九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Development of a Calibrator for Thermo- anemometer
深町, 信尊
九州大学応用力学研究所 : 文部技官
http://hdl.handle.net/2324/4744041
出版情報:應用力學研究所所報. 82, pp.221-226, 1997-11. Research Institute for Applied Mechanics, Kyushu University
バージョン:
権利関係:
九州大学応用力学研究所所報第82号 平 成9年
熱線・冷線式温度流速計用の校正装置の試作
深 町 信 尊 *
Key words: Calibrator, Thermo‑anemometer, Ultra‑sonic anemometer, Velocity‑ temperature measurement, Wind tunnel
1.
は じ め に
221
九州大学応用力学研究所では,様々な大気環境問題に関連した実験研究を行うため,温度成層風洞を 用いて種々の大気成層流を測定部内に再現している.この温度成層した流れでは,大気安定度との相似 性を確保するため,気流風速が2.5m/s以下の低風速で,また気流湿度が室温から約120℃までの大き な変化を伴う.このような温度変化を有する流れ場において速度および温度変動を同時測定するため,
熱線と冷線を組み合わせた温度流速計がよく用いられる1).熱線流速計は気流の速度変化と同様に温度 変化に対しても出力が変化するため,この分を温度測定により補償し,速度変動と温度変動を正確に分 離してそれぞれ精度良く測定しなければならない.このためには温度変化をとりこんだ精度の高い速度 の評価式を正確な校正によって作成する必要がある.したがって温度流速計の校正においては広範囲の 気流温度に対して所定の風速変化を与える必要がある.本研究の目的は濡度流速計の校正を簡便にかつ 精度良く行うための校正装置を開発することである.
2.
本 装 置 の 概 要
本校正装置は漏度流速計プローブの校正のため,微風速からの風速設定と広範囲の温度の設定が必要 であり,その設定値の正確な計測を必要とする.風速と混度の設定は.計測のための場所において安定 性と分布の均一性が問題となり,その制御においては応答性が問題となる.しかし,このときの風速特 性と温度特性は,風速と温度が相互に依存するため複雑な特性となる.風速計涸においては温度の変化 を伴う微風速の計測が必要となり,センサーの耐熱性が問題となる.温度の設定においては設定環境と 周辺環境との温度差による2次流れ等の現象発生への対応が問題となる.さらに装置全体の小型化のた め部品と構造の小型化を必要とする.これらの問題解決のため構造,部品.装置等に新たな発想を試み た.本装置は送風機部分と本体部分に分けられ,結合はシリコンホースによって結合する.送風機部分
*文部技官,九州大学応用力学研究所(大屋裕二紹介)
5.
使用部品と材料
本 体
攪拌モータ 本体送風モータ 整流金網 整流マット
熱線・冷線式温度流速計用の校正装置の試作
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図1 校正装置本体構成図
:高カアルミニュウム合金 : TAMIYA DYNATECH‑02 H
:三洋電気 モータR720‑002 ドライパーPDT‑A12‑10 200 W
:ステンレス 60メッシュ 0.1mm
: Kotobukiya ナイロン66不 織 布 厚 さ7mm 耐熱温度100℃ プロジェクターランプ:PHILIPS1 kW
味噌こし 超音波センサー 電子温度調節器 温度センサー
6.
各 部 の 説 明
[送風部]
(1) 本体送風機
:伊藤アルミ JIS‑A 1100‑0 MISO‑FILTER(小)
: KAIJO WA(T)‑395型 耐 熱 温 度120℃ 50mmス パ ン 特 注 製
:オムロン E5AX‑A
:熱電対 CA(クロメルーアルメル)
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本体が圧力損失の大きい構成のため送風ファンはシロッコファンを用い,駆動モータは風速設定精度 を上げるため制御範囲の大きいDCサーボモータを使用する.計測部に必要な風速を供給するため,本体 部分の拡散部にシリコンホースによって結合し送風する.
(2) 予熱送風機
整流マットから風速・風温計測部までの二重構造部に,設定気流温度と風路側壁温度の温度差をなく すために予熱送風機で熱風を送風し側壁温度を調整する.送風機はシロッコファンを用いインダクショ
ンモータで駆動する.一定の風速を発生させ予熱器にシリコンホースによって結合し送風する.
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[本体]
(1) 加熱部
気流を加熱する場所で,lkWのプロジェクターランプ3個を加熱ヒータとする.このプロジェクター ランプは単位体積当たりの発熱エネルギーが大きく熱容量が小さいために,装置の小型化と温度制御特 性をよくすることができる.ランプの発光エネルギーを効果的に気流への熱エネルギーに変換するため に,ランプの発光を台所用アルミ味噌こしでカバーして熱エネルギーに変換する.加熱された気流はそ の味噌こしの側壁部の穴より放出する.
(2) 攪拌部
加熱部で加熱された風を等温度分布にするため,加熱部下流にとりつけた18枚の羽根を,小型DCモ ータの駆動によって回転攪拌させる.このときの羽根の構造は攪拌を目的とするため無指向性とする.
(3) 整流マット
整流格子の代わりをするもので,厚さ7mmの耐熱温度100℃の台所用ナイロンたわしを使用し, 2枚 の整流金網の間に固定する.ナイロンたわしは圧力損失が大きくなるが金属等に比較して熱容量が小さ いので温度制御が容易になり,構造が小型単純化できる.
(4) 二重構造部
整流マットから計測部までの,測定部内部の温度と風路側壁温度の温度差をなくすために二重構造と した.その二重構造部に予熱送風機で加熱された熱風を旋回させながら送風し側壁温度を調整する.こ れによって温度差による2次流れの発生を抑え一様で安定な気流を供給できる.予熱のための加熱器と
してはlkWのプロジェクターランプを使用した.
(5) 計測部
計測部において風速計測は,温度の変化を伴う微風の計測が可能な超音波風速計を用いる.そのため 計測部に50mmスパンの超音波センサー2対を風軸に60゜と120'の角度で上下に設定し,これによっ て校正風速を計測する.温度制御のセンサーは制御応答を考慮してCA熱電対渦度計を用いた.超音波 センサーのすぐ下流位置を校正場所とする.
7.
計測部の性能試験
本装置は温度流速計プローブの校正場所において,風速分布と温度分布の均一性を必要とする.円形 断面直径76mmの計測部は,超音波風速センサーを設定するために計測用の有効円形断面の直径を40 m mとした.本装置の性能試験として計測断面の温度分布,風速分布,風速に対する乱れの計測を行っ た.試験した場所は吹き出し口から内側に2cmの所の中央断面とした.
(1) 温度分布は気流温度が常温から100℃の範囲において,計測部の有効断面において1度以下の等温 度分布であった.
(2) 主流風速1m/s 3m/sにおける計測部断面内の流速分布を図2に示す(風温25℃).ここで点線は 縦断面,実線は横断面の風速分布である.
(3) 主流風速0.5m/s 3.5 m/sにおける主流成分の乱れ強さを図3に示す(風温25゜C).
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図2 計測部断面における主流風速の水平および鉛直分布
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図3 計測部断面中央における主流成分乱れ強さ
設定風速に対する風速分布の傾向は安定しているが,計測部の上下に設置した超音波センサーによ る縦風速分布への影響が発生する.しかし,計測部の有効断面においての風速分布は計測に必要な精 度であった.乱れの性能は今回要求されている実用性の範囲である.その主な乱れの発生は,本体送 風機のシロッコファンと攪拌ファンからである.
8.
装 置 の 特 性
本装置は外部環境と測定部内部の温度差によって,計測断面の温度分布と風速分布への影響が発生す る.直接的影響としては,計測部吹き出し口に発生する外気湿度と気流温度との温度差による気流の乱 れがある.間接的影響としては,気流と風路側壁との温度差による2次流れによるものと,温度特性と 風速特性の相互依存閑係による,温度分布と風速分布の相互干渉がある.この直接的影響は温度差に比 例して大きくなるが,間接的影響は微少な温度差でも相互干渉のため制御精度と制御特性に影響する.
したがって,より適切な操作には次の注意を必要とする.
1 .
風路側壁温度と設定気流温度との温度差をつくらない.2.設定気流温度と計測部出口の外気湿度との温度差をなくす.
3.攪拌装置は常に駆動させ,微少な温度差でも等温度分布とする.
4.風速と加熱は緩やかに設定し,急激な時間的空間的温度勾配を発生させない.
本装置の気流温度の温度制御は,デジタル制御の採用によって制御加熱のデジタル変動が気流温度変
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動となって発生した.この気流温度変動は設定精度の問題になるため,渦度制御においては現在のデジ タル制御より変動幅の少ないアナログ制御にしなければならない.したがって,今回の温度設定におい ては設定状態によってデジタル制御と手動操作を併用することとした.
9.
お わ り に
風速および風温の計測部における温度制御と等温度分布の特性のためには,加熱部から計測部までの 距離は短く,その間の加熱器や風路部品や側壁は熱容量を小さくしなければならない.また校正装置の 特性は渦度制御と風速制御の相互干渉に依存するため,熱容量は校正装置の制御性能の重要な要素とな っている.したがって,制御性能のため熱容量は極力小さくする必要がある.製作においては本体の主 な部分は適当な材料がなく耐熱温度,製作加工を考慮して高カアルミニウム合金を使用した.そのため 熱容量をより小さくするために側壁肉厚を薄くする必要があったが,経済的製作技術に限界があった.
この装置の製作においては見本とするものがなく,装置全体の構造は風洞の各部の組み合わせ部品を 作り,それぞれの組み合わせの総合的最適風洞特性によって決定した.また装置の各部は身近な材料や 製品を代用して加工し製作した.本装置は加熱,攪拌,小型化等によって内部構造,内部気流が特殊な 形となり,校正装置として構造的に完全な性能とはいえない.しかし,校正装置としての計測性能は,
現在要求されている性能を満足できるものであった.今後より精度の高い校正装置にするには,装置全 体の各部の構造・材料・部品・送風機・超音波風速計及び製作加工等に総合的な改良が必要である.
謝 辞
本装置の製作にあたり協力された杉谷賢一郎技官,渡辺公彦技官と,有益な助言をいただいた烏谷隆 助手に感謝致します.本装置の製作から報告書までを終始御指導いただいた大屋裕二教授に感謝致しま す.また,風速計測用の特殊な超音波センサーを製作していただいた(株)カイジョーに感謝します.
参 考 文 献
1)蒔田秀治:熱線温度流速計の問題点とその対策,機械の研究,第46巻,第3号, pp.76‑83, 1994.
(平成9年6月 23日受理)