分裂文AナノハBダについての考察
著者 熊井 浩子
雑誌名 静岡大学国際交流センター紀要
巻 5
ページ 1‑19
発行年 2011‑03‑30
出版者 静岡大学国際交流センター
URL http://doi.org/10.14945/00006607
分裂文Aナ ノハBダにつ いての考察
熊 井 浩 子
【要 旨】
日本語名詞述語文 の類型 とAナ ノハBダで表 わ され るナ分裂文 を比較 し、 その置 き換え 可能性及 びナ分裂文 の意味や機能 を考察 した。 その結果、前項 の節 らしさが明確 な場合 ほ どナ分裂文 にな りやす い こと、Aでない ものやBでない もの との対比 とい う条件 の もとに、
役割・ 値解釈 の同定文 や倒置同一性文 との近接 が見 られ ること、ABが単 な る帰属・ 同一 の関係 で はな く隣接関係 であ る場合 の倒置指定文 の場合 にナ分裂文 にな りやす い ことなど がわか った。 また、Aが形容詞 的 な意 味や機能 を もつ場合 に もナ分裂文 にな りやす い。 こ れにはAが後項名詞句 とメ トニ ミー的関係で あ る場合 も含 まれ る。 さ らに、Aが最上級 ま たは何 らかの意味で限定 された範 囲を表 わす名詞句 である場合、 あ るいは後件 が疑 問詞で ある場合 な ど、特 に後件がなんで あ るかが焦点 とな る場合 に もナ分裂文 にな りやす い。 こ うした性質 か らナ分裂文 は見 出 しな どに も多 く用 い られて いるが、単 にAハ Bダと述 べ る 場合 に比 べ、AやBと の対比 によ リイ ンパ ク トの強 い表現 とな る ことが この文型 を用 い る 最大 の動機 であると言 えよ う。
【キー ワー ド】 ナ分裂文 名詞述語文 意味 機能 対比
1.はじめに
初級 の 日本語教科書 と して国内外 で広 く使 われている Fみんなの 日本語』で は、38課 で いわゆる分裂文 を学習す る。 この課 の文法解説書で は(1)の ように動詞、 イ形容詞・ ナ形容 詞 および名詞 の接続 の し方が説明 されて いるが、 この うち、 ナ形容詞 と名詞 について は、
plain formの「 だ」 が「 な」 に替 わ ると書 かれて い る。 この名詞 の接続 の し方 は、 26課 で学習す る「 んです」 や次 の39課 で学習す る「 ので」 と同様 となる。
V
tヽ一adj な―adi
N
plain form plain form -//--.>-fg
のは Nです
(2) This pattern is used when a noun representing a thing,a person,a place, etc., is replaced with の and then taken up as the topic of the sentence.In examples ⑬ and ⑭,(中略)the speaker gives related information in the latter half of the sentence.(こ の文型 は、物や人、場所などを表す名詞が「の」
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に置 き換 え られ、文 の主題 として取 り上 げ られた ものである。例 えば、⑬ と⑭ の例 で は (中略
)、
話者 は文 の後半でその主題 に関連 した情報 を提示す る。訳、筆者)また、 ここで は(2)の よ うに物や人 や場所 などを表す名詞 が ノに替 わ って、文 の トピック にな り、話 し手がそれに関連す る情報 を文 の後半 で述べ る場合 の文型 であると説明 されて い る。 しか し、 名詞 が ノに置 き換 え られた とい う説 明 は必 ず しも正 しくな く、(3)のよ う に名詞 を想定 しに くい例 もある。
(3)私が彼女 に会 ったのは偶然だ。
(4)?私 が彼女 に会 った理 由は偶然 だ。
幅)?私が彼女 に会 った きっか けは偶然 だ。
この文型 で用 い られ るノはノの前 の節 を名詞化す るノであ るとと らえ るのが適 当であろ う。一方(6)の ノは名詞 の替 わ りに用 い られ る代名詞 の ノであ る。 この二つの ノは一見 して 区別がで きない場合 もあるが、働 きは異 な っている。本稿 で扱 うのは名詞化 の機能 を もつ 前者 の ノであ る。
(6)私が食べ たのはあま りおい しくなか った。
これ らの解説 によると、名詞 の場合 には「〜/→〜な」 とな り、(7)の よ うに「病気 だ」
は「病気 なのは」 となることにな る。 しか し、名詞 によ って は(8)の よ うにNナノハ にす る と不 自然 にな る もの もあ る。(9)で は、 ナノのないNハだ けの形 が 自然 になる。 このよ うな 事情 もあ ってか、38課で は例文や説明、練習 に も名詞接続 の形 は取 り上 げ られていない。
(7)病気 なのは私 じゃあ りません。 タンさんです。
(8)*山田さんなのは私 じゃあ りません。 あの人 です。
(9)山田さん は私 じゃあ りません。 あの人です。
で は、 どのよ うな場合 にNナ ノハ にな り、 どのよ うな場合 にNナノハが不 自然 にな るの であろ うか。本稿 で は、 このよ うなNナノハNダとなる場合 の分裂文 をナ分裂文 と仮称 し、
文 の類型 との関係 を明 らか にす るとともに、書籍やイ ンターネ ッ ト、実際の会話 などか ら 収集 した用例 を基 に前項や後項 の特徴や関係、及 び文 の意味・ 機能 について考察 してい く。
その際、 ナ分裂文 の前項 の名詞句 をA、 後項 の名詞句 をBと し、Aナ ノハBダで表 す こと にす る。
2.名詞述語文 と分裂文
2.1 名詞述語文 一考察のポイ ン トー
2.1.1 名詞述語文 の類型
日本語 には、 ハ またはガ とい う助詞 とコ ピュラ、 ダか らな る、AハBダおよびAガBダ とい う2種類 の名詞述語文が存在す る。 この名詞述語文 を砂川 (2009)はコピュラ文 と呼 び、は0のよ うに、同定文 と記述文 に分 ける。同定文 とは「 あ る役割 の値 を特定 の指示対象 によ って同定す る文」 であ り、記述文 とは「 ある対象 の属性 を記述す る文」 である。前者 の同定文 はさ らに①か ら④ の4つ、後者 の記述文 はさ らに⑤⑥⑦ の3つに分類 され る。 こ の うち、本稿 で取 り上 げるのは、①役割・ 値解釈 と③同一認定解釈 の同定文、及 び⑤一般 の記述文 にあた るAハBダである。
① のような同定文 は「今 日の当番 にだれかが当た っていること」を前提 として、「 その だれかが私であること」 を主張す るものであり、いわゆる②指定文「私が今 日の当番だ」
に言 い換えることができる。 このような同定文では、述語名詞句「私」が もっとも高い情 報価値を有 していることか ら、砂川 はこれを「後方焦点文」 と呼ぶ。砂川 によれば、 この 後方焦点文 は、聞 き手が予想 しうる情報を前項「〜は」で示 して、後項「〜だ」で予測で きない新情報を導入 し、その新たな情報がそれ以降談話主題 として引 き継がれてい く用法 が圧倒的に多い。
③ はある指示対象 と別の指示対象が同一であることを示す文である。 この タイプの同定 文 は「倒置同定文」 と呼ばれることもあ り、④「 あの時の太郎君が この人だ」 と言 い換え が可能である。⑤ はいわゆる措定文で、Aの性質 0属 性 などをBで 表 している。 このよう な名詞述語文の うち、Aナ ノハBダ で言 い換え られやすいのはどの類型であろうか。
CO コピュラ文の分類注
1
⑩
同定文一―T一 役割・ 値解釈ヽ・I――「〜は〜だ」
│ `ヽヽ「〜が〜だ」
L‐
一同一認定解釈ヽ̲二l― 「 〜は〜だ」
```「〜が〜だ」
記述文― 一一般 の記述文―一―一一―「〜 は〜だ」
―現象描写文 タイプーー「 〜が〜だ」
一修辞 的描写文 タイプー‐「 〜が〜だ」
今 日の当番 は私だ。① 私が今 日の当番だ。②
この人 はあの時の太郎君だ。③ あの時の太郎君が この人だ。④
私 は学生 だ。⑤ 信号 が赤 だ。⑥
これが とんだペテ ン師だ った。⑦
2.1.2 名詞旬の表す意味機能 と名詞述語文の類型
今 田 (2008)は、西 山 (2003)のコ ピュラ文の分類 を基 に名詞句 の表す意味機能 と名詞 述語文 の類型 の間 にはある一定 の依存関係 が認 め られ ると して、 それぞれの文 の タイプで 生起可能 な名詞句 の意味機能 につ いて考察 している。 それをまとめたのが、下 のCDか らはЭ である。措定文・ 倒置指定文・ 倒置同定文 はそれぞれ砂川 (2005)の⑤一般 の記述文、① 役割・ 値解釈 の同定文、③ 同一認定解釈 の同定文 にほぼ対応 す ると思 われ る。
CD 措定文 [個体/種 /役割] は [種/役割](叙述名詞句)だ。 例。 あいつ は馬鹿 だ (例文 は西 山)
02 倒置指定文 [役割](変項名詞句)は [個体/種/役割] だ。
例.幹事 は田中だ (同上)
aD 倒置同定文 [個体/種/役割] は [種/役割](叙述名詞句)だ。 例。 こいつは山田村長 の次男 だ (同上
)
今 田によれば、措定文 で用 い られ る述語名詞句 は対象 の属す る範 疇や属性、性質 を表す ため、種 や役割 を表す名詞 を用 いることはで きるが、個体 は用 いることがで きない。一方、
倒置指定文 は主語 に役割 を表す名詞句 が生起 し、述語 に個体、種、役割 を表す名詞句 が用 ラ文 の種類
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い られ る。 これ は、 この タイプの文 の主語 である名詞句が変項名詞句であ り、 ある内包的 な概念 に対 し、 その外延 を結 びつ ける機能 を持 っていることか ら、内包的概念でない個体 あ るいは外延 を列挙で きない種 で は この条件 を満 たす ことがで きない ことによる。
倒置同定文 は、措定文が対象 に属性 を与 え る機能 を持つのに対 し、属性 を与 え ることに よ って、未 同定 の対象 を同定す るとい う機能 を持つ とい う違 いがあ るが、措定文同様、主 語 に個体、種、役割を表す名詞句、述語 には種や役割 を表す名詞句が生起 し、対象 と範疇・
属性 の関係 を表す とされ る。 ただ し、aO CDはぁ る指示対象 と別 の指示対象 が同一 で あ る ことを示す倒 置同定文であるが、述語名詞句 は個人 である。 この ことか ら、倒置同定文 の 中には個体 を述語名詞句 に とる場合 もあ るよ うに思 われ る。
l141 この人 はあの時の太郎君は だ。 (例文 は砂川、下線・ 注 は筆者)
は, あのキ ャプテ ンは村上個人です よ0(例文 は今 田、下線・ 注 は筆者)
また、 この3つの類型以外 の名詞述語文である倒置同一性文 に生起す る名詞句 について 今 田は触れて いないが、以下 の例か らもわか るよ うに、主語・ 述語 どち らに も個体、種、
役割 が生起で きるよ うであ る。
uO ジキル博士個人はハ イ ド氏lE Aだ。 (例文 は今 田、下線・ 注 は筆者)
はつ ハ リネズ ミ種はヤマアラシ種だo(同上) CO 日本 の首相御 は総理大臣倒 だ。
このよ うな名詞述語文 の特徴 はナ分裂文ではどのよ うに現れ るのであろ うか。
2.1.3 名詞述語文の意味論的・ 機能論的分析
さ らに今 日 (2009)は、名詞述語文 の意味論的・ 機能論的分析 を行 っている。今 田によ れば名詞述語文「XはYだ」 は意 味論 的構造 に関 して言 えば、二 つの要素XとYが何 らか の関係 にあ るのだ とい うことを意味 し、表 され る関係 は09のよ うに非常 に多様 であ るとさ れ る。
こ9a.帰属関係 ウサギは草食動物 だ。
b.同一関係 明 けの明星 は宵の明星 だ。
c。 役割 ―値関係 この部屋 の温度 は19度だ。
d.隣接関係 僕 はウナギだ。 (料理 を注文す る場面 で)
帰属 関係 や同一関係 の名詞述語文 と役割 ―値関係 の名詞述語文 の違 いは、後者がXの存 在 を前提 と し、 それがなんであるかを述べ る文 であ るのに対 し、前者 はXの存在 を前提 と
していない ことであるとい う。 また、 隣接関係 とは、Aと Bの関係 が帰属・ 同一 または役 割 一値関係 と解釈 で きない多様 な関係 を表す名詞述語文であ る。 このよ うな文 で は、Aと Bの関係 によ ってNナにな りやす いか ど うかが決 ま って くるので あろ うか。 このよ うな点
も考察す る必要があ る。
2.2 分裂文
砂川 (2007)は、主語が節で構成 され、述語がその節か ら取 り出された特定の成文 によっ て構成 され る名詞述語文 を分裂文 と し、「〜 ノハ〜 ダ」 のよ うなハ分裂文 と「〜 ノガ〜 ダ」
のよ うなガ分裂文 とに分 けた うえで、分裂文 の機能 には、「 焦点提示機能」 と「 特立提示
機能」 があ るとす る。「 特立提示機能」 が ガ分裂文 のみ に見 られ る機能 であ るのに対 し、
「 焦点提示機能」 はハ分裂文・ ガ文裂文 いずれ に も認 め られ、前提命題 で欠 けて い る情報 を提供 す ることによ り、話者 と聞 き手 の間の情報 の差 を埋 める機能である。 ただ し、ハ分 裂文 の場合 に見 られ る焦点提示機能 はガ分裂文 とは異 な り、前提命題 に欠 けて い る情報
「X」 は何か とい う問 いに対 して「X」 は「Y」 であ ると特定す ることによ り、 その問 いに 答 えを与 え る機能 であ る。例 えば、0090は、 それぞれ0つ 0)で表 され るよ うな前提 と主張 によ って成 り立 ってい る。即 ち、 ハ分裂文 は変項Xを含 む命題が主語、述語部分 が焦点 と な ってお り、焦点情報 を提示す ることでその変項Xに値 を割 り振 る機能 を果 た して いるの であ る。 当然ハ分裂文 の焦点 は述語「 〜 ダ」 の部分 にあ る。
00 その時現れたのは一匹の熊 だ った。 (例文 は砂川)
Oll 前提 :そ の時Xが現 れた こと 主張 :そ のXが一 匹の熊 であ ること
Ca それで は、 日本 はどうだ ろ うか。/冷戦後 の世界への対応 に もっとも出遅 れたの は日本である。(例文 は砂川。「/」 は段落 の切れ 目。注 は砂川
)
IЭ 前提 :日本 はXであること
主張 :そのXが「(日本が)冷戦後の世界への対応 にもっとも出遅れた」であること このよ うなハ分裂文 にお ける変項Xの値 に対す る問 いの立 て方 には「Xはなにか」「Xは どれか」 な どのよ うな特定 の指示対象 を求 める ものだ けでな く、「Xはなぜか」「Xはなに が起 こってか らか」 のよ うな、原因や理 由、契機 に関す る問いや「Xは何度 目か」 のよ う に生起 の回数 を求 める問 いな ど様 々な問 いが可能 とな り、 その答 えが焦点である述語部 に 表 され る。ハ分裂文が20のよ うに、述語 に「 〜ため」「 〜おかげ」「 〜か ら」 などの従属節 が用 い られ る傾向が特 に強 いのは、 このよ うな談話機能 によるものであるとされ る。 また、
特 に以降 の談話 で主題 となる重要 な内容 に聞 き手 の注意 を集 めたい場合や、談話 の展開の 中で特定 の指示対象を特 に強調 したい場合 といった談話語用論 的な条件が整 った ときに述 語名詞 に格助詞 を用 いることがで きる注2と され る。 そ して、 この分裂文 の述語 の示す指示 対象 が後続談話 の主題 として語 り継がれてい く可能性 が高 い と砂川 は考察す る。
Cの 人里 に熊 が現 れたのは、森 に食料 が不足 してい るためだ。(例文 は砂川
)
OD*人里 に熊が現れたのが、森 に食料が不足 して いるためだ。(例文 は砂川)
砂川 はナ分裂文 につ いて特 に触 れていないが、 当然 このAナ ノハBダで表 わ され るナ分 裂文 も分裂文 の一つであ り、上記 の性質 を有 していることになる。
ここで注意 しなければな らないのは、分裂文 は「主語 が節で構成 され、述語 がその節か ら取 り出 された特定 の成文 によ って構成 され る」(下線筆者)と い うことであ る。即 ち、
仮 に表面 的 に実現 しているものがNナノハであ って も、 ノの前 は、名詞 で はな く、 あ くま で節 で あ るとい うことであ る。先 に触 れた『 みんなの 日本語』 の解説 で、単 な るNではな く、「N〜/→〜 な」 とな ってい るの もそのためであ ると考 え られ る。20は2つで示 したよ うに、Xガ最大手 メーカーlAlデアル ことを前提 と し、 そのXが××(Blであ ることを示 して いるわ けであ る。Aナノハが28のよ うにAデアル ノハ に言 い換 え られた り、29のよ うにA
ダ ッタノハ にな った りす ることもあ るのはその証拠であ ると言 え る。
00 日本 の最大手 メーカーなのは勿論 ×× (会社名)なのですが (後略)#注
3
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2つ [[Xi日本 の最大手 メーカーだ]sの ]NPは [× ×i]NPだ
98 日本 の最大手 メーカーであ るの は勿論 ×× (会社名)なのですが (後略)
99 『 ラーメ ン××』系で一番 デカ盛 りだ ったのは×××らしい?#
それ故、Aナノハだ けでな く、他 の補語が実現 している場合 には、名詞 の意 味内容 を問 わず、Nナの形 にな る。例 えば00の もとの文 はODであ り、節 が ノによ って名詞化 されてい る。 この文 の構造 は00のよ うに表 され る。
00 ××× (メ ーカー名)が激安 なのは携帯 オーク ション#
00 ×X×は携帯 オークシ ョンが/で 激安だ。
00 [[× ××がXi激安 だ]sの ]NPは [携帯 オークションi]NPだ
このよ うな例 には、 ほか にOЭか らODのよ うな ものが あ る。 いずれ もAナ ノハ をAハに変 え ると00か ら00のよ うに、やや据 わ りが悪 くなる。
00 ジキル氏 と同一人物 なの は誰か?
00 和菓子 自体が うさぎなの は この2つ位 なんだ けど#
00 妹が学生 なのは田中 さんだ。
00?ジ キル氏 と同一人物 は誰 か?
00?和菓子 自体が うさぎはこの2つ位 なんだけど
00?妹が学生 は田中 さんだ。
もちろん補語 が省略 されてい る場合 もあるが、例 えば09は、「 私 が」 を補 ってみ るとに0 のよ うに節 であ ることは明 らかである。
09 もう一 つ疑問なの は、 ×××君 (名前)の存在です。#
に0 もう一つ (私が)疑問なのは、 ×××君 の存在です。
また、にЭのよ うに副詞 的成分がつ くと1421に比べて節 らしさが増 し、Nナ ノハが よ り自然 にな る場合 もある。
にゆ 司会 は田中 さんだ。
にD 司会 なの は田中 さんだ。
に9 今回司会 なのは田中 さんだ。
このよ うに、他 の補語 との共起や副詞的成分 の付加などによって、前項が節 らしさを保 っ ている場合 にはナ分裂文が 自然であることがわか る。
さ らに、 デー タを収集 して気 がつ くの は、AナノハBダカ ラダ、 あ るい はAナ ノハBマ デダや、Aナ ノハBノ 後 ダのよ うに、名詞 のあ とに格助詞 や時、場所、理 由な どを表 す接 続表現 を伴 う例が多 く見 られ ることだ。 この こと自体 はナ分裂文 に限 らず、140の よ うに一 般 の分裂文 に も観察 され る現象であることは砂川 も指摘 して いる。例 えば、『 中級 日本語』
で も、5課でにDのよ うに、「 てか ら/後 /時/途中」 のよ うな後続表現 とともに用 い られ る例 が紹介 されて いるが、Nダの用法 は取 り上 げ られていない。
にの 人里 に熊が現 れたのは、森 に食料が不足 しているためだ。(例文 は砂川)
に, 北海道で春 らしい季節 を迎 え るのは、五月 にな ってか らであ る。(例文 は『 中級 日本語』)
特 にナ分裂文 の場合、Aナ ノハBダの用例がなかなか見つか らないの に比べ、Aナノハ
Bダカ ラダなどの形 の用例 は比較 的採取 しやす い ことか らも、前者 に比 べて使用頻度 が高 いので はないか と予測 され る。 これ は、 このよ うな分裂文 は、Aナノハ また はAデアル ノ ハ以外 で は表せない ことによると思 われ る。多 くのAナ ノハBダは、 多少据 わ りは悪 くて もナ ノを省略 してAハBダにす る ことが可能 で あ る。 それ故敢 えてAナ ノハ にす るにはそ れな りの必然性 が要求 され る。 しか し、Bが格助詞 や時 な どの接続表現 を伴 う場合 には、
単 な るAハで はな く、 引用符「 」、 "な どをつ けて、「 いわゆ るN」 のよ うな形 にす る 場合 を除 けば、Aナ ノハ また はAデアル ノハ の形以外 は とりに くい。 つ ま り、Aナ ノハが 選択 され る必然性 が高 いとい うことである。
は0 夜型 なのは社会 に対 す る罪悪感 か らだ よ#
140 モバ イル コンテ ンツ事業 な どを展 開す るメデ ィアイ ンデ ックスは、無料 で投函で きる年賀 はが き「tipoca(テ ィポカ
)」
の受付 を開始 した。 無料 なの は広告 が入 る ためだ。#注4
に0 (私が)学生 なのは明 日までだ。
それ故、AハBダとAナ ノハBダの違 いが特 に問題 にな るの は、述語 と して その節 か ら 取 り出 された成文が節 の述語名詞句 で、分裂文 と して実現 された主語 が節 の主語 とな って いるに9のよ うな場合 と60との違 いであることがわか る。
49 今 日の当番 なのは私 だ。
60 今 日の当番 は私 だ。
3.名詞述語文の類型 と分裂文
本節 で は、名詞述語文 とナ分裂文 の関係 につ いて考察す る。砂川 。今 田の名詞述語文 の 類型 において とナ分裂文 と置 き換 え可能 なのはどの タイプの文 で あろ うか。AハBダか ら 作 られ る分裂文 は理屈 の上 で は6D62の よ うに 2と お りの可能性 があ る。
6動 [[AガXiダ]sノ ]NPハ [Bi]ダ →AナノハBダ
62 [[XiガBダ]sノ]NPハ [Ai]ダ →Bナ ノハAダ
しか し、名詞述語文及 びハ分裂文 の焦点 が後項 にあ ることか ら考 え ると、Aハ Bダの焦 点 はBダにあることか ら、Bナ ノハAダは もとの文、AハBダとは焦点が異 な る。 とす ると、
焦点 とい う観点 か らAハ Bダに対応す るのはAナノハBダであることになる。
6) [[今 日の当番がXiだ]sの]NPは [私]iだ→今 日の当番なのは私 だ
60 [[Xi私 だ]sの]NPは [今日の当番]iだ →*私なの は今 日の当番 だ
役割・ 値解釈 の同定文AハBダは、Aの名詞句 の意 味 によ って は6D60よ うにAナノハB
ダと意味的に近接す ることがわか る。
6励 今 日の当番 は私 だ。
60 今 日の当番 なのは私 だ。
ただ し、AハBダで あれば常 にAナ ノハBダにな るわ けで はな く、名詞 によ って は60C0 のよ うに不 自然 となる場合 もある。
60 山田はあの人 だ。
60?山田なのはあの人だ。
69 ‑シ ドニーは大 ?
静岡大学国際交流 セ ンター紀要 第 5号
― ううん、犬 はロキ シー。
60 ‑シ ドニーは大?
一?う うん、大 なのはロキ シー。
この場合、Aが役割 を表 す名詞句 である場合 は比較的 自然 にな る。一方個人 や種 の場合 には不 自然 とな る。Bはどの タイプの名詞句で も問題 ない。 これ は、倒置指定文 と同様で あ るが、特 にナ分裂文 の場合、変項Xを含 む命題が主語 とな り、 その変項Xに値 (この場 合 はB)を割 り振 る機能 を果 た して い るとい う特性か ら、Aは外延 を列挙可能 な名詞 であ
る必要性が特 に強 い ことにな る。
6D 社長御 なのは田中は さんだ。
60 ペ ッ トの王様役割なのは大種だo
69 今回議長悧 なの はフランス大統領倒 だ。
ただ し、Aが役割 であればいつ も適格 な文 になるとい うわ けで はな く、Aがなん らかの 事情 で強調 され る必要が あ るときによ り自然 になる。 これ は例 えばAとAでない ものAや BとBでない ものBが対比 的 にとらえ られていると想定で きる状況である。
60 ‑山 田 さん は先生 だ っけ?
― ううん、先生 なのは田中 さん。 山田さん は大学院生。
俗D ―山田さん は先生 だ っけ?
― ううん、先生 なのは山田 さん じゃな くて田中 さん。
60 この グループには学生 と先生 が1人ずついます。学生 なの は山田 さんで、先生 な のは田中 さん。
次 に、倒置同定文 (同一認定解釈 を表す同定文)も後方焦点文 であるとされ るが、 この タイプの同定文 はAナ ノハBダにな りに くい。
6つ この人 はあの時の太郎君 だ。(例文 は砂川)
60*こ の人 なのはあの時の太郎君 だ。
69 あのキ ャプテ ンは村上 です よ。(例文 は砂川)
00?あのキ ャプテ ンなのは本寸上 です よ。
今 田によれば、倒置同定文 は属性 を与 え ることによ って、未同定 の対象 を同定す るとい う機能 を持つ。AハBダにおいて、AはBと い う属性 を与 られ ることで初 めて同定 され る 対象で あ る。Aにあたるだれかが いて、 それがBだと同定 しているわ けではない。一方 の ナ分裂文 は変項Xを含 む命題 が主語 で、述語部分が焦点 とな ってお り、焦点情報 を提示す ることでその変項Xに値 (この場合 はB)を割 り振 る機能 を果 た してい る文 であ る。倒置 同定文 か らはナ分裂文が成立 しないのは両者 の このよ うな機能 の差 による ものであ ると言 えよ う。
次 に、倒置同一性文か ら作 ったナ分裂文 は、文脈がない と不 自然 にな る ものが多 い。
CD ハ リネズ ミはヤマアラシだ。 (例文 は今 田)
Ca?ハ リネズ ミなのはヤマアラシだ。
CЭ ハ リネズ ミなのはヤマアラシだ。 モグラじゃない。
これ は、ぐDが、ハ リネズ ミであるなにかがいて、 それに当てはまるのがいろいろな可能 性 の中か ら選 ばれたヤマア ラシだ とい うわけではな く、ハ リネズ ミの別名が ヤマア ラシで
あ ることを述べた文 だか らである。 このよ うな タイプの同定文 は単独 でナ分裂文 にす ると
1721のよ うに据 わ りが悪 い場合 が多 いが、例 えば否定 とい う形 であれ、 ハ リネズ ミと同 じ動
物 であ る可能性 のあ るい くつかの種 が想定 され、その中か ら該 当す るのが ヤマア ラシだ と い う文脈があ るぽЭのよ うな場合 には適格性 が増す。
一方、ぼうは、ハ イ ド氏 と同一人物 である可能性 のあ る何人かが想定 され、 その中か らジ キル博士 が選 ばれた ことを表す適格 な文 となる。1721に比べて仔Dの方 が適格性が高 い と感 じ るのは、 ジギル博士 と同 じ範疇 に属 す る可能性 のある複数 の人 がヤマアラシと同 じ範疇 に 属す る動物 よ り想定 しやすい こと及 び、ハ イ ド氏が まだ同定 されてお らず、 あ る人Xがハ イ ド氏 で あ り、 そのXがジキル博士 であ ることを表す文 と して、 それだ け ジキル博士 の情 報価値 が高 くな るか らで あろ う。即 ち、Bが意味的 または文脈上Aに当て はまる可能性 の あ るい くつかの中か ら選 ばれた ことが含意 され る場合 にはAナ ノハBダが 自然 にな るわ け である。 このよ うな場合、倒置同一性文 は変項Xを含 む命題 が主語 とな り、焦点情報 を提 示 す ることでその変項Xに値 を割 り振 る機能 を果 た して いる分裂文 と類似 の機能 を もつ た
めであろ う。用 い られ る名詞句 はABと もに個体・ 種・ 役割 のいずれ も可能 であ る。
174 ハ イ ド氏 は ジキル博士 だ。注
5
79 ハ イ ド氏 なのは ジキル博士 だ。
最後 に一般記述文 のAハBダにつ いて は、170の よ うにAナ ノハBダが不 自然 な文 とな る ものが多 い。
仔0 私 は学生 だ。
1771*私なのは学生 だ。
そ もそ も、一般記述文 は、Aに当て はまるの は何かを問題 に してい るので はな く、Aの 性質や状況 などを記述す る文であ るため、変項Xを含 む命題 が主語 とな り、述語部分で変 項Xに値 を割 り振 る機能 を果 たす分裂文 の機能 とは相容 れないか らであ る。
以上 の考察 か ら、AハBダで表 され る名詞述語文 の うち、名詞句 の意味 によ って は意味 が近 くな るのは役割 0値解釈 の同定文 と倒置同一性文 の一部であ ること、 ただ しナ分裂文 を用 いる何 らかの必然性 が要求 され ることが明 らかにな った。
4.ABの関係 と分裂文
今 日 (2009)は名詞述語文 は非常 に多様 なXとYの関係 を表 す ことがで きることを考察 し、隣接 関係 を表す事例 と して1781の名詞述語文 を挙 げている。 この中で は、 いわゆ る措定 文 にあた るaか らgは、Aを前項名詞句 に したナ分裂文 にな りに くい。
ぼ3a.警察署 は消防署 の隣だ。 (場所 一場所) b。 私 は沖縄 です。(人一出身地)
c.新婚旅行 はマチ ュ ピチ ュ遺跡 だ った。(旅行 一目的地)
d.同社 の設立登記 は十 四 日だ った。 (出来事 ―時間)
e.柏 レイソルは現在15位だ。(チームー順位)
f.盛りつ けは一番最後だ (手順 ―順序)
g.プ ラ トンは右か ら2番目だ。 (事物 ―場所)
h.15位は柏 レイ ソルズだ。(役割 一値文)
静岡大学国際交流セ ンター紀要 第 5号
一方、 いわゆ る倒置指定文 のhは99のよ うにナ分裂文 に して も適格 とな る。
99h'.15位なのは柏 レイ ソルズだ。
逆 に、述部名詞句 を主語 と して取 り出 したa'からg'は80のよ うにすべて倒置指定文 に 近接 したナ分裂文 として適格 とな る。注6̲方いわゆる措定文 に近づ いて しま うh'は不適格 とな る。即 ち、 このよ うな隣接関係 を表 わす名詞述語文が ナ分裂文 になるか どうか は、 そ の文が措定文か倒置指定文かによ って決 まるが、倒置指定文であれば、 ほぼ問題 な くナ分 裂文 にす ることが可能 であることになる。
80a'.消防署 の隣 なのは警察署 だ。
b'.沖縄 なのは私 です。
c'.マ チ ュ ピチ ュ遺跡 なのは新婚旅行 だ。
d'.十四 日なの は同社 の設立登記 だ。
e'.現 在15位なのは柏 レイ ソルだ。
f'。 一番最後 なのは盛 りつ けだ。
g'。
右 か ら2番目なの はプ ラ トンだ。h'.*柏 レイ ソルズなの は15位だ。
このよ うな隣接文 の倒置指定文 をナ分裂文 と した場合、a"か らg"のよ うに、Aと Bの関 係 を明確 にす るためにa"(場所が)や b"(出身地が)などを補 って考 え ることがで きる。
その場合Aは明 らか に節 とな り、単 な る名詞 とは異 な って「Aであ る」 とい う意味 を強 く 獲得す る。 これが単純 な同一・ 帰属関係 を表 わす場合 に比べ、隣接 関係 を表 わすAと Bの 場合 の方 が ナ分裂文 にな りやす い理 由で はないか と思 われ る。一方h"は このよ うな補語 を想定す ることはで きない。
80a"。 (場所 が)消防署 の隣なのは警察署 だ。
b"。 (出身 が)沖縄 なのは私 です。
c"。
(目的地が)マチ ュ ピチ ュ遺跡 なのは新婚旅行 だ。d"。 (日 にちが)十四 日なのは同社の設立登記 だ。
e"。
(順位 が)現在15位なのは柏 レイ ソルだ。f"。
(順序 が)一番最後 なのは盛 りつ けだ。g"。 (場所 が)右か ら2番目なのはプ ラ トンだ。
h''.*(φ が)柏 レイ ソルズなのは15位だ。
隣接文 の他 の例 と して は以下 のよ うな ものがある。80は花子が仕事 か休 みか とい う状況 を表 わす。89はその前項名詞句 と後項各詞句 を入れ替 えた ものであ る。80もいわゆ るうな ぎ文89の前項名詞句 と後項名詞句 を入 れ替 えた倒置指定文 で あ るが、 これ らも1801871のよ うにナ分裂文 にす ることがで きる。
80 花子 は夏休 みだ。
89 夏休 みは花子 だ。
m 夏休 みなのは花子 だ。
89 僕 はうな ぎだ。
80 うなぎは僕だ。
8つ うなぎなのは僕 だ。
80のよ うにAハBダの関係 が いわゆ る同一 や包含 でない隣接 関係 を表 わす倒置指定文 の 場合、帰属関係 や同一 関係 の場合 と比べて直接 的な関係 でないほど89のよ うにAでない も のやBでない もの との対比 な どを通 じてAとBと を強 く結 びつ ける必然性 が高 くな ること、
後項 の情報価値 が高 くな りBが焦点 にな りやす い ことな ど も関係 しているので はないか と 考 え られ る。逆 に言 えば、AとBが同一 や包含 の関係 で ある場合 には、ODのよ うなナ分裂 文 を使 わず、00のよ うにAハBダで十分 であ る場合が多 いわ けであ る。
80 学校 は花子 だ。
89 学校 なのは花子だ。
00 先生 は田中 さんだ。
00 先生 なのは田中さんだ。
5.前項名詞旬の性質
5。 1 形容詞的な名詞句
00の よ うに、 ナ分裂文 の前項 に用 い られ る名詞 は意 味的 に形容詞 的 な ものが多 い。例 えば0000はその例 である。 この中 には「 問題 の学生」「 問題 な学生」 のよ うに、名詞 で は あるが、名詞接続 の場合 にNナにな り得 る、 いわゆ るナ形容詞 に近接 す る名詞 も多 く見 ら れ る。 この場合AハBダも可能 で はあ るが、 多 くの場合Aナ ノハBダの方 が よ り自然 で あ
る。
00 形容詞 的意味 を持つ前項名詞句 の例
00 欲求不満 なの はあなただ。
00 欲求不満 はあなただ。
09 病気 なのはあなただ。
00 病気 はあなただ。
さ らに、前 に も触 れたよ うに0つや(mはゃゃ不 自然 とな るが、 そ こに形容詞 をつ けた001m は多少容認度が高 くな るよ うであ る。つ ま り、形容詞 によ って修飾 された名詞 は名詞 で は あ るが、形容詞 がつ くことで、09ω鋤104つ よ うに、 別 のそ うで はない対象 が想定 しやす く な り、分裂文 を用 いる必然性が高 くなるためであると考 え られ る。
00*山田さんなのはあの人 だ。
00?意地悪 な山田さん なのはあの人だ。
09 ‑あ の人が意地悪 な山田 さん?
Aの特徴 例
形容詞 的意味 欲求不満 病気 問題 低脳 負 け犬 4洵心者 下 ブス 悪 人気
イケメ ン 〜向 き
事
etc。
)中 バ カ売れアメ リカ マニア 苦戦続 き 猫舌 す ごす ぎ いい男 ツボ 女 の子 正解
〜 マニア 省 エネ
〜が ち 日本語読 み 美人 有料 旬 同一人物 〜以
お似合 い エ リー ト 年上 お勧 め 山崎 適役 (工
話題 〜向 き 脅威etc.
静岡大学国際交流センター紀要 第5号
―意 地 悪 な山 田 さん なの はあの人。 あの人 は親 切 な山 田 さん。
伽0 あの人 は親 切 な山 田 さん だ。 意 地悪 な山 田 さん なの はあの人 だ。
lm)一 ?大なの は ロキ シー。
10" 一大 きい大 なのはロキ シー。
(03)一大 きい犬 なのはロキ シー。大 きい猫 なのは シ ドニー。
(00 ‑大きい犬 なのはロキ シー。小 さい犬 なのはシ ドニー。
5.2 後項名詞句 とメ トニ ミー的関係 にある名詞句
ところで、名詞述語文 の中には、
lll1 106つ
よ うな文末名詞文 (新屋,1989)と呼 ばれ るも のがあ る。 これ は文 中の述語が主語 の性格 や状況 を表 してお り、主語 と述語 の間 にメ トニ ミー的な関係 がある (今田,2008)も のであ る。 このよ うな文末名詞文 に用 い られ る名詞 を新屋 はllllのよ うに分類 してい る。伽D 川 田君 はす なおで朗 らかな性格 です。(例文 は新屋)
00 梓川 は、 この春 とは少 し異 な った感 じだ った。 (例文 は新屋)
この文末名詞文 は述語名詞句 が必ず修飾語 を伴 い、 その述語名詞句 の修飾語句 だ けが焦 点 にな るのが特徴 であ る。例 えば100は、 ピーターが何 らかの性格 を持 っている ことが問題 にな って いるので はな く、 どのよ うな性格かが問題 にな っている。
110 ピー ターはや さ しい性格 だ。 (例文 は今 田)
興味深 い ことに、 このよ うな文末名詞文 の主題 を述語 と して取 り出 してみ ると、側か ら い)のよ うに、すべてNナノハの形 の分裂文 になる。注
6
0" すなおで朗 らかな性格 なのは川 田君です。
lm 新屋 (1989)の文末名詞文 の分類 よ り
A 種類,類,た ぐい,タ イプ,方,部類,ク ラス,階層,系統,パターン
B 性 質,性格,気質,気性,性分,たち,体質,人柄,立場,構成,構造,仕組 み,形式,
様 式,顔立 ち,人相,体格,匂い,形 ,趣 ,体裁,運勢,身分,出身
C 感 じ,様子,模様,状態,風 ,有様,形,風情,格好,空気,気配,気色,態度,素振 り, 言い方,日調,日振 り,表情,調子,具合,勢い
D‑1 感 じ
D‑2 D‑3
D‑4 意見,考え,印象,考え方,認識,見方,解釈,判断 E 塩梅,具合,次第,道理,話 ,理屈,わけ,顛末,始末
F ところ,近辺,近く,そば,隣 ,寸前,最中,途中,頃 ,直前,直後,後,時分 G こと,話 ,噂 ,評半」,由
1動 この春 とは少 し異 な った感 じなのは梓川だ。注
7
はD や さ しい性格 なの は ピー ターだ。これ は、一体 どう してであろ うか。筆者 は述語名詞句 の修飾語句 だけが焦点 とな るとい う文末名詞文 の特徴 に関係 が あ ると考え る。焦点 とい うのは、 その文 にお ける重要 な情報 であるか ら、焦点でない部分、即 ち この場合 は被修飾語 であ る名詞 は、情報的 にはそれ ほ ど重要性 はない とい うことで あ る。 それ故、t呻 10ω〔0いの名詞 を削除 して、修飾語句 を述語 と して形 を整えた10か ら10は10め (06)100と 情報量 とい う点 で はほとん ど変 わ らない。
m 川 田君 はす なおで朗 らかだ。
m)梓川 は、 この春 とは少 し異 な ってい る。注
8
但0 ピー ターはや さ しい。同 じよ うに、分裂文 であ る(1"か ら但りの前項名詞 を削除 し、修飾語句 を ノで名詞化 して 分裂文 に したllllか ら10も(mか らODと情報量 とい う点で はほとん ど変 わ らない。
m すなおで朗 らかなの は川 田君 です。
1動 この春 とは少 し異 な っているのは梓川 だ。
但り や さ しいの は ピー ターだ。
このよ うに、文末名詞文で用 い られ る名詞句 は主語 とメ トニ ミーの関係 にあ るため、実 質的 には重要 な情報 を もたず、全体 と して は属性 を表す修飾部 が主 に情報 を担 って いるこ
とか ら、名詞句であ って も全体 と して形容詞句 の機能 を もってい ることによるので はない か と思 われ る。 とす ると、 この現象 もまた、5。 1に含 まれ ることにな る。
5。 3 最上級の意味を表わす名詞句
また、 ナ分裂文で は前項名詞句 に一番 や トップ、最速、最強、基本 など、何 らかの形 で 最上級 の意味を表わす表現 を伴 うことも多 い。
m 漫画家 の奥 さんで一番美人 なのは?#
1動 Sun認定」ava資格 で一番簡単 とい うか基本 なの はどれなんですか?#
ψO ネ ッ トで最強なの はどのサイ ト?#
これ は、 このような名詞句 が、意味的に形容詞 に近 いの と同時 に、情報伝達 とい う観点 か らも、 その特性を もつ複数 の候補 の中で もっともその程度が高 いのは何かを焦点 と して 述べ ることが きわめて 自然 であることによると言え るので はないか と思 われ る。
5.4 範囲を示す語句 との共起
場所 十デや範 疇 十ノ中 デな ど、 範囲が示 され る例 も多 く見 られ た。 その場合い 側 の よ うに、最上級 を伴 うこともあれば、001励のよ うに、 そ うでない例 もある。
1動 最上級的意味を持つ前項名詞句
Aの特徴 例
最上級的意味 最高 最年長 最古 の部類 最速 最強 最難関 最下位 一番 トッ
プ 基本 拠点 激安 etc.
静岡大学国際交流センター紀要 第5号
1鋤 ネ ッ トで最強なのはどのサイ ト?#(最掲)
(23)× ×× (アイ ドル グループ名)で一番Loveなのは?#
側 善玉菌 の増 や し方 で人気 なのは天然 オ リゴ糖#
鰤 この中で ××× (ス ポーツ選手)とお似合 いなのは?#
いずれの場合 であれ、範囲を示す とい うことは、 内包 を明確 に した うえで、 その条件 に 当て はまる対象 を指定す るとい う分裂文 の特徴 と合致す る。同時 に、前件 で範囲を限定す るとい うことは、それだけ相手 の関心 を後件 に引 きつ けやすいとい う効果 を もつ と言 え る。
さ らに、 2節で述べたよ うに、前項 が節 らしさを獲得 していることもその理 由の一つであ ると言 え よ う。
5.5 「 」 つ きの名詞句
名詞句 の中には「 」 や" "などをつ けて、「 いわゆ る」 とい う意味を表す もの も観察 され た。(20のオ トナは、普通 の大人 とい う意味 で はな く、大人買 いをす る人 とい う意味 で用 い られてい る。 ただ し、 引用符 つ きの場合 はナ ノハ を用 いず、̀N'ハ と して も自然 で あ る。 引用符 をつ けることで、名詞 のみであ って も「 いわゆ るN」 の意味 にな るためであ ると思 われ る。 とす ると、 ナ分裂文 で用 い られ る名詞句 自体が「 いわゆるN」 の意味 を表 わ し、節 にな りやすい とい うことになる。
1動 もっとも オ トナ"なのは21歳 〜25歳 一#
m もっともオ トナなのは21歳 〜25歳 ― 側?も っともオ トナは21歳〜25歳 一 (20 もっとも オ トナ"は21歳 〜25歳―
5.6 N+助 詞 ナノハ
分裂文 の中には、前項名詞句 が「 まで」「 か ら」 などの助詞 を伴 う例 も多 く見 られ る。
側 釣 り好 きの多 い剣道部 で も、 ここまでなのはYと」だ けだよね。 (実際の会話)
醐 『 ××× (漫画名
)』
13〜 16巻。途 中か らなのは予算 の関係 :#これ は、本稿 の考察 の対象 であ るAナノハBダの範囲 を越 えているが、 ナ分裂文 の前項 が単 な る名詞で はない ことの一つの証拠 と言 え るか もしれない。
6.ナ分裂文の機能
6.1 ‑般 の名詞述語文 との違 い
砂川 (2005)は、Aハ Bダを「 後方焦点文」 と呼んでい るが、先 に も触 れた とお り、 こ の後方焦点文 は、後項「〜だ」 で新情報 を導入 し、 その新 たな情報がそれ以降談話主題 と して引 き継 がれてい く用法が圧倒的 に多 い とされ る。同 じよ うに後方 に焦点があるとされ るハ分裂文 にあたるナ分裂文 とこれ らの後方焦点文 は、 どのよ うな違 いがあるのだろ うか。
書籍やイ ンターネ ッ トの用例 をあた った ところで は、 ナ分裂文 の機能・ 用法 には大 き く 分 けて以下 のよ うに① か ら③ の3つが認 め られた。 この中には後項 の名詞句Bが主題 と し て引 き継がれてい く場合 もあるが、 そ うでない場合 もあ った。