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台湾における外国人留学生への 中国語教育の現状(1)

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台湾における外国人留学生への 中国語教育の現状(1)

王 毓

!

はじめに

近年、「韓流」とならぶ「華流」ブームのなか、外国語としての中国語を習 得しようとする学生が年々増加する傾向にある。しかし、日本と中国とは、領 土問題や歴史認識問題をはじめ、すぐには解決し難い課題を多く抱えている。

最近でも政治家の不用意な発言で交流が断絶し、文化事業が中止されるなど、

耳目に新しいことである。

そうした政治外交の稚拙なつまずきは、民間交流に大きな影響を与える。大 学当局にとって、中国側の反日感情が高まる状況のなかで、学生を中国へ留学 のため渡航させるのは、躊躇せざるを得ない。また中国語の学習に熱意を示し ながらも、短い学生時代にせっかくの留学のチャンスを見送らなければならな くなった学生は、ことさらに不幸である。

そうした状況にあって、中国語を習得するため、台湾への留学がにわかに注 目されている。21年の調査では、アジアの各都市のなかで、台北が群を抜 いてもっとも日本文化に敏感であると評価されたことが示すように、台湾は親 日的な国としてよく知られている。実際に台湾では日本のドラマやアニメ、お 笑い番組が連日テレビで放映されている。また町ゆく人々の会話の端々に、「日

福岡大学言語教育研究センター外国語講師

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Rìb ! en」が話題によくのぼる。街頭には「日式(日本風)

」や「〜の〜」と いった「的」をひらがな表記している看板を至る所にみることができる。

日本語や日本文化の影響も深い。例えば「痛痛飛(痛いの痛いの飛んでい け)」といった日本語表現が、台湾人の若者の口語で使用されたりしている。ま た「哈日族」といわれる、熱狂的な親日の若者層の存在も指摘されている。

近年では、戦後に台湾と日本で離ればなれになった男女を描いた「海角七号」

や、日本軍が台湾の原住民を虐殺した霧社事件を描いた映画「賽徳克巴

!

」な ど、日本の植民地時代の歴史を描いた優れた映画が台湾でヒットしている。そ こにも日本の植民地であった悲しい歴史を経験しながらも、それをものみ込ん で、台湾と日本がよりよい未来を築くことを志向する、台湾人の成熟した認識 と日本や日本人への温かいまなざしが窺える。

以上のことから、日本の大学当局にとって、中国語教育や学術交流において、

中国と台湾との二つのパイプを持つことは、今後ますます必要とされるように 思われる。よって本稿では、台湾における中国語教育の現状について簡単に紹 介し、台湾への留学の便に資したい。

台湾では外国人留学生を対象とした中国語教育が盛んである。これまでは特 に欧米からの留学生を対象としていたが、日本や韓国からの留学生も年々増加 する傾向にある。台湾の大学で外国人を対象とした中国語教育を最初に行った のは、台北市にある国立台湾師範大学国語教育中心(中国語教育センター)で ある。当センターは16年に設立され、現在でも中国語を学習する最も多く の留学生を抱え、台湾の中国語教育の中心となっている。

筆者は、25年度に台湾師範大学中国語教育センターが開講した中国語教 育者養成コースを受講し、台湾で外国語としての中国語を教育するうえで、如 何なる点を重視するかを実際に学ぶことができた。

そこでまず、台湾で中国語教員を養成している教育機関について紹介し、当 センターの中国語教育者養成コースのカリキュラムをとりあげ、その内容や特

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徴について考察したい。

さらに、台湾での各大学・機関での外国人留学生の受け入れ状況を紹介した い。台湾における外国人留学生を対象とした中国語教育の現状については、中 国語教育の中心である台湾師範大学中国語教育センターでの語学教育や、そこ で使用されている教材『実用視聴華語』を具体例に、考察を進めることとする。

なお行論の都合上、本稿で使用する呼称について簡単に説明したい。中国語 は、一般的には「漢語」と呼称されるが、これとは別に、「華語文」とも言わ れる。台湾では、外国語としての中国語は「華語文」といい、母国語の中国語 の「国語」と区別して使用している。また台湾では、本来の漢字である旧体字、

いわゆる繁体字を使用しており、その発音を学習する方法として、ピンインに 相当する注音符号を用いて表記している。詳しい説明は後述することにする。

台湾における中国語教員養成の現状

本節では台湾で中国語教員を養成している教育機関について紹介するととも に、具体的な例として台湾師範大学の教員養成コースのカリキュラムを取り上 げて説明し、その特色などを指摘したい。

(一)中国語教員養成を行う教育機関

中国語教員の養成機関について、およそ大学機構と法人とに区分される。ま た大学生や社会人といった教育対象の相違により、受け入れの機関も相違する。

よって、以下にそれぞれ表示し、説明をくわえたい。

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(1)大学及び大学院における教員養成の学科

①大学

学校名 所在地

国立台湾師範大学国際華語文教学研究所(大学院) 台北市大安区平和東路一段12号 国立台湾師範大学応用華語文学系 台北市大安区平和東路一段12号 国立!南国際大学華語文教学研究所(大学院) 南投県埔里鎮大学路1号 国立東華大学華文文学系 花蓮県寿豊郷志学村大学路二段1号 国立高雄師範大学華語文教学研究所(大学院) 高雄市苓雅区平和一路16号 開南大学華語文教学研究所(大学院) 桃園県蘆竹郷開南路1号 中原大学応用華語文学系(学部、大学院) 桃園県中!市中北路20号 文藻外語学院応用華語文学系(学部、大学院) 高雄市三民区民族一路90号 国立台東大学華語文学系 台東市西康路二段39号 銘傳大学華語文教学系 桃園県亀山郷大同村徳明路5号 僑光技術学院華語文学系 台中市西屯区僑光路10号

国立聯合大学華語文学系 苗栗市恭敬里聯大1号

②大学における中国語の教育課程

学校名 所在地

国立台湾大学華語教学修士教育課程 台北市中正区羅斯福路四段1号 国立政治大学華語文教学修士・博士教育課程 台北市文山区指南路二段64号 台北市立教育大学華語文教学修士学位教育課程 台北市中正区愛国西路1号 成功大学華語文教学教育課程 台南市大学路1号 中国文化大学修士学分班(推広教育部) 台北市建国南路二段21号

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(2)社会人向けの養成機関

①大学:華語に関する教育・言語センター

学校名 所在地

国立台湾師範大学国語教学中心華語師資培訓班 台北市大安区和平東路一段12号 国立台湾師範大学華語文教学研究所華語師資養成班 台北市大安区和平東路一段12号 国立台湾大学国際華語研習所華語師資培訓班 台北市大安区辛亥路二段10号 国立政治大学華語中心華語師資培訓班 台北市文山区指南路二段64号

淡江大学成人教育部華語中心華語師資培訓班 台北市金華街19!5号(台北キャンパス)

文化大学推広教育部華語師資培訓班 台北市建国南路二段21号 世新大学終身教育学院華語師資培訓班 台北市文山区木柵路一段17!1号 真理大学推広部華語師資培訓班 新北市淡水鎮真理街32号 開南大学華語中心華語師資培訓班 桃園県蘆竹郷開南路1号 東海大学華語中心華語師資培訓班 台中市中港路三段11号 中興大学語言中心華語師資培訓班 台中市南区國光路20号

!甲大学推広教育部華語文専業師資培訓班 台中市西屯区文華路10号 台中教育大学華語文中心華語教学師資培訓班 台中市西區民生路27号 文藻華語師資培訓班 高雄市三民区民族一路90号 義守大学華語文センター華語師資培訓班 高雄市大樹区学城路一段1号 高雄師範大学語文教学センター華語教師資培訓班 高雄市苓雅区平和一路16号 国立中山大学華語教学センター華語師資培訓班 高雄市鼓山区蓮海路70号 佛光大学語言教育中心華語師資培訓班 宜蘭市中山路三段27号 慈済大学語言教学中心華語文教学語師資培訓班 花蓮市中央路三段71号

②法人:

法人名 所在地

中華語文研習所

台北:台北市中正區羅斯福路3段50号4楼 台中:台中市北区一中街50号9楼之14号 高雄:高雄市前金区中山二路57号2楼

国語日報語言中心 台北市中正區福州街二号

世界華語文教育學會語文教育中心 台北市中正區寧波東街1号4楼 漢華天下教育發展有限公司 台北市大安区和平東路一段15号B

このように、台湾では台北の各大学や民間の教育機関を中心に、台中・台南・

台東と幅広く外国語としての中国語を教えるための教育機関が存在し、教員養

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成が盛んに行われている。その中でも教学の歴史が最も長く、かつ教育実績の あるのは台湾師範大学である。その名の通り台湾師範大学は、そもそも教員を 養成するための国の重点的な教育校であり、教育ノウハウの蓄積も豊富である。

そこで行われる講義の内容は、外国人留学生を教育する台湾の中国語教員に、

如何なる資質が求められているかを端的に示すものである。よって次に、台湾 師範大学での養成コースの講義内容について紹介したい。

(二)台湾師範大学の教員養成コースについて

台湾師範大学中国語教育センターの中国語教員養成コースである「国立師範 大学華語文教学実務班」の講義は毎年冬期、夏期二回にわけて行われている。

筆者は25年冬期に「国立師範大学華語文教学実務班」の教員養成コース を受講した。その経験をふまえ、コースの特徴とカリキュラムについて説明す る。

筆者が受講したのは25年9月から26年1月までの三ヶ月の養成コース である。費用は20元(日本円で6〜7万円、教材費込み)で、毎週土曜日 の9時から12時、昼休みを挟んで14時から17時の六時間にわたり講義が行 われる。応募資格は大学卒業者、大学四年生の卒業予定者、外国籍の者(ただ し、HSK高級9級以上の検定資格の取得者に限る)である。一クラス30人ほ どで、筆者が受講したクラスでは、教学未経験者や、すでに教員であるが、教 学のスキルアップのため受講する者など、中国語教育の目的意識を持った受講 生が幅広く存在した。講義は、主に中国語教員として必要な基本的な専門知識 の解説や、中国語履修者の講義を進行するに当たって、実用かつ有効的な教授 方法、外国語としての中国語の展望など、様々な角度から進められた。講義は 全部で18項目に及び行われたが、以下、華語文教学実務班のカリキュラムに 則し、その内容について詳しくとりあげる。

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(1)華語文教学実務総論

外国人向けの中国語教育の沿革や学習者の中国語を学ぶ目的、教学内容のレ ベルについて分析し、教学の際に配慮すべきことなどを解説する。また各教員 が、実際の講義で使用する教材を編纂する際に、注意を払わなければならない 点などの解説も行われた。さらに教員の資格や、台湾における中国語教員の養 成の現状、さらには中国の中国語教育の現状との比較などについても説明がな され、総括的に外国人向けの中国語教育の内容や枠組みなどが論じられた。

講義を通じて、中国語教育の歴史や、これからの中国語教育の展望などが自 然と理解されるような内容となっており、この概論では、外国人向けの中国語 教育の全体像を把握することが目的とされている。

(2)華語標音系統与発音教学

中国語の発音の表記法について説明する。

台湾では、注音符号を使用して学習がなされている。中国におけるピンイン 表記の使用と相違するところである。外国人学習者向けの教学で使用される入 門・初級テキストには注音符号・漢語ピンイン・通用ピンインの三つが併記さ れ、学習者にとってわかりやすく学ぶことができる。講義では表記法の相違に ついて詳細な説明が行われた。参考までに台湾の入門・初級テキストでの表記 法を以下に表として示しておく。

台湾では旧体字、つまり伝統的な繁体字を使用して言語を表記しており、簡 体字や日本の漢字と比べ、画数が多いものがほとんどである。そのため初等教 育までの国語の授業では、まず注音符号を用いて学習する。こうしたいきさつ から、台湾への語学留学生には、中国語の発音に慣れることもあって、まず注 音符号の習得が勧められてきた。同じ漢字文化圏にある日本からの留学生は、

さほど抵抗なく繁体字を学ぶことができるが、欧米からの留学生にとって、す ぐさま漢字の学習を行うよりも、注音符号からの学習のほうがスムーズに中国

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語の学習に入りやすい。また注音符号の利点は、ピンインによればアルファベッ トに引きずられた発音になってしまうが、注音符号を暗記することで正確な発 音が可能となる点にある。

しかし近年では、ピンインのみか、注音符号とピンインとを併用して留学生 の教学を行うことが主流となっている。

【表】注音符号・ピンイン・通用ピンイン一覧

子音 母音

注音符号 漢語ピンイン 通用ピンイン 注音符号 漢語ピンイン 通用ピンイン

b b er er

p p yi,-i yi,-i

m m wu,-u wu,-u

f f yu,-u,-u yu,-yu

d d a a

t t o o

n n e e

l l e e

g g ai ai

k k ei ei

h h ao ao

j j ou ou

q c ya,-ia ya,-ia

x s ye,-ie ye,-ie

zh(i) jh(ih) wa,-ua wa,-ua

ch(i) ch(ih) wo,-uo wo,-uo

sh(i) sh(ih) yue,-ue,-ue yue,-yue

r(i) r(ih) yao,-iao yao,-iao

z(i) z(ih) you,-iu you,-iou

c(i) c(ih) wai,-uai wai,-uai

s(i) s(ih) wei,-ui wei,-uei

an an

yan,-ian yan,-ian wan,-uan wan,-uan yuan,-uan,-uan yuan,-yuan

en en

yin,-in yin,-in

wen,-un wun,-un

yun,-un,-un yun,-yun

ang ang

yang,-iang yang,-iang wang,-uang wang,-uang

eng eng

ying,-ing ying,-ing weng,-ong wong,-ong yong,-iong yong,-yong

yo yo

< <

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ちなみに、通用ピンインとは、22年に台湾の教育部(日本の文部省に相 当)が制定したものである。注音符号・漢語ピンイン・通用ピンインはつぎの ように表記される。

例:

注音符号 通用ピンイン 漢語ピンイン

(Jho

¯ngguó

Zho ¯ngguó)

(3)教学策略:理論応用、課堂教学

教学法の理論について解説し、さらにクラスをどう運営するかについての実 用かつ有効的な教授法を紹介する。

実際の中国語教育で必ず生じる問題は、講義への集中を高め、中国語の学習 に興味を持って取り組むよう、学生を如何にして導くかということである。ま たクラス運営の方法について、日本での中国語教育で頭を痛める教員も少なか らずいることと思われる。台湾の教学経験者もそうであるらしく、この講義で は、それに関して活発な質問や応対がみられ、全体を通じての講義のなかでも 受講生にとって最も熱を帯びた時間となった。

(4)漢字起源概説与教学方法

漢字の起源や漢字の字形の構成である六書、漢字の変遷や書き順などの教え 方について解説する講義である。

漢字圏と非漢字圏の外国人学習者では、漢字の学習やよく間違う箇所などに 相違がみられるため、教学上のその注意点について詳しく説明された。

台湾では繁体字が使用されるため、教材や、授業の進行は繁体字が使われて いるが、テキストには、繁体字と簡体字・注音符号とピンインとが併記され、

利用の便に資している。

文字そのものは、その国の文化を象徴的に表現する。確かに台湾の繁体字は

!

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画数も多く、書写するのに不便な側面もある。しかし、中国の簡体字ではすで に失われてしまった、漢字のもつ本来の意味や美しさを、台湾の繁体字は伝え ており、中国文化を真に理解するうえでも、その学習は必要であるように思わ れる。本講義はそうした意味においても、台湾ならではの特色あるカリキュラ ムの一つといえる。

(5)漢語詞彙概説

中国語の語彙の特徴を紹介し、中国語の詞やその構造、フレーズの仕組み、

同義詞、反対詞、語・彙と文化の関連性などを解説する。また外国人学習者に とって語彙の学習上に理解しにくい点や、意味としてはそうであるが、言語表 現の使用上では間違ってしまう語彙の解説とその理由、また、学習者のレベル に応じた教授法の有効性などを詳しく説明分析する。

(6)華語文教材介紹与編写

台湾でよく使用されている各種の教材を紹介し、その相違点などを論じる。

台湾での入門・初級・中級・上級で主に使用される教材は、表示した以下のよ うなものがある。

これらの教材の中で、よく使用されるのは国立台湾師範大学主編『新版実用 視聴華語』1〜5(正中書局、28年)、ならびに葉徳明主編『遠東生活華語』

1〜3(遠東図書公司、20年)である。中級以降のクラスでは、各方面・分 野から、聞く、読む、書くトレーニングの教学に重点を置き、それに即した教 材を補充しつつ、充実した内容で学習できるように配慮される。例えば中級で は、ビジネス中国語、時事中国語、ことわざ、風習、歴史などを題材にした教 材を使用して多角的に中国語を学習し、語学能力の深度を高めるよう求める。

また、各教材を編纂する際に注意すべき点などを説明する。教材の編纂につ いては、テーマ選択から始め、各レベルの語彙の選出、語法ポイントの選び方、

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語法練習問題の作り方、テキストの内容の並べ方、各段階の学習目標をどのよ うに定め、いかに学習者の興味を引き出せる内容を作成するかのノウハウを説 明する。特に上級以降の授業では、教材内容の選択や教材の作成が重要なポイ ントとなり、教学をスムーズに行う上で大きなウエイトをしめるものである。

レベル

入門 初級

新版實用視聽華語(一) 国立台湾師範大学国語教学中心 正中書局(28年2月)

新版實用視聽華語(二) 国立台湾師範大学国語教学中心 正中書局(28年2月)

新版實用視聽華語(三) 国立台湾師範大学国語教学中心 正中書局(28年2月)

新版實用視聽華語(四) 国立台湾師範大学国語教学中心 正中書局(28年2月)

遠東生活華語(一) 葉徳明、%%潘蓮丹、陳恵玲、林千恵 遠東図書公司(21年1月)

遠東生活華語(二) 葉徳明、%%潘蓮丹、陳恵玲、林千恵 遠東図書公司(21年2月)

遠東生活華語(二) 葉徳明、%%潘蓮丹、陳恵玲、林千恵 遠東図書公司(21年2月)

實用中文讀寫(一) 国立台湾師範大学国語教学中心

&桂英.#彰英.孫懿芬) 正中書局(20年7月)

中級

新版實用視聽華語(五) 国立台湾師範大学国語教学中心 正中書局(28年2月)

遠東生活華語(三) 葉徳明、%%潘蓮丹、陳恵玲、林千恵 遠東図書公司(22年8月)

實用中文讀寫(二) 国立台湾師範大学国語教学中心

&桂英.#彰英.孫懿芬) 正中書局(20年7月)

迷"!播劇 国立台湾師範大学国語教学中心

(王文娟、楊瑟恩) 正中書局(28年6月)

現代の台湾(日本語版) !守信、孫珞 世新大学伝播学院出版中心

(24年9月)

中國寓言故事 国立編訳館 正中書局(17年4月)

實用商業會話(一) 国立台湾師範大学国語教学中心 師大国語中心(28年4月)

讀報學華語(一) 国立台湾師範大学国語教学中心 師大国語中心(29年)

中國民間故事(一) 国立編訳館 正中書局(15年9月)

中國的風俗習慣(一) 国立編訳館 正中書局(21年4月)

中國"史故事(一) 国立編訳館 正中書局(20年6月)

上級

Advanced A Plus Chinese1 !守信など 聯経書(28年11月)

Advanced A Plus Chinese2 !守信など 聯経書店(28年11月)

實用商業會話(二)(修訂本) 国立台湾師範大学国語教学中心 師大書苑(28年4月)

中國民間故事(二) 国立編訳館 正中書局(16年7月)

中國的風俗習慣(二) 国立編訳館 正中書局(18年3月)

中國"史故事(二)(二版) 国立編訳館 正中書局(20年7月)

讀報學華語(二) 国立台湾師範大学国語教学中心 師大国語中心(29年)

讀報學華語(三) 国立台湾師範大学国語教学中心 師大国語中心(20年)

思想與社會 国立台湾大学国際華語研修所編著 南天出版社(17年)

文言文入門 謝克・喬健編著 美亜出版社(18年)

從精讀到泛讀 !$編著 南天出版社(23年)

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(7)華語正音与教学

中国語の発音の仕組みを説明したうえで、受講生全員の発音をチェックし、

それぞれの発音の癖やなまりを指摘して教材として活かし、発音教学のテク ニックを詳しく説明する。さらに、教学上では学習者の母国語に影響されて生 じる発音の間違い、なまり、弱点をどう指導していくかについて取り扱う。

講義では具体例として英語・日本語・韓国語・ベトナム語・インドネシア語 を母国語とする学習者の持つ問題点を分析し、学習者それぞれの弱点や問題点 を如何に見いだし、適切な指導を通して上手な発音を学習させるかといったテ クニックを習得する。

講義中に多言語に接することで、指導する側が学習者の母国語に影響された 中国語発音の誤りを見いだす力を身につけることが求められた。たとえば日本 人 学 習 者 の 場 合 は、母 音 の「e」「u」「ü」、複 母 音 の「üe」「iou」、鼻 母 音 の

「−n」「−ng」の区別や、子音の有気音、無気音の発音の方法、そり舌音な ど、日本語にそのような区別がないため、発音の方法が難しいとされる。さら に、漢語ピンインによる英語表記と日本語ローマ字の発音の混用のため、発音 の間違いが多く生じる。また声調の弱いところなどを指摘する。それらに関連 する指導法など丁寧な講義が行われ、学生の発音を指導する際に大いに役立つ ように思われた。

(8)零程度与初級之華語教学

入門中国語及び初級レベルの中国語の教え方、および注意点について紹介す る。どの言語でも同じであるが、初心者の外国語学習においては、まず発音を 正確に習得することが肝心である。しかし学習者にとって退屈な発音練習を如 何に興味を持続させ、繰り返し練習させるかといった工夫が必要である。また 語彙の勉強は、適宜に学習者の母国語や絵カードなどをうまく使用して授業を スムーズに進行し、発音、文法の基礎を定着させることに重点を置き、授業を

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進めるのがよい。

(9)中級与高級之華語教学

中級・上級中国語の教授法について解説する。中国語の教学に限らず、語学 の授業で教材の内容を扱うには、基本的に本文から入り、単語の説明、語法の 解説、その他の説明という順序で行われる。ただし学習者のレベルがやや低い 場合には、それに応じて、単語→語法→本文という授業の流れのほうが、本文 の理解はしやすい。

実際の授業の進め方については、教員から設問をなげかけて学生に答えさせ るとう問答を繰り返すことで理解を促し、それから練習を行い討論(ディス カッション)へと導いていくということが望ましいとする。

そのほかには、教員の教学上での難点、また学習者の勉学上の難点をとりあ げ、その解決策を説明する。中級の授業では、語法の解説以外には、少しずつ 中国語でわかりやすく内容を説明し、できる限り中国語に慣れさせることを心 がける。

上級の場合は、発音に慣れ、安易に発音して間違いを生じる場合がしばしば みられるため、上級者であればあるほど、発音の正確さを再確認することで、

コミュニケーション能力を高める必要がある。またこれまでに習った単語、語 法を十分に活用して授業を進め、中国語で授業を行うよう心がける。

さらに近年、電子辞書の普及で、手引き辞書を使用し、語彙を調べる能力が 落ちている学生が、とみに多くなっている。そのため、辞書の調べ方などの指 導、確認も必要になってくる。上級者にはピンインがない教材を使用し、その 発音、意味、使用方法の事例などを、学習者自身が手引き辞書を繰って丹念に 調べ、逐一それを確認する。こうした基本的な作業は、さらなる語学レベルの 向上のためにぜひとも必要であり、授業の一環としてそこまでの指導を取り入 れる必要性が増している。

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(10)漢語語法概論・(11)語法教学

いずれも語法に関する講義である。ここでは、併せて説明する。

中国語の文の構成素、品詞の種類、フレーズの種類、構造、使い方、文の成 分、文の種類など、中国語文法について総括的に要点をおさえて解説する。

中国語の言葉、語法の特徴、また語法の教学上に注意すべき点を取り上げ、

詳しく説明する。実際に先述の入門・初級中国語テキスト『新版実用視聴華語』

(1)の文法ポイントを例としてとりあげ、いかにわかりやすい説明ができるか、

そのテクニックを解説する。語法を教える前には、指導者は学習者がこれまで に習得してきた内容、レベルをきちんと把握することが必要である。語順、文 型の意味の確認、入れ替え練習を行うにも、単語や例の数量は適宜にし、学習 者が学習内容を吸収しやすいように配慮する必要がある。また前課で習った内 容や次課で学習しようとする単語を提示して応用練習することにより、予習や 復習もできるようにするのがよい。最後に当日に学習した文型を用い、短文や 作文を作る練習を行うことで復習させ、どのくらい学習内容が定着しているか を確認する。

(12)語法教学對症下薬

上述してきたように、語法については、外国人留学生が理解しにくい箇所や 内容を如何にしてわかりやすく教えるか、また学習者によく見られる間違いは どのような理由から生じたのかについて、その原因を明らかにする必要がある。

たとえば母国語による影響や、過度な分類や文法構造の省略などによって、様々 な間違いが生じるが、それに対して教員がどう改めるか実例をあげて説明する。

たとえば、日本人学習者は虚詞や補語、複文の使い方が苦手で、うまく表現 できない場合がしばしばある。初級では、「是…的」、中級では、時間副詞「就」

と「才」「又」「再」「還」の使い方、助詞「了」の使い方、「時間詞」と「時 間量」の並べ方、「如果…、就」のような複文の使い方の間違いを指摘し、そ

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れが生じる原因を説明する。

(13)華語教学線上常用工具及軟体応用

外国人向けの中国語の教授内容やその方法、学生が自習するのに利用に便利な 関連サイトやソフトを紹介する。たとえば、インターネットを使用した中国語 教育に関連する教材や、e―ランニングの利用方法、さらには遠隔授業がどの ように進められるかといった紹介も行なう。教室を離れても、学習者が語学の 自習ができる環境作りは、IT産業が発達している現代において上手に利用す る。こうした中国語にどっぷりと浸ることのできる語学環境作りは、語学習得 において有益である。

また指導者側が、ネット上の中国語教育に関連する膨大な情報を収集したう えで、如何にしてそれを取捨選択し、補助資料として授業に有効に活用するか、

その方法やノウハウを説明する。そうした処理能力を習得することで、豊富な 内容の教材を入手したり、指導者側とのあいだで教学上の疑問点や難点につい て意見交換を行ったりすることができるようになる。また教授法などの授業も 学習できる。

(14)華語新聞教学

中級・上級レベル以上の学習者に対して、その需要に応じて時事中国語を題 材に行なう授業について紹介する。時事中国語の内容(たとえば新聞や雑誌の 記事、テレビのニュース、ラジオ番組、インターネットの情報など)について、

題材の選別基準などを説明する。また、ニュースや新聞記事を読解するために は、特有の語彙、文型、省略用語、類義詞、文白(文語、白話)の混在した表 現、書き言葉への理解が求められる。それらについて如何にして学習者に説明 するか、どのように授業を進めていくかについても詳しく説明する。

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(15)華語商業課程教学策略与探討

ビジネス中国語やホテル、レストラン、デパートなどの接客サービスをする 際に使用される中国語会話や専門用語などについて紹介する。さらに中国と台 湾のビジネス中国語の教材を具体的に比較し、その表現方法の違いや現状を詳 しく説明する。

(16)閲読与中文写作教学

中国語の文章の読み書きを練習する際に、学習者の語彙数や文法の理解度な どを把握すること、また、読解力や作文能力を高めるには、どのように指導す ることが有効であるかについて説明する。

入門・初級では、語法のポイントをしっかりとおさえたうえで、それを応用 して文を作ったり、会話文を文章の形に書き直したりすることを繰り返し行う ことによって、中国語を使用した文章の作成に慣れさせる。

中級では、学習した文型を使って短文を作り、対話式の会話を文章の形に代 える練習を繰り返す。さらに手本の文章を真似た文章を作成させるなどの課題 を与える。そうすることで文章の作成をスムーズに行えるようになる。

上級以上では、手本の文章を真似て独自で作成する作文の課題を与え、テー マ別に作文を作らせて文章を作成する能力を磨いていく。

読解力の養成においては、各レベルに合う文章の内容や字数を考慮して選ば なければならない。上級以上は、新詩、エッセー、短編の文学作品、時事に関 する内容、あるいはレストランのメニュー、広告、看板の表現、標語、スロー ガン、結婚式の招待状、旅行のスケージュル、年賀状、手紙、メール、春聯な ど、話し言葉とは相違するが、生活上に必要とされる様々な書き言葉やその書 き方を習得していく。その際にレベルに相当した、日常生活にとけ込んでいる 題材を選定し、学習者に興味を持たせることは必要である。

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(17)華語文教学之国際現勢及展望

中国語は英語と並びそれを使用する言語人口数が圧倒的多数である。今後の 国際社会において中国の影響力が益々強まることが予測されるが、そうした情 勢にあって、中国語の習得を目指す者が増加することが想定される。台湾は欧 米諸国や日本・韓国といった近隣のアジア諸国と同じく民主主義の国家である が、そうした同じ環境にある台湾への語学留学は、今後益々需要が増える可能 性がある。

(18)華語測験与評量

定期末テストを実施する際には、聞く・話す・読む・書くという四つの方面 から、学習者のそれぞれのレベルを確認する必要がある。そのための出題の仕 方はどのように行うのが有効であるか、テストで確認ができない盲点はどのよ うなものがあるか、それをどのように回避するのかといった、学習者の実力を はかる有効な出題形式や注意点などを取り上げ、それについて詳しく説明する。

すべてのカリキュラムを受講し終えたのちに、筆記試験と教学の実技試験が 行われた。

筆記試験は60分で、学習した内容について全般的に出題される。試験で問 われることは、実際に中国語を教えるにあたり、指導者として身につけておく べき語学の素養と基礎知識である。およそ、以下の内容について出題された。

①ピンインの綴り:声調符号の付け方、iou、uen、ueiの「o」「e」の脱落な

②品詞の判断:単語は何詞であるかを判断して、文を作らせる。多音字への理 解など

③語彙の使い方:類義詞の使い方、四字熟語の説明など

④語法:語法全体に関連する内容

⑤文型:文型を使用する際の注意点は何か、どういう語順であるかなど

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⑥文字:簡体字を繁体字、繁体字を簡体字への変換

⑦文字における六書の分類など

⑧具体的な教学方法についての論述

筆記試験としては、さほど奇を衒った出題はなく、当然ながらしっかりと受 講していれば、難しい内容ではなかった。

またすべての成果発表の場として、師範大の留学生を対象に教学の実技試験 を行う。受講生には、各自が教学実技を担当する内容について事前に通達があ る。受講生はそれに沿い『実用視聴華語』(一)(二)から相当する一課のシラ バスを作成のうえ提出し、教員からその添削や改善点のアドバイスなどを受け、

シラバス作成のノウハウを学ぶ。それを参考に教学実技の当日には、受講生全 員の前で、留学生に中国語の授業を行う。教学実技の時間は20分である。指 導教官から、①声の大きさは適切であるか、②学生にはっきりかつ適切に指示 できたか、③説明はわかりやすいか、④漢字の書き順は正しかったか、⑤説明 について学生が明確に理解できたか的確に把握できているか、⑥教室の雰囲気 を掴めているかなどを評価される。

教学実技を終えると、指導教員からよかった点や改善すべき点などのコメン トを受ける。普段は日本の学生を対象に、これまで培ってきたノウハウで中国 語の教育を行ってきたが、中国語の教育者を育成する専門の教員から客観的な アドバイスを受けたことは、今後の教育において自信につながった。

教学実技では、自分の授業だけでなく、他の受講生の思考を凝らした多種多 様な教学実技を視聴することができるため、指導教員による各受講生へのコメ ントを含め、今後の自らの中国語教育に多くのヒントが得られた。たとえば語 学教育でパワーポイントを使用することの有効性と不適切性などが改めて実感 された。

講義は全体の3分の1以上を欠席すると、コース終了の証明書が発行されな い。何らかの事情があり、講義を欠席する際には、必ずあらかじめ連絡するこ

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とが求められる。すべての講義を毎次録画しているため、申請を行えば、日時 調整のうえ欠席した講義を視聴することができるなど、配慮がなされている。

以上のような各講義は、それを専門とするそれぞれの講師が担当する。講義 は非常に濃密かつハイレベルな内容となっており、ある程度の基礎知識がなけ れば、講義の進行に流され、あまり収穫が得られないままで終わってしまう場 合もある。そのため、当然ながら予め中国語教育の概要や基礎知識を学習して おき、問題意識を持って講義にのぞみ、講義のなかで自己の能力の不足してい る点を確認していく作業が有効であろう。

講義全般を通じ、熟練した経験豊かな講師からは、非常に有益な教授法を学 ぶことができた。なかには、あまり熱意を示さない講師もおり、少し残念な内 容の講義もあった。特にクラス運営や中国語教育の将来性について、筆者を含 め受講生が非常に関心を寄せていたところであった。事実、受講生より講義中 に多くの質疑が寄せられたが、経験の浅い講師が担当していたこともあって、

充分に満足のいく解答が得られなかった。多少なりとも教学経験のある受講生 が関心を寄せる講義には、高度な質疑がなされることが推測されるため、柔軟 に対応できる経験豊かな教師に担当してほしいところである。

台湾師範大学華語文教学実務班の教員養成コースは、当然ながら実際の教育 現場で中国語の語学教習にあたる専門教員を養成するものである。そのためそ こでの講義は、理論と実用性を重視した内容となる。筆者の受講したそれは、

短期集中型ではあったが、講義を実際に受けた率直な印象としては、内容密度 の濃い充実したものであったように思われる。

そこで扱われる講義内容の分析を通じ、台湾での中国語教育が重点を置く内 容などを把握することができた。

台湾での言語筆写によるコミュニケーションには、繁体字を使用するため、

外国人留学生への中国語教育も繁体字で行われる。その国の文字は、その国の 文化を象徴するものである。留学生は、繁体字を使用した中国語の学習を通し

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て、漢字本来のもつ意味の奥深さや、中国人の思考方法、さらには中国文化の 真の理解への糸口を得ることができる。

こうした伝統的な文字文化を維持してきた台湾においては、幼少より古典や 流麗な文語表現を自然と習得するよう教育がなされている。そのため、伝統と 教養のうえで表出される言葉や文章表現は、自ずと洗練されたものとなる。

台湾師範大学華語文教学実務班の教員養成コースでは、これをベースに多様 な語学教育の知識を身につけ、外国人留学生のニーズに沿った柔軟な教育を施 すことが可能な教員の養成を目指しているように感じられた。

本稿では、まず台湾で中国語教員を養成している教育機関について紹介した。

ついで台湾師範大学中国語教員養成コースである華語文教学実務班のカリキュ ラムを具体例に取り、台湾では外国人留学生に対して中国語を教授する教員に、

如何なる資質が要求されているかを考察した。

次稿では、台湾における留学生への中国語教育の現状とその授業内容につい て紹介し、その特徴について明らかにしたい。

参照

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