% 予審裁判所への附帯私訴の民商事事件性とそれによる訴訟係属(EU 司法裁 判所2015年10月22日判決―Aannemingsbedrijf Aertssen and Aertssen Terrasse-ments, Case C−523/14, ECLI : EU : C : 2015 : 72)
たと主張しており,そうであるとすると,両手続において同一の請求が基礎になっ ている可能性は排除されないとする。さらに,請求の対象の同一性を問題とし, これは訴えの形式的同一性に限定して考えてはならないと付言する。要するに, 上記規則27条適用の要件はすべて満たされているのである(本判決理由第40節∼ 第46節)。 また本判決は,ブリュッセル!規則の重複訴訟係属の規律のメカニズムは単純 な時間的先後関係に基づいていること,同規則27条1項はすべての訴えに関連し ていること,それを適用しないと矛盾判断予防のための並行手続の回避というそ の目的が達成されないこと,予審の結果がどうなるかが不確実であることは,す べての係属中の訴えに内在する問題に過ぎないことを付言する(本判決理由第48 節∼第51節)。 最後に本判決は,ベルギー裁判所への訴訟係属の発生時に関しては,ブリュッ セル!規則30条を指示して,ベルギー法上,A 社には,そのベルギー手続の開始 に際して,事前に訴状を被告に送達する義務があったかが検討されなければなら ないと指摘する。そして,その義務がないのであれば,A 社がその後,文書の被 告への送達を実現するために原告の義務とされる措置を怠らなかったことを前提 として,裁判所への訴状提出時にベルギー手続の訴訟係属が発生するとする(本 判決理由第57節∼第59節)。 4 承認と執行 第34条 裁判は,以下のいずれかのときには承認されない。 1. 承認が,それが主張される加盟国の公序に明らかに反するとき 2.∼4. 省 略 (ブリュッセル!a 規則第45条第1項 a) " EU 法違反の裁判と承認拒絶事由としての公序違反(EU 司法裁判所2015年 7月16日判決―Diageo Brands, Case C−681/13, ECLI : EU : C : 2015 : 47124)
実体規定違反としては,当該ソフィア市裁判所の1989年商標法規定の調和に関 する指令(First Council Directive 89/104/EEC of 21 December 1988 to approxi-mate the laws of the Member States relating to trade marks, OJ L 40, 11.2.1989, p. 1−725)5条3号に関する解釈(所定の行為が商標権侵害ではないとする判断) が誤りであるということが問題となる。しかし,この EU 法の適用の仕方が明白 な誤りであったとしても,上記の公序条項の適用の要件には変わりはない。また, 執行国の裁判所は,他の加盟国の裁判所が EU 法の適用を誤ったと考えたとして も,それだけでは当該の他の加盟国の裁判の承認を拒絶することは許されない(本 判決理由第48節・第49節)。そして,上記指令5条3号の趣旨は,商標制度の領 域における加盟国の不統一な法規定の部分的な近接化を対象としつつ,最低限度 の調和をはかろうとの点にある。確かに,この指令の5条によって商標権者に与 えられた権利の執行と同指令7条のこの権利の消尽に関する規定の正しい適用は, 域内市場の機能に対して直接的な影響を及ぼすが,そうであるからといって,こ れらの規定の国内法化の誤りが EU 法秩序の基本的な原則に対する違反となり, それ故に,EU 法秩序と耐え難い程に対立することになるわけではない。以上の ように述べた上で,本判決は,判旨第1点第1段落のように帰結する(本判決理 由第51節・第52節)。 手続保障違反に関しては,本判決はまず,問題の指令には種々の解釈があり, たとえそれが誤りであるとしても,解釈決定を下したブルガリア破毀院を明らか に EU 法に違反したと非難することはできないとする(本判決理由第54節∼第56 節)。また,第1審であるソフィア市裁判所には EU 法の問題に関して付託義務 はないこと,2010年1月11日のその裁判には控訴,さらには場合によっては破毀 院への上訴も可能であったこと,しかし,DB 社はそれをしなかったことを指摘 する(本判決理由第60節∼第62節)。そして,EU 加盟国間での他国の司法に対
25 この指令は,その後,Directive 2008/95/EC of the European Parliament and of the Council of 22 October 2008 to approximate the laws of the Member States relating to trade marks(Codified version)(Text with EEA relevance), OJ L 299, 8.11.2008, p. 25−33によって取って代わられ,さらにそれが,Directive (EU) 2015/2436 of the European Parliament and of the Council of 16 December 2015 to approximate the laws of the Member States relating to trade marks(Text with EEA relevance), OJ L 336, 23.12.2015, p. 1−26によって取って代わられている。
に対して異議を述べることができなかった場合。 その際,これら双方の場合において,それぞれ債務者が遅滞なく行動 することが前提とされる。 " 本条は,第1項によるのよりも緩やかな条件の下に裁判の再審理を可能 とする加盟国の可能性を妨げない。 $ EU 執行名義規則19条の救済手段に課せられる要求等(EU 司法裁判所2015 年12月17日判決―Imtech Marine Belgium, Case C−300/14, ECLI : EU : C: 2015 : 52526) 【判 旨】 !EU 執行名義規則19条・EU 機能条約288条は以下のように解釈される。後者 は,加盟国をして,19条に規定されているような再審理手続を国内法に取り入れ ることを義務付けない。 "EU 執行名義規則19条1項は以下のように解釈される。欠席判決のヨーロッ パ執行名義としての証明の申立てと取り組む裁判官は,その証明を行いうるため に,国内法が,実際上かつ例外なく,この規定にあげられた双方の場合において, そのような裁判の法的かつ事実的な点における完全な再審理を許しており,かつ, それが,争いのない債権に関する裁判に対する救済手段の提起の期間の伸長を, 不可抗力の場合だけではなく,その他の異常な事情が債務者の意思とは関係なく, その者をして,問題の債権に対して異議を述べることを妨げた場合にも認めてい るということを,確認しなければならない。 #EU 執行名義規則6条は以下のように解釈される。何時でも申立てが可能な ヨーロッパ執行名義としての裁判の証明は,裁判官に留保されていなければなら ない。 【事実の概要】 ベルギーに本拠を有する IM 社は,ギリシャに本拠のある RH 社のために様々 な役務給付を行い,その結果,約2万3000ユーロ余の債権を有するに至った。RH
たときは,第16条第2項にあげられた期間の経過後,相手方は発付国の裁 判所にヨーロッパ支払命令の再審理を求める権限を有する。
! 省 略
# 合意管轄条項の不遵守とヨーロッパ支払命令の再審理(EU 司法裁判所2015 年10月22日判決―Thomas Cook Belgium, Case C−245/14, ECLI : EU : C : 2015 : 71527,28) 【判 旨】 EU 督促手続規則20条2項は,以下のように解釈される。それは,基本手続に おいて問題となっているような事情の下において,発付裁判所が不当にも,申立 書の定型書式中の申立人による誤った記載に依拠して自己の管轄を認めたとの理 由によっては,ヨーロッパ支払命令が当該規則に則って有効に送達された相手方 に,裁判所による支払命令の再審理を求めることを認めていない。 【事実の概要】 ベルギーに本拠を置く旅行業者である T−C 社(Thomas Cook)は,オースト リアの T ホテルとの間で,ホテルサービスの提供契約を締結した。T ホテルは, この契約に基づいて提供したサービスに対する対価が未払いになっているとして, 国際裁判管轄の管轄原因として義務履行地を援用しながら,ウィーン地区商事裁 判所に,約1万5000ユーロの金額につき,T−C 社に対するヨーロッパ支払命令 の発付を求める申立てをした。 ウィーン地区商事裁判所が発付したヨーロッパ支払命令は,T−C 社に,EU 督 促手続規則の規定に則って2013年6月12日に送達された。これに対し,T−C 社 は,上記規則所定の故障申立期間(30日)の経過後の同年9月25日に故障を申し 立て,上記支払命令の再審理を求めた。その理由(上記規則20条2項の再審理事 由)の1つとして,T−C 社は,上記契約の約款中にベルギー裁判所の管轄を定 める合意管轄条項があるから,オーストリア裁判所は管轄権を有しないと主張し 27 本判決の詳細については,野村秀敏「合意管轄条項の不遵守とヨーロッパ支払命 令の再審理」国際商事法務45巻12号1798頁以下(2017年)参照。
28 本判決の判例研究として,Gruber, GPR 2016, 152 ; von Hein, RIW 2016, 58 ; Roth, IPRax 2017, 63.
は適用されない。 !" 省 略
$ 国債の転換に関連する訴訟と EU 送達規則(EU 司法裁判所2015年6月11日 判決―Fahnenbrock, Cases C−226/13, C−245/13, C−247/13 and C−578/13, ECLI : EU : C:2015 : 38329) 【判 旨】 EU 送達規則1条1項は以下のように解釈される。基本手続において国債を取 得した私人が発行国に対して提起しているような,占有と所有権の妨害を理由と する補償,契約の履行及び損害賠償を求める訴えは,当該規則の適用範囲に入る。 ただし,それが明らかに民事又は商事事件でない場合は,この限りではない。 【事実の概要】 本件では4つの事件が併合されているが,事実関係はほぼ同様のパターンであ り,問題点もすべてに共通であるので,C−226/13事件の事実の概要のみを紹介 する。 ドイツ居住の F 氏はギリシア国債を取得したところ,その国債は銀行の管理 する振替口座に記帳された。ギリシアは,法律4050/2012により,F 氏に,当該 国債とこれより名目額の相当低い別の国債との転換を申し出たが,この申出が有 効となるためには私人である債権者の明示の同意が必要とされていた。ところが, その同意がないにもかかわらず,ギリシアは,その転換を実行し,F 氏に,振替 口座に記帳されている有価証券の占有を再度与えることはしなかった。そこで, F 氏は,ヴィースバーデン(ドイツ)地裁に,ギリシアを相手取り,占有と所有 権の妨害を理由とする補償,契約の履行及び損害賠償を求めて訴えを提起した。 すると,この訴状のギリシアへの送達手続の枠内において,この訴えが EU 送達 規則1条1項にいう主権の行使の枠内における国家の作為若しくは不作為に関わ るものではないかとの疑問が生じた。ヴィースバーデン地裁はこの問題を EU 司 法裁判所に付託した。
29 本判決の判例研究として,Wagner, EuZW 2015, 636 ; Mankowski, EWiR 2015, 495 ; ders., ZIP 2019, 193 ; Knöfel, RIW 2015, 503 ; Hauser, BKR 2019, 333.
$ 私文書と「裁判外の文書」等(EU 司法裁判所2015年11月11日判決―Tecom Mican and Arias Dominguez, Case C−223/14, ECLI : EU : C : 2015 : 74432)
【判 旨】 !EU 送達規則16条は以下にように解釈される。本条の「裁判外の文書」との 概念は,官庁または公務員によって作成または認証された文書のみならず,外国 に居住する受取人へのその正式な伝達が,民事または商事事件における証明また は権利若しくは請求権の確保のために必要である私文書も含む。 "EU 送達規則は以下のように解釈される。本規則で定められた方式による裁 判外の文書の送達は,申立人が既に,本規則中で規定されていない転達方法,ま たは本規則中で規定された別の転達方法で最初の送達を行っている場合にも適法 である。 #EU 送達規則16条は以下のように解釈される。その適用のためのすべての要 件が満たされている場合,裁判外の文書の送達が国境を越える性格を示し,域内 市場の摩擦のない機能のために必要であるということは,個別事件において再審 理される必要はない。 【事実の概要】 ドイツ法人である M 社は,スペイン法人である T 社と代理商契約を締結した が,2012年に同年末日をもって同契約を打ち切る旨を T 社に通告した。そこで T 社は,2013年11月19日に,ラス・パルマ・デ・グラン・カナリア(スペイン)第 7第1審裁判所の書記官に,M 社に対する,ドイツの管轄官庁を介しての,ス ペイン法に従って T 社に調整金として支払われるべき金額と期限の到来してい る手数料(「調整金」等)の支払を,予備的に会計情報の伝達を求める催告書の 送達を申し立てた。この催告書には,同一の支払催告は,既に,それに公正証書 としての効力を与えるために,スペインの公証人の面前で作成された M 宛ての 別の催告書によってもなされている旨が記載されていた。 書記官は,その枠内で司法共助行為が必要とされる裁判所手続が係属していな いとの理由で上記申立てを却下した。T 社はこれに対して一般異議を申し立て, 裁判外の文書の送達には裁判所手続の係属は要件とならないと主張した。スペイ ン法が調整金について契約終了から1年の消滅時効を規定しているので,T 社は,
M 社に,2013年12月13日,スペインの公証人を介して,調整金等の支払を求め るさらなる催告書を送達した。 2013年12月20日付けの処分で,書記官は一般異議を却下し,私文書は「裁判外 の文書」に該当しえないと指摘した。2014年1月2日,T 社はこの処分に対して 再度の異議を申し立てた。この異議を扱う上記第1審裁判所は,EU 送達規則16 条の意味における「裁判外の文書」の送達に関わる問題を EU 司法裁判所に付託 した。 【解 説】 判旨第1点は裁判外の文書には一定の私文書を含む旨を明らかにしたものであ るが,そのために,本判決はその沿革を重視する。すなわち,ここで問題となっ ている2007年規則には2000年の EU 送達規則が,さらにそれには1997年の条約が 先行していたが,その条約に関する報告書中の註釈によると,「裁判外の文書」 には,「その性質上,受取人に対して公式な手続によって送り届け,または知ら せることが正当とされる私文書」も含むをされていたことを指摘する。そして, 条約は批准されなかったが,条約の成果を確保するために制定された2000年規則 の起草の基礎として活用された旨を指摘し,判旨第1点の結論を導くのである(本 判決理由第39節∼第41節)。 判旨第2点は,既に別個の転達方法で送達が1回行われている場合にも,EU 送達規則による裁判外の文書の送達を適法に行いうる旨を確認したものである。 本判決はまず,最初の送達が EU 送達規則で定める転達方法以外の方法で行われ た場合を問題とする。そして,同規則1条1項の「民事又は商事事件に関し,裁 判上及び裁判外の文書が,ある加盟国から他の加盟国へ,送達目的で転達される 場合に適用される。」との文言と,加盟国間の文書の送達に同規則が適用されな い例外は,受取人の住所・常居所が知れない場合,受取人が法廷地国における送 達代理人を選任した場合の2つだけであるとした先例(Judgment of 19 Decem-ber 2012, Adler, C−325/11, EU : C : 2012 : 824, para. 2433)を引用して,ここで問
題としている場合には,これらの例外には該当しないと説く(本判決理由第49節 ∼第52節)。次に,最初の送達が EU 送達規則の定める方法で行われた場合を問
33 この判決の詳細については,野村秀敏「擬制的内国送達と EC 送達規則」国際商 事法務41巻9号1371頁以下(2013年)参照。
の加盟国の領域に所在する債務者の財産にのみ及ぶ。 #$ 省 略 第27条〔手続の開始〕 ある加盟国の裁判所によって,他の加盟国の裁判所 によって承認される第3条第1項による手続(主倒産手続)が開始された ときは,第3条第2項により管轄のある当該の他の加盟国の裁判所は,…… 付随的倒産手続を開始することができる。その効果は,当該の他の加盟国 の領域に所在する債務者の財産に限られる。 (2015年 EU 倒産手続規則第2条第9号()')))・第3条第2項・第34条) & 2次的倒産手続が開始されている場合における付随的訴訟手続に関する管轄 と準拠法(EU 司法裁判所2015年6月11日判決―Comité d’entreprise de Nortel Networks and Others, Case C−649/13, ECLI : EC : C : 2015 : 83435,36)
【判 旨】 !2000年 EU 倒産手続規則3条2項・27条は以下のように解釈される。2次的 倒産手続の開始加盟国の裁判所は,債務者のどの財産目的物がこの2次的倒産手 続の効力に服するかの決定に関して,主倒産手続の開始国の裁判所と選択的に, 国際裁判管轄権を有する。 "2次的倒産手続に服する債務者の財産目的物の決定は,EU 倒産手続規則2 条 g の規定に沿って行われなければならない。 【事実の概要】 カナダに所在する NNL 社は N グループに属する多数の子会社を傘下に収めつ つ,世界的な規模で通信機器製造等の事業を展開する会社であるが,NNL の子 会社の研究・開発活動に係る大部分の知的財産権は,主として北アメリカにおい 35 本判決の詳細については,野村秀敏「二次的倒産手続が開始されている場合にお ける付随的訴訟手続に関する管轄と準拠法」国際商事法務45巻1号114頁以下(2017 年)参照。 36 本判決の判例研究ないし本判決を契機とする論文として,Baumert, LMK 2015, 371693 ; Schulz, EuZW 2015, 596 ; J. Schmidt, EWiR 2015, 515 ; Piekenbrock, KTS 2015, 379 ; Fehrenbach, NZI 2015, 667 ; Hübler, NZI 2015, 689 ; Thomale, IPRax 2016, 558 ; Hergenröder, WuB 2016, 184 ; Swierczok, WuB 2015, 677.
ECLI : EC : C : 2015 : 80637) 【判 旨】 !2000年 EU 倒産手続規則4条は以下のように解釈される。その財産に関して ドイツにおいて倒産手続が開始されたイングランドまたはウェールズ法の会社の 業務執行者に対し,この会社の倒産管財人が,有限責任会社法64条2項1文に基 づいて,その業務執行者が倒産手続開始前であるが支払不能の発生時後に行った 支払の返還を求めるドイツ裁判所の面前の訴えは,同条の適用範囲に入る。 "EU 機能条約49条・54条は,その財産に関してドイツにおいて倒産手続が開 始されたイングランドまたはウェールズ法の会社の業務執行者に対する,有限責 任会社法64条2項1文のような国内規定の適用の妨げとはならない。 【事実の概要】 MD 社はカーディフ(イギリス)で登記された有限責任の私会社であり,ドイ ツでその営業活動の本質的な部分を行って,イエナの登記簿に登記されているが, エアフルト区裁判所で倒産手続の開始決定を受けて,D 氏が管財人に選任された。 D 氏は,MD 社の業務執行者である K 夫人が同社が支払不能となった後,倒産 手続開始前の時期に,MD 社の負担で約11万ユーロの支払を行ったと主張して, ドイツ有限責任会社法64条(会社が支払不能となった場合の業務執行者の倒産手 続の開始申立義務〔1項1文〕と,その後に行われた支払の会社への返還義務〔2 項1文〕を定める。ただし,2008年に1項は廃止されている。)に基づいて,K 夫人を相手取って支払った金額の返還を求める訴えを提起した。第1審のエアフ ルト地裁,第2審のイエナ高裁ともこの訴えを認容した。ドイツの学説上は,上 記2項1文が,EU の他の加盟国の法によって設立されたが,主たる利益の中心 がドイツにある会社に適用されるかには争いがある。営業の自由を制限するかに 37 本判決の判例研究ないし本判決を契機とする論文として,Bernstoff, AW−Prax 2016, 257 ; von Wilcken, DB 2016, 225 ; Kindler, EuZW 2016, 136 ; ders., NZG 2018, 1 ; Schulz, EWiR 2016, 67 ; Seidel, EWiR 2016, 329 ; Römermann, GmbHR 2016, 27 ; Stiegler, GWR 2016, 39 ; Mock, IPRax 2016, 237 ; K. Schmidt, JbFfSt 2016/2017, 345 ; Jäger, jM 2016, 319 ; Ringe, JZ 2016, 573 ; Weller/Hübner, NJW 2016, 225 ; Mankowski, ZNG 2016, 281 ; Altmeppen, ZNG 2016, 521 ; Hübler, NZI 2016, 125 ; Swierczok, NZI 2016, 50 ; Arts, RIW 2016, 151 ; von Bonn/Glos, WM 2017, 2221 ; Paefgen, WuB 2016, 370 ; Scholz, ZEuP 2016, 963 ; Bitter/Baschnagel, ZInsO 2018, 557 ; Schall, ZIP 2016, 289 ; Fichtner, ZWH 2016, 336.
22738) 【判 旨】 !2000年 EU 倒産手続規則13条は以下のように解釈される。倒産手続開始前に 差し押さえられた金員の,倒産管財人によって否認された支払が,当該手続の開 始後に初めてなされた場合,同条が適用になる。 "2000年 EU 倒産手続規則13条は以下のように解釈される。この規定に含まれ ている例外の規律は,倒産管財人によって否認された法的行為について適用され る法によって規定されている消滅時効期間,否認権行使期間,除斥期間も含む。 #倒産否認訴訟提起のための形式規定は,2000年 EU 倒産手続規則13条に鑑み ると,倒産管財人によって否認された法的行為に適用になる法による。 【事実の概要】 L 氏は,オーストリア法人である E 社から車を購入したが,その引渡しがなかっ たので,ブレゲンツ(オーストリア)地区裁判所に,売買代金の返還を求める訴 えを提起した。2008年3月17日,同裁判所は,E 社に対する執行力ある支払命令 を発付した。同年4月13日,E 社は,ラーベンスブルク(ドイツ)区裁判所に, 同社に対する倒産手続の開始の申立てをした。ブレゲンツ地区裁判所がその支払 命令による動産・債権執行を承認した後,同年5月20日に,オーストリアの貯蓄 金庫にある E 社の口座が差し押さえられた。同月23日,債権執行(債権差押命 令)が同金庫に送達された。同年8月4日,ラーベンスブルク区裁判所は E 社 に対する倒産手続を開始した。2009年3月17日,その E 社の口座が差し押さえ られた貯蓄金庫は,L 氏に対して,差押質権の発生している口座から1万ユーロ 余を支払った。同年6月3日付けの書面で,倒産管財人 B 夫人は,L 氏に対し, 上記の動産・債権執行と上記支払を否認する旨を通告した。同年10月23日,B 夫 人は,倒産否認訴訟を提起し,上記支払の財団への返還を求めた。ラーベンスブ ルク地裁と控訴審とも請求を認容した。当事者間に2000年倒産手続規則13条の適 用に関連して争いがあったので,上告審であるドイツ連邦通常裁判所は,それら 38 本判決の判例研究ないし本判決を契機とする論文として,Schulz, EuZW 2015, 432 ; Müller, EuZW 2016, 212 ; Keller, EWiR 2015, 415 ; Dahl/Linnenbrink, EWiR 2016, 151 ; Piekenbrock, IPRax 2016, 219 ; Stangl/Kern, NZI 2015, 1040 ; Mankow-ski, NZI 2015, 481 ; Hübler, NZI 2015, 506 ; Swierczok, WuB 2016, 120 ; Brink-mann, ZIP 2016 Beilage zu Heft 2, 14.
Netherlands, Case C−310/14, ECLI : EU : C : 2015 : 69039) 【判 旨】 !2000年 EU 倒産手続規則13条は以下のように解釈される。その適用は,当該 行為が,その行為に適用される法(lex causae)により,当該事件のすべての事 情を考慮した上で,否認可能ではないことを前提としている。 "2000年 EU 倒産手続規則13条の適用を考慮し,かつ,否認の相手方が,ある 行為の無効,否認または相対的無効の確認の訴えに際して,当該行為に適用され る法(lex causae)の,当該行為はこの規定中で定められた事情の下においての み否認可能であるとする規定を主張する場合,この事情の不存在を主張し,証明 するのは否認の相手方の責任である。 #2000年 EU 倒産手続規則13条は以下のように解釈される。「この行為が,…… いかなる方法によっても争うことができないとき」との文言は,当該行為に適用 される法(lex causae)の倒産法上の規定と並んで,この法のすべての規定と一 般原則をも含む。 $2000年 EU 倒産手続規則13条は以下のように解釈される。否認の相手方は, ある行為の無効,否認または相対的無効の確認の訴えに際して,当該行為に適用 される法(lex causae)は,その全体が,当該行為を否認することを可能として いないことを主張・証明しなければならない。そのような訴えと取り組む国内裁 判所は,以下の場合にのみ,否認をする者が,当該行為を否認可能とするこの法 の規定または原則の存在〔相手方が証明した事実の反対事実〕を証明しなければ ならないということを出発点とすることができる。すなわち,それは,否認の相 手方が,その前に,その国内手続法の一般的に適用になる規定により,当該行為 がこの法によると否認できないということを,実際に証明したとの見解をとる場 合である。 【事実の概要】 ヘルシンキ(フィンランド)に本拠を有する S 社(スポーツランド)は,ヒ ルフェルスム(オランダ)に本拠のある N 社(Nike)とフランチャイズ契約を 39 本判決の判例研究ないし本判決を契機とする論文として,Müller, EuZW 2016, 212 ; Schulz, EuZW 2016, 773 ; Mankowski, EWiR 2015, 773 ; Czaplinksi/Knodel, GWR 2016, 38 ; Piekenbrock, IPRax 2016, 219 ; Swierczok, NZI 2015, 957 ; Paulus, RIW 2016, 53 ; Brinkmann, ZIP 2016 Beilage zu Heft 2, 14.
にしたりしてはならないとの原則)と調和しないであろうと指摘する(本判決理 由第43節)。