製造指図書のもつ原価計算上の性格と機能
佐藤好孝
1 製造指図書の原価計算上の性格とその意義
I 製造指図書の原価計算上の性格
製造部に製品の製造または特定の作業(例えば,修繕作業・その他)を命令 する書式としての製造指図書(Fertigungsauftrag:prOduction order)は,製造
注1)
作業上あるいはまた原価計算実施上極めて重要な書類である。では,このよ うに製造作業ならびに原価計算実施上のよりどころとなる製造指図書は,い かなる場合に発行されるのか。これには各種の場合が考えられるが,そのう ち主要なものを列挙すれば,大体次のようである。
1)当該企業の事業目的としている完成品(例えば,自動車メーカーであれ ば自動車:造船業であれば船舶)の一定数量の生産が行なわれる場合。
2)当該企業において自家使用ないし消費される建物・機械・工具などの いわゆる経営内部給付の製造または修理が行なわれる場合。
3)製品の試験研究あるいは試作が行なわれる場合。
4)仕損品の補修または代品の製作が行なわれる場合。
こうした場合に発行される製造指図書は,その指図書のもつ基本的劉生格 から分類すれば,特定製造指図書(specialproduction order)と継続製造指
注2)
図書(standing production order)という2つの型の指図書に大別される。
1.特定製造指図書の原価計算上の性格
ここに特定製造指図書(図1−1)とは,異質の特定作業または製品の原価
注1)製造指図書は,生産技術担当部門の要である生産管理部ないし工務部で作成・発行される。
56 経 営 と 経 済
を,それぞれ明確に区別して原価を集計把握する必要のある場合に発行され る指図書をいうO したがって,この指図書は,非同質的ないし異質的製品
(inhomogene‑od̲ heterogene Leistungen)を個別生産(例えば,特殊機械工業・
造船工業・土木建築業・その他)ならびにロット生産(例えば,印刷業・出版業
・家具製造業・その他)するような生産形態,すなわち個別原価計算形態の原 価計算が適用されなければならぬような性格をもった作業,または製品の製 造を行なう場合に発行されるO
図 1‑ 1 特 定 製 造 指 図 書
製造指図書No 出荷指図書No 完成予定日 着 手 日 完 成 日 契 約 価 格 作業手順表 No 型
様 式
数 量 注文先 摘 要 :
仕 様 書 : (材料明細表 No
こうした個別原価計算法の特徴は 1つの経営の各作業ならびに製品ごと の単位原価が,付加計算法 (Zuschlagsrechnung)、つまり加算計算法(加法) の手法に基づいてそれぞれ集計(直接材料費+直接労務費+製造間接費) され
注2)この製造指図書は,さらに次長jの図示のように,各種の観点から種々に分類することができる。
書図
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4品目
出 究 図 支 研 指 本 験 終 書 資 試 修
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る点にある。このため,この指図書の発行には,原価の集計のための「対象 区画(製品区分)J杭 例 え ばA特殊機械とB特殊機械,タンカー船と客船と いった具合に,明確に個別化していることならびにその製品が仕掛なく完了 するということがその前提条件となっている。そうした意味では,この指図 書は,各特定の作業または製品の製造が完了すれば,自動的にその命令の効 力が消滅するという性格をもった命令書である。かかる関係から,個別原価 計算では,この特定製造指図書に付される指図書番号が,すべての原価要素 を区分・集計する指標の役割を果す。このため,個別原価計算は,一名「指 図書別原価計算J (Auftragskall叩lation)ともいわれるO
2. 継続製造指図書の原価計算上の性格
ここに継続製造指図書とは,同種作業または同種製品の生産が,反復・連 続して長期間継続して行なわれる場合に発行される指図書をいうO したがっ
て,この指図書は,同質的製品 (homogene Lei stungen)または大量製品
(~assenleistungen) を単一生産(例えば,製粉業・ビール醸造業・その他)な
らびに組別生産(例えば,既製被服類製造業・自転車製造業・その他)するよう な生産形態,すなわち総合原価計算形態の原価計算が適用されなければなら
注3)
ぬような性格をもった作業または製品の製造を行なう場合に発行するO
前者の単一生産 (Einproduktfertigung),つまり単一種類の製品(例えば,
ビール・その他)を反復・連続して長期に量産している事業場では,単純総 合原価計算の手法が適用されるD この総合原価計算法の特徴は,製品の単位 原価(例えば,生ビールであればー樽の原価)の算定に,一定期間の完成品原 価総額をその期の完成品数量で除して算定するいわゆる分割計算法 (Division .srechnung)を適用するところにあるO そこで,この計算法のもとでは,完成 品原価と完成品数量とが一定の同一期間に帰属していることが,この計算法
注3)わが国で総合原価計算を採用しているところでは.継続製造指図さ?に代って,製品原価を集計するた めに,事前に原価費日に一定の番号を付したいわゆる「常置番号J(standing order) によって処理 されることが多いようである。だが,もちろん総合原価計算を適用している企業でも,戦略的計画生 産ないし計画生産が実施されているところでは,指図書?存号・品名・品目・生産数量・;若手日・完了 日などを指示した継続製造指図書を発行するのが通常である。
58 経 営 と 経 済
の前提条件となるD したがって,ここでは r期間区画J(kalendermassigen Abgrenzung) ,つまりー原価計算期間が必ずしも 1ヵ月である必要はなく,
それが恒常的に一定期間であれば足りるO そのため,この計算法のもとでは 指図書の指示数量は,原価計算とは直接的な関係をもたない。かかる関係か ら,この継続製造指図書は,もはや個別原価計算における特定製造指図書が 果しているような製品原価の集計のための指標的性格をもっていないのが現,
実であるO
これに対して,組別生産 (Sortenfertigung),つまり同一設備で異種の標準 製品を組別に反復・連続的して長期に量産している事業場(例えば,既製被服工 業・自動車工業・自転車工業・食品工業・電気工業・その他)では,組別総合原 価計算が適用されるo この総合原価計算法の特徴は,各組別製品への原価の 集計に当って,一定期間の製造費用を,各組別製品に直接結びついて発生す る組直接費 (Sorteneinzelkosten)と各組別製品に共通的に発生する組間接費 (Sorte昭emei出osten) とに分け,組直接費は個別原価計算の場合に準じて 各組別の製造指図書(各組別製品)に直課し 組間接費(組間接材料・組間接 労務・組間接経費)はこれを適当な配賦基準(例えば,予定直接作業時間)に基 づいて各組に配賦するところにあるO したがって,この計算法のもとでは,
完成品原価と完成品数量とが,一定の同一期間(別に1ヵ月である必要はなく,
恒常的に一定であれば足りる)に帰属するといういわゆる「期間区画」と各組 別製品が個別化(例えば,男性用自転車・女性用自転車・子供用自転車)してい るといういわゆる「対象区画」が明確になっていることが,この計算法の前 提条件となっているO
このため,組別総合原価計算は,一般に,計算技術的観点、から,付加計算 手法を適用した個別原価計算思考と分割計算手法を適用した総合原価計算思 考との混合形態的性格をもった計算法であるといわれてきた。継続製造指図 書 (Fortsetzung‑Fertigungsauftrag) というのは,本来的には,反復・連続的 に長期間継続して量産している事業場,例えばビール工場のように仕掛品が 時間的に間断なく加工されるいわゆる単種大量生産 (einheitlichMassenferti・ gung)形態の工場で発行される製造指図書のことをいうのであるO ところが,
この組別生産形態の場合に発行せられる継続製造指図書は,反復・連続的に 長期間継続して生産される製品の生産数量をロット (Serien) ごとに区切っ て生産することを指示する指図書であるが,その反復性・連続性という点か らみて,本来的な継続指図書 (Fortsetzungsauftrag)の性格を備えていると ころから,これを継続製造指図書と呼んで、いるO そこで,上述のような 1つ の典型的な組別生産形態を前提に考えた場合,一般論的には,個別原価計算 の場合の特定製造指図書のように,原価要素の区分・集計が製造指図書番号 (Fertigungsauftrag‑Nr)別に行なわれないで,計算の性格上製品種類別に区 分・集計されることになるD
だが,この組別総合原価計算の場合の製造指図書は,その適用業種におけ る製品の性格 (Leistungs・Charakter) の相違によって,継続指図書とはいっ ても,その性格の変化と異なる意味合をもってくるので,これを上述のよう に一般論的に 1つの典型的な生産形態を対象に,抽象化ないし固定化して一 律に規定することにはいささか問題があるO というのは,缶詰工場における 鮭の缶詰・牛肉の缶詰・密柑の缶詰・桃の缶詰などのように,材料も違い,
その形状・大きさ・品質なども違う,いうならば組別製品問の類似性 (Ver‑ wandtschaft)が少なく,またその反復性が非常に不規則な企業では,ロット
i主4)
別生産 (Serienferti gung) 的性格が強くなり,原価要素の区分・集計も個別 原価計算的手続によって指図書別に行なわれるO そうなれば,形式的には,
この組別の製造指図書は,継続指図書であっても,実質的には特定製造指図 書的性格をもつものとなるO
E 製造指図書の経営活動上の意義
これまで,それぞれの製造指図書(特定製造指図書・継続製造指図書) が, 原価計算上もつ性格を中心にみてきた。そこで,次に,仕様書(材料明細表
・作業手順表)などの付属添付書類を含めた意味での製造指図書がもっ,い
注4)組別生産(Sortenfertigung)とロット別生産(Serienferti gung)との相違は,周知のように,これ を端的に区別すれば,前者の組別生産の場合には.数種の類型製品が生産されまた反復製造期間が長 期的であるのに対して,後者のロット別生産の場合には,数量的に限定された単一製品が生産され.
また反復製造期間が一定期間に限定されているという点にある。
60 経 営 と 経 済
ま1つの側面について考えてみるO それは,この製造指図書が,生産活動上 ならび原価計算実施上別の極めて重要な役割を果すということであるO 工企 業の1つの主目的は,製品の生産活動にある。この製品の生産活動は,いう
までもなく,この製造指図書の発行によって初めて活動が開始され,また工 場の現場責任者に対して原価要素である材料・労働・経費を消費して作業ま たは製品の生産を行なう執行権限が付与されるO このようにして,この製造 指図書は,生産活動の1つの軸となり,一方では各種予算(例えば,製造予算
・材料購入予算・その他)ならびに各種作業管理計画(例えば,工程計画・手順 計画・日程計画・その他)などの作成に役立ち,他方では各種の報告書(例え ば,材料出庫報告書・作業時間報告書・出来高報告書・その他)の作成活動が開 始されるなど重要な役割を果すことになるO これと同時に,原価計算係は,
当該指図書に関する原価の区分・集計のための執行権限が付与され,次掲の
注 5)
図1‑2のような業務分担にしたがって原価計算業務を開始し,また原価計 算表 (cost sheet)を準備する。
原 価
材 料 費 会 計 棚 却 資 産 記 録 棚 却 資 産 管 理 労 務 費 会 計
作 業 時 間 記 録 賃 金 支 払 帳 賃 金 計 算 表 税 金 そ の 他 控 除 計 算
図 1‑2
製 品 配 賦 原 価 計 算 表 お よ び 報 告 書
このように,原価計算実施のための基礎条件となっているこの製造指図書 は,原価計算の研究上避けでは通れない数多くの意味・内容を含んだ重要な 書類であることを知るべきであるO
注5)山辺六郎著「管理会計」千倉書房.62頁。
2 製造指図書のもつ給付関連性と原価管理の機能
I 製造指図書の給付関連性の機能
ここに製造指図書の給付関連性の機能とは,製造指図書が,製品生産のた めに使用される財貨価値(材料費・労務費・経費)の消費としての原価とそこ で生産される製品とを結びつける橋渡しの役割を果たすことをいうO
わが国「原価計算基準」は i原価の本質」の項で「原価計算制度におい て,原価とは,経営における一定の給付にかかわらせて,把握された財貨ま たは用役の消費を,貨幣価値的に表わしたものである」と規定しているO こ の規定の「…一定の給付にかかわらせて」というのが,正にここでいう「給 付関連性」のことであるO だが,これを裏を返していうならば,経営におけ る財貨価値の消費が,原価として認識されるためには,経営における一定の 給付(製品)に関連したものでなければ, これを原価として認めないという ことを表わしているO では この製造指図書が 「給付関連性の機能」を果 たすとは,一体具体的にはいかなることをいうのか。
1. 特定製造指図書の給付関連性の機能
個別原価計算において発行される特定製造指図書の給付関連性の機能とは,
そのチームの野球選手の背番号がその選手を代表するように,この特定製造 指図書に付された指図書番号は当該製品を代表するので,この指図書番号を 指標ないし手掛りとして,一定の給付にすべての原価要素が区分・集計され
ることをいうO
部門別個別原価計算では,原価要素別計算を通じて,次掲の図2‑1のよ うに,すべての原価要素が製造直接費と製造間接費とに分けられ,一定の給 付(製品)を代表するそれぞれの指図書別の「個別原価計算表」に区分・集 計されるo
経 営 と 経 済 62
2‑1 図
(製造直接費)
原価要素(材料費・労務費・経費)
原価負担者別計算 原 価 部 門 別 計 算
原価要素別計算
直接材料費ならびに直接労務費は,材 料出庫票ならびに作業時間報告書の製造指図書番号記入欄にその製品
製造直接費と給付関連性:
イ)
A製品の101番・ B製品の102番) が記 を代表する指図書番号(例えば,
これをそれぞれ指図書番号別に分類・整理し,上掲の 図2‑1に示すように直接材料費集計表・直接労務費集計表を通じて,
各指図書番号別の「個別原価計算表」の直接材料費欄・直接労務費欄 入してあ.れば,
にそれぞれ記入するといった具合にして関連づけられるO また,直接 A製品の設計費・外注加工費 :B製品の特許権使用料・試 経費(例えば,
作費・その他)については,経費明細表から指図書番号別に分類・整理 された直接経費集計表を経て,同じく各直接経費欄に記入するといっ た具合にして関連づけられるO
製造間接費は,製造直接費のように製 製造間接費と給付関連性:
口)
造指図書番号という手掛りをもたないので,指図書番号別に区分・集 計することができない。そこで消費原則における「間接費の直接費 の計算思考に (Grundsatz der di rekten Kostenzurechnung)
用化原則」
基づいて,前頁の図2‑1に示したように,部門費集計表・部門費配 分表・製造部門費配賦表などを利用して行なう部門費計算を通じて,
一定の指図書番号別の製品に結びつけ,これを当該製品を代表する各 指図書番号別の「個別原価計算表」の製造間接費欄に記入するといっ た具合にして関連づけられるO このようにして,個別原価計算では,
特定製造指図書に付された指図書番号が,原価と製品とを結びつける 橋渡しの役割,つまり給付関連性の機能を果たすことになるO
2. 継続製造指図書と給付関連性の機能
継続製造指図書は,総合原価計算が実施されているような生産形態のとこ ろで発行せられる。総合原価計算の特徴は,すでに第1節で説明したように,
製品の単位原価が,一定期間の完成品原価総額をその期の完成品総数量で除 して算定されるいわゆる分割計算法が適用されるところにあるO そこで,こ の計算法のもとでは,完成品原価と完成品数量とが,恒常的に同一期間に帰 属しておれば足りるのであるO したがって,この総合原価計算法では,計算 法の性格上,発生原価を指図書別に区分・集計する必要はない。そこで,発
1主6)
生原価を継続指図書別(例えば, No10‑1, 10‑2, 10‑3, .…・・) に区分・集計す るという説明は,むしろ総合原価計算法の特徴を明らかにする上からは不適 切であるといわれてきたO
確かに,総合原価計算法の特徴からすれば,一般論的には全くその通りで ある。そこで,こうした点も踏えて,以下総合原価計算法が適用される基本 的な2つの生産形態である単一製品生産形態と組別生産形態のもとでの継続 製造指図書と給付関連性の機能との関係について,具体的にみることにするO
イ) 単純総合原価計算法における継続指図書と給付関連性の機能: 単 純総合原価計算は,本来的には,仕掛品が時間的に間断なく加工され るようないわゆる単一製品生産形態ないし単種大量生産工場(例えば,
ビール・製粉・その他の工場)で適用される。こうした単純総合原価計
注6)ここで,尚10は,そこで生産されている製品を代表する番号を示し.1. 2. 3……という番号は,そ れぞれ継続して発行される各指図書を区画ないし識別する番号を示す。
64 経 営 と 経 済 算法では,前頁の総合原価計算法の特徴の説明からも明らかなように,
原則的には,原価要素を直接費と間接費とに区分する必要はなく,原 価要素の形態別分類にしたがって,次掲の図2‑2に示すように,材 料費については消費材料集計表に,労務費については消費賃金集計表 に,経費についてはこれを経費支払表・経費測定表・経費月割表・経 費発生表などを利用して経費集計表に,それぞれ分類表示し,計算期 末にまとめて原価計算表に記載されるO
図 2‑2
単純総合原価計算表 昭 和 年7月分 材 料 出 庫 票 消費材料集計表 原価費目 金 額 作業時間報告書
戸一‑消費賃金集計表 ト一一一世
直 接 材 料 費 加 工 費 経 費 明 細 表 経 費 集 計 表
当期製造費用 期首仕掛品原価
Aロ、
期末仕掛品原価 完 成 品 原 価 完 成 品 数 量 単 位 原 価
このようにして,この単純総合原価計算法では,期間区画(1ヵ月または恒 常的一定期間)に基づいて r期間製品J(Periodenleistung) と「期間原価」
(Peri odenkosten) とが関連づけられるO したがって, この計算法のもとで の継続指図書は,機能的には原価実践面では全く名存実亡で,給付関連性の 機能を果たしていないことになるO だが,これが,次のような経営事情のも
とでは,いささかその性格を異にしてくる。
(1) 生産計画 (Leistung'sprogrogramm)または製造高予算(製造高予算数量
=販売予算数量+所与期末在高数量一期首在庫数量)に基づいて計画的に製
品の指定数量が指示されている場合(形式的には,ロット別生産形態の性将 をもつことになるL
(2) また,こうした工場に,原価管理目的のために,アウトプット法 (output method)またはパーシャル・プラン (partial plan)の標準原価計 算が採用されている場合。
こうした場合には,この単純総合原価計算法のもとでも,当該指示呈を対 象に,発生原価実績を継続指図書別に集計することが必要となるO したがっ て,ここでの原価集計には,各継続指図書番号が,原価要素を当該指示数量 の「期間給付」と関連づける 1つの指標となり 形式的(原価実務的)には 給付関連性の機能を果たすことになるO
口) 組別総合原価計算における継続指図書と給付関連性の機能: 組 別 総合原価計算では,単純総合原価計算の場合とは違って,各組製品別 にそれぞれ継続製造指図書が発行され,一定の「期間区画」の発生原 価が各組別製品を対象に組匠接費と組間接費とに分けられ,組直接授 は各組製品に直課し,組間接費は一定の配賦基準に基づいて各組製品 に配賦されるO これまで組別総合原価計算法の性格的特徴を強調する ために,この計算法のもとでは,原価要素は,個別原価計算法の場合 とは違って,組別に発行される組別継続指図書番号を指標として区分
注7lアウトプット法は,一般に,例え生産計同はあっても生間ロ yトに区別する必要がないか.あるいは 反別しにくい単種大尽生足形態の企業に適用される。この計算法のもとでの製品の標準原価は.一定 の「期間区岡」の製品の生産量に.標準原価カードに記載されている偲準単位原価を掛けて算出され る。したがって,ここでは,出来高が本A礎となる。この勘定記入関係を図示すれば,次のようになる。
f :t 柱ト 日 一 一 一 一 言 実 際 原 価 │ 際 準 原 価
('だ 1:;祭lii.f而XI (襟準lii.f出jX
実際ii'i'l'(J.t)I 際司f託行'l'(!,tl
民而C>;~ ~N
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Ii'i'l'(f回 俗 芸 災
ii'i '1'( tt I,t C>;~J耳
Iは'l日Y価f係各己之差z羊'J宍異空耳企=つ実Lだtp中F際T祭~~計げ消l'口'íば'['(1一民 x(什1標1主~f司1色it.叫iAイf守立:T!原京而f佃価目l一実F際祭it削iド.iイf佼立跨原i{価面) i討消i自'í'/伐Y吋主数~I民i誌t手芳若f主"~J呉~=t標票i却準F侠if価回f絡各x( 際i冷tfi鳥3吋引;計'刊i刊'(I,t一P実i丈~p際'1,~詩i刊'(M)
66 経 営 と 経 済
‑集計するのではなく,一定の rJtJJfHJ[三副」の組別製品を対象に区分 .‑tt計が行なわれると説明してきたD
だが,総合原価計算とか,個別原価計算とかいう名称は,コジオール教授 も指摘されるように,必ずしも両計算形態の本質的相違を明確に特徴づけて いるとはいえなし'0組別総合原価計算(付加計算法と分割計算法との混合形態) の場合は,特にそうであるO 両計算形態の名称は, 多くのドイツの原価計算 学者によって指摘されてきたように,実務ないし実践上から発達してきた原 価計算の手続き上の特徴にしたがって区分された概念で,計算内容的には生 産計画 (Produktions‑Programm) とか,製品種類問の異同などによって原価 計算方法が変るといった可変的性格のものであるO したがって,原価計算形 態と製造指図書との関係も,常に対偶的関係にあるものではなし'0そうした 意味において,組別総合原価計算における継続指図書番号の問題も,計算法 の性格的特徴を強調するあまり,これを不可逆的に認識することには問題が あるOこの点,末尾の追記を参照されたい。
というのは,これを原価実務の面でみると,原価計算係が,各原価要素を 組別製品に区分・集計する場合,直接材料費・直接労務費・直接経費などの 組直接費については,先に述べた個別原価計算における製造直接貨の分類・
整理の要領で,各組別製品を代表する組別の指図書番号(例えば, S‑10, T
‑15, ¥¥'‑20) を手掛りに,製品組別に分類・整理し,これを消費材料集計 表・消費賃金集計表・経費集計表を通じて,次頁の図2‑3の組別総合原価 計算表の各組別製品椴lに記載するO
また,製造間接費集計表に集められた組間接賀については,同じく先に述 べた個別原価計算における製造間接費の配賦と同じ要領で,一定の「期間区 画」の組別製品に関連づけるために,次頁の表2‑1の計算例のように,一 定の配賦基準(例えば,直接作業時間・機械運転時間・その他)に基づいて,各 組別製品に配賦し,これを組間接資配賦表を通じて,次頁の図2‑3に示す
ように,組別総合原価計算表の各組別製品欄に記載される。
注 8) {主総好孝訳「コチオールfM価計算」千食会房.101氏。
2‑3
表一 算一 ιl
‑
Z山一原TA口一
悦一 口問
糊一閣
︐ 怠山 下
凡 B組製品
期 首 仕 掛 品 原 価 当 期 製 造 費 用
直 接 材 料 費 直 接 加 工 費 間 接 加 工 費
合 計 期 末 仕 掛 品 原 価
完 成 品 原 価
高山
計 原 一 価 口問 一原
掛一品
仕一成 合末=冗
住 ハ
期 首 仕 掛 品 原 価 当 期 製 造 費 用
直 接 材 料 費 直 接 加 工 費 間 接 加 工 費 材
料 出 庫 票 作 業 時 間 報 告 書 経 費 明 細 帳
(注)直接加l工費→夜按労務質・夜按経費 間接加l工費→直接加工費以外の製造間接貿
2‑1 表
組 間 接 費 配 賦 表
組 別 製 品 直接作業時間 配 賦 率 自己 賦 傾 A組 (No.S ‑10) 200 100 20.000 B組 (No.T ‑15) 500 100 50.000 Cネ且 (No. W ‑20) 300 100 30.000
Z口L 計 1.000 100.000
100.000円 1.000時間 ( 1:mの同2‑3の製造¥
組間接 tt の集計額 (BJ~~~~~:l.~~.~.;,-r<M1)
¥間接t'(集計表の傾 / 1原価計算期間の実際直接作業時間
100.000円
一寸五而 =100fIl (iiIJ妾作業1時間三iたり配H比率)
原価管理目的のた この組別総合原価計算を採用している企業が,
さらに,
またはシング めに,次頁の図2‑4のようなインプット法 (input method)
の標準原価計算を導入した場合,標準原佃iとの比 (single plan)
ル ・ フ ラ ン
各車[i~
一定の「期間区画」の組別製品を対象としてのみならず,
車交のために,
続指図書別にも発生原佃i実績を集計する必要が生ずるD そうなれば,益々各 実務的には,原佃i要素の各組別製品への‑1t;Hの子 組別の羽毛続指図書番号は,
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68
掛りとして重要な意味をもつことになるO
図 2‑4
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オ 巾 不・ ‑ T
市
× ) 異 価 量
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経 営 と 経 済
4 口口<=1
材料 m1~1面絡差異=実際 mt'(1IX( 標準単位原価一実際単位原価)
材 料 消 費 数 試 走 異 = 標 準 価 絡x(標準汗i'l?数量一実際消費数量) 貸 率 差 異 = 実 際 作 業 時 間x( 標 準 氏 率 一 実 際 貸 率 ) 作 業 時 間 差 異 = 標 準 貸 率x(標準作業時間実際作業時間)
原価理論(例えば,消費原価理論・その他) の本質は,原価実務の解釈と論 証から成立ち,原価実務は事実と行為(計算手続)とから成立っている。こう
した場合,この組別総合原価計算において,原価計算係が原価要素を製品を 代表する原価計算表に区分・集計する行為(計算手続)に,各組別の継続指 図書番号が現実にその手掛りとして使用されているという「事実」からみて,
実質的には組別総合原価計算における継続指図書は,給付関連性の機能を果 たしていると解釈した方がより現実的で、妥当であるといえるO
E 製造指図書の原価管理の機能
特定製造指図書にしても,継続製造指図書にしても,一般にその発行に当 って,これらの製造指図書の命令内容を具体的に裏付けるために,材料明細
表 (dill of material) ・作業手順表 (route card)などのいわゆる仕様書(sp‑ ecifi cations) という付属明細書が添付されるO ここに製造指図書の原価管理 機能とは,これらの付属明細書類としての仕様書が,企業の製造活動におい て消費される財貨ならびに用役の管理に役立つことをいうO
材料明細表には,その製造指図書によって代表される製品の製造に必要な 材料の種類・品質・型・規格などことこまかく記載され,また達成可能な歩
j主9)
留りに基づいて決定される標準消費量・消費場所などが指示されるO いま,
f反に,例えば,注文によって家屋が建築されているとするD そうした場合,
当該製造指図書の材料明細表に指示されている屋根瓦の枚数が, 100枚であ ったとするO ところが,それにもかかわらず,実際には 105枚使用されたこ とになっているO そこで,どうして標準指示数量と実際との間に5枚という 差異が生じたかを調査するO 調査結果,その原因が,職人の不注意から破損
したものだと判明したならば,次の作業ではこうしたことのない様に管理 するなどが,この一例である。
次に,作業手順表には,当該製造指図書に基づいて行なわれる作業または 製品の製造に必要な作業内容・作業方法・作業手順ならびに製造技術上最も 合理的と考えられる作業区分・標準作業時間・段取時間などがことこまかく 指示されるO こうした場合,例えば,当該製造指図書・に添付された作業手順 表に指示されている家屋の棟上げの標準作業時間が, 5時間であったとするO
ところが,それにもかかわらず,実際には, 6時間が消費されたことになっ ているO そこで,どうして標準作業時間と実際との間に 1時間という差異が 発生したかについて調査するO 調査結果,その原因が,作業方法・作業手順 のまずさからきていることが判明したならば,次の作業でこうした事が起ら ない様に,生産管理部で検討し改苦・し管理するなどが,いま 1つの例である。
注9)歩間りは欠の計算式によって求められる。
主 要 原 材 料 投 入 京 減tIUlt 主要原材料投入lit 歩間り
歩fllりは.原材料の良し悪し.機械設備の精度,技術の程度とも街按な問係をもっている。だが.そ うした条件も防えて.fR歩り不を向J:させることは,原価引下げに何めて重要である。
70 経 営 と 経 済
こ の よ う に み て く る と き , こ こ に い う 製 造 指 図 書 の 原 価 管 理 機 能 と は , 当 該 作 業 ま た は 製 品 の 製 造 に 当 っ て , そ こ で 発 生 す る 原 価 要 素 で あ る 材 料 ・ 労 働 用 益 の 消 費 数 量 の 管 理 , つ ま り 物 量 管 理 (physical control)に役立つとい
うことであるO
[追記]
ケルン学派 (Kolner Shule)の学者のいうように,その原価計算が.個別原 価計算に属するか,それとも総合原価計算形態の原価計算に属するかの区別は,
その中間過程の計算手続きにあるのではなくて,製品の単位原価が,付加計算 法によって算定されるか,それとも分割計算法によって算定されるかによって 区別されるべきである。そうした意味では,組別総合原価計算において,原価 要素が製造指図書番号を指標に集計されたとしても,総合原価計算の性格を損 なうことはなPoというのは,組別総合原価計算では.中間過程の計算手続き がどのようであれ.製品の単位原価が分割計算法によって算定されるからであ
る。