長崎 大 学 教 育 学 部 自然 科 学研 究報 告 第41号95〜123(1989)
木 材 切 削 工 具 の切 れ 味 測 定 と切 れ 味 評 価(1)*
手鉋 を対象 とした機械切れ味測定実験法
杉 山 滋
長 崎 大学教 育学 部工 業技 術教 室 (平成元年4月5日 受理)
Studies on Quantification of Sensuous Sharpness and Mechanical Sharpness of Wood Cutting Tools. I.*
Some Methods of Measurement and Evaluation on Sensuous Sharpness
and Mechanical Sharpness of Various Japanese Hand Planes
Shigeru SUGIYAMA
Department of Technology, Faculty of Education, Nagasaki University, Nagasaki 852
(Received April 5, 1989)
Abstract
In order to make clear the effect of the sharpness of the wood cutting tools on cutting forces, tool wear, the roughness of the cutting surface, the cutting mechanism, properties of the chip and so on, a more systematic research under actual cutting conditions should be carried out. For that purpose, it is important and necessary to make clear the sensuous sharpness and the mechanical sharpness of a wood cutting tool. In the present paper, various experimental apparatuses are designed in order to measure the above-mentioned sharpness. Characteristics of the wood-cutting method with various experimental apparatuses are discussed. And using these apparatuses, the measurement and the evaluation of the sharpness are tried under various cutting conditions and various workpiece conditions.
*本 研 究 の 一 部 は
,昭 和63年 度 文 部 省 科 学 研 究 費 補 助 金 一 般 研 究C(研 究 代 表 者 杉 山 滋;研 究 課 題 木 材 切 削 工 具 の 切 れ 味 評 価 法(感 覚 切 れ 味 と機 械 切 れ 味 の 定 量 化)に 関 す る 研 究)に よ っ た 。 な お, 本 研 究 を 「学 校 教 育 に お け る 木 材 加 工(木 工 ・工 作 を 含 む)学 習 指 導 の た め の 技 術 的 基 礎 研 究(第5 報)TechnicalandFundamentalStudiesonEducationofWoodWorkinginTechnicalEduca‑
tionLessonsofSchool,V.」 と す る 。 上 記 の 研 究(第4報)は,長 崎 大 学 教 育 学 部 自 然 科 学 研 究 報 告 第40号67〜82(1989)に 掲 載 。
96 杉 山 滋
1.はじめに
木材切削工具のなかでも,手工具などの切れ味は人間の感覚によって判断されるもので あるが,その判断の主観性,個人差などから多様化し,従来,定量化しにくいものの一っ とされていた。また,木工作業現場における木材加工機械類の刃物などの切れ味の評価も,
かん
従来,作業者の堪によるところが大きい。とくに,学校教育現場では,木材加工用電動工 具を含め,手工具を用いることが極めて多いが,この場合もこれらの刃物類の切れ味の評 価は,殆ど教師の堪によるが,この場合には,手工具類の使用法などに関する熟練の程度 によって大きく左右される。手工具の切れ味を評価する多くの場合,手工具の機械的特性 としての切れ味(これを機械切れ味と呼ぶ)に置き換え評価することが多いが,この場合 にも,その結果を人間の感覚と対応させる部分が欠落する傾向にあった。手工具を用いて の木工作業で,人間の感覚に基づく切れ味を感覚切れ味と呼ぶが,これを機械切れ味に対 応させることによって,人間の堪による切れ味評価を作業者の主観性,作業者の熟練の程 度を含めた個人差,など人間に係る種々の要因により詳細な分析を行うことができる。そ のためには,機械切れ味と感覚切れ味を同時に測定でき,しかも手工具を用いた人間によ る木工作業をより的確に近似した機械切れ味測定装置が必要となる。
そこで本研究では,手工具として手鉋をとりあげ,同工具を用い,人間(被験者)によ る鉋削作業を行いながら感覚切れ味と機械切れ味を別々に,あるいは同時に測定し得る 種々の機械切れ味測定装置を試作した。本文では,これらについての詳解を行い,次報か らはこれらを駆使して,手鉋の切れ味の基礎となる鉋刃切れ刃鋭利性,鉋刃切れ刃形状変 化,被験者による作業の仕方,などとの相互の関係を明らかにする。
2.手鉋の切れ味に関係する要因
2.1 手鉋の切れ味に関する既往の研究状況とこの研究の特色
この種の手工具による切れ味は人間の感覚によって判断されるものとの考え方が定着し ており,従来,定量化しにくいものとされている。したがって,各種の木材切削工具の切 れ味に関する研究の中でも,手工具をとりあげて詳細に研究した例は極めて乏しい。それ は,この種の手工具を製造するメーカーが個人または小規模工場に属し,同工具にっいて 研究する研究者層も個人または学校・職業訓練に係る団体などが多いためであるが,それ らによる研究成果の公表の機会も少ないから,研究成果などを入手することは容易なこと ではない。
手鉋自体を対象とした基礎研究は,種々の例n〜28)をみることができるが,手鉋を用いて人 間による鉋削作業をシミュレートした基礎研究13)・21)・24)〜27)は極めて乏しい。また,この研究 で計画しているように,手鉋の切れ味を感覚切れ味と機械切れ味に分けて測定し,両者の 関係を明らかにしようとする研究は国内・外で殆ど行われていない。また,木材切削工具 の切れ刃摩耗に関する研究は比較的着手されてはいるが,手鉋の切れ刃摩耗についての研 究のうち,実際の鉋削作業に基づく系統的研究5L28)は極めて乏しく,しかも切れ刃の摩耗程 度(切れ刃形状)と切れ味との関係を追究した例は全く見あたらない。
人間が手鉋を使って木材を削ったときの感覚が,手鉋による感覚切れ味であるから,そ
木材切削工具の切れ味測定と切れ味評価(1) 97
れの測定を行うためには,まず被験者による実際の鉋削作業を行い,用いた手鉋について の切れ味感を一対比較法により求める必要がある。そして,それの定量化には,精神物理 学29》〜31)の手法を用いるが,感覚切れ味の測定と同時に,用いた手鉋についての機械切れ味 の測定には,独自に工夫した機械工学的手法を用いて行う。以下では,この研究のために 考察・試作した機械切れ味測定装置について詳述する。
2.2 この研究で対象とする手鉋の種別および使用者の範囲 ひら
手鉋は,板材や角材などの木材の広い材表面を平滑に仕上げるための平鉋と,それ以外の特殊な用途(木 ながだい材の一部分を目的により特殊に仕上げ加工)に用いるための特殊鉋に大別される。特殊鉋には,長台鉋,
だいなお きわ みぞ わきと そこと めん
台直し鉋,際鉋,溝鉋(これには,しゃくり鉋,脇取り鉋,底取り鉋などがある),面鉋(これには,ぎん なん面鉋,坊頭面鉋,ひょうたん面鉋,角ぎんなん面鉋,さじ面鉋などがある)などがある。また,平鉋 には,鉋台に仕込まれている刃の構成が鉋刃のみの一枚刃鉋と,鉋刃に裏金を備えた二枚刃鉋とがある。
し こ現在では,平鉋は二枚刃鉋が主として用いられているが,切込量の大きさ(削り深さ)により荒仕工鉋,
中仕工鉋,上仕工鉋などに大別され,これらは使用目的に応じて使い分けられている。
木工に関係する大工職人や建具職人などの専門職人が使用する場合には,当然上記の鉋 を各種用意し,それらを使用目的により使い分ける。使用する鉋は,種類も多く特定でき ないが,一般には,大工職人は平鉋を,建具職人は特殊鉋を用いることが多い。このよう な専門職人以外の一般の人々の場合は,どのような鉋を用いるであろうか。
現在,地域社会では,木に関連した新しい社会教育が活発化し,各地でそれに係る活動 が行われている。例えば,木工・工作を通じて璽更木のサイエンス の理解と認識を求めて 地域社会に開かれた大学公開講座「木工教室」や,児童・生徒を対象とした木工・工作コ ンクール,一般社会人を対象とした趣味の「木彫教室」「木工教室」などの開講も盛んとなっ てきた。また,身近な道具を駆使しての日曜大工を家族ぐるみで楽しむことも以前にも増 して盛んになってきた。これらで取扱う木工・工作の内容は非常に多岐にわたっているが,
概して広い材面の板材を用いることが多く,それの木工・工作のために必要とする道具の 中には,材表面を平滑に仕上げるための平鉋(二枚刃鉋)が欠くことのできない道具の一 つとなっている。
また,学校教育の場においては,木工・工作が正規の授業に取り入れられている場合の ほか,工作クラブなどの形式で課外活動に取り入れられている場合も少なくなく,いずれ の場合においても,平鉋を用いる機会が少なからずある。
一方,医療技術分野の作業療法**の中で,手工具を用いての工作作業を行わせる場合があ
** 業療法は,(a)機能的作業療法,(b)日常動作訓練,(c〉家事訓練,(d)気分転換の作業療法などに分 けられている。木工・工作が取り入れられる場合には,(a)または(d)の場合である。(a)機能的作業療法 は,筋力の協調性の改善(目的を持った動作を円滑に行えるようにすること),関節可動域の改善,筋 力の改善,作業に対する耐久性を養うこと,などを目的とし,運動療法とは異なり,物を作る楽しみ を味わいながら作業を通じてからだの機能の改善をはかることである。(d)気分転換の作業療法は,心
理的な支持を与えると言う意味で,支持的作業療法とも呼ばれている。ややもすれば気持ちが暗くな りがちな身体障害者は,障害者として自立して生きてゆくための訓練を受ける意欲さえもそこなわれ てしまうことが稀れではない。この療法は,障害者の沈うっになりがちな精神を明るくさせ,障害を 克服するための意欲をかき立てるための手段であり,それの作業を行うことが直接的に機能の回復と 結びついていない場合も多い。患者が行える範囲内の仕事で,心から興味を持って打ち込める仕事を 行わせるが,この療法とは言えないような療法が実に大きい効果を発揮する。例えば,障害のために 絶望的になり,医師や看護婦に反抗的であり,周囲の人に非協調的であった患者が,この気分転換の 作業療法によって精神的に落ちつきをとり戻し,生きる意欲を示し,協調的になってくることはしば しば見られることである。
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るが,それの工作作業自体および工作作業プロセスが治療に役立つ場合がある。即ち,作 業療法は心身の機能障害の発生予防・改善を図る予防医学を含めた医学的要素と,既に惹 起されたさまざまな障害をもつ人の個人生活および社会参画上の問題解決と言う社会的要 素を含むある種の生活療法である。したがって,前者の予防医学を含めた医学的要素を持 たせた生活療法では,日常生活に慣れ親しんだ道具や材料を用いての工作作業(個人によっ て工作内容とプロセスを変えるから,道具の使用範囲も異なってくる)もその療法の中の 一つとなるが,鋸挽きのほか,鉋がけ,鎗がけなどの作業は,他に例をみないユニークな 作業療法と言えよう。また,後者の障害を持つ人の個人生活や社会参画上の問題解決とい う社会要素を含めた生活療法においても,工作作業自体およびその作業プロセスが治療に 役立つ場合が多い。障害の程度や治療の過程の中で,材料として木材が用いられ,道具に は平鉋がとり入れられることは少なくない。いずれの生活療法においても,木工・工作(と くに,その中でも鉋削作業)は工作を楽しみながら作業を行うことができること,一回一 回の作業ごとに治療・回復経過を自分で把握できること,など種々の特徴をもっている。
このような場合の木工・工作における平鉋には,当然,鉋刃の優れた切れ味が要求され ることになる。切れない鉋刃による鉋削は,患者や作業者にとって不快感を増すのみなら ず,怪我の誘発を引き起こし,機能的作業療法ならびに支持的作業療法のいずれにも逆効 果となる場合が少なくない。
以上のように,木工・工作などで各分野で広く用いられている手鉋を研究対象とし,そ れによる平削りにおける鉋の切れ味について考えてみる。図1(a)に,二枚刃の平鉋の一例 を示した(刃口は半包みの鉋台となっている。刃幅は70㎜)。図は本職人用平鉋の例である が,使用者によって平鉋の種類や刃幅が異なってくる。
この研究で対象としている平鉋の利用者の範囲を,一般人,大学生,中学生,小学生,
障害児(者)とし,男女別,さらには鉋削についての知識の有無,鉋削作業経験の程度など のちがいによる数多くの被験者による切れ味の測定を行うが,本年度は,そのうちいずれ の被験者もが鉋削実験ができるような特殊な鉋削実験装置とそれによる切れ味の測定方法 について述べる。来年度以降にも続けて,上記の被験者ごとに切れ味の測定を行い,平鉋 の感覚切れ味と機械切れ味についての詳細な分析を行うことを計画している。
ところで,平鉋は手工具の中で も身近かな道具として知られてい るが,それの使用が極めて難しい 道具の最たるものとしても知られ ている。良い切れ味を発揮するた めには,鉋の使い方のみならず,
鉋自体およびそれの調整の仕方な どに大きく左右される。
2.3 手鉋(平鉋)の切れ味に 関係する因子
鉋が良い切れ味を発揮し,鉋削 した材料を用いて木工・工作を楽 しく行うためには,まず,その主
図1(a)鉋(平鉋・二枚刃鉋)の外観図と断面図
木材切削工具の切れ味測定と切れ味評価(1) 99
表1 鉋の切れ味に関係する因子
(1)樹種;(2)材質;(3)木取り;(4)形状・寸法;
(5)下端面形状;(6)寸法安定性処理;(7)屑返し角度;
(8)刃口の水平開き;
鉋 台 (9)刃口の包み(本包み台,半包み台,使用台など);
⑩表なじみの傾斜;⑪表なじみの調子;
α2)押金(押え棒)の調子;q3)台の狂い(日差的変形の程度)1 q4)仕込み溝の調子;など
(1)刃部(鋼部)と地金の材質;(2)製造工程;
(3)形状・寸法;(4)刃先角(研ぎ角);
(5)切れ刃線長さと裏金の刃幅;(6)裏すき;(7)糸裏;
(8)切れ刃線真直度(ケチリンとの関係)1(9)研ぎ;
鉋 鉋 刃 ⑩切れ刃線の凹凸(顕微鏡下における観察・測定)1
(鉋とそれの調整) (裏金を含む) (m公称刃先角(研ぎ角)に対する刃先先端の角度(微小丸み 意味し,顕微鏡下における観察・測定);
⑰砥石の選択と使い方;⑬裏金の先端角と作用長さ;
αの裏金の裏スキ;(1励裏金刃先切れ刃線真直度1
㈲裏金の両耳の立ちぐあい;など
(1)鉋刃と裏金との間隔(裏金設置距離);
(2)鉋刃の刃の出(切込量に関係);
仕込み調整 (3)鉋刃の刃の出の一様性(切屑厚さに関係);
(惣鮪) (4)刃口水平距離15)裏金作用角と屑返し角度,屑返し長さとの関係;
(6)鉋刃の鉋台へのしまり具合(仕込み溝,表なじみ,押金に 関係)1など
(1)樹種(針葉樹材,広葉樹材;本邦産材,外国産材);(2)比重;(3)含水率;
(4)年輪幅;(5) 晩材率;(6〉節および節ばかま;
(7)繊維走向(繊維傾斜角,木理斜交角,年輪接触角);
木 (8)正常材およびあて材;(9)成熟材および未成熟材;
(被削木材) (10)枝下材および樹冠材;qD間伐中小径木;(12〉樹脂,シリカなどの内容物;
㈲材面;α4)キズ;㈲異物の有無(釘,砂利のめり込み);
㈲材面の形状 (反り,曲りなど);q7)切削長さ;(1ゆ切削幅;
㈲削る目的 (寸法調整,仕上げなど);など
人 (1)経験の有無 ;(2)知識の程度;(3)体格差1(4)筋力差;(5)性格;
(6)興味の程度 ;(7)趣味;(8)年齢;(9)目的(趣味,職業);
(作業者と作業の仕方) ⑩意欲,熱意, 集中力など;⑪好奇心,探究心;など
要道具である鉋とそれの切れ味に関係する因子を把握しておかねばならない。表1に,平 鉋の切れ味に関係する因子をま,とめて示した。同表に示すように,鉋が良い切れ味を発揮 するか否かは,(1)鉋,(2〉木材(被削材),(3)人(作業者)により左右される。このうち,
(1)鉋については,④鉋台,◎鉋刃など鉋そのものに極めて大きく左右されるが(図1(b)
に,鉋の主要部を示した),㊦鉋刃を鉋台へ仕込む調整の仕方によっても大きく左右され ることがわかる。
鉋が良く切れるための要因は,まず第一に,その切れ刃である鉋刃の鋭利性を保つこと であることは言うまでもない。図2および図3に,鋭利な鉋刃から摩耗した鉋刃にいたる までの鉋削のちがいを図解した。図2および図3で言うc切込量 とは,被削材に対して
100 杉 山 滋
おしがね
櫛翻婁蜘一
あ f んト 糸裏 αk
包み 鉋台刃口押え
鉋台下端面
図1(b)鉋における各部用語(とくに,切れ味に 関係する部分)について
αkl鉋刃逃げ角;βk:鉋刃刃先角;磯:鉋刃切削 角;βB:裏金先端角;亀:裏金作用角1塩:裏金設 置距離;ムB:裏金作用長さ;ん:屑返し長さ;&:
刃口押え角;屍(ニ180。一θw):屑返し角;h:刃口 水平距離(刃口の水平開き)1ち:鉋台刃口押えを基 準とした鉋刃の出(切込量)
(診2)
(云n・)(云n2)
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(ん)
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図2 鋭利な鉋刃から摩耗した鉋刃に到るまで の鉋削における鉋刃の出(t。,(t。)),切込 量(t,(t))および切屑厚さ(t ,(tノ))の変
化
鋭利な鉋刃による場合と区別するため,摩耗した 鉋刃(または,丸研ぎの鉋刃)による場合には,()
を付して表した。h:刃口水平距離;義:裏金設置 距離1&:鉋刃切削角
]ヨ豊し,婆
(1)
.L」
ノ ,ノ φr , ノ , ノ , 4 ー ノ ノ ノ ノ
r ! ロ ノ
1 ノ θk !
ロ ノ プ
卿)・蜜賃1).z砥〉。.. ノ!
く一一卜面,))〉。・
(儀(1))〈0。
図3 丸研ぎ鉋刃(または,摩耗した鉋刃)を用 いた鉋削と鋭利な鉋刃を用いた鉋削の比 較(h=(h),姦=(姦)に設定した場合)
h=水平刃口距離1ち:鉋刃の出;&:鉋刃切削 角1α・:鉋刃逃げ角;占k:裏金設置距離;摩耗し た鉋刃による場合には,上記の記号に()を付し て表し,鋭利な鉋刃の場合と区別した。
台下端プ・フィールθw
裏金 Lt
t θk
%βB(r卵
θB(rθB+
) 鉋刃
k
刃口えからめ ≠n 0 召 αk
鉋台下端水平線
h Jk
図4(a)切屑の排出における屑返し一裏金作用面 間の距離(切屑拘束距離)Ltの変化 記号は,図1(b)参照。図4(a)は,興<θBの場合で,し かも鋭利な鉋刃刃先の場合を図解している。α:最 大刃口水平距離;h:刃口水平距離l O:刃口押え
鉋を押し付けた際の被削材と接触する下端面(刃口押えを除く)から鉋刃刃先までの垂直 距離を言い,作業者が鉋を使用する際の押し付け圧力によって切込量は異なることになる。
また,鳴噌鉋刃の出 とは,鉋台の刃口押え先端から鉋刃刃先までの垂直距離を言う。図2に より明らかなように,摩耗した鉋刃(または,鉋刃の研磨が不良で,丸研ぎになった鉋刃 もこれと同様と考えられる)は,鋭利な鉋刃の場合よりも摩耗または丸研ぎによって欠落 した刃先部分のために,鉋台よりの鉋刃の出が切込量と著しく異なる。しかも,摩耗した
(または丸研ぎの)鉋刃刃先は丸身を持つから,鉋刃の出や切込量を決定する刃先位置を 明確に定めることが難しい。即ち,図2では,鉋刃の刃先位置を,鉋刃刃先角の2等分線 と刃先丸身の交点を基準とする場合と,被削材削り面上と接触する鉋刃逃げ面位置を基準 とする場合とを図解しているが,実際の鉋削では,鉋刃の刃先位置は鉋刃刃先の丸身の程 度と,作業者の鉋の使い方(即ち,被削材への鉋の押し付けの程度)によって異なると考
木材切削エ具の切れ味測定と切れ味評価(1) 101
(ll 平
行
(m
開
放
(皿 拘
束
(1)一①砿=θB〈90● (1)一②曜二θ、=goo 〔D一③ 90。〈θc=θB
(]旺}<1) θB〈θc〈90。 皿一②θB〈θc=90。 (皿一③ goo=θB〈θc
一ノ∠」7∠」
皿一①θc〈θB〈90。 {皿一②θc〈θB=90。 1皿一③90。=θC〈θB
皿一④90。〈θB〈θc
皿1・④90。<θc〈θB
図4(b)切屑の排出における切屑拘束距離の変化
記号は,図1(b)参照。図4(b)は,姦,漏,葛B,疏,hおよびちをそれぞれ一定とした場合 で,漏>ムBの場合について,しかも鋭利な鉋刃刃先の場合について図解している。ただし,
農二θBの場合を(1)平行,θB<徒の場合を(II)開放,奥くθ白の場合を(m)拘束,としてい
る。
えられる。
鉋刃刃先角の2等分線と刃先丸身の交点を基準とし,同部位を刃先先端部として鋭利な 鉋刃の場合と摩耗した(または丸研ぎの)鉋刃による場合とを同一にすると,鋭利な鉋刃 の場合と摩耗した(または丸研ぎの)鉋刃による場合とでは,種々の削り条件が異なる。
図3に示すように,鉋刃の出は,鋭利な鉋刃の場合にはちであるが,摩耗した(または丸研 ぎの)鉋刃による場合にはそれより大きく,(ち)となり,また,鉋刃刃先の切削角は,鋭 利な鉋刃の場合には&であるが,摩耗した(または丸研ぎの)鉋刃による場合には,
(&(。)),(&(、)),(&(2))と刻々と変化する(ただし,θヒ(2)は&と同じ角度)。さらに,鉋刃
逃げ面と削り面とのなす角,即ち逃げ角は鋭利な鉋刃の場合にはαk>0。(鉋刃逃げ面と削 り面との間にすき問有り)であるが,摩耗した(または丸研ぎの)鉋刃による場合には
(αk(・))<0。の場合(逃げ面が被削材中にめり込む)と,αk(2)>0。の場合(逃げ面にすき間有 り)とがある。なお,二枚刃の平鉋で,裏金を設置する場合に,鉋刃すくい面上で裏金を 鉋刃先端部からある長さだけ後退させて設置する。この場合の鉋刃刃先部と裏金先端部と の距離を裏金設置距離と言うが,裏金設置距離は鋭利な鉋刃の場合および摩耗した(また は丸研ぎの)鉋刃の場合のいずれも同じ距離であるが,切屑拘束距離が異なる。切屑拘束 距離は鉋台屑返しと裏金作用面との距離であり(図4(a)),図3より明らかなように,鋭利 な鉋刃の場合より,摩耗した(または丸研ぎの)鉋刃による場合の方が,切屑拘束距離が
ノ」¥さくなる。
102 杉 山 滋
鉋の切れ味は,鉋刃刃先の鋭利性(刃先の丸身の程度)に加えて,被削材から削り取ら れた切屑(鉋屑)の鉋刃すくい面上および裏金作用面上における擦過・流出も重要な要因 となるから,鉋刃切削角久や裏金作用角θB,裏金設置距離4や裏金作用長さムBとの関連で 切れ味を調べる必要がある。なお,上記の切屑の擦過・流出には,刃口押えや屑返しの作 用が密接に関係するから,これらとの種々の組合せ下での詳細な切れ味の測定実験が必要 となる。例えば,切屑拘束距離ムは,裏金設置距離4,屑返し長さん,裏金作用長さムB,
刃口押え角徒,鉋刃切削角久,裏金作用角θB,刃口水平距離hおよび鉋刃の出ちの大きさ などが主要因子となるが,これらの因子の大きさや変化の仕方により数多くの実験組合せ が考えられる。姦,ん,乙B,徒,&,hおよびちをそれぞれ一定とし,ん>ムBの場合で,鋭利 な鉋刃刃先と仮定した場合における切屑の排出における切屑拘束距離ムの変化を,図4(b)
に図解した。この図の場合においても,ムは,θ。(=180。一禽)とθBの大きさの関係によ り,・平行,開放,拘束の3通りの場合があり,図4(b)に示すように,θ,,θBと90。との大小 関係により種々の場合がある。この中で,θw〉90。,&+βB二90。の場合を一例として,ムを 求めれば(図4(a)参照),
鳳・sin(鎚)+(h一罐)・sin徒 (1)
となる。また,hは鉋台の刃口押えと表なじみの水平距離(最大刃口距離)αを用いると,
h=α一!h/tan6張 (2〉
で表されるから,&一定の鉋では,ちの大きさによってhは変化することになる。
4は,鉋削における切屑の擦過・流出を考えれば,鉋刃すくい面と刃口押えからの鉋台下 端水平線との交点までの距離,即ち,
姦=ち/sin6レ (3)
を境いに異なる。4…iち/sin&の各場合で,切屑の流出の様子や削り面の精粗のほか,削り 抵抗の大きさや切屑の生成形態などから,的確に姦の大きさを決定する必要がある。例え
ば,&=45。で,ち=0.05㎜の場合には,4二〇.07㎜であるから,これより小さい場合また は大きい場合で,鉋削の基礎実験や応用実験を行い,感覚切れ味や機械切れ味を測定し,
的確な姦を決定する。勿論,改の大きさは,被験者や鉋自体などによって異なってくる。h やβB,ムなどとの関係での詳細な検討が必要となる。
つぎに,機械切れ味測定装置およびそれを用いての実験方法などについて詳解する。
3.機械切れ味測定装置の試作
3.1 機械切れ味の測定
手鉋(二枚刃の平鉋)を用い,人間(被験者)による鉋削実験を行いながら感覚切れ味 と機械切れ味を別々に,あるいは同時に測定できる種々の機械切れ味測定装置(本文では,
それらをいずれも鉋削実験装置と呼ぶ)を試作した。それらの装置を用いた鉋削実験は,
手鉋を用いた人間による鉋削実験をシミュレートし,機械工学的手法により機械切れ味の みを測定する基礎実験(人問は直接の鉋削作業を行わない)と,手鉋を用いて人間による 直接の鉋削作業を行い,その作業の中で感覚切れ味を測定し,同時に機械工学的手法によ り機械切れ味を測定する応用実験とに大別される。基礎実験と応用実験では,いずれも機
木材切削工具の切れ味測定と切れ味評価(1) 103
械切れ味を測定するが,これの基礎となる測定項目は,概ねつぎの3項目である。
(1)削り抵抗:機械切れ味を判断する場合に,最も重要な項目となる。鉋削中における 鉋刃に加わる力(または,鉋刃により被削材に加えられる力)を機械工学的手法により測 定し,その波形を記録する。この場合,主として① 削り抵抗波形の平均的大きさ,② 削 り抵抗の変動(削り抵抗波形の極大値と極小値との差),③被削材長全体における削り抵 抗の大きさの変動,を中心に測定する。①は勿論,小さい程よいが,大きい場合でも②お よび③が小さければ,必ずしも切れ味が低下しているとは言えない。②および③は当然小 さい程よい。
(2)切屑の生成形態および切屑の擦過・流出を含めた排出様相,ならびに排出後の切屑 の変形様相
つや (3〉削り面の精粗(凹凸の程度)および光沢(または艶)
(2)および(3)については,鉋削中および鉋削直後に直接肉眼観察できるから,被験者が感 覚切れ味を判断する場合には,これらは重要な判断要素となる。機械切れ味を判断する場 合には,(2)および(3)についての巨視的(肉眼的)観察・測定のほか,微視的(顕微鏡的)
観察の必要がある。
上記の(1)〜(3)の測定を行い得る鉋削実験装置を種々試作した。まず,基礎実験から述べ,
順次,応用実験について説明を行う。
3.2 機械切れ味測定実験1
実際の手鉋を用いる実験では,鉋削実験中における鉋刃による切屑の生成,鉋刃すくい 面上や裏金作用面上における切屑の擦過・流出を含めた切屑の排出の様子を詳細に観察し,
記録することが極めて難しい。したがって,鉋削作業を直接人間が行わないで,鉋削作業 をシミュレートした機械実験により定性的に鉋削現象を把握することが必要であり,その ための実験装置が必要となる。図5は,その目的のために試作した鉋削実験装置であり,
鉋削についての種々の削り条件や被削材条件などの影響を殆ど明らかにすることができる。
しかし,手鉋による鉋削は,あくまでも人問による動作の結果であるから,図5の鉋削実 験装置(これをType Aとする)は,人間の鉋削動作を一定化し,人問の動作のちがいが 機械切れ味へ影響しないようにしている。したがって,同装置を用いると,手鉋自体や被 削材についての種々の因子の影響を,人問に係る因子を入れることなく的確に把握するこ とができる。図5は,鉋刃に裏金を作用させ,しかも刃口押えを作用させた場合の実験と それの装置の概要を示している。また,図6は刃口押えを作用させない場合の鉋刃と裏金 の作用の影響を検討するための鉋削実験装置(これをType Bとする)を示している。鉋 削実験装置Type AおよびType Bは,同一の実験装置本体を用いている(実験装置本体 を図7に示す)。これら装置における鉋刃,刃口押えは,それぞれ別個の支持アームに固定 され(不必要なときは,一方を装備しないように取りはずしが可能),試験片は送り台上の 八角形弾性リング荷重装置上に固定されている。送り台は昇降自由なテーブル上に載せら れ,ねじ送り方式で前・後進する。
鉋削実験に使用する鉋刃や裏金は,図8に示すように,本研究のために試作した特殊な 形状のもの(材種は,実際の手鉋における鉋刃や裏金と同種)を用い,また,刃口押えは 手鉋の鉋台と同種のシラカシ材から採取し,手鉋における刃口押え,屑返しと同様になる ように特殊な寸法・形状に加工したものを用いている。実験に先だち,それぞれの支持アー
104 杉 山 滋
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(正 面 図)
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(側 面 図)
(正面図)
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図5 鉋削実験装置(Type A)と削り抵抗の測定(機械切れ味測定実験1)
(刃口押えと裏金を作用させた場合)
①:削り抵抗2分力測定のための片持ち梁式鉋刃固定装置1②1鉋刃;③:被削材に加え られる削り抵抗2分力測定のための八角形弾性リング荷重装置;④:試験片(被削材);
⑤:試験片固定装置;⑥:ストレインゲージ;⑦:試験片を移動させるための送り台;
⑧:鉋刃に微小切込量を与えるための昇降テーブル;⑨:刃口押えおよび屑返しに加わる 接触圧力2分力測定のための片持ち梁式刃口押え固定装置
④
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図6 鉋削実験装置(Type B)と削り抵抗の測定 (機械切れ味測定実験1)
(刃口押えを作用させず,裏金を作用させた 場合)
①:削り抵抗2分力測定のための片持ち梁式鉋刃固 定装置;②:鉋刃1③:裏金1④:試験片(被削 材)1⑤:試験片固定装置1⑥:ストレインゲー ジ;⑦:被削材に加えられる削り抵抗2分力測定の ための八角形弾性リング荷重装置;⑧:送り台
図7鉋削実験装置(TypeB)による削り抵 抗の測定の様子
(機械切れ味測定実験1)
木材切削工具の切れ味測定と切れ味評価(1) 105
図8 機械切れ味測定実験1のための特殊な鉋 刃と裏金
(いずれも設計・特注品)
ムの先端に一定の条件を満たすように刃口押 えや鉋刃および裏金を装備し,予め微小切込 量でならし切削を行って試験片の削り面を平 滑にし,鉋削実験における基準面を作成した のち,鉋削の基礎実験を開始する。実験の開 始に当り,試験片の高さをダイアルゲージで 測定しつつテーブルを上昇させ,鉋刃に所定 の切込量を与えて行う。
このような鉋削実験において,刃口押えお よび屑返しに加わる力は刃口押えを固定した 支持アームの微小変位として,鉋刃および裏 金に加わる力は鉋刃および裏金を固定した支 持アームの微小変位として,また,刃口押え,屑返し,鉋刃および裏金の作用による鉋削 中に被削材に加えられる力は試験片を固定した八角形弾性リング荷重装置の微小変位とし て,それぞれ別々に検出される。これらアームや八角形弾性リングにはストレインゲージ が貼付されているから,鉋削中に生じるアームやリングの微小変位が電気的に拡大検出さ れる。電磁オシログラフに拡大されたそれらの波形を分析し,刃口押えに加わる接触(ま たは,押し付け)圧力(水平・垂直方向の2分力),裏金を装備した鉋刃の削り抵抗(水平・
垂直方向の2分力)および刃口押え,屑返し,裏金および鉋刃の作用による鉋削中に被削 材に加えられる力(水平・垂直方向の2分力)がそれぞれ測定される。
Type AおよびType Bの鉋削実験装置では,実験装置正面から鉋削中の切屑生成過程 を直接観察でき,また,写真撮影により鉋削現象を詳細に分析できる。勿論,鉋削実験に よって試験片(被削材)から削り取られた切屑や被削材削り面は,切れ味を判断する際の 重要な試料となるから,これら採取試料と,削り抵抗,刃口押え接触圧力などおよび鉋削 現象の観察記録などを詳細に検討することにより,手鉋の鉋削機構を定性的に解明するこ
とができる。
3.3 機械切れ味測定実験II
Type AおよびType Bの鉋削実験装置(図5および図6)は,実際の手鉋による鉋削 作業をシミュレートしてはいるが,実際の手鉋そのものを用いた実験ではない。したがっ て,上記の実験装置から測定される実験データが,手鉋そのものを用いて測定される実験 データと著しくかけ離れたデータであっては,手鉋の鉋削機構や切れ味の解明には役立て られない。したがって,Type AおよびType Bの装置から測定される実験データと手鉋 そのものを用いて測定される実験データを比較し,両者のちがい,共通点などを調べ,Type AおよびType Bの装置により測定される実験データがどのような特性をもつかを明らか にしておく必要がある。図9は,そのために工夫した鉋削実験装置(これをType Cとす る)である。同図に示すように,手鉋は,八角形弾性リング荷重装置上に固定治具を介し て取付けられている。また,試験片は,別個に固定した定盤に固定治具を介して取付けら れている。Type Cの場合には,固定した試験片に向って手鉋を移動させるしくみであり,
移動のしくみや鉋刃に微小切込量を与えるしくみは,前項のType AおよびType Bの場 合と同様である。この実験装置により,手鉋による鉋削中に,試験片によって手鉋に加わ
106 杉 山 滋
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図9 鉋削実験装置(Type C)と削り抵抗の測定 (機械切れ味測定実験II)
(実物の手鉋を用いる場合)
①:試験片(被削材)1②:試験片固定のための定盤 および治具;③:手鉋;④:手鉋に加わる削り抵抗
2分力測定のための八角形弾性リング荷重装置;
⑤:ダイアルゲージ1⑥:手鉋を移動させるための 送り台;⑦1手鉋の鉋刃に微小切込量を与えるため の昇降テーブル;⑧:モータ;⑨:変速ギア;⑩1 昇降テーブル移動のためのハンドル;⑪:送り台移 動のための親ねじ;⑫:手鉋を八角形弾性リング荷 重装置に固定するための治具
図10 鉋削実験装置(Type C)による削り抵抗の測定 の様子
(機械切れ味測定実験II)
る力が八角形弾性リング荷重装置に より検出される。なお,TypeAおよ びType Bの場合,手鉋を想定して 刃口押え,屑返し,鉋刃および裏金 によって試験片に加えられる力が八 角形弾性リング荷重装置により検出 される。試験片に加えられる力
(Type AおよびType Bの場合)
と,手鉋に加わる力(Type Cの場 合)は力の作用方向が相反するが,
力の大きさは同じである。したがっ て,これらの力を対比すれば,Type AおよびType Bの鉋削実験装置に よる実験の特性が明らかにできる
(TypeAおよびTypeBの装置を
用いる方が,より詳細な実験条件を 設定しての鉋削現象や切れ味を解明
できる)。
なお,Type Cの装置による実験 においても,切屑を採取し,被削材 削り面をも採取し,Type Aおよび Type Bの場合のそれらと互に比較 することも必要である。Type Cの 装置を用いる場合,手鉋の鉋刃の出
を実際の鉋削作業と同様に微小にす れば,下端面の摩擦や刃口押えの影 響を加味した実験を行うことができ,
この場合にはTypeAの実験と対比 できる。さらに,Type Cの装置で,
手鉋の鉋刃の出を著しく大きくし,
試験片に与える切込量を小さくして 鉋削実験を行えば,下端面や刃口押 えに試験片が無接触となるから,下 端面の摩擦や刃口押えの影響を考慮 に入れずに実験を行うことができ,
この場合にはType Bの実験と対比 できる。Type Cによる鉋削実験装 置による実験の様子を図10および図 11に示した。
木材切削工具の切れ味測定と切れ味評価(1) 107
3.4 機械切れ味測定実験IIl
TypeA〜TypeCの鉋削実験装置は,手鉋の 鉋削をシミュレートした基礎実験であるから,
人間(被験者)による実際の鉋削実験が必要と なる。そこで,実際の手鉋を用いて,被験者に よる鉋削実験を行うことができ,そのときに被 削材(試験片)に加えられる力(削り抵抗)を 測定することができるような鉋削実験装置を試 作した。図12および図13に,試作した鉋削実験 装置(これをType Dとする)を示した。それ
らの図に示すように,木製鉋削作業台を構成す る梁の上に八角形弾性リング荷重装置を固定し,
同装置上に試験片を取付ける。試験片の削り面 は,木製鉋削作業台表面上に現れている(作業 台には,試験片削り面より若干大きめの穴があ けられている)。鉋台の両側面の1部および下端 面の両側端の1部に接触し,鉋を摺動させ得る
ような木製のL字型ガイドレールを鉋削作業台 上に作り,鉋を摺動させ易くする。試験片は2 本のレールの中央部に置かれ,その削り面に 向って手鉋を人間操作(手鉋による鉋削作業と 全く同じ姿勢)で鉋削する。手鉋による切込量
図11鉋削実験装置(Type C)により試験 片を鉋削する様子
削り抵抗は,鉋固定治具下部の八角形弾性リ ング荷重装置により測定される。この場合,
鉋刃に加わる削り抵抗のほか,鉋台下端面に 加わる試験片(被削材)との接触圧力も測定さ れる。
(平面図)
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(正面 図) (側面図)
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①:被削材に加えられる削り抵抗2分 力測定のための八角形弾性リング荷重 装置1②:ストレインゲージ1③:手 鉋1④:試験片(被削材)1⑤:鉋刃に 微小切込量を与えるための装置(微小 切込量設定装置);⑥二試験片固定治 具;⑦:鉋削作業台;⑧:八角形弾性 リング荷重装置を固定する梁:⑨:手 鉋摺動ガイド(木製レール);FYおよ び瓦:手鉋により被削材に加えられ る削り抵抗の主分力および背分力(図 18(b)参照)
図12 鉋削実験装置(Type D)と削り抵抗の測定(機械切れ味測定実験III一(1))
108 杉 山 滋
(a) (b)
図13 鉋削実験装置(Type D)(機械切れ味測定実験III一(1))
の設定は,鉋刃の出により行うが,削られた試験片に,つぎの鉋削のための手鉋の刃の出 と等量の切込量を与えるために,試験片固定治具と八角形弾性リング荷重装置の間に,微 小切込量設定装置が装備されている。
Type Dの装置による鉋削実験は,被験者,被削材の種類や繊維走向,手鉋の種類,手鉋 の調整など実際の鉋削作業に近い数多くの鉋削条件を設定して行うことができる。手鉋は,
摺動用のガイドレール上を一定の押し付け圧力で摺動させることができるから,同一の被 験者による手鉋の被削材への押し付け圧力を一定に保って鉋削実験を行うことができる。
人間作業の実験ではあるが,人間の鉋削に与える影響を一定の条件に保って実験を行い得 る。即ち,長い材長の鉋削であると,人間の動作の影響が実験結果に入り込み,純粋に一 つの要因のみの影響を考え難くするが,Type Dの装置による実験では,試験片の削り長さ が短かく,人間による鉋削速度も比較的一定に保つことができ,しかも鉋削中に試験片か らの削り抵抗の垂直分力による変動に対しても,一定の押し付け圧力で鉋削できる。した がって,同一で一定の調整を行った手鉋を用いて,数多くの被験者によるType Dの装置 による実験を行えば,被験者の鉋削技能について検討することができる。さらに,Type D の装置による実験において,八角形弾性リング荷重装置から検出された被削材に加えられ る力を,Type Cの装置による実験における八角形弾性リング荷重装置から検出された被 削材に加えられる力と比較することにより,手鉋による鉋削作業をシミュレートした機械 による基礎実験と,人間による実際の鉋削作業に類似したType Dの装置による基礎実験 とのちがいを明確にできる。Type DおよびType Cの鉋削装置による実験の特徴をそれ ぞれ活用しながら,種々の測定データを測定・記録し,それらを検討することにより,鉋 削機構や切れ味を明らかにすることができる。また,それらの結果を,学校教育などにお ける鉋削指導法を検討するうえで,役立ることもできると考えられる。
人間が行う実際の鉋削作業では,削り面に対して垂直方向に作用する削り抵抗の垂直分 力の変動があるから,人間が手鉋を被削材削り面へ押し付ける圧力は,被験者によって異 なり,その圧力も変動し,鉋削の仕方に影響を及ぼすことになる。この影響を明らかにす るために,図14に示すような鉋削実験装置(これをType Eとする)を試作した。TypeE の装置は,TypeDの装置と殆ど変わりないが,手鉋を摺動させるしくみが異なる。即ち,
Type Dの装置では,人間により手鉋を実際の鉋削と同様の姿勢でガイドレ・一ル上を摺動
木材切削工具の切れ味測定と切れ味評価(1) 109
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(側面図)
(正面 図)
図14 鉋削実験装置(Type E)と削り抵抗の測定(機械切れ味測定実験lll一(2))
①:被削材に加えられる削り抵抗2分力測定のための八角形弾性リング荷重装置;②:ス トレインゲージ;③:手鉋;④:試験片(被削材);⑤:微小切込量設定装置;⑥:試験片 固定治具;⑦:鉋削作業台;⑦:手鉋摺動ガイド;⑧:①を固定するための梁;⑨:錘 (既知垂直荷重);⑩:手鉋を水平に移動させるための回転ディスク;⑪:Vベルト;⑫:
プーリ;⑬:無段変速モータ;⑭:ディスクを固定するための基礎台;⑮:⑬および⑭を 固定するための基礎台;⑯:手鉋を移動させるためのガイド線(鉄線);耳および屍:手 鉋により被削材に加えられる削り抵抗の主分力および背分力(図18(b)参照)
させるが,Type Eでは,無段変速モータによるディスクの回転により,手鉋台尻に固定さ せたガイド線を巻きあげ,その巻きあげにより手鉋をガイドレール上で摺動させるしくみ
となっている。手鉋の浮き上がりを防止する目的と,被験者の筋力に応じた手鉋への押し うわば
付け圧力を与えるために,手鉋の上端上に錘が載せられている。載荷荷重の大きさは,被 験者を想定して種々の場合がある。また,載荷位置は,手鉋の重心位置である。この錘は 一定荷重であり,一回の鉋削実験中には試験片に与える大きさは変らない筈であるが,手 鉋による鉋削中には削り抵抗の垂直分力により,この錘による垂直荷重(即ち,手鉋への 押し付け圧力に相当)の大きさに増加または減少の変化が生じることになる(即ち,錘は
でで .ローティング を意味する)。ディスクによるガイド線の巻きあげにより,鉋には一定 の鉋削速度が与えられるが,比較的極低速の鉋削実験を行うことにより,上記の璽でフロー ティング の影響,即ち被験者の手鉋への押し付け圧力の影響を明らかにできる。なお,
Type Eの装置による実験では,無段変速モータにより鉋削速度を変化させた実験も行う ことができる。
3.5 機械切れ味測定実験IV
これまでに述べてきた鉋削実験装置くType A〜Type E)により,手鉋による鉋削作業 における機械切れ昧を,種々の鉋削条件のもとで実験を行うことにより明らかにし得ると 考えられるが,手鉋による鉋削作業における切れ味の判断には,感覚切れ味が主体となる
110 杉 山 滋
(平面 図)
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(正面図) (側面図)
図15 鉋削実験装置(Type F)と削り抵抗の測定 (機械切れ味測定実験IV一(1))
①:被削材に加えられる削り抵抗2分力測定のための八角 形弾性リング荷重装置1②:ストレインゲージ;③:手 鉋1④:試験片(被削材)1⑤:試験片と同時に鉋削するた めの被削材1⑥:試験片固定治具;⑦:鉋削作業台;⑧:
①を固定するための梁;RおよびF、:手鉋により試験片 に加えられる削り抵抗の主分力および背分力(図18(b)参 照);1〜,:八角形リングの内径;右:八角形リングの肉厚
図16 鉋削実験装置(Type F)と削り抵抗 の測定の様子
(機械切れ味測定実験IV一(1))
場合が多い。したがって,感覚切れ味の測定と,それと機械切れ味の測定とを対応させ得 る鉋削実験装置が必要となる。そこで,実際の鉋削作業と全く同じ条件で機械切れ味を測 定でき,しかも,その測定データと感覚切れ味の測定データを対応させることができる鉋 削実験装置を考案・試作した。図15および図16に,試作した鉋削実験装置(これをType F
とする)を示した。Type Fの装置では,Type Dの装置のうちで微小切込量設定装置をと り除き,試験片を八角形弾性リング荷重装置に直接固定させ,木製鉋削作業台上のガイド レールをとり除き,鉋削作業台上には,鉋削用被削材のみを固定している。試験片の削り 面(小さい面積)のみを鉋削するType Dの装置と異なり,Type Fでは実際の鉋削とほ ぼ同様の削り幅や削り長さの被削材を直接鉋削する。木製鉋削作業台上に固定する被削材 には,それの中央部に試験片を通す穴をあけるが,その穴と試験片とは互に接触しないよ うに注意をはらう。試験片の削り面は,鉋削用被削材と同一面になるように予め手鉋でな らし削りを行い,鉋削基準面を作成したのちに,被験者による実際の手鉋を用いて鉋削作 業を開始する。そのときに,試験片に加えられる力(削り抵抗)が八角形弾性リング荷重 装置から検出される。この削り抵抗の測定と同時に,切屑と被削材削り面を採取する。ま た,ビデオカメラ撮影装置も併用して,被験者の鉋削動作を記録する。被験者からは,鉋 削作業および手鉋の切れ味などについての予め定めた質問事項を回答させ,記録しておく。
このようなType Fの装置による鉋削実験により,被験者,手鉋,被削材などに関連し た表1に示した種々の因子の影響を検討することができる。なお,表1に示す諸因子は,
実際の鉋削作業では複雑に係りあい,一つひとつの因子の影響を的確に把握することが難