏まえつつ、単元の中でどのような児童の姿が見られれば、「自分の考えが広がった といえるか。」また、「自分の考えが深まったといえるか。」が教師は評価できねばならない。実際 に児童が自分の考えを広げたり、深めたりするのは、話合いをしている最中であろう。しかし、教師は

学習習活活動 指導導上上のの留留意意点

単元の見通しをもつ。

「安全」「環境」「便利」の視点毎にグル ープをつくる。グループ毎に現状の課題 や取組について調べる。

調べたことをもとに、グループで「20 後の車」のアイデアについて話し合う。

交通事故のグラフ等を提 示し、児童の課題意識を 高める。

あらかじめ市の図書館等を利用し、関連資料 を準備しておく。

調べたことをもとに現状の技術を発展させ た車や20年後実現していそうな車を考え るよう促す。

交流の仕方としてパネルディスカッショ ンという話合いの方法があることを知 る。

司会の役割について知る。

自分達の提案をパネルにまとめ、発表練習 を行う。

視点(「安全」「環境」「便利」)毎にパネ ルディスカッションを行う。(計3回)

視聴覚教材を使い、パネルディスカッション の進め方を視覚的に捉えることができるよ うにする。

「司会」「パネラー」「フロア」について

(それぞれ)のルーブリック(評価基準)

を示し、毎回のめあてをもたせる。

勝ち負けでなく、考 えを広げたり、深め たりする話合いであ ることを伝える。

パネルディスカッションで話し合ったこ とをもとに考えをまとめ、提案文を書く。

「未来郵便」に自分の書いた提案文を投 函する。

他のグループの提案と関係づけて書くよう 促す。

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児童が頭の中で考えていることを正確に捉え、評価することは不可能である。そこで話し合ったこと を踏まえて「提案文」を書かせ、表現させることで児童の考えが広がったか、深まったかということに ついて、多少なりとも見取ることができるであろう。また、考えを「広げたり」「深めたり」するとい う表現は非常に抽象的であるといえる。本単元ではそれらを具現化し、自分以外の考えについて聞き、

自分以外の考えがあることを知ること・理解することをもって「考えの広がり」。そこから複数の考 えを比較し、自分で考え検討(理由付け)していくことを「考えの深まり」とした。

それらを踏まえ、どのような児童の姿が見られれば(提案文を書くといったときに、どのような表現 ができていれば)本単元のねらいを達成できたかということについて、具体的な児童の姿を想定し、授 業に臨むこととした。それらをまとめたものが表2である。

筆者はねらいが達成されたかどうかは、具体的な児童の姿をもって語られることが重要であると考 えている。特に、話合い指導においては考えの「広がり」や「深まり」といった表現は曖昧であるが 故に、児童の具体的な姿として語られることは少なかったのではないかと考える。今回、児童自身に表 現させる活動を取り入れたことで「話すこと・聞くこと」だけの活動だけでは、見取るのが難しかっ た児童の思考の様子を明らかにすることができると考えた。このことは、児童を客観的に評価するこ とができるだけでなく、教師自身の指導の改善にも役立てることができるであろう。

表2 提案文からみられる児童の考えの「広がり」と「深まり」

4 4 結結論論 4.1 児童の提案文から

表3は本単元終了後の、児童の提案文である。個人が特定されぬよう筆者が児童の提案文を記載し 直している。ただし、原文は一切変えていない(波線は筆者が加筆した)。

広がり A. 他者の考えを受容し、考えが広がったと認められるもの。

例)「はじめ、□□という車がよいと思いましたが、~という点で他の班が 提案していた〇〇という車の方がよいと思うようになりました。」

深まり B. 他の考えと比較し、かつ、どのような点でよいと判断したか理由が明確で あるもの。

例)「他の△△という意見も出ていましたが、△△と比べて~という点で

(自分が提案した)○○の車の方がよいと思います。」

C. 他の考えと比較した結果、自己の考えに加えて他の考えも取り入れている。

かつ、その理由が明確であるもの。

例)「はじめ○○という意見だけもっていましたが、他の班の意見をきいて

△△という意見も取り入れると~という理由で□□を提案します。」

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表3 児童による提案文

提案文①では「はじめ、二酸化炭素を吸って酸素を排出する自動車がよいと思っていたが、二酸化 炭素を出さないので環境にもよく、常に走りながら電力を生み出すことができるという点で、他のグ ループが提案していた風力充電自動車の方がよいと考えた」と述べている。そのため、この提案文を 書いた児童は、話合いによって他のグループの考えを受け入れ、自己の考えを広げることが出来た児 童と見なすことができる。

次に、提案文②は「他の(グループの)意見を聞いた上で、事故をへらすのではなく、なくすという 点で(やはり)自分のグループが提案したアクセルとブレーキが一緒になった自動車の方がよい」と 述べている。これは、他のグループの考えと比べることで「事故をなくす」という自分達の自動車の 価値を捉え直し、自己の考えを深めた児童と言えるだろう。

提案文③は「他の(グループの)意見を聞いた上で「自分(達)のセンサー自動車という意見に加 え、他のグループの『車体をゴムにする』という考えを取り入れることで事故の被害を更に減らすこ とができる」と述べている。そのため、他のグループの考えを取り入れ、自分の考えを深めた児童と言

― 87 ―

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82 える。

上述した児童以外についても、表2で想定したような表現を 26 名全員が記述していた。そのため、

どの児童も概ね本単元のねらいを達成していたと筆者は判断した。

4.2 児童のアンケートから

単元終了後、5 月同様のアンケートを対象児童集団に実施した。その結果、「あなたは話し合いに参 加していると思いますか」という質問に対し、26 名中 20 名が「思う」「やや思う」と回答した。その 理由として「自分とはちがう考えを知ることができる」「自分の意見を他の人の意見と比べたりして 考えを広げたり、深めたりすることができる」ことを挙げていた。これは筆者が授業でねらったねら いと合致しており、授業によって児童に話合いの目的意識をもたせることができたことを示唆してい る。また、その他 6 名は全員「やや思わない」と回答しており、「話は聞いているけれど話している人 の方に体を向けていなかったり、相槌ができていなかったりする」といった、「聞き方」に不足がある と感じていることや「他の人の意見はしっかり聞いているけれど自分から意見を言ったりできていな いから」といった、「聞く」ことはできているが、「話す」ことに対しては苦手意識があったりするこ とから、「やや思わない」と解答していたようである。しかし、いずれも「聞く」ことに触れられてお り(以前のアンケートに見られたような)、話合いは「話すこと」のみが話合いに参加することであ る、と認識している児童は見られなくなった。更に「あなたは、話し合うことが自分の学習の役に立つ と思うか」という質問に対して、26 名中 26 名が「思う」「やや思う」と回答し、その理由として「人 に意見を聞いてもらい広げたり、深めたりしてもらえる」「自分の意見と相手の意見を比較できる」

「考えを広げたり深めたりできる」ことを挙げていた。これらはいずれも 5 月のアンケートではみら れなかった記述であり、本単元が子どもたちのもつ話合いの目的意識に一定の変化をもたらしたと考 えることができるであろう。

図5 話合いに関するアンケート(10 月実施)

① あなたは話合いに参 加していると思います か。(N=26)

② あなたは、話し合う ことが自分の学習に 役に立つと思いますか。

(N=26)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

思う やや思う やや思わない 思わない

0% 20% 40% 60% 80% 100%

思う やや思う やや思わない 思わない

8 12 6

19 7

図1 話合いに関するアンケート(5月実施)

図5 話合いに関するアンケート(10 月実施)

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83 4.3 教師の所感

単元終了後には国語科の授業に限らず他教科の話合いの場面においても、以前より参加意欲が高ま ったように感じた。具体的には、相槌や頷きといった反応が以前に比べて多くみられるようになった。

また、他者の考えを積極的にメモしたりする様子も見られるようになった。いずれも、他者の考えを積 極的に聞き入れ、よりよい考えを形成しようとする児童の姿である。そのため単元終了後も対象児童 集団は、話合いに対する目的意識を持ち続けているように感じられた。

4.4 考察

今回、国語科の「話すこと・聞くこと」領域で行った授業をもとに、ささやかながら「話合いの目的 意識の形成を促進する授業方法」について筆者の考えを述べさせていただく。筆者は以下 2 点が重要 であると考えている。

一つが、「聞き手に着目した話合い指導」である。「話合い」=「話をすること」と捉えてしまう と、学級にはどうしても(性格的に)人前で話すことに抵抗を感じたり、話す能力に自信がもてなかっ たりする児童が存在する。そのため「話ができない(苦手な)子=参加できない子」とともに参加意 識に偏りが生じてしまう。また、お互いがお互いに話したいことを一方的に話すだけならば、自分の考 えを表現しただけにすぎず、話“合い”にはならない。そこで、教師が聞き手に着目して価値づけてい くことで、児童は話合いを通じて他の児童から学びを得られる(自己の考えの変容)ことを強く意識 できると同時に、“話し合う”という行為(学習活動)そのものの目的についても理解することがで きるであろう。

更に、聞き手に着目し指導していくことは、結果的に話し手をも育むことにつながると考える。対象 児童集団に対して学期末に作文を書かせたところ、「他の児童が自分の話をしっかりと聞いてくれた り、反応して聴いてくれたりしたことで以前よりも話しやすくなった。」という記述が見られた。そ のような記述は複数の児童の作文にみられている。このことから聞き手を育むことは同時に、話し手 が(自分の考えを)話そうとする意欲を高めることを示唆している。つまり、お互いにお互いの考え を「きき合う」ということに重きを置いて指導をしていくことで、話合いによる学習が(より一層)

充実していくのではないかと考える。いずれにしても授業を行う教師自身が話し合わせる目的をもつ ことで、はじめて学習者である児童自身も話合いの目的を理解することができるであろう。

次に、言語活動の工夫が考えられる。従来、国語の「話すこと・聞くこと」領域では「話すこと・聞 くこと」自体が言語活動として設定されることが多かったように感じる。そこで今回のように提案文 を「書く」という言語活動を取り入れることで、話合いの目的意識を促進することが可能であると考 える。その際、児童が話合うことで得られた学び(自己の変容)について自らの言葉で表現(言語化)

させることが大切であると考えている。特に、今回扱った「考えを『広げたり』『深めたり』する」と いう指導内容は、例え(話合い中)児童の頭の中で行われていたとしても、授業として適切な振り返り の機会や、価値付けがおこなわれなければ、児童はほとんど(或いは全く)意識することなく学習(活 動)を終えてしまう可能性がある。しかし、それを授業の中で表現し、自らの学びを振り返る(まとめ

― 89 ―

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84

る)ような活動を単元の中に位置づけることで、児童自身が話合いにおける自己の考えの広がりや深 まりを自覚することができる。それら実感を伴った確かな学習経験こそが、(児童が)自らの学びに 対し、「主体的」に「対話」を取り入れていこうとする意欲をもつことへつながっていくのではない だろうか。

上述したこと以外にも、話し合う際に自分(達)の立場(考え)を明確にさせること、そのために必 要な資料や時間を十分に確保すること。また、単元導入時における問題提示の工夫(年間交通事故数 を示すグラフを提示する等)も指導の際には、留意しておきたい点である。

5 残残さされれたた課課題題

今回は第 6 学年でのパネルディスカッションという話合いの形式、そして筆者が担任するクラスの 対象児童集団における授業の結論・結果に過ぎない。そのため、他学年の他の話合いの形式、他の対象 児童集団においても、今回得られた知見が実証可能かどうかについて検証を加えていく必要がある。

したがって、今後更に小学校教諭の立場として授業実践を重ねていくつもりである。

注 注

1) 佐藤秋杜・阿部二郎,「小学校におけるアクティブ・ラーニングについての検討」, 教職大 学院研究紀要 (10), 2020 年, pp. 121-131。

2)〈https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1380731.htm〉(2020.10.31 最終アクセス)。

3)『ひろがる言葉 小学国語 六上』,(教育出版株式会社, 2020 年), pp. 66-67。

4)前掲(3), p. 72-73。

5)『ひろがる言葉 小学国語 六上』,(教育出版株式会社, 2017 年), pp. 112-113。

参 参考考文文献献

1) 文部科学省「小学校学習指導要領(平成 29 年告示)国語編」,(東洋館出版、平成 30 年)。

2)文部科学省「小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説国語編」,(東洋館出版、平成 30 年)。

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