cBN工具の加工条件データーベースの作成
谷川 義博
*1竹下 朋春
*1池田 健一
*1安部 年史
*1The Preparation of Machining Condition Data Base of the cBN Tool.
Yoshihiro Tanigawa, Tomoharu Takeshita, Keniti Ikeda and Toshifumi Abe
高硬度材料加工用工具として開発された cBN 工具は,その特性から断続切削には不向きであり,旋削用工具とし て利用されていたが,近年ソリッドタイプのエンドミルが開発され,高硬度材料加工用工具として,注目されてい る。しかし,県内企業では,価格が高い,加工条件に不明な点が多い,メーカーが提供する条件も制限が多い,等 の理由から利用できないでいる。本研究では,R1.0mm の cBN 工具を使い,金型材である NAK80 を対象に加工実験を 行い,cBN 工具の性能に関し調査した。その結果を cBN 工具の加工条件データーベースの構成について検討した。
1 はじめに
金型には耐久性等を考慮して,多くの高硬度材が使 用されている。このような高硬度材は加工が困難であ るため,放電加工による形状加工が一般的であったが,
加工時間の短縮や金型精度の向上を目的に,高硬度材 に対するマシニングセンターによる直彫り加工が行わ れるようになってきた。このような状況の中,高硬度 材料加工用工具として開発された cBN 工具は,その特 性から旋削用工具として利用されていたが,近年ソリ ッドタイプのエンドミルが開発され,高硬度材料のミ リング加工用工具として,注目されている。
しかし,県内企業では,価格が高い,加工条件に不 明な点が多い,メーカーが提供する加工条件も制限が 多く 実加 工 に 適用 する に は 問題 があ る 等 の理 由か ら cBN 工具の利用を控える傾向にある。
このため本研究では,県内企業が高硬度材料加工用 工具として注目されているcBN工具を有効に活用でき るように,cBN工具の加工条件データーベースの作成を 行った。
2 切削実験
cBN工具の加工条件データーベースを作成するには,
まずcBN工具の性能を把握する必要があるため,切削実 験を実施することとした。
現在cBN工具は,エンドミルの製造販売を行ってい るメーカー7社程から販売されているが,各メーカーに よりその形状やサイズが異なる。今回実験で使用する R1.0mmの小径ボールエンドミルを販売しているメーカ
ーの中から1社を選び加工実験に使用することとした。
2-1 ピックフィードと加工面粗度の関係
ボールエンドミルを使った平面加工を行う際,その 加工面粗度はピックフィードの影響を受けることは知 られている。工具回転数及び送り速度が一定である場 合,ピックフィード(P)と加工面粗度(Rz)の関係は,
図1-1のようになり,工具半径をRとすると,簡易的に 式(1)のようになる。
R ΔZ
Rz
P
図 1-1 ピックフィードと加工面粗度の関係
P
2Rz= (1)
8R
式(1)からも分かるように,工具半径が一定であると すると,加工面粗度Rzは,ピックフィードPにより決ま ることになり,ピックフィードを小さくすれば,加工 面粗度Rzは0に近づくことになる。しかし,実際の加工 では,切刃先端の丸み等から正確な切り込みが行えず,
Rzを0にすることはできない。
このことから,ピックフィードを徐々に小さくしな がら切削実験を行い,理論加工面粗度と実加工面粗度 の関係を調べることで,加工精度や高能率に関連する 工具評価の為の一つの目安になるのではないかと考え 実験を行った。
*1 機械電子研究所
加工実験で使用する工作機械は,安田工業(株)社 製YMC325を用いた。工具はR1.0の2枚刃ボールエンドミ ルを使用し,表1に示す条件で平面の切削加工を行った。
加工面の評価には,三鷹光機(株)社製のNH-3SPを使 用した。
0 5 10 15 20 25 30 35
0 20 40 60 80 100 120 140
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 0.5
加工面粗度Rz(μm) 加工時間(min)
ピックフィード(mm)
理論面粗度 実測値
加工時間
表1 切削加工実験条件
工具半径(mm)
1.0
工具回転数(min
-1)30000
切削速度(m/min)188
送り速度(mm/min)3000
一刃当りの送り(mm/
刃)0.05 Z
軸方向切込み量(mm
)0.02
ピックフィード(mm)
0.05 0.15 0.25 0.4
クーラント オイルミスト被削材
NAK80
加工総面積(mm2)
24000
理論加工面粗度(μm)
0.31 2.81 7.81 18.2
図 2-1 ピックフィードと加工面粗度の関係
加工時間 実加工
面 粗 度
P=0.05 S=411.566 P=0.15
S=247.793 P=0.25
S=223.26 P=0.4 S=346.503
図 2-2 ピックフィードと実加工面粗度×加工時間 2-2 実験結果
図2-1にピックフィード,理論加工面粗度及び実加工 面粗度の関係を示す。
ピックフィードが0.05mmでは理論加工面粗度0.31μ mに対し,実加工面粗度ではRz=3.27μmと,その差が10 倍程度とかなり大きくなる。これに比べて,ピックフ ィード0.25mmでは,理論加工面粗度7.81μmに対し,実 加工面粗度はRz=7.41μmと近い値となることが確認で きた。また,ピックフィードを0.4mmと大きくすれば,
理論加工面粗度と実加工面粗度の関係は逆転し,理論 加工面粗度の方が若干大きくなる。これは,加工面粗 度が大きくなるとカプスハイトの先端まできれいに形 成できなくなるためだと思われる。
この実験からも分かるようにピックフィードを小さ くすると加工面粗度は小さくなる。しかし,ピックフ ィードを小さくすれば加工面粗度は小さくなるが加工 時間は長くなってしまう。そこで,ピックフィードを 変化させた時の加工能率に関しては,加工面粗度と加 工時間を掛けて得られる面積で判断することとした。
図2-2にピックフィードを変化させた時の縦軸を実加 工面粗度,横軸を加工時間とて得られる面積を示す。
加工時間が短く且つ加工面粗度が小さい方が加工能 率が良いと判断すると,図2-2の面積が最も小さくなる ピックフィード0.25mmが最も加工能率が良い加工であ ると言える。
3 cBN工具の加工条件データーベースの構成
今回実施したような加工実験を行い,その結果をデ ーターベースとして蓄積するため,その構成について 検討した。データーベースの作成には市販のデータベ ースソフトを使用した。蓄積するデータは,使用工具 や加工条件等の実験条件及び実験の結果得られる加工 面粗度等の情報である。作成したデーターベース入力 フォーム等を図3-1に示す。
このように,今回作成したデーターベースは工具デ ータや加工条件データ等のように数値データのみでな く,工具摩耗写真や加工面の状態等も確認できるよう に画像データやグラフの入力も行える。
4 おわりに
今回作成したデーターベースは市販のソフトを使用 しており,データ入力も容易に行えるため,各企業独 自のデーターベースの作成が可能である。データ検索 に関しても,検索フォームの作成も容易で必要な項目 での検索が行える。このデーターベース作成にはリレ ーショナルデーターベースソフトを使用しているため,
複数のデーターシートからの検索が可能である。この
機能を活用すれば,自社で蓄積したデータ及び機械電 子研究所で蓄積したデータの内から,最適な加工条件 等の検索が可能となる。今回は,cBN工具を対象とした 加工条件データーベースの作成に取り組んだが,この データーベースは他の工具や加工方法にも利用可能で ある。また,データーベースとしての機能を発揮する には多くのデータが必要であるため,加工実験を継続 的に実施し,データの充実を図りたいと考えている。
図 3-1 加工データーベース入力フォーム