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子どもの生活リズム改善の取り組み

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Academic year: 2021

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(1)

 報    告

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子どもの生活リズム改善の取り組み

~生活リズム調査がもたらす養育者の行動変容に関する考察~

中村加奈重1),肥田有紀子1),沢口 茂代1)

関口 久恵1),山下 益美1),北川ゆかり1)

神山  潤2)

〔論文要旨〕

 適切な生活習慣(早起き早寝,朝型)がヒトの健全な生活には不可欠な要素であることを最新の脳科 学の進歩が教えているが,子どもたちの生活習慣に大きな影響を与える養育者自身の行動変容がなかな か進まない実態がある。われわれは子どもの生活リズム改善の取り組みとして,生活リズム調査を実施 その結果を養育者と共有することにより,養育者に行動変容がもたらされ,その変容が継続しているこ とを知った。今後各地で同様の取り組みの応用と発展が進み,子どもたちの生育環境が適切になること を期待したい。

Key words二生活習慣,早起き早寝,行動変容,情報共有

Lはじめに

 育児環境や社会環境の変化から,子どもの生 活リズムの乱れが,各方面で問題視されてい る。適切な生活習慣(早起き早寝,朝型)がヒ トの健全な生活には不可欠な要素であること が,最近の基礎研究からも次第に明らかにされ つつある1)。しかし適切な生活習慣の啓発はと もすれば倫理的道徳的になりがちである。また 適切な生活習慣の背景にある脳科学的な根拠の 解説は,養育者には必ずしもなじみやすいとは 言いがたい。これらの要因が重なり,適切な生 活習慣の重要性をある程度は認識してはいるも のの,子どもたちの生活習慣に大きな影響を与 える養育者自身の行動2)がなかなか変容しない 実態がある。

 著者らの施設では,養育者とともに調査や学 習会を重ね,その結果を母子保健事業や地区活 動などに活かし,広げてきた。生活リズム確立 の重要性については,生まれる前から,プレマ マプレパパ健診などのあらゆる機会を捉えて伝 えるとともに,来所した際に目に触れるよう,

施設の廊下や子育て広場に生活リズムに関する 情報を掲示している。子育て中の養育者だけで なく来所した方にも情報提供をしている。

 また養育者それぞれが生活リズムについて振 り返り,考える機会「子育てネットワーク連絡 会」も著者らの施設では作ってきた。この連絡 会は子育て支援に関わる関係者や子育て中の保 護者が地域の子育てについて問題を共有したり 情報交換や交流・学習したりする場で,平成13 年から「地域の子どもの生活リズムを考える」

Promotion to lmprove the Lifestyle of Children

A一@Behavioral Change of Caregivers Affected by Actigraphic and Sleep Log Recordings ’一一 Kanae NAKAMuRA, Yukiko HiDA, Shigeyo SAwAGucHi, Hisae SEKiGucHi, Masumi YAMAsHiTA,

Yukari KiTAGAwA, Jun KoHyAMA

I)足立区中央本町保健総合センター(保健師)2)東京北社会保険病院(医師/院長)

別刷請求先:神山 潤’東京北社会保険病院 〒115-0053東京都北区赤羽台4-17-56      Tel:03-5963-3311 Fax:03-5963-6678

   (2006)

受付08 1.21 採用09 1.15

(2)

をテーマに取り組んできた。これまでは「早起 き早寝にして良かったこと」や,調査結果から 見えたテレビやビデオ視聴時間の問題について 取り組んだ「1週間ノーテレビにチャレンジし て」などの報告を養育者に依頼した。参加者か

ら,「自分も早起き早寝すみようになったら,

体が楽になった」,「今日は自転車をやめ,保健 センター(筆者らの施設)まで子どもと歩いて 来ましたJなど後日談をたくさんいただいてい る。子育てネットワーク連絡会は,取り組みに 参加した養育者から情報発信する場,生活リズ ムについて情報共有したり考えたりする場に なっていると認識している。

 この子育てネットワーク連絡会での経験を踏 まえ,今回の生活リズム調査では,養育者との 情報共有を念頭に方策を立てた。具体的には近 年生活リズムに異常を認める現代人の病態把握

に盛んに応用されているアクチウォッチ3)を利 用した。アクチウォッチは,腕時計とほぼ同等 の大きさで,加速度計と記憶装置を内蔵,装着 者の活動量を一定期間記録できる装置で,結果 は解析ソフトによって図示される。つまり生活 リズムに関する主観的な養育者の観察記録と.

客観的なアクチウォッチ記録とを返却時に即座 に比較,調査結果を養育者と著者らが議論,共 有することを試みた。

 本稿においては,著者らによるこういつた取 り組みを紹介するとともに,生活リズム調査の 結果と,調査やグループワーク等を行った後1年 後の追跡調査の結果を明らかにすることとする。

ll.方

 生活リズム調査への参加希望者は健診の場や 広報等で募った。原則として参加希望者はすべ て受け入れた。その結果,平成16年,17年,18年 の7~11月に,1歳~3歳児(表1)の親子計188 組に生活リズム調査を実施できた。調査は10組 程度のグループ単位で行った。なお調査参加者に は研究の主旨を説明し,文書によって同意を得た。

 調査は以下の①から⑤の手順で実施した。① 1グループごと保健センターに集まっていただ き,生活リズム調査票(図1)の記載方法とア クチウォッチ(図2)の着用上の注意をお伝え した後,1週間にわたる子どもの生活リズム調

表1 生活リズムデータのまとめ Nニ188 平均値(標準偏差) 範囲

月齢 23.9(7。2) 12~45

起床時刻 7’122(56分) 5:30~10:30 朝食時刻 7157(50分) 6:00~10:30 昼食時刻 12:30(51分) 11:00~16:00 昼寝時間 1時間51分(54分) 0時間~4時間

外遊び 1時間20分(70分) 0時間~5時間30分 メディア接触 2時間31分(135分) 0時間~12時間30分 夕食時刻 18:42(45分) 17:00~21:00 就床時刻 21:24(57分) 19:00~0:00 総睡眠時間 11時間47分(66分) 8時間00分~14時間30分

査とアクチウォッチによる子どもの活動量測定 とを依頼した。②1週間後再び保健センター に集まっていただき,アクチウォッチを回収,

データをコンピューターにダウンロード,直 ちに子どもの活動量測定結果をプリントアウト

し返却した。結果返却に当たっては,個別に保 健師と養育者が,結果について感想を述べ合っ た。③その場に集まった養育者でグループワー クを実施各自が取り組んでみたことや調査に 取り組んで気づいたこと,感じたことなどを情 報交換した。④平年の調査終了後にその年の結 果を保健師がまとめて報告する学習会を開催し たが,その際生活リズムに関する講演会(講師;

神山 潤(共著者))4)も併せて開催した。⑤平 成18年に生活リズム調査に参加した養育者70名 に対し,調査10~12か月後の平成19年9月にア ンケートを郵送,生活リズム調査後の子どもの 生活リズムの状況,生活の中で意識しているこ と,生活リズムと子育ての負担感等(表2)に ついて尋ねた。

 なお本稿の主眼ではないが,生活リズム調査 票のデータについては,1週間の平均の起床時 刻,朝食時刻,昼食時刻,昼寝時間,外遊びの 時間,メディア(テレビ,ビデオ,DVD,ゲー ム)との接触時間,夕食時刻,就床時刻,さら に夜間睡眠時間と昼寝時間とを足した総睡眠時 間とを算出した。また平均の就床時刻が21:00 以前を早寝群,22:00以降を遅寝群と暫定的に 区別し,上述の子どもの生活リズムに関する指 標についてt検定で比較した。

(3)

生活調査票 1       氏名(

’寝ていた時間に実線(→)を引いて下さい。日中の活動は点線Oを引いてください。 【例1食事・入浴・遊び・散歩・外出・その他

主摩霧囎藩講畿!灘四駅額茎鵜1諸鶏禦穣慰1に分けて記入してください・

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備考

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外遊び(D分)

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外遊び(60分)

巨Q(60分)

外遊び(0分)

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外遊び解。分)

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外遊び( 分)

巨Q( 分)

       図1 実際の生活リズム調査票

眠っている時間帯には線を引いていただき,さまざまな活動内容については具体的に記載していただいた。

表2 追跡調査のアンケート内容

 繊

  

・「現在の子どもの生活リズムをどう思うか」

・「調査前と比べて生活リズムを意識するようになったか」

・「意識していることは,何か」

・「生活リズムが整うと子育てが楽になると思いますか」

「楽になった具体的なことは何か」

・「継続して意識を持ち続けるのに必要なことは何だと思

うか」

・「お気づきの点を自由にお書きください」

表3 早寝群と遅寝群との比較’

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 」縮

  

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       図2 アクチウォッチ

 万歩計のようなもので,子どもの活動量を定量化 することができる。お風呂など水につかる以外は調 査期間中,足首につけたままにしておいていただいた。

  早寝群

Q1時以前就床(83)

  山斗群

Q2時以降就床(68) P値 起床時刻 7:01(50分) 7:41(55分) 〈0.001 朝食時刻 7:42(43分) 8:13(50分) 〈0.001 昼食時刻 12:23(37分) 12:23(51分) 0,468 昼寝時間 1時…間45分(52分) ユ時間58分(56分) 0,145 外遊び 1時間23分(69分) 1時間14分(66分) 0,418 メディア接触 2時間29分(124分) 2時間45分(140分) 0,465 夕食時刻 18:28(43分) 18=56(46分) <0.001 就床時刻 20:33(29分) 22:24(34分) <0.001 総睡眠時間 12時間11分(62分) 11時間13分(62分) <0.001

平均値(標準偏差)

(4)

III.結

1.生活リズム調査票のデータ分析結果

 生活リズム調査に協力の得られた188名(男 児95名,女児93名)の生活リズムに関する指標 の平均と標準偏差を表1に示す。早寝群(83名

(男児43名,女児40名)),遅寝群(68名(男児 34名,女児34名))両二面の子どもの生活リズ ムに関する比較を表3に示す。早寝群が遅寝群 よりも有意に起床時刻,朝食時刻,夕食時刻が 早く,総睡眠時間が長かった。

2,調査直後のグループワーク

 調査結果を返却する際に10組前後で実施した グループワークでは養育者の気づきが数多く上 がった。具体例を挙げると,日中の活動量が多 いと寝る時間が早い,早寝できると機嫌よく早 起きする,公園遊びより歩いて買い物に行く方 が活動量が多い,意識せずに長時間テレビをつ けている,父親の生活リズムが乱れている,子 どもの生活リズムは養育者の生活リズムやそれ に対する意識次第で変えることができる,等で あった。

3.学習会・講演会

 調査参加者だけでなく乳幼児を持つ保護者,

子育てに関わりを持つ関係者にも多く声をかけ た。調査に参加した養育者からは,毎回具体的 な質問がたくさんあり,著者ら職員にも有意義 な場であった。調査・学習会に参加した養育者 から「もっと早い時期に生活リズムについて知

りたかった。」という声も多く上がった。

4.追跡調査

 平成18年に生活リズム調査に参加した70名に 対し,平成19年9月にアンケートを郵送し,44 名から回答を得た(回収率63%)。

 「現在の子どもの生活リズムをどう思うか」

という質問に対し,「よくできている」(11名)・

「まあよくできている」(27名)で,両方合わせ ると85%以上の養育者が,現在子どもの生活リ ズムがよくできていると感じていた。

 「調査前と比べて生活リズムを意識するよう になったか」という質問に対し,「よくあては

まる」(10名)・「ややあてはまる」(30名)で,

両方で合わせ約90%の養育者が現在も生活リズ ムについて意識していると回答した。

 「意識していることは,何か」という質問で は,全員が「外遊びなど体を動かすこと」と答 え,次いで,起床・就寝時間(32名)や食事時 間(22名)など生活リズムの定点を意識してい る養育者が多かった。大人の生活リズムを意識

している養育者も7丸いた。

 「生活リズムが整うと子育てが楽になると思 いますか」という質問では,すべての養育者が

「そう思う」(34名)または「ややそう思う」(10 名)と答え,「そう思わない」と答えた養育者 は皆無であった。

 「楽になった具体的なことは何か」という質 問では,「自分の時間が持てるようになった」

(31名),「気持ちにゆとりができた」(25名)と 答えた養育者が多かった。「体の疲れが減った」

との答えも12名(27%)であった。

 「継続して意識を持ち続けるのに必要なこと は何だと思うか」という質問に対しては,周り からの声かけ,意識付け,共感しあう場,機会,

定期的な講演会など「保護者の考える場」,生 活リズムが整うことによるメリットをよく理解 すること,親の意志の強さ,時々だめでもめげ ないこと,多少の努力,という記載があった。

 自由記載された養育者の声の一部を紹介する。

 「おかげさまで,正しい生活リズムを心がけ,

健康的に過ごしています。多少,生活が乱れて もすぐに元に戻せる自信もあり,大目に見られ る余裕もできました。」

 「子どもに対するストレスが減り,もっと子ども を好きになれる,子育てを楽しみたいと思える。」

 「生まれてからずっと意識しているので,そ れが当たり前になっている。」

 「毎日のリズムが決まっているので,子ども 自身が次に何をすればよいのか理解しているよ

うです。」

IV.考

 今回の調査で得られた,早寝群が遅寝群より も有意に起床時刻,朝食時刻,夕食時刻が早く,

総睡眠時間が長い,という結果は従来の報告1)

と矛盾しない。なおアクチウォッチで得られる

(5)

活動量と生活習慣との関連では,筆者の一人が,

年長の男児で早起きであるほど昼間の活動量が 多い,と報告3)している。

 今回の生活リズム調査の特徴はアクチウォッ チというデバイスの使用,結果返却時のグルー プワーク,そして各年の調査終了後にその年の 結果を保健師がまとめて報告する学習会とそれ に併せ開催した講演会だ。

 アクチウォッチというなじみのないデバイス が,本調査への関心を惹くきっかけとなり,ま た調査自体においても,参加者の結果への期待 を高め,調査完遂のモチベーションを高めたこ とは想像される。しかし実際の参加者からは,

この点以上に,この調査に参加したことで子ど も・養育者自身が生活を振り返り,客観的に生 活リズムを知るきっかけになったという声を多 く得た。グループワークを行うことで養育者が 生活の中で工夫したことや苦労したこと,感じ たことや学んだことをグループで情報交換・共 有することができ,その中で,お互いの新たな 気づきがたくさんあった,との指摘もあった。

また,追跡調査からは,養育者自身が気づいた ことは継続して取り組むことができていること がうかがわれた。「生活リズムが整うと子育て が楽になると思いますか」という質問では,そ う思わないと答えた養育者は皆無であった。こ れは明らかに養育者に行動変容が生じたことを 示す結果と考えた。さらに「調査前と比べて生 活リズムを意識するようになったか」という質 問に対し,約90%の養育者が現在も生活リズム について意識しているとの回答を寄せた。無論 アンケートに回答した方は調査について肯定的 であり,追跡調査結果をそのまま受け入れるこ とには慎重でなければならない。しかし回答者 の90%は,すなわち調査参加者の40/70(57%)

であり,非回答者を含めても調査への参加者の 半数以上が「現在も生活リズムについて意識し ている」ことになる。「おかげさまで,正しい 生活リズムを心がけ,健康的に過ごしています。

多少,生活が乱れてもすぐに元に戻せる自信も あり,大目に見られる余裕もできました。」と の自由記載も考え合わせると,養育者の行動変 容が継続していることを示していると考えた。

子どもの生活リズム改善の取り組みとして行っ

た生活リズム調査を手がかりに,養育者相互間 での情報の相互発信が行われ,その結果養育者 に行動変容がもたらされ,その変容が継続して いるのではないかと推測した。

 養育者と支援者との情報共有,養育者相互間 での情報の相互発信を基本に据えた同様の取り 組みの応用と発展が各地で進み,子育て支援 子ども支援が適切になされ,子どもたちの生育 環境が改善されることを期待したい。

        文   献

1)神山 潤.睡眠の生理と臨床第二版,診断と治  療社,東京,2008.

2)服部伸一,足立 正.幼児の就寝時刻と両親  の帰宅時刻並びに降下後のテレビ・ビデオ視  聴時間との関連性.小児保健研究 2006;65:

 507-512.

3) Kohyama J. Early rising children are more ac-

 tive than late risers. Neuropsychiatr Dis Treat  2007 ; 3 : 959-963.

4) http : //www . hayaoki . jp

[Summary)

 Recent advance of neuroscience tells us an ad-

equate lifestyle (wake up early in the morning and go to bed early in the night) is indispensable for spending both physically and mentally healthy life.

However, the lifestyle of caregivers whose lifestyle had much effect on their child lifestyle is hard to be improved. We examined lifestyle of children through actigraphic and sleep log recordings. After this investigation, the obtained data were shared not only with public nurses but also with other care-

givers. This sharing altered the attitude of caregiv-

ers toward improvement of child lifestyle, and this alteration was found not to be transient through the questionnaires send a year later from the investiga-

tion. We expect that the similar trials with further improvements would provide children the proper circumstances for growing.

(Key words)

life style, wake up early in the morning, go to bed early in the night, alteration, sharing

参照

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