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昭和63年3月18日学位規則第5条第1項該当

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Academic year: 2021

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(1)

氏名・(本籍)

学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件

学位論文題目

論文審査委員

向         勇(中 国)

工  学  博  士

工博甲第  38  号 昭和63年3月18日 学位規則第5条第1項該当

電子科学研究科 電子応用工学専攻

深部ハイパーサーミア用大型方形導波管アプリケ一夕の 開発に関する研究

(委員長)

教 授 岡 本 尚 道 教 授 水 晶 静 夫 教 授 宇 野 正 美 助教授 杉 浦 敏 文

教 授 山 本 達 夫 助教授 原 田 幸 雄

論 文 内 容 の 要 旨

近年,正常体温よりやや高い42.5−45℃程度の温熱が細胞致死効果をもつという生物学的な根拠に 基づいた新しい癌治療法,すなわち癌の温熱療法(ハイパーサーミア)が注目を集めている。周囲の 正常組織を過熱することなく癌組織だけを要求通りの温度に加温したい。加温には電磁エネルギの吸 収による発熱作用を利用する方法が広く使われ,これまでに,種々の加温装置が開発されている。臨 床データによれば,これらの装置は表在性腫瘍に優れた治療成果を上げ,深部腫瘍への応用も増えつ

つある。しかし,肝臓癌のような深部腫瘍の加温は依然困難であり,深部加温装置の改良と開発が強 く要求されている。特に,加温中と加温後の体内温度分布を3次元的に監視する方法がいまだに確立 されていない現状では,加温特性がある程度理論的に推定できる加温装置の開発が望まれている。こ ういう背景から,本研究では深部癌の加温を目的とした新しい加温装置,即ち大型方形導波管アプリ ケ一夕の開発に取り組んできた。

大型方形導波管アプリケ一夕は,方形導波管の上下壁面に人体の胴断面に近い形と大きさの穴を開 け,加温標的領域を導波管内の電磁波に曝すように患者を配置して,胴の前方と後方の両側から電磁 波を照射し人体を加温する装置である。このアプリケ一夕の開発に当たって,まず,それによって体 内に作られる電界分布とSAR(Specific Absorption Rate)分布を2次元数値解析により近似

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(2)

的に求める。数値解析法は方形導波管内のTEn。モードGreen関数を使い,FFTと共役勾配法を巧 みに利用し,複雑な2次元散乱問題を効率よく解く。更に,パーソナルコンピュータとその周辺装置 を導入して,数値計算に必要な比誘電率と導電率のデータを患者のCT断面写真に基づいて自動的に 作り上げ,各患者ごとに加温するとき体内のSAR分布の様子がシミュレーションできるようにシス

テムを開発した。全ての処理はおよそ一時間で済むから,臨床における実時間での応用が可能である。

この2次元数値解析法を用いて,一様な等価筋肉ファントムについて検討し,本アプリケ一夕の加 温特性の周波数依存性を求めた。生体組織内の浸透距離と干渉効果の兼ね合いから,深さ15cm程度の 深部領域を加温するためには,27−60MHz程度の周波数を使うのが適当であることが判る。人の胴 体断面は楕円形に近いことを考慮に入れると,導波管の幅を胴体横幅のはば2倍程度の60−80cmとし た場合,深部までエネルギが十分到達する。その場合,27〜60MHzの電磁波をTElO.モードで導波 管内を伝搬させるために,導波管内を脱イオン水で充填する必要がある。

実際の解剖断面に基づいてできた人体腹部断面モデルを対象とした数値計算法によって検討した結 果では,本アプリケ一夕を使って40.68MHzで加温する場合,脂肪,骨,筋肉,血液など組織の電 気的特性が異なるにも拘らず,胴断面全体にわたってほぼ一様な電界分布が得られた。従って,SA

R分布は組織の導電率に強く依存し,高導電率を持つ組織,例えば腎臓,筋肉,肝臓などのSARが 高く,それらの臓器が加温され易く,骨,脂肪のような低導電率組織では,SARが低く,過熱が避 けられることが示された。一万,血液の導電率はかなり高いので,太い血管内のエネルギ吸収が非常 に大きく,血流の循環により全身体温を上昇させる原因になることも示唆された。

次に,肝臓癌の加温を例として,本アプリケ一夕による体内のSAR分布を制御する可能性を上記 の数値解析法によって検討した。SAR分布の制御の度合を比べるために,人体深部の標的領域と他 の領域のエネルギ吸収量の割合で定義される良好度指数を導入し,導波管アプリケ一夕の横幅,患者 をアプリケ一夕中に置く横方向の位置および入射波の位相などをパラメータとして,それらのパラメー タの変化が良好度指数に与える影響を調べた。結果から大ざっばにいえば,加温したい標的領域にア プリケ一夕の中心を合わせば,良好度指数が比較的に大きくなり,効率よく加温できるといえる。更 に,実際の肝腫瘍患者のSAR分布のシミュレーションを行い,その結果を確認し,肝腫瘍をアプリ ケ一夕の中央付近に持っていくことによって,肝腫瘍の良好度指数が顕著に高くなり,肝腫瘍の選択 的加温もある程度可能であることも示した。特に大きな腫瘍になるほど効果が大きくなる。

最後に,基礎実験について述べた。長さ3m,断面積65cmx30cmの導波管アプリケ一夕を設計製作 し,電気的特性が筋肉のそれに近い寒天ファントムと脂肪一筋肉2層豚肉ファントムを使って加温実 験を行い,理論計算と比べた。結果では,実験から得られた温度上昇分布のパターンと数値計算で求 めた相対SAR分布のパターンがはば一致し,理論解析の妥当性の裏付けがある程度できた。特に脂 肪層の過熱を避けて内部の筋肉層を加温できることが実験でも確認できた。

以上のように,本研究は理論と実験の両面から大型方形導波管アプリケ一夕の加温特性を明らかに し,その有効性を示し,実用化への基礎を築いた。

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