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形状最適化シミュレーションの紹介

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Academic year: 2021

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形状最適化シミュレーションの紹介

加藤大輔

i

Introduction to structural optimization based on CAE Daisuke KATO

形状最適化シミュレーションの1つである「トポロジー最適化」に焦点をあて,その機能や特徴を事例も 含めて紹介する.トポロジー最適化は形状変更の自由度が大きく,事前に予測ができない革新的な形状が 得られるケースもある.また,3Dプリンタを活用したものづくりとの親和性が高い.「形状のアイディア をソフトウェアが提供する」という,新しいシミュレーションの活用策が広がりつつある.

(キーワード): 形状最適化,トポロジー最適化,有限要素法,3Dプリンタ,ものづくり

i サイエンスソリューション部 社会インフラチーム 次長 1 はじめに

製品の形状は,その製品が機能するための要件を 最低限満たさなければならないが,それ以外にも製 造の容易さ(製造コスト)や使い勝手,耐久性やデ ザイン性など,様々な要素を加味する必要がある.

また,その製品の使用目的等に応じて重視される ポイントは変化する.例えば「かばん」を例にとる と,パーティーに持参するようなオシャレなハンド バックは製造コストや使い勝手を多少犠牲にしても デザイン性が優先されるであろうし,登山など過酷 な環境で使用されるバックは,耐久性や重量(軽さ)

が重視されるであろう.

このように,形状を定める際はトレードオフとな る様々な条件を考慮しなければならないため,特に 開発経験の少ない製品の開発や,飛躍的な機能向上 を達成しなければならない場合には,様々な試行錯 誤が不可欠になってくる.

形状最適化シミュレーションは,このような新し いチャレンジを行う際に,特に威力を発揮する.形 状最適化シミュレーションは,与えられた条件の中 で「正解」の方向性を指し示すものであり,試行錯 誤の労力を減少させることが可能である.

もちろん,有益なシミュレーション結果を得るた めには,適切な計算条件をソフトウェアに指示する 必要があるため,ソフトウェアの使用に関する知識

やノウハウを別途習得することが必要になるが,そ れを踏まえても形状最適化シミュレーションから得 られる結果は魅力的であることが多い.

本報告では,形状最適化シミュレーションの1つ である「トポロジー最適化」に焦点をあて,その機 能や特徴を計算事例も含めて紹介する.トポロジー 最適化は,複数ある形状最適化シミュレーション手 法の中で最も形状変更の自由度が高いものであり,

評価者が事前に予測できないような形状が得られる ケースもある.ぜひ,この手法ならびに成果の魅力 を感じて頂きたい.

2 トポロジー最適化

2.1 橋の形状最適化(その1)

「百聞は一見にしかず」ということで,はじめに,

トポロジー最適化の簡単な事例を紹介する.

図1のような初期形状を仮定する.長方形の領域 の上部に分布荷重が作用しており,側面は両方向と も移動しないように拘束されている.長方形の領域 は碁盤の目のような微小領域(要素と呼ばれる)に 分割されており,荷重や拘束条件が付与されている 要素は赤で,付与されていない要素は水色で色分け されている.

最適化の目的は,この長方形の領域の面積を最小 化することである.ただし,それだけであれば水色

(2)

の要素を全て取り払えばよくなってしまうので,『発 生する「応力」の最大値が,あるレベル以下に収ま るようにする』という条件を追加する.これにより,

構造力学的な視点から,適切に要素を削除していく 必要が生じる.

1 橋の形状最適化(初期状態)

このような条件設定を最適化ソフトウェアに与え,

実行すると、最適化ソフトウェアが自動的に以下の 処理を行う.

はじめに,最適化ソフトウェアは,図1の条件で 構造解析を行い,発生する応力を求める.これによ り,図1の条件において構造強度に対する寄与の小 さい要素がわかるので,その要素を除外する(正確 には,その要素の剛性を減少させる).

要素の除外(剛性の減少)により,評価対象の形 状が変化するため,最適化ソフトウェアは変更され た形状に対して再度構造解析を行い,寄与の小さい 要素を把握する.そのうえで,当該要素を除外(剛 性減少)し,さらに新しい形状を作り出す.

この処理を何度も繰り返し行うことにより,最終 的に,これ以上どの要素を削除しても応力の最大値 が規定レベルを超えてしまうという状態にたどり着 く.この状態の形状が最終的な結果になる.この処 理の流れを図2に示す.

2 トポロジー最適化の処理の流れ

図1の形状ならびに所定の条件に対し最適化を行 った結果を図3に示す.

3 橋の形状最適化結果

図の青い部分は構造強度に対する寄与の小さい部 分,赤い部分は構造強度に対する寄与の大きい部分 初期形状等の条件を設定する

構造解析を実施する

構造強度に対する寄与の小さい要素を 把握し,除外する(剛性を減少させる)

これ以上の形状変更が可能か?

計算終了 No

Yes

Step-10

Step-20

Step-30

Step-40

最終形状(Step-48 にスムージング処理適用)

Step-48

(3)

を意味している.荷重や拘束条件を付与した要素は 除外の対象外にしているため,赤で表示されている.

また,Stepは繰り返し処理が行われた回数を意味し ている.

図3より,構造強度に対する寄与の小さい要素か ら順に除外されていき,48ステップで計算が終了し たことが確認できる.要素が四角形であるため,最 終形状に対してスムージング処理を適用し,外形形 状をなめらかにした図も最後に示しているが,これ を見ると,全体的にアーチ状の形状になっているこ と,ならびに,細かい支柱を適宜配置し強度を保っ ていることが把握できる.

筆者は橋梁の設計については素人であるが,「橋の 形状はアーチ型が良い」ということは事前知識とし て知っていた.そのため,図3の結果はある程度妥 当であると感じることができたが,この,細かい支 柱の最適な配置まで予測できたかと言われれば,そ れは全くできておらず,このような「形状に対する 提案」をソフトウェアが行ってきたということに大 変興味を覚えた.

2.2 橋の形状最適化(その2)

拘束条件を変更した解析を2ケース試行したので,

これを報告する.まずケース1として,図4のよう に,長方形領域の下部中央に拘束領域を追加した.

この部分の要素は除外されないため,中央部に足が 1 本追加されることを見込んだものであり,筆者の 事前予想は図5 のように,2つのアーチが形成され ると考えた.

4 橋の形状最適化(初期状態)

(拘束条件変更ケース1)

5 橋の形状最適化(結果予想)

(拘束条件変更ケース1)

この解析の結果を図6に示す.形状は,どちらか と言えば図3に示した足なしの最適化形状の中央部 に足が1本追加されたものになっており,予想とは 少し異なる結果になった.

6 橋の形状最適化(結果)

(拘束条件変更ケース1)

試行のケース2は,図7のように,長方形領域の 下部に,拘束領域を2つ追加したものである.この ケースの結果予想として,先のケース1の結果を踏 まえ,図8のように足を置く位置に2本まっすぐ足 ができ,その周囲に補強用の支柱が斜めに配置され るのではないかと考えた.

このケースの結果を図9に示す.形状は,きれい なアーチ状であり,予想通りのものにはならなかっ た.

冒頭に述べたように,形状を定める際に考慮しな ければならない要因は多々あるため,強度のみでこ れを定めるわけにはいかないが,このような,形状 に関する「ヒント」が得られる意義は大きいと考え られる.

7 橋の形状最適化(初期状態)

(拘束条件変更ケース2)

8 橋の形状最適化(結果予想)

(拘束条件変更ケース2)

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9 橋の形状最適化(結果)

(拘束条件変更ケース2)

2.3 トポロジー最適化の魅力

これまで,コンピュータシミュレーションは「実 験の代替手段」として利用されることが多かった.

時間やコストを要する試作実験の回数を減らし,効 率の良い設計開発を推進するため,許容できる精度 を確保したシミュレーションをどのように行ってい くかに焦点が当てられ,シミュレーションソフトウ ェアが改良されるとともに,知見やノウハウが蓄積 されていった.

その結果,シミュレーションの適用範囲は広がり,

製品開発に欠かすことができないツールとなったが,

ここで紹介した「トポロジー最適化」は,「実験の代 替手段」ではない.これは「形状のアイディア」を 提供するものであり,新しいコンピュータシミュレ ーションの活用手段なのである(図10参照).

これまで

設計 試作実験

シミュレーション:試作実験の軽減

これから

設計

トポロジー最適化:形状アイディア 試作実験 シミュレーション

10 トポロジー最適化の位置づけ

2.4 荷重条件や製造条件の考慮

御紹介した橋の事例では,拘束条件を変更するこ とにより形状が変化することを示したが,荷重条件 を変更したことにより形状が変化する事例を,以下 に示す.

図11に初期形状を示す.直方体の物体の対角線上 に拘束部と荷重部を配置し,引張荷重(case1)とね じり荷重(case2)をかけた場合に,最適化形状がど のように変化するか確認することを狙っている.

最適化の目的は剛性の最大化,制約条件は体積の 最小化とした.これにより,体積は徐々に減少し,

その体積において,最も剛性の高い形状を得ること ができる.

引張荷重(case1)をかけた場合の解析結果を図12 に,ねじり荷重(case2)の結果を図 13に示す.形 状の相違は一目瞭然であり,作用する荷重の条件に 応じて,形状が適切に変化することが確認された.

case1

case2

(突起部は変形対象外)

11 荷重条件の変更に伴う形状変化事例

(初期形状)

12 荷重条件の変更に伴う形状変化事例

(case1:引張荷重 解析結果)

(5)

13 荷重条件の変更に伴う形状変化事例

(case2:ねじり荷重 解析結果)

なお,図13の結果(ねじり荷重)は,中央部が大 きく抜けており,製造上の制約のため,このような 形状は採用できない可能性がある.トポロジー最適 化のソフトウェアの中には,「製造条件」を考慮する ための機能が装備されているものがあるので,その 例を示す.

試行した製造条件は「鋳造離型条件」と呼ばれる ものである.これは,鋳造において「型」を剥がす 際,アンダーカットが生じていると型を剥がすこと ができないため,指定された離型面に対するアンダ ーカットを抑制するものである.

図13の解析条件に,鋳造離型条件を追加した解析 を行った結果を図14に示す.離型面は青線で示した 箇所であり,この面で型を剥がすことができるよう,

アンダーカットが発生しないという制約のもと,形 状の最適化が行われている.

14 鋳造離型条件を適用した事例

(case2:ねじり荷重 解析結果)

3 3D プリンタを活用した「ものづくり」とトポロ ジー最適化との親和性

3.1 趣旨

前節では,ねじり荷重に対する事例(図13)の製

造上の制約を回避するため,鋳造離型条件を適用し た事例(図14)を示した.

一方,近年話題になっている「3Dプリンタ」を使 用すれば,このような製造上の制約は回避できる可 能性があり,形状の自由度が格段に上がる.

逆に言えば,トポロジー最適化は,3Dプリンタと の親和性が極めて高い最適化手法であると言える.

トポロジー最適化により得られる形状結果は,比較 的複雑なものになることが多いが,3Dプリンタであ ればその形状を作り出せる可能性がある.そこで,

日常品を対象にトポロジー最適化による形状最適化 を行い,実際に 3D プリンタにて製作を行ってみた ので,以下に,その一連の状況を説明する.

3.2 試行対象と最適化条件

試行対象は,仮想の機械部品ではなく,できれば 身近なものにしたいと考え「セロハンテープホルダ」

を取り上げることにした.一般的なセロハンテープ ホルダは,その重量感が「使い勝手の良さ」を生み 出しているとともに,落下衝撃等に対する耐久性も 十分であり,とても良い形状であるが,反面「ごつ さ」を感じるときがある.トポロジー最適化により これを「肉抜き」してみることにした.

対象物の初期形状を図15に示す.形状の自由度を 増すため,初期形状はあえて長方形に近いものとし,

リールやカッターの刃を装着する部分のみ,詳細な 形状を与えた.

15 セロハンテープホルダ(初期形状)

図15の3か所の突起部は,荷重条件を負荷するた めに設置したものであり,ここに前後上下左右の 6 方向の荷重を設定した.形状最適化は,これらの荷 重を個別に負荷し、それにより生じる応力の全てを 考慮して行われる.荷重条件の一例を図16に示す.

(6)

16 全部に上方向の荷重を与える例

拘束条件は図17に示すように,底面を拘束した.

また,解析メッシュは図18のように全領域四面体で 作成した.要素寸法の規定値は 3mm,総節点数

58,452,総要素数317,992である.

17 拘束条件

18 解析メッシュ

最適化の目的は剛性の最大化,制約条件は体積の 最小化とした.今回の試行は形状のアイディアを得 ることを目的としているため,許容可能な応力レベ ルは設定していない.

なお,最適化の条件として,さらに2つのものを 追加している.1つはフリーズ領域であり,図19の 赤線内の領域は肉抜きの対象から除外した.リール を設置する部分,カッターを取り付ける部分を残し ておくためである.もう1つはメンバーサイズの最 小値であり,全領域で5mmとした.これにより5mm よりも細い部材は生成されなくなる.

19 フリーズ領域

3.3 形状最適化の結果と製造

形状最適化を実施した結果のうち,ステップ毎の 形状変化図を図20に示す.徐々に肉抜きが進展して いく様子を確認することができる.

今回の解析では,許容可能な応力レベルを設定し ていないこともあり,肉抜きの進展にともない強度 不足の発生が懸念される.ある程度の強度を見込む ことができ,かつ 3D プリンタにて製作する価値の あるような,ある程度の形状の複雑さを有するもの を採用したいという観点から,Step-24の形状を採用 することにした.

Step-24の形状に対し,スムージング処理を行った

うえで,CADにて突起部の除去等の整形を行った結 果を図21に示す.

このCADデータを,3Dプリンティングサービス を提供している会社へWeb経由で送り,製作を依頼 した.素材は比較的安価なホワイトアクリルを採用 した.費用は3万円台であり,約1週間後に現物が 宅急便にて届けられた.

製品は意外と頑丈であり,通常の使用において,

強度上の問題は感じられなかった.ただし,刃を刺 すスリットの前方部に部材(図22の赤丸部分)が残 っており,テープをカットする際にこの部分が邪魔 をするため,使い勝手は良くなかった.

(7)

20 形状最適化結果(各ステップ)

Step-2

Step-5

Step-10

Step-15

Step-20

Step-24

Step-27

Step-30

(8)

21 形状最適化結果

(Step-24+スムージング処理+CAD成型) 図22 3Dプリンタ製造結果

4 まとめ

形状最適化シミュレーションの1つである「トポ ロジー最適化」に焦点をあて,この機能や特徴を計 算事例も含めて紹介した.

トポロジー最適化は形状の変更に対する自由度が 高く,事前に予想することが難しいような形状が得 られることもある魅力的な手法であると思われる.

また,3Dプリンタとの親和性も高い.このような新 しい製造プロセスを活用する際には,これまで縛ら れていた製造上の制約を捨てて,より新しい視点を 持って形状を検討する必要があるが,トポロジー最

適化は,その際のアイディアを提供してくれる強力 なツールであると思われる.

なお,今回のテープホルダの試作では,得られた 形状のアイディアを,ほとんど修正することなく,

そのままの状態で製造している.本来は,落下衝撃 解析や破断解析等による構造健全性の確認等も必要 である.ただし,応力の最大値を設定し,これを下 回るような形状を最適化から求める場合,処理の繰 り返し回数が比較的多くなる傾向があるため,計算 時間等も加味する必要がある.

また,形状最適化には,トポロジー最適化以外の ものも存在しており,応力集中箇所の応力緩和に適

(9)

した手法や,製造コストや機能性評価等も含めたよ り広範な最適化評価に適した手法等もある.これら については,紙面の関係で割愛しているが,機会が あれば別途御紹介したい.

最後に,本報告で実施した解析に使用したソフト ウェアを紹介する.形状最適化ソフトウェアにはダ ッソー・システムズ株式会社のTosca Structure 1)を使

用した.Tosca Structureは,別途構造解析ソフトウェ

アを必要とし,これはTosca Structureの実行中に自 動的に起動される.本報告では,構造解析ソフトウ ェアには,全てのケースでダッソー・システムズ株

式会社のAbaqus 2)を使用している.

引 用 文 献

1) http://www.3ds.com/ja/products-services/simulia/pro ducts/tosca/structure/

2) http://www.3ds.com/ja/products-services/simulia/pro ducts/abaqus/

図 13  荷重条件の変更に伴う形状変化事例  (case2:ねじり荷重  解析結果)    なお,図 13 の結果(ねじり荷重)は,中央部が大 きく抜けており,製造上の制約のため,このような 形状は採用できない可能性がある.トポロジー最適 化のソフトウェアの中には, 「製造条件」を考慮する ための機能が装備されているものがあるので,その 例を示す.    試行した製造条件は「鋳造離型条件」と呼ばれる ものである.これは,鋳造において「型」を剥がす 際,アンダーカットが生じていると型を剥がすこと ができない
図 16  全部に上方向の荷重を与える例    拘束条件は図 17 に示すように,底面を拘束した. また,解析メッシュは図 18 のように全領域四面体で 作成した.要素寸法の規定値は 3mm,総節点数 58,452,総要素数 317,992 である.  図 17  拘束条件  図 18  解析メッシュ    最適化の目的は剛性の最大化,制約条件は体積の 最小化とした.今回の試行は形状のアイディアを得 ることを目的としているため,許容可能な応力レベ ルは設定していない.    なお,最適化の条件として,さらに
図 20  形状最適化結果(各ステップ) Step-2 Step-5 Step-10 Step-15 Step-20 Step-24 Step-27 Step-30
図 21  形状最適化結果  (Step-24+スムージング処理+CAD 成型)  図 22  3D プリンタ製造結果  4  まとめ    形状最適化シミュレーションの 1 つである「トポ ロジー最適化」に焦点をあて,この機能や特徴を計 算事例も含めて紹介した.    トポロジー最適化は形状の変更に対する自由度が 高く,事前に予想することが難しいような形状が得 られることもある魅力的な手法であると思われる. また, 3D プリンタとの親和性も高い.このような新 しい製造プロセスを活用する際には,これまで縛

参照

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