恐慌の「底」と不況過程の諸問題
恐慌の「底」と不況過程の諸問題
藤田暁男
151
1.問題点
2.再生産の中断と恐慌の「底」
3.恐慌の「底」・不況過程と労働者階級 4.むすび
1.問 題 点
恐慌開始後,価格が呆落し,利潤率,生産品等が急落して行き,信用の連 鎖的崩壊,倒産の波及など,下降過程が累積的に進行する点については,多 くの論者によってかなりていねいに論じられている。また,不況過程におい て形成される回復要因についてもかなり突込んだ議論がなされている。しか し,恐慌後の下降とこの不況過程における回復との問にどのような状況があ るのかはそれらほど十分に注意されてはいないように思われる。そこで,恐 慌後の累積的な下降がどのような要因によって停止し,そこにあらわれる局 面はどのような意味を持つと考えるべきかを,恐慌の「底」の問題としてと りあげたい。これが本稿の第一の問題点である。
第二の問題点は,上記に関連して出てくる問題であるが,恐慌から不況過 程においての労働者階級の状況を,再生産の一環として,また一つの主体的 存在としてどのように位置づけるかという点である。この論点は,一般に は,恐慌の影響による労働者階級の貧困激化という結果的状態として論じら れることが多く,恐慌から不況を経て再び回復へ向う循環の流れの中で,労 働者階級はどのような形で再生産の一環として組み込まれているかという観 点は稀薄であるように思われる。
この二つの問題点の内容を今少し追求しておこう。
まず第一の恐慌の「底」の問題点について,それを資本の再生産という理
論的
i
争組で説明するのは不可能という鋭い問題提起に注目しようo
北古賀H 5 ' i
幸氏は次のように云われる
r
恐慌が再生産の中断であり,そして資本の再 生産によって有効需要が形成されるものとすれば,恐慌の転落を阻止する有 効需要を資本の再生産によって論じることは理論的には不可能であるという 以外にはなく,したがってr
資本一般」の限界では規定しえないものとし て,資本の再生産以外のものによって説明する以外にないであろう。勿論,恐慌が発生して再生産が中断されたとしても,現実には生産が全面的に停止 する事態は発生しえないであろう。全般的過剰に陥ったとしても貨幣はどこ かに滞留し,その貨幣の所有者は過去の蓄積による貨幣の所有者とともに,
自己の再生産のために消貨を継続する。恐慌期の有効需要はかかる階級の,
すなわちとくに国家をも合めた非生産的諸階級の?百貨によって説明する以外 にはない。そして,その消賀に支えられて最小規伎の再生産がようやく維持さ れ,そのことによって投資が継続されて就業労働者の
j
百貨も辛じて維持され ることとなる1)
0J
この見解は,後にもふれるように様々な合苔を持つもの であるが,とりあえず次の二つの重要な論点を捉起していることに注目しよ う。第一は,恐慌は再生産の中断であり,従って,後続過程を辿続的にとら えることは出来ないという問題である。他方で恐慌は,述続する景気f
盾環の 一局面一一特別の怠味あいを持つてはいるが一ーである。これらをどのように整理して把握すべきであろうか。第二の論点は,恐慌発現後の累積的な下 降過程を停止させるものは何かという問題である。資本の再生産以外にこれ を求めねばならないとすれば,資本の再生産は単に抽象的次元でのみ問題に すべきものというにとどまらず,その内容に現実践近の可能性を持たない限 られた論理とならないであろうか。これら二つの論点を追求することによっ て,恐慌の「底」の内容をかなりの程度確定することができるであろう。
第二の問題点である恐慌,不況における労働者階級をいかに把握すべきか について,置塩信雄氏が「下方への不均衡累積過程の上方への反転の必然 性」という注目すべき論点を提出して,次のように云われる点に注意しよ う
r
反転の必然性」として,下方への累積過程による「利潤存在の条件の 侵害」についでr
賃労働制維持の条件の侵害」をあげられ,恐慌の結果と恐慌の「底」と不況過程の諸問題 1 5 3
しての大量失業の累積により I 労働者階級は資本家なしの生活を探究しな ければならず,それは賃労働制の維持が困難になることを志味する
Dそ し て,労働者階級はおそかれはやかれ資本制の生産関係、の根本的変草のために 立ち上がらざるをえなくなる 2)
0J 従って, I
手Iji 閏の実現,生産の困難」と 共に,乙れらの資本制再生産の条件の「侵害 J は I 資本制存続を前提とす るかぎり上方への反転の必然性をあらわす」と云う
Dところで,失業者は産 業予備軍として資本制存続の,拡大再生産の不可欠の条件でもある。失業者 の累積がどの程度から再生産の条件でなくその条件の「侵害」になるのかに ついてはかなり民主な検討が必要であるように忠われる
Oそれら二つの問に は,労働者階級の抵抗とそれの資本の迩劫への組み入れの様々な形態があり うるからである
O労働者階級の状態を考!去に入れた恐慌における再生産の中 断と述続の問題をどのように考えるべきであろうか。
註
( 1 )
北古賀勝辛『恐慌の理論的研究~ (ミネノレヴァ苫房1974 年) 128 頁 。 ( 2 )
泣塩信雄『苔杭論」第二版(筑摩書房1976年) 242 頁 。
2 . 再生産の中断と恐慌の「底」
論点の第ーは,恐慌は再生産の中断であり,従って,後続氾程を迎続的に とらえることができない点をいかに把;思すべきかということである。さらに 問題をしぼれば焦点は次の点にある
O恐慌後の下降過程で再生産の中断が起 こる場合,それば単なる無方向な混乱か,それとも一つの方向を持った下降 過程であるかという点である o i J i
j者に力点がかかる把握の場合,後続氾程の 説明において資木の再生産以外の要因を強調せざるをえなくなろう。後者に 力点がかかる把捉においては,恐慌が再生産の焔少をもたらすという考
aえ 方になろう
Dここでは後者の考え方に立って検討を進めるが,その場合も,
「この焔少再生産への移行は,再‑生産過程の数:IT1 I Y '.1見地からみれば,資木の
価値;日表現についてはもちろん,物 5 2 的宗材的
lとも述続性の中断をな味する
ことほ銘記されねばならなし'¥ 1)
0J のである。
そこで,このような再生産の縮少,数量的中断における下降過程に一つの 方向があるとすれば,それはどのようなものであろうか。かつて,この点に 関連して林直道氏は
r
原始的価値法則の貫徹」という表題のもとに,次の ような見解を提示された。r
資本主義の矛盾にみちた発展は,との平均利1 f i 9
率法則の作用を,周期的恐慌のたびごとに,一時的に麻坪せしめ,やがて再 び循環が開始されて平均利潤と生産価格の体系が再建されるまでの間,この 間際をぬって,一時的に,以前の原始的な価値法則を,赤裸々な姿のまま露 出させると考えられるのであるわ。」乙れは,恐慌時の価格下蕗を,生産価 格への還元とみることへの批判を含んでおり,K
・マノレクスの「恐慌は価値 法則の貫徹」という把握に特別の:意義を見出そうとする見解であるが,これ 以上の内容の説明は見当らない口恐慌後の価格下落がいかなる意味でも生産価格への帰結でなく,かつ何ら かの意味で「価値法則の貫徹」であると云う場合,そ乙l乙次のような見解が あらわれえよう。即ち,価値均衡としての単純再生産表式をその局面を表示 するものとする考えである。例えば,吉村達次氏は,
r
ある意味では恐慌は 消費の範囲に生産を適合せしめることにほかならないからである。生産が消 費のために行われるかのごとく資本制的再生産をえがき出す単純再生産表式 は,現実的には過程の乙の局面を表示するものである針。」と云うD この見 解は,周知のようにr
均衡(再生産の均衡条件)の不均衡化(生産価格 の成立),不均衡化(生産価格での均衡)の強力的均衡化(価値均衡への復 帰的)J
という形での変動過程の分析視角にもとずくものであるD 乙のいわ ゆる「二律背反説J
は,恐慌に伴う価値破壊,再生産の中断という断絶の側 面への考慮が稀薄な点,さらに,恐慌の「底」を価値均衡とする考えには疑 問があるが,生産が消費 ~C 適合させられ価格が価値に引き寄せられる形の 新たな価値関係の形成が示唆されている点には注目したい。恐慌後の価格下落は,価値法則の貫徹という発想に沿って考えるならば,
好況,日玄惑別における価値から大きく乗離した価格が,価値草命や価値破壊 によって,単位商品当りにおいても社会的総量においても,急激に減少しつ つある価値一一諸商品の社会的必要量の減少を諸産業問,諸階級間相互にひ
恐慌の「底」と不況過程の間諸題
1 5 5
きおこしながら進む価値形成・実現の減退過程=再生産の縮少過程ーーに引 き寄せられていく過程,暴力的に均衡化していく過程である。恐慌は連続性 の中断ではあるが,その間商品交換が全く行われないわけではない。激変し ながらも刻々と変動する新たな価値関係を内容とした商品交換は行われてい ることは云うまでもない。その場合,社会的必要量の編成が大きく変動し,
量的にも減少することにより,新たな社会的必要量の編成を基礎として新た な価値関係が形成される一一新たな再生産編成が形成される一一ーと考えるべ きである
o
この新たな社会的再生産の編成は,次に述べる恐慌の「底」の規 定要因によってその基本的内容が与えられると考えることができょうD第二の論点,恐慌後の下降を停止させるものは何か,これは,恐慌後の下 降の「底」を規定するものは何かという問題でもある。いくつかの代表的と 思われる見解を検討しつつ論を進めようD
まず第ーに,供給の減退により価格下落の減退を導き出してくる見解をみ よう
o
この見解をとる戸原四郎氏は次のように云うr
価格は低下するにしても,その低下!陪をしだいに縮少してゆくであろう。というのは,あいつぐ 価格の低下によって,利潤を得ながら生産を継続できる資本は減少し,した がって生産拡大への刺激が衰退すると同時に,一部の劣等条件にある資木 は,生産に投下した流動資本部分をさえ回収できない状態に追い込まれて,
生産の停止を余儀なくされ,これら両面からの供給の減退が価格の大幅な低 落を回避させるようになるからであるD ……全体としては,劣等条件の資木 の淘汰をともないつつ,物価は軽微な低下をくり返す程度に落ちつき,いわ ゆる底入れの状態を迎えるのである町。」ここには,宇野理論における他の 論者と異なり
r
底」に対する問題芯識がより明確に存在する。しかし,「供給の減退一一劣等条件の資木の淘汰」は確かにあらわれるであろうが.
この論述の限りでは,同時に守,
j
要の減退も同じ程度にあらわれるo
従って,価協の大
I ! J E J
な低下が回避されるかどうかは限定しえないであろうO 新投資活 動の停止(減退でなく)以後のこの局面では,既存生産力の扱業の減退の程 度を規定するものは市要の大きさであり6)
他の局面とは追った状況が考応 されねばならない。だからこそ,前にふれた林氏のような「原始的価値法則の貫徹」といった表現も山てくるのである。
第二に,資本
i l l
リ再生産以外の消費を「底」の規定要因と考える見解をみよ う。この見解は先に引用した(152
頁)北古賀氏の論述にみられるo
要点は,「資本の再生産以外のもの」である「国家をも含む非生産的諸階級の消白」
によって,恐慌による再生産の中断のもとでの「最小規模の再生産がようや く維持され」る,というものである口
この見解の捉起する問題は,恐慌の基本的把握にかかわる根深い内容を持 っている。また,恐慌対策を軸とする経済政策論への示唆をも合み興味深 いD そこで
r
恐慌が再生産の中断であり,そして資本の再生産によって有 効古要が形成されるものとすれば,恐慌の転溶を阻止する有効需要を資本の 再生産によって論じることは理論的には不可能であるという以外になく,し たがって,r
資本一般』の限界では規定しえないもの7) J
という把握は,恐 慌は「資本一般」の枠内では十分理論的に説明出来ないことの表明とも受け とれるD そしてそこに,恐慌における「資本の専一的支配の限界的」を明示 する鋭い立論があらわれうるD確かに,恐慌は,世界市場恐慌として把握されるとき,景気循環の他の諸 局面とは追い
r
前提をのりこえることへの全般的な指示であり,新しい歴 史的形態の受容への促迫である的。J
という,資本の究極的限界が示される 特有の位‑ill1を有しているr
再生産の中断」もより基礎的論理次元でこの特 有の位置を示していると云えようO しかし,恐慌はそのような特有の位置を 持ちながら,周期的にくり返される循環性恐慌として発現しているのであ りr
一循環の終点でもあればまた新たな一循環の出発点でもある10) J
乙 とを理論的に示さねばならない。従ってまた,恐慌は「段乱された均衡を一瞬 間回復する暴力的な煤発11) J
という把握もなされる。云いかえればr
資本の再生産」の中断の中に均衡の回復と次なる循環への準備という内容を持 たねばならない。そして,景気循環のー帰結として恐慌をみる外はないかぎ り,また,循環は重ねる毎に量的変化を加えるとは云え一回限りの過程でな いかぎり,恐慌も他の循環諸局面も同じ論理次元の再生産論で把拒されうる のではなかろうか。もし,恐慌の「底」の再生産が「資本の再生産」以外の
恐慌の「底 J と不況過程の諸問題 1 5 7
ものでの補完を不可欠とするならば,そのー循環以外の循環での再生産は,
「資本の再生産」以外のものを含む形でしか把握されないことになろうO 恐 慌による再生産の中断は,あくまで「数量的見地」からみての中断であり,
従って,その過程の中で次期の資本の再生産が形成されていくものとして把 握されねばならない。ともあれ,恐慌の「底」特有の問題とその困難さは,
中断と連続という矛盾した二面性をそれぞれ十分に配慮した論理展開をしな ければならないところにあるD
第三の見解として,資本家階級の個人消費が「底」を規定するという考え 方をみよう。置塩信堆氏は,
I
苔積論」の旧著(第一版)においてI
下方不 均衡累積過程の停止」という項目のもとで明快に次のように云うI
労働者 の消費の大きさは従属変数であるo
では,独立変数は何か。それほ資本家の 個人消費である。補境需要も行なわないほど,資本家が悲観的な状態にあっ ても,彼らは一定の個人消貨を行なわねばならないし,また行ないうるo …
・・もし,資本家の個人消費が一定で動かないと想定すると,ある一定期間,
この生産状態が続く。これは,下方へ累積過程が極限までゆきついた状態で ある。そこでは,資本家の個人消貨を支えるための生産(その生産のために 必要な労働者の消費をふくめた)だけが行なわれ,生産水準はきわめて低い ところに一定期間定常状態を保っているD 資本家の個人消費の一回の低下が ないかぎり(そしてわれわれはそう想定する) ,生産のさらに下方への累杭 過程はないD その怠味で,生産水準の底である
o
そして,その底を規定する 要 因 は , 資 本;! J
Jjにふさわしく,資本家階級の個人消究である12)0 J
氏の政 新の第二版では,この「底」の論理はそのまま踏襲されながらもI
底」の 取り扱いそのものがより現実的諸規定のもとで消極的なものとなっているo
例えば,次のような論述がなされている
I
下 方 へ の 累 積 過 程 は 停 止 せ ず に,どんどん進行し,i i i )
で述べた資本家の個人n U 1 1
によって支えられる底( f l o o r )
にまで達してやっと作止するであろう。また,国家支出などによ る再生産外的支出が者増するというような要因がなければ,反転して上昇に 転じることはないであろう。だが,われわれが知っている景気循環の歴史で は,下方運動が上述の長底にまで達したことはなかったし,国家支出の増大というような要因なしに,景気は上昇へ転じている(ただし,
1 9 3 0
年代の大 恐慌以後は別)13)
口」この「反転の諸契機」についての本主の論述は説得 性の高い教えられる指摘が多いが,当面の「底」の問題については次のように考える。
下降の「底」の規定要因を上述のように, 資本家の個人消資のみとすれ ば,恐らく「景気循環の歴史」においてその「底」まで達したことはなかっ たと云わざるをえないであろうD もともと資本家の個人消費のみを基礎に栴 成される「底」とは,抽象的な理論的想定のもとでのみ考えうるものであ るD 例えば
r
労働者の消賀需要についてみると,想定により,生産財部門 の労働者は全部解雇されている。そこでは需要が皆無なため,生産は行なわ れていない。それゆえ, ここからは消賀需要は生じなし可14)
0J
といった明 らかに非現実的想定がなされているO とは云え,資本家の個人消費が規定要 因とされた根拠には十分に注目すべき主要さがある。r
消資財部門の労倒者 の雇用状態はどうか。それは消費財部門に対する需要に依存するD だから,労働者の消費の大きさは従属変数であるO では,独立変数は何か。それは資 本家の個人消費であるD 補填需要も行なわないほど,資本家が悲観的な状態 にあっても,彼らの一定の個人消費を行なわねばならないし,また行ないう るD
15)
」乙乙に云う「独立変数」の規定はr
資本論」第2 3 i 7 L r
資本主義 的蓄積の一般的法則」の中の周知の文一一「蓄積の大きさは独立変数であり 賃金の大きさは従属変数であって,その逆ではないのである16)
0J
一ーからの展開であると思われる。しかし,マルクスの云う「蓄積」と置塩氏の「資 本家の個人消費」とでは事情が追うであろうD 資本の蓄積からみれば資本家 の個人消費も従属変数でしかない。問題は資本の蓄積が停止した状況下で,
資本家の個人消費が独立変数に転化するかどうかであるD それは少くとも資 本の蓄積が賃金に対して持っていた関係とは追うO そこで云う独立変数の芯 味は,実現された価値はまず資本家に帰属するが故に,後払いの賃金支払い のもとでは利潤は先取されうるという点にあると考えられる。その場合の賃 金は失業者の増大と共に切下げられるが,それは資本家の個人消買の先取か ら直接に結果したのではなく,資本蓄積の減退が作り出したものである。ま
恐慌の「底」と不況過程の諸問題
1 5 9
た,実現された価値から資本家の個人消費が先取されうるとは云え,その個 人消費に当てられる利潤形成のためには一定の価値実現が不可欠であるか ら,多かれ少かれ何がしかの賃金支払いと生産手段支出が必ず随伴している と考えられる。従って
r
底」を規定する需要を問題とする場合,資本家の 個人消費は他の諸要因とは対照的に景気変動に影響をこうむることの少な い要因町という特色に注意を払う必要はあるが,それのみが独立変数とし て「底」を規定するとは考えにくいのである。そこで,第四の見解として,第三の見解が「底」の規定要因を窮極のも のに絞ったのとは対照的に,様々な諸要因を列挙する見解をみようO この
「底」の把握を早い時期に明確な形で提示した宮塚良三氏は次のように云 う。
r
この過程(再生産の縮少過程)も1m際限に進行してゆくものではな く,左記の諸要因によっておのずから下降の「底」が形成されるO 一一第ー に,企業は(一時的にはともかく,長い期間に亘って)その工場を完全に閉 鎖し機械設備を全く休止せしめておくよりは,たとえ僅少の利潤しかえられ なくとも或る程度の操業をおこなうほうが一一採算上,また市場確保の観点 からもー一一有利であるから,正常能力以下の迩伝ではあれともかくも機械設 備の運転を維持してゆこうとするであろうことO ……したがって原材料に対 する需要も或る程度は保持されることとなり,また,第二に,雇用量も戎る 程度は維持され,前記の消費財価格の低落による相殺と相伐って,労倒者階 級の購買能力も或る程度は維持されるであろうことo
さらに第三に,手JI潤率 は激落し利潤呈は僅少となるにしても,資本家階級は過去においてすでに獲 得した利潤の貯蓄を消費支出して彼等にとってd限習的な最低限の生活水準を 維持しようとするであろうことD 第四に,地主,金利生活者.m
人,官吏等 の「確定所得者」ーーこれらの所得は「国民所得」のうちのかなりの部分 を占める一ーの府民力は不況過程において逆に増大するであろうこと。第五 に,……固定資本の更新はできるだけ延期されるようにするであろうが,し かし,企業が前記の理由によって或る程度の操業を維持してゆこうとするか ぎり,或いは既序の機械設備を全く廃棄してしまおうとしなし可かぎり,固定 設備の部分的克志r r
ないし補修がおこなわれえ,したがって,これまた或る程度の労働手段部門への需要が存在することになるであろう乙と
18)
0J
そし て,乙のボトムは「一極の単純再生産過程」とみなされているDこれら
5
つの要因はかなり現実性を持ったものとして取扱われているが,より基底的なものとそうでないものとを整理して把握する乙とによって,
「底」の問題の特徴をより的確に提示しうると思われる
o r
底」は下降の累積過 程の停止状態で形成されると考えて来たが,その下降の代表的経済現象は,恐慌が過剰生産恐慌として把えられる場合,価格下落であるO 価格下落が続 行している状態は,新投資の減退にとどまらず停止してしまった以後,つま
り,生産拡大の再生産における主導性が一時的に麻痔している状況のもとで は,既存生産力に対し需要が縮少し続けている状態と考えられるのであり,
多少の試行錯誤はあるとしても,市安を追う形で操業が調整されているとみ られるO 従って,需要の縮少が停止する場合に価格下落が停止すると考えら れるのであり,乙乙に「底」があらわれるとみてよいであろう
o
このような 見方からすれば,上記の第一と第三の企業におけるある程度の稼働という要 因は,上述のような新投資停止以後の下降過程のもとでは,その企業の商品 の需要状態に依存していると考えることができょうO 乙の需要の縮少の停止 は,生産の主導性の一時的麻痔の状況のもとでは,最終需要である個人消資 の縮少の停止を基底として考える外はないであろうO 上記の第二の労働者階 級の購買力,第三の資本家階級の?百貨,第四の地主等「陀定所得者」の賠買 力は,この内容となりうるが,第四の要因は,前にみた資本の再生産以外の 要因とみなされるので,結局,第二,第三の要因がとり出され,この資本家 階級の個人消費と労働者階級の?百貨を「底」の規定要因とみていくことにな るのであるOそこで,第五の見解として,資本家階級の個人消費と労倒者階級の泊費を 規定要因とする考え方の検討へ進むのであるが,乙れが本稿のとろうとして 立場である。資本家階級の個人?百貨は,支配階級の先取しうる所得として,
また,利潤が全く得られない場合でも,富塚氏も指摘するように,過去に獲 得した利潤の貯蓄によって,上位労働者の賃金以下ではない水準の慣習的な 支出として,賃金より下溶率の低い一定水準が維持されるであろう
O
しか恐慌の「底」と不況過程の諸問題
1 6 1
し,だからといってこの要因の最終需要の縮少に対する影響力を過少評価す ることのないよう注意する必要があろうO というのは,好況期に肥大する資 本家階級の者修品への支出が,者{多品産業を肥大化し,そこへ多くの労働者 が雇用されるが,恐慌発現後には,その支出部分は急激に削減され,従って 者{多品産業は急激に停滞し,失業者を噴出し,最終需要の縮少を促進せしめ るからである
o
しかも,資本主義社会の拡大発展と共にこの状況は規模を大 きくしていく傾向がある19)
。次に,労働者階級の消費の位置づけを検討しようO 労働者が資本主義的生 産において不可欠の生産要素であり,資本から与えられた賃金で資木から生 活手段を購入し,労働者の個人的生活も労働力の再生産として行わざるをえ ないことは改めて云うまでもない。また,そのような労働者階級の佃人前授 は資本の再生産のー契阪でしかない乙とも切らかなことであるO そこで,問 題の焦点は,労働者がそのように資本の生産,再生産[こ組み込まれていると は云え, 他の生産要素と異なり, 日々生活(生命維持)を要する人間であ り,主体的特質を持つ点にある。従って,労働者階級の不附の給持と再生産 は,資本の再生産のための恒常的な条件であるが,資本家は,フツレジョア社 会的自由のもとで
r
この条件の充足を安んじて労問者の自己維持木能と生 殖本能とに任せておく20) J
乙とになるD このような労倒者の持つ特質は,恐慌後の縮少再生産過程で他の生産要宗とは返った態容を持つように思われ る
o
その第ーは,恐慌と共に過剰生産が顕在化するわけであるが,前日少再生 産および「底」における再生産への過程で,労働力以外の生産手段は氾来JIと なった在荷を使用しうるので追加的元要を形成しうる余地は少ないが,ヲ~{IYJ 力の場合,失業が増大するとしても,応用労倒者が労倒力として政j f
旨するた めには,日々の生活が紙持されねばならず,賃金は大きく切下げられながら も継続して支払い続けられねばならない。このことが「底」における生活必 需品の一定の需要を継続的に形成すると考・えられるO 第二に,上述の場合よ り具体化された状況であるが,恐慌発現後,失業と賃金低下によって,さら に,資本家による損失のl
伝稼によって,労問者の貧困は極限に向って進む。同時に,この状況に対し「労倒者階級の自己維持木能
J
は,多かれ少かれ集図的な抵抗をひきおこす
D乙 の 抵 抗 は 二 つ の 側 面 を 持 っ て い る と 考 え ら れ る
O一つは,上述第一の点で述べた,労働者の日々の生活の維持を補強し,
結局 r 底」の再生産形成に組み込まれる側面である
O二つは,資本主義的 社会制度そのものに対する根本的反抗へと進展する側面である。これらは不 可分の現実的二側面であるが,恐慌の「底」を問題とする本稿では,ーの側 面に重点を置くことになる
Oそして,この問題は次節において,イギリスの 19 世紀中葉の現実を素材に検討される o
注
(1) 高木幸二郎『恐慌論体系序説~
(大月主庖 1 9 5 6
年)36 0 頁 。 ( 2 )
林直道『景気循環の研究~(三一書房 1 9 5 9
年)390~393頁。(3) 吉村達次『恐慌論の研究~
(三一書房 1 9 6 1
年)259~お 0頁。( 4 ) 吉 村 達 次 向 上 告 1 4 7 頁 。
(5) 戸原四郎『恐慌論~
(筑摩書房 1 9 7 2
年)11 9 頁 。
(6)
乙訟ではまだ不況克服の要因,回復要因を取り扱っているわけではなく,そのよう な要因としての需要主導を主張しようとしているのではない。それより前の局面を問 題にしていることに注意を促しておきたい。
(7)北古賀勝半前 f 白書 1 2 8 頁 。 ( 8 ) 向上吉 1 2 9 頁
( 9 ) K. Marx. G r u n d r i s s e d e r K r i t i k d e r P o l i t i s c h e n Okonomie. ( R o h e n ‑ twur
f)1 8 5 7 ‑ 1 8 5 8 , Anhang 1 8 5 0 ‑ 1 8 5 9 , ( D i e z , 1 9 5 3 ) S . 1 3 9 . 高木半二郎監訳
『経済学批判要綱~
1 (大月書庖 1 9 5 8 ) 1 4 6 頁 。
(1
K. Marx 0 ) , Das K a p i t a l I , Ka
rIM a r x ‑ F r i e d r i c h E n g e l s Werke , Band 2 3 ( D i e z , 1 9 6 2 ) S . 6 6 2 . W
マルクス=エンゲノレス全集J
第23
巻 郊2
分冊(岡崎次郎訳) 8 2 5 頁。(1 873
年フランス語版の挿入)(11)
K. Marx , Das K a p i t a l m , i b i d . Band 25 , S . 2 5 9 . 前 掲 訳 第 25 右 第 2
分 冊,3 1 3 頁 。
ω
置塩信雄『蓄積論~(筑摩書房, 1 9 6 7
年)27 2 頁 o
(
1
3 )
置塩信雄『蓄積論~ fj'S 二版,前掲書 2 4 7 " ‑ " 2 4 8 頁 。
(14)置塩信雄『苔結論』前掲書 2 7 2 頁 。
回 向 上 書 272 頁 。
(1日
K. Marx , Das K a p i t a l 1 , a . a . O. S . 6 4 8 . 前掲訳 809 頁 。
恐慌の「底」と不況過程の諸問題 1 6 3
間置塩信雄『蓄積論』第二版前掲書 2 4 5 頁 。
(18) 宮塚良三『恐慌論研究~
(未来社, 1 9 6 2 年)2 1 3 " ‑ ' 2 1 4 頁 。
( 1 9 ) r すべて恐慌は一時的に者修品消費を減少させる。それは……者修品生産労倒者の 一部分を失業させるが,まさにそうすることによって,他方では必要消費手段の完れ 行きをも停滞させ減少させる。 J K. Marx , Das Kapital I I, a . a . O. Band 2 4 , S . 4 0 9 . 前 掲 訳 第2 5 巻 , 5 0 4 頁 。
この点に関し,詳細な再生産表式による次の分析を参照されたい。高木幸二郎,
『恐慌論体系序説』第二篇,第四章,四「好況期における者修品生産の拡大と恐慌に よるその収縮」。そして,結論的に次のように指摘されている。 r そしてこのような 関係ば,資本主義が高度に発達していればいるほど,資本家階級の浪貨と,したがっ て広い意味での者修品部門,あるいはマルクスのいったそれ自身が者修品であるよう な不生産的労働者の社会的に占める比重が大であり,そのためにこの関係から来る恐 慌の累進的影響の激烈なること,失業は突如かっ大規税l と発生すること,労倒者の迎 命に及ぼすその影響ばきわめて深刻なるととを間切するものであろう。」前 m
t:r‑3 0 3 頁 。
側
K. Marx
,Das Kapital 1
,a a . O. S . 5 9 8 .前担訳 7 4 5
貰。3 . 恐慌の「底」・不況過程と労働者階級
前節で述べたように,恐慌の「底」における貧困な労倒者階級の状況は,
最小規模の再生産の規定的な ‑ T i l } 成要宗となっていると同時に,自己維持本 能に根ざす抵抗をひきおこす。そしてその抵抗の成果がその「底」の再生産 の規定的なー枯成要素としての泊貨を柿強する側面を持っている。さらに,
大量に出現する失業者群も次期の循環上昇において十分機能しうる労働力群
=産業予備軍として再生産されねばならない口従って,それらの中には受救
貧民のように社会政策の保護のもとに労倒力の再生産を紘持する部分も明大
している。このように,労倒者階級の?百貨は,資本の主導性の麻;0ょした恐慌
の「底」で,生活維持の抵抗を強める動因となりながら,同時に「底」の再
生産の一規定要因として組み込まれることによって次期の循環の出発点をも
形成していくのである
Dこの点は,他の局面に見られない特質として注;立を
払う必要があろう
Oこのような問題へ接近する場合,われわれは「資本論」第
l
巻第23
宣言「資 本主義的蓄積の一般的法則」をめぐる諸論点および社会政策論争の諸論点1)
にかかわりを持たざるをえないのであるが,ここでそれらを詳しく検討する 余力はない口しかし,次のような把握を基本線として考えていきたい口問題 の焦点は,恐慌発現後における労働者の極度の貧困の進展に対する資本家の 対応と労働者の抵抗をどうみるかという点にあるO 後
l
こ検討するように,恐 慌発現後しばしば公的受救貧民への政府支出がf自大しているO しかし,とれ は資本家が「総資本の悟性2) J
をもって「労倒力の保全」に努めている姿で はない。現実的実態は,恐慌の「底」で飢餓の生活にあえいでいるときさ え,労倒者の生活維持はブノレジョア社会的自由のもとで労働者自身の自己維 持本指に委ねられており,従ってまたそれを基本的条件としての労倒者の抵 抗が不可避的に先行し,資本家はそれをある時は断圧し,ある時は利用する 乙とによって生産条件を確保しようと努めるのである3)
。乙の場合,労働者 の抵抗の成果が資本の危機的状況である恐慌の「底」の再生産形成に,資本 の再生産としての継続の促進要因として組み込まれる側面を持つことに注芯 する必要があるOそこで,上述のような恐慌の「底」における労働者階級の消貨の再生産の 一規定要因たる一定の消費力としての役割と貧困の進行一一抵抗の増大とい うこ側面は,具体的にはどのような状態で展開しているのであろうか。この 二側面の具体的状態を,典型的な資本主義の歴史的素材を提供するとされる
19
世紀中葉のイギリスの状況において概活的に検討し,より実態的な把握に 近付くことを試みてみたい的。まず,労働者階級の消設の基本的源泉である賃金の動向をみようD 表
1
の「賃金の増減率」が示しているように,景気循環に沿って賃金が変動してい ることは明らかであり,恐慌から不況にかけては減退を示している
o
それ は,管理的,技術的,事務的雇用人に与えられる「倖給s a l a r y J
を除いた「労賃
wageJ
だけをとれば,一屈はっきりあらわれるO さらに,表2
およ び図1
の「失業率」を併わせ考えれば,マルクスの云う「だいたいにおいて 労賃の一般的な辺劫はただ産業循践の局面転換に対応する産業予備軍の膨脹恐慌の「底」と不況過程の諸問題
1 6 5
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慌I 4 0 9 ( 5 9 )
況I 4 0 9 ( 5 9 ) 4 0 0 ( 6 0 )
1 l I I 4 1 4 ( 6 4 )
況I 4 3 1 ( 6 6 ) 457 ( 6 7 ) 5 1 2 ( 7 2 )
慌I 5 5 9 ( 7 4 )
況I 5 4 7 ( 7 7 ) 5 4 4 ( 7 9 ) 5 4 2 ( 8 2 ) 5 4 5 ( 8 5 ) 5 2 6 ( 8 6 ) 5 1 8 ( 8 8 ) 529 ( 9 0 ) 5 4 7 ( 9 4 ) 5 8 0 ( 9 6 )
0 . 6 3 . 4 3 . 3 5 . 9 2 . 8
0‑2.3 3.5 4 . 1 6 . 0 1 2 . 0 9 . 2
‑2.2
‑0.5
‑0 . 4 0 . 6
2 7 5 2 9 3 305 3 0 9 316 3 0 1 306 3 1 7 3 6 0 4 0 2 4 0 9 4 2 9 4 0 7 3 9 1 3 7 2 359 3 4 2 3 2 5 357 375 377 355 339
5 . 8 6 . 5 4 . 1 1 . 3 2 . 3
‑4.7
4 7 . 9 4 7 . 5 47 . 4 4 8 . 4 48.6 4 9 . 5 4 8 . 5 48.6 4 6 . 9 4 6 . 2 4 8 . 6 49.7 5 0 . 0 5 0 . 5 5 1 . 0 5 1 . 6 5 1 . 4 5 1 . 9 5 0 . 7 50.6 5 1 . 9 5 3 . 2 5 3 . 2
11
λ/ 11 11
11
慌
I 5 3 7 ( 1 0 1 )
況I 5 6 8 ( 1 0 2 )
1 .
73.6 1 3 . 6 1 1 . 7 7 9
1 4 4
‑ ‑ 5 . 1
‑3.9
‑4.9
‑3.5
‑4.7
‑5.0 9 . 8 5 . 0 0 . 5
‑5.8
‑4.5
1 . W Mitchell
,M. Tugan‑Baranowsky
その他の景気{日開史の諸若作に依る。2
,3
,4
, の出所。C H. Feinstein
,National Income Expenditure and output o f the United Kingclom , 1 8 5 5 ‑ 1 9 6 5 . (Cambridge , 1 9 7 2 ) . Table
1,
1 8
,2 1 .
2 .
似合取V J
者( s a l a r y ‑ e a r n e r )
は 百 四(( J
,技術IJj,: < F
JJ5的wm
人であり,主役 問問l i
も合まれている。その他の全ての応用人は,作業日に分:mされ,i l z i E
取何者(wage‑earner)
として取扱われている。( i b i c l . p . 3 1 )
4
8
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金(イギリス〉
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D.
組 合 員 失 業 率 表2
の3.
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貨幣賃金指数1 8 5 0
年= 1 0 0 . G. H. Wood , Real Wages and the Standard o f Comfort s i n c e 1 8 5 0 " . J o u r n a l of t h e S t a t i s t i c a l S o c i e t y . ( 1 9 0 9 ) . P P . 1 0 2 ' " ' " ' 1 0 3 .
実質賃金指数
1 8 5 0
年= 1 0 0 . i b i d . P p . 1 0 2 ' " ' " ' 1 0 3 .
1 8 9 0 1890 1 8 8 0
1 8 8 3 1 8 7 0
1 8 7 3 1 8 6 6
1 8 5 0
C.
収縮によって規制されているめ」という状況が読みとれる。
賃金は恐慌から不況にかけて著るしい低下を示すが,なお最終消費の中の 比重は大きく,表
1
の「国内所得の中の賃金所得の割合」をみても46%
以上 を占めているO そして,恐慌による消費財価格の下落によって実質賃金,個人 消費は上昇を示す時も少くないのであるO 図1
のC
,実質賃金指数は,1857
年,
1873
年,1883
年の各循環性恐慌と1 8 6 1
年の綿花恐慌発現後に上昇さえ示恐慌の「底」と不況過程の諮問題
表
2
失業(イギリス〉金技J属術合成苦r~鋳盟鉄関工晴院械1金・造属1:全組古
ム
1 8 5 5 3 . 1 4 . 6 5
.45 . 4 1 8 5 6 2 . 7 4 . 1 4 . 9 4 . 7
& . 1 8 5 7 4.6 6 . 7 6 . 1 6 . 0 1 8 5 8 1 0 . 2 1 2 . 9 1 2 . 2 1 1 . 9 1 8 5 9 3
.44 . 6 3.9 3 . 8 1 8 6 0 1 . 4 3
.41 . 9 1 . 9
ム1 8 6 1 3 . 8 1 2
.45 . 5 5 . 2
1 8 6 2 7 . 2 1 2 . 9 9 . 0 8 . 4 1 8 6 3 5 . 5 1 1 . 3 6 . 7 6 . 0 1 8 6 4 2
.45 . 9 3 . 0 2 . 7 1 8 6 5 1 . 8 5 . 9 2
.42 . 1 4 . . 1 8 6 6 2 . 5 8 . 4 3.9 3 . 3 1 8 6 7 6 . 3 2 4 . 2 9 . 1 7
.41 8 6 8 7 . 9 1 3 . 3 1 0 . 0 7 . 9 1 8 6 9 7 . 8 6 . 1 8 . 9 6 . 7 1 8 7 0 4 . 1 3 . 8 4
.43 . 9 1 8 7 1 1 . 0 1 . 8 1 . 3 1 . 6 1 8 7 2 0 . 6 2 . 7 0 . 9 0 . 9 A1873 0 . 8 4 . 0 1 . 4 1 . 2
1 8 7 4 1 . 4 7 . 3 2 . 3 1 . 7 1 8 7 5 2 . 3 7 . 9 3 . 5 2 . 4 1 8 7 6 3.5 1 0 . 0 5 . 2 3 . 7 1 8 7 7 4 . 8 1 0 . 8 6 . 3 4 . 7 1 8 7 8 6 . 9 1 7
.49 . 0 6 . 8
ム1 8 7 9 1 0 . 6 2 3 . 3 1 5 . 3 1 1
.41 8 8 0 5 . 0 1 1 . 5 6 . 7 5 . 5 1 8 8 1 3 . 5 8 . 5 3 . 8 3 . 5 1 8 8 2 1 . 9 1 1 . 0 2 . 3 2 . 3 A1883 2 . 2 8 . 1 2 . 7 2 . 6 1 8 8 4 4 . 8 2 3 . 1 1 0 . 8 8 . 1 1 . S t a t i s t i c a l Tables and Charts
Rela t i n g t o Bri t i s h and Foreign Trade and Industry ( 1 8 5 4 ‑ 1 9 0 8 ) . ( 1 9 0 9 ) . P . 2 2 0 .
2 . B. R.
乱1 it c h e l l
,A bstract o f B r i t i s h H i s t o r i c a l S t a t i s t i c s (Cambridge
,1 9 6 2 ) . P . 6 4 .
(失業 保険金支出からの計芥)1 6 7
表 3 労働者階級の日用品の消費 (イギリス)
0870‑79
年の平均=100)
│鵬数
1 1
!消費指1 8 6 0 7 6 . 1 1 8 7 8 1 0 3 . 6
ム1 8 6 1
ム1 8 7 9 1 0 1 . 5 1 8 6 2 7 2 . 7 1 8 8 0 1 0 2
.41 8 6 4 8 0 . 2 1 8 8 1 1 0 1 . 3 1 8 6 5 7 8 . 2 1 8 8 2 1 0 3 . 6 A1866 8 1 . 7
企1 8 8 3 1 0 5 . 6 1 8 6 7 8 1 . 7 1 8 8 4 1 0 4 . 0 1 8 6 8 8 7 . 8 1 8 8 5 1 0 3 . 5 1 8 6 9 9 0 . 0 1 8 8 6 1 0 3 . 1 1 8 7 0 9 1 . 4 1 8 8 7 1 0 3 . 9 1 8 7 1 9 3 . 0 1 8 8 8 1 0 4 . 5 1 8 7 2 9 6
.41 8 8 9 1 1 0 . 2 A1873 1 0 2
.4A1890 1 1 2 . 4 1 8 7 4 1 0 2 . 0 1 8 9 1 1 1 6 . 6 1 8 7 5 1 0 4 . 0 1 8 9 2 1 1 4 . 7 1 8 7 6 1 0 5 . 0 1 8 9 3 1 0 8 . 2 1 8 7 7 1 0 3 . 3 1 8 9 4 1 1 3 . 1
次の1 4
の日用品の労倒者一人当り消 費の推移を,1 8 7 0 ‑ 7 9
年の平均を1 0 0
として指数化したもの。
1 4
品目;小麦と小麦粉,ココア,コ ーヒー,綿,干ぶどう,肉,米 ,T &
;{:)2f, 1í~, タノイコ,ウー jレ,ワイン,
火酒
( s p i r i t s ) ,
ビーノレ.G. H. Wood , Some S t a t i s c a l
r e l a t i n g t o Worldng Class
Progress s i n c e 1 8 6 0 . "
Jo u r n a l
of t h e Royal S t a t i s t i c a l S o c i e t y .
( 1 8 9 9 ) . PP.
655~656.しているD しかし,乙のような実質賃金統計には,不熟練労働者=低賃金労 働者層の実態をカバーしていないので信頼できないというE ・
J
・ホブスボ ームの指摘がある6)
。彼はむしろ「主要な労働者屈の生活水準」を測るの にr
主要商品にかんする消賀数の,維ではあるが,もっと現実を反映した いくつかの指数J 7)
の方を信頼する。これに従って,表3
のG'H
・ウッド の14
消費財品目によって作られた消費指数をみてみようo 1866
年,1 8 7 3
年の 恐慌後で横ばい,1890
年恐慌後では上昇を示しているo
これらの点からみる 限り,恐慌から不況過程において労働者の生活必需品需要は殆んど下落しな いとみざるをえないことになろうO 従ってまた,ピグーがアフタリオンに依 りつつ,不況期で消資財産業が縮少よりは前進することを指摘している点も 一応注意をひくものである8)
口しかし,上のような展開の基礎的資料となっているウッドも,当時の失業 者の掌握については組合員の年間失業保険金支給数を基礎とせざるをえなか った点で
9)
掌握できていない多くの失業者群に対する過少評価を免れてい ない。 ホプスポームも指摘するように, 下請や家内工業労働者, 独立生産 者,臨時的,流動的労働者,半良業労働者などr
諸指数がしめすよりずっ とおおきい量の,潜在的であるにしても恒常的な失業を,想定しなければな らなし. . . 1 0 )
0J
従って, これらの点を考慮すると, 恐慌,不況期の労働者階 級の消費および、生活必需品需要が一般的に云って増大するとは考えられず,他の消費および者(多品や生産手段需要より,相対的にその下落率が小さく,
下落が緩慢であるという形で「底」の再生産の一規定要因となっていると考 えるのが妥当であるように思われるD
だが問題はそこにとどまらない。労働者階級の全体としての消貨の動向が 比較的に急激な下落を示さないとしても,マノレクス,エンゲノレスをはじめ多 くの論者が強調しているように,恐慌の結果としての賃金の「生理的最低 限」への低落傾向は顕著な事実である。そこで注意されねばならない論点 は,恐慌,不況期での労働者階級内の賃金,労働・生活条件の格差拡大傾向 である。つまり,一方で貧困の極限までの進行があり,他方で労働貴族居の 賃金の下方硬直的状況がある点をみなければならない。
恐慌の「底」と不況過程の諸問題
1 6 9
賃金の「生理的最低限」までの低落が恐慌の「底」から不況にかけて現れ ることの代表的論述をエンゲノレスによりみよう
o
少し長いが的確な描写なの で引用しようI
より大規模な工場主と商人は,不況のどん底の時期がつづ くあいだ商売をするのを中止し,その機械の運転をとめるか,あるいはほん の「短時間」しか動かさない。すなわち,たとえば半日だけしか動かさな い。賃金は,失業者の競争と,労働時間の短縮と,もうかる商品の販売がた りないために下落する。全般的な貧困が労働者のあいだにひろがり,あるい は持っているかもしれない個々の労問者のわずかな貯蓄も,みるみるうちに っかいつくされてしまうD 慈善施設は満員になり,救貧税は二倍になり,三 倍になってもまだ足りず,いまにも餓死しそうな者の数がふえる。そして,大豆の「過刺」人口がいっきょに出現し,
r ; E
くべき数に達するO こうした状 態は,その後しばらくはつづく。過剰となった者は,できるだけのことをし てどうにか切り抜けていくD あるいは切り抜けられない者もあるO 慈善と救 貧法とは,過剰となった人たちの多くがどうにか露命をつないでいくのを助 ける口その他の者は,ここかしこで,あまり競争が激しくおこなわれず,も っと工業との関係のうすいような労働部門で,みすぼらしい生活にありつく 一一そして人問は,しばらくのことなら,どんなにわずかなもので露命をつ ないでいけることだろう/11) J
このような状況の他方で,いわゆる労働貴族屈の状況をみると,表
1
の「俸給」の勤向が1
8 5 9
年に若干の低落を示している以外は恐慌,不況北] f
に杭 ばいを示すだけという点にもあらわれているように,低落することなく生活 水準が維持されているOこのような賃金格差は,まず r{}~t* と不熟釈の労働者厄の問の問題としてあ り,そしてそれはまた新産業であった金日産業と古い産業であった倣維産業 との問の格差の問題でもある
o
さらに,表2
をみると,恐慌,不況j V ]
の金属 産業失業率は全産業のそれより大きく,その金属産業内の熟純度の低いお鉄 工の失業率は技術者のそれよりも大であり,乙の産業の内部格差が大きいこ とを物語っている12)
。さらに問題を一歩進めると,このような劫向の背後には,不熟紋労倒者のく