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苫小牧信用金庫の地域貢献活動 常務取締役 鈴木 利徳

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(1)

苫小牧信用金庫の地域貢献活動

常務取締役 鈴木 利徳

今年の 8 月、すばらしい地域貢献活動を行っている信用金庫に出会った。北海道の苫小牧信 用金庫である。苫小牧市は人口約 17 万人、道内5番目の中核都市であり、道内一の工業港を有 している。明治末期から盛んであった製紙業に加えて、昭和の高度経済成長期には大規模工業 基地として開発され石油コンビナート、自動車関連企業も数多く進出している地域である。

筆者が驚いたのは地域貢献活動のその多彩さである。地域の若手経営者を育成するための

「とましん創生塾」を開講・運営し、これまで延べ 161 名の塾生が卒業している。平成 21 年からは 札幌信金、旭川信金と連携し 3 金庫合同で若手経営者のためのセミナー、企業視察、異業種交 流会の開催を行うなど活動の裾野を拡げている。

地元の大学等との産学連携にも積極的であり、平成 17 年には苫小牧駒澤大学、苫小牧工業 高等専門学校と、18 年には室蘭工業大学と産学連携の協定を締結し、公開講座や子供ものづく り教室などを共催している。

また、経産省の委託事業である地域力連携拠点事業のパートナー機関として参画し、農商工 連携や創業、事業承継などを支援している。その他、苫小牧信金のホームページを活用して地域 企業が自社 PR や販売促進の情報発信を行う「ビジネス交流ネットワーク」にも取り組んでいる。

さらに、昭和 63 年からは管内の景気動向を取りまとめた唯一の経済調査誌「とましん景況レポ ート」を発行し、取引先企業への情報提供に努めているとともに、平成 21 年には苫小牧信金創立 60 周年を記念して、地域経済の活性化を図るために「苫小牧市の活性化への提言―市内の産 業構造変革への挑戦―」を取りまとめ、市、商工会議所等関連機関に幅広く公表した。

金融教育への取組みも活発であり、町内会・老人会向けの金融教室、振り込め詐欺等金融犯 罪防止セミナー、小中学校向け金融教室の開催などに加えて、冬休みには親子金融探検隊を開 講し、本店内の見学、札勘体験などを通じて信金の仕事に親しんでもらう企画も取り入れている。

地域社会の高齢化に対しては、全役職員が厚生労働省の「認知症サポーター養成講座」を受 講し、認知症の方への接し方などを学ぶとともに、各営業店窓口には高齢者や障害のある方々と の取引手続きを円滑にするための「コミュニケーションボード」を設置し、高齢者等に配慮した接客 を工夫している。また、融資面では介護支援ローン「いたわり」、シルバーライフローンなどの商品 を開発している。

環境問題にも前向きに取り組んでおり、①金庫施設内の省エネルギー化宣言、②地球温暖化 対策推進国民運動への参加、③全国植樹祭や森づくりフォーラムへの協賛・参加、④分収育林 契約による森林資源の保護育成、⑤役職員とその家族のボランティアによる海岸の清掃など、役 職員の家族も参画する形で環境活動を推進している。

その他にも、教育・文化振興のために著名人を講師とする経済文化講演会を年3~5 回、顧客 への感謝を込めて一流の歌手を招いての盛大なコンサートを年 1 回開催している。

地域の金融機関としての強い自覚がこのような多彩な地域貢献活動を支えているといえよう。

「地域貢献活動を『地域社会の一員としての本業』としてとらえている。地域が限定されているから

こそ我々信金は生き残れる」と語った窪田会長の言葉が忘れられない。

(2)

年 度 下 期 はマイナス成 長 に陥 る可 能 性 も 

〜「円 高 ・株 安 ・長 期 金 利 低 下 」基 調 はひとまず一 服 〜  南   武 志 要旨 

世界経済の回復テンポの鈍化や、耐久消費財の刺激策購入支援策の効果一巡や反 動減、さらには 15 年ぶりの水準まで進行した円高などにより、国内景気は足踏みし始めて いる。大幅な金融緩和措置や新興国経済の底堅さなどもあり、景気の水準自体は大きく 落ち込むことはないだろうが、10 年度下期にかけてマイナス成長に陥るなど、軽い調整局 面を通過するとみられる。物価に関しては、依然として需給ギャップが大きく乖離している ことから、下落状態が続いており、デフレ脱却時期を見通せる状況にはない。 

なお、内外の金融市場では、米国の大幅な金融緩和策(QE2)発表後、一部の米国経 済指標の持ち直しもあり、円高・株安・長期金利低下には一応の歯止めがかかった。とは いえ、欧米金融システムの不安定さが残る中、円高圧力はなかなか解消しないだろう。  

11月 12月 3月 6月 9月

(実績) (予想) (予想) (予想) (予想)

無担保コールレート翌日物 (%) 0.089 0〜0.1 0〜0.1 0〜0.1 0〜0.1

TIBORユーロ円(3M) (%) 0.335 0.30〜0.35 0.30〜0.35 0.30〜0.35 0.30〜0.35

短期プライムレート (%) 1.475 1.475 1.475 1.475 1.475

10年債 (%) 1.125 0.85〜1.20 0.80〜1.15 0.80〜1.20 0.85〜1.25

5年債 (%) 0.420 0.30〜0.48 0.25〜0.43 0.25〜0.45 0.30〜0.50

対ドル (円/ドル) 83.4 78〜88 80〜92 80〜92 82〜95

対ユーロ (円/ユーロ) 114.6 100〜120 100〜125 105〜130 110〜135

日経平均株価 (円) 10,115 10,000±1,000 10,000±1,000 10,250±1,000 10,250±1,000

(資料)NEEDS-FinancialQuestデータベース、Bloombergより作成。先行きは農林中金総合研究所予想。

(注)無担保コールレート翌日物の予想値は誘導水準。実績は2010年11月22日時点。予想値は各月末時点。

   国債利回りはいずれも新発債。

為替レート

図表1 .金利・ 為替・ 株価の予想水準

      年/月      項  目

2010年 2011年

国債利回り

 

国内景気:現状・展望 

2009 年春以降、景気の持ち直しを続け てきたわが国経済であるが、夏場にかけ て、エコカー・家電に対する消費支援策 の効果一巡、米国・中国など世界経済の 拡大スピードの減速、さらには急激な円 高進行などによって、足踏みが意識され るようになってきた。 

一方、11 月 15 日に発表された 7〜9 月 期の GDP 第一次速報によると、経済成長 率は前期比 0.9%(同年率 3.9%)と、巡

航速度(≒潜在成長力)を上回る、高め の伸び率を達成した。内容的に、これま で景気を牽引してきた輸出の減速感が明 確になる半面、猛暑による季節商品の販 売好調やエコカー購入補助金制度の期限 切れやたばこ税率引上げを前にした駆込 み需要などで民間消費は同 1.1%と高い 伸びを確保。そのほか、民間住宅投資、

民間企業設備投資も同プラスで推移する

など、表面的には民間最終需要の回復(前

期比 1.1%、前期比成長率への寄与度

(3)

-5  -4  -3  -2  -1 

2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年

0.8%pt)が目立った。 

図表2.消費まわりの物価動向

民間消費デフレーター

消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合)

国内企業物価・消費財(国内品)

(資料)内閣府、総務省、日本銀行

(%前年比)

とはいえ、9 月分以降の消 費関連指標には自動車販売 が不振に陥ったことが判明 するなど、反動減も出てき ている。生産面においても、

自動車製造業の他業種へ高 い生産波及効果による悪影 響が当面続くことが懸念さ れている。海外経済の回復 テンポの鈍化と合わせ、年

度下期にかけて景気が軽い調整局面入り する可能性が高まっているといえるだろ う(2010〜12 年度の経済見通しについて は、本誌の該当レポートを参照のこと)。 

一方、物価については、代表的な全国 消費者物価(生鮮食品を除く総合)が前 年比▲1%前後の下落が続くなど、なかな かデフレから脱却できる展望が描けずに いる。資源・エネルギー関連といった川 上分野での価格上昇圧力がだいぶ緩和し てきたほか、国内の需給環境としても需 要不足状態が大きく残っていることが背 景にある。なお、10 月以降は食料品値上 げやたばこ税増税によって物価下落率が 縮小する場面もあるものの、11 年度内に 物価上昇率がプラスに転換するのは困難 と思われる。 

 

金融政策の動向・見通し  

脱却がなかなか見通すことができない デフレ、持続的な円高圧力、さらには夏 場にかけて浮上してきた景気失速懸念も 加わり、日本銀行に対して追加的な金融 緩和措置を求める意見が強まっていた。

これに対し、日銀は 8 月 30 日には臨時金 融政策決定会合を開催し、固定金利オペ の拡充(新たに期間 6 ヶ月物を約 10 兆円

導入)を決定したほか、9 月中旬に 6 年 半ぶりに実施した為替介入(円売りドル 買い)に際しては、その介入資金をとり あえず市場に放置する(≒非不胎化)方 針を示すなど、一定の緩和努力を続けて きた。さらに、10 月 4〜5 日の金融政策 決定会合では、①政策金利(無担保コー ルレート翌日物)の誘導目標の変更(0

〜0.1%)、②時間軸の設定(「中長期的な 物価安定の理解」に基づき、物価の安定 が展望できる情勢になったと判断するま で今回の政策を原則継続) 、③5 兆円規模 の資産買入基金の創設、といった思い切 った追加緩和策を決定、日銀は「包括緩 和」と命名した。 

包括緩和策の中身を見ていくと、補完

当座預金制度の適用利率と固定金利方

式・共通担保資金供給オペの貸付利率を

0.1%に据え置いたこともあり、導入後 1

ヶ月が経過しても政策金利は 0.09%前後

での推移を続けるなど、低下幅は限定的

である。一方、利上げのための条件が厳

しいものとなったことで、かなり長めの

時間軸が設定された可能性が高く、今後

の景気・物価情勢の展開によっては、タ

ーム物金利や短期ゾーンの国債利回りの

一段の低下を通じて、イールドカーブ全

(4)

体が一段と低下する可能性が あるといえるだろう。 

0.8 0.9 1.0 1.1 1.2

8,500  9,000  9,500  10,000  10,500 

2010/9/1 2010/9/15 2010/10/1 2010/10/18 2010/11/1 2010/11/16

図表3.株価・長期金利の推移

(資料)NEEDS FinancialQuestデータベースより作成

(円) (%)

日経平均株価

(左目盛)

前述の通り、年度後半にか けて景気の失速懸念が強まる 可能性を考慮すれば、今後と も日銀は追加緩和策を検討・

実施していくものと予想する。

その場合には、白川総裁自ら、

日銀の「次の一手」として今 回導入された資産買入基金の 拡充を指摘していることもあり 柱になる可能性が高いだろう。 

新発10年 国債利回り

、これが

 

市場動向:現状・見通し・注目点  

夏場にかけて世界的に「質への逃避」

的な行動が強まり、日本円や国内金融市 場が資金の一時的な逃避先となる状況が 続き、 「円高・株安・金利低下」という様 相が強まった。これに対し、日銀は 8、

10 月と金融緩和措置を講じたほか、政府 は 9 月には為替介入に踏み切った。しか し、その後も米国での追加金融緩和期待 を背景に、円高圧力は解消せずにいた。 

以下、長期金利、株価、為替レートの 当面の見通しについて考えて見たい。 

 

①債券市場 

長期金利(新発 10 年物国債利回り)は 新年度入り直後から緩やかな低下傾向を 辿った。わが国の財政状況は見方によっ てはギリシャなどよりも厳しいものの、

世界的に経済・金融情勢の不透明感が高 まったことにより、投資家の「質への逃 避」的な行動が強まっていることに加え、

貸出が伸び悩むなど運用難に苦しむ国内 投資家の消去法的な国債購入スタンスも 金利低下を後押しした。 

一方、8 月下旬から 9 月上旬にかけて、

民主党代表選に伴い財政赤字拡大懸念が 再び意識されたことで、長期金利は一時 的に 1.2%弱まで上昇する場面もあった が、結局は財政健全化を志向する菅首相 の圧勝に終わったことや、9 月の米 FOMC 後に円高圧力が再び高まったこともあり、

長期金利も再度低下傾向を強めた。さら に、日銀の包括緩和策導入後には長期金 利は 0.8%台まで低下した。なお、最近 では、円高圧力の緩和や米国における第 三弾の金融緩和措置(QE3)の可能性が遠 のいたとの見方が強まったこともあり、

長期金利は上昇に転じ、1.1%前後での展 開となっている。 

基本的に国内最終需要の本格回復に向 けた動きは鈍いままで、物価も当面は下 落が続くとの予想が定着していること、

日銀がさらに金融緩和措置を講じる可能 性があることなどを踏まえれば、長期金 利は再低下する可能性は強いだろう。も ちろん、日本国債(JGB)格下げの可能性 も含めて、世界的に財政危機に対する警 戒感は依然として根強いことから、折に 触れて神経質に金利が変動する場面は十 分想定しておく必要があるだろう。 

 

②株式市場 

日経平均株価は 5 月以降、弱含みでの

(5)

推移が続いた。特に、夏場にかけては世 界的な景気減速懸念の強まりやそれに伴 う円高進行によって一時 9,000 円を割り 込むなど、一段の下げ基調となった。そ の後は、日銀による追加金融緩和の発表 や小沢前幹事長の民主党代表選出馬など を材料に持ち直す場面もあったが、基本 的には 9,000 円台でのもみ合いが続いた。

一方、11 月中旬にかけては、米国での金 融緩和措置(QE2)や同じく米国の経済指 標の好転などから持ち直しの動きも散見 され始め、ようやく 1 万円の大台を回復 した。 

今しばらくは、海外情勢に対する思惑 が相場動向を左右すると見られるほか、

国内のデフレ継続や円高リスクによる企 業業績への下押し圧力も意識され、株価 の上値が重い展開が続くものと思われる。  

 

③外国為替市場 

夏場にかけて、一部欧州諸国の財政危 機への警戒感、米国経済の減速懸念やそ れに伴う追加金融観測などから、世界的 に投資家のリスク回避的な行動が強まっ た結果、消去法的な円買い圧力が高まっ た。このうち対ドルレートは 9 月中旬に 一時 1 ドル=82 円台と約 15 年ぶりの水 準まで円高が進行したことから、政府は

9 月 15 日には約 5 年半ぶりの円売り介入 に踏み切り、日銀も介入資金を含めた潤 沢な資金供給努力を行うと表明した。介 入後、一時的に円高圧力は弱まったが、

その効果は長続きせず、10 月中旬から下 旬にかけては 80 円台まで円高が進行し ている。なお、11 月 2〜3 日の米 FOMC に おいて米国版の量的緩和第二弾(QE2)の 決定後は、当面の材料出尽くし感やさら なる緩和措置(QE3)の可能性は薄いとの 見方も浮上したことから、円高進行に一 服感も見られている。 

野田財務相は必要であれば為替介入す る方針を表明し続けているが、G7 や G20 といった国際会議を前に、人為的な為替 操作に対する批判が高まったこともあっ てか、なかなか 2 回目の為替介入に踏み 切ることができなかった。実際、11 月 11

〜12 日に韓国ソウルにて開催された主要 20 ヶ国・地域首脳会合(G20 サミット)

では、通貨安競争の回避と各国の経常収 支不均衡を是正するための参考指針の策 定目標(11 年前半まで)を盛り込んだ首 脳宣言を採択したが、経常収支黒字国で ある日本が自国通貨安につながるとして 国際的な批判を浴びかねない為替介入を 行うことは事実上困難となったと見る向 きも少なくない。 

先行きは、欧米の金融 システムに対する不安が まだ燻っているほか、米 FRB による大幅な追加緩 和措置(QE2)の効果が今 後浸透する可能性を踏ま えれば、当面は円高圧力 が根強く残ったままでの 展開が続くだろう。 

104  106  108  110  112  114  116 

80 81 82 83 84 85 86

2010/9/1 2010/9/15 2010/10/1 2010/10/18 2010/11/1 2010/11/16

図表4.為替市場の動向 円

対ドルレート(左目盛)

対ユーロレート(右目盛)

円 高

(円/ドル) (円/ユーロ)

(資料)NEEDS FinancialQuestデータベースより作成 (注)東京市場の17時時点

(2010.11.24 現在)

(6)

米 FRB、 大 幅 緩 和 策 導 入

田口  さつき

 

11 月の連邦公開市場委員会(FOMC)では 2011 年の第 2 四半期までに 6,000 億ド ル(月にして 750 億ドル)の残存期間が長めの国債を買い増すことが決定された。

これにより、FRB の総資産残高はリーマン・ショック前の約 3 倍に増大する可能性 がある。しかし、追加金融緩和がドル安やインフレなど歪みをもたらすという見方 もあり、金融市場は FRB が国債購入額を減額する方向で見直すという観測も浮上し てきた。 

要    旨

11 月 の 決 定  

11 月の米連邦公開市場委員会(FOMC)

では、連邦準備理事会( FRB)は、景気 の回復ペースを強め、 (FRB に課せられ た雇用の最大化と物価の安定という)2 つの責務を達成する状況に対応するイン フレ率まで戻すため、 追加金融緩和に踏 み切った。その内容は、2011 年の第 2 四半期までに 6,000 億ドル(月にして 750 億ドル)の 残存期間が長めの国債を 買い増すというものであった。 

また、ニューヨーク連銀は、 政府機関 債とその発行するモーゲージ担保証券

(MBS) の期限前償還の再投資分が同期 間で 2 ,500〜3,000 億ドルと予想し、追 加金融緩和分と合わせて 8 ,500〜9,000 億ドル(月にして約 110 億ドル)の国 債購入が必要と見込んでいる。そして、

図表 1 のように中期ゾーンを中心とし た購入計画を発表した。 

  なお、9 月の FOMC で議論されていた期

待インフレ率を高める戦略については、

声明文では触れられていなかった。  

 

改 め て 出 口 戦 略 と の 関 係 を 考 え る  

一方、棚上げされている格好の出口 戦略との関係を今一度確認してみよう。

2010 年の春には、FRB は、緊急流動性 対策により膨れ上がった①総資産残高 と② 超過準備の 縮小、そして、③MBS 等 が大部分を占める資産構成を正常化さ せるという出口戦略を検討していた。

今回の決定で、①、②は、後退したと 考えていいだろう。例えば、①の総資 産残高は最大でリーマン・ショック前 の約 3 倍に増大する可能性がある。 

一方、③については、MBS 等は前述の ニューヨーク連銀の 期限前償還につい ての予想 を考慮 すると、総資産残高に占 める割合は 11 月 3 日現在の 53.2%から 約 3 割に縮小する。その一方、長期国債

図表1 今後のFRBの残存期間別国債購入計画

残存期間ごとの国債 TIPS

1.5年超2.5 年以内

2.5年超4年 以内

4年超5.5年 以内

5.5年超7年 以内

7年超10年 以内

10年超17 年以内

17年超30 年以内

1.5年超30 年以内

5% 20% 20% 23% 23% 2% 4% 3%

Federal Reserve Bank of New York資料より作成

(7)

金 融 市 場 の 反 応 と 経 済 指 標   は 17.2%から約 5 割となり、FRB の保有

する資産の構成が大きく変化する。ただ し、 MBS 等の残高は依然大きい。 

FOMC 直後は追加金融緩和の決定を受け て、株高・債券高(長期金利の低下)の 展開となった。 

再度出口戦略が検討される場合、長期 国債の取り扱いが焦点となるとみられる が、財政政策との兼ね合いもあり、なか なか売却という手段を取り難いと思われ る。おそらく、 図表 1 のとおり、追加購 入される国債の多くは、償還が 7 年以 内に到来するため、償還まで保有し、

再投資するかどうかを経済状況に合わ せて調節していくと考えられる。 

その後、中間選挙での共和党の躍進か ら医療保険改革の後退などにより企業負 担が軽減するとの予想が高まったことや 11 月の雇用統計で非農業部門雇用者数

(除政府部門)が 4 カ月連続で 10 万人超 の増加となったこと、小売売上高も増加 基調が続いていることから景気に悲観的 な見方が後退した。このため、長期金利 は 11 月中旬には 2.9%まで上昇した。 

ただし、金融市場にはインフレリス クが高まった場合、①、②が巨額すぎ て、FRB は機動的に対応できないと見る 向きもあり、改めて 購入規模とインフレ リスクについて関心を向け始めた。  

直近は、前述したように追加金融緩和 がドル安やインフレなど歪みをもたらす という見方も強まり、金融市場は FRB が 国債購入額を減額する方向で見直すこと も織り込んできており、長期金利はボラ タイルな動きとなっている。 

 

FOMC メ ン バ ー の 発 言  

例年、この時期の注目材料となってい るクリスマス商戦については、前述のと おり、雇用が緩やかに改善していること により雇用者所得の増加も続いているた め、昨年を上回る見通しがでている。た だし、一部の家電については、今春の景 気刺激策で需要が先食いされたこともあ り、不調との見方もでている。 

11 月の FOMC 後の同メンバーの発言に よると、バーナンキ議長や ニューヨーク 連銀のダドリー総裁などは、国債購入 がインフレを引き起こすことに否定的 である。これに対し、ウォーシュ理事 は、現在のドル安や商品価格の急上昇 などがインフレを引き起こす場合、追 加金融緩和を見直すだろうという内容 の発言をしている。同時に、FRB が債券 市場でプライステーカーよりもプライ スメーカーとなることにより国内外で 歪みをもたらすという懸念にも言及し ている。このように追加金融緩和が金 融市場に与える影響に慎重な見方をす るメンバーがいたことから、 「FOMC はこ れから入ってくる情報に照らして国債 購入のペースや規模を見直し、調整す る」ことが声明文に明記されたのだろ う。 

(10.11.24 現在)          

2.0  2.5  3.0  3.5 

4.0 (%) 図表2 米国の長期金利の推移

10年国債

Datastreamより作成

(8)

米国経済

米国では 11 月 2〜3 日に米連公開市場委員会(FOMC)が開催され、2008 年 12 月から据え置か れている政策金利(史上最低の 0〜0.25%)を当面維持する方針が示された一方、11 年 6 月末ま でに 6,000 億ドルの国債買い入れを行うとの追加金融緩和策を発表した。8 月の FOMC で発表さ れた政府支援機関債や MBS の償還金による国債への再投資策と合わせると、9,000 億ドル規模と なる。米国経済指標では、10 月の雇用統計の非農業部門雇用者数が前年比 15.1 万人の増加と事 前予測(同 8.0 万人:ブルームバーグ社)を上回った。また、7〜9 月期の実質 GDP 成長率(改 定値)は、前期比年率 2.5%と 5 四半期連続の増加となった。 

 

国内経済

日本では 7〜9 月期の実質 GDP 成長率(一次速報)は、前期比 0.9%、同年率 3.9%と 4 四半期 連続で増加した。また、9 月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比▲10.3%と、4 ヵ月 ぶりに減少したものの、7〜9 月期を通じては前期比 9.6%と内閣府事前見通し(同 0.8%)を大 幅に上回った。ただし、先行き 10〜12 月期は同▲9.8%と減少する見通しとなっている。一方、

9 月の鉱工業生産指数(確報値)は、前月比▲1.6%と 4 ヵ月連続で低下した。製造工業生産予 測調査によれば、10 月は前月比▲3.6%と低下が見込まれるものの、10 月は同 1.7%と上昇に転 じるとの見込み。 

 

日銀の金融政策 

日銀は 10 月 4〜5 日の金融政策決定会合で、政策金利を 0.0〜0.1%へと実質的に引き下げ、

時間軸を設定するとともに、5 兆円規模の資産買入基金を設置するという「包括緩和策」を発表 した。また、当初予定の 11 月 17〜18 日から前倒しされた 4〜5 日の同会合では、政策金利の据 置きとともに、資産買入等基金規模(合計 35 兆円程度)の据置きを決定した。 

 

株価・金利・為替

日経平均株価は、 円高進行への警戒感から弱含みが続いたが、円高の一服や 11 月 2〜3 日の FOMC で追加金融緩和策が発表されたことなどを受けて上昇し、11 月中旬は 9,800 円前後で推移。

直近は今年 6 月中旬以来となる 1 万円台を回復した。長期金利(新発 10 年国債利回り)は、円 高の進行や海外経済の減速懸念のなかで投資家の「質への逃避」が強まり、10 月中旬までは 0.8%

台での推移となった。その後は、米国で株高・債券安の動きが加速したことや、円高一服などか ら国内株価も上昇に転じたことから上昇基調となり、直近は 1.1%台に達している。外国為替市 場(ドル円相場)は、9 月 15 日に日本政府が円売り・ドル買いの為替介入を実施したことから、

1 ドル=85 円台まで値を戻したものの円高進行は止まらず、10 月末から 11 月上旬にかけては 1 ドル=80〜81 円台でもみ合った。しかし、米国で株高・債券安が進んだことなどを受けて、直 近は 1 ドル=83 円台まで円安方向に振れている。 

 

原油価格 

ニューヨーク原油先物(WTI 期近)は、実需を主な背景として 11 月上旬〜中旬に 1 バレル=

87 ドル台まで上昇した。しかし直近は、中国のインフレ対策観測が強まったことなどから下落

に転じ、1 バレル=80 ドル前後となっている。      (10.11.22 現在) 

(9)

       

内外の経済金融データ  

▲ 0.7 1.6 5.0 3.7

1.7 2.0

2.2 2.0

2.7 2.9

▲ 8

▲ 6

▲ 4

▲ 2 0 2 4 6 8

06/09 07/09 08/09 09/09 10/09 11/09 (前期比

年率:%)

見通し

米国の経済成長予測

実績

10年11月予測

(資料)Bloomberg (米商務省)データより作成 (注)見通しはBloomberg社調査

65  70  75  80  85  90 

09/11 10/01 10/03 10/05 10/07 10/09 10/11

(㌦/バレル)

(資料)Bloomberg(OPECデータ等)より作成

原油市況の動向(日次)

OPEC バスケット価格 NY原油(先物)価格 ドバイ原油価格

-3.0%

-2.0%

-1.0%

0.0%

1.0%

2.0%

3.0%

2008/03 2008/09 2009/03 2009/09 2010/03 2010/09

消費者物価指数(前年比)

エネルギー 生鮮食品を除く食料 その他

生鮮食品を除く総合

(資料)日経NEEDS‐FQ(総務省「消費者物価指数)より作成

▲ 45

▲ 30

▲ 15 0 15 30 45

▲ 9

▲ 6

▲ 3 0 3 6 9

07/09 08/03 08/09 09/03 09/09 10/03 10/09

(前年比:%)

(前月比:%) 鉱工業生産の推移

前月比(左軸)

前年比(右軸)

経産省:製造 工業生産予測

(資料)経済産業省「鉱工業生産」より作成

(注)予測は、製造工業生産予測調査の当月見込みと翌月見込みの季節調 整済み増加率

6  7  8  9  10  11  12  13 

07/9 08/3 08/9 09/3 09/9 10/3 10/9

機械受注(船舶・電力除く民需)の推移

単月

3ヵ月移動平均

四半期実績・翌期見通し

(資料)内閣府「機械受注」より作成

10〜12月期見通し:

前期比▲9.8%

(千億円)

0.7  0.8  0.9  1.0  1.1  1.2  1.3  1.4 

2.0  2.2  2.4  2.6  2.8  3.0  3.2  3.4 

8/20 9/20 10/20 11/20

(%) (%)

(資料)Bloomberg データより作成

米独日の国債利回り

独国 10年物国債利回(左軸)

米国 財務省証券10年物国債利回(左軸)

日本 新発10年国債利回(右軸)

(詳しくは、ホームページ-トピックス-〔今月の経済・金融情勢〕http://www.nochuri.co.jpへ)

(10)

2010 年 11 月 18 日   

       

                         

2010 年度下期には軽微ながらも景気の調整局面へ 

 

〜10 年度:2.0%、11 年度:1.0%、12 年度:2.4%と予測〜 

 

2009 年春以降、持ち直し基調を続けてきた国内景気であるが、消費刺激策の終了に伴う反動 減、世界経済の回復テンポの鈍化や急激に進行した円高による輸出の減速などを受けて、足踏 み状態に陥っている。当面は、自動車、家電製品など耐久財を中心に消費の落ち込みが考えら れるほか、11 年半ばまで世界経済の成長減速が続くことに伴う輸出低迷などから、10 年度下期に かけて国内景気は軽い調整局面を迎えることになるだろう。 

一方、日本銀行は 10 月に、ゼロ金利容認、時間軸の再設定、5 兆円規模の資産買入基金の 創設からなる「包括緩和策」を導入し、11 年度内のデフレ脱却に向けた努力をしてきた。しかし、

大きく乖離したマクロ的な需給ギャップを解消するほどの力強い成長は期待できないため、12 年 度についても物価下落状態は残るものと見込む。今後とも、日銀に対してはさらなる緩和措置が 求められるものと予想される。 

2 2 0 0 1 1 0 0 〜 〜 1 1 2 2 年 年 度 度 経 経 済 済 見 見 通 通 し し    

520 530 540 550 560

4〜6 7〜9 10〜12 1〜3 4〜6 7〜9 10〜12 1〜3 4〜6 7〜9 10〜12 1〜3

2009年度 2010年度 2011年度

(連鎖方式、兆円) 四半期ごとのGDPの推移 四半期別GDP(季節調整値)

09年度のGDP実績値 10年度のGDP予測値 11年度のGDP予測値

予測

(資料)内閣府「GDP速報」より作成 (注)2010年7〜9月期までは実績、それ以降は当総研予測 10年度平均

09年度平均 10年度への ゲタは1.6%

11年度への ゲタは▲0.6%

11年度:

1.0%成長 11年度平均 10年度:

2.0%成長

(月期)

12年度への ゲタは1.1%

▲ 1.8

2.0 1.0 2.4

▲ 3.6

0.2 0.1

2.0

▲ 1.8 ▲ 1.9 ▲ 0.9

▲ 0.4

▲ 4

▲ 3

▲ 2

▲ 1 0 1 2 3

2009 2010 2011 2012 (年度)

(%前年度比)

経済成長率の予測(前年度比)

実質GDP 名目GDP GDPデフレーター 農中総研予測

(資料)内閣府「四半期別GDP速報」より農中総研作成・予測

(11)

1.景 気 の現 状 : 

 

(1)日 本 経 済 の現 状   〜  意 識 され始 めた景 気 後 退 リスク 

リーマン・ ショッ ク(2008 年 9 月 ) を契 機 に発 生 した世 界 経 済 ・金 融 危 機 によって大 打 撃 を受 けたわが国 の景 気 で あるが 、内 外 のさ まざ まな財 政 金 融 政 策 の効 果 に より 、09 年 春 に は 底 入 れ し 、 そ の 後 も 概 ね 緩 や か な 持 ち 直 し 基 調 を 続 け て き た 。 し か し 、 マ ク ロ 的 な 需 給 バ ランスは依 然 として大 幅 に崩 れたままであり、物 価 下 落 状 態 が長 引 いている。 

-20

0

20

40

60

80

100 50 

60  70  80  90  100  110 

8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月

2008年 2009年 2010年

リーマンショック(2008.9)後の主要経済指標

失業者数(右目盛) 鉱工業生産(左目盛) 実質輸出指数(左目盛)

(2008年8月=100) (万人)

(資料)経済産業省、総務省、日本銀行の資料より農林中金総合研究所作成

(注)失業者数は08年8月からの変化幅

こうしたなか、円 高 が進 行 、約 15 年 ぶりの高 値 水 準 で推 移 し続 けているほか、米 国 経 済 の 回 復 の 鈍 さ 、 中 国 に お け る 景 気 過 熱 や 不 動 産 バ ブ ル の 抑 制 策 に よ る 巡 航 速 度 へ の 成 長 減 速 、さらにはこれま での景 気 持 ち直 しを牽 引 してきた耐 久 財 消 費 刺 激 効 果 の一 巡 など か ら 、 夏 場 以 降 、 国 内 景 気 の

回 復 テ ン ポ が 鈍 化 し 始 め た 。 政 府 は 「 こ の と こ ろ 足 踏 み 状 態 」 、 日 本 銀 行 も 「 改 善 の 動 き に 一 服 感 」 と 、 景 気 の 現 状 認 識 を 相 次 い で 下 方 修 正 す る な ど 、持 ち直 し 局 面 が変 調 したこ と が 見 て 取 れ る 。 実 際 、 こ の と こ ろ 発 表 さ れ る 経 済 指 標 の な か で も 、 特 に 重 視 さ れ て い る 輸 出 や 生 産 と い っ た 、 国 内 景 気 の 牽 引 役 と 受 け 取 ら れ て い る 指 標 の 悪 化 が 気 に な る と こ ろ で あ る 。 景 気 動 向 指 数 の 先 行 CI が 4 月 をピークに低 下 して いることも気 がかりである。 

 

(2)特 殊 要 因 により成 長 加 速 が見 られた 7〜9 月 期 GDP 速 報  

こうしたなか、11 月 15 日 に発 表 された 7 〜9 月 期 の GDP 第 1 次 速 報 によれば、実 質 GDP 成 長 率 は前 期 比 0.9%、同 年 率 換 算 3.9%と、4 四 半 期 連 続 のプラス成 長 となったほか、一 旦 は回 復 テンポが鈍 った 4〜6 月 期 (同 0.4%)から加 速 がみられた。 

内 容 的 に は 、 こ れ ま で の 景 気 持 ち 直 し の 牽 引 役 で あ っ た 輸 出 の 減 速 感 が 強 ま る な か 、 ① エ コ カ ー 購 入 補 助 金 制 度 の 期 限 切 れ を前 にした駆 込 み需 要 、②たばこ 税 増 税 前 の 買 い 溜 め 、 ③ 猛 暑 に よ る 季 節 商 品 の 売 行 き 好 調 、 な ど に よ る 民 間 消 費 の 好 調 さ が 高 め の 経 済 成 長 率 達 成 の 立 役 者 と な っ た 。 そ の ほ か 、 出 遅 れ て い た 民 間 住 宅 が 住 宅 エ コ ポ イ ン ト 制 や 住 宅 ロ ー ン 金 利 の 優 遇 策 な ど で 前 期 比 プ ラ ス に 転 じ た ほ か 、 本 来 あ る べ き 水 準 を 下 振 れ た 状 態 が続 いている民 間 企 業 設 備 投

-20 -15 -10 -5 0 5 10 15

2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年

わが国の経済成長率と主要項目別寄与度(年率換算)

民間消費 民間設備投資 民間住宅・民間在庫投資 公的需要

海外需要 実質GDP成長率

(資料)内閣府経済社会総合研究所

(%前期比年率)

(12)

86 88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108

1990年 1991年 1992年 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年

GDPデフレーターと単位労働コスト

GDPデフレーター 国内需要デフレーター 民間需要デフレーター 総需要デフレーター 単位労働コスト

(2000年=100)

(資料)内閣府

一 方 、 一 国 の ホ ー ム メ ー ドインフレを表 す GDP デフ レ ー タ ー は 、 需 給 バ ラ ン ス が 依 然 と し て 大 き く 崩 れ て い る こ と を 反 映 し て 前 年 比

▲2.0%と 6 四 半 期 連 続 の 下 落 で 、 か つ 4 〜 6 月 期

( 同 ▲ 1 .8 % ) か ら 下 落 幅 が 拡 大 し た 。 民 間 住 宅 、 公 共 投 資 を 除 き 、 国 内 最 終 需 要 の 各 デ フ レ ー タ ー は 軒 並 み マ イ ナ ス が 続 い て い る 。 ま た 、 季 節 調 整 後 の前 期 比 も▲0.2%と 2 四 半 期 連 続 の 下 落 と な っ た 。

新 興 国 経 済 の 底 堅 さ や ド ル 安 な ど の 影 響 か ら 、 こ の と こ ろ 国 際 商 品 市 況 が じ り 高 気 味 に 推 移 し て お り 、 輸 入 物 価 も 上 昇 し て い る が 、 国 内 の 付 加 価 値 生 産 セ ク タ ー に お け る 価 格 転 嫁 は 不 十 分 な ま ま で あ り 、 交 易 条 件 の 悪 化 が 企 業 業 績 に 悪 影 響 を 及 ぼ し 続 け て い る 。 ま た 、 民 間 消 費 デフレーターは前 期 比 ▲1.8%と 8 四 半 期 連 続 での下 落 となるなど、消 費 関 連 の 需 給 バ ラ ン ス が 崩 れ た ま ま で あ る こ と を 示 し て お り 、 な か な か 上 昇 に 転 じ る 様 相 を 見 せ な い 。 注 目 の 単 位 労 働 コ ス ト は 前 年 比 ▲ 3 .3 % と 4 四 半 期 連 続 の マ イ ナ ス ( 下 落 率 も 拡 大 ) で あ る。 

今 回 の GDP 速 報 の評 価 としては、力 強 い経 済 成 長 率 を達 成 したとはいえ、あくまで一 時 的 な要 因 によるもので 、身 の丈 に合 ったもの ではない のは万 人 が認 める ところで あろ う。今 後 は そ の 反 動 減 が ど れ だ け 出 る か が 焦 点 で あ る 。 単 に 「 足 踏 み ≒ 踊 り 場 」 で 済 む の か 、 軽 度 と はいえ後 退 局 面 入 りするのか、微 妙 な状 況 となりつつあると思 われる。 

なお、今 回 の GDP 成 長 率 は潜 在 成 長 率 (年 率 1%程 度 と想 定 )を大 きく上 回 ったことも あ り 、 GDP ギ ャ ッ プ は 縮 小 し た とみ ら れ る 。 し か し 、 後 述 す る 通 り 、 10 年 度 下 期 に は 景 気 足 踏 み が 続 く こ と な ど を 前 提 と す る と 、 依 然 と し て 大 き な デ フ レ ギ ャ ッ プ が 残 る こ と か ら 、 政 府 や 日 本 銀 行 が目 標 とする 11 年 度 内 のデフレ脱 却 (≒消 費 者 物 価 前 年 比 のプラス転 換 )は極 めて困 難 と言 わざるを得 ない。 

 

(13)

2.予測の前提条件: 

 

(1)経 済 ・財 政 政 策  

① 菅 内 閣 の経 済 政 策 運 営  

2009 年 総 選 挙 による政 権 交 代 後 、わずか 8 ヶ月 で退 陣 した鳩 山 内 閣 の後 を受 けて、6 月 に 菅 内 閣 が 発 足 し た が 、 消 費 税 増 税 な ど 財 政 再 建 路 線 を 強 調 し て 戦 っ た 参 院 選 で は 連 立 与 党 が大 敗 、衆 参 のねじれ現 象 が約 1 年 ぶりに再 現 するなど、政 策 運 営 が困 難 な事 態 に陥 っている。その後 、実 施 された民 主 党 代 表 選 では、総 選 挙 で掲 げたマニフェストの完 全 実 施 を 主 張 し た 小 沢 前 幹 事 長 を 退 け た こ と で 、 就 任 当 初 に 掲 げ た 「 強 い 経 済 、 強 い 財 政 、 強 い 社 会 保 障 を 一 体 的 に 実 現 し て い く 」 こ と を ベ ー ス と し た 政 策 運 営 ス タ ン ス は 当 面 は 続 く も の と 思 わ れ る 。 な お 、 こ う し た 経 済 政 策 の 理 念 の 背 景 に は 、 マ ク ロ 経 済 全 体 の 需 要 不 足 状 態 を 解 消 す る た め に 、 増 税 す る こ と で 得 た 資 金 を 政 府 部 門 が う ま く 支 出 す る こ と で 、 経 済 全 体 が 活 性 化 し 、 結 果 的 に 財 政 再 建 が 進 む 、 と い う 発 想 が あ る と さ れ る が 、 そ の 切 り 札 と さ れ る 消 費 税 の 増 税 は 当 面 は 凍 結 さ れ た 可 能 性 が 高 い 。 そ の た め 、 菅 内 閣 は 、 基 本 的 に は 、公 務 員 人 件 費 や国 会 議 員 歳 費 などの削 減 努 力 や 、バ ラマ キと の批 判 も多 い 09 年 総 選 挙 に お け る マ ニ フ ェ ス ト の 修 正 が 求 め ら れ る が 、 そ れ 以 外 に も 名 目 成 長 率 を 引 き 上 げ る こ と で 税 の 自 然 増 収 を 図 る と い う 視 点 も 不 可 欠 で あ る 。 こ の 名 目 成 長 率 の 引 上 げ に 関 し て は 、 デ フ レ か ら の 早 期 脱 却 が 鍵 を 握 る も の と 思 わ れ る た め 、 今 後 と も 日 本 銀 行 に 対 す る 緩 和 要 請 は続 くだろう。 

一 方 、ギリシャを筆 頭 とするユー ロ圏 周 辺 国 (アイルランド、 ポルトガル、スペ インなど) を中 心 に財 政 バランス の大 幅 悪 化 への懸 念 が強 まっている。日 本 を含 め、各 国 とも民 間 最 終 需 要 の 自 律 的 回 復 が 本 格 化 し た 暁 には 、 速 や か に 出 口 戦 略 ( ≒ 財 政 再 建 路 線 ) に踏 み 切 る 必 要 が あ る が 、 世 界 経 済 は 全 般 的 に こ れ ま で 打 た れ た 経 済 政 策 効 果 の 浸 透 に よ っ て 景 気 持 ち直 しを続 けてきた面 もあり、現 時 点 で出 口 戦 略 に踏 み出 すのは時 期 尚 早 といえる。そう い う 面 で 、 共 通 通 貨 ユ ー ロ の 信 認 回 復 の た め に 、 財 政 再 建 路 線 を 採 用 し た ユ ー ロ 圏 諸 国 の今 後 の展 開 は気 がかりである。 

と は い え 、 長 期 金 利 の 無 用 な 跳 ね 上 が り を 抑 え る と い う 面 で は 、 中 期 的 な 財 政 健 全 化 に 向 けた道 筋 を示 すことも重 要 であろう。ちなみに 、経 済 成 長 と財 政 再 建 との両 立 に向 けては、

経 済 的 な 因 果 関 係 や 優 先 度 を 考 慮 す れ ば 、 ( 1 ) デ フ レ か ら の 完 全 脱 却 、 ( 2 ) 聖 域 な き 歳 出 抑 制 、 ( 3 ) 増 税 措 置 、 と い う 順 番 で や ら な け れ ば 、 財 政 健 全 化 そ の も の を 続 け る こ と は 困 難 と思 われる。 

② 円 高 ・デフレに対 する対 応  

一 方 、政 府 は円 高 進 行 や前 回 4〜6 月 期 の GDP 速 報 の発 表 後 、国 内 景 気 の減 速 感 が 強 ま っ た のを 受 け 、政 府 は 経 済 対 策 の検 討 に 入 った 。基 本 的 に 「 3 段 構 え」 の 対 応 を 念 頭 に 置 い て お り 、 経 済 ・ 雇 用 動 向 に 即 し た 措 置 に 万 全 を 期 す 方 針 を 示 し て い る 。 具 体 的 に は 、

(1)10 年 度 予 算 における予 備 費 の活 用 (約 0.9 兆 円 )、(2)09 年 度 予 算 の剰 余 金 や 10 年 度 の税 収 上 振 れ見 込 みなどを財 源 とした補 正 予 算 編 成 (予 算 規 模 は約 4.4 兆 円 )、③ 1 兆 円 程 度 の「元 気 な日 本 復 活 特 別 枠 」などを盛 り込 んだ 11 年 度 予 算 の迅 速 な成 立 ・実 施 、 となっている。 

そのほか、9 月 15 日 には円 高 が急 激 に進 行 したことに対 し、約 6 年 半 ぶりに為 替 介 入

( 約 2 .1 兆 円 の円 売 りドル買 い) を実 施 したが、 そ れに よる効 果 は一 時 的 なもの にとど まり 、

11 月 初 頭 にかけては 1 ドル=80 円 台 での展 開 が続 いた。野 田 財 務 相 は必 要 な際 には断

固 た る 措 置 を と る と 繰 り 返 し 述 べ て い る が 、 為 替 介 入 は そ の 後 実 施 さ れ て い な い 模 様 で あ

る。 

(14)

10  15  20  25  30  35  40  45 

日本

(東京都)

米国

(カリフォルニア州)

フランス ドイツ

(全国平均)

イギリス 中国 韓国

(ソウル)

法人所得課税の実効税率の国際比較(20101月時点)

地方税 国税

(資料)財務省 (注)各国の実効税率についてはhttp://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/084.htmを参照のこと。

(%)

40.69% 40.75%

28.00%

25.00 29.41%

33.33%

24.20%

国際標準と される25%

総 額 92 .3 兆 円 という過 去 最 高 の規 模 にまで膨 らんだ 2010 年 度 一 般 会 計 予 算 では 、公 共 事 業 関 係 費 が前 年 度 当 初 比 ▲ 18 .3 % と大 幅 に削 減 さ れた一 方 で 、社 会 保 障 関 係 費 は 同 9.8%と大 きく増 額 され、さらに子 ども手 当 (中 学 生 以 下 1 人 当 たり月 額 1.3 万 円 支 給 、 総 給 付 費 は約 2.3 兆 円 、うち国 負 担 は約 1.7 兆 円 )に代 表 される総 額 3.1 兆 円 の「マニフ ェスト予 算 」が盛 り込 まれた。しかし、税 収 見 込 みは 37.4 兆 円 にとどまり、特 別 会 計 の積 立 金 ・剰 余 金 などから 10.6 兆 円 の税 外 収 入 を繰 り入 れたが、残 りは国 債 発 行 により賄 わざる を得 ず、新 規 の国 債 発 行 額 は 44.3 兆 円 と当 初 予 算 としては過 去 最 高 にまで膨 らんだ。 

一 方 、現 在 審 議 中 で、12 月 中 旬 までには成 立 すると見 込 まれている 10 年 度 補 正 予 算 案 で は 、 地 域 活 性 化 ・ 社 会 資 本 整 備 ・ 中 小 企 業 対 策 等 や 子 育 て ・ 医 療 ・ 介 護 ・ 福 祉 等 の 強 化 などを中 心 に 5 兆 円 弱 の歳 出 拡 大 を盛 り込 んでいる。一 方 で、約 2.2 兆 円 の税 収 増 を見 込 んだほか、同 じく約 2.2 兆 円 の 09 年 度 剰 余 金 (地 方 交 付 税 交 付 金 の 0.6 兆 円 を 含 む) 、約 1 .4 兆 円 の既 定 経 費 減 額 などによって財 源 を確 保 した結 果 、国 債 の新 規 発 行 は回 避 できたものの、10 年 度 を通 じての予 算 規 模 は 96.7 兆 円 へと膨 張 することになった。 

なお、現 在 、11 年 度 予 算 案 の編 成 作 業 中 であるが、その編 成 方 針 はすでに決 定 され て い る。財 政 事 情 の厳 しい折 、2 年 ぶ り に概 算 要 求 基 準 ( 正 式 名 称 は概 算 要 求 組 み替 え基 準 )が復 活 したが、主 な内 容 としては(1)国 債 費 を除 く歳 出 の大 枠 を約 71 兆 円 以 下 、国 債 発 行 額 を約 44 兆 円 以 下 に抑 える、(2)各 省 の要 求 額 は 10 年 度 予 算 比 1 割 減 (マニフェス ト予 算 は対 象 外 )とし、その削 減 分 を財 源 に 1 兆 円 超 の「元 気 な日 本 復 活 特 別 枠 」を創 設 し 、 マ ニ フ ェ ス ト 政 策 の 実 現 、 デ フ レ 脱 却 ・ 経 済 成 長 、 雇 用 拡 大 、 人 材 育 成 、 国 民 生 活 の 安 定 ・安 全 に資 する事 業 に使 う、(3)社 会 保 障 関 連 費 の自 然 増 (約 1.3 兆 円 )は全 額 容 認 、 な ど と な っ て い る 。 予 算 編 成 に 際 し て は 、 財 源 の 裏 づ け を 必 要 と す る Pay-as-y ou-go

( PAYG) 原 則 を徹 底 するともに、租 税 特 別 措 置 などについても徹 底 的 に見 直 す構 えを見 せ ている。 

基 本 的 には子 ども手 当 の上 積 み(3 歳 未 満 の子 どもを持 つ世 帯 に限 り、現 行 の月 額 1 .3 万 円 から 2 万 円 へ増 額 ) など、家 計 部 門 に対 する所 得 再 分 配 を手 厚 くするという方 針 は踏 襲 さ れ る も の と 思 わ れ る が 、 一 方 で 国 際 競 争 力 や 成 長 促 進 な ど の 観 点 か ら も 、 産 業 界 か ら の 要 望 の 強 い 法 人 税 減 税 も 検 討 さ れ て い る 。 日 本 ( 東 京 都 ) に お け る 法 人 税 の 実 効 税 率 は 40 .69 % ( 財 務 省 試 算 ) で あ り 、 25 % 前 後 と さ れ る 国 際 標 準 と 比 べ る と 明 ら か に 高 い 。 昨 今 の 円 高 圧 力 の 高 ま り な ど を 考 慮 す る と 、 人 件 費 な ど 諸 コ ス ト も 低 い 近 隣 ア ジ ア 諸 国 へ 国 内 企 業 が 必 要 以 上

に流 出 し 、将 来 的 に 国 内 の 雇 用 機 会 や 税 収 な ど が 喪 失 す る リ ス ク が 懸 念 さ れ て い る 。 そ の た め 、 政 府 で は 法 人 税 率 の 5%引 下 げを検 討 し て い る が 、 PAYG 原 則 の 縛 り も あ り 、 5 % の 税 率 引 下 げ

( 財 務 省 試 算 で は 最 大 2 .1 兆 円 の減 収 効 果 ) に つ い て 、 ナ フ サ 減 税 の 縮 小 、

研 究 開 発 減 税 の廃 止 、繰 越 欠 損 金 制 度 の見 直 しによる課 税 ベースの拡 大 などと組 み合 わ

せ、かつ代 替 財 源 が確 保 できない 2%分 は 3 年 程 度 の暫 定 措 置 とする案 も浮 上 している。

(15)

動 きも出 るなど、予 断 を許 さない状 況 にある。 

基 本 的 に は 、 今 後 と も 「 事 業 仕 分 け 」 な ど を 通 じ て 、 行 政 の ム ダ を 削 る 努 力 は 続 け ら れ る と 思 わ れるが 、 デフレ継 続 の下 、税 収 が抜 本 的 に改 善 する見 通 しは描 けず 、当 面 は国 債 の 大 量 発 行 に依 存 する財 政 運 営 はしばらく続 くことになるだろう。また、12 年 度 予 算 編 成 につ い て も 、 基 本 的 に は 「 中 期 財 政 フレ ー ム 」 や 「 財 政 運 営 戦 略 」 に 基 づ い た 予 算 編 成 が さ れ る ものと想 定 した。 

 

(2)世 界 経 済 の見 通 し 

国 際 協 調 の 枠 組 み の な か で 各 国 の 財 政 出 動 と 低 金 利 に よ る 景 気 刺 激 策 が 講 じ ら れ た 結 果 、09 年 半 ばまでに は世 界 経 済 は底 入 れし 、 その 後 は主 に中 国 や イン ドといったア ジア 新 興 国 が 主 導 す る 格 好 で 持 ち 直 し 基 調 を た ど っ て き た 。 こ う し た な か 、 ギ リ シ ャ の 財 政 問 題 に 端 を発 した欧 州 債 務 危 機 が、 世 界 的 に金 融 資 本 市 場 に大 き な混 乱 を与 えた ほか 、 米 国 に関 する景 気 減 速 やデフレ突 入 に対 する懸 念 、景 気 過 熱 抑 制 策 を本 格 化 させている中 国 経 済 の 成 長 鈍 化 な ど 、 世 界 経 済 の 先 行 き 不 透 明 感 も 高 ま っ て い る 。 以 下 で は 、 米 国 、 欧 州 、中 国 の景 気 の現 状 分 析 と見 通 し、国 際 商 品 市 況 の予 測 を行 う。 

① 米 国 経 済  

7〜9 月 期 の米 国 の実 質 経 済 成 長 率 は、前 期 比 年 率 2.0%で、5 四 半 期 連 続 のプラスと な っ た 。 個 人 消 費 、 設 備 投 資 、 輸 出 な ど が 増 加 し た 一 方 、 輸 入 の 増 加 や 住 宅 減 税 の 打 ち 切 り後 の住 宅 投 資 の減 少 により、成 長 率 が抑 えられた格 好 となった。 

以 下 、 主 要 需 要 項 目 に つ い て 見 て い き た い 。 個 人 消 費 は 、 4 月 以 降 、 省 エ ネ 白 物 家 電 の購 入 者 に対 するリベート制 度 や住 宅 減 税 の打 ち切 りがあったものの、4〜6 月 期 に続 き、2 四 半 期 連 続 で年 率 2%を上 回 る増 加 (5 四 半 期 連 続 のプラス)となった。家 計 のバランスシ

2009年 2010年 2011年 2012年

通期 通期 上半期 下半期 通期 上半期 下半期 通期

(1〜6月) (7〜12月) (1〜6月) (7〜12月)

実績 予想 実績 予想 予想 予想 予想 予想

実質GDP % ▲ 2.6 2.6 3.5 1.5 1.9 1.5 2.9 2.3

個人消費 % ▲ 1.2 1.6 1.7 2.3 2.5 2.4 2.8 3.2

設備投資 % ▲ 17.1 5.9 7.7 11.6 8.8 8.5 6.9 6.3

住宅投資 % ▲ 22.9 ▲ 3.4 ▲ 1.0 ▲ 10.7 ▲ 2.1 0.5 2.0 2.2

在庫投資

寄与度

▲ 0.6 1.5 2.2 0.6 ▲ 0.0 ▲ 0.6 0.6 0.0

純輸出

寄与度

1.1 ▲ 0.7 ▲ 0.5 ▲ 1.8 ▲ 0.6 ▲ 0.2 ▲ 0.4 ▲ 0.7

輸出等 % ▲ 9.5 11.4 13.8 6.5 6.2 5.5 7.2 7.7

輸入等 % ▲ 13.8 14.1 14.9 17.8 8.9 5.3 8.0 9.8

政府支出 % 1.6 1.1 ▲ 0.2 2.6 0.5 0.0 ▲ 0.5 ▲ 0.4

コアPCEデフレーター % 1.5 1.5 1.6 1.3 1.6 1.5 1.7 1.7

GDPデフレーター % 0.9 0.8 0.6 1.0 0.9 0.9 1.0 1.1

FFレート誘導水準 %

0〜0.25 0〜0.25 0〜0.25 0〜0.25

0〜0.25 0〜0.25 0〜0.25 0.25〜0.50

10年国債利回り % 3.24 3.16 3.59 2.73 2.90 2.90 2.90 2.95

完全失業率 % 9.3 9.6 9.7 9.5 9.1 9.3 8.9 8.5

実績値は米国商務省”National Income and Product Accounts”、予測値は当総研による。

(注) 1. 予測策定時点は2010年11月12日

2.通期は前年比増減率、半期は前半期比年率増減率(半期の増減率を年率換算したもの)

3.在庫投資と純輸出は年率換算寄与度、デフレーターは前年同期比 4.コアPCEデフレーターは期中平均前年比

5.FFレート誘導目標は期末値

2010〜12年 米国経済見通し  (10年11月改訂)

単位

(16)

持 ち直 しなどが個 人 消 費 の下 支 えをしている。 

民 間 企 業 設 備 投 資 は 、機 器 ・ ソフ ト ウェ アへの 投 資 拡 大 か ら 、 3 四 半 期 連 続 で大 きな 伸 びとなった。しかし、09 年 から先 送 りされていた部 分 が動 き出 したにすぎず、水 準 そのものは 直 近 ピーク(0 8 年 1 〜3 月 期 ) の約 9 割 にとどまっている。 

また、4〜6 月 期 まで 4 四 半 期 連 続 で前 期 比 年 率 10%前 後 での増 加 となっていた輸 出 は 、 世 界 経 済 の 成 長 鈍 化 も あ り 、 同 5 .0 % と や や 減 速 が 見 ら れ た 。 一 方 、 輸 入 は 景 気 持 ち 直 しを受 けて増 加 が続 いており、外 需 寄 与 度 は 3 四 半 期 連 続 でマイナスとなっている。 

一 方 、雇 用 の改 善 は、10 年 春 の政 府 部 門 による大 幅 増 の後 は、極 めて緩 やかな増 加 ペ ースにとどまっている。失 業 率 も 6 月 以 降 は 9.6%で高 止 まっており、なかなか改 善 が進 まな い。雇 用 拡 大 に対 する企 業 の慎 重 な姿 勢 は続 いているとみられる。 

米 国 の金 融 政 策 については、8 月 の連 邦 公 開 市 場 委 員 会 (FOMC)では、満 期 を迎 える 政 府 機 関 債 と そ の モ ー ゲ ー ジ 担 保 証 券 ( MBS ) の 元 本 を 長 期 国 債 に 再 投 資 す る 方 針 が 決 定 された。11 月 の FOMC では、失 業 率 の高 止 まりとインフレ率 の下 振 れを理 由 に、11 年 半 ばまでに残 存 期 間 が長 めの国 債 を 6,000 億 ドル(毎 月 750 億 ドル程 度 )買 い入 れる追 加 金 融 緩 和 に 踏 み 切 っ た 。 こ の ほ か 、 FRB は 期 待 イ ン フ レ 率 を 高 め る た め の 戦 略 導 入 も 検 討 し て い る よ う で あ る 。 一 方 、 政 策 金 利 に つ い て は 、 フ ェ デ ラ ル ・ フ ァ ン ド ・ レ ー ト ( FF レ ー ト ) の 誘 導 目 標 は 08 年 1 2 月 16 日 に 0 〜0.25 %へ引 き下 げられて以 降 、約 2 年 にわたって据 え置 かれている。11 月 2〜3 日 に開 催 された FOMC でも、低 水 準 な資 源 利 用 、低 調 なインフ レ 傾 向 や期 待 インフレ率 の落 ち着 きを理 由 に据 え置 きが決 定 された。 

以 下 、 今 後 の 見 通 し に つ い て 述 べ て い く が 、 以 下 の 点 を 考 慮 し た 。 ま ず 、 11 月 に 決 定 さ れた追 加 的 な金 融 緩 和 を受 けて、設 備 投 資 の底 堅 さは 12 年 まで続 くと見 込 んだ。さらに、

今 後 予 想 さ れ る 期 待 イ ン フ レ 率 の 引 上 げ 戦 略 の 銀 論 の 進 行 と と も に 、 ド ル 安 基 調 も 継 続 す る も の と 考 え た 。 こ れ に よ り 、 11 年 前 半 に か け て 世 界 経 済 の 回 復 の 勢 い が や や 鈍 化 す る な か で も 、 輸 出 の 増 加 基 調 は 継 続 す る と 予 想 し た 。 な お 、 個 人 消 費 の 回 復 と と も に 、 輸 入 の 増 加 も 続 く た め 、 外 需 寄 与 度 は マ イ ナ ス が 続 く と 見 込 ま れ る 。 次 に 個 人 消 費 は 上 向 き つ つ あるが、消 費 者 の慎 重 な態 度 や雇 用 環 境 などを考 慮 すると、11 年 下 期 までは現 状 の前 期 比 年 率 2%台 半 ばの成 長 が続 くと予 想 した。ただし、12 年 にかけては、雇 用 の拡 大 とともに 、 同 3〜4%台 へと勢 いが増 していくと予 想 する。 

以 上 、現 状 の米 国 経 済 の足 取 りと追 加 金 融 緩 和 を踏 まえ 、11 年 の経 済 成 長 率 は前 年 比 1.9%、12 年 は同 2.3%と予 想 する。11 年 については、個 人 消 費 の本 格 的 回 復 時 期 の 後 ずれや輸 入 増 から、前 回 見 通 しから▲0.7%pt の下 方 修 正 となった。しかし、12 年 には米 国 経 済 に 力 強 さ が 戻 り 始 め る こ と か ら 、 同 2 .3 % と 予 測 す る 。 こ の 景 気 回 復 を 受 け て 、 米 FRB は 11 年 後 半 にも政 策 金 利 の引 上 げを行 うと見 込 んだ。なお、現 時 点 では政 府 による 大 規 模 な景 気 刺 激 策 は想 定 していない。 

② 欧 州 経 済  

ユーロ圏 (16 ヵ国 )の 10 年 7〜9 月 期 の実 質 GDP 成 長 率 (速 報 値 )は前 期 比 0.4%(同 年 率 換 算 1.6%)であったが、4〜6 月 期 の同 1.0%(同 4.1%)に対 し、成 長 率 の減 速 が明 らかとなっている。 

主 要 国 の内 訳 では、ドイツが前 期 比 0.7%(4〜6 月 期 :同 2.3%)、フランスが同 0.4%

(同 0 .7%)である一 方 、ギリシャが同 ▲1 .1 %(同 ▲1 .7 %)、ス ペインが同 0 .0%(同 0 .2%)

等 となった。また、ユーロ圏 以 外 では、英 国 が同 0.8%(同 1.2%)となった。 

こ の よ う に 、 い わ ゆ る コ ア 国 と 財 政 健 全 化 へ の 厳 し い 取 り 組 み が 続 く 周 辺 国 の 間 で 、 引 き

(17)

ユーロ圏 の直 近 のマクロ経 済 情 勢 について見 ると、生 産 面 では 9 月 の鉱 工 業 生 産 指 数 は前 月 比 ▲0.9%で、6 月 以 来 のマイナスとなった。一 方 、雇 用 情 勢 については、失 業 率 は 依 然 高 止 まりが継 続 しており、9 月 の値 は 10.1%と、1998 年 7 月 以 来 の高 水 準 となった。

消 費 面 でも、同 月 の小 売 売 上 高 は前 月 比 ▲0.2%と 2 ヵ月 連 続 の減 少 となり、力 強 さに欠 ける展 開 となっている。なお、9 月 の消 費 者 物 価 指 数 は前 年 同 月 比 1.8%と、08 年 11 月 以 来 の約 2 年 ぶりの高 水 準 となった。 

10 年 前 半 にはユーロ安 を背 景 に輸 出 の伸 びが顕 著 となり、ユーロ圏 経 済 成 長 の牽 引 役 として期 待 されるドイツについては、輸 出 額 は 7 月 、8 月 と 2 ヶ月 連 続 で前 月 比 マイナスを記 録 した後 、9 月 には同 3 .0 %の伸 びとなった一 方 で、9 月 の製 造 業 受 注 は同 ▲4 .0 %、鉱 工 業 生 産 指 数 は同 ▲0 .8 %となるなど、一 本 調 子 の成 長 が見 込 まれる状 況 とはなっていない。

この背 景 には、ユーロ(対 ドルレート)が 10 年 6 月 に底 を打 って以 降 、約 15 %上 昇 している こと(付 表 1 参 照 )のほか、域 内 の緊 縮 財 政 の影 響 等 があるものと考 えられる。 

一 方 、外 需 に 基 づく成 長 から の波 及 が期 待 され る内 需 の動 向 で あるが 、10 月 の失 業 率 は 7.5%と低 水 準 となってはいるものの、9 月 の小 売 売 上 高 は前 月 比 ▲2.3%と 2 ヶ月 連 続 の 減 少 と な る な ど 、 堅 調 と さ れ る ド イ ツ に お い て も 現 在 の と こ ろ 目 立 っ た 改 善 に は 至 っ て い な い。 

こ う し た 環 境 下 、 引 続 き 跛 行 性 が 大 き い ユ ー ロ 圏 経 済 情 勢 や 、 今 後 の 世 界 的 な 景 気 減 速 の可 能 性 等 を考 慮 すれば、10 年 、1 1 年 とも前 年 比 1 .5%程 度 の落 ち着 いた経 済 成 長 が 予 測 できる。 

一 方 、 欧 州 の 財 政 問 題 は 依 然 不 透 明 感 を 有 し て お り 、 金 融 市 場 の 波 乱 を 通 じ 経 済 成 長 に大 きな影 響 を与 え得 るリスク要 因 として認 識 する必 要 がある。直 近 では、10 月 の EU サ ミットで財 政 悪 化 国 に対 する恒 久 的 な支 援 制 度 の構 築 が合 意 され、次 回 12 月 EU サミット で具 体 的 な内 容 の協 議 を行 うこととされたが、13 年 までの存 続 期 間 3 ヶ年 の現 行 制 度 が被 支 援 国 の債 務 リストラはないことを前 提 としているのに対 し、これを引 き継 ぐ新 制 度 では債 務 リストラを伴 うことが想 定 されている。10 月 サミット後 、既 に市 場 では財 政 悪 化 国 の国 債 利 回 りが上 昇 するなどの反 応 が現 れており(付 表 1 参 照 )、今 後 の交 渉 の推 移 に注 意 が必 要 で ある。 

なお、欧 州 中 央 銀 行 (ECB)のトリシェ総 裁 は 11 月 の理 事 会 において、危 機 対 応 時 の金 融 政 策 からの正 常 化 については次 回 12 月 の理 事 会 で議 論 するとし、引 続 き緩 和 を継 続 す る米 FRB 等 とは一 線 を画 した動 きを示 しているが、上 記 の市 場 動 向 からすれば正 常 化 に向 けた環 境 は引 き続 き厳 しいものと考 えられる。  

③ 中 国 経 済  

景 気 過 熱 によ る イン フレ懸 念 や大 都 市 圏 での不 動 産 バ ブル に対 し 、中 国 政 府 は成 長 率 を適 正 水 準 にまで減 速 させるべく、抑 制 的 な政 策 をとっている。10 年 4 月 に中 国 政 府 は一 部 の 大 都 市 に お け る 不 動 産 投 資 ・ 投 機 抑 制 政 策 に 本 腰 を 入 れ 始 め た こ と や 、 エ ネ ル ギ ー 多 消 費 型 工 業 ( 鉄 鋼 、 非 鉄 金 属 や セ メ ン ト な ど ) の 生 産 抑 制 を 実 施 し て き た 。 そ の 結 果 、 7

〜9 月 期 の実 質 経 済 成 長 率 は前 年 比 9.6%へ減 速 した。とはいえ、依 然 として底 堅 い経 済 成 長 が続 いていると評 価 できるだろう。 

10 月 の主 な月 次 統 計 を振 り返 ってみると、鉱 工 業 生 産 は前 年 比 13.1%(8 月 :13.9%、

9 月 :13 .3%) 、小 売 売 上 高 は同 1 8.6%(8 月 :18 .4%、9 月 :18.8 %) 、都 市 部 の固 定 資 産

投 資 が同 24 .4 %( 8 月 :24 .8%、9 月 : 24 .5 %)と、不 動 産 市 場 に対 する規 制 の強 化 、また

政 府 の省 エネ目 標 達 成 に向 け、旧 式 生 産 設 備 を 9 月 末 までは閉 鎖 しなければならない旨

を 通 達 す る な ど に よ り 、 エ ネ ル ギ ー 多 消 費 の 重 化 学 工 業 の 生 産 抑 制 や 重 複 投 資 防 止 な ど

参照

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