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知識資源管理の統合的方法論に関する研究

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知識資源管理の統合的方法論に関する研究

著者 松平 和也

発行年 2009‑09‑29

出版者 静岡大学

URL http://doi.org/10.14945/00006456

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静岡大学 博士論文

知識資源管理の統合的方法論 に関する研究

2009 年 6 月

大学院自然科学系教育部 情報科学専攻

松平和也

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学位論文要旨

知識資源管理は企業の合理化活動のための新アプローチである。21 世紀に入りや がて10年経つ。すでに情報化社会から一歩進展し、知識社会と言われている。

経営環境の急変のなかで、企業は合理化活動を模索している。近年の激変には多く の企業が適正な対応に躊躇し、合理的変革を遂げられないでいる。企業は新しい合理 化アプローチを喫緊の策として採用し合理化に踏み切りたいと願っている。ビジネ ス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)はまったく忘れ去られ、IT もインター ネットも掛け声ばかりで実効性不足という認識を経営者は持つに至っている。

このような、背景において著者は、日本の超老舗企業から着想を得て永年蓄積した 知識資源の有効活用に着目した。このような不撓企業では、経営における3M資源、

すなわち人・金・物と言う古典的資源を有効化するため、触媒のように知識資源を使 っているのである。資源であるから開発して蓄積して使い続けることが肝要である。

知識資源の活用には“目で見えない”という困難が伴う一方で、蓄積効果があり消費 しても減らないと言うメリットはある。そのため、蓄積した資源を生かすには、全社 的な利活用のための方法論を確立するべきである。しかも、これら資源要素には内的 相互関係性という特性を前提にした方法論を工夫設定する必要がある。

本論では、知識資源を構成する組織資源要素のために、組織開発方法論を特に考案 した。情報という資源要素にも情報開発方法論を準備した。データという資源要素に はデータベース開発方法論を設定した。システムについては既存のPRIDE方法論を 活用することにした。これら4つの方法論を統合利用することで、知識資源の計画・

活用・改善と言う管理プロセスを企業内に確立することができる。企業のおかれてい る状況により個別的に方法論を適用できる。企業環境の内外的変化により、経営トッ プが業績改善を狙う合理化を遂行するときは、先ず、組織変更に着手するのが自然で ある。そのため、基軸に組織開発方法論を据えた。この組織変更はシステム変更に派 生するので、システムの改変が必要になる。組織変更により、経営担当者、管理者、

さらには業務担当者の情報要求が変わるので情報ニーズの変化が起こる。すると、必 要データの追加などが発生してデータベースの改造に伝播する。

このようにして、4つの方法論を順次活用せざるを得ないことになる。

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組織が不変の場合、業務効率化のために情報システムの変更・改善のみが要求され ることもある。この場合でも通常、情報やデータの見直しは必然となるので各方法論 を適宜活用する。

日本の経営者は、組織については、経営トップの“専権事項”と認識してきている。

それゆえ、組織そのものを分析したり設計したり開発維持管理する対象物、いわゆる 知識要素であるなどとは理解していない。それゆえ、本論で提案する統合的方法論の 成功には、この経営者の認識を変えていく必要がある。企業内に知識管掌の役員;

Chief Knowledge Officer(CKO)を 設 置 し 最 高 経 営 責 任 者 ;Chief Executive

Officer(CEO)を補佐させることも有効であることを実例から学習した。

本論では、4つの資源要素がともに4階層の構造を持つと仮定した。一般構造物の 持つ普遍的構造概念の適用である。4階層構造の最上部から下位に向けて分解設計す る工程としてフェーズという工程を設けた。設計工程が4工程、下位から上位へと構 築する工程が4工程となる。かくして、監査や計画の工程を加えて10フェーズで資 源管理のプロセスを標準化した。社内外からの環境変化による変化変更を受け入れる と、知識資源の変更改善がおこなわれる。このように、資源を構造モデル化すること で資源の開発維持と変更管理の容易化を推進できる。

知識資源の明示的構造は、各知識資源要素の活用を促進する。例えば、実施例では、

新設した組織と組織に配置された構成員である社員の実態的動きに乖離がなくなり 事業の業績が向上した。従来頻繁に発生し企業の業務活動の足を引っ張ったシステム 破綻、データ不備、情報の不適正などのIT問題が解決された。本来的正しい事業活 動ができないことで発生する不祥事を減少できた。そのうえ、高額な投資を迫られる 情報システムの経済寿命を延伸し、ライフサイクルの長い情報システムを低コストで 運用できるなどの効果を実証した。本論は、この点での理論的考察とともに実務的方 法論を工夫し、さらに4社の企業においての実証研究をおこない効果を検証した。知 識資源管理の統合的方法論を導入した企業では、情報システム改善や経営組織改革が 実行され、経営者の経営哲学や理念に沿った組織を実現できた。これらの企業では、

組織末端の営業行動や工場現場での生産活動が、経営目的を志向し、経営目標実現の 同軸上にある事が確認されている。

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Outline of Thesis

Name: Kazuya Matsudaira

Title of Thesis: Integrated Methodologies for Knowledge Resource Management Outline:Knowledge Resource Management represents a new approach for conducting business in Knowledge age. It is concerned with evolutional activity of enterprises. Traditional 3 M (Man/Money/Material) resources need catalyst to make those into proactive resources. Knowledge Resource is a kind of catalyzer to burn 3Ms out. KRM is representing a radical departure from the mainstream of thinking in today’s BPR/Restructuring approach. Knowledge Resource which consists of 4 components has specific characters like both Holonic behavior and mutual interrelationship.

The first resource component is Organization. The second one is System. The third one is Information. The fourth one is Data (Data-Base). We created the main methodology for organization design and development and maintenance. Once some changes of organizational hierarchy happened, those changes impact allover information systems and data-bases. Eventually, management of enterprise may become chaos.

To overcome this situation, we propose an integrated approach with 4 methodologies for planning and controlling all 4 resources. By use of adequate methodologies, the enterprise could properly use of structured Knowledge Resources and improve organizational behaviors to be consistent to CEO’s philosophy, mission, and objectives. The Chief Knowledge Officers of companies reported that none of systems failures happened since actual implementation of those methodologies. Any systems-maintenances keep quick and complete operations with less costs assuring longer system-lifecycle.

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目次

図表一覧

第 1 章 序論 ··· 1

1.1 背景 ... 1

1.2 目的 ... 2

1.3 研究の特徴 ... 3

1.4 論文の構成 ... 4

第 2 章 知識資源管理の定義 ··· 5

2.1 従来研究の概観 ... 5

2.2 先行研究の問題点 ... 11

2.3 あるべき姿は知識資源管理 ... 13

2.4 本研究の狙い ... 16

第 3 章 知識資源管理の統合的方法論 ··· 17

3.1 知識資源の定義 ... 17

3.2 知識資源 4 要素の 4 階層構造化 ... 19

3.2.1 組織要素の構造 ... 19

3.2.2 情報要素の構造 ... 20

3.2.3 データ要素の構造 ... 20

3.2.4 システム要素の構造 ... 20

3.3 知識資源の分析設計開発維持の論理 ... 21

3.4 知識資源開発に方法論適用 ... 23

3.5 知識資源の変更影響分析 ... 24

3.5.1 知識資源の蓄積と利用の仕組み ... 24

3.5.2 仕組みを支援するツール:KRM の機能 ... 26

(9)

第 4 章 組織開発方法論の誘導 ··· 29

4.1 方法論の先行研究の特徴検討 ... 29

4.2 組織開発方法論のコンセプトの規定 ... 30

4.3 開発方法としての各フェーズの位置づけ ... 33

4.3.1 フェーズ 1 の目的と主たる作業内容 ... 33

4.3.2 フェーズ 2 の目的と主たる作業内容 ... 34

4.3.3 フェーズ 3 の目的と主たる作業内容 ... 34

4.3.4 フェーズ 4 の目的と主たる作業内容 ... 34

4.3.5 フェーズ 5 の目的と主たる作業内容 ... 34

4.3.6 フェーズ 6 の目的と主たる作業内容 ... 35

4.3.7 フェーズ 7 の目的と主たる作業内容 ... 35

4.3.8 フェーズ 8 の目的と主たる作業内容 ... 35

4.3.9 フェーズ 9 の目的と主たる作業内容 ... 35

4.3.10 フェーズ 10 の目的と主たる作業内容 ... 35

4.4 組織の階層構造の検討 ... 36

4.5 組織開発の論理 ... 37

4.5.1 組織デッサンにいたる前半のロジック ... 37

4.5.2 組織デッサンでの組織形態の仮設定 ... 38

4.5.3 組織デッサンにおける組織構造の決定 ... 39

第 5 章 情報開発方法論の誘導 ··· 41

5.1 情報開発方法論のコンセプトの規定 ... 41

5.2 開発方法としての各フェーズの位置づけ ... 42

5.3 フェーズ 1 からフェーズ 10 までの概要 ... 42

第 6 章 データベース開発方法論の誘導 ··· 45

6.1 データベース開発方法論のコンセプトの規定 ... 45

6.2 開発方法としての各フェーズの位置づけ ... 46

6.3 フェーズ1からフェーズ 10 までの概要 ... 46

(10)

第 7 章 システム開発方法論 ―PRIDE― ··· 49

7.1 PRIDE 方法論のコンセプトの説明 ... 49

7.2 開発方法としての各フェーズの位置づけ ... 51

7.3 フェーズ 1 からフェーズ 10 までの概要 ... 51

第 8 章 方法論の適用原則と統合利用 ··· 55

8.1 方法論の適用原則と統合化 ... 56

8.2 知識資源管理による合理化体制 ... 57

第 9 章 方法論の実用化と適用効果 ··· 61

9.1 知識資源管理の費用対効果評価視点 ... 61

9.2 A 社での実用化と適用効果 ... 65

9.2.1 A 社とは ... 65

9.2.2 実用化のステップ ... 65

9.2.3 定性的評価 ... 66

9.2.4 定量的評価 ... 67

9.3 B 社での実用化と適用効果 ... 70

9.3.1 B 社とは ... 70

9.3.2 実用化のステップ ... 71

9.3.3 定性的評価 ... 71

9.3.4 定量的評価 ... 72

9.4 C 社での実用化と適用効果 ... 73

9.4.1 C 社とは ... 73

9.4.2 実用化のステップ ... 73

9.4.3 定性的評価 ... 75

9.4.4 定量的効果 ... 77

9.5 D 社での実用化と適用効果 ... 77

9.5.1 D 社とは ... 77

9.5.2 実用化のステップ ... 77

(11)

9.5.3 定性的評価 ... 78

9.5.4 定量的評価 ... 78

第 10 章 結論と今後の課題 ··· 81

謝辞 ··· 83

参考文献 ··· 85

著者発表論文一覧表 ··· 93

学会誌採録論文 ... 93

一般誌発表論文 ... 94

付録 ··· 95

付録 1. 管理技術の系譜の解説(本文-表 1 参照) ... 95

付録 2. 組織開発方法論のアクテイビテイ・リスト ... 117

付録 3. 情報開発方法論のアクテイビテイ・リスト ... 120

付録 4. データベース開発方法論のアクテイビテイ・ リスト ... 122

付録 5. PRIDE システム開発方法論のフェーズ毎の アクテイビテイ・リスト ... 124

付録 6. 十牛図のフェーズ ... 126

付録 7. PLANT Engineering の方法論のフェーズ ... 127

付録 8. 機械製品の研究開発方法論のフェーズ ... 128

(12)

図表一覧

図 1:デミング賞の限界 ... 12

図 2:進化的経営合理化へのプロセス ... 13

図 3:知識資源管理への統合的アプローチ ... 15

図 4:知識資源の四角錐 ... 18

図 5:構造の概念 ... 19

図 6:知識資源要素関連図 ... 24

図 7:システム設計・開発工程におけるKRMの位置づけ ... 25

図 8:KRMのシステム概念図 ... 27

図 9:組織進化フェーズ関連図 ... 34

図 10:知識資源管理による組織開発論理図 ... 38

図 11:情報構造と組織構造の整合化 ... 40

図 12:情報開発フェーズ関連 ... 42

図 13:データベース開発フェーズ関連図 ... 48

図 14:システム開発フェーズ関連図 ... 54

図 15:CKO 室 ... 55

図 16:知識資源改革 Pjt チームの編成 ... 59

図 17:年平均システム・ライフサイクル費用 ... 63

図 18:新旧の比較/投入工数配分比 ... 69

図 19:A 社の改善結果 ... 70

図 20:B 社の知識資源管理移行後の生産性の向上 ... 73

(13)

表 1:経営管理技術の系譜 ... 8

表 2:知識資源の4面の構造化モデル ... 22

表 3:先行研究の方法論の比較 ... 30

表 4:経営組織の階層 ... 37

表 5:7つの組織形態とその特性 ... 39

表 6:組織階層別情報ニーズ ... 74

表 7:組織階層別ニーズ... 75

表 8:知識資源活用の定量的効果 ... 80

(14)

第1章 序論

1.1 背景

1965年に著者が経営コンサルタントの職についてから、前半15年ぐらいは“業務 の効率向上”について研究した。特に、現場作業者の作業効率向上というテーマにつ いて担当した。自動車の部品である気化器の製造工場の組み立てラインの改善に取り 組んだ。組み立てラインを構成する15人の作業員の作業分析によりライン効率の問 題を発見した。先頭から5番目の作業者の作業において、ある部品の品質のバラツキ により、微妙に組み付け作業時間が増減するのである。この問題は、作業改善そのも のでは改善できず、結局当該部品の納入業者の品質指導によりラインバランシングに 成功したのである。改善成果としては、製造ラインの作業者全員の残業をなくしたこ とである。

次に担当したのが、大阪に本社のある化学合繊繊維会社本社合理化であった。特に 営業事務作業の詳細な分析を行い、伝票への受注データの転記作業に着目して、ワン ライテイングの伝票を工夫した。この改善も、事務負荷に泣いていた女子事務員に喜 ばれた。次に、大手損害保険会社では、電子計算機を導入して、保険申込書から契約 書の作成、保険金の支払いなども含め、決算事務処理までの一環処理を狙い、この合 理化により事務の作業を大幅に効率化できた。しかしながら、企業の決算書の損益に 影響ある改善であったかというと、そのように断言できなかった。企業の利益に直結 する改善効果を挙げなければ経営コンサルタントとして迫力が無いと悩んだ。そこで、

コンサルタントの後半 25 年間は、自ら生産性=効果×効率という式を定義し、効果 を実現できるコンサルテーションに取り組むことになった[1][2][3] 。

企業経営に貢献するには、当然効率と効果の両面に改善の目配りをしなければいけ ない。自分が過去挑戦してきたのは効率の面ばかりであったという反省をしたのであ る。企業経営者には、生産性を挙げて利益を実現するという重大な課題が課されてい る。効果を実現するコンサルテーションを責務としたのであるが、このことは困難で あった。また、経営生産性の向上を狙って、IT 化に漠然と投資しても効果が上がら ないのであり、かえって当期純利益が減る。例えば、営業の売値が決まる営業行為の 決定的瞬間にその企業の利益が決定されるということがある。

(15)

また製造現場の組立ラインの管理ミスで起こる不良品の定常的発生で製造コスト が決定されることもある。経営トップの戦略決定時にも、潜在利益又は損失が潜んで いて、戦略の巧拙で利益にもなり、損失にもなる。そのため、企業構成員が利益の創 出に関する情報を有効に活用して、利益を実現する行動をとり続けるための情報資源 管理概念を研究したのである。著者が日本で、米国伝来の情報資源管理を唱えるよう になって 20 数年が経過した。この間、欧米および日本でも一時的に情報資源管理 (IRM:Information Resource Management)という新概念に大きな期待がもたれた。

しかし、経営者に理解される言葉で説明できずに、概念導入が適切になされなかっ たので、結果IT専門家の使用する専門用語ということで片付けられた。経営者にIRM が正しく理解されずに情報社会とされた 20 世紀は過ぎ去った。そして 21 世紀には いり、知識社会という言葉が出現した。一般的に知識は情報を超える概念である。さ らに、知識の上位概念には知恵がある。知識を上手に活用する企業の業績は平均的に 高いという。そこで、著者は情報資源管理の概念を超えて知識資源管理(KRM : Knowledge Resource Management)に挑戦することにした。

すなわち、知識を有効活用して経営を進化させる合理化の方法論の研究である。そ れは、すなわち知恵に手を差し伸べる知識企業の実現である。日本企業は、戦後米国 から、幾多の経営管理概念を導入し、企業の合理化に挑戦して失敗をした。そのよう な経営合理化失敗の原因を探ると、そこには世の風潮に乗って、場当たり的な方法で 合理化に対処したという事実が判明した。方法論をしっかり確立して不退転の覚悟で 望めば、経営合理化を成功させ企業進化を維持しうるという理解がなかった。

知識という企業資源の有効利用を促進するべく知識資源管理の方法論の確立に着 手したのは、このような経緯があった。しかも、日本には 300 年以上に渡って安定 的持続的に進化する企業がかなりある。これらの企業では、掟書きとか家訓とか社是 により企業経営の知識が紙で伝承されているのである。しかも経営の実際は常に経営 環境に対処して、当事者間で口伝により実践している。このような超老舗の不撓企業 から学ぶことが多い。

1.2 目的

本研究の基本目的は、経営を進化させる合理化の方法論を示すことである。

(16)

その具体的目的は以下のようになる。

第一の目的は、知識資源という経営資源を明示的に理解できるようにすることであ る。そのためにモデルを新設し、知識資源のモデル化により人物金という古典的資 源との違いを鮮明にする。

第二の目的は、知識資源を管理するための方法手順を示し企業の進化的持続的継続 維持を促すこと。

第三の目的は、知識資源を構成する四つの要素、すなわち組織、システム、情報、

データを特定し、これらの資源要素の開発方法論を準備し、その統合利用により知 識資源の開発と維持管理を推進支援すること。

以上の主目的に加えて、副次的目的として、システムの要求仕様確定のやり方を改 善するということがある。これは、IT 業界に長年言伝えられているものであり、要 求仕様は確定しがたいとする迷信のようなものである。組織要素の分析と設計により、

システム仕様を確定できることを示す。すなわち、情報システムの異常なライフスタ イルを改革し、ライフサイクル管理と改善の道を示すことにある。

このような目的を達成できれば、日本企業の経営者や管理者、さらには実務担当者 が知識資源の利活用により所属する企業の業績向上を実現したいという願望に応え ることができる。

1.3 研究の特徴

本研究の特徴は、知識資源管理における最大の課題であった企業組織の分析設計開 発維持管理の方法論を具体化したことにある。本研究で提案する方法論に従うことで 次のことが達成できる。すなわち、企業環境の変化を迅速に取り込んで組織変更を整 然と遂行できる。変更した経営組織の新情報要求に応えることができる。派生する情 報要求の変更やデータベースの維持とシステムの保守と維持管理を正確迅速に行う ことができる。知識資源四要素の適切な維持管理により、的確な情報が経営各層に行 渡り、正しい意思決定が行われる。

知識資源の効用を向上することで、組織の情報活用能力が一段と向上する。組織の 力が上がり、IT 投資の有効化がはかられることで業務のコストダウンを実現する。

経営学の空洞であった“良い組織の創造ができない”という領域の解決方策である進

(17)

化的経営の合理化方法論を経営者に与えることとなる。新方法論の適用と効果把握に ついて4社の事例も掲載し功罪をも議論している。

1.4 論文の構成

本論文は、全10章と付録からなる。

第 1章では、著者が本テーマの研究に至ったその背景を述べ、さらに研究目的につ いて触れる。特に、本研究の特徴として、提案する組織開発方法論が経営学におけ る長年の課題解決となったことと、方法論の実用性の証明にあることを述べる。

第2章では、従来研究を概観し20世紀においての経営管理技術史を俯瞰する。

さらに、現代企業の経営問題を抉り出し、課題を設定しその解決策を示す。

第3章にて、知識資源管理の定義を行いその統合的方法論を提示する。

第 4章では、組織開発方法論の導出とその提案、そのコンセプトと方法について述 べる。さらに、組織設計の論理についても詳述する。

第 5章では、情報開発方法論について概説し、そのコンセプトと方法について記述 する。ここでは、情報の構造化を提案している。

第 6章では、データベース開発方法論について概説し、コンセプトと方法について も記述する。データの構造化について提案している。

第 7 章では、システム開発方法論PRIDE を述べる。米国から技術輸入して著者が 日本語のマニュアルを開発し、ワークシートを追加し1千ページの日本語マニュア ルにした結果、日本において真に使える方法論にしたものである。

第8章では、四つの方法論の統合利用についての原則を述べる。

第9章では、日本企業4社の事例で各方法論の適用の仕方と評価について述べる。

さらに、コスト・効果の評価視点を5つ提案する。特に第5の視点であるライフサ イクル・コストについての理論的背景の研究を報告し実例を示す。

第10章では、結論と今後の課題について述べる。

付録には、20世紀の管理技術の系譜についての詳細な解説を付した。

各種方法論の標準アクテイビテイを列挙し方法を示した。

さらに、他領域での各種方法論をも追加説明した。

(18)

第2章 知識資源管理の定義

2.1 従来研究の概観

まず、20 世紀初頭から世紀末までの経営管理技術の系譜を概説する(表1 参照)。

おそらく、世界で最初に経営管理という言葉を定義使用したのは、フランス人アン リ・ファヨールであろう。鉱業会社の 20 年『1888-1918』にわたる社長経験から経 営管理の14の基本原理を説いた。しかし、この著作は当初仏語で書かれたので普及 しなかった。一方米国では、F.W.テイラーに始まる科学的管理技術が、1900 年初め において発展した[4][5][6]。フォードが自動車のライン生産に挑戦した。

生産工場における生産性の追及が大きな課題であった。IE といわれる生産領域の 管理技術は、第二次世界大戦中は、米国の戦時生産力に貢献した。戦後、日本でも生 産管理技術の熱心な導入により、1950 年以降その成果は目を見張るものがあった。

特に、品質管理技術は日本製品の改良努力を刺激した。メイド・イン・ジャパンとい う言葉は、“日本製の劣った品質イメージ”の代名詞に使われたのだが、QCやTQC を熱心に学び、その教えを実践遂行した1970年代になると、高級品のイメージを伝 える言葉として一新してしまった[7]

1950 年代に出現した電子計算機は近代化技術の導入に飢えていた日本企業でも着 目された。1960 年後半の MIS 視察団の帰朝報告後、早速 EDP(Electronic Data Processing)導入が始まった[8]。計算や作表業務の多い会計計算や給与計算の分野か らEDP化が推進された。この事務の両分野は管理技術的に見てあまりイノベーショ ンが起こらない領域であったので格好なEDP適用領域であったのである。EDPはい つしかIT(Information Technology)に変わった。ITは電子計算機メーカーの熾烈 な競争の中、確実に急激な進歩を遂げた。しかしながら、IT 化の分野はきわめて人 間臭い問題に挑戦せざるを得なかった。それは、組織に従属する社員の仕事のやり方 を変革するという難題なのであった[9][10][11][12][13]。

1950年末に電子計算機の驚異的能力を説いたJ.デイボルトは、その後 1970年代 末に情報資源管理という概念を発表していた[20]。M.ブライスにより提唱されたシス テム化のアプローチは、1972年にはPRIDEという方法論として製品化された。

(19)

PRIDEは、現在まで導入企業が2千社以上の世界的ベストセラーになった[21][22]。 一般システム理論花盛りの時代は、1970年代であり、米国を中心にNASAの宇宙開 発課題や原子力発電工場、プラント建設のためのいわゆる“システムズアプローチ”

は実務的にも有効な手法の整備がなされた[14][15][16][17][18][19]。

電子計算機は急速な技術開発が続き進歩を遂げつつ、大学中退のベンチャーリスト、

B.ゲーツがマイクロソフト社を創業する 1975 年を基点としてわずか十年後、1985 年には企業における電子計算機活用市場での大型電子計算機の駆逐が一気に始まっ てしまった。この“ゲーツ元年”といわれる年から、インターネットと共に恐るべき 津波のようなIT技術変革の波が世界に波及した。企業経営者は経営の合理化を模索 しこの波に乗るべく苦闘した。しかしながら、組織学者はこの間座して眺めていた。

1900年代には、M.ウエーバは官僚的組織こそ効率最高であると説いた。A.スロー ンは SBU による驚異的成長を実践して見せた。それでも組織学者は、1950 年以降 は、観察者に徹した。組織の要員がいかにすれば勤勉であるのか、観察を得意とする 行動科学学者は、人間関係と人間の組織における欲求を観察し、経営の業績との因果 関係を追い求めた。その観察から、D.マクレガの XY 理論、W.G.オオウチの Z 理論 がうまれた。H.A.サイモンは、長期間にわたる企業組織の観察分析の結果からの人間 行動のモデル化によりノーベル賞を獲得した。その後、組織そのものへの挑戦的研究 は不発であった。近年の研究では、野中郁次郎の知識創造企業モデルや、H.メンデル ソンと J.ジーグラの組織知能指数(IQ)測定手法で組織の能力改善に取り組むアプ ローチが特筆される[23]。

組織問題は経営学者にとっても、経営コンサルタントにとっても難解な領域である。

日本的経営については日本能率協会の経営コンサルタントの岡田潔が実務的に展開 した。ホロン経営という。著者は若輩のコンサルタントとして、岡田から新組織提案 のコンサルの指導を受けた。21 世紀にいたっても、組織学界においては、企業組織 の設計開発維持という組織のライフサイクル全般管理の方法論を生み出さなかった。

会計学やマーケテイング学の領域でも、画期的な方法論は無く企業業績への貢献は 少なかった。経営学全般での、経営者の頼みの綱は、ドラッカーであった。ほぼ 20 世紀を生き抜いたドラッカーは、経営者の杖(スタッフ)になった。実行すべきこと を説くドラッカーの著作から学んだ経営者は極めて多い。

(20)

なぜなら、経営者は常に今何をなすべきか悩むからである。経営学者として、経営 者の悩みに応え得たただ一人の学者といっても過言ではない[24][29]。1980年代にな って、システムまたはITの領域において、情報とデータの学問的追及が行われた。

結果、データベース構築への理論的アプローチが始まった。チェン・バックマン・コ ッドなどの欧米人に混じって日本の研究者である椿・穂鷹の THモデルと命名された

DB(Data Base)モデルが提唱され、日本では本格的大型データベースの構築が始まっ

た。情報の戦略的活用を説いた C.ワイズマンは、経営者にその戦略的利用の主役に なれと説いたが長続きしなかった[30]。経営を経験していない M.ハマーにいたって はBPR(Business Process Reengineering)の著作を出すのみで効果を実証しえな かった[31]。情報の効用を経営者に納得させられずに一連のブームは去った。

2000年問題に過大なIT投資を経験し、やっとそれをクリアした企業経営者の関心は、

いまや過重になったシステム、即ちERP(Enterprise Resource Planning)の導入とパソ コン装備による過剰投資のツケによる経営の重石となったITコストの削減に移ってしま った。本来の、“情報の活用により競合企業に優越する組織体質への変換”課題を忘却し てしまった。このような渦の中で、著者は1980年ぐらいから米国仕込みの情報資源の有 用性を説いた[27]。松田の主張は情報資源におけるナレジマネジメントであった[38]。

一方で、野中は1990年以降、知識の創造こそ企業のイノベーションを引き起こすパワ ーであると主張し知識論の嚆矢となった[39]。そこで、著者は知識資源論こそ、21 世紀 の企業経営者への灯明となると確信した。日本的経営を追求し、企業の組織とシステム、

情報とデータから構成される知識資源を利活用するという新しい管理概念である KRM

(Knowledge Resource Management)を企業内に確立することが重要であると考えた。

日本バブルの宴の後でもあり、悪いイメージの残存する用語としての ERP と近似する IRMの言葉の相似性から、その意図するところが、経営者の脳幹に届かなかったことも あり情報資源管理には躊躇した企業があるなかで、日本的経営を追求する知識資源管理 に興味を持つ企業が一社又一社と現れ、本新管理概念の導入により社内改革を進めよう と挑戦し始めた。この予兆から、21世紀は知識資源管理新時代であると断言できる。尚 付録1に、各経営管理分野別の詳細な解説を示した。

(21)

表 1:経営管理技術の系譜

1900 1930 1950 1960 1970 1980 1990 2000

グループテクノロジー ソ連にて

H.フォード 流れ作業方式

F.W.テイラー 科学的管理法

REFA

(ドイツ)

IE 生産技術

OC 品質管理

MM 生産管理

H.B.メイナード IE

.ナドラー ワーク・デザイン ..マンデル

メモ モーション

R.N.レーラ

ワーク・シンブリフィケーション

W.A.

シューハート 統計学の経営 への適用

W.E.デミング デミング賞

ZD運動

推進区制 工程管理

大野耐一

トヨタ生産方式 CAD/CAM TQM W.F.

M.T.M PTS

門田武治 PAC

統合

IE SCMCALS

GE シックス・

シグマ

マルコム・ボルドリッジ MBNQA賞

レオンチェフ 産業連関分析

J.Wフォレスター インダストリアル ダイナミクス

クライン・森 計量経済 L.D.マイルズ

VA/VE

高達秋良 部品半減化計画 VRP R.M.バーンズ

動作・時間研究

田口玄一 実験計画法 ジュラン・ファイゲン

バウム TQC VA

購買管理

O.ワイト MRP

マイケル・ハマー B.P.R ギルブレス夫妻

動作研究 H.L.ガント 生産進度管理

日本経営 品質賞

CIM

PT 計画技術

マクナマラ HE PPBS

人間工学 フレッチャー・

マンソン 人間の聴力

A.スウィン・

C.モルガン FTATHERP

オートマトン 林 喜夫・

大島正光 人間工学

ロボット工学 畑中洋太郎

失敗工学 マクナマラ

PPBS

トヨタ・イトーヨーカドー カイゼン・業革

(22)

1900 1930 1950 1960 1970 1980 1990 2000

BS 組織と人間 の行動科学

MGT 経営管理

AM 会計管理

OR/EE 設備と投資 の管理

M.ウェーバー 官僚的組織

J.D.ムーニィ 組織の原則

C.アージリス 人間と組織論 C.I.バーナード

組織の体系

岡田潔 HOLON経営 E.メイヨー

ホーソン工場研究 D.マクレガー

X.Y.理論

W.G.オオウチ Z理論

D.ヴィンセント 情報基盤組織

F.J.レスリスバーガ

人間関係論 K.E.ボールディング 組織革命

H.A.サイモン 人間行動のモデル

ケプナー・トリゴー KT法

川喜田二郎 KJ法

G.ハメル K.プラハラード コアコンピタンス経営 A.H.マズロー

人間欲求の階層

H.ファヨール 経営管理一般理論

M.P.フォレット 状況の法則

P.M.S.ブラケット OR

P.ドラッカー 現代の経営

R.H.シャファー 目標による管理

ボストン・コンサルティング PPM

M.E.ポーター 競争の戦略

CSR:

企業の社会的責

A.D.チャンドラー 経営戦略

E.C.シュレー 結果による管理

R.N.アンソニ

マネジメント・アカウンティング H.I.アンゾフ 企業戦略論

E.シュマーレンバッハ 近代会計学

R.キャプラン・

D.ノートン バランス・スコア・

カード

G.ストーバス ABCマネジメント

M.オズボン GAME理論

シミュレーション 千住鎮雄 経済性工学 PERT・CPM・LP

ミューサ・十時 SLP

中島清一 TPM賞 C.I.バーナード

経営者の役割 A.スローン

SBU組織

サイアート・マーチ 企業の行動理論

M.ジェニーン

コングロマリット経営 経営倫理

野中郁次郎 知識創造企業

F.K.ハーツバーグ モティベーション

H.ジェニーン(ITT) コングロマリット経営

ノーベル 経済学賞

受賞者

H. .メンデ ルソン J .ジーグラ 組織IQ

(23)

1900 1930 1950 1960 1970 1980 1990 2000

MAR マーケティング

マコーミック マーケティング

P.コトラー マーケティング・

マネジメント

CS CRM

T.レビット マーケティング 近視眼

E.マッカーシー マーケティングの4P

J.P.エッカート ENIAC IT

電子計算機

日本生産性本部 MIS視察団 IBM

OS/360

JMA OA

ノイマン型コンピュータ EDVAC

UNIVAC I ALGOL,COBOL FOR TRAN

B.ゲーツ・P.アレン

マイクロソフト 菅沼清吉

ソフトウェア部品

J.ディボルト オートメーション

松月忠雄 システム・マンダラ インターネット・・・eビジネス

R.ノーラン IT活用5段階

W.マクファーラン ITでの競争力

J.ロッカート EDSS

SY システム&

ソフトウェア

PHY システム哲学

N.ウィーナー サイバネティクス C.E.シャノー 情報理論

L.V.ベルタランフィ 一般システム理論

E.ヨードン 構造化

A.D.ホール システムエンジ ニアリング方法論

M.ブライス 情報システム 方法論

:PRIDE

松平和也 情報工場論

カーネギー メロン大学 CMM

サーソン・ゲイン 構造化分析

L.コール 国家の崩壊

E.F.シュマッハー

スモール・イズ・ビューティフル

情報資源管理論:IRM

E.ラズロー システム哲学

ISO9001 D.A.ティラー

ビジネス・オブジェクト

M.ジャクソン ソフトウェア工学

チェン・バックマン・コッド DBモデル

ERP SAP ORACLE BAAN

椿・穂鷹 THモデル レイザー・ケリー

マネジリアル・

マーケティング

S.ジョブス・S.ウォズニアック アップルコンピュータ

R.L.アコフ システムの目的 ヘンダーソン・ホワイトヘッド

システム論

デカルト の物心

=元論 H・ホラリス パンチカードと 統計機・印刷機

A・チューリング

COLOSSUS C.ワイズマン

SIS

野中郁次郎 知識創造

(24)

2.2 先行研究の問題点

20世紀の殆どは、人、物、金すなわち 3M中心の経営管理時代であった。世紀半 ばでの電子計算機の出現から20 年後になって1970年後半、情報という資源認識課 題が企業経営者に提起された。Information Resource Management:情報資源管理 という管理概念が訴求した当初の問題意識は極めて正当であり、経営者は当然のよう にこれに着目した。しかし、経営者は、あまりにも電子計算機の強力な側面の技術に 目を奪われてしまった。情報資源管理がまったく新しい管理概念であるのに、技術の 側面に着目しすぎることになり、結果、IRMはITと同義ということになり経営者の 視野から去ってしまった。

かくて、日本の経営者は、一時的にはITへの異常な期待を示した。ところが、IT へ金は出しても、経営者自ら知恵を出し惜しんで、その活用の仕方について技術者に まかせてしまった。そして多くのITプロジェクトは期待はずれに終始したのであっ た。失敗の表面的理由は“利用者の要求仕様を満たせなかった”事であった。しかし ながら、この失敗の真因は“組織の変更とか、人事変更や関係省庁の法令変更など”

システムの標準手順を狂わせる変更なのである。もっと、マクロに見れば、経営者が あまりにも単発的に経営合理化の手を打ってきたことにも原因がある。日本には300 年間以上経営を進化させている不撓不屈の企業があるが、国内に目を向けることなく 欧米思考への傾斜は止まらなかった。

例えば、デミング賞である。品質管理という概念を学んだ日本企業は戦後いち早く

QC/TQCを経営合理化方策として導入しデミング賞に挑戦した[25]。しかし、2000

年以降急速に熱が冷めた。熱しやすく冷めやすい日本経営者の特性はこの面でも顕著 である。日本企業の体質は戦後急速に変化し、製造業中心からサービス産業への転換 をしていた[28]。この変化に気づくことなく製造業向けのプログラム中心であったと いうこともあり、またITのメリットを取り込めなかったデミング賞プログラムでも あった。しかしながら、失敗の本質は、QCサークルなどで組織の改善改革課題があ がると、これを現場問題と同じ感覚で改革しようとして経営者の逆鱗に触れてしまっ たこともある。組織問題は経営トップの専管事項であるのに、この領域に軽率に踏み 込んでしまったのである(図1参照)。

(25)

図 1:デミング賞の限界

すでに触れたように、経営合理化を標榜するアプローチは雨後の筍のように次々と 輩出した。といっても、いかなるアプローチも、企業という生きた組織を対象とした ライフサイクルアプローチになっていない。単発的であったり、総花的であったり、

夏の夜の花火のように華々しいものから、空蝉のごとくはかないものまで百花繚乱で ある。企業は進化しなければ死に絶える。このような常識的問題意識から、状況を改 善改革するための“組織を開発する方法論”を導き出し適用することが求められてい たのである(図2参照)。

(26)

デミング 経営ソリストラフト 全社組織簡素化

EDP導入

MIC運動

ZD運動

ホワイトカラ 削減・希望退

MIS・SI 構造改革

OA賞

スピンオフ スピンアウト

業務・機構 の改革 業務革新

社名変更・

インナーブランディング アウトソーシング

ベンチマーキング

CALS

経営品質賞 MBOM&A

BPR シックスシグマ

ワークアウト リストラ クチュアリング

ダウ サイジン

ERP導入

組織 開発 方法論

進化的 メカニズム を内蔵した 会社 単発的

合理化 に終始 する会社

進 化 的 プ ロ セ ス

図 2:進化的経営合理化へのプロセス

2.3 あるべき姿は知識資源管理

前節で述べたように、企業が常に進化的に生き続けるには、組織開発が必要である が、それだけでは十分ではない。組織はあくまでも場であり、そこに配置された人間 が活動することで業績があがる。ゆえに、人間を効率的に働かすシステム機能などを 併せ持たないといけない。本来、人事管理であれ、物的管理であれ、資金財務管理に しても全て経営の基本機能である。企業を興し、事業を安定軌道に乗せ社会の一員と しての企業の姿を維持するには、多様な経営管理の機能を保持しなければならない。

環境の変化に即応しながら、起こり来るイノベーションを的確に社内に取り込む経営 管理が要求される。そのために、現代の経営者は組織に進化的メカニズムを内蔵させ ることに注目しなければならないことは自明の理である。

米国型経営の反省を心がけながら、今一度日本的経営を見直すならばそこに経営合 理化の着想のヒントがある。すなわち、300年を超える不撓企業では、永年組織に蓄 積した“知識”を活用することが極めて巧みなのである。

(27)

そのような会社の当代経営者は、必ずといってよいほど、掟書か社是とか社訓を大 事に守っているのである。しかも、意外なことには、組織はかなりオープンに運営さ れている。しかも、社内のシステムはIT化を進めている。社内に蓄積されたデータ は豊富で、多様な情報を作り出して経営に役立てている。これらのことは学び取るべ きである。もっとも、“不倒”を誇る会社もIT問題については一部上場企業と同じ経 営問題を抱えるに至っている。

以下に近代企業が重点的に認識している課題を整理する。

企業経営の合理化課題1.IT投資を成功させる

IT 投資こそ企業の閉塞感を打破する切り札と信じたが、開発意図した情報シス テムは開発途上で中止になったり、大幅に遅れたり、運用にはいり破綻したりと難 題続きである。この問題解決こそ喫緊の課題である。

企業経営の合理化課題2.異常なシステム保守費を統制する

情報システムの保守費は高額で、負担である。特に業務パッケージを購入した企 業では3年も経たないうちに保守費用の累積額が開発導入費を超える[26]。 企業経営の合理化課題3.情報システムの要求仕様を確定する方法を改善する

新規開発時も、保守段階でも、情報システムへの利用部門の要求が不明瞭・不正 確であり、分析設計工程はその調整で長引き、開発段階では仕様変更で混乱する。

企業経営の合理化課題4.情報システムのライフサイクル管理をする

社運をかけて開発した情報システムのライフサイクル管理ができない。年あたり のコストを極小化し、経済寿命を延伸する手がない。雪だるま式に膨れるコストを 甘受するしかないシステム・ライフスタイルを変革する手が打てない。

企業経営の合理化課題5.組織を経営トップの専管事項からはずす

企業の不文律に、経営トップの専権というのがある。これを犯すことができない ため改革が進まない。古来、組織改正は人事と絡むため経営トップが壟断してきた。

これが、組織を進化させるうえでの障碍となった。さらにシステム開発とは連動せ ずに、組織が変更されるので、合理化の最適手段としてのシステムの仕様を固めら れない。すなわち、情報要求が決まらず、データの整備に齟齬をきたすのである。

これらの経営課題を網羅的に解決するため、本論では次の提案を導いた。

(28)

提案1.知識資源モデル

会社が蓄積してきた、組織やシステムや情報とデータの四つの資源要素を総称 して知識資源とし、当該資源を有効に活用できるように具体的モデル化を図る。

提案2.知識資源管理

具体的知識資源のモデルにより知識資源の開発を容易にすることと、開発した 知識資源を管理改善するべく管理サイクルを定め管理の方法手順を工夫する。

提案3.方法論の整備

経営業績に結実するための組織を改革する組織開発方法論を基軸にした、シス テム開発方法論、情報開発方法論、データベース開発方法論の整備をし、統合的 知識資源開発方法論の実践の道を示す。

このような、具体的提案をすることで、企業社内に、知識資源管理という新管 理概念を確立し、方法論の統合的活用により進化的経営合理化を達成することが できる(図3参照)。

実 行

開発・テスト・移行

知 識 資 源 管 理 シ ス テ ム

組 織

デ ー タ

情 報

チ ェ ッ ク

運用・メンテ

計 画

分析・設計 ア ク シ ョ ン

データベース 開発方法論 組織開発方法論

情報開発方法論 システム開発

方法論

図 3:知識資源管理への統合的アプローチ

(29)

2.4 本研究の狙い

本研究では、知識資源管理の方法論を明らかにし、企業への統合的な適用事例を示 し経営管理技術としての有効性を提示する。究極の狙いは、日本企業が経営を進化さ せる合理化の方法論を示すことである。持続的進化を達成するには、経営管理者、中 間管理者や担当者の知識資源の活用能力を向上することである。これが企業の合理化 を達成する正道だからである。本研究の具体的狙いは以下の三つである。

第一に知識資源についての理解容易なモデル化をはかること。

第二には、知識資源管理アプローチの方法手順を示すこと。

第三には、知識資源を構成する四つの要素についての開発方法論を示すこと。

すなわち、組織開発方法論を主体に情報開発方法論とデータベース開発方法論をあ わせて工夫する。著者が日本において活用してきたPRIDEと言うシステム開発方法 論(30 年前に著者が米国より技術導入済み)をこれらに組合せて統合利用し経営の 合理化を実現するアプローチを示すこと。さらに、これらの方法論を企業において適 用し、5つの視点から効果を定量化しその有効性を実証することとした。

(30)

第3章 知識資源管理の統合的方法論

本章では、先ず知識資源の定義からはいる。従来的認識では、知識=情報という程 度の理解しかなかった[34]。さらに言えば、情報とデータの区別さえなかった。

し か も 、 シ ス テ ム と い う と コ ン ピ ュ ー タ と 同 義 で 捉 え る 風 潮 に な っ て い た [35][36][37][38][39]。

このような表面的認識から離れ、ここでは知識資源を経営の資源とする本質的定義 を以降の節において確立する。

3.1 知識資源の定義

本論での知識資源を構成する要素として第一は組織そのものである。企業において 組織が機能しないと非効率はなはだしい。しかし、日本的経営に置いて、組織課題は 常に経営トップの専管権限とされてきた。そのために、組織の設計の巧拙をオープン に議論することは少なかった。知識資源というものとして共有財産化するという認識 さえも無かった。本論では、組織を経営トップの管掌下から引き離し、資源化するこ とを主張している。第二の資源要素はシステムである。システムを企業の資源とする ことは、システムの持つ効率性と効果性に着目するからである。効率的システムの整 備により、組織に配置された社員を効率的に稼動させることが出来る。社員が活用す る情報を適宜適切に配信して意思決定を行い、企業に利益をもたらせるのである。こ れが、効果的システムを整備することの意義でもある。第三の資源はデータである。

データは情報の素材でありシステムで加工されて情報になる。データが把握され、保 管され、そこから取り出されて、加工されるときに必要十分なデータが取り扱われる。

企業が使うデータの全体をデータベースという。そこでは、人手又は電子計算機にて 加工されたり利用されたりする。システムはデータをファイルへ入力し、加工する。

情報として出力されると人間が情報処理をする。このプロセスがシステムである。

これら四面が同軸に構造化されている全体を知識と総称して呼ぶことにする。本論 での知識は全て形式知とする。組織は人の働く空間である。ルールや制度などを内包 し、複雑な関連性を持つ場といえる。

(31)

場には、人と金と物がエネルギーとして投入される。知識は触媒的機能を持ち、

エネルギー燃焼の助けになる。知識は人の目に見えにくい。見えないことが知識の有 効活用を阻んでいる。そこで、見える化をはかり知識を有効に利用活用すると企業は 高い業績を達成すると想定できる。このために、本論では、知識資源を4面一体の4 角錐体としてモデル化した(図4参照)。

DB File Rec Data

知識資源の 四角錐

SYSSUBSYSPROCEDUREOPERATIONPROGRAM

経営者 部長 課長 担当者

戦略情報 戦術情報 管理情報 業務情報

データ

シス

情報

図 4:知識資源の四角錐

知識資源は活用して初めて効果が発揮される。活用するには資源を認知し整備して おかねばならない。しかも、知識資源は4面一体でないと機能しない。企業経営に有 効に機能させるには、4資源要素が適正に設計され開発されないと使えない。しかも、

ひとたび開発しても経営環境の激変によりあっという間に陳腐化する。システムが実 体組織と乖離すると、そこに不正や不祥事がおこり、しかも正しい情報が経営者や管 理者、担当者に伝わらない。最悪の事態は経営の破綻を招くのである。

この混沌を避け資源の有効活用を図るべく物的資源の開発方法論から学ぶことに する。Pahl 等は、製造物を構造体(4 階層)とする考え方を一般化して、製品開発 方法論を標準化した[32]。

(32)

この標準化は車のような構造物の新製品の仕様決定から設計、開発、試作、量産、

市場投入、改良という製品のライフサイクル全般の工程の標準化を促進した(付録8 参照)。そこで、知識資源の4角錐体にも構造化の概念を導入し物的資源のような効 率的開発維持の論理を組み込むことを意図した。すなわち、知識資源を4階層の構造 体とみなす考え方を導入した。知識資源の面的部分を要素と言い換えて、各要素の構 造を定義する(図5参照)。

戦略情報

戦術情報

管理情報

業務情報 情 報 の 構 造 システム

サブシステム

プロセジャー

作業/プログラム システムの構造 データベース

ファイル

レコード

データエレメント デ ー タ の 構 造

経営者

部 長

課 長

担 当 組 織 の 構 造

自覚 意識、無意識 潜在意識、下意識 未那識、阿頼耶識

五識(視覚、味覚、聴覚、触覚、嗅覚)

心 の 構 造

メジャ アッセンブリー サブアッセンブリー

コンポーネント

パーツ

自動車の構造

戦略情報

戦術情報

管理情報

業務情報 情 報 の 構 造

戦略情報

戦術情報

管理情報

業務情報 戦略情報

戦術情報

管理情報

業務情報 情 報 の 構 造 システム

サブシステム

プロセジャー

作業/プログラム システムの構造

システム

サブシステム

プロセジャー

作業/プログラム システム

サブシステム

プロセジャー

作業/プログラム システムの構造 データベース

ファイル

レコード

データエレメント デ ー タ の 構 造

データベース

ファイル

レコード

データエレメント データベース

ファイル

レコード

データエレメント デ ー タ の 構 造

経営者

部 長

課 長

担 当 組 織 の 構 造

経営者

部 長

課 長

担 当 経営者

部 長

課 長

担 当 組 織 の 構 造

自覚 意識、無意識 潜在意識、下意識 未那識、阿頼耶識

五識(視覚、味覚、聴覚、触覚、嗅覚)

心 の 構 造 自覚

意識、無意識 潜在意識、下意識 未那識、阿頼耶識

五識(視覚、味覚、聴覚、触覚、嗅覚)

自覚 意識、無意識 潜在意識、下意識 未那識、阿頼耶識

五識(視覚、味覚、聴覚、触覚、嗅覚)

心 の 構 造

メジャ アッセンブリー サブアッセンブリー

コンポーネント

パーツ

自動車の構造 メジャ

アッセンブリー サブアッセンブリー

コンポーネント

パーツ メジャ アッセンブリー サブアッセンブリー

コンポーネント

パーツ

自動車の構造

図 5:構造の概念

尚、図5の下段左図の“心の構造”とは筆者が想定した構造である。臨在禅でいう 十牛図にて示される十工程での心の完成、悟りのステップはこのような4階層の構造 を前提にしているように思える。ここに宗教と科学の合一点が見える。

3.2 知識資源 4 要素の 4 階層構造化

3.2.1 組織要素の構造

組織要素に構造を与える。4階層の平易な構造である。第一階層を経営トップ層と する。この層は役員層ともいいうる。第二階層は部門責任者層または部長層である。

(33)

第三階層は中間管理者層である。課長という呼称が一般的である。第四階層は担当 者層とする。営業とか現場作業とかの企業の実務を担当している。

組織は企業が古くなり、巨大化すると必ず重厚な構造になる。常に簡易な階層の少 ない組織を指向すべきである。

3.2.2 情報要素の構造

情報要素に構造を与える。第一階層は戦略情報、第二階層は戦術情報、第三階層は 管理情報とし、第四階層を業務情報とする。戦略情報は、企業競争上必要な情報であ り経営層が主に使う。競争相手のM&A情報や、新製品開発情報などは戦略性が高い。

戦術情報は競争の現場において使用する情報で例えば受注合戦における入札単価と か技術情報などがこれにあたる。管理情報であるが、予算実績差異情報などはこれで ある。業務情報は担当者が仕事をするための情報であり、作業指示書とか、請求書と かがこの範疇である。

3.2.3 データ要素の構造

データ要素に構造を与える。第一階層はデータベース、第二階層はファイル、第三 階層はレコード、第四階層をデータエレメントとする。データベースはN(N>0)ケの ファイルからなる。ファイルはNケのレコードから構成される。レコードはNケの データエレメントの集まりである。データエレメントは事実事象をデジタルに表現し たものとする。データエレメントは、通常不可分な単位であるが、氏名のように姓と 名とを組み合わせて使う場合、これもデータエレメントとすることもある。氏名とい う項目に対して例えば松平和也とあるのはデータ値である。

3.2.4 システム要素の構造

PRIDE方法論における定義では、システム要素に4階層の構造を与えている。

第一階層をシステム(SY)、第二階層をサブシステム(SS)、第三階層をプロセジ ャ(PC)、第四階層を作業(OP:人間の仕事)又はプログラム(PG:電子計算機の仕 事)としている。PRIDE 方法論におけるシステムとは人の業務の塊であり、そこに 電子計算機が使われているという仕組み全体を言う。システムを構成するのはサブシ ステムである。サブシステムは必ず時間ファクタで定義されている。それは、情報を

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