通信システム工学
Communication Systems Engineering B B
山田 博仁
光ファイバー通信入門
講義日程
13.光伝送路のモード 14.光ファイバ通信
シラバス記載の授業内容
15.インターネット
1.聴覚機構と特性
,通話品質 2.音声生成機構とそのモデル化 3.音声分析と符号化
4.画像情報,視覚の機構と色覚特性 5.画像符号化と伝送品質
6.テレビジョンの映像信号方式 7.無線通信
8.電波伝搬 9.アンテナ
10.移動通信と周波数割当 11.追跡交換と制御
12.ディジタル変調と符号分割多重通信
自己紹介
近 況
・ 茨城県守谷市の自宅に家族を残し、仙台に単身赴任
・
5歳の息子と妻の
3人家族
・ 息子と一緒に軽い山登りを始めた
・ 趣味
:旅行など、特に海外
(最近は忙しくてなかなか行 けない
)略 歴
1959
年
2月 岐阜県生まれ
1981
年
3月 金沢大学工学部 電子工学科 卒業
1987
年
3月 東北大学大学院 工学研究科 博士後期課程修了
1987
年
4月
NEC研究所勤務、通信用半導体レーザ、フォトニ ック結晶、
Si
光導波路デバイスの研究開発に従事
2006
年
7月 東北大学大学院工学研究科 教授
約束ご と
・ 講義が始まってからの入退室は原則禁止
オフィスアワー
日時
:随時
OKですが、事前に電話または
E-mailにより予約のこと 場所
:電気系
2号館
203号室
による質問・相談も可
E-mail: [email protected]
、電話
(内線
): 7101・ 私語、携帯通話、メール送受信も厳禁
・ 携帯電話はマナーモードに
・ 居眠りするなら、他人に迷惑がかからないよう
・
3回注意を受けたら退室してもらい、欠席扱い
10/2
、
10/162
回分の講義
1.
講義の目的
:光ファイバー通信システムの基礎を習得する 内容
2.
達成目標
:以下について簡単に述べられるようになること ・ 光ファイバー通信システムのしくみ、特徴、応用
・ 光通信の要素デバイスの役割、構造、動作原理 ・ 光導波路
(光ファイバー
)の中を光が伝わるしくみ
3.講義内容
1
日目
光ファイバー通信とは。その歴史。現代の通信技術の中での位 置付け 光通信の要素デバイス
(光ファイバー、
LD、
PD、光増幅器な ど
)2
日目
光伝送路
(光ファイバー
)中での光伝搬。モードの概念 光伝送方式
(分散管理、中継技術、多重化技術
)4.
成績評価
レポート
10点、出席
10点
5.参考書
末松安晴、伊賀健一共著、光ファイバ通信入門、オーム社
1.
単一モード光ファイバーと多モード光ファイバーでは、ど ちらがより多くの情報を短時間に送れるか
?それは何故
? 2.光通信には何故レーザが必要
?白熱電球ではダメ
?3.
現在の電気通信における伝送方式と、光通信における伝送 方式の根本的な違いは何
?4.
光
3Rとは何か
?その内で光増幅器ではできないものは何
?
質 問
通信の分 類
有線
無線
情報搬送媒体
(carrier)重力波
電波
(電磁波
)音波
音波
電流
(電磁波
)光
(電磁波
)光
(電磁波
)機械振動
光ファイバー通信
電話、インターフォン 糸電話
伝令管
会話
携帯電話
光通信
重力波通信
衛星間光通信 腕木通信
狼煙 手旗信号
アマチュア無線 航空・船舶無線 デジタル
AV機器
FTTH海底光ケーブル
衛星通信 導波機構の有無
(
導波機構無、
自由空間伝搬
)用途
(
導波機構有
)通信方式
船内、潜水艦内通信
電気通信
無線通信
腕木通信塔
テレパシー
?
教材
衛星間光通信
Ex.)
波長
1mの光を、直径
1mのビームにして月に送った場合、
月面でのビームスポットサイズはどのくらいになるか
?ただし、月までの距離は約
38万
km答 直径約
120mガウスビーム波の広がり角
radw0 2
2w0
2
:
光の波長
) / exp(
) 0 ( )
(r I r2 w02
I
ガウスビーム波
r
強度分布
w0:
ビームウエストサイズ
レンズ焦点でのビーム 径
f a
レンズの開口数
(Numerical Aperture: NA) sin n NA
f :
焦点距離
a :
レンズの有効半径
n :
媒質の屈折率
(空気中の場合は
1)焦点でのビーム径
f
f n
w
sin 2 2
n
f 2w0
2wf
f <
Ex.)
波長
1mの光を、
NA=0.5のレンズの有効径を フルに 活用して絞った場合、どの程度まで絞れるか
?答 直径約
1.3m出展: http://premium.nikkeibp.co.jp/ftth/part2/top_f.html
身近になった光ファイバー 通信
FTTH(Fiber To The Home):
B
フレッツ
(NTT), TEPCOひかり
(東京電力
)などがサービス
光回線終端装置 とルーター
AV
機器のデジタル入出力ケーブル
AV
機器のデジタル入出力ケーブルとコネクタ
海底光ケーブル 網
出展
http://www.alcatel.com/submarine/refs/index.htm電気通信のしく み
発信器 変調 復調
同軸ケーブル 電線 伝送路
電気信号 搬送波に情
報を載せ る 搬送波 を作
る
搬送波から 信号を取り
出す 搬送波
:信号搬送の担い手
情報の送り手 情報の受け手
光ファイバー通信の構 成
光源 レーザー
LED、電球
光検出器 復調 光変調 光ファイバー
LN
変調器 伝送路
EA
変調器 フォトダイオード
(PD) APD光信号 電気信号
電子回路 搬送波は 光
情報の送り手 情報の受け手
xxxx
xxxx
電子デバイス
/回路
光デバイス
電磁波の波
光通信には、波長 長
1 m前後の近赤外域を使用
1
.広帯域
(高速、大容量通信が可能
)シリカ光ファイバーの帯域
>100 THz (THz = 1012Hz)1
本の光ファイバーで、
10Tbps(Tbpsは
1012bit/secのこ と
)以上の
伝送が可能。ごく最近、
14Tbps, 160kmの光伝送に成功
(NTT)(
同軸ケーブルの帯域:最大でも
10GHz程度
) 2.長距離伝送が可能
中継間隔
同軸ケーブル:数
km~
10km光ファイバー:
100 km以上も可能
3.漏話が少ない、電磁誘導の影響を受けない
光ファイバーは非導電性であるため、外部からの電磁誘 導ノイズ の影響を受けない。また、ファイバー自体からの電磁波 の放射も 無いので、ファイバー間の干渉が少ない。
4
.多重化が容易
光ファイバーが細く軽量のため、多芯化、長尺化が可能
光ファイバー通信の特
長
光ファイバー通信の歴
年 代 人または機関 史 事 項
1962
年
IBM, GE, MIT(米
)半導体レーザの発振
ルビーレーザ
, He-Neの発振
1960年
Maiman(米
), Javan(米
)川上
,西澤
(東北大
) Graded-index型光ファイバーの発明
1955年
Townes(米
), Schawlow (米
),光メーザーの着想
Basov(
ソ
)ら
1976
~
79年
1970
年 林
, Panishら
(米
) AlGaAs半導体レーザ室温連続発振
電電公社
,藤倉電線
(日
) 1968年
シリカ光ファイバー伝送損失が
0.2dB/kmに
光ファイバー増幅器の発明と実用化
1980年代 東工大 末松研究室 半導体レーザの高性能化
1957
年 渡辺
,西澤
(東北大
)半導体による超短波増幅・発振のアイデア
1930年代
Lamb(独
)、関
(日本
)石英ファイバー
(ロッド
)による光伝送
1970
年代
NEC,電電公社
,日立
,半導体レーザの長寿命化、発振安定化
三菱
(日
), Bell研
(米
), STL(英
)1990
年代
Southampton大
(英
), NTT(日
)光ファイバー通信の要素デバ イス
光検出器
(PD, APD)デバイス 役 割
半導体レーザー 光ファイバー
光合分波器
光スイッチなど
搬送波としてのコヒーレン トな光を発生させる。さら に、搬送波に情報を載せる ための光変調も行う
伝送路として光を導く
光増幅器 伝送中に減衰などで弱くな った光信号を光のまま増幅 する
搬送波に載っている情報 を電気信号として取り出 す
光信号を分配したり、光の 経路を切り換える
イメージ
光ファイバ ー
住友電工http://www.sei.co.jp/news/press/02/prs221_s.html
光ファイバーの伝送損失
通信用シリカ光ファイバー
伝搬損失
< 0.2dB/km@=1.55 m
光ファイバー低損失化の歴史
レーザーとコヒーレン
光になるべく多くの情報を乗せるためには、コヒーレントな光が必要 ト光
コヒーレントな光を人工的に発生させる装置がレーザー
コヒーレントとは、位相が揃った状態。高スペクトル純度、良好な収束性を有する
自然界に存在する光は全てインコヒーレント光
例
:太陽光、炎からの光、蛍の光、白熱電球、蛍光灯、
LEDコヒーレント光
t
光
の 電 界
f
又は
光 の 強 度
インコヒーレント光
(コヒーレントでない
)t
光
の 電 界
f
又は
光
の 強
度
何故コヒーレント光が必 要か
インコヒーレントな電磁波を用いた初期の通信
1887
年ヘルツは誘導コイルによる火花放電式電磁波発生器を発明
1896
年マルコーニ(
Marconi)は、ヘルツの電磁波発生器にアンテナと アースを付けて
2.5kmの無線電信に成功
出展: http://www.geocities.jp/hiroyuki0620785/intercomp/wireless/transatrananticexp.htm
その後真空管が発明されて、コヒーレントで強力な電磁波が発生できるよ うになり、通信距離が比較的に延びることとなる
1905
年日本海海戦において、ロシア・バルチック艦隊の発見が「敵艦見 ユ」と無線電信で通報され、日露戦争の勝利を導く糸口となった
軍艦三笠に搭載の三六式無線電信機は明治
36年
(1903)旧制二高の木村駿吉 教授が開発。送信機は火花放電、受信機はコヒラー検波器を使ってコイル 駆動で記録紙に出力するもので、
80海里以上の通信到達距離を達成
出展: http://blog.zaq.ne.jp/rootakashi/article/163/
電磁ノイズによる通信
コヒーレントな電磁波を用いる利点
スペクトル純度が高い
(単一周波数
)ので、受信側で周波数同調
(選択
)や増幅を行うことにより、微弱な電波でも受信できる。
(長距離伝送が可 能
)スペクトル純度が高く、占有スペクトル幅が不必要に広がらないので、同 一周波数帯を多くのチャンネルで共用できる。
(周波数利用効率が高い
)スペクトル純度が高く搬送波の位相が揃っているので、より早い速度で 光の強弱や位相を変調することができる。
(送れる情報量が多い
)スペクトル純度が高い
(単一周波数
)ので、アンテナなどを用いて、特定 の方向にのみ強く信号を送れる。つまり、伝送の指向性が高い。
(長距離 伝送が可能
)何故コヒーレント光が必 要か
このように、コヒーレントな電磁波を用いる通信は、インコヒーレントな
電磁波を用いる場合に比べて多くの利点を有している。従って、白熱電球や
LEDのようなインコヒーレント光を用いるよりも、レーザのようにコヒー
レントな光を用いる方が望ましい。
レーザ ー
レーザとは、光の発振器
光増幅媒体 光の正帰還回路
鏡 レーザー 光増幅媒体とは何か
?Amp.
電気の発振器 正帰還回路
+二準位系
(原子など
) E1E2
電子など
光の吸収 誘導放出 自然放出
減衰 増幅
入射光 出射光 入射光 出射光
発光
物質
(原子系
)と光との相互作用 以下の
3つの課程が同時に起きている
熱平衡状態
熱平衡状態では、吸収の確率
>誘導放出の確率となり、入射光は減衰して出てくる 正味では減衰
吸収
誘導放出
吸収 吸収
n2:
励起状態の原子数
n1:
基底状態の原子数
E1E2
Maxwell-Boltzmann
分布
kT E
e E
P( )
P(E) E
熱平衡状態では、励起準位の原子 数は基底準位の原子数よりも少な い
k:
ボルツマン定数
T:媒質の温度
n1>n2
誘導放出の起きる確率
= Bn2 I吸収の起きる確率
= Bn1 II:
入射光の強度
B:
アインシュタインの
B係数 自然放出の起きる確率
= An2 A:アインシュタインの
A係数
Bn1 I > Bn2 I
反転分布
レーザーとは、何らかの方法で反転分布を作り出し、放射の誘導放出
(Stimulated emission)を用いて光を増幅する装置
反転分布では、誘導放出の確率
>吸収の確率となり、入射光は増幅されて出てくる 正味では増幅
誘導放出 吸収
誘導放出 誘導放出
n2:
励起状態の原子数
n1:
基底状態の原子数 反転分布
E1 E2
kT E
e E
P( )
P(E) E
励起準位の原子数が基底準位の原 子数よりも多い状態を反転分布と いう
T
が負
(負温度状態
)n1<n2
Bn1 I < Bn2 I
電子
ホール p型 n型
半導体レーザ
半導体レーザー
(Laser Diode: LD)光を増幅する媒体が半導体からなり、 ー
pn
接合への電流注入により、電子の反転分布状態を作り出せる 特徴
:・ コンパクト
(チップ本体は
0.3mm角程度
)・ 取り扱い容易
(乾電池
2本程度で動作可能
)・ 直接変調で数
Gbpsの高速変調が可能
・ 高信頼性
(通信用の
InGaAsPレーザは
100万時間以上の寿命に
)・ 安価
(FTTH用
LDはチップコストで数百円、
CD用
LDは数十円に
)出展: www.phlab.ecl.ntt.co.jp/master/04_module/002.html へき開面(鏡面)
チップの構造
半導体レーザの発振モー ド
縦多モード発振
Fabry-Perot (FP)共振器レーザー
発振スペクトル
2
枚の平行に向き合った鏡による
FP型光共 振器によって正帰還が得られ発振するレーザ ー
へき開面(鏡面)
FP
レーザーの構造 発振波長
q L neff
2
単一縦モード発振
分布帰還
(DFB)型レーザー
出展: www.matsuoka-lab.imr.tohoku.ac.jp/purposes.html
回折格子による
Bragg反射により、光の分布 帰還が得られ、
Bragg波長近傍の単一波長で 発振
発振スペクトル
DFBレーザーの構造 発振波長
:
回折格子の周期
neff:実効屈折率
2neff
q:
モード番号
1,2 ‥‥neff:
実効屈折率
光検出器
PIN
フォトダイオード
アバランシェ フォトダイオード
(APD)ホール 電子
p+
n+
i
逆バイアスされた
pn接合に光が照射され
ると強度に比例した光電流が取り出せる
逆バイアス状態の半導体
pin接合
基本的には
PINフォトダイオードと同じであるが、アバランシェ 効果により、光電流を増倍するしくみを有している
(高感度
)n+
i p+
光
光電流
電極
電極
光増幅器
半導体光増幅器
光ファイバー増幅器
半導体レーザーの両端面に無反射 膜を形成するなどして、光共振器 をなくしたもの
(光の正帰還がか からなくなるのでレーザー発振し
ない
)半導体レーザーチップ
無反射加工
無反射加工
ラマン増幅器
光ファイバに非常に強い励起光を入射すると、石英ガラスの分子振動エネ ルギーに対応した励起光波長より
100 nm程度長い波長域に光利得が得ら れる
Er
添加光ファイバー増幅器 コアに、エルビウム(
Er3+)などの希土類を添加
Er3+
の準位 光増幅器の構成
波長
980nmなどの光で励起する
と波長
1.54 m付近に光利得発
生
光合分波器
50 mm
Arrayed Waveguide Grating (AWG)
Arrayed Waveguide Grating
AWG
の動作原理
12 N Slab WG
光を波長によって分ける
(分光器
)コア クラッド
Si
基板
0.5 m 0.5 m
石英光導波路
光スイッ チ
電気制御
-光スイッチ
(光の経路を切り換えるが、
ON-OFF制御は電気でやる
)光制御
-光スイッチ
(光
-光スイッチ
or All光スイッチ
)ON-OFF
制御も光でやる
現在研究開発中 将来の全光信号処理システムに使われるかも
?スイッチング機構 特 徴
メカニカル
(MEMS)熱光学
(T-O)効果
その他に、磁気光学
(M-O)型、音響光学
(A-O)型などもある
電気光学
(E-O)効果
nSオーダーの高速切換え
高価
mS
オーダーの遅い切換え速度 安価
mS
~
Sオーダーの切換え速 度比較的安価
Port1 Port2
入力ファイバー
出力ファイバー
入力
1入力
2出力
2出力
1ヒーター
+