国語教科書と能楽 (続)
著者 佐藤 和道
出版者 法政大学能楽研究所
雑誌名 能楽研究
巻 41
ページ 55‑90
発行年 2017‑03‑31
URL http://doi.org/10.15002/00013767
国 語 教 科 書 と 能 楽 ︵ 続
︶
佐 藤
和 道 は
じ め に
拙 稿
﹁ 国 語 教 科 書 と 能 楽
﹂︵
﹃ 能 と 狂 言
﹄ 一 四 号
︑ 平 成 二 八
︶で は
︑ 明 治 か ら 昭 和 戦 前 期 に 至 る 能 楽 と 学 校 教 育
︑ 教 科 書 に つ い て 論 じ た
︒ 本 稿 で は 引 き 続 き
︑ 戦 中 及 び 戦 後 の 動 向 に つ い て 考 察 を 進 め る
︒
一
︑ 国 定 教 科 書 か ら 暫 定 教 科 書 へ
昭 和 十 二 年 三 月
︑ 国 体 観 念 の 明 徴 と 教 学 刷 新 の 趣 旨 に 沿 う も の と し て
﹁ 中 学 校 教 授 要 目 中 改 正
﹂︵ 文 部 省 訓 令 第 九 号
︶が 公 布 さ れ た
︒ 同 改 正 に お い て 国 語 漢 文 科 は
﹁ 我 ガ 国 民 性 ノ 特 質 ト 国 民 文 化 ノ 由 来 ト ヲ 明 ニ ス ル コ ト ニ 注 意 シ 国 民 精 神 ノ 涵 養 ニ 資 ス ル コ ト ヲ 要 ス
﹂﹁ 国 民 性 ノ 具 現 タ ル コ ト 及 国 語 ノ 教 養 ガ 国 民 ノ 自 覚 ヲ 促 シ 品 位 ヲ 高 ム ル 所 以 ナ ル コ ト ヲ 会 得 セ シ メ テ 国 語 愛 護 ノ 念 ヲ 培 フ ト 共 ニ 美 的
・ 道 徳 的 情 操 ヲ 陶 冶 ス ベ シ
﹂︵︵
1
国︶
立 国 会 図 書 館 デ ジ タ ル コ レ ク シ ョ ン
﹁ 官 報
﹂︶ と 規 定 さ れ た
︒ さ ら に 昭 和 十 八 年 一 月 の
﹁ 中 等 学 校 令
﹂︵ 勅 令 第 三 十 六 号
︶と 同 年 三 月 の
﹁ 中 学 校 教 科 教 授 及 修 練 指 導 要 目
﹂︵ 文 部 省 訓 令 第 二 号
︶に お い て
︑ 国 語 漢 文 科 は
﹁ 国 民 科
﹂ へ と 統 合 さ れ る
︒
55
教 授 要 旨
ママ
国 民 科 国 語 ハ 正 確 ナ ル 国 語 ノ 理 会 ト 発 表 ト ノ 能 力 ヲ 養 フ ト 共 ニ 古 典 ト シ テ ノ 国 文 及 漢 文 ヲ 習 得 セ シ メ 国 民 的 思 考 感 動 ヲ 通 ジ テ 国 民 精 神 ヲ 涵 養 シ 我 ガ 国 文 化 ノ 創 造 発 展 ニ 培 フ モ ノ ト ス︵ 以 下 略
︶ 教 授 方 針 一 国 語 ガ 国 民 的 思 考 感 動 ノ 具 現 ニ シ テ 且 之 ヲ 形 成 ス ル モ ノ ナ ル 所 以 ヲ 明 ニ シ 国 語 ノ 正 確 ナ ル 理 会
・ 発 表 ノ 能 力 ヲ 養 ヒ 国 語 尊 重 ノ 精 神 ヲ 涵 養 ス ベ シ 一 古 典 ト シ テ ノ 国 文 ヲ 通 ジ テ 皇 国 ノ 伝 統 ト 其 ノ 表 現 ト ヲ 会 得 セ シ メ 国 民 生 活 ノ 発 展 ト 皇 国 文 化 ノ 創 造 ト ニ 培 フ ベ シ︵ 以 下 略
︶ 教 授 事 項 一 講 読 ハ 皇 国 ノ 道 ノ 具 現 タ ル 各 時 代 ノ 国 文 ト 皇 国 ノ 発 展 ニ 寄 与 セ ル 漢 文 ト ノ 中 ヨ リ 醇 正 ナ ル モ ノ ヲ 選 ビ 之 ガ 正 確 ナ ル 読 誦 ト 解 釈 ト ヲ 課 シ 教 材 ニ 依 リ テ ハ 暗 誦
・ 書 取 ヲ 課 ス ベ シ︵ 以 下 略
︶
︵﹁ 中 学 校 教 科 教 授 及 修 練 指 導 要 目
﹂︶ 右 改 正 で は 特 に 古 典 重 視 の 方 針 が 示 さ れ た が
︑ こ れ は 教 科 書 の 編 纂 に も 反 映 さ れ た
︒ す で に 昭 和 十 六 年 度 よ り 教 科 書 は 各 教 科 五 種 に 限 定 す る こ と︵︵
2
︶
五 種 選 定
︶が 定 め ら れ て い た が
︑ 十 八 年 の 改 正 中 学 校 令 に よ っ て 教 科 書 は 文 部 省 作 成 の 一 種 に 限 る こ と が 示 さ れ た︵ 教 科 書 国 定 化
︶︒ こ れ を 受 け て 作 成 さ れ た の が
﹃ 中 等 国 文
﹄︵ 一
〜 五
︶及 び
﹃ 国 文 六
﹄ で あ る
︒ 以 下 に 吉 田 裕 久 に よ っ て 紹 介 さ れ た 同 書 の 編 纂 趣 意 書 を 掲 げ る
︒ 中 等 国 文 は
︑﹁ 皇 国 ノ 道 ノ 具 現 タ ル 各 時 代 ノ 国 文
﹂ を
︑ 中 等 漢 文 は
﹁ 皇 国 ノ 発 展 ニ 寄 与 セ ル 漢 文
﹂ を
︑ 学 年 に 従 ひ 学 習 者 の 心 身 発 達 の 程 度 に 応 じ て 採 択 排 列 し
︑ 文 法
・ 作 文
・ 話 方 と 相 俟 つ て
︑﹁ 国 語 ノ 正 確 ナ ル 理 会
・ 発 表
ノ 能 力
﹂ を 養 ひ
︑ 国 語 が
﹁ 国 民 的 思 考 感 動 ノ 具 現 ニ シ テ 且 コ レ ヲ 形 成 ス ル モ ノ
﹂ で あ る 所 以 を 明 ら か に し て
︑ 皇 国 の 伝 統 並 び に 東 亜 の 思 想
・ 文 化 と そ の 表 現 と を 会 得 さ せ
︑ 以 つ て
﹁ 国 民 生 活 ノ 発 展
﹂ と
﹁ 皇 国 文 化 ノ 創 造
﹂ と に 培 は う と し た
︒ か く の 如 き 任 務 を 遂 行 し 達 成 す る た め に
︑ 教 材 採 択 の 基 準 は 二 つ の 方 向 を 採 つ た
︒ 一 つ は
︑
﹁ 古 典 へ
﹂ の 方 向
︑ 一 つ は
﹁ 古 典 か ら
﹂ の 方 向 で あ る
︒ 更 に い へ ば
︑ 中 学 校 に 於 い て 課 し 得 べ き 古 典 に は
︑ 程 度 の 上 か ら い つ て も
︑ 量 の 上 か ら い つ て も
︑ 限 度 が あ る か ら
︑ そ の 古 典 を 読 破 し 会 得 す る 準 備 的 教 材 と
︑ さ う い ふ 古 典 の 歴 史 的 意 義 及 び 現 代 的 意 義 を 示 す べ き 発 展 的 教 材 と を 加 へ て
︑ 古 典 を 学 習 さ せ る 課 程 と し た
︒ こ の 二 つ の 方 向 を 存 立 さ せ る こ と に よ つ て
︑ 古 典 と 学 習 者 と を 関 連 づ け
︑ 教 材 と し て の 古 典 の 位 置 と 意 義 と を 確 立 し よ う と し た
︒︵ 中 略
︶ 尚
︑ 教 授 の 方 法 は
︑ 正 確 な る 読 誦 を 重 ん じ
︑ 反 復 熟 読 に よ つ て 理 会 の 根 基 に 培 ふ こ と が 肝 要 で あ る
︒ 語 句 の 註 解
︑ 全 文 の 解 釈 の 如 き
︑ 簡 に し て 要 を 得 る を 旨 と し
︑﹁ 読 書 百 編 義 自 見
﹂ 底 の 指 導 を 念 と し
︑ 読 誦 も 十 分 で き な い の に
︑ 徒 ら に 解 釈 に 走 り
︑ 批 評 に 深 入 り す る 如 き
︑ 軽 薄 な る 指 導 に 陥 つ て は な ら な い
︒ 教 材 に よ つ て は 暗 誦 を 課 し
︑ 理 会 と し て の 読 誦 か ら
︑ 表 現 と し て の 朗 読 に 達 せ し め
︑ 以 つ て 古 典 朗 読 の 歓 び を 体 感 さ せ る こ と が 必 要 で あ る
︒
︵﹁︵
4
︶
吉 田 裕 久
﹃ 中 等 国 文
﹄︵ 1 9 4 3
︶の 研 究
︱ 編 纂 理 念 と 指 導 法 を 中 心 に
︱
﹂︑ 傍 線 私 注
︑ 以 下 同 じ
︶
︻ 国 定教 科書 男 子用
︼ 中等 国文 一 昭 18 12・ 1 富 士 の 高 嶺︵ 万 葉 集
︶↓ 6 戦 国 の 武 士︵ 常 山 紀 談
︶ 9 武 士 気 質︵ 藩 翰 譜
︶
︻ 国定 教科 書 女子 用
︼ 中 等国 文 一 昭 18・ 12 1 富 士 の 高 嶺
↓ 5 戦 国 の 女 性︵ 常 山 紀 談
︶ 7 五 月 の 空︵ 十 訓 抄
︶
︻暫 定教 科 書男 子用
︼ 中等 国 語一
国文 篇 前 昭 21・
3
↓ 1 富 士 の 高 嶺︵ 万 葉 集
︶
↓ 2 親 心︵ 雲 萍 雑 志
︶
︻ 新制 中 学用
︼ 中 等 国語 一 昭 22・
2 1 10
末 広 が り︵ 狂 言
︶ 2
57
国語教科書と能楽(続)10 親 心︵ 雲 萍 雑 志
︶↓ 11
朝 の こ こ ろ︵ 橘 曙 覧
︶ 中等 国文 二 昭 19
・8 1 わ た つ み︵ 万 葉 集
︶ 3 一 門 の 花︵ 平 家 物 語
︶↓ 4 す す き の 穂︵ 良 寛
・ 大 隈 言 道 他
︶↓ 6 大 君 の へ に︵ 太 平 記
︶ 8 士 風︵ 駿 台 雑 話
︶ 10
創 始 者 の 苦 心︵ 蘭 学 事 始
︶↓ 中等 国文 三 昭 18 12・ 1 宇 智 の 大 野︵ 万 葉 集
︶ 2 草 薙 の 太 刀︵ 古 事 記
︶ 4 源 家 の ほ ま れ︵ 平 家 物 語
︶ 5 浮 島 が 原︵ 義 経 記
︶ 6 磯 も と ど ろ に︵ 源 実 朝
︶ 7 大 塔 宮︵ 太 平 記
︶ 8 文 武 の 道︵ 神 皇 正 統 記
︶ 中等 国文 四 昭 19
・9 1 鞆 の 音︵ 万 葉 集
︶↓ 2 大 国 主 神︵ 古 事 記
︶↓ 3 人 臣 の 道︵ 神 皇 正 統 記
︶ 4 菊 池 一 族︵ 太 平 記
︶ 5 月 天 心︵ 与 謝 蕪 村
︶↓ 9 松 陰 と 家 庭︵ 吉 田 松 陰
︶ 10
高 名 の 木 の ぼ り︵ 徒 然 草
︶↓ 中等 国文 五 昭 20
・1 1 若 菜︵ 古 今 和 歌 集
︶↓
9 父 の 仇︵ 太 平 記
・ 吉 野 拾 遺
︶ 12
山 里︵ 太 田 垣 蓮 月
﹁ 海 女 の 刈 藻
﹂︶ 13
親 心
↓ 15
旧 都 の 月︵ 平 家 物 語
︶ 中 等国 文 二 昭 19・
8 1 豊 旗 雲︵ 万 葉 集
︶ 2 大 君 の へ に
↓ 5 一 萬 と 箱 王︵ 曽 我 物 語
︶ 10
和 歌 の 四 季︵ 佐 々 木 信 綱
・ 近 世 和 歌
︶ 11
亡 き あ と︵ 志 士 書 簡
︶ 13
屋 島︵ 平 家 物 語
︶ 中 等国 文 三 昭 19・ 1 1 鞆 の 音
↓ 2 大 国 主 神
↓ 4 浮 島 が 原 5 小 袖 曽 我︵ 謡 曲
︶ 8 涼 風︵ 松 尾 芭 蕉
・ 小 林 一 茶
︶↓ 10
忠 度︵ 平 家 物 語
︶ 11
磯 も と ど ろ に 12
士 風 13
左 の 手︵ 北 辺 随 筆
︶↓ 中 等国 文 四 昭 19・ 9 1 大 宮 の︵ 万 葉 集
︶ 2 人 臣 の 道 3 草 薙 の 太 刀 4 高 名 の 木 の ぼ り
↓ 5 月 天 心
↓
後 昭 21・ 8
↓ 6 一 門 の 花︵ 平 家 物 語
︶↓
↓ 8 す す き の 穂︵ 良 寛
・ 大 隈 言 道
・ 橘 曙 覧
︶
↓ 10
創 始 者 の 苦 心︵ 蘭 学 事 始
︶↓ 中等 国 語二
国文 篇 前 昭 21・ 3
↓ 1 豊 の 年︵ 万 葉 集
︶
↓ 2 大 国 主 神︵ 古 事 記
︶
↓ 5 高 名 の 木 の ぼ り︵ 徒 然 草
︶
↓ 6 月 天 心︵ 与 謝 蕪 村
︶ 後 昭 21・
8 10
学 び の 道︵ 玉 勝 間
︶ 中等 国 語三
国文 篇 前 昭 21・ 3
↓ 1 若 菜︵ 古 今 和 歌 集
︶↓
↓ 2 や ま と う た︵ 古 今 集 仮 名 序
︶
↓ 3 春 は 曙︵ 枕 草 子
︶↓
↓ 4 先 達︵ 徒 然 草
︶
↓ 5 奥 の 細 道︵ 奥 の 細 道
︶↓ 後 昭 21・ 8
↓ 1 天 の 香 具 山︵ 新 古 今 和 歌 集
︶↓
↓ 2 あ づ ま ぢ︵ 更 級 日 記
・ 十 六 夜 日 記
︶
↓ 6 敷 島 の 道︵ 増 鏡
︶
↓ 7 恩 賜 の 御 衣︵ 大 鏡
︶ 国語 四 国 文 篇 21昭
・ 3
↓ 1 倭 建 命︵ 古 事 記
︶
↓ 4 創 始 者 の 苦 心︵ 蘭 学 事 始
︶ 中 等 国語 二 昭 22・ 3 1
↓ 6 一 門 の 花︵ 平 家 物 語
︶ 7 舞 へ 舞 へ か た つ む り︵ 梁 塵 秘 抄
︶ 2 5 万 葉 秀 歌︵ 斎 藤 茂 吉
︶ 3 4 鬼 に こ ぶ と ら る ゝ こ と︵ 宇 治 拾 遺 物 語
︶
↓ 7 ひ さ か た の︵ 古 今 集
︶ 中 等 国語 三 昭 22・
3 1
↓ 1 天 の 香 久 山︵ 新 古 今 和 歌 集
︶ 9 長 歌︵ 万 葉 集
・ 良 寛
︶ 10
羽 衣︵ 謡 曲
︶ 2 4 芭 蕉 の 名 句︵ 穎 原 退 蔵
﹁ 芭 蕉 の 名 句
﹂︶ 3
↓ 5 随 筆 二 題︵ 枕 草 子
・ 徒 然 草
︶
︻ 新制 高 校用
︼ 高 等 国語 一 昭 22・
3 上 3 太 郎 冠 者︵ 太 郎 冠 者 行 状 記
︶ 高 等 国語 二 昭 22・ 3
2 や ま と う た︵ 古 今 集 仮 名 序
︶↓ 3 春 は 曙︵ 枕 草 子
︶ 5 恩 賜 の 御 衣︵ 大 鏡
︶↓ 6 光 頼 卿 参 内︵ 平 治 物 語
︶ 7 月 の 前︵ 上 田 秋 成
︶ 9 天 の 香 具 山︵ 新 古 今 和 歌 集
︶↓ 10
敷 島 の 道︵ 増 鏡
︶↓ 11
吉 野 の 奥︵ 後 醍 醐 天 皇 ほ か
︶ 12
説 話 三 則︵ 古 今 著 聞 集・ 十 訓 抄・ 宇 治 拾 遺 物 語
︶ 13
靭 猿︵ 狂 言
︶ 15
先 達︵ 徒 然 草
︶↓ 16
奥 の 細 道︵ 奥 の 細 道
︶↓ 国文
昭 20
・1 1 撃 ち て し 止 ま む︵ 古 事 記
︶↓ 2 た ぎ つ 河 内︵ 万 葉 集
︶↓ 4 恩 賜 の 御 衣︵ 大 鏡
︶ 5 白 良 の 浜︵ 催 馬 楽
・ 梁 塵 秘 抄
︶↓ 6 橋 合 戦︵ 平 家 物 語
︶ 7 早 蕨︵ 金 槐 和 歌 集
︶ 9 法 語 抄︵ 歎 異 抄
・ 正 法 眼 蔵 随 聞 記
︶ 10
鉢 の 木︵ 謡 曲
︶ 11
由 利 の 八 郎︵ 吾 妻 鏡
︶ 12
葉 隠 抄︵ 葉 隠
︶ 14
奥 の 細 道︵ 奥 の 細 道
︶ 16
直 毘 霊︵ 古 事 記 伝
︶ 17
尊 き こ の 身︵ 平 賀 元 義
・ 佐 久 間 東 雄
︶
8 縣 居 大 人︵ 玉 勝 間
︶ 11
巴 の 勇 戦︵ 源 平 盛 衰 記
︶ 中 等国 文 五 昭 20・ 1 1 若 菜
↓ 2 や ま と う た
↓ 3 春 は 曙 5 恩 賜 の 御 衣
↓ 6 あ づ ま ぢ︵ 更 級 日 記
︶↓ 8 天 の 香 具 山
↓ 9 月 の 前 11
敷 島 の 道
↓ 12
吉 野 の 奥 14
先 達
↓ 15
説 話 三 則 16
靱 猿 17
奥 の 細 道
↓ 国 文六
20昭
・ 1 1 い で ま し︵ 古 事 記
︶ 2 青 垣 山︵ 万 葉 集
︶ 4 正 月 一 日︵ 枕 草 子
︶ 5 賀 宴︵ 源 氏 物 語
︶↓ 6 白 良 の 浜
↓ 7 大 原 御 幸︵ 平 家 物 語
︶ 8 法 語 抄 10
摂 待︵ 謡 曲
︶ 11
葉 隠 抄 12
奥 の 細 道 14
直 毘 霊 15
尊 き こ の 身 16
松 陰 と 家 庭
↓ 2 白 珠︵ 万 葉 集
︶↓
↓ 3 賀 宴︵ 源 氏 物 語
︶ 4 源 氏 物 語 論︵ 源 氏 物 語 玉 の 小 櫛
︶
↓ 5 白 良 の 浜︵ 催 馬 楽
・ 梁 塵 秘 抄
︶ 7 年 来 稽 古︵ 風 姿 花 伝
︶↓
︻暫 定教 科 書女 子用
︼ 中等 国 語一
国文 篇 前 昭 21・ 3
↓ 1 富 士 の 高 嶺
↓ 2 親 心 中等 国 語二
国文 篇 前 昭 21・ 3
↓ 1 豊 の 年
↓ 4 涼 風︵ 松 尾 芭 蕉
・ 小 林 一 茶
︶
↓ 5 左 の 手︵ 北 辺 随 筆
︶
↓ 6 高 名 の 木 の ぼ り
↓ 中等 国 語三
国文 篇 前 昭 21・ 3
↓ 1 若 菜
↓
↓ 2 や ま と う た
↓ 3 春 は 曙
↓
↓ 5 先 達
↓ 6 奥 の 細 道
↓ 国語 四 昭 21
・3 男 子 用 と 共 通 教 材
上
↓ 2 枕 草 子 抄︵ 春 曙 抄
︶
↓ 6 万 葉 集 抄︵ 万 葉 集
︶ 下 6 源 氏 物 語 小 萩 が も と︵ 源 氏 物 語
︶ 高 等 国語 三 昭 23・ 4 上
↓ 1 奥 の 細 道︵ 奥 の 細 道
︶
↓ 6 年 来 稽 古︵ 風 姿 花 伝
︶ 下 1 自 然 と 人 生︵ 松 尾 芭 蕉
・ 三 冊 子 ほ か
︶ 4 つ き あ ひ は 格 別︵ 西 鶴 諸 国 ば な し
・ 日 本 永 代 蔵
︶ 7 八 雲 た つ︵ 古 事 記
︶
︵ 3
︶ 資 料
① 国 定期 教科 書 にお ける 古 典 教 材 の推 移 数 字 は教 材 番号
︑↓ は 教科 書間 に お け る 教材 の 継承 関係 を 示す
︒男 女 共 通 教 材の 出 典は 男子 の み記 した
︒ 和 歌 等 で出 典 が複 数あ る もの は作 者 名 を 付 した
︒
59
国語教科書と能楽(続)︵ 5
︶
吉 田 に よ れ ば
﹃ 中 等 国 文
﹄ は 各 学 年 に 二 冊 の 割 り 当 て で 作 製 さ れ
﹃ 国 文 六
﹄ の み が 一 冊 で 四 年 生 用 で あ っ た と さ れ る
︒ 資 料
① に
﹃ 中 等 国 文
﹄ 所 載 の 古 典 教 材 を 一 覧 に し て 掲 げ た が
︑ 古 典 教 材 が か な り の 分 量 を 占 め て お り
︑︵
6
そ︶
の 中 に 謡 曲︵ 鉢 木
・ 摂 待
︶・ 狂 言︵ 靱 猿
︶も 含 ま れ て い る
︒ 昭 和 二 十 年 八 月 の 終 戦 に 伴 い
︑︵
7
︶
文 部 省 は 教 科 書 に 記 載 さ れ た 軍 国 主 義 に 関 す る 記 述 の 墨 滅 を 指 示
︑﹁ 墨 塗 り 教 科 書
﹂ が 用 い ら れ た
︒ 次 い で 翌 昭 和 二 十 一 年 度 は 暫 定 的 に 墨 塗 り 部 分 を 削 除 し た 教 科 書 を 発 行 し
︑ 二 十 二 年 度 よ り 新 編 纂 の 教 科 書 を 作 成 す る 方 針 が 示 さ れ た
︒ こ の 時 二 十 一 年 度 の 一 年 間 の み 使 用 さ れ た の が
︑﹃ 中 等 国 語
﹄︵ 一
・ 二
・ 三
︶﹃ 国 語 四
﹄ の 所 謂
﹁ 暫 定 教 科 書
﹂ で あ る
︒ 暫 定 教 科 書 は 編 纂 に 時 間 的 な 余 裕 が な く そ の 教 材 の 多 く を 国 定 教 科 書
﹃ 中 等 国 文
﹄ に 負 っ て い る
︒ 両 者 の 継 承 関 係 を 資 料
① に
﹁
↓
﹂ で 示 し た が
︑ 古 典 作 品 で は 軍 記 物 語 や 近 世 随 筆 な ど が 除 か れ る 一 方 で
︑ 中 古 文 学 や 和 歌 な ど は そ の ま ま 残 さ れ た
︒ こ の 時 能 楽 作 品 が 排 除 さ れ た の は
︑ 軍 記 物 語 に 材 を 採 り
︑ 武 士 の 忠 義 を 描 く︿ 鉢 木
﹀
︿ 摂 待
﹀の 内 容 が 問 題 視 さ れ た た め で あ ろ う
︒ 吉 田 に よ れ ば
︑ 暫 定 教 科 書 国 文 篇 に お い て 新 教 材 と し て 登 場 し た 作 品 は 僅 か 七 作 品 に 過 ぎ な い が
︑ そ の 中 で 唯 一 の 古 典 作 品 が
﹃ 風 姿 花 伝
﹄﹁ 年 来 稽 古
﹂ で あ っ た
︒﹃ 風 姿 花 伝
﹄ は
︑ 戦 前 の 教 科 書 で は 僅 か に 岩 波 書 店
﹃ 国 語
﹄︵ 昭 和 九
・ 第 十 巻 第 二 十 課
︶に
﹁ 生 涯 稽 古
﹂ と 題 す る 西 尾 実 の 文 章 が 採 ら れ た の み で あ る
︒︵
15
岩︶
波
﹃ 国 語
﹄ は 編 集 主 幹 で あ っ た 西 尾 実 が
﹁ 理 想 的 教 科 書 の 出 版
﹂ を 意 図 し て 編 纂 し た も の で
︑ 巻 一 巻 頭 に
﹁ 生 き た 言 葉
﹂︑ 第 五 巻 巻 末 に
﹁ ツ ェ ッ ペ リ ン 伯 号 を 迎 へ て
﹂︑ 最 終 巻︵ 巻 十
︶巻 末 に
﹁ 生 涯 稽 古
﹂ と い う 自 身 の 著 述 三 篇 を 配 し そ の 教 育 思 想 を 表 明 し て い る が
︑ 中 で も
﹁ 生 涯 稽 古
﹂ は
﹁ 国 語 教 育 の 一 つ の 到 達 点
﹂︵
﹃ 国 語 学 習 指 導 の 研 究
﹄ 岩 波 書 店
︑ 昭 和 一 一
︶と 評 さ れ た よ う に 西 尾 の 強 い 思 い 入 れ を う か が わ せ る
︒ 実 は 西 尾 は
︑ 戦 前 の 国 定 教 科 書
﹃ 中 等 国 文
﹄ 編 纂 の 中 核 に い た 人 物 で あ り
︑ 同 書 も 岩 波
﹃ 国 語
﹄ の 影 響 を 大 き く 受 け た こ と が 指 摘 さ れ て い る
︒ 暫 定 教 科 書 に 西 尾 が ど の 程 度 関 与 し て い た の か は 明 ら か で は な い が
︑﹃ 風 姿 花 伝
﹄ 採 録 の 背 景 に は 西 尾 の 影 響
を 考 え る の が 穏 当 だ ろ う
︒ 後 述 の 如 く 戦 後 教 科 書 に お い て 能 楽 論 は 教 材 と し て 一 定 の 地 位 を 占 め る に 至 る が
︑ そ の 萌 芽 が 暫 定 教 科 書 に あ っ た こ と に 注 意 し て お き た い
︒ さ ら に 昭 和 二 十 二 年 か ら は
︑ 新 制 中 学 校 用 に 新 た に 作 成 さ れ た 国 定 教 科 書
﹃ 中 等 国 語
﹄﹃ 高 等 国 語
﹄ の 発 行 が 開 始 さ れ る
︒﹃ 中 等 国 語
﹄ は 学 年 ご と に 三 分 冊︵ 中 学 二 年
・ 三 年 は 漢 文 篇 を 付 し て 四 分 冊
︶︑
﹃ 高 等 国 語
﹄ は 各 学 年 二 冊 ず つ 発 行 さ れ た
︒ 吉 田 に よ れ ば
︑ 戦 前 の
﹃ 中 等 国 文
﹄ 及 び 暫 定 教 科 書 か ら 継 続 し て 採 用 さ れ た 教 材 は 一 割 程 に 過 ぎ ず
︑ 大 半 が 新 規 に 採 用 さ れ た 教 材 だ と い う
︒ そ の 一 方 で
﹃ 中 等 国 語
﹄ 所 載 教 材 の う ち 後 継 の 検 定 教 科 書 に 採 用 さ れ た も の は 六 割 に も 上 る
︒ つ ま り 戦 前 か ら の 教 材 の 流 れ を 断 ち 切 り
︑ 新 た に 戦 後 教 科 書 の モ デ ル を 作 っ た と い う 点 で 本 書 の 意 義 は 大 き い と い え る
︒ 能 楽 関 連 教 材 に つ い て 言 え ば
﹃ 中 等 国 語
﹄ に は︿ 羽 衣
﹀
︿ 末 広 が り
﹀が
︑﹃ 高 等 国 語
﹄ に
﹃ 風 姿 花 伝
﹄ が 採 ら れ て お り
︑ 古 文 で は な い が
﹃ 高 等 国 語
﹄ に は 野 上 豊 一 郎 の
﹃ 太 郎 冠 者 行 状 記
﹄ の 一 節 も 載 る
︒ 暫 定 教 科 書 に お い て い っ た ん 取 り 下 げ ら れ た 能
・ 狂 言 が 題 材 を 変 え て 復 活 し
︑ 加 え て
﹃ 風 姿 花 伝
﹄ が 継 続 し て 採 用 さ れ た こ と で
︑ 能
・ 狂 言
・ 能 楽 論 の 三 者 が 教 科 書 に お い て 初 め て 完 備 さ れ た
︒ 昭 和 三 十 年 代 半 ば ま で は こ の 形 式 が 踏 襲 さ れ て い く
︒
︵ 8
︶
一 方
︑ 小 学 校 向 け の 国 定 教 科 書︵ 第 六 期
﹃ 国 語
﹄ 第 五 学 年 上
︶に は
︑﹁ ぶ す 能 と き ょ う げ ん に つ い て
﹂ が 掲 載 さ れ た
︒ 本 教 材 は 能
・ 狂 言 の 解 説 と 現 代 語 訳
︿ 附 子
﹀ に よ っ て 構 成 さ れ る が
︑︿ 附 子
﹀は 冒 頭 部 を 以 下 の よ う に 改 変 し て い る
︒ あ る 村 に
︑ け ち ん ぼ の だ ん な が あ り ま し た
︒ お か み さ ん を も ら え ば
︑ く ら し に も お 金 が か か り
︑ 着 物 を き せ た り
︑ お こ づ か い を や っ た り し な け れ ば な ら な い の で
︑ ず っ と
︑ ひ と り で く ら し て い ま し た
︒ ま た
︑ 解 説 部 分 に も き ょ う げ ん に は
︑ よ く
︑ 太 郎 か じ ゃ と 次 郎 か じ ゃ が
︑ 現 れ ま す
︒ か れ ら は
︑ だ ん な の ね こ か ぶ り を あ ば い た り
︑
61
国語教科書と能楽(続)い た ず ら を し た り
︑ ま た
︑ と ん で も な い へ ま を や っ た り
︑ だ ま さ れ た り な ど
︑ よ わ い 人 間 の し そ う な こ と を な ん で も や り ま す
︒ め う え の い ば っ た も の に 対 し て も お そ れ ず
︑ そ う か と い っ て
︑ な に を し て も に く ま れ な い
︑ お も し ろ い 人 物 に な っ て い ま す
︒
海 後 宗 臣
︑ 仲 新 編
﹃ 日 本 教 科 書 大 系 近 代 編
﹄ 第 九 巻︵ 講 談 社
︑ 昭 和 三 八
︶ と の 記 述 が 見 え る
︒ こ れ ら の 記 述 は 教 科 書 の 刊 行 と 同 時 期 に 告 示 さ れ た
﹃ 昭 和 二 十 二 年 度 学 習 指 導 要 領︵ 試 案
︶﹄
︵ 小
・ 中 学 校 対 象
︑ 以 下
﹁ 二 十 二 年 度 試 案
﹂︶ が 教 材 の 要 件 に 掲 げ た
﹁︵ 十 一
︶ 自 由
・ 平 等
・ 博 愛
・ 平 和
・ 正 義
・ 寛 容 の 思 想 の 理 解 と 発 達 を 助 け る も の
︒︵ 十 二
︶ 真
・ 善
・ 美 に 対 す る 理 解 を 与 え る も の
︒︵ 十 三
︶ 信 仰 心 を や し な い
︑ ぎ せ い
・ 責 任 の 精 神 生 活 を 表 わ し た 物 語
︒﹂
︵︵
10
︶
国 立 教 育 政 策 研 究 所
﹁ 学 習 指 導 要 領 デ ー タ ベ ー ス イ ン デ ッ ク ス
﹂︶ に 沿 う べ く 書 き 加 え ら れ た も の で あ ろ う
︒︵
9
︶
こ の よ う に 教 科 書 の 編 纂 に は 文 部 省︵ 現 文 科 省
︶が お よ そ 十 年 お き に 改 訂 す る 学 習 指 導 要 領 が 強 い 影 響 を 及 ぼ し て い る
︒ 次 節 で は 高 等 学 校 の 学 習 指 導 要 領 の 変 遷 を た ど り つ つ
︑ 教 科 書 に お け る 能
・ 狂 言 の 扱 い を 考 察 す る
︒
二
︑ ﹃ 昭 和 二 十 六 年 度 学 習 指 導 要 領 試 案
﹄ と 能
・ 狂 言
学 習 指 導 要 領 は C I E︵ 民 間 情 報 教 育 局
︶の 指 導 に よ り ア メ リ カ の
“ C o urse o f St udy ”
を 参 考 に 作 製 さ れ
︑ 当 初 は
﹁ 試 案
﹂ と し て 法 的 拘 束 力 を 持 た な い 手 引 き と し て 扱 わ れ た
︒ 昭 和 二 十 二 年 三 月 に 告 示 さ れ た
﹁ 二 十 二 年 度 試 案
﹂ は 国 語 科 学 習 指 導 の 目 標 を
﹁ 児 童
・ 生 徒 に 対 し て
︑ 聞 く こ と
︑ 話 す こ と
︑ 読 む こ と
︑ つ づ る こ と に よ っ て
︑ あ ら ゆ る 環 境 に お け る こ と ば の つ か い か た に 熟 達 さ せ る よ う な 経 験 を 与 え る こ と で あ る
︒﹂ と 規 定 し て い る
︒ さ ら に
﹁ 児 童
・ 生 徒 の 言 語 活 動
﹂ と し て
︵ 一
︶ 童 謠
・ 童 詩
・ 叙 情 詩
・ 叙 事 詩
・ 和 歌
・ 俳 句 な ど
︒
︵ 二
︶ 手 紙
・ 日 記
・ 記 録
・ 報 告
・ 研 究
・ 隨 筆 な ど
︒
︵ 三
︶ 童 話
・ ぐ う 話
・ 伝 説
・ 伝 記
・ 小 説 な ど
︒
︵ 四
︶ 脚 本
・ ラ ジ オ 台 本
・ シ ナ リ オ
・ よ び か け
・ 詩 劇
・ 謠 曲
・ 狂 言 な ど
︒ の 四 種 を 例 示 し
︑ そ れ ぞ れ
﹁︵ 一
︶ 詩 情 表 現 の む れ
︒︵ 二
︶ 思 索
・ 記 録 の む れ
︒︵ 三
︶ 物 語 の む れ
︒︵ 四
︶ 演 劇 一 般 の む れ
︒﹂ と 名 付 け て い る
︒ こ こ に は す で に 経 験 主 義 に 基 づ く 単 元 学 習 が 標 榜 さ れ て い る が
︑ そ の 中 で 能︵ 謡 曲
︶や 狂 言 は 演 劇 の 中 に 位 置 づ け ら れ て い る
︒ さ ら に 高 等 学 校 を 対 象 し た 最 初 の
資料② 高等学校学習指導要領の変遷
※数字は単位数、●は必修科目・○は選択必修科目・[ ]は選択科目 教科書発行の期間の別 は阿武泉の定義による。なお阿武は第6期までしか扱っていないが、便宜上第7期・第8期を加 えた。
国語(甲)$・国語(乙)[2〜6]
・漢文[2〜6]
国語(甲)$・国語(乙)[2〜6]
・漢文[2〜6]
国語(甲)$・国語(乙)[2〜6]
・漢文[2〜6]
現代国語#・古典甲②・古典乙Ⅰ⑤
・古典乙Ⅱ[3]
※現代文と古典の分冊化 現代国語#・古典Ⅰ甲!
・古典Ⅰ乙[5]・古典Ⅱ[3]
※古典必修化
国語Ⅰ"・国語Ⅱ[4]・国語表現[2]
・現代文[3]・古典[4]
※単位数減少
国語Ⅰ"・国語Ⅱ[4]・国語表現[2]
・現 代 文[4]・現 代 語[2]・古 典Ⅰ
[3]・古典Ⅱ[3]古典講読[2]
国語総合④・国語表現Ⅰ②
・国語表現Ⅱ[2]・現代文[4]
・古典[4]・古典講読[2]
国語総合"・国語表現[3]
・現代文A[2]・現代文B[4]
・古典A[2]・古典B[4]
4月:新制高等学校の教科課程に関す る件(23年改正・24年一部改正)
7月:学習指導要領(試案)(27年補訂)
12月:学習指導要領改訂(33年再訂)
10月:学習指導要領改訂:教育課程の 基準としての性格の明確化(基礎学力 の充実・系統的学習の重視)
10月:学習指導要領改訂:教育内容の 一層の向上、教育内容の現代化
8月:学習指導要領改訂:ゆとりある 充実した学校生活の実現、学習負担の 適正化
3月:学習指導要領改訂 社会の変化 に対応できる心豊かな人間の育成
3月:学習指導要領改訂 基礎・基本 を身に着け「生きる力」を育成する
3月:学習指導要領改訂 「思考力・
判断力・表現力」の育成 昭和22
23年実施 昭和26 26年実施 昭和30 31年実施 昭和35 38年実施
昭和45 48年実施
昭和53 57年実施
平成元 6年実施
平成11 15年実施
平成21 25年実施 第1期
第2期
第3期
第4期
第5期
第6期
第7期
第8期
63
国語教科書と能楽(続)指 導 要 領 で あ る 昭 和 二 十 六 年 度 の
﹃ 学 習 指 導 要 領 試 案
﹄︵ 以 下
﹁ 二 十 六 年 度 試 案
﹂︶ で は
︑ 経 験 主 義 が さ ら に 徹 底 さ れ
︑ 多 様 な 言 語 活 動 に よ る 授 業 展 開 が 提 示 さ れ て い る
︒ 本 書 は
﹁ 高 等 学 校 の 国 語 科 の 単 元 の 例
﹂ に 一 章 を 割 き
︑ 第 一 学 年 の 例 と し て
﹁ 古 典 は わ れ わ れ の 生 活 と ど ん な つ な が り が あ る か
﹂ を 掲 げ て い る︵ 資 料
③
︶︒ こ こ で は
︑ 単 元 設 定 の 理 由 に
﹁ 古 典 の 持 つ 価 値 を 現 代 に 生 か す
﹂ こ と を 挙 げ
︑ ク ラ ス や グ ル ー プ を 単 位 に し た 討 議︵ パ ネ ル デ ィ ス カ ッ シ ョ ン
・ フ ォ ー ラ ム デ ィ ス カ ッ シ ョ ン
︶や
︑ 図 書 館 や 博 物 館
︑ ラ ジ オ 放 送 や 映 画 な ど を 用 い た 調 査 研 究
︑ 手 紙
・ エ ッ セ イ
・ 批 評 の 執 筆 や
︑ 演 劇
・ シ ナ リ オ の 作 成 な ど 三 十 を こ え る 学 習 活 動 の 例 が 示 さ れ て い る
︒ こ の 指 導 要 領 の 記 載 を 受 け て
︑ 教 科 書 は 多 様 な 活 動 を 支 え る 豊 富 な 教 材 を 収 録 し
︑ 単 元 学 習 を 念 頭 に お い た 構 成 を 取 っ て い る
︒ 例 え ば
︑ 垣 内 松 三 編
﹃ 高 等 新 国 語 三 上
﹄︵ 光 村 図 書
︑ 昭 和 二 八
︶は
﹁ 単 元 四 歌 謡 と 演 劇
﹂ に
﹁︵ 一
︶一 つ 松︵ 記 紀 歌 謡
︑﹃ 梁 塵 秘 抄
﹄︑ 北 原 白 秋 作 の 歌 謡 十 篇 を 収 録 し た も の
︶︵ 二
︶歌 謡 史 に つ い て︵ 藤 田 徳 太 郎
︶︵ 三
︶羽 衣︵ 世 阿 弥 元 清
︶︵ 四
︶鷹 の 井 戸︵ ウ イ リ ア ム
=
バ ト ラ=
イ エ ー ツ︒ 松 村 み ね 子 其 他 共 同 訳
︶﹂ の 四 篇 を 掲 げ る
︒ こ の う ち︿ 羽 衣
﹀﹃ 鷹 の 井 戸
﹄ に つ い て は
︵ 三
︶は
︑ 謡 曲 中
︑ き わ め て 名 高 い も の の 一 つ
︑ 羽 衣 の 原 文 で
︑ そ の 形 式 や 文 学 表 現 な ど を 調 べ る 資 料 に し た
︒
︵ 四
︶は
︑ 日 本 の 謡 曲 に 影 響 を 受 け た 外 国 の 演 劇 の 一 例 を 掲 げ た の で
︑ こ の 一 例 を 見 て も
︑ 歌 謡 と 演 劇 の つ な が り が 理 解 さ れ る
︒ と 記 し
︑ 学 習 活 動 と し て
﹁ 一 般 の 演 劇 と 能 と 比 較 し
︑ そ の 特 色 を 理 解 す る
︒﹂
﹁ 能 と 似 通 っ て い る と こ ろ は
︑ ど こ か
︒ 歌 舞 伎 と 能 と の 似 通 っ て い る と こ ろ は
︑ ど こ か
︒ 一 般 演 劇 と 能 と 違 っ て い る と こ ろ は
︑ ど こ か
︒﹂ 等 を 挙 げ る
︒ ま た
﹇ 内 省
﹈ と い う 項 目 に 生 徒 同 士 の デ ィ ス カ ッ シ ョ ン の 様 子 を 例 示 す る
︒ D
﹁﹃ 羽 衣
﹄ の 能 が 見 た い と 思 い ま す
︒ ど ん な に 美 し く
︑ ど ん な に 整 え ら れ た 世 界 か と 思 い ま す
︒ 物 語 の 筋 は
︑ き わ め て 単 純 で
︑ わ た し た ち に は
︑ あ ま り 興 味 も あ り ま せ ん が
︑ あ の 話 を
︑ い か に 動 き と し て 結 晶 さ せ る か
︑ い
資 料
③﹁ 古 典は われ わ れの 生 活と どん な つな がり が ある か
﹂︵ 抄出
︶
︵ 一
︶ 単 元 設 定 の 理 由 古 典 は 古 く し て し か も 新 し い
︒ 古 典 に は わ れ わ れ の 祖 先 の さ ま ざ ま の 生 活 が く り ひ ろ げ ら れ て い る
︒ 古 典 を 読 み 味 わ う こ と に よ っ て
︑ わ れ わ れ は 祖 先 が ど の よ う に 感 じ
︑ 考 え
︑ 生 活 を し て い た か を 理 解 し
︑ や が て わ た く し た ち の 生 活 を 豊 か な よ り 高 い 深 い も の に し て い く こ と が で き る
︒ 古 典 の 読 み 方 を 学 習 し て
︑ 古 典 に 親 し み を 持 ち
︑ わ れ わ れ の 生 活 と ど ん な つ な が り が あ る か を 考 え
︑ 古 典 の 持 つ 価 値 を 現 代 に 生 か す よ う に 心 が け る こ と は
︑ 人 間 形 成 の 上 に 必 要 な こ と で あ る
︒
︵ 二
︶ 目 標 1 古 典 と 自 分 た ち の 生 活 と の つ な が り に つ い て 学 ぶ
︒ 2 古 典 を と お し て 過 去 の 時 代 と 過 去 の 人 々 の 生 活 を 理 解 す る
︒ 6 わ れ わ れ の 生 活 に も 役 に た つ い ろ い ろ な 性 格 や 行 為
︑ た と え ば
︑ 正 直
・ 勇 気
・ 親 切
・ ユ ー モ ア
・ 公 平
・ 思 い や り な ど の 例 を 古 典 の 中 に 見 つ け だ し
︑ そ れ に つ い て 反 省 し た り
︑ 討 議 し た り す る
︒ 13
ラ ジ オ 台 本 や 劇 に し く む こ と に よ っ て
︑ 自 己 を 発 表 す る 能 力 を 高 め る
︒ 15
ク ラ ス で の 討 議
︑ 小 さ い グ ル ー プ で の 討 議
︑ パ ネ ル‐ デ ィ ス カ ッ シ ョ ン
・ フ ォ ー ラ ム‐ デ ィ ス カ ッ シ ョ ン
︑ 会 見 や 朗 読 に
︑ 効 果 的 に 参 加 す る 能 力 を 高 め る
︒ 17
自 分 の 意 見 や 思 想 や 感 情 を 手 紙
・ 論 文
・ ラ ジ オ 台 本
・ 劇 や 対 話 な ど に 表 現 す る 能 力 を 高 め る
︒
︵ 三
︶ 内 容 3 次 の よ う な 事 が ら に 基 い て
︑ 研 究 し た り
︑ 討 議 し た り
︑ 話 し 合 っ た り
︑ 報 告 し た り
︑ パ ネ ル‐ デ ィ ス カ ッ シ ョ ン を し た り
︑ そ の 他
︑ 興 味 の
あ る 学 習 活 動 を す る
︒ 5 古 典 の 学 習 に 基 い て
︑ 手 紙 や エ ッ セ イ や 劇 や シ ナ リ オ な ど を 書 い て み る
︒ 6 話 す こ と を 古 典 の 学 習 に 基 い て 行 っ て み る
︒ た と え ば
︑ 劇 を し た り
︑ 朗 読 を し た り
︑ ク ラ ス の 前 に 出 て 話 を し た り
︑ 物 語 を し た り
︑ 性 格 を 述 べ た り
︑ 美 し い 文 章 を 暗 誦 し た り
︑ フ ォ ー ラ ム を 聞 い た り
︑ そ の 他
︑ 話 す こ と の い ろ い ろ な 学 習 活 動 を 行 っ て み る
︒
︵ 四
︶ 予 想 さ れ る 学 習 活 動 17
博 物 館 に 見 学 に 行 っ て
︑ 古 典 の 物 語 に 関 係 す る 時 代 に 発 達 し た 道 具 や 器 械 や 美 術 品 を 研 究 す る
︒ 18
古 典 文 学 に 関 す る 学 校 放 送 が あ る と き に は
︑ ク ラ ス の す べ て に 聞 か せ る
︒ 放 送 局 か ら 発 行 さ れ る 解 説 書 に 基 い て
︑ 準 備 の た め の 学 習 を す る
︒ お と な 向 き の ラ ジ オ の 番 組 で あ っ て も
︑ ク ラ ス の 学 習 に 役 だ つ よ う に く ふ う す る こ と は 必 要 で あ る
︒ 19
学 校 の 文 芸 雑 誌 に
︑ 読 ん だ 古 典 に つ い て の 批 評 を 発 表 す る
︒ 27
学 級 で 選 ん だ 題 目 に つ い て
︑ フ ォ ー ラ ム‐ デ ィ ス カ ッ シ ョ ン や 円 卓 で の 討 議 を 行 う
︒ 28
学 級 で の 研 究 に 基 い て
︑ 生 徒 が め い め い エ ッ セ イ を 書 く よ う に さ せ る
︒ す べ て 書 く こ と の 作 業 で は
︑ 文 章 の 正 し さ や 文 体 や 形 式 に つ い て 特 に 気 を つ け さ せ る
︒ 時 々 は
︑ 作 文 に つ い て
︑ 教 え る こ と も 必 要 で あ る
︒ 31
友 だ ち へ
︑ 手 紙 で 古 典 を 読 ん だ こ と に つ い て の 経 験 や 感 想 を 書 い て 送 る
︒ 32
物 語 に 出 る 人 物 や そ の 物 語 の 著 者 に か り に な ら せ て
︑ そ れ に 対 す る イ ン タ ー ビ ュ ー を 行 う
︒ 36
学 習 活 動 の 終 り ご ろ に
︑ 古 典 に 取 材 し た 劇 を 生 徒 が 脚 色 し て
︑ 全 学 校 生 徒 の 前 で
︑ あ る い は ほ か の 二
︑ 三 の 学 級 の 人 々 の 前 で 演 じ て み る
︒
65
国語教科書と能楽(続)か に 音 曲 に よ っ て 色 づ け う る か が 知 り た い の で す
︒ で き る だ け 簡 素 化 さ れ た 人 間 の 姿
︑ 人 間 の 対 話
︑ 感 情 の 表 現 と い う も の が 見 た い の で す
︒﹂ C
﹁ 日 本 の 能 が 外 国 に ま で 影 響 を 与 え た と い う こ と を
︑ 今 度 初 め て 知 り ま し た
︒ そ ん な に 大 き な 影 響 と は 思 い ま せ ん が
︑ し か し
︑ こ の
﹃ 鷹 の 井 戸
﹄ を 見 ま す と
︑ た し か に そ れ が わ か り ま す
︒ し か し
︑ こ の 渋 さ と 地 味 な よ さ は
︑ 日 本 人 つ ま り 東 洋 人 に は 親 し い 世 界 で す が
︑ こ の ま ま は た し て 西 洋 人 に 受 け ら れ る も の で し ょ う か
︒ あ ち ら で 普 及 す る 可 能 性 が あ る も の な の で し ょ う か
︒﹂ A
﹁ こ れ は 大 き な 問 題 だ と 思 う
︒ と う て い ぼ く た ち に は 解 決 で き る 問 題 と は 思 わ な い が
︑ し か し
︑ 日 本 文 化 と い う も の を 少 し で も 世 界 の 人 た ち に 理 解 し て も ら う た め に は
︑ こ れ は よ く 考 え て お か な く て は な ら な い
︒ 日 本 が 文 化 国 家 と し て 世 界 的 に 地 位 を 占 め る と 云 う 念 願 を 持 つ 以 上
︑ ど う し て も
︑ 日 本 人 だ け が ひ と り よ が り し て い る 時 代 で は な い と 思 う
︒﹂ B
﹁ と い っ て も
︑ 日 本 独 特 の よ さ
︑ 特 色 と い う も の を 発 散 さ せ て し ま っ て
︑ た だ 諸 外 国 の 人 々 に 理 解 し て も ら う た め に
︑ 歩 調 を 合 わ せ た り
︑ こ び た り す る 態 度 は 毛 頭 と る 必 要 は な い
︒ そ れ は か え っ て
︑ 日 本 文 化 を 低 く す る こ と に な り
︑ 世 界 の 文 化 寄 与 に は 役 立 た な い と 思 う
︒﹂
︵ 以 下 略
︶ 右 は
︑ 表 向 き は 能 と 歌 謡 や
﹃ 鷹 の 井 戸
﹄ と の 比 較 に よ っ て 日 本 文 化 の 特 徴 を 考 え さ せ る も の だ が
︑ そ の 背 景 に は 能 が 外 国 演 劇 に ま で 影 響 を 及 ぼ す 存 在 で あ る こ と を 示 し
︑ 文 化 国 家 と し て 再 出 発 を 図 る 日 本 を 象 徴 す る 存 在 と し て 能 を 位 置 づ け よ う と す る 意 図 が 透 け て み え る
︒ 実 際
﹁ 二 十 六 年 度 試 案
﹂ は
﹁ 国 語 学 習 指 導 の 一 般 目 標
﹂ を
﹁ 国 語 の 学 習 指 導 は
︑ 全 体 の 教 育 の 一 環 と し て
︑ 民 主 的 な 社 会 を 作 り
︑ 国 際 的 理 解 と 親 善 を 増 し
︑ 国 民 道 徳 を 高 め る こ と に 寄 与 す る よ う
︑ 常 に 心 が け て い な け れ ば な ら な い
︒﹂ と 規 定 し て お り
︑ 教 科 書 に つ い て は
教 科 書 の 検 定 制 度 が 実 施 さ れ て
︑ 教 科 書 が 自 由 に 作 ら れ る よ う に な っ た
︒ 教 科 書 の 著 者 は 教 科 書 を 作 る 場 合
︑ す で に 一 般 に 認 め ら れ た 理 論 に 基 い て 作 ら ね ば な ら な い が
︑ そ の 理 論 の 多 く は
︑ 本 書 に 示 さ れ て い る
︒ 検 定 基 準 に よ れ ば
︑ 国 語 科 の 教 科 書 は
︑ 他 の 教 科 に お け る と 同 様
︑ こ の 学 習 指 導 要 領 に よ る こ と に な っ て い る が
︑ そ れ は 教 科 書 を
︑ こ こ に 示 さ れ た こ と に 完 全 に 一 致 さ せ な け れ ば な ら な い と い う わ け で は な い
︒ と 指 摘 し
︑ 強 制 力 が な い こ と を 示 し な が ら も そ の 趣 旨 に 沿 う べ き こ と を 求 め て い る
︒︵
11
ま︶
た 佐 野 幹 の 指 摘 に よ れ ば
︑ 教 科 書 検 定 が 再 開 さ れ た 初 年 度︵ 昭 和 二 十 四 年 度
︶に お け る 教 科 書 全 体 の 合 格 率 は 三 割 ほ ど に 過 ぎ ず
︑ 高 等 学 校 国 語 教 科 書 に 至 っ て は 三 十 一 件 の 申 請 に 対 し 合 格 は 僅 か 一 件 の み だ っ た と い う
︒ こ う し た 事 実 か ら は 教 科 書 の 編 纂 は 指 導 要 領 を 通 じ て 文 部 省 の 意 向 が 強 く 反 映 さ れ た と み る こ と が で き る だ ろ う
︒ か つ て 戦 時 下 に お い て 能 は
︑ 古 典 教 材 の 一 部 と し て
﹁ 皇 国 文 化 ノ 創 造
﹂ へ の 貢 献 が 求 め ら れ た
︒ 終 戦 に よ っ て 民 主 主 義
・ 平 和 主 義 を 掲 げ る 国 家 へ と 変 貌 し た こ と で
︑ 日 本 文 化 を 代 表 す る 存 在 と し て
﹁ 世 界 の 文 化 寄 与
﹂ が 求 め ら れ た の で あ る
︒︵
12
田︶
村 景 子 は
︑ こ う し た 考 え が 能 や 演 劇 に 携 わ る 人 々 に よ っ て 唱 え ら れ
︑ 広 く
﹁ 民 主 主 義
﹂ 下 の 知 識 人 や 大
カ ノ ン
衆 に 支 持 さ れ た こ と を 指 摘 し て い る が
︑ 国 語 教 科 書 も ま た
﹁ 文 化 国 家 の 古 典
﹂ 形 成 の 一 役 を 担 わ さ れ て い た の で あ る
︒
︵ 13
な︶
お
︑ 能 と 外 国 文 学 を 同 一 単 元 に 配 す る 例 は ほ か に も あ り
︑﹃ 新 編 国 語︵ 改 訂 版
︶文 学 三
﹄︵ 大 阪 教 育 出 版
︑ 昭 和 三 二
︶が
︿ 俊 寛
﹀﹃ 年 来 稽 古
﹄ と と も に 近 松 門 左 衛 門
﹃ 丹 波 与 作 待 夜 の 小 室 節
﹄ と シ ェ ー ク ス ピ ア の
﹃ ヴ ェ ニ ス の 商 人
﹄ を 載 せ た ほ か
︑﹃ 新 国 語 三 訂 版 文 学 三
﹄︵ 三 省 堂
︑ 昭 和 三
〇
︶は
﹁ 芸 術
﹂ と い う 単 元 に お い て 阿 部 次 郎
﹁ 芸 術 の た め の 芸 術 と 人 生 の た め の 芸 術︵
﹃ 三 太 郎 の 日 記
﹄︶
﹂
︑ 津 村 秀 夫
﹁ 映 画 の 魅 力 に つ い て
﹂︑ オ ー ギ ュ ス ト
・ ロ ダ ン
﹁ ロ ダ ン の 遺 言
﹂ と︿ 隅 田 川
﹀﹃ 風 姿 花 伝
﹄ を 配 し
︑﹃ 国 語 三 高 等 学 校 用
﹄︵ 教 育 図 書
︑ 昭 和 三 二
︶で は
︑ 井 島 勉
﹁ 美 と 芸 術
﹂︑ ベ ー ト ー ベ ン
﹁ 音 楽 に つ い て
﹂︑ 岡 崎 義 恵
﹁ 日 本 的 な 美 に つ い て
﹂ と と も に
﹃ 風 姿 花 伝
﹄ を 載 せ て い る
︒
67
国語教科書と能楽(続)一 方
﹁ 二 十 六 年 度 試 案
﹂ は ま た
︑ 古 典 よ り も 現 代 文 学 の ほ う が 生 徒 に と っ て 興 味 も あ る し
︑ 能 力 に も 合 っ て い る か ら
︑ 国 語 の 教 育 課 程 の 中 で は
︑ 後 者 の ほ う が も っ と 重 要 な 地 位 を 占 め よ う と し て い る
︒ け れ ど も 古 典 の 学 習 指 導 を 捨 て て は な ら な い
︒ 多 く の り っ ぱ な
︑ 価 値 あ る 作 品 が 過 去 に お い て 書 か れ て き て お り
︑ そ れ を 読 解 す る 力 が つ け ば
︑ そ の 読 書 は 楽 し い も の で あ る ば か り で な く
︑ わ れ わ れ の 祖 先 の 生 活 や 精 神 が 理 解 さ れ る
︒ 古 典 の 学 習 が 不 要 な の で は な く て
︑ 国 語 教 育 を 古 典 に 限 る こ と が 狭 い と い う の で あ る
︒ と 指 摘 し
︑﹁ 中 学 校 の 国 語 教 育 は 古 典 の 教 育 か ら 解 放 さ れ な け れ ば な ら な い
﹂ と 述 べ て い た
﹁ 二 十 二 年 度 試 案
﹂ の 表 現 を 幾 分 柔 ら か く 改 め て い る
︒ ま た 末 尾 の 付 表
﹁ 資 料 と し て の 図 書 一 覧 表
﹂ に も
﹁ 古 典 学 習 の た め の 資 料
﹂ と し て
﹁ 記 紀 歌 謡
・ 万 葉 集
・ 古 今 和 歌 集
・ 新 古 今 和 歌 集
・ 西 行
・ 実 朝
・ 曙 覧
・ 言 道
・ 良 寛
・ 芭 蕉
・ 蕪 村
・ 一 茶
・ 竹 取 物 語
・ 伊 勢 物 語
・ 源 氏 物 語
・ 土 佐 日 記
・ 更 級 日 記
・ 枕 草 子
・ 徒 然 草
・ 字 治 拾 遺 物 語
・ 今 昔 物 語
・ 大 鏡
・ 平 家 物 語
・ 奥 の 細 道
・ 三 冊 子
・ 去 来 抄
・ 西 鶴 諸 国 咄
・ 日 本 永 代 蔵
・ 世 間 胸 算 用
・ 近 松 の 浄 瑠 璃 作 品
・ 玉 勝 間
・ 雨 月 物 語
﹂ な ど と 並 ん で
﹁ 謡 曲
・ 狂 言 な ど の 適 当 な 部 分 お よ び そ の 注 釈 書
︒﹂ が 掲 げ ら れ た
︒ こ れ ら は 実 質 的 な 教 材 例 を 示 し た も の と い え
︑ 多 く の 教 科 書 が こ れ を 踏 ま え て 能 を 教 材 に 採 用 し た の で あ ろ う
︒ そ の 後 単 元 学 習 は 学 力 低 下 を 招 く と い う 批 判 を 受 け
︑ 昭 和 三 十 一 年 の 学 習 指 導 要 領 改 訂 で は
︑ 学 問 の 系 統 を 重 視 し 基 礎 学 力 の 定 着 を 図 る
﹁ 系 統 主 義
﹂ へ の 転 換 が 図 ら れ た
︒ 1 言 語 文 化 を 広 く 深 く 理 解 で き る よ う に
︑ 読 解 力 を 豊 か に し
︑ 特 に 鑑 賞 力 や 批 判 力 を 伸 張 さ せ
︑ そ の 読 解 の 範 囲 も
︑ 現 代 文 と 並 ん で 古 文 や 漢 文 に ま で 拡 充 さ せ る
︒︵ 略
︶ 3 こ と ば の 理 解 や 表 現 を よ く 意 識 し て 正 確 な も の と す る た め に
︑ ま た 現 在 お よ び 将 来 に も 必 要 な 国 語 の 教 養 を
高 め る た め に
︑ 各 種 の 言 語 知 識 を 身 に つ け さ せ る
︒
︵﹃ 昭 和 三 十 一 年 度 学 習 指 導 要 領 改 訂 版
﹄︶ 右 改 訂 で は
︑ 読 解 力 の 養 成 や 言 語 知 識 の 獲 得 と い っ た 点 が 重 視 さ れ た
︒ こ れ に よ っ て
︑ 教 材 例 に は
﹁ 謡 曲
・ 狂 言
・ 近 松 の 浄 瑠 璃 な ど の 戯 曲 類
﹂ に 加 え
﹁ 花 伝 書
・ 三 冊 子
・ 去 来 抄
・ 源 氏 物 語 玉 の 小 櫛 な ど に あ る 評 論 類
﹂ が 新 た に 加 え ら れ た
︒ さ ら に 昭 和 三 十 五 年 の 改 訂 で 国 語 は 現 代 国 語 と 古 典 に 分 割 さ れ た が
︑ 新 設 さ れ た
﹁ 古 典 甲
・ 古 典 乙
Ⅰ
﹂︵ い ず れ か を 選 択 必 修
︶は と も に
﹁ 謡 曲
︑ 狂 言
︑ 戯 曲
﹂ を 教 材 例 に 掲 げ て い る
︒ こ の
﹁ 二 十 二 年 度 試 案
﹂ か ら
﹁ 三 十 五 年 度 改 訂
﹂ ま で は 一 貫 し て 能︵ 謡 曲
︶・ 狂 言 が 学 習 指 導 要 領 に 教 材 例 と し て 示 さ れ て お り
︑ そ の 結 果 多 く の 教 科 書 に 採 録 さ れ て い る︵ 付 表 1
・ 資 料
④ 参 照
︶︒
三
︑ 教 材 の 精 選 と 固 定 化 の 影 響
︱ 附 能 楽 論 書 の 動 向
戦 後 国 語 教 科 書 の デ ー タ ベ ー ス 化 を 行 っ た 阿 武 泉 は
︑ 古 文 の 教 材 の 変 遷 に つ い て 以 下 の よ う に 指 摘 す る
︒ 4 期︵ 注
=
昭 和 四 十 五 年 改 訂 以 後︶に
︑ 作 品 数
︑ 作 品 種 類 が と も に 大 き く 減 少 し た
︒ 上 位 10
作 品 も
︑ ひ と し な み に 減 少 し て い る
︒ こ れ は
︑ 指 導 要 領 の 改 訂 に よ る 必 修 単 位 の 減 少 が
︑ 作 品 を 精 選 さ せ た た め で あ る
︒ な か で も
︑
﹁ 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 国 語 編
﹂ に お い て
︑ 教 材 ジ ャ ン ル の 例 か ら 外 さ れ た
﹁ 謡 曲
・ 狂 言
・ 戯 曲 な ど
﹂ は
︑ 以 後 急 速 に 収 録 数 を 減 ら し て い く
︒ ジ ャ ン ル 別 に 見 る と
︑ 最 も 多 い の は 随 筆
・ 評 論 で 23
・ 6
% で あ る
︒ 上 記 の
﹁ 芸 能
﹂ の 減 少 以 外 に
︑ ジ ャ ン ル の 割 合 の 変 動 は あ ま り 見 ら れ な い
︒ 説 話 は や や 増 加 傾 向 で あ る
︒
︵︵
14
阿︶
武 泉
﹁ 戦 後 高 等 学 校 国 語 科 教 科 書 教 材 の 変 遷 全 教 材 リ ス ト 作 成 を と お し て
﹂︶ 昭 和 四 十 五 年 度 の 学 習 指 導 要 領 改 訂 で は
︑ 必 修 教 科 で あ っ た
﹁ 古 典
Ⅰ 甲
﹂ の 教 材 例 か ら
﹁ 謡 曲
︑ 狂 言
︑ 戯 曲
﹂ の 文 言