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バ ングラデ シュ農村 の季節的多就業 ― 南西部近代稲作農村の事例 一一

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バ ングラデ シュ農村の季節的多就業

― 南西部近代稲作農村の事例 一一

Occupational Multiplicity with Seasonality in Rural Bangladesh:

a Case from a Modern Rice Farming Village in Southwestern Region.

池 田 恵 子 Keiko IKEDA

(平 成 13年 10月 9日 受理 )

は じめに

バ ングラデシュの農村では、実に多彩な非農業の経済活動が営まれている。農村世帯の約 3割 は非 農家であり、農家 もまた大多数が兼業である。非農業の活動内容 は、商業、職人工業、農業 0非農業 の賃金労働、サービスや運輸、出稼 ぎなど多部門にわたる。規模 もまた多様であり、例えば商業従事 者 には、竹篭一杯分だけの余剰野菜を売 る農民か ら、農家の庭先か ら少 しずつ野菜や卵を買い付 ける 末端の仲買人、定期市を巡回する露天商、農村経済の中心である常設市 に固定店舗を構える農村の文 脈で言 うところの大商人 までを見いだす ことができる。

これ らの非農業の経済活動 は、世帯員個人によって、または世帯員間で、複数営まれることが多い。

さらに農家世帯では、複数の非農業の職業 と農業が複雑 に組み合わされて営 まれている。その上、雨 季の集中的な降雨や冠水などの影響で、農業のみな らず大半の生業に生産環境 と需要の大 きな季節差 があり、就業 は顕著な季節性を帯びている。 このような季節的多就業 は、バ ングラデシュ農村の就業 形態の特徴であ り、その傾向は貧困層でより顕著である。近年では、流通・ 交通手段の大幅な改善に 伴 って非農業の職業内容 もより多様化 し、大都市への出稼 ぎのみな らず、地方中小都市への通勤 とい う新 しい就業形態 も見 られるようになった。 さらに、ムス リムが人口の 85%を 占めるバ ングラデシュ では女性 の移動が制限 されて きたが、屋敷地 (バ リ )1)の 外で就労す る女性 も急増 している。 これ ら の変化 は、多就業傾向にますます拍車をかけている。

バ ングラデシュに限 らず、農村の就業構造は、水野 らが東南アジア諸国の事例により明 らかに した ように、 自営農業、農業賃金労働 2、 そ して非農業の生業が複雑 に組み合わされた多就業形態をとる のが一般的である (水 野 :1995)。 バ ングラデシュに関 していえば、多就業構造そのものは研究対象 とされて こなか った。農村内の非農業就業 に関する実証研究が、その増加が顕著 となる 1980年 代後半 以降にようや く本格化 したばか りである。研究の多 くは、農業経営 との関係において兼業形態や非農 業の就業機会の獲得 (転 職や参入の形態 )な どを類型化 し、農村階層の再分類や都市 一農村関係の再 検討を試みた ものである (海 田 ・マハ ラジャン :1990、 高田 :1991、 向井 :2000)。 また、拡大す る非 農業就業 は、 「貧困の共有」概念で説明 されるような最貧困層が従事す る低生産・ 停滞的な部門なの か、または新たな農村発展の可能性を秘めた胎動なのかといった議論 も見 られるようになった (Sen:

1996、 Howlader:1997、 Westergaard:2000)。

これ らの研究に共通す るのは、非農業の主要な職業のみを取 り出 して分析する手法であり、個々の

(2)

世帯の多就業構造全体を分析対象 とした研究 はほとんどない。 また貧困層の間で多 くみ られる短期的 雑業 とで も呼ぶべ き、数 ケ月間のみ従事 される職業が分析対象に含まれていないことが多い。 ここで、

副次的職業を把握する困難 さを指摘 してお く必要があるだろう。村人に職業を尋ねると、通常一つ答 えるだけで、季節毎 に職業を説明 して くれることは、 ほぼない。一年にい くつの如何なる職業に就 く かは、月毎に聞き出すか長期間観察 しないと分か らないだろう。 もっとも、高田が論 じているように、

バ ングラデシュ農村住民の職業観に、主生業 と副次的職業を区分するという考え方が存在 しているか も明 らかにされていない (高 田 :1991)。 同様 に大半の場合、女性の屋敷地内での就労 も分析対象か ら除外 されている。女性 は屋敷地内でで きる様々な生産活動、例えば野菜栽培や家畜飼育などに従事 している。 これ らの活動が分析の対象 とされて こなか ったのは、 自家消費 目的 と販売 目的の生産が分 けられてお らず、把握 しに くいためだと考え られる。

かつて、激 しい人口増加 に伴 う農地の細分化 と農業経営の零細化、土地無 し農業労働者世帯の増加 が、バ ングラデシュ農村が抱える主要な問題 として盛んに指摘 された。そ して、 これ ら世帯に十分な 農業労働機会を供給できるような大地主階層 は存在せず、農村工業など就業機会の成長 も見 られない 中で失業が増加 し、貧困人 口は大都市へ大量 に流入すると予測 された (Jansen:1987)。 だが予測に 反 し、 自家農業だけではとうてい生計を立て られない零細・ 小規模農家や農業労働者世帯 は現実に急 増 したものの、貧困率 はかえ って低下 し、大都市への人 口流入 も懸念 されたほどには生 じていない。

農村世帯 は、単 に雑多な非農業の経済活動への依存度を高めるだけでな く、季節や市場の変化に応 じ て複数の職業を意図的に組み合わせた戦略的な多就業を営む ことで飯米を確保 し、生活を向上 させて きたと考え られる。短期的雑業や女性 による屋敷地内での就業 は、収入 は小額で も季節的に飯米確保 が困難な時期に雇用 と収入を確保する点で きわめて重要であ り、季節の推移を考慮 した世帯の就業戦 略の中では大 きな役割を果た しているのではないだろうか。 しか し、世帯単位の多就業構造全体が分 析対象 とされない限 り、 この点 は自明ではない。

本稿 は、 このような観点か らバ ングラデシュ農村の多就業状態その ものを検討 し、その特徴を描 き 出す ことを目的とする。 1994年 に筆者がボ リシャル県 Q村 で行 った調査資料に依拠 し、バ ングラデシュ 農村世帯の多就業構造を、 1)職 業の季節的な組み合わせと就業時期、 2)特 定の多就業形態を採用 する世帯の特徴のみに焦点を絞 って明 らかにする。なお、分析の中心的対象 は農業のみで生計を立て るのが困難 とされ る経営規模 1.5エ ーカー以下の農業経営世帯

と非農業経営世帯 とし、少数の世帯の就業事例を詳細 に検討す るという手法をとることとする。

1.調 査村の概況

調査地 Q村 3)は 、バ ングラデ シュ南西部のボ リシャル県に属 し、首都 ダカか らポ ッダ (ガ ンジス )り ││を 挟み直線距離で約 100キ ロ離れている (地 図 1)。 バスの通 う幹線道路か ら6キ ロ 程奥 まり、雨季には用水の堤防を兼ねた未舗装道路が到 る所で 決壊するためエ ンジン付小舟か徒歩で移動するしかない。 Q村

が所属す る郡の西半分 は低湿地帯で、制水門を備えた広域輪中 堤 に囲まれている。 Q村 はその外側 に、定期市の立つZバ ザー ルがある村を挟んで接 している。雨季の冠水 は 7月 上旬 に始 ま り、 8月 下旬 ‑9月 下旬 に最高 となり、 11月 上旬 には完全 に水

地図 1  調査地 Q村 の位置

ポ リシャル県 Q村

[出 所 ]筆 者作成。

注 )県 境界線は旧県を示す。

(3)

図 l Q村 周辺における稲作の変化 (1980年 以降 )

RⅢ 稲導入 前 (〜 1985年 )1)

RⅢ 稲導入 後 (1985年 〜 )

散播 ア ウス稲 と散播 アモ ン稲 の混播

:   1散 播 ア ウス稲

│ダ ル豆な ど乾季作物

:   :移 植 アモ ン稲 (中 高地のみ ):   : ボ ロ稲 (高 収量品種 )

Lロ ロ....:G。 優

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漿 経 地 の

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50

[出 所 ]1994年 の調査により、筆者作成。

注 1)Q村 へのボロ稲 (乾 季作米 )の 高収量品種 (IRRI稲 )の 導入 は 1980年 に始 まったが、本格化 したのは 1985年 になってか らであり、 1990年 にはほぼ完了 した。

が引 く。郡内の稲作 は高収量品種 ボロ稲 (乾 季作 )が 生産量の 6割 を占め、残 りの大半 は移植型 アモ ン稲 (雨 季作 )で ある。 しか し Q村 では、通常年 には耕地の約 9割 で高収量品種 ボロ稲の一期作 しか で きず、僅かな中高位地でのみ移植型 アモ ン稲 との二期作が可能である。ただ し、冠水が例外的に浅 い年 にはアモ ン稲が栽培できる耕地 もかなりあり、農業収入や農業賃金労働機会に影響を与えている。

高収量品種 ボロ稲 は 1985年 以降本格的に導入 された。それ以前 は散播型のアモ ン稲 とアウス稲 (雨 季 作 )の 混播栽培で、乾季 にはダル豆や野菜などが栽培 されていた 4、 このような雨季の冠水 に適合 し

た作付 けは 1990年 までの瞬 く間に姿を消 し、近代的濯漑稲作へ と一変 した (図 1)。

本稿の課題である多就業の調査結果を提示する前 に、村の農業経営規模 と世帯の主な収入源の特徴 をまとめてお く。農地を全 く所有 しない   表 lQ村 の世帯が主な収入源と主観的に認識している職業 (i994年 )

世帯 は 23%、 農業を営 まない世帯 は 27%       ムスリム    ヒンドゥー    合計

を占める。農家 ‐

世帯で最 も多いのは経営        世帯数  %   世帯数  %

世帯 1)

面積 0.5エ ーカー未満 の零細農家であ る。     量羹賃金労働 業賃金労働        34(15)   3 o)   37(10)      ::││:1  12(9) 45(12)

村で 6人 家族がボロ稲単作の自作農業だ けで生計 を立 て るとすれば 1.5エ ーカー の経営面積が必要だというが 5)、 そのよ

商業以外の自営業 2)   10  )  69(51)   79 o2)

定額給与の恒常雇用 3)  24(10)   7 (5)   31(8)

42  (18)       0   (0)      42  (12) 2   (1 0 (0)    2 (1)

104(76)  267(73)

1

出稼 ぎ

うな農家は4分 の 1程 しかない。 Q村     柔冥喧 は土地無 し世帯の比率が極端 に増加せず

に農地が細分化 され、経営規模の格差 は 小 さく、零細農家が大多数を占めている。

次節で提示する多就業構造 と比較す る ために世帯の主 たる生業を宗教別 6)に 示 してお く。表 1は 、収入額か ら見て、世 帯 にとって最 も重要であると被調査者が 認 識 して い る職 業 で あ る。 農 家 世 帯

(73%)の うち、農業で生計 を立ててい る世帯 は 12%し かない。農業賃金労働 に

非農業経営世帯

農業賃金労働       31(14)   2 (1)

その他の 日雇い       0 (0)   4 (3)

商業        4 o)   4 (3)

商業以外の自営業      8 (3)  13(lo

定額給与の恒常雇用     2 (1)   2 (1)

出稼 ぎ       14 (6)   1 (1)

その他       4 o)   2 (1)

小計       63o8) 28 ol)

3 (1) 4 (3)

合 計 229 (100) 136 (100)     365(100)

[出 所 ]1994年 の調査 に よ り筆者作成。

注 )最 も重 要 な所得源 を、被 調 査者 の主観 に よ り示 した。

1)自 作 、小 作 の 両方 を含 む。

2)小 規模 な加 工業 、お よび 散髪や 大工 な どサ ー ビス提供 を行 うもの な ど。

3)教 員 ほか公 務 員 、店 員 な ど。

4)施 し、援 助 、就 労者 が い ない な ど。

0   (0)        0   (0)        0   (0) 18   (8)       13  (10)       31   (8)

33  o) 4 (1) 8 c2) 21 (6) 4 (1) 15   )

6 (2) 91 o5) 7 (2)

その他 の 日雇 い

商業

(4)

主に依存す る世帯 は全体の 19%(農 家世帯の 14%、 非農家世帯の 36%)の みである。非農業の職業で 世帯の主たる収入源 として重要なのは、 ヒンドゥーでは各世帯が属するジャー ト (サ ブカース ト集団 )

に基づ く自営業 (鍛 冶、大工、竹製品製作など、 ヒン ドゥー世帯の 62%)、 ムス リムでは出稼 ぎ (ム

ス リム世帯の 24%)で ある。出稼 ぎ先 はダカと周辺都市、南西部の中心都市 クルナ、県庁所在地 ボ リ シャルなどであり、東南アジアや中東など海外 も含まれる。 ここで注 目される点は、村周辺では農業 賃金労働以外の日雇いや商業で世帯の主な収入源たり得 るものが案外少ないことである。 しか し、後 に述べるように、短期的にこれ らの職 に就 く人 は多 く、実態 はそれほど単純ではない。

調査地 は、特定の地場産業が存在せず、主たる就業先足 りえるような顕著な非農業の就業機会の創 出が日立 ってみ られない状況下で、都市 と農村内の雑多な就業機会を活用 しつつ、零細でありなが ら 先進的な稲作農業を営む地域 と特徴付 けることができるだろう。

2.多 就業形態

では、農業を含めた多就業が如何に営 まれているのか、以下 に 50の サ ンプル世帯 に限 り、詳細に見 てみよう。サ ンプル世帯 は、農業だけで生計を立ててい くことが困難 と村人が考えている 1.5エ ーカー 以下の農地経営面積の世帯の中か ら抽出 した 7、 33世 帯 はムス リム、 17世 帯 はヒンドゥーである。 ま

た農家世帯 は 37戸 、非農家世帯が 13戸 である。

本節でサ ンプル世帯の多就業形態の概要 と農業経営 との関係、世帯の属性などを明 らかにした上で、

次節でさらに世帯の事例 により、多就業の状況を詳 しく見てみよう。表 2に サ ンプル世帯の概要 と調 査前の一年間に全世帯員が従事 した職業を示 した。世帯の属性 と就業状況 とをあわせて把握するため、

少々煩雑 になるが、一覧にして提示する。

1)多 就業状態の概要

(1)職 業数 と内容 :た った 50戸 の世帯がざうと見ただけで も 40近 くの異なった職業に関与 している。

稲作農業だけで生計を立てる農家世帯 は存在せず、一つの職業のみに従事 した非農家世帯 は 3世 帯で ある。農家世帯の うち、稲作農業 と家庭菜園生産物の販売だけで生計を立てているのは 3世 帯のみ、

また非農家で農業賃金労働のみを収入源 とする世帯 は 2世 帯 しかない。すなわち産業 としての農業に のみ収入を依存す る世帯 は 5世 帯 しかないことになる。つまり、農業経営の如何 に関わ らず、サ ンプ ル世帯の 9割 が農業 と非農業の生業の両方に依存 している。

農家世帯では、農業外の職業数が 1つ だけと2つ 以上の場合では職業内容に大 きな違いが見 られる。

前者 は、定額給与の恒常雇用 (大 半が村外の都市で従事 )ま たは自営業や規模の大 きい商業 (す べて 村周辺で従事 )で あり、固定店舗や施設、特殊な技能、高等教育、資本などを必要 とするものが多い。

一方後者の職業 とは農業賃金労働、露天 による小商い、出稼 ぎなどであり、上記のような参入の制約 が比較的少ない。 また前者の内容が多様であるのに対 し、後者では世帯数の割に種類が少ない。非農 家世帯の従事する職業 は、後者の職業内容 とほぼ共通 している。

け )就 業期間 と時期 :非 農業の職業が 1つ の場合、恒常雇用 はもちろんの こと、すべての職業がほ ぼ一年中営まれているのに対 し、 2つ 以上ある場合では 8ケ 月以下の就業が半数を占め、 2‑3ケ 月 以下の短期就業 も少なか らず見 られる。なお、 5‑8ケ 月間営 まれている非農業の職業 は、数 ケ月ず つ、年 2回 の営為 シーズンがあるものが半数を占めている。

0)職 業の組み合わせ :2つ 以上の非農業の職業が営 まれている場合、職業の組み合わせにい くつ

かのパ ターンが見 られる。① 9ケ 月以上の農業賃金労働 と 2ケ 月程のごく短期の出稼 ぎなど (都 市で

(5)

の商い、 リキシャ引き、工場労働など )、 ②雨季前後 (約 6ケ 月間 )に 従事で きる自営業 と 3‑6ケ

月間の農業賃金労働、③複数の職業の重点を繁忙期 に応 じて数 ケ月単位で交代 させる、などである。

また、単 に多就業 と言 うよりは、多部門就業であることが注 目される。① 自営か雇用労働か といっ た就業上の地位をみて も、②農業、零細加工業、商業 と言 った産業区分か ら見て も、③村周辺、 Zバ ザール、都市 といった就業地で見て も分散 している。農業 とどのような農業外の職業を組み合わせる か というよりは、農業外の職業の中で も多部門の組み合わせが採用 されている。

に )収 入 とその季節変動 :紙 幅の都合上、表 2に 詳細を掲載できなか ったが、恒常雇用を除いた農 業外の職業か ら得 られる収入 は季節変動がある。一方、短期的就業 には変動がないか、あって も少な い。 この点 については、後に詳 し述べる。

5)屋 敷地 (バ リ )内 生産 8):屋 敷地内で生産 された野菜、樹木・竹、畜産物 は、家庭で消費 され るほか、必要 に応 じて販売 される。つまり、緊急に現金が必要 になれば活用 される価値の貯蔵の意味 を もつ。 より多就業傾向の強い世帯 よりも、一つの農業外の職業を持つ世帯 において これ らの生産物 を販売することが多いようである。

2)農 業経営 と多就業 との関係

(1)農 地所有 。経営規模 :あ くまで も一般的な傾向 として、経営・ 所有面積 とも大 きい世帯では非 農業の職業 は数が少な く、年間の就業期間が長 くて規模が大 きい。一方で経営・ 所有面積が小 さい世 帯では短期的な非農業の職業に数多 く従事する。 また、後者では農業賃金労働が組み込 まれているこ とが多い。農業賃金労働を含めた非農業の職業を複数、短期間ずつ組み合わせて営む世帯の農業経営 規模 は、おおむね 0.5エ ーカー以下である。

村周辺で一年中一つの自営業や商業を営む世帯 は所有・ 経営面積 とも大 きく (平 均経営面積 0.70エ ー カー、同所有 1.47エ ーカー )、 定額給与の恒常雇用 に従事す る世帯 (平 均経営面積 0.48エ ーカー、同 所有 0.64エ ーカー )、 複数の農業以外の職業を持つ世帯 (平 均経営面積 0.35エ ーカー、同所有 0.22エ ー

カー )に 対 して、やや規模の大 きい農業を営んでいる。

侶 )農 業経営規模の拡大縮小 :農 業外の職業が 1つ しかない世帯 には所有する農地を小作に出 し、

農業経営規模を縮小する世帯 と、 さらに小作地を借 りて農業経営を拡大 しようとする世帯の両方が見 られるのに対 し、農業外の職業を複数持つ世帯 には、農業経営規模を縮少 しようという世帯 は、女性 世帯主の世帯を除いては、見 られない。すなわち多就業傾向の強い世帯では零細 な農地をできるだけ 自作 し、可能であれば、 さらに小作地を借 り入れて農業経営を拡大 しようとしている。所有する農地 を借金の抵当に抑え られて もなお、その土地を自ら借 り受 けて耕作する小作形態 (表 2の「農業経営」

:「 耕作形態」の欄の抵当小作 )も 多 く見 られる。

0)労 働力の活用 :よ り明確に差が見 られるのは、農作業のための労働力活用である。恒常雇用に 従事する世帯では、農作業全般 に雇用労働力を用い、世帯員は指示監督のみを行 っている。村周辺で 一年中一つの大規模な自営業・ 商業に従事 している農家では、雇用労働力を活用 しつつ自家労働力 も 投入することが多い。 これに対 して複数の農外の職業を持つ世帯 は、経営規模が零細なこともあって、

主 に自家労働力で耕作することが多い。ただ し、 自家労働力で楽 に賄えるはずの規模 しかな くて も、

他の職業を優先す るため、特定の農作業では雇用労働力を活用する世帯 もある。

に )二 期作の可能性 と不確実性 :前 述のように、 Q村 では冠水が浅 く短い年 には雨季作米 (移 植型

アモ ン稲 )の 栽培が可能 となる農地 もある。サ ンプル 50世 帯の うち、 9世 帯 は毎年 ほぼ確実にアモ ン

稲が栽培できる農地を持 っている。 また、 15世 帯では冠水が浅い年で も栽培可能な農地がない。 13世

(6)

サンプル世 状 況 と世 の特徴 ―

1994年 セ月踊査よ り葺当旨作瑚 L

隔 議 姐 :M=ム ス リム、 H=ヒ ン ド ゥー。 「 家 族 形 態 」 :N、 J、 E、 Iな ど は基 本 と な る家 族 婦 と な っ 神 や 議

― ゞ 眠    「 4‑― 粥 嘲 :夕 k M30‑男 性 30〜 45

年 齢 に 見 fや っ た 孝で育 を 受 │ナ て い る 、   遅 れ ==生 日歯含よ りてピ学髪暮が 44平 2た上製呈れ て い る。   菱鮮宇つて │ま

し出 して い る、 自作 =所 有 地 全 部 を 自作 して い る、 自作 +=所 有 地 に カロえ て ′

Jヽ

作 地 を 借 り入 れ

B=可 能 な 年 も あ る、 C=和 L「 農 業 以 外 の 関 :ゴ シ ッ ク =村 外 で の 就 渫 ヽ イ タ リ ッ ク 産 物 の 販 売

̀ミ 当 初 か ら販 売 す る こ と を 目 的 と して い る場 合 に の み 含 め 、 臨 時 に 販 売 した もの

わ 呻

(7)

農 業外職 業 の種類 と従事期 間

9ヶ 月 間以上 の従 5‑8ヶ 月間の従事

農 業賃金 労働 ,魚 取 り販

農 業賃金 労働 ,牛 乳生産

小船船頭 (自 営 ),農 業賃

農業賃金 労働 2,牛 乳生産 ヒ ゛

スケット商 , F― 」 ゛ ノ ゛

″ ちりら

農 業賃金 労働 ,大 エヘル

萱嬰理機 早轟 』豪書

『 篭 E=… I=夫 婦を含まない家族を示す。 +=世 帯主から 見て、寡 習亀髭 勤 1澤 董 罐 摯 蠅 弥 妙 萎 兒 糧 襲 FttT爺 2種 謂 翻 %鯨 謳 雀 3嘔

=姓 │こ よる *=ア モン 種端錦実は摯讐誌諷選詔催覇」 3k号 詭≦野雅出想 湛 慇

│ま 除いノ 亀 /J塚 理副 恰 =貧 困家庭に配給される無償の /特

(8)

帯 は冠水が例外的に浅 い年 にアモ ン稲を植えた経験が過去 にあるが、調査前年 は栽培 しなか った。雨 季作米が栽培不可能であることは、多就業傾向に影響を与えていないように思われる。 また、栽培が 可能かどうか雨季後半のかなり遅い時期にな らないと分か らない場合は、他の職業に従事 した方が確 実だと判断す るが多い。ただ し、農業賃金労働者 に限 っては、雨季作米が植え られないと確実に分か

る時期 になってか ら、出稼 ぎを行 っている。

3)多 就業を行 う世帯の特徴

(1)宗 教 :都 市への出稼 ぎを行 うのは例外な くムス リムである。 このことが、 ヒンドゥーよりもム ス リムの多就業傾向を高めている。

υ )家 族形態 :多 就業傾向の強い農業経営世帯では、拡大家族や合同家族がより多 く見 られるよう である。一方で、就業者の数 は、男性のみを見た場合、より少な くなっている。すなわち、 この点 は バ ングラデシュ農村の多就業 とは、世帯員間による就業先の分散 というよりも、 1人 の主要な就業者 が複数の職業 に従事する傾向を持つ ものであるということを示唆 している。

0)主 要就業者の教育 :複 数の農業外就業を営む世帯 と非農業経営世帯では、学校教育の全 くない 者が過半数を占める。一方、恒常雇用 と大規模な自営業・ 商業 に従事す るものは高い教育を受 けてい る。 この格差 は、子 ども・ 弟妹の教育においてさらに拡大 していることが注 目される。後者では、小 学校 レベルで子供の教育をやめた り、進級が遅れたりする状況が多 く見 られる。

に )主 要就業者の性別年令 :多 就業傾向の高 い世帯では、主要就業者が 30歳 代の、つまり働 き盛 りの男性であることが非常 に多い。

4)小 括

以上、農村貧困世帯の多就業構造 と農業経営を含めた世帯の特徴を見てきた。 これ らの世帯のほと んどが産業 として農業 と非農業の両方に依存 しているが、なかで も多就業傾向が著 しい世帯の就業の 特徴を挙げると、以下のようになろう。農業賃金労働を含めて非農業の職業 に複数従事 してお り、そ れ ら職業 はほぼ通年従事す るものと短期間従事するものが組み合わされている。 これ らの組み合わせ は、① 9ケ 月以上の農業労働 と 2ケ 月程のごく短期の出稼 ぎなど (都 市での商い、 リキシャ引き、工 場労働など )、 ②雨季前後 (約 6ケ 月間 )に 従事で きる自営業 と 3‑6ケ 月間の農業労働、③複数の 職業の重点を繁忙期に応 じて数 ケ月単位で交代 させる、などである。職業の中には、高学歴が必要な 都市的職業や、大 きな資本が必要 とされる固定店舗や機械設備を供 う職業 は、 ほとんど見 られない。

非農業の職業 は、職種、雇用形態、就業地などの点で、多様 に組み合わされている。 また、農業経営 は自家労働力が中心であり、零細経営であ りなが ら脱農傾向は伺えない。主要な就業者の教育水準 は 比較的低 く、全 く学校教育の経験のないものが過半数を占める。

次節では、多就業を営む世帯が、季節的な生産環境の変化 に応 じて、実際にどの時期 にどのような 職業を営んでいたのかを、事例により検討 しよう。そのために、 まず環境の季節変化を、生産 と飯米 確保 と言 う点で確認 しておきたい。

3。 世帯事例

1)生 産 と飯米確保の季節変化

貧困層 にとって、環境の季節変化の実生活への何 よりも大 きな影響 は、季節的に食糧の確保が困難

になり、食生活が著 しく乏 しくなることである。中で も主食であり、農村住民の平均 エネルギー摂取

(9)

量の 73.3%(BBS:1998)を 占める米が確保 しに くくなることは、健康状態の悪化に関わる深刻な事 態を招 く。村人 によれば、貧困世帯が食べてい くのに苦労す る時期 は年 に 2回 訪れる。 1回 日は雨季 の訪れ と共 に 6/7月 か ら始 まり雨季開けとその直後 (9/10‑10/11月 )に ピークを迎える。 2回 日はボロ稲収穫直前の 2/3‑3/4月 である。 どち らがより苦 しいか、それは何故かは、世帯 によ り異 なるのだが、概ね収入・雇用機会の不足、 自家飯米が底をつ く、米の値段が高 い、の 3点 が主な 理由として挙げ られる。

図 2 Q村 における農業賃金労働者の平均雇用 日数の季節変化     まず収 入・ 雇用 の不足 を (1993年 9月 ‑1994年 8月 )  みてみ よ う。 職業 によ り季 節 的 な収入 の変動 は異 な る

日務女   30

25 20 15

10 5

0

Sra  Bad  Ash  Kar  Ogr  Pou  Mag  Fal 7    8    9   10   11   12   1    2    3

ため、 農業賃金労働、 ヒン ドゥーのみが従事 す る自営 業、 商業 (雑 貨 )に 限 って 個別に検討する。

農業賃金労働専従者に限 っ て一 ケ月 当 た りの雇用 日数 を見 てみ ると、 ボ ロ稲栽培

Ch°

4月   の整地・ 耕起が行われる 10

/11‑11/12月 には 15‑20

日程で、 苗の移植が行われ る 12/1月 に約 25日 とピー クを迎える。  2/3‑3/

Bo 4   5

4月 には除草などのため、 4/5‑5/6月 上旬 には収穫のため約 15日 程である。 しか し、 6/7‑

8/9月 には前述の通 リアモ ン稲の栽培面積が少な く、更に除草や化学肥料の散布などの作業必要量 が少 ないため 10日 以下 であ っ

た (図 2)。 冠水 の深 い年 に は、 7月 下旬か ら9月 上旬 に かけて農業労働 の機会が全 く ないこともあるという。

賃金 は収穫時 にのみ収穫物 の現物払 い、 その他の時期 は 現金払 いであ り、 いずれ も食 事が 1回 とビリ (安 価 なタバ コ )も 供 され る。収穫時の一 日の報 酬 は、 10‑15シ ェル (9.3‑14.0キ ロ )の 籾米 9)で あ り、収穫直後の精米小売価 格 に して93‑140タ カとなる。

収穫以外 の作業の賃金 には 2 種類の支払方法がある。一つ

は一律一 日 30タ カであ り、興

図 3 Q村 における零細加工業・ サー ビス業収入の季節変化 (1993年 9月 ‑1994年 8月 ) [出 所 ]1994年 の調査 によ り筆者作成。

注 )他 の職業にも従事す る労働者 の、①は農業賃金労働 にも一年 中 従事、② は一年 中は従事 しない。

タ カ 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0

Bo  Jo  Asa Sra Bad Ash Kar Ogr Pou

4   5     6     7    8    9    10    11    12   1

[出 所 ]1994年 の調査 に よ り筆者作成。

注 )  これ らの 自営業は、専業で従事す る者 はほ とん どいないので、一年 中従事す る者 について示 した。

o 月   4 C

M F

農 業賃金 労働 にのみ従事 (9人

)

‐ o・ ・ 他 の職 業 に も従事① (7人

)

他 の職 業 に も従事② (9人

)

(10)

味深いことに労働需要や作業内容に関わ らず基本的に不変である。 もう一つはティカと呼ばれ、単位 面積当た りの作業 に対 して賃金を支払 う。主に田植えと除草 に適用 され、一 日の賃金 に換算 して 50‑

75タ カである。定額 日給が一般的で、 ティカはごく少数の若 く優秀な労働者 に適用 されている。従 っ て、収入 は雇用 日数の少ない雨季全般 とボロ稲収穫直前 に、他の時期より落ち込む ことになる。

次に ヒンドゥーが多 く従事する竹製品 (直 径約 2メ ー トルの米貯蔵容器 )製 作、大工、鍛冶 (建 築 用 クギ製造 )と 、 ジャー トの生業 と関係な く女性が従事 している芦製のゴザ作成 についてみてみよう。

収入 は、図 3に 示 したように、雨季 (6/7‑9/10月 )に は乾季の半分以下 にまで落ち込む。 まず、

生産量・ 営業 日数が減 る。第一に生産 自体が困難だか らである。大工仕事 は雨が降るとや りにくく、

竹や鍛冶に使 う石炭を乾燥 させるのに一苦労である。更 に、雨季には需要が低いため報酬 または売値 も、乾季の 8割 か ら 6割 程度 に減少する。米を貯蔵する竹容器 と米の脱穀作業に多 く使われるゴザは 収穫期に需要が高まり、他の時期にはあまり売れない。大工仕事 は農繁期を避 けた乾季 に注文が集中 し、雨季には注文が少ない。 これ ら非農業の自営業の収入 も、実は農作業の時期に影響を受 けている。

しか し、農業労働のように年 によっては雨季に全 く就業機会がな くなることはない。

Q村 のサ ンプル世帯 は、上記以外の非農業の職業 として商業 (バ ナナ、 ココナツ、キ ンマの葉、養 殖用稚魚、 ビスケ ッ トなど )、 その他の自営業 (小 舟や自転車 リヤカーによる運送業、魚取 りなど )

を営んでいる。それぞれ営為の ピークは異なるが、雨季の方が乾季より活発で収益 も高いものは、小 舟の船頭 と魚取 りだけで、他の活動 は乾季 に活発になる。 ここで Q村 の人々が 日常的に買い物をする Zバ ザールの一雑貨屋の売 り上げか らバザールの代表的な売 り上げの変動をみてお こう。 この商店 は 米穀、油、香辛料、菓子、 タバ コ、文房具、化粧品など約 80種 類の商品を扱 う大 きい商店である。売 り上 げが最 も多い 1/2‑2/3月 を100%と すると、 6/7‑8/9月 の売 り上 げは 25‑30%に 減 少 し、 ボロ稲収穫直前の 3/4月 は、農家世帯 はボロ稲栽培 に投資 して手元に現金がないため 12‑15

%に まで落ち込むと言 う。

飯米をどの程度 自家生産で賄えるかは、経営規模だけでな く世帯員数やアモ ン稲栽培の可否、売却 又 は借金の返済 に充て られる量などにより異なる。一年中自家生産で賄える世帯 は 5し かない。その 他の世帯では、農業労働の現物賃金 として入手 される米を含めて も、非農家世帯 はもちろん、農家世 帯の大半が 1回 目の苦 しい季節が終わるまでに自家飯米を食べ尽 くしてお り、わずか 4世 帯が自家飯 米を残 している状態である。 2回 日の苦 しい季節 には、その 4世 帯 も自家飯米が底を尽いている。

一方、精米 (中 質米 )の 小売価格 は、 ボロ稲収穫時期の 5/6月 に 1キ ロ当たり 10タ カだが、す ぐ 上昇 して 7/8月 に 11.5タ カ、 9/10月 に 12.5‑13.0タ カと最高 になる。 11‑1月 には他地域産の雨 季作米が入荷 して 11.0タ カに下がるが、 2/3‑3/4月 には再び 12.5‑13.0タ カに上昇す る。

2)世 帯事例

これ らの季節的な事情、すなわち雨季明けの 9/10‑10/11月 とボロ稲収穫直前の 2/3‑3/4

月に雇用機会 と飯米を確保するという点を考慮 した上で、 4世 帯の就業の季節パ ターンを具体的に見 てみよう。事例のカレンダーは、調査前 1年 間 (1993年 9月 ‑1994年 8月 )の 実際の就業 と収入、飯 米の入手方法を思い出 して もらった ものである。 また、職業の組み合わせについて、イ ンタビュー し

た内容の要 旨を筆者が編集 して示 した。

(1)農 業賃金労働を中心に短期間の出稼 ぎを行 う世帯

事例 1:0.3エ ーカーの農地を自作 しなが ら、農業賃金労働にほぼ一年中従事 し、 2ケ 月間のみ出稼

(11)

図 4  事例 1の 世帯の季節 ごとの就業 内容 と収入 な ど (1993年 9月 ‑1994年 8月 )

1  農 業 (自 作 )(H,W)

(自 家 労働 力 )

2  農 業賃金 労働 (H)

3  リ キシャラ │き (H)

(夕

゛ 力出稼 ぎ )

F‐ 蔦業賃蚕労働て う … …

*(ア モン栽培 のあ る年

出稼 ぎを しない )

ボ ロ稲整地、田植 え、除草  :

[出 所 ]1994年 の調査により筆者作成。

注 )  就業内容の右 に記 した (H)な どは就業者 (H=世 帯主 )を 示す。世帯員 5人 (H:M50 W40、 S:12、 D:7、 D:4)。

世帯員の標記 は、 Hか ら見て、 W=妻 、 S=息 子、 D=娘 、 M=母 など。右の数字 は年齢を示す。 なお、1モ ンは 37.3 K誅 1シ ェルは 0.98Kg。 農業賃金労働 の報酬 として、 このほかに 1日 1回 の食事が付 く。

ぎをす る世帯。 ほぼ一年中自家農業 と農業賃金労働で生計を立てている。村周辺 には他の職業を持 っ ていないため、雇用機会の少ない雨季やボロ稲収穫直前、アモ ン栽培が可能な場合 も優先的に雇用 さ れる。調査前年 (1993年 )は 冠水が深 くてアモ ン栽培が不可能だったため、 ダカに住む実兄を頼 り、

雨季明けに 2ケ 月間 リキシャ引きを した。 アモ ン稲が栽培できない年には決 まってダカに出稼 ぎに行 くが、行 くかどうかは 9月 上旬のアモ ン移植が ぎりぎり可能な限界の時期になるまで判断 しない。雨 季の間は、 アモ ン栽培用の農業賃金労働機会が無 くて も、 自家飯米で食べていける。できるだけ村内 で雇用 されるように努力 している。 そうすれば、雨季中やボロ稲の収穫直前 にも継続 して雇用 される 可能性が高い。 ダカや地方都市への出稼 ぎは、親戚や知 り合いが職を紹介できる場合を除 き、かなら ず しも出稼 ぎに行 けば、職が見つかるわけではない。稼得者が単身で出かけ、 まとまった金額を貯め て帰郷す る。

12)営 為可能な期間が決 まっている自営業・ 商業 と 3‑6ケ 月間の農業労働を組み合わせる世帯 事例 2‑1:0.6エ ーカーの土地を刈 り分 け小作 しなが ら、雨季には魚取 りを、乾季には農業労働を 行 う土地 な し世帯。小作農業 は、借 りている 0.6エ ーカーの農地が低いため、乾季作 (ボ ロ稲 )し

で きないが、雨季にはアモ ン栽培より魚取 りの方が収入が確実である。 しか し今年 (1994年 )は 、冠 水が浅 く、地主が 0.12エ ーカー分の農地でアモ ン稲を栽培す ることを要求 しているので、応 じないと いけないだろう。魚取 りは、冠水 した田畑や川で自作の しかけ (ホ テイアオイの茎を浮 きに して餌を つけた釣 り針 )で 釣 り、毎 日Zバ ザールや村の家々を回 って売 る。水が引けば魚取 りはできな くなり、

ボロ稲栽培の準備 と農業賃金労働を始める。農業賃金労働は田植えの時期で も月に 10曰 くらい しか仕 事が無 く、 3/4月 にはほとんどな くなる。道路整備の日雇いがあれば、数 日で も働 きに出る。家計 の状況は、小作の取 り分 と収穫の農業労働の給料 として得た米があるときが一番よく、魚取 りができ る間はまあまあ、その後、 ボロ稲の移植や除草などの農業賃金労働があるとき、ボロ稲収穫直前 と苦 しくなる。去年 は 3/4月 に仕事がほとんどなか ったので、地主か ら精米を 2モ ン (74.6キ ロ )借

て、小作地か らの収穫のうちか ら籾米 6モ ン (精 米に換算 して 4.2モ ン )を 返済に充てた。

(12)

図 5  事例 2‑1の 世帯の季節 ごとの就業内容 と収入など (1993年 9月 ‑1994年 8月 )

1  メJ分 /Jヽ 作  (H, W) (自 家労働 中心 )

魚取 り販売 (H)

農業賃金労働 (H)

道離 稲ギ断劃ヽ ¨‐‐

i    :    :  750タ カ /月

̀稲

収穫 :   :   :

了× 5腎 臀シェルの籾米 =5モ ンの籾米

卸ヽ 作 と農業賃金労

「 借入 した米 の返済  : 飯米入手方法

[出 所 ]1994年 の調査により筆者作成。

注 )  世帯員などの標記 は事例 1に 準 じる。世帯員 6人 (H:M35 W80、 S:12、 D:10、 D:8、 D:4)。

事例 2‑2:養 殖用稚魚の仲買 と農業を中心に行い、農業賃金労働 と出稼 ぎを短期的に行 う世帯。

図 6  事例 2‑2の 世帯の季節 ごとの年間就業 内容 と収入 など (1993年 9月 ‑1994年 8月 )

[出 所 ]1994年 の調査により筆者作成。

注 )  世帯員などの標記 は事例 1に 準 じる。世帯員 5人 (H:M30 W:24、 S5、 S:0.5、 M65)。

0.4エ ーカーあ った農地 は、 6000タ カの借金が返済で きずに、抵当に取 られた。 その土地を借 り受 け る形で小作 している。一番重要な職業は養殖用の稚魚の仲買で、稚魚を漁民か ら買い集めて、Zバ ザー ルや他の 2つ のバザールで売 る。その仕事があまり儲か らない時期には、 ダカ近郊のナラヤ ンゴンジ に リキシャを引 きに行 く。農業賃金労働 は、稚魚の仲買が無い時期の うち、最 も雇用機会のあるボロ 稲の整地 と田植え時期 しか従事 しない。その他の時期には、出稼 ぎに行 くか、稚魚の商売を したほう が儲かる。

0)複 数の職業の重点を繁忙期に応 じて数 ケ月単位で交代 させる

事例 3:農 業賃金労働、大工、竹容器製造など6つ の職業を繁忙期に応 じて交互に行 う世帯。 ヒンドゥー 教徒であり、元々農業の傍 ら大工を していた。農地 は数年前 にすべて抵当に入れて しまい、現在農業 は営んでいない。世帯主 は、大工道具を所有 しない高齢の大エヘルパーで、棟梁 について月に 5日 間 ほど泊 り込みで周辺の村々を回 って作業をする。竹製の米貯蔵容器が売れるアモ ン稲の収穫期 (ア モ

13…

11500タ カ /月

2ヶ 月で 2000タ カを貯 め

1  農業 (抵 当小作 )0,W)

(自 家労働力 )

2  稚魚仲買 (H)

3  農業賃金労働 (H)

4  リ キシャ引き (H)

(ナ ラ ヤンゴンシ ゛ 出稼 ぎ )

5  冬野菜生産販売 (H,W)

飯 米入 手方 法

(13)

図 7  事例 3の 世帯の季節 ごとの年間就業 内容 と収入な ど (1993年 9月 ‑1994年 8月 )

踪 睾 矮 鱚 器 も ニ ル の 籾 集 =5モ リ の 籾 米

日 /月 X50タ カ =250タ カ /月

× 60タ カ =300タ カ /月

: 30‑100タ カ /月

:

1  農 業賃金 労働 (Sl,S2,

2  W) 農 業賃金 労働 (H,Sl)

3  大 工炒 ハ ゜― (H)

4  竹容器 製 造 (H,Sl)

5  芦マット 製 造 (W)

卵生産販売 (D

か ら購入   i

飯米入手方法

[出 所 ]1994年 の調査により筆者作成。

注 )  世帯員 などの標記 は事例 1に 準 じる。世帯員 5人 (H:M60 W45、 S:12、 S:8、 D6、 D8)。

ン稲の収穫が多い近隣郡か ら仲買人が庭先まで買い付 けに来 る )に は、そちらを優先す る。農業賃金 労働 は、 ほとんど声がかか らない。妻が芦のゴザを編んで売 る。一年中売れるが、 ボロ稲の整地・ 田 植えがある時期には、息子 2人 とともに 3人 で一緒 に農業賃金労働をす る方が儲かる。 どうして も手 元に現金が無 くて、米が買えないときは芦のゴザを売 るか、鶏の卵を売 るか して、米を買 う。 または 同 じ屋敷地 に家を建てて住んでいる夫のきょうだいの世帯か ら少量ずつ米を借 りる。大量 に米を貸 し て くれる人 はいない。農業を していないので、まとまった量の米を返済できないことを皆知 っている。

3)小   括

多就業を構成する短期的職業 は、従事す る時期がほぼ決まっている。職業の中で、最 も収入が多い かまたは安定 して リスクが少ないものを、決まった時期に選んで従事 しているといえる。 い くつかの 職業 は、実際に従事 されている時期以外 には就業が成立 しない性格の ものではな く、実際に一年中従 事する者 も存在す る。決 して この時期に しか従事できないという事情があるわけでない。 また、全般 的に農村での雇用が少な くなり、収入が減少す る雨季 と雨季開けの 9/10‑10/11月 と、 ボロ稲収穫 前の 2/3‑3/4月 には、その時期に就業可能な職業を選んだ り、他の時期の就業を調整す るなど の努力が行われている。都市への季節的出稼 ぎは 9/10‑10/11月 の農業の端境期 にほぼ決 まって いる。 また、短期的な就業か ら得 られる収益 には、収入額の大 きな変動がみ られない。確実に収益や 雇用を確保で きる時期を選択 して従事 していると考え られる。

雨季 と乾季 にできる複数の職業を組みあわせ、所得の落ち込みを修正するだけでな く、新たな ピー クを創出す ることにも成功 している世帯 もある。 とはいえ、雨季に全員が同 じ仕事を始めれば、商売 が成立 しな くなることも予想 される。 また、村周辺で可能な小商いに して も、大都市への出稼 ぎに し て も、誰 もが容易に参入できるわけではない。参入できて も、儲 けが出るコツをつかむまでには時間 がかかる。

複数の農業外就業を営むという選択を行 う世帯 は、おそ らく他の選択が困難な大状況下 にありなが

らも、最大限に生産環境の季節変化 による就業への影響を平準化 しつつ、農業への関与 も継続 しなが

ら、 より安定 して飯米を確保 しようと努めている。

(14)

おわ りに

バ ングラデシュ農村の多就業 とは、零細な農業 と農業賃金労働、その他の非農業の生業や出稼 ぎが 季節の推移を考慮 して組み込まれてお り、 きわめてはっきりとした季節的営為だといえる。多就業を 営む中心的主体 は 0.5エ ーカー未満の経営面積の農家 と非農家である。 これ らの世帯 は、生産環境が もた らす雇用、 したが って飯米確保の季節変化を平準化 させるために、短期的な就業を含めて複数の 職業を営んでいる。

しか し、一方で これ ら多就業の世帯の子 どもの教育に注 目すれば、多就業傾向の未来 に不安をもた ぎるを得ない。一つの大規模な非農業の職業を一年間通 じて営む世帯では、子 どもにより高い教育を 受 けさせている。将来、 これ ら世帯の子 どもたちは自ら農作業をす ることな く雇用労働力の監督だけ を行いなが ら、 より高収入の安定 した非農業の職業につ くことが可能 となるだろう。その一方で、多 就業世帯の子 どもの教育 は遅れが日立ち、子 どもたちは学校教育を早めに止めて雑業的な職業に従事 せざるを得な くなっている。

また、短期的な職業の日給や収益をみると、   主たる生業 として営まれているよりも条件が悪 くなっ ている場合 もある。悪い条件で も確実に収入を得 られる方を選択 しているともいえるし、多就業を営 む世帯が悪い条件 に甘ん じることを強い られているともいえる。 これ らの世帯 は多就業構造か らいか に して脱却できるのであろうか。

最近、雨季 には リキ シャも通れなか ったZバ ザールか ら幹線道路 までの道路が整備 されて、 ダカか ら直通の定期バス便が開通 したと聞いた。   トタン屋根の平屋の店 しかなか ったZバ ザールに、 レンガ つ くりの店が増えているそうである。今後、都市へのアクセスが容易になれば、 Q村 の非農業の職種 も多様化するであろう。それによって貧困層の就業構造 は如何に変化するであろうか。多就業化がす すむのであろうか、 または脱農化や特定の固定 された非農業の職業 と農業の兼業の増加 という、多就 業 とは逆向きの変化がおこり得 るのだろうか。

また、 Q村 には 1986年 よリグラ ミン銀行や大手 の NGOを 中心的な推進母体 とす る小規模制度金融 が導入 され、本稿で対象 とした貧困層の多 くがその受 け手であった。本稿では農村金融のあり方の変 化 と就業構造の関係については触れなか ったが、小規模制度金融が浸透することにより、就業構造が 変化 し、飯米確保の手段 も大 きく変わった可能性がある。農村労働市場 と金融市場を合わせて検討す

ることは、今後の課題 としたい。

1)屋 敷地 (バ リ )は 、単一父系集団に属する数〜数十世帯により構成 される。女性の日常的な活動 範囲は屋敷地内に限 られている。

2)農 業経営に一切携わ らない賃金労働を指す。バ ングラデシュの場合、通常 は一 日、せいぜい数 日 単位の契約であるが、 まれに年雇 も見 られる。

3)Q村 は戸数 1315の 大 きな村であり、調査対象 はその北部の 365世 帯で北接するZ村 のバザールを利 用す る地域のみである。以下、特 に断 らない限 り Q村 北部を Q村 と称する。

4)1983/84年 の Q村 (Q村全体 )の 作付 けは、総耕地面積 1,073エ ーカーにアウス稲が 944エ ーカー、

アモ ン稲が 886エ ーカーであり、在来種 と高収量品種ボロ稲 はそれぞれ 15エ ーカーと 9エ ーカー に i邑 ぎなか った (BBS 1988:188)。

5)村 人 によるこの試算 は、谷 口や藤田による試算 (そ れぞれ 1.8エ ーカー、 1,2‑1.7エ ーカー )と

ぼ一致 している (TANIGUCH1 1987:59、 及び、藤田 1993:86)。

(15)

6)宗 教 は以下のような点で就業形態 と関連がある。印パ分離独立、バ ングラデシュ独立の両混乱期 に大地主や大商人を中心に大量の ヒン ドゥー人口がイ ン ドに流出 し、現在バ ングラデシュに居住 するヒンドゥーの多 くはジャー トが特定の自営的生業 と結 びついているノモシュッドロである。

都市への出稼 ぎ者 にはムス リムが多い。チ ッタゴンの出稼 ぎ リキシャ引 きは例外な くムス リムで あるといった事例報告 もある (高 田 1992:70)。

7)Q村 のユニオ ン 0チ ョキダリ税 (地 方税 )の 査定額名簿 に基づ き、査定額がゼロの最貧困世帯 と 査定額が低 い世帯 に高い若干の比重 をかけ、 365世 帯か ら 50世 帯 (33世 帯 はムス リム、 17世 帯 は ヒン ドゥー )を 抽出 した。ユニオ ン・ チ ョキダ リ税 は、土地所有面積、家屋の状況、生活水準な どに応 じて 5年 ごとに税額が査定 される。 Q村 の徴税係 (チ ョキダール )と 村人によると、税額 によって以下のように世帯を分類で きるという。① O‑9タ カが、財産がほとんどない極貧、② 10‑

19タ カが中の下で生活が苦 しい、③ 20‑49タ カが中の上でなん とか自力で生活 していける、④ 50 タカ以上が豊かで生活 に困 らない。 92/93年 査定の納税額か らみた Q村 世帯の比率 は、①極貧 9.

3%、 ②中の下 34。 0%、 ③中の上 37.5%、 ④豊か 19。 1%で あった。 この査定額名簿 は、移出世帯が 記載 されていたり、分離 した世帯が別 にされていなかったりと正確 さには欠 けるものの、大まか に村内の世帯の相対的な経済状況などを知 るには便利な情報である。

8)屋 敷地生産 は、農村世帯の収入の 1‑2割 を占めると言 う (伊 東 :1999)。

9)労 働者への分配比率は、不作年の 1/7か ら、豊作年の 1/10ま で、作況により決め られる。 0.2

エーカー分の稲を収穫 し、その日のうちに脱穀を済ませるには 4人 の労働者が必要だという。平 均収量 12モ ンとして、 1/10を 受 け取 ると、一人当たり 0.3モ ン (=約 11.2Kg)の 籾米を受 け取 ることになる。 アモ ン稲の収穫時には、籾が落ちに くく作業が面倒なため、収穫物の 1/5か ら

1/6が もらえる。

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図 l Q村 周辺における稲作の変化 (1980年 以降 ) RⅢ 稲導入 前 (〜 1985年 )1) RⅢ 稲導入 後 (1985年 〜 ) 散播 ア ウス稲 と散播 アモ ン稲 の混播:   1散播 ア ウス稲│ │ダ ル豆な ど乾季作物:   :移植 アモ ン稲(中高地のみ):   :ボ ロ稲(高収量品種)
図 4  事例 1の 世帯の季節 ごとの就業 内容 と収入 な ど (1993年 9月 ‑1994年 8月 ) 1  農 業 (自 作 )(H,W) (自 家 労働 力 ) 2  農 業賃金 労働 (H) 3  リ キシャラ │き (H) (夕 ゛ 力出稼 ぎ ) F‐ 蔦業賃蚕労働て う … … *(ア モン栽培 のあ る年 出稼 ぎを しない ) ボ ロ稲整地、田植 え、除草  : [出 所 ]1994年 の調査により筆者作成。 注 )  就業内容の右 に記 した (H)な どは就業者 (H=世 帯主
図 5  事例 2‑1の 世帯の季節 ごとの就業内容 と収入など (1993年 9月 ‑1994年 8月 ) 1  メJ分 /Jヽ 作  (H, W) (自 家労働 中心 ) 魚取 り販売 (H) 農業賃金労働 (H) 「 道離 稲ギ断劃ヽ ¨‐‐ i    :    :  750タ カ /月ボ̀稲収穫:   :   :了×5腎臀シェルの籾米=5モンの籾米 卸ヽ 作 と農業賃金労 「 借入 した米 の返済  :飯米入手方法 [出 所 ]1994年 の調査により筆者作成。 注 )  世帯員などの標記 は事例
図 7  事例 3の 世帯の季節 ごとの年間就業 内容 と収入な ど (1993年 9月 ‑1994年 8月 ) 踪 睾 矮 鱚 器 も ニ ル の 籾 集 =5モ リ の 籾 米 日 /月 X50タ カ =250タ カ /月 × 60タ カ =300タ カ /月 : 30‑100タ カ /月 :1 農 業賃金 労働(Sl,S2,2 W)農 業賃金 労働(H,Sl)3 大 工炒 ハ゜―(H)4 竹容器 製 造(H,Sl)5 芦マット製 造(W)卵生産販売(D か ら購入   i飯米入手方法 [出 所 ]19

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