﹁ 共 同 し て 相 互 に そ の 事 業 活 動 を 拘 束 し
﹂ 要 件 に 係 る 人 為 性
││ 最近 の判 決・ 行政 処分 から
││
徳 力 徹 也
一 は じ め に︵ 課題 の設 定・ 検討 対象 の特 定等
︶ 二 基礎 的な 確認 三 入札 談合 事案 での
﹁人 為性
﹂ 四
﹁… 旨の 合意 の下
﹂類 型の 一般 化 五 結 論 六 お わ り に 一 は じ め に︵ 課題 の設 定・ 検討 対象 の特 定等
︶
⑴ 本稿 の主 たる 課題 は、
﹁﹃ 共同 して 相互 にそ の事 業活 動を 拘束 し﹄︵ 独占 禁止 法二 条六 項︶ 要件 に該 当す る事 実 は、 どの よう なも のか
﹂を 最近 の判 決・ 行政 処分 を対 象と して 考え るこ とで ある
。
﹁共 同し て相 互に その 事業 活動 を拘 束し
﹂要 件の 内容 は、
﹁一 定の 行動 を採 る旨 の相 互認 識・ 認容 の存 在を 人為 的 に作 り出 す、 又は 確認 維持 する こと
﹂で ある
。﹁ 相互 認識
・認 容の 存在
﹂の みな らず
、こ れに 係る 何ら かの
﹁人 為 性﹂ が必 要と なる
。﹁ 人為 性﹂ の典 型ケ ース は、 事業 者が 会合
・電 話連 絡等 で相 互認 識・ 認容 の内 容︵ 価格
、基 本ル ール 等︶ につ いて 情報 交換 を行 うこ とで ある
。し かし
、﹁ 人為 性﹂ とさ れる 事実 は、 この よう な典 型ケ ース に限 ら
れな いと され る。 それ では
、相 互認 識・ 認容 の内 容に 関す る情 報交 換を 伴わ ない もの で﹁ 人為 性﹂ に該 当す る事 実 は、 どの よう なも ので ある か。 本稿 では
、① 入札 談合 事案
︵﹁
…旨 の合 意の 下﹂ 類型
︶に 係る 最近 の判 決・ 行政 処分 から
﹁人 為性
﹂と され る事 実 を検 討し
、② その 捉え 方を 価格 協定 事案 等に 一般 化で きる か否 かを 検討 し、
③こ れら を通 じて
﹁人 為性
﹂の 内容 を 改め て検 討し たい
。
⑵ 本稿 の検 討対 象を 限定 して おき たい
。本 稿は
、原 則と して
﹁事 業者
﹂の 行為 を問 題に する
︵法 人の 従業 者等
=
自 然人 の行 為に 係る 問題 を取 り扱 わな い︶。こ のた め、 本稿 は、 主と して 行政 処分
︵排 除措 置命 令、 課徴 金納 付命 令、 これ らに 係る 審決 等︶ 及び 審決 取消 訴訟 判決
︵い ずれ につ いて も、 本稿 執筆 時点 で確 定し たも の︶ を検 討対 象と して 取 り上 げる
︵刑 事判 決に 言及 する こと もあ るが
、こ れを 直接 の検 討対 象と しな い︶
。 また
、本 稿は
、﹁ 共同 して
…… 遂行 する
﹂要 件の 内容 及び これ に該 当す る事 実を 直接 の検 討対 象と しな い︵ しか し、 本稿 の検 討は
、む しろ
、こ れら の点 を議 論す る必 要を 示す こと とな るか もし れな い︶
。
⑶ 本稿 の検 討を 通じ て得 られ る結 論は
、こ れま での 多数 説・ 実務 の考 え方 と大 きく 異な るも ので なく
、現 実の 問題 を解 消す るた めの 新た な道 具を 実務 に付 与す るも ので もな い。 本稿 の検 討意 義が ある とす れば
、最 近の 判決
・ 行政 処分 を通 じて これ まで の議 論を 再確 認す るこ とに とど まる
。
⑷ 筆者 は、 舟田 先生 から 数多 くの 実務 に関 する 指導 を受 けて きた
。ま た、 これ に加 えて
、先 生の お許 しを 得 て、 立教 大学 法学 部で 平成 一七 年度 前期 講義
︵経 済法 を︶ 担当 させ てい ただ いた
。木 々の 緑が 深く なる 時期 に熱 心 な学 生さ んと 話を させ てい ただ くこ とは
、行 政実 務家 にと って 貴重 な経 験と なっ た。 今般 の御 退職 に際 して
、先 生 に対 する 敬意 と感 謝の 気持 ちを 表し たい と考 えて
、拙 い本 稿を 執筆 させ てい ただ いた 次第 であ る︵ しか し、 本稿 は、 先生 の御 指導 を引 き続 き賜 る必 要性 を示 すも のと なっ た︶
。
⑸ なお
、本 稿は
、筆 者の 個人 的見 解で あっ て、 筆者 が属 する 組織
︵公 正取 引委 員会
︶の 考え 方・ 見解 を何 ら表 すも ので はな い。 二 基礎 的な 確認
﹁共 同し て相 互に その 事業 活動 を拘 束し
﹂要 件に 関す る一 般的 判断 基準 につ いて
、基 礎的
・準 備的 な確 認を した い。
⑴ 積層 板価 格協 定事 件審 決取 消訴 訟︵ 東芝 ケミ カル 事件
Ⅱ︶
・東 京高 裁平 成七 年九 月二 五日 判決
︵審 決集 四二 巻 三九 三頁
︶は
、﹁ 共同 して
﹂要 件の 一般 的な 判断 基準 を示 した
。
﹁…
…﹃ 共同 して
﹄に 該当 する とい うた めに は、 複数 事業 者が 対価 を引 き上 げる に当 たっ て、 相互 の間 に﹃ 意思 の連 絡﹄ があ った と認 めら れる こと が必 要で ある と解 され る。 しか し、 ここ にい う﹃ 意思 の連 絡﹄ とは
、複 数事 業者 間で 相互 に同 内容 又は 同種 の対 価の 引上 げを 実施 する こと を認 識な いし 予測 し、 これ と歩 調を そろ える 意思 があ るこ とを 意味 し、 一方 の対 価引 上げ を他 方が 単に 認識
、認 容す るの みで は足 りな いが
、事 業者 間相 互で 拘束 し合 うこ とを 明示 して 合意 する こと まで は必 要で なく
、相 互に 他の 事業 者の 対価 の引 上げ 行為 を認 識し て、 暗黙 のう ちに 認容 する こと で足 りる と解 する のが 相当 であ る︵ 黙示 によ る﹃ 意思 の連 絡﹄ とい われ るの がこ れに 当た る。
︶。
﹂ この
判断 基準 は、 先例 とさ れて
、し ばし ば引 用さ れる
。例 えば
、モ ディ ファ イヤ ー価 格協 定事 件審 決取 消訴 訟・ 東京 高裁 平成 二二 年一 二月 一〇 日判 決︵ 審決 集未 登載
︶や 種苗 価格 協定 事件 審決 取消 訴訟
・東 京高 裁平 成二
〇年 四 月四 日判 決︵ 審決 集五 五巻 七九 一頁 は︶
、上 記を 引用 し、 それ ぞれ の事 案で の当 ては めを 行っ た。 また
、郵 便区 分
機入 札談 合事 件審 決取 消訴 訟Ⅱ
・東 京高 裁平 成二
〇年 一二 月一 九日 判決
︵審 決集 五五 巻九 七四 頁︶ は、 入札 談合 事 案に つい て﹁
…… 東芝 ケミ カル 事件 の判 決で 示さ れた 判断 基準 を一 般的 な基 準と して 本件 に適 用す るこ と自 体は 何 ら差 支え ない もの であ る﹂ 旨を 述べ た︵ ただ し、 同判 決で の﹁ 共同 して 相互 にそ の事 業活 動を 拘束 し﹂ 要件 該当 事実 の 捉え 方に つい ては
、後 記の とお り議 論が ある
。︶
⑵ 石油 価格 協定 事件 刑事 判決
・最 高裁 昭和 五九 年二 月二 四日 判決
︵審 決集 三〇 巻二 三七 頁︶ は、
﹁相 互に その 事 業活 動を 拘束 し﹂ 要件 につ いて
、﹁ その 内容 の実 施に 向け て努 力す る意 思を もち
、か つ、 他の 被告 会社 もこ れに 従 うも のと 考え て、 石油 製品 価格 を各 社い っせ いに 一定 の幅 で引 き上 げる 旨の 協定 を締 結し た…
…か かる 協定 を締 結 した とき は、 各被 告会 社の 事業 活動 がこ れに より 事実 上相 互に 拘束 され る結 果と なる こと は明 らか であ るか ら、 右 協定 は、 独禁 法二 条六 項に いう
﹃相 互に その 事業 活動 を拘 束し
﹄の 要件 を充 足︵ する
﹂︶ との 判断 を示 した
。ま た、 公正 取引 委員 会は
、例 えば
、旧 清水 市発 注工 事入 札談 合事 件審 決取 消訴 訟・ 東京 高裁 平成 一八 年一 二月 一五 日判 決
︵審 決集 五三 巻一
〇〇
〇頁 に︶ おい て、
﹁…
…相 互拘 束に つい ては
、事 業者 間に おい て、 競争 制限 効果 を生 ずる 行動 に歩 調を 合わ せ、 若し くは
、競 争制 限効 果を 生じ る規 範に 従う 意思 を相 互に 有す るこ とで 足り
︵る
﹂︶ と主 張し た。
⑶ 一般 に、 これ らの 判決 等を 踏ま えて
、﹁ 共同 して
﹂要 件と
﹁相 互に その 事業 活動 を拘 束し
﹂要 件に 該当 する 主要 事実 が同 一で ある と解 され てい るか ら、 本稿 は、
﹁共 同し て相 互に その 事業 活動 を拘 束し
﹂要 件を
﹁一 定の 行 動を 採る 旨の 相互 認識
・認 容を 存在 させ る人 為性
﹂で ある と整 理し てお きた い。 この 整理 によ れば
、同 要件 該当 の 観点 から 主張
・立 証さ れる べき 事実 は、
﹁一 定の 行動 を採 る旨 の相 互認 識・ 認容 が存 在す るこ と﹂ と﹁ この 存在 が 何ら かの 人為 性に 基づ くこ と﹂ であ る。
⑷ 前記 積層 板価 格協 定事 件審 決取 消訴 訟判 決は
、事 業者 間に 相互 認識
・認 容が ある こと
︵相 互認 識・ 認容 の存 在︶ を﹁ 共同 して
﹂要 件に 該当 する 事実 であ ると した よう にも 読め る。 しか し、 本稿 は、
﹁共 同し て﹂ 要件 が何 ら
かの 人為 性を 要す ると の立 場を 採用 する こと とし たい
︵こ れは
、多 くの 学説
・実 務が 採用 する 考え 方︵ いわ ゆる
﹁意 思 の連 絡必 要説
﹂︶ であ ると 理解 し(
)( )
てい る
)
。
本稿 は、 この
﹁人 為性
﹂に つい て、 その 内容
・該 当す る事 実を 検討 する
。前 出積 層板 価格 協定 事件 審決 取消 訴訟 判決 は、 相互 認識
・認 容の 存在 を推 認さ せる 間接 事実 の一 つと して 価格 引上 げに 関す る事 前の 情報 交換 を挙 げた と ころ
、こ れは
、﹁ 人為 性﹂ とも 理解 され る。 三 入札 談合 事案 での
﹁人 為性
﹂
⑴ 価格 協定 事案 は、 通常
、会 合・ 電話 連絡 等を 通じ た価 格設 定に 関す る情 報交 換を
﹁人 為性
﹂と する
。例 え ば、 ポリ プロ ピレ ン価 格協 定事 件審 決取 消請 求事 件・ 東京 高裁 平成 二一 年九 月二 五日 判決
︵審 決集 五六
︵二
︶巻 三 二六 頁︶ は、 積層 板価 格協 定事 件判 決を 参照 しつ つ、
﹁他 の事 業者 との 間で 対価 引上 げ行 為に 関す る情 報交 換を し
︵た
﹂︶ こと を﹁ 人為 性﹂ とし た︵ 同判 決は
、﹁ 対価 引上 げに 関す る情 報交 換と いう 不明 朗な 行為 自体 を避 けさ えす れば
、 上記
︵相 互認 識・ 認容 を人 為的 に形 成し たこ と︱ 引用 者︶ の推 認を 受け ない
﹂と の判 断を 述べ た。 既に 指摘 され てい ると お り、 この 事案 で﹁ 対価 引上 げに 関す る情 報交 換﹂ は、 ほと んど 要件 事実 とし て位 置付 けら れて いる
︶。
⑵ 多く の入 札談 合事 案に 係る 判決
・行 政処 分は
、﹁ 一定 範囲 に属 する 個別 物件 につ き一 定の 方法 で受 注調 整す る﹂ 旨の 包括 的・ 基本 的な 相互 認識
・認 容︵ 以下
﹁基 本ル ール
﹂と いう
︶が 存在 した こと に着 目し つつ
、基 本ル ール に関 する 情報 交換 が行 われ たこ とを 認定 して いな い︵ 例え ば、 会合 等の 場に おい て受 注調 整の 方法 を事 前に 話し 合っ て 決定 する など の事 実が 認定 され ない
︶。 それ では
、入 札談 合事 案で
﹁基 本ル ール を存 在さ せる 人為 性﹂ は、 どの よう な事 実と され てい るの か。 この よう な問 題意 識で
、最 近の 判決
・行 政処 分を みて みよ う。
⑶ 入札 談合 事案 に係 る行 政処 分は
、通 常、
﹁…
…旨 の合 意の 下に
、受 注予 定者 を決 定し
、受 注予 定者 が受 注で