女 性 労 働 供 給 と育 児 投 資 リター ン(3)
一 家 計 生 産 理 論 の応 用 一
浅 川 恵 子
中 村 健 一一
は じめ に
第1章 日米 にお け る就業 形態 の変 化 第2章 労働 市場 に基 づ く女性 就業 行動 の研 究
(以上51巻2・3合 併号)
第3章 家計 の生 産活動(HOMEPRODUCTION)と 時 間配 分の 理論 (以上51巻4号)
(以下 今号)
第4章 教 育投 資 リター ンとM字 型 就業 形態 存続 との関係 家 計及 び市場 生 産活 動従 事 に伴 う利益 とコス ト 仮 説
教 育 レベ ルの 上昇 と女性 の生産 活動 選択
日米 にお け る育 児 サー ビス ・制 度の普 及 と女性 の生 産活 動選 択 賃 金 の上昇 と女性 の生 産活動 選 択
世 帯 主所得 の 上昇 ・主婦 にな る確 率 と女性 の 生産 活動 選択 女性 の就 業決 定 にお け る 日米比 較
日米 間の教 育 方針 の違 い と女性 の就業 選択 主 婦 に なる確率 と子 供 の教育 レベ ル との 関係 預 金金 利 と教育投 資へ のモ チベ ー シ ョン との 関係 母 親 の教育 レベ ル と子供 の教 育 レベ ル との関係 ま とめ と結 論
参 考文 献
〔109〕
第4章 教 育 投 資 リタ ー ン とM字 型就 業形 態 存 続 との 関係
産 業 化,技 術 革 新,都 市 化 な ど は,産 業 を労 働 集 約 的 活 動 か ら資 本 集 約 的 活 動 へ の 転 換 を もた ら し,高 度 な教 育 を受 け る こ との価 値 を高 め て い った 。 日本 で は,高 度 経 済 成 長 に 伴 い高 学 歴 女 性 が 急 激 に上 昇 し(<表2>参 照),ア メ リ カ に お い て も,1896年 か ら1916年 の20年 間 に女 性 の 平 均 教 育 年 数 は2年 増 加 し, そ れ と 同 時 に 女 性 就 業 率 は15%増 加 して い る(SmithandWard:p.75)。 ま た, 高 等 教 育 を 受 け る価 値 の 高 ま りは,親 の子 供 に対 す る 人 的 資 本 形 成 へ の 動 機 づ け と も な っ て い る。 この よ う な 教 育 投 資 リ ター ンの重 要 性 の高 ま りを時 問集 約 的便 益 の 生 産 性 の 増 加(〈 図15>に お け るfZ1の シ フ ト)と み なす と,こ れ は 賃 率 金 上 昇 よ るZ1及 びZ2の 需 要 の 変 化 を 抑 制 す る 働 きを持 つ 。 さ ら に,時 間 生 産性 の増 加 が もた らすZ1及 びZ2の 需 要 の 変 化 が 賃 金 率 の 上 昇 に よ るそ れ に 優 位 性 を持 つ 場 合,女 性 の 家 計 生 産 活 動 へ の 従 事 を促 進 させ る こ と に な り,賃 金 率 と教 育 レベ ル の 上 昇 が 家 計 生 産 へ の 時 間投 入 量 を増 加 させ る こ と に な る 。
これ ま で の 議 論 で は,賃 金 率 と教 育 投 資 リ ター ンの 変 化 に焦 点 を置 き,そ れ らの 変 数 が 女 性 の 時 問 配 分 に与 え る影 響 に つ い て 考 え て きた 。 しか し,こ の2 変 数 の み が 女 性 の 就 業 行 動 を左 右 す る わ け で は な い。 む し ろ こ れ らの 変 数 は, 女 性 の 就 業 行 動 を取 り巻 く様 々 な 利 害 関 係 に外 生 的 に影 響 を与 え る 要 素 とみ な
さ れ る。 次 の2節 で は,ま ず 市 場 生 産 活 動 及 び 家 計 生 産 活 動 に従 事 す る こ とに よ る利 益 とコ ス トの 関係 を考 慮 し,そ し て次 にM字 型 就 業 形 態 の存 続 要 因 に お け る仮 説 設 定へ 議 論 を進 め る。
家 計 及 び 市 場 生 産 活 動 従 事 に伴 う利 益 と コ ス ト
日本 にお け るM字 型 就 業 形 態 の存 続 要 因 の 分析 に 関 して,本 稿 で は 子 供 の教 育 投 資 リ タ ー ン形 成 へ の 強 い 選 好 が,母 親 の 家 計 生 産 活 動 を促 進 させ て い る と
い う点 に注 目 して い る。従 来 の 女 性 就 業 決 定分 析 で は,市 場 にお け る 雇 用 慣 行, 育 児 サ ー ビ ス な ど に 関す る制 約 が 女 性 の 労 働 市 場 進 出 を 阻 ん で い る とい う観 点
に よる 議 論 が多 く,市 場 にお け る 制 約 の 改 善 が 女 性 の就 業行 動 の改 善 に 重 要 で
女性 労働供 給 と育 児投 資 リター ン(3) 1ヱ1 あ る と考 え られ て い る 。 しか しな が らこ れ と は逆 に,本 稿 で は女 性 が(市 場 生 産 活 動 に対 す る)家 計 内 で の生 産 活 動 に何 等 か の利 益 を見 出す こ と に よ っ て,
む し ろ 家 計 生 産 活 動 を促 進 さ せ る と い う説 明 の 妥 当 性 を 検 証 し よ う と し て い る 。
〈表A>は 家 計 生 産 活 動 及 び市 場 生 産 活 動 へ の従 事 に よ っ て,個 人 が 直 面 す る コス トと利 益 の 両 方 に つ い て ま とめ た もの で あ る 。 どち らの活 動 に従 事 す る か は,そ れ ぞ れ の 活 動 に お け る純 利 益(利 益 一 コ ス ト)の 大 き さに依 存 す る と 考 え る こ と が で き る で あ ろ う。 ま ず 家 計 生 産 活 動 に従 事 す る こ とに よ る利 益 に は,大 き く子 供 の 人 的 資本 向 上 と遺 産 の2つ が 挙 げ られ る。 家 計 生 産 活 動 に従 事 す る とい う こ と は,よ り多 くの 時 間 を子 供 と共 に過 ごす こ とを示 唆 す る。 こ
の長 時 間 に わ た る子 供 との 接 触 が,子 供 の潜 在 能 力 を 高 め る役 割 を果 た す と考 え られ る。1)ま た,子 供 へ 高 い 教 育 投 資 を行 な う こ とは,親 か ら子 供 へ の所 得 移 転 の1つ の形 態 と考 え られ る で あ ろ う。 つ ま り金 銭 的 遺 産 で は な く,む しろ
表A家 計生 産 活動 ・市 場労働 に従事 す る ことに よ る利 益 と コス ト
家計 生産 に従 事 市場労働 に従事
利 益 ・子 供 の 人 的 資 本 向 上(潜 在 学 力, ・賃 金(子 育 て 資 金 の 獲 得(育 児 学 習 能 力,将 来 学 歴,高 い 社 会 サ ー ビ ス(託 児 所 な ど)へ の 支
貢 献度 な ど) 出 を可能 にす る))
・遺 産(遺 産 と し て 高 い 教 育 リ ター ・キ ャ リ ア 形 成
ン の 提 供) ・遺 産(金 銭 的 な遺 産の獲 得)
コ ス ト ・機 会 費 用(賃 金 ・キ ャ リ ア 形 成 ・ ・機 会 費用(子 供 と接 す る時 間)
昇 進) ・育 児 ,保 育 関連 サ ー ビ ス へ の 支
・子 育 て に 関 す る 時 間 投 入(学 校 出 行 事 へ の 積 極 的 な 参 加,子 供 の よ り快 適 な 学 習 環 境 提 供 へ の 時 間投 入)
1)母 親が 入学 前 の子供 と共 に過 ごす時 間 の長 さ と子供 の潜在 学力 との 関係 につ い て は,後 ほ ど既存 研究 を踏 まえ なが ら詳 しく検 討す る。
子 供 の 人 的 資 本 を上 昇 させ る こ と に よ っ て,子 供 の 将 来 に お け る 購 買 能 力 を上 昇 させ る とい う所 得 移 転 の方 法 で あ る 。2)こ の よ うな 潜 在 的 な 人 的 資 本 の 向 上 は,高 い教 育 を子 供 に 受 け させ る こ とに よ って 達 成 可 能 で あ る 。 さ らに,依 然 と し て学 歴 重 視 社 会 で あ る 日本 で は,良 い 学 校 へ の 進 学 を 目的 とす る幼 児 期 に お け る潜 在 学 習 能 力 の 向 上 につ い て も無 視 で き な い 。 しか しそ の 一 方,家 計 生 産 労 働 に従 事 す る こ とに よ り,犠 牲 と な る 要 素 も存 在 す る。 一 つ は 家 計 生 産 活 動 に従 事 す る こ と に よる 機 会 費 用 で あ る。 機 会 費 用 と は,あ る行 動 を行 う こ と に よ っ て犠 牲 に され た 利 益 の こ と を指 す 。 この 場 合,も し家 計 で の 生 産 活 動 を 行 わ ず 市 場 労 働 に従 事 す る な らば得 られ た で あ ろ う利 益 つ ま り賃 金 が,ま ず 家 計 生 産 活 動 従 事 の 機 会 費 用 で あ る と考 え られ る。 さ らに 企 業 に お け
る昇 進 ・キ ャ リ アの 形 成 も,家 計 内 生 産 活 動 に従 事 す る こ とで達 成 不 可 能 と な る た め,機 会 費 用 とみ な され る で あ ろ う。第3に,子 育 て の た め の 時 間 的 支 出, 例 え ば 学 校 行 事 に親 が 積 極 的 に参 加 す る こ とや,日 常 生 活 に お け る 快 適 な学 習 環 境 の 整 備 に 関 す る時 間投 入 も,家 計 生 産 活 動 に伴 う費 用 と考 え られ る。3)
次 に,市 場 労 働 に従 事 す る こ とに よ っ て発 生 す る利 益 と コ ス トとは どの よ う な もの で あ る か 。 市 場 生 産 活 動 と家 計 生 産 活 動 と は,代 替 的 な選 択 関 係 に あ る た め,両 者 に お け る利 益 と コス トは,ほ ぼ対 照 的 な 関係 に あ る。 つ ま り,一 方 で 利 益 と な る 要 素 が 他 方 で はお お よそ 費 用 に 該 当 す る 。 まず 市 場 生 産 活 動 を行 う こ と に よ る利 益 に挙 げ られ る もの は,賃 金,昇 進 ・キ ャ リ ア の形 成 そ して遺 産 で あ る。 ま た 賃 金 の獲 得 は,市 場 労 働 に よっ て 必 要 と な る育 児 サ ー ビス へ の 2)RazinandSadka(1995)は,親 か ら子 供 へ の 所 得 移 転 に 関 し,2つ の 方 法 を 挙 げ て い る 。1つ は 金 銭 的 な 遺 産 に よ る所 得 移 転 で あ り,も う1つ は 人 的 資 本 投 資(教 育 投 資)と して の 所 得 移 転 で あ る 。 特 に 人 的 資 本 投 資 に よ る所 得 移 転 の 効 果 は,個 人 に よ っ て 異 な る。 従 っ て 彼 ら は,親 が2つ の 方 法 を う ま く使 い 分 け る こ と に よ っ て,効 果 的 な 所 得 の 世 代 間 移 転 を達 成 す る こ と が 重 要 で あ る こ と を 指 摘 す る 。 更 に彼 ら の 論 文 で は,子 供 の 潜 在 的 教 育 投 資 リ タ ー ン の 大 き さ に 関 す る 情 報 の 有 無 と,教 育 に 関 す る 様 々 な政 府 政 策(税 ・補 助 金 政 策 な ど)導 入 に よ る 影 響 が 議 論 さ れ て い る。(RazinandSadka(1995),第8・9節 を 参 照 。) 3)StevensonandLee(1990)に よ る 日米 比 較 で は,日 本 の 母 親 は,こ の よ う な 子
供 の 学 習 環 境 整 備 に 向 け る 時 間 投 入 が ア メ リ カ の 母 親 に 比 べ て 多 い 傾 向 を 指 摘 し て い る 。
女 性 労 働 供 給 と育 児 投 資 リ タ ー一一ン(3) 1ヱ3 金銭 的 支 出 を可 能 に す る 。 さ らに,親 が 子 供 へ の 所 得 移 転 を金 銭 に よ って 行 う
(遺産)動 機 が あ る場 合,市 場 労 働 は そ の 資 金 調 達 と して の 役 割 を 果 た す こ と に な るで あ ろ う。 個 人 が 市 場 労 働 を選 択 す る 場 合 に生 ず る費 用 に は2つ を挙 げ た 。 そ れ は,市 場 労 働 に 従 事 す る こ と に よ る 機 会 費 用 と,育 児 ・保 育 サ ー ビ ス 関 連 の 支 出 で あ る。 こ こで の 機 会 費 用 と は,時 間 的 費 用 で あ る。 母 親 が 市 場 労 働 に 従 事 す る場 合,必 然 的 に子 育 て は第3者 の 手 に委 ね られ る。 そ の た め,母 親 は 子 供 と接 す る時 間 を犠 牲 にせ ざ る を得 な い 。
この よ う に,家 計 内生 産 活 動 及 び 市 場 生 産 活 動 に従 事 す る こ とに は,そ れ ぞ れ に様 々 な利 益 と費 用 が伴 っ て い る こ とが わ か る。 個 人 に よ る(特 に 本 稿 の場 合 は,既 婚 女 性 に よ る)就 業 す る か 否 か の選 択 は,代 替 的 な関 係 に あ る2つ の 生 産 活 動 にお け る利 益 と費 用 の 関係 を考 慮 した 上 で の,最 適 化 行 動 の 結 果 で あ る と考 え られ る 。 個 人 が家 計 内 生 産 活 動 に従 事 す る こ とへ の 費 用 が最 小 化(又 は利 益 が 最 大 化)さ れ る と判 断 す る な ら ば,個 人 は家 計 生 産 活 動 に従 事 す る で あ ろ う。 逆 に市 場 生 産 活 動 に従 事 す る こ とで最 適 化 行 動 が とれ る の な らば,個 人 は 市 場 生 産 活 動 に積 極 的 に 参 加 す る こ と に な る。 また,<表A>に 挙 げ られ て い る 要 因 は,実 証 分 析 に お け る説 明 変 数 とな りう る こ と も重 要 で あ る 。
仮 説
こ れ まで の 議 論 を総 括 し,こ こ で 日本 の 女 性 就 業 形 態 に お け るM字 型 カー ブ の 存 続 要 因 につ い て 以 下 の よ う な仮 説 を提 示 す る 。 そ れ に続 き,女 性 の 就 業 行 動 に影 響 を与 え る他 の 要 素 を 考 慮 しな が ら,こ の 仮 説 の妥 当性 につ い て の 議 論 を進 め て ゆ くこ と にす る。
仮 説 子 供 の 人的 資 本投 資へ の時 間投 入 と女性 の 労働 市 場へ の 時 間投 入 は競 合 的 な 関係 にあ る。 賃金,教 育 レベ ル の上 昇 そ して育 児 に 関わ る サー ビス ・制 度 の普 及 に もか か わ らず,日 本 の女 性 就 業形 態 にM字 型 カー ブが存 続 して い るの は,日 本 の20代 か ら30代 後 半 の女 性 に,子 供 の 人 的資 本 形成 とい う 時 間集 約 的便 益 に,利 用可 能 な時 間 の よ り多 くを投 入 す る傾 向 が み られ る か らで あ る。 子供 の人 的 資本 形 成 とい う時 間集 約 的便 益 に対 す る強 い選 好 の存 在が,日 本 のM字 型就 業存 続 の一要 因 を形成 してい る。
この 仮 説 は,日 本 女 性,特 に就 学 前 の 子 供 を 持 つ 女 性 が,利 用 可 能 な 時 間 の よ り多 くを市 場 生 産 活 動 よ りも む しろ,子 供 の 教 育 投 資 リ ター ン を 目的 と した
̀子育 て'に 投 入 す る傾 向 に あ る こ と を示 唆 して い る
。
〈図A>は,上 の 仮 説 を取 り巻 く女 性 の行 動 に 影 響 を与 え る様 々 な 変 数 を考 慮 し,ま と め た もの で あ る 。 こ こ で は,女 性 の 行 動 に影 響 を与 え る要 素 と して 4つ の 変 数 を と りあ げ る 。 そ れ らは(1)教育 レベ ル の 上 昇,(2)育 児 サ ー ビス ・制 度,(3)賃 金 の 上 昇 そ して(4)世帯 主 所 得 の 上 昇 で あ る。 〈図A>は,女 性 が 家 計 生 産 活 動 に従 事 す るか,市 場 生 産 活 動 に従 事 す る か を決 定 す るの は,こ れ ら4 つ の変 数 の 作 用 に 依 存 して い る こ と を示 して い る 。
まず 実 線 は,女 性 を市 場 労 働 へ と導 く流 れ を 表 す 。 市 場 労 働 を選 択 す る女 性 は,教 育 レベ ル の 上 昇(1)に よ っ て,自 らの キ ャ リ ア を追 及 し,金 銭 的 な 所 得 移 転 動 機 を促 す 。 市 場 利 子 率 が 比 較 的 高 い こ と も また,金 融 投 資 を促 し,金 銭 に よ る所 得 移 転 動 機 が 生 ま れ る。 次 に,発 達 した 育 児 シス テ ム や 育 児 制 度(2)は, 働 く女 性 をサ ポ ー ト し,女 性 の キ ャ リ ア形 成 を促 す 役 割 を 果 た す 。この よ う に, キ ャ リア 志 向(金 銭 的 所 得 移 転 の 追 求)及 び発 達 した 育 児 支 援 シ ス テ ム は,女 性 に とっ て の家 計 生 産 活 動 の 機 会 費用 を上 昇 させ,市 場 活 動 を促 す こ とに な る。
ま た賃 金 率 へ の女 性 の 敏 感 な 反 応(3)は,家 計 生 産 活 動 の機 会 費 用 を 一 層 増 加 さ せ る効 果 を持 つ 。 そ して,世 帯 主 所 得 の 上 昇(4)と主 婦 に な る確 率 との 間 に負 の 相 関が あ る時,世 帯 主 所 得 の 上 昇 は 女 性 の 市 場 生 産 活 動 を もた らす 。 市 場 労 働 を選 択 す る女 性 に と っ て,4つ の変 数 は以 上 の よ う な働 き を持 ち,結 果 と して 親 か ら子 供 へ の 金 銭 的 な所 得 移 転 が起 こ る。
一 方,点 線 は,女 性 を家 計 生 産 活 動 へ と導 く流 れ を表 す 。 家 計 生 産 活 動(子 育 て)へ の 従 事 を選 択 す る 女 性 の行 動 は,4つ の 変 数 に よっ て,市 場 労 働 を選 択 す る 女 性 とは 異 な っ た影 響 を受 け る 。 まず 教 育 レベ ル の 上 昇(1)は,子 育 て に 母 親 の 知 識 を活 用 させ よ う とす る動 機 を も た らす 。 こ の よ う な動 機 は,子 供 の 高 い教 育 投 資 リ ター ンを子 供 へ の所 得 移 転 とす る も の で あ る。 ま た預 金 金 利 が 比 較 的 低 い とい う要 因 は投 資 行 動 を 抑 制 し,金 銭 以 外 の 方 法(こ こ で は 特 に子
女 性労 働供 給 と育 児投 資 リター ン(3) .Zヱ5
「 一一一一 一一→ 低 い市場利 子率
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高い市場利子率
子育 て動機(遺 産 と して高 い教 育投 資 リ ターンの提供)
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(1)教 育 レベ ル の 上 昇
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(2)育 児 サ ー ビ ス ・育 児 制 度
キャリア形 成 動 機 (金銭 的な所得 移 転 (遺産)の動 機)
発 達
(3)賃金 の 上 昇
賃金弾力性高
家 計 生 産 活 動 の 機 会 費 用 増 加 せ ず(子 育て動機と賃金 の上昇との相殺作用が働く)
(4)世 帯 主 所得 の上 昇
属 主婦 にな る
局 い
...̲確 率
子供 と接 すIN一 家 計 生 産 活 動 へ る時間長い の 参 加 促 進
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子 供へ の高い教育 投 資リ ターン(人 的 資本 形 成 に よる所 得移転)
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家 計 生 産 活 動 の 機会 費用増 加
市場 生 産 活 動 へ の参加促 進
子 供 と接 す る時 間短い
子 供 へ の金 銭 的遺 産 (金銭 的所得移 転)
一一 家計 生産 活動 の促 進 につ なが る過程(日 本女 性 の生 産活動 選択 パ ター ン) 一 市場 生 産活動 の促 進 につ なが る過程(ア メ リカ女 性 の生 産活動 選択 パ ター ン)
図A女 性 の家計 及 び市場 生産 活動 を導 く要 因
供 の 人 的 資 本 形 成)に よ る所 得 移 転 を促 す 。 育 児 シス テ ム や 育 児 制 度(2)が未 発 達 で あ る こ とは,女 性 の キ ャ リ ア形 成 に負 の影 響 を与 え る。 また,賃 金 率 の 上 昇(3)に女 性 が あ ま り反 応 的 で な い こ とは,(1)及 び(2)の変 数 と共 に,家 計 生 産 活 動 の機 会 費 用 の 上 昇 を促 さ な い 方 向 に働 き,女 性 の家 計 生 産 活 動 の 参 加 を促 す 。
さ らに,世 帯 主 所 得 の 上 昇(4)と主 婦 に な る確 率 との 間 に正 の相 関(ダ グ ラス=
有 澤 の 法 則:世 帯 主 所 得 の低 い 家 計 で は,家 計 内 に お け る他 の 労 働 力 の 就 業 率 が 高 くな る と い う関 係)が 存 在 す る こ と は,妻 の子 供 と の接 触 時 間 を増 加 させ, そ れ は子 供 の よ り高 い 人 的 資 本 の 形 成 へ とつ な が る 。次 に これ ら4つ の 変 数 が, 女 性 の行 動 に及 ぼ す 影 響 を,日 米 比 較 を踏 ま え な が ら詳 し く検 討 す る。
教 育 レベ ル の 上 昇 と女 性 の 生 産 活 動 選 択
女 性 の教 育 レベ ル が 高 ま る と,そ の獲 得 した知 識 の 活 用 に つ い て2つ の 動 機 が 生 ま れ る。1つ は,そ の知 識 を 自 らの キ ャ リア 形 成 に利 用 す る動 機 も う1 つ は,教 育 投 資 リ ター ン の 高 い 子 供 を育 て 上 げ よ う とす る動 機 で あ る。 従 って キ ャ リア 形 成 の動 機 が 高 い女 性 は市 場 活 動 へ の参 加 を,そ して教 育 投 資 リ ター
ン形 成 の 動 機 の 高 い 女 性 は,家 計 内活 動 へ の 参 加 を 選 択 す る。
樋 口(1991)は 日本 の デ ー タ を用 い,女 性 の教 育 レベ ルが 高 くな る と女 性 の 家 庭 に入 る確 率 が 高 くな る とい う 関係 を実 証 して い る。 〈表4>は,「 学 歴 別 女 子 の 就 業 経 歴 の変 化 」 を表 した も の で あ る。 こ れ は,昭 和57年 と62年 の 『就 業 構 造 基 本 調 査 』 の デ ー タ を用 い,女 子 の 就 職 経 歴 を5つ のパ ター ン に分 類 し学 歴 別 に観 察 した もの で あ る 。4)
大 卒 ・短 大 卒 の30代 か ら40代 ま で の女 性 に注 目す る と,カ テ ゴ リ ーIVに 該 当 す る割 合 が 大 きい こ とが わ か る。 こ の こ とか ら この 年 代 の高 学 歴 女 性 は,一 度 労 働 市 場 か ら離 れ る と,再 参 入 す る もの が 少 な く,非 労 働 力 化 して しま う傾 向
4)経 歴1とllは,離 転 職 を 行 わ ず 調 査 年 ま で1企 業 に勤 め つ づ け て い る 者,経 歴 皿 は,過 去 に働 い た 経 験 を も ち 現 在 も就 業 して い る 者,経 歴IVは,過 去 に 就 業 経 験 が あ り,現 在 就 業 して い な い 者,そ して 経 歴Vは,過 去 に 就 業 の 経 験 が な く現 在 も就 業 して い な い 者 で あ る 。 詳 細 に つ い て は 樋 ロ(1991):PP.251‑53参 照 。
女性労 働供 給 と育 児投 資 リ ター ン(3) 表4:学 歴 別女 子 の就業 経歴 の 変化
刀7
就業経歴パ ターン 1,H 皿 1V V
就業率(%) 現在就業 前職な し(%)
現在就業 前職あ り(%)
現在非就業 前職あ り(%)
現在非就業 前職な し(%)
30‑34歳 計 中卒 高卒 短大 卒 大卒
57年62年 57年62年 57年62年 57年62年 57年62年
49.5 49.4 26.1 24.8 23.4 24.6 37.9 41.8 12.5 8.8 53.7 55.2 30.4 28.9 23.3 26.3 30.2 29.1 16.2 15.7 48.7 49.1 23.9 22.3 24.8 26.8 39.7 42.3 11.6 8.6 46.8 46.2 26.7 25 20.1 21.2 41.8 48 11.4 5.8 50.6 52 33.5 33.9 17.1 18.1 37.4 38.7 11.9 9.4 35‑39歳
計 中卒 高卒 短大 卒 大卒
60 60.3 33.7 30.8 26.3 29.4 25.3 28.3 14.7 11.5 66.9 65.8 39.3 35.3 27.6 30.5 18.4 20.7 14.7 13.4 58 60.3 31.5 29.4 27 30.9 27.4 28.9 14.1 10.8 48.2 53.9 28.2 28.9 20 25 32.9 34.7 18.8 11.5 55.4 56.2 34.3 36 21.1 20.4 29.9 30.2 14.7 13.4 40‑44歳
計 中卒 高卒 短大 卒 大卒
67.6 68.3 41.2 37.7 26.4 30.6 16.8 19.1 15.6 12.6 72.4 73 46.2 41.7 26.2 31.3 12.6 14.4 15 12.6 65.5 68.4 38.2 36.6 27.3 31.8 19 20 15.5 11.6 55.1 57.2 33.8 32.5 21.3 24.7 24.2 24.9 20.8 17.9 59.3 60.4 38.2 37.7 21.1 22.7 25.2 24.6 15.4 15
資 料:樋 口(1991)p.252
に あ る こ とが わ か る。5)さ ら に樋 ロ氏 は,30代40代 の 大 卒 女 性 労 働 者 に は2つ の パ ター ンが あ る こ と を指 摘 し て い る 。1つ は,1企 業 に勤 め つ づ け る パ タ ー ン で あ り(パ タ ー ン1とIIに 該 当),も う1つ は,就 業 す る が,一 旦 労 働 市 場 か ら離 れ る と非 労 働 力 化 して し ま うパ ター ン で あ る(パ タ ー ンIVに 該 当)。 初 め のパ ター ンは,い わ ゆ る キ ャ リア 志 向 の 強 い 女 性 の場 合 で あ る。後 者 の パ タ ー ン は,若 年 期 の 高 い 就 業 率 か ら,そ の 後 の 就 業 率 の 急 激 な 谷 間 を形 成 す る。6) さ らに,〈 図16>は,「 か つ て 転 職 あ る い は無 業 を経 験 し現 在 雇 用 就 業 して い る も の の 該 当 人 口 に 占 め る 割 合 」,〈表5>は,「 離 職 後 の 経 過 年 数 と累 積 再 就 業 確 率 」 を 表 した もの で あ る 。
か つ て転 職 あ るい は無業 を経 験 し現在 雇 用 就 業 して いる者 の該 当人 口 に 占める割 合
)0%4
30
20
10
510152025
学 校 卒 業 後 の 年 数 資 料:樋 口(1991)P.256
図16
ど ち ら も,女 性 の離 職,転 職 の 経 歴 を学 歴 別 に観 察 して い る。 こ こで も高 学 歴 女 性 の 方 が そ うで な い 女 性 よ り も,再 就 職 す る割 合 が低 い こ とが わ か る。 ま た,30歳 前 まで(学 校 卒 業 後6‑8年 後)は,高 学 歴 女 性 の 就 業 率 は 高 い が,
5)ま た,低 学 歴 層 で は 再 参 入 が 多 く見 られ る 傾 向 に あ る(パ ター ン 皿)。
6)こ れ がM字 型 構 成 要 因 の1つ で あ る と考 え ら れ る。
女性 労働 供給 と育 児投 資 リター ン(3) 119 表5:離 職 後 の経 過年 数 と累積 離職率
昭 和40‑45年 に 離 職 し た 者 の う ちN年 昭 和45‑50年 に 離 職 し た 者 の う ちN年 以内 に再 就業 した者の 割合(%) 以 内 に再 就業 した者 の割合(%)
N年 中学卒 高校卒 短 大 ・ N年 中学卒 高校卒 短 大 ・
大学卒 大学卒
1 1.90 3.47 3.93 1 3.20 4.33 3.47
2 4.29 5.94 6.18 2 6.24 6.55 4.70
3 7.14 8.40 6.74 3 8.22 8.41 7.43
4 9.52 9.85 8.43 4 10.05 10.04 9.41
5 11.67 ユ1.87 8.99 5 11.87 12.32 10.89
6 13.33 13.77 8.99 6 14.76 14.84 11.39
7 14.76 15.01 8.99 7 22.83 18.45 14.36
8 16.90 16.01 9.55 8 26.48 21.21 17.08
9 18.33 17.02 10.11 9年 後 に も 73.52 78.79 82.92 10 21.67 20.94 12.92 継続 就業 し
11 22.14 22.62 14.61 て い る者
12 26.19 26.76 18.54 13 29.05 29.79 21.91 14年 後 に も 70.95 70.21 78.09 継続 就業 し
て い る者
資 料:樋 口(1991)P.257
30代 に な る と(学 校 卒 業 後8か ら10年 以 上 経 過 す る と),学 歴 と労 働 力 率 との 間 の 正 の 相 関 が 弱 ま っ て い る こ と が わ か る(た と え ば,〈 表5>に お い て,14 年 後 ま た は9年 後 に もい ま だ に 再 就 業 して い な い もの の 割 合 は,高 学 歴 ほ ど高 い)。 つ ま り,高 学 歴 女 性 は,若 い 頃 労 働 市 場 に 参 入 し,30代 一40代 に は労 働 市 場 か ら完 全 に離 れ て しま う傾 向 に あ る,と い う こ とで あ る。 この 傾 向 は 〈図 16>か ら もみ る こ とが で きる。 中 卒 ・高 卒 の 場 合,学 校 卒 業 後 就 業 し,一 旦 労
働 市 場 か ら離 れ るが(中 卒 の 場 合,学 校 卒 業 後10‑15年 経 過 した時 点,ま た, 高 卒 で は,学 校 卒 業 後5‑10年 経 過 した 時 点),そ の 後 再 び 就 業 者 の 割 合 は増 加 す る。 しか し,短 大 も し くは大 学 卒 業 者 は,や は り学 校 卒 業 後5‑10年 後 一 度 離 職 す る と,そ の 後 の 再 就 職 者 の伸 び は他 の 学 歴 層 よ りも弱 い 。
HillandStafford(1974・1977)及 びLeibowitz(1974b)は,60年 代 の ア メ リ カで も子 育 て に費 や され る時 間 は,女 性 の 教 育 レベ ル が 高 い ほ ど増 加 す る
とい う傾 向 を も って い た こ と を指 摘 す る。さ らにHillandStafford(1980)は, 1960年 代 に は,大 学(短 大)を 卒 業 した 子 供 を持 つ 女 性 は,労 働 市 場 か ら離 れ る傾 向 にあ っ た が,70年 代 に入 る と,そ の よ う な女 性 た ち は,む しろ 労 働 市 場 に残 る 傾 向 に あ っ た とい う。 既 に 冒頭 で 述 べ た よ う に,1960年 代 の ア メ リ カ の 女 性 就 業 形 態 はM字 型 を して お り,こ れ が70年 代 に な り徐 々 に消 滅 して い る。
こ の よ う に,60年 代 の ア メ リ カ に お い て も,教 育 レベ ル と就 業 率 の 問 にあ る負 の 関係 が み られ る と い う こ と は,こ の 関 係 が 日米 にお け るM字 型 就 業 形 態 の構 成 要 因 の1つ とな っ て い る 可 能 性 が 高 い と考 え られ よ う。
日米 に お け る育 児 サ ー ビス ・制 度 の 普 及 と 女 性 の 生 産 活 動 選 択
育 児 施 設 や 企 業 に よ る 育 児 制 度 の発 達 は,子 供 を持 つ 労 働 者 の就 業 環 境 の改 善 に大 き な役 割 を果 たす 。 これ は逆 に,子 供 を持 つ 労 働 者 を取 り巻 く環 境 の未 発 達 は,市 場 労 働 を抑 制 す る と も考 え られ る 。 日米 比 較 の 点 か ら考 え る と,藤 本(1998),丸 尾(1998)そ の 他 様 々 な デ ー タ は,日 本 の 育 児 サ ー ビス や 育 児 制 度 が,ア メ リ カ に比 べ 未 発 達 で あ る こ とを 指 摘 して い る 。 丸 尾(1998)は, 女 性 の 就 業 と社 会 保 障 政 策 との 関係 につ い て,ス ウ ェ ー デ ンの 社 会 保 障 政 策 を 参 考 に し なが ら,今 後 の 日本 の 女 性 就 業 に 関 す る社 会 保 障 政 策 の課 題 につ い て 議 論 して い る。 そ こ で は 日本 が 直 面 して い る 課 題 と して,出 産 ・育 児 ・介 護 休 暇 の 充 実,経 済 的 に も機 会 的 に も利 用 しや す い 保 育 施 設 の 充 実 な どが挙 げ られ て お り,日 本 にお け る 育 児 サ ー ビス や 育 児 政 策 の 未 発 達 さが 伺 え る。7)経 済 企
7)飼 こ ど も未 来 財 団 に よ る1996年 の 海 外 調 査 報 告 で は,次 の よ う な 結 果 が 報 告 さ
女 性 労働 供給 と育 児投 資 リター ン(3) 121 画 庁 「国 民 生 活 選 好 度 調 査 」(平 成8年)に よ る と,女 性 が 働 きつ づ け る の を 困 難 にす る か また は 障 害 に な る こ との 第1位 に,育 児 が挙 げ られ て い る 。また,
(財)婦 人 少 年 協 会 に よ る 「幼 児 期 の 子 の 母 親 の生 活 と就 業 の 実 態 に関 す る調 査 」(平 成6年)に よ る と,幼 児 期 の子 供 を 持 つ 働 く女 性 の6割 は,保 育 所 な どに 子 供 を預 け て い る が,ほ ぼ4割 が 親 族 に 子 供 を預 けて い る。 さ ら に 同調 査 に よ る"仕 事 と育 児 を 両 立 す る た め に必 要 と思 う対 策"と い う 質 問 に対 して, 保 育 所 の 充 実(時 間延 長,設 備 の 充 実 な ど),保 育 経 費 の 軽 減,企 業 に お け る 勤 務 時 間 の 配慮 な どが 高 い 割 合 を 占め て い る 。 厚 生 省 「人 口動 態 社 会 経 済 面 調 査 の概 況 」(平 成8年)が 行 っ た,"育 児 環 境,保 育 所 ・育 児 休 業 に 関 す る行 政 へ の 要 望"と い う質 問項 目 にお い て 大 きな割 合 を 占 め た の も,児 童 手 当 の 充 実, 保 育 ・教 育 費 の 軽 減 とい った 経 済 的 要 素 で あ った(労 働 省 女 性 局 「働 く女 性 の 実 情 」(1998):pp.58‑64参 照)。
また 日本 に お け る育 児 と就 業 の 両 立 を サ ポ ー トす る制 度 と して は,1991年 に 成 立 した 「育 児 休 業 等 に 関 す る 法 律 」(育 児 休 業 制 度)が あ る。8)育 児 休 業 制 度 とは,育 児 と継 続 雇 用 の 両 立 をサ ポ ー トす る 目的 で 制 定 さ れ,こ れ は子 供 が 一 歳 に達 す る まで,子 供1人 に つ き一 回利 用 す る こ とが で きる 。 この 制 度 の 導 入 は,特 に子 育 て に よる 継 続 就 業 が 困 難 と され て きた,既 婚 女 性 の 雇 用 環 境 を 支 援 す る もの で あ る と して 期 待 され る。 しか し,1993に お け る滋 野 ・大 日の 調 れ て い る 。 ア メ リ カ で は13歳 未 満 の 児 童 を持 つ 家 庭 の う ち,何 等 か の 保 育 サ ー ビ ス を利 用 して い る 者 の 中 で,65%が 保 育 セ ン タ ー(ChildCareCenter)を 利 用 し, 25%は 保 育 マ マ(FamilyChildCare:自 宅 で 複 数 の 子 供 を 預 か る 者)を,そ し
て10%は ナ ニ ー(Nanny:ベ ビ ー シ ッ タ ー よ り も広 範 囲 の サ ー ビ ス を 提 供 す る 者) サ ー ビ ス を 利 用 して い る 。 一 方 日本 で は,保 育 マ マ 及 び ベ ビ ー シ ッ タ ー を利 用 す る 家 庭 は 非 常 に 少 な い 。(財)婦 人 少 年 協 会 が 平 成6年 に 行 っ た 調 査 に よ る と, 6歳 まで の 子 供 を持 つ 家 庭 の う ち,保 育 マ マ や ベ ビ ー シ ッ タ ー を利 用 す る 家 庭 は ほ と ん ど 存 在 し な い こ とが わ か る(保 育 マ マ:1歳 か ら1.5歳 ま で の 子 供 で0.9%, 4歳 児 で0.8%で あ り,他 の 階 層 に お け る デ ー タ は 存 在 し な い 。 ベ ビ ー シ ッ タ ー に つ い て は,全 て の 階 層 に お い て デ ー タ は 存 在 し な い)。(労 働 省 女 性 局 「働 く女 性 の 実 情 」(1998):付85)
8)こ れ は1995年 に 改 正 さ れ,「 育 児 休 業 等 育 児 又 は 家 族 介 護 を行 う労 働 者 の 福 祉 に 関 す る法 律 」(育 児 休 業 法)と な り,1999年 に は 「育 児 休 業,介 護 休 業 等 育 児 又 は 家 族 介 護 を 行 う 労 働 者 の 福 祉 に 関 す る 法 律 」(育 児 ・介 護 休 業 法)と な っ た 。
査 で は,会 社 に育 児 休 業 制 度 が あ る と答 え た者 は全 体 の お よそ40%に す ぎ ない とい う。(滋 野 ・大 日(1998))1996年 の 労 働 省 「女 子 雇 用 管 理 基 本 調 査 」 にお い て も,育 児 休 業 制 度 の規 定 の あ る企 業 は全 体 の 約6割 で あ っ た 。(労 働 省 女 性 局 「働 く女 性 の 実 情 」(1998):pp.73‑74参 照)9)こ の よ う な 数 字 は,育 児 休 業 制 度 の 女 性 就 業 形 態 へ の効 果 の 弱 さ を反 映 して い る。 滋 野 ・大 日(1998) の研 究 に よ る と,育 児 休 業 制 度 は 女 性 の継 続 就 業 と正 の 相 関 を持 つ が,結 婚 の 選 択 に は影 響 を与 え て い な い こ とが 示 唆 され て い る 。 後 者 の結 果 に 関 して,両 氏 は2つ の解 釈 を提 案 し て い る 。1つ は,日 本 の 育 児 休 業 制 度 が 結 婚 の機 会 費 用(結 婚 しな けれ ば得 られ る で あ ろ う利 益)を 十 分 に 引 き下 げ る役 割 を 果 た し て い ない ほ ど未 発 達 で あ り,育 児 休 業 制 度 の 更 な る 充 実,そ して 育 児 サ ー ビス の拡 大 ・充 実 が 両 氏 に よ っ て提 案 され て い る。2つ め の 解 釈 は,育 児 に よる 就 業 中 断 の機 会 費 用(育 児 の た め に仕 事 を 中断 しな けれ ば得 られ る で あ ろ う利 益) が低 い た め に,結 婚 選 択 に育 児 休 業 制 度 は あ ま り効 果 を与 え て い な い とい う も の で あ る。 これ に は結 婚 退 職 後 の 職 場 復 帰 にお け る 環 境 の 充 実 が提 案 さ れ て い る 。 森 田 ・金 子(1998)も,大 企 業 で は育 児 休 業 制 度 の 利 用 よ りも む しろ 結 婚 退 職 を考 え る 女 子 社 員 が 依 然 と して 多 く,中 小 企 業 で は 育 児 休 業 制 度 自体 の 整 備 が 行 わ れ て い な い,と い う 問題 に つ い て指 摘 して い る。
で は 日本 で な ぜ 育 児 サ ー ビ ス や 育 児 制 度 が 発 達 しな い の で あ ろ うか 。 これ に は2つ の 理 由 が 考 え られ る。1つ は 保 育 所 の 供 給 や,保 育 所 を利 用 す る対 象 が 制 限 され て い る と い っ た,企 業 ・政 府 政 策 に よ る外 生 的 な影 響 で あ る。 も う1 つ の 理 由 は,現 時 点 に お け る育 児 サ ー ビ ス や 育 児 制 度 の 発 達 レベ ル が 既 に均 衡 点 に あ る た め,こ れ 以 上 の 改 善 が 生 じな い の で は な い か,と い う理 由が 考 え ら れ る 。
ま ず 前 者 の理 由 に 関 して,保 育 所 の 在 所 率 は1977年 に ピー ク を迎 え,そ の 後 減 少 傾 向 に あ る。 保 育 所 の 供 給 不 足 は現 在 も問 題 とな って お り,認 可 保 育 所 へ
9)滋 野 ・大 日(1998)は 脇 坂(1998)を 参 照 し,1996年 に お け る 育 児 休 業 法 制 度 の 普 及 率 が お よ そ36%に 過 ぎ な い こ と を指 摘 して い る。
女 性 労 働 供 給 と育 児 投 資 リ タ ー ン(3) ヱ23 の 入 所 を待 つ 児 童 の 数 は,1999年4月1日 現 在 で32,000人,待 機i率(入 所 児 童 に 対 す る 入 所 を待 つ 児 童 の 割 合)は 全 国 で4.2%で あ る と い う(道 新1999年11 月19日)。10)こ れ に 関 して八 代(1992)は,保 育 所 の利 用 対 象 が 規 制 さ れ て い る こ と を指 摘 す る。 例 え ば公 立 保 育 所 に つ い て,専 業 主 婦 は保 育所 利 用 が で き な い こ と,保 育 所 へ の再 入 所 が 困 難 な こ と を な どが挙 げ られ て い る。 乳 児 保 育 所 に 関 して は,そ の対 象 と な る家 計 は,年 間 所 得 税12万 円 以 下 で あ る低 所 得 家 計 に 限 定 さ れ て い る。 また 供 給 側 に と っ て も,乳 児 保 育 の コ ス トが 高 い た め, 入 所 を制 限せ ざ る を得 な い と い う現 状 もあ る。 こ の よ う に 日本 に お け る育 児 制 度 ・施 設 の 未発 達 さ に つ い て,政 府 ・企 業 政 策 な どの 外 生 的 要 因 の 改 善 へ の 指 摘 が 多 く見 られ る。
しか し,日 本 にお け る 育 児 制 度 ・施 設 の不 足 は,外 生 的 影 響 の 結 果 の み に 依 存 して い る の で あ ろ うか 。 言 い換 え る な らば,先 に触 れ た 認 可 保 育所 へ の入 所 待 機 率 が 全 国 で4.2%(北 海 道 で は1.7%(248人))(同1999年11月19日)と い う数 字 は,保 育 所 の 需 要 と供 給 の均 衡 の 結 果 で あ る とい う見 解 も考 え られ る 。 こ れ が 第2の 理 由 で あ る,需 要 と供 給 の 均 衡 の 結 果 と して の,4.2%と い う保 育 所 待 機 率 の発 生 で あ る 。 重 要 な こ と は,日 本 に お け る 保 育 所 待 機 率 を高 い と み な す か,そ れ と も比 較 的低 い とみ な す か とい う こ とで あ ろ う。
ア メ リ カ に お け る育 児 関 連 サ ー ビス ・制 度 は,1980年 代 か ら90年 代 にか け て 発 展 して い る 。 藤 本(1998)は,ア メ リ カ企 業 が80年 代 か ら行 っ て い る育 児 関 連 の 幅 広 い 企 業 政 策 につ い て 紹 介 して い る。 ア メ リ カ で は 近 年,企 業 内 に家 庭 と仕 事 の 両 立 とい う問 題 に 関 す る専 門 ス タ ッ フの 設 置 や,管 理 部 門 に お け る従 業 員 家 族 支 援 制 度 の 強 調 を提 案 して い る企 業 が 多 く,さ ら に様 々 な 人 事 制 度 が 整 っ て い る こ と が 指 摘 さ れ て い る 。 人 事 制 度 の 例 と し て は,出 産 休 暇 (MaternityandParentalLeave),育 児 休 業(ParentalLeave),情 報 紹 介 サ ー ビ ス(ResourceandReferralService)託 児 施 設 に 関 す る 情 報 提 供,
10)認 可 保 育 所 へ の 入 所 待 ち の 児 童 数 は,大 都 市 ほ ど多 い 。 ま た,乳 児 保 育 所 へ の 入 所 を待 つ 児 童 数 は,昨 年 よ り4,500人 減 り21,111人 で あ っ た 。(同 紙)
育 児 補 助 金 支 給 な ど の経 済 的 支 援,企 業 内 に お け る託 児 所 の 設 置 な どの 直 接 的 育 児 支 援,フ レ ッ ク ス 制 度(FlexibleSchedulingandWorkArrangements)
そ し て転 勤 支 援 制 度(RelocationPolicies)転 勤 に伴 う不 動 産 や 配 偶 者 の 雇 用 な ど様 々 な サ ポ ー トの 提 供 な どが 挙 げ られ て い る 。 ま た ア メ リ カ の育 児 支 援 制 度 の 問 題 点 と して,藤 本 氏 は 同 論 文 の 中 で,家 族 支 援 制 度 が 企 業 戦 略 直 接 結 び つ い て い な い こ と な ど を指 摘 して い る 。 い ず れ に せ よ,少 な くと も育 児 支 援 政 策 自体 を比 較 す る 限 りに お い て は,ア メ リ カ の 政 策 が 日本 の そ れ よ り も充 実 して い る とい う こ と は否 定 で き ない 。
賃 金 の 上 昇 と女 性 の 生 産 活 動 選 択
大 橋 ・荒 井 ・中 馬 ・西 島(1989)や 島 田(1985)な どで 指 摘 さ れ て い る よ う に,賃 金 の 上 昇 は,女 性 の就 業 行 動 に 必 ず し も正 の 影 響 を与 え る とは 限 ら な い。
一 般 的 に は,賃 金 の 上 昇 は 女 性 の市 場 労 働 を促 進 す る と考 え られ て い るが,日 米 比 較 の 点 か ら述 べ る と,女 性 の賃 金 率 が 増 加 す る こ とに よ る市 場 労 働 へ の進 出 動 機 は,ア メ リ カ の方 が 日本 の そ れ よ り も大 きい 傾 向 に あ る と考 え られ て い る(島 田(1985)第2章4節,大 橋 ・荒 井 ・中 馬 ・西 島(1989)第1章5節 参 照)。 ま た,賃 金 と市 場 労 働 が 必 ず し も正 の相 関 を持 た な い こ とは,第3章 に お い てBeckerの 家 計 生 産 モ デ ル の 応 用 か ら導 か れ た結 論 の1つ で もあ っ た。
こ の 結 論 を 〈図10>及 び 〈図15>を 用 い て 考 え る と,〈 図10>で の 賃 金 上 昇 に よ るZ1とZ2の 価 格 変 化(Z1の 相 対 価 格 の 上 昇)が,〈 図15>に お け る教 育 投 資 リ ター ン の上 昇 に よ るZ1とZ2の 価 格 変 化(Z2の 相 対 価 格 の 上 昇)に よ っ て 相 殺 さ れ る時,賃 金 率 と教 育 投 資 リ ター ンの上 昇 は,便 益 生 産 の 時 間 配 分 に影 響 を与 え ない 。 さ ら に 〈図15>に お い て,Z1とZ2の 生 産 に お け る最 適 点 がSZ"
間 に 選 ば れ る と き(代 替 効 果 が 所 得 効 果 を上 回 る と き),教 育 投 資 リ ター ン の 上 昇 は 家 計 生 産 時 間 の上 昇 を も た らす 。 さ らに 賃 金 率 変 化 後 にお け る,便 益 生 産 に お け る最 適 点 の 位 置 は,無 差 別 曲 線(U(Zl,Z2))の 形 状 に も依 存 して い る 。 従 っ て,賃 金 率 変 化 に よ る最 適 点 の 決 定 は,Z1とZ2の 相 対 価 格 変 化 と 選 好(無 差 別 曲 線 の 形)の 両 者 に依 存 し て い る と考 え られ る。
女性 労働 供給 と育 児投 資 リター ン(3) ヱ25 これ を 日本 にお け るM字 型 就 業 形 態 の存 続 と関連 づ けて 考 え る と,賃 金 率 の 上 昇 に よ っ て 女 性 の 市 場 労 働 時 間 が 上 昇 し な い 要 因 に は,賃 金 率 の 上 昇 よ る Z1か らZ2へ の 生 産 の 代 替 と,教 育 投 資 リ タ ー ンへ の 強 い 選 好 に よ るZ2か ら Z1へ の 代 替 との 問 で の 相 殺 が 起 こ っ て い るか らで あ る。 ま た 〈図A>か ら, 弱 い 賃 金 弾 力 性 は,教 育 投 資 リ ター ンへ の 強 い 選 好 に 相 殺 さ れ,家 計 生 産 労 働 の機 会 費 用 は 上 昇 せ ず,市 場 労 働 は促 進 され ない(〈 図A>上,点 線 の 流 れ)。
逆 に 強 い 賃 金 弾 力 性 は,市 場 生 産活 動 へ の 時 間 投 入 の 上 昇 を もた らす(同 図 上, 直 線 の 流 れ)。 故 に,点 線 の 道 筋 で 表 さ れ る 日本 の 女 性 就 業 行 動 に お い て,強 い教 育 投 資 リ ター ンへ の 選 好 に よ る家 計 生 産 時 間投 入 の 増 加 が,賃 金 率 上 昇 が
もた らす 時 間 配 分 の変 化 を支 配 して い る可 能 性 が あ る と考 え られ る 。
世 帯 主 所 得 の 上 昇 ・主 婦 に な る確 率 と女 性 の 生 産 活 動 選 択
家 計 の 収 入 レベ ル が 高 い と,専 業 主 婦 に な る確 率 が 高 くな る 。 これ は現 時 点 で の,家 計 の収 入 レベ ル が 過 去 の水 準 と比 較 して高 い と き,妻 は 敢 え て家 計 を 支 え る た め に外 で 働 く必 要 性 を 求 め ず,労 働 市 場 へ の 進 出が 促 進 され な い とい う こ と で あ る。 樋 口(1991),Easterlin(1968)そ してMorgan(1968)も こ の こ と に つ い て触 れ て い る 。11)例 え ば樋 口(1991)は 世 帯 主 の 所 得 レ ベ ル
と既 婚 女 性 の就 業 率 を 次 の 〈図17>の よ うに 表 して い る。
各 図 の 世 帯 主 所 得 は,IIが 最 も低 く,IXが 最 も高 い所 得 階 級 を示 して い る。12) 図17‑(1)は,子 供 を持 た な い29歳 以 下 の既 婚 女 性 に 関 す る,世 帯 主 所 得 レベ ル と,継 続 就 業 率,転 職 率,離 職 率 そ し て新 規 就 業 率 との 関 係 を表 した も の で あ り,図17‑(2)は,子 供 を 持 つ30‑39歳 の既 婚 女 性 に 関 す る,同 様 の 関 係 を示 し
11)EasterlinやMorganは,現 行 所 得 が 過 去 の 所 得 レ ベ ル よ り も低 い 時,妻 は 余 暇 を 犠 牲 に して も労 働 市 場 へ 参 入 す る傾 向 が あ る こ と を 指 摘 し,こ れ を 相 対 賃 金 仮 説 と呼 ん で い る 。(樋 口(1991)P.152)
12)Hは,世 帯 主 所 得 が 年 間100万 か ら149万 円 の 問,D(は,1000万 円 以 上 を指 す 。 詳 しい 区 分 に つ い て は 樋 口(1991:P.238)参 照 。
75 70 65 60 55
50 45 40
1tlI皿
(%)
1!
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H
WV「 町V江 冊Dく
世 帯 主 所 得 階 層 離 職 率46
漁業
WVV王V皿 世 帯 主 所 得 階 層
(%) ユ6 14 12 10
(%) 30
25 20 ユ5 10
工ll1lWVV王 「皿V皿D【
世 帯 主 所 得 階 層 新 規 就 票 率
\57年
、 x54\
・《
r【HIWV「V1田V皿IX 世 帯 主 所 得 階 層 資 料:樋 口(1991)P280.
図17‑(1):子 供 を も た な い29歳 以 下 有 配 偶 女 子
た もの で あ る 。 転 職 率 と世 帯 主 所 得 との 関係 は,ど ち ら も同 じ よ う な傾 向 を 表 して お り,世 帯 主 所 得 の 上 昇 と と も に,転 職 率 は減 少 す る。 新 規 就 業 率 と世 帯 主 所 得 の 関係 も これ と同 様 の 傾 向 を示 して い る。 一 方,継 続 就 業 率 と世 帯 主 所 得 との 関 係 は,両 者 で異 な る傾 向 を表 して い る。 子 供 を持 た な い29歳 以 下 の 既 婚 女 性 の 継 続 就 業 率 は,世 帯 主 所 得 と負 の 関 係 を表 して い る の に対 し,子 供 を 持 つ30‑39歳 の 既 婚 女 性 の 場 合,あ ま りは っ き り と した 関 係 が 見 られ な い 。 こ こ で 特 に注 目す べ き関 係 は,離 職 率 と世 帯 主 所 得 レベ ル と の 関係 で あ る。 同 図
女性 労 働供 給 と育児 投 資 リ ター ン(3) ヱ27 か らは,世 帯 主 所 得 が 上 昇 す る と,20代30代 と も に既 婚 女 性 の 離 職 率 が 上 昇 す る とい う関 係 が み られ る。 つ ま り世 帯 主 所 得 が 高 い ほ ど,妻 は一 旦 企 業 を離 れ る と,非 労 働 力 化 す る傾 向 にあ る とい う こ とで あ る。 逆 に 生 活 レベ ル の 低 い 家 計 ほ ど,妻 は そ の 経 済 的必 要 性 か ら専 業 主 婦 に な らず,一 度 離 職 して も非 労 働 力 化 す る傾 向 は 少 な い とい え る 。13)し た が っ て,樋 口 は20代 か ら30代 の 就 業
(%)96 94 92 90 8886 8482 80 78 76 74 72 70
(%)30.0 27.5 25.0 22.5, 20.0 17.5 15.0 12.5 10.0 7.5 5.0 2.5 0.0
X
粗層粗職
u脂
・継
N世
11 率職離
1工11IIVVVIYKV皿 以X
世 帯 圭 所 得 階 層
鮒76543210噌←ームー1111凸﹁騨
(
IIlllWVVIVI正V瓜 】XX
世 帯 主 所 得 階 層 新 ・規就 業 率
工工U正 玉VVV正V猛V皿 工XX 世 帯 主 所 得 階 層 資 料:樋 口(1991)P281.
図17‑〈2):子 供 を 有 す る30‑39歳 有 配 偶 女 子
13)夫 の 教 育 レベ ル と妻 の 就 業 状 態 に 関 して の研 究 に は,OgawaandErmisch(1996)
率 が 低 い の は,必 ず し も社 会 的風 潮 の み が 要 因 とな っ て い る の で は な く,家 計 の 経 済 状 況 も ま た妻 の 就 業 行 動 に大 きな 影 響 を与 え て い る,と コメ ン トして い る 。
女 性 の 就 業 決 定 に お け る 日米 比 較
以 上 の よ う な各 変 数 の 相 関 を 考 慮 す る と,点 線 の 流 れ は今 日の 日本 女 性 に お け るM字 型 を形 成 す る 就 業 行 動,そ して 直 線 の流 れ は,ア メ リ カ女 性 の就 業 行 動 を表 す と考 え られ る 。 本 稿 で は,教 育 投 資 リ ター ン(子 供 の 人 的 資 本 形 成) へ の 強 い選 好 が,日 本 女 性 の就 業 選 択 に 影 響 を与 え る こ とを仮 定 し て い る 。 従 っ て,こ こで 特 に 日本 の 女 性 労 働 市 場 にM字 型 就 業 形 態 が 存 続 して い る1つ の 要 因 は,女 性 の 高 い教 育 レベ ル が 日本 で は 子 供 の 人 的 資 本 形 成 に投 入 さ れ るか らで あ る,と い う推 測 が もた れ る。 なぜ 日本 の母 親 は 点 線 の 方 向 に,そ して ア メ リ カ の母 親 は直 線 の 方 向 に選 好 を 向 け る 傾 向 が あ る とい え る の か 。 こ の 推 測 に は4つ の根 拠 が あ る 。 第1に 日米 間 の教 育 方 針 の 違 い,第2に は主 婦 に な る 確 率 と子 供 の 学 力 との 相 関,第3に 母 親 の 学 歴 と子 供 の 学 歴 との 問 の相 関,そ
して 最 後 に 金 融 市 場 環 境(預 金 金 利)の 相 違 とい う4つ の側 面 か らこ の推 測 が 説 明 で きる 。 次 に そ れ ぞ れ の項 目 につ い て 詳 し くふ れ る。
日米 間 の教 育 方 針 の 違 い と女性 の 就 業 選 択
母 親 に よ る子 供 へ の 教 育 方 針 一 日米 の 親 が 子 供 を どの よ うな 方 法 で育 て る こ とが 望 ま しい と考 え て い る の か一 に は,日 米 間 に どの よ うな 違 い が あ る の で あ ろ うか 。 い くつ か の 研 究 結 果 は,日 米 の 親 つ い て 次 の よ うな 特 徴 を あ げ て い
や 荒 井(1995)が あ げ ら れ る 。1990年 の 毎 日新 聞 に よ っ て 行 わ れ た 調 査 を も と に 行 わ れ たOgawaandErmisch(1996):P.689(TABLE4)の 分 析 に よ る と, 大 卒 の 夫 を持 つ 女 性 は そ うで な い 妻 よ り も専 業 主 婦 に な る確 率 が 大 き い と い う
(詳細 は 同 論 文P.689,Table4参 照)。 ま た 荒 井(1995)の,47都 道 府 県 の デ ー タ を 用 い た 分 析 に よ る と,父 の 学 歴 と 母 の 学 歴 と の 間 に は 高 い 相 関 が 見 ら れ た 。 日本 の 学 歴 社 会 を 考 え る と,夫 の 学 歴 の 高 い 家 計 の収 入 レベ ル は 高 く,そ れ は 妻 を専 業 主 婦 に させ る傾 向 を 高 め る,と い う 関 係 が 成 立 す る で あ ろ う。