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不当な取引制限の成立 と立証 (下)

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(1)

不当な取引制限の成立 と立証 ( 下)

和 田 健 夫

≪目 次》

は じめに

Ⅰ 問題の所在

1.実体的要件 と立証問題 1.実体的要件

2

.「 相互拘束」 と 「 共同遂行」

3.

立証

2

.検討の課題

アメリカ法

1. シャーマ ン法 1条

2

.基本的アプローチ

1.consciousparallelismplus

のルール

2.民事事件 における立証の程度

3

.状況証拠か らの共謀の推認

1.協調 を容易 にする慣行

(facilitatingdevice)

の一致 した採用のケース

2

.その他の共謀の事例

4

.共通の計画‑ の意識的参加 一暗黙の合意 1.一連の最高裁判決

2.

関連する下級審判決

5

. まとめ

Ⅲ EU ( EC)法

1.ローマ条約

85

1

項の

concertedpractice 2

.判例 にみ られる

concertedpractice

の概念

3.concertedpractice

の立証

1.直接 的な,又は間接的な接触

2

.状況証拠 としての一致 した行為

〔 1 45〕

(2)

146 第47 2・3号 4.

まとめ

( 以上

45 3

号)

不当 な取引制限の成立

1.不 当な取引制 限の行為類型

2.

寡 占 と不当な取引制限

1.問題状況

2

.寡 占企業の同調的行動 をめ ぐる議論

3.まとめ

Ⅴ 不当な取引制限の立証 1.原則

1.情報交換 と結果的な行動の一致

2.検 討

2.

協調容易化行為 について

3.まとめ

結論

( 本号)

不当な取引制限の成立

Ⅱ, Ⅱでの比較法的考察 を参考 に して,以下

(

Ⅳ,

Ⅴ)

では 日本法の解釈 を

‑検討す る。 Ⅰで指摘 した ように,不 当な取引制 限の実体的要件 とその立証 に分 けて論ず る必要がある

まず, このⅣでは,主 として前者の問題 を取 り扱 う。

1

.不当な取引制限の行為類型

実体 的要件 の問題 は, Ⅰで述べ た ように,不 当な取引制限の行為類型 に も関 連す る

そ こで示 した諸学説が個別的 な事例 において どれほ どの差異 を有す る のかは明確 ではな く, 用語あるいは説明の問題 にす ぎない とい う側面 もあるが, 理論的な レベ ルにお ける筆者の見解1 )を以下で示す。

(a)

相互拘束中心説

1

)筆者の見解 はすでに,今相成和 ‑実方謙二 ‑丹宗昭信 ‑厚谷棄児編 ・注解経済法 〔 上

(1985)

( 以下 「 注解経済法 〔 上

〕」)78‑98

頁 ( 実方謙二 ‑和 田健夫),丹宗暁 信 ‑来生新 ‑畠山武道 ‑稗貫俊文 ‑向田直範 ‑和田健夫 ・論争独 占禁止法

(1994)

( 以下 「 論争独禁法

」)131‑141

頁で明 らかにしている。

(3)

不当な取引制限の成 、 tと立証 ( 下)

147

行為類型である 「 共同 して‑相互 に事業活動 を拘束す る」( 以下 「 相互拘束

とい う) と 「 共同 して‑事業活動 を遂行す る」 ( 以下 「 共同遂行」 とい う)の 関係 に関 しては,通説 ・判例 と同 じく,相互拘束 を中心 に理解す る見解が妥当 である。そ して共同行為 ( 共同性) に関 しては合意の要件 を欠 くことがで きな い と考 えるべ きである

す なわち,不当な取引制限は合意 によって事業活動 を 相互 に拘束す る行為 とみなすべ きである

なぜ な ら,

3

条後段 は行為規制であ る以上,合意の形成,す なわち事業者の独立 した意思決定の人為的な制約 によ る競争制限が問題 とされなければな らないか らである

独 占禁止法 は,その よ うな合意 を排 除す ることによって競争状態‑の原状 回復 をはかることがで きる のである

共同遂行 を独立の行為類型 と考 える説 は,不 当な取引制限の行為 を広 くとら えす ぎる可能性がある

2)

。た とえば,正田説 によれば,共同遂行の場合 は合意 ( 明 白な合意 とい う意味か もしれないが) は必ず しも必要でな く,共同の認識 に基 づいた行為 であるか どうかが問題 となる

(I12)

しか し,そ こでい う共同 の認識 の意味, さ らにいわゆ る意識 的並行行為

(consciousparallelism)

との 区別 については十分明 らかにされていない ように思われる。また,根岸教授 は, 異 なった文脈 においてであるが,共同行為のなかには,意識的並行行為や共通 の認識 にもとづ く行為 も形式上 は含 まれることを認めている。これは,教授が, 共同遂行 を独立の行為類型 とみなしていることと無関係ではなかろう

3)

(b)

「 意思の連絡

:東芝ケ ミカル事件東京高裁判決

4)

Ⅰで述べた ように,審決では,共同性 の要件 として 「 意思の連絡」 とい う用 語が用い られている

(Ill)

。そ して,最近,東芝ケ ミカル事件東京高裁判決

2)

「 共同遂行」 ということば自体のなかにも,たとえば業務提携による共同行為のよ うな競争政策上ニュー トラルな事業活動まで包含する可能性をもっている。

3

)根岸哲 ・独占禁止法の基本問題

(1990)59

頁 ( 独禁法

26

項の 「 公共の利益に反 して」の要件の意義づけに関連して) 0

4)

平成

7

9

25

日判決。本件の解説 ・評釈として,橋本毒恵光 「 東芝ケミカルによ

る審決取消請求等請求事件について」公正取引

544

28

頁,ジュリス ト臨時増刊平

成七年重要判例解説,経済法

3

事件 ( 川 井克倭) 0

(4)

1 4 8 商 学 討 究 第47巻 第 2・3 号

が この解釈 を追認す る とともに,よ り詳細 にわたって論 じてい る。そ こで次 に, 意思 の連絡 と合 意 の関係 につ いて検 討す る

この事件 は価格 ( 引上 げ) カルテ ル に関す る ものであ るが,判 決 は,実体 的要件 につ いて,次 の ように述べ た。

独禁法 2粂 6 項 にい う 「 共 同 して」 に該 当す るため には,複数事業者 が対価 を 引上 げ るにあた って,相 互 の問 に 「 意思 の連絡」が存在 した こ とが必 要 であ る

意思 の連絡 とは,複数事業者 間で 「 相互 に同内容 又 は同種 の対価 の引上 げ を実 施 す る こ とを認識 ない し予測 し, これ と歩調 をそ ろえる意思が あ る こ と」 を意 味 す る ( 以 下 「 相 互 の認識 ・協 調」 とい うこ とが あ る)。 つ ま り 「 一 方 の対 価 引上 げ を他 方が単 に認識 ,認容す るのみで は足 りない」 が,明示 の合 意 まで は 必 要 で な く, 「 相互 に他 の事業 者 の対価 の引上 げ行 為 を認識 して,暗黙 の うち

に容認す る こ とで足 りる ( 黙示 に よる 「 意思 の連絡

」)」 5)

0

この解釈 は,事業者 の意識 あ るい は心理状 態 ( 事業者 を代 表す る従 業者 の言 動 か ら擬 制 され る意識) の点 か ら共 同性 の要件 を説 明 してい る点が特徴 的であ る

そ して この解釈 は合 意 を要件 とす る説 と内容 的 には違 わ ない。合 意 の本 質 は,同 じ行動 を とる こ とにつ いて事業者 の意思が合致 してい る こ とにあ る。 ま た, ここでい う合 意 は 「 暗黙 の合 意 ( 了解

)」

で も十分 で あ り, この場合 の事 業者 の意識 は まさに判 決 のい う意思 の連絡 と同 じであ る。逆 に,意思 の連絡 は, 根 岸教授 の指摘 す る よ うに,共 同行為 が成立す るため に最小 限必要 な要素 を示

した もの とみ る こ とが で きる

6)

。 明 白な申 し合 せ ・合 意 に至 った場合 や協 定 が 結 ばれた場合 には,相 互 の認識 ・予測が よ り確 実 にな り,歩調 をそ ろえる こ と が よ り容易 になる とい うにす ぎない。 したが って,以下 で は共 同行為 の要件 と しての合 意 と意思 の連絡 は同 じ概 念 として取 り扱 う

ただ,共 同行為 の要件 を

5)判決は,その理由として,「もともと 『

不当な取引制限』 とされるような合意につ いては,これを外部に明らかになるような形で形成するのは避けようとの配慮が働 くのがむしろ通常であ り,外部的にも明 らかな形による合意が認められなければな らないと解すると,法の規制を容易に潜脱することを許す結果になるのは見易い道 理であるから,このような解釈では実情に対応 し得ないことは明らかである」 と述 べている。

6)根岸哲 「

市場構造親制の必要性 と可能性 (

‑)

」神戸法学雑誌2

3

1・2

合併号5

2

頁 ( 合板入札価格協定事件の評価に関して) 。

(5)

不当な取引制限の成立と . 1 歳 1 ミ(ド) 14 9 事業者の意識の面か ら説明す る ときには意思の連絡 ‑相互の認識 ・協調の用語

を用いる。

判決は,おそ らく,共同行為 と単なる並行行為の区別 を示す意味で,相互の 認識 ・協調 を要求 し,単 なる一方的な認識 ・認容では足 りないことを指摘 して い る。 しか し,寡 占企 業 の いわ ゆ る相 互依存 関係 に よる同調 的 な価格 行動

(consciousparallelism)

が どち らに含 まれるのかは, この定義だけでは明 ら かではない ( 解釈 によって どち らに も該 当 しうる)。 しか し,後述

(2

参照) の ように,その区別 を合意の意味か ら行 うことには限界がある

7)

。重要 なのは, 相互の認識 ・協調が どの ように して形成 されたか とい うことである

判決は, 意思の連絡が認め られる場合 として,事業者 らが対価引上げに関す る情報交換 をして同一行動 に出ることを挙 げている。つ ま り,事前の情報交換が他 の事業 者の将来の行動 に関す る不確実性 を減少 させ,それが相互の認識 ・協調 を可能 に したことが問われているのである。ここでい う相互の認識 ・協調は,したがっ て,それを形成あるいは強化す るような何等かの人為的な手段 をともなってい ることを前碇 としている と考えるべ きである。この ように考 えることによって, その ような要素 を欠 く単純 な

consciousparallelism

とは区別すべ きであ

8 8)

0 排 除措置 はその人為的な手段 に対 して課す ことがで きる

そ して これは, ( a)

で述べたように,不 当な取引制限の禁止が行為規制であることか らも要請 され る。

(C)

相互拘束の意味

しか し,筆者 は相互拘束の意味 を従来の ような意味で理解することには反対 である。相互拘束 の意味について実務上最 も影響 を与えて きたのは,

1953

年の

7)

根岸教授が,意思の連絡という概念が,不当な取引制限と

consciousparallelism

を 区別する基準とは十分なりえていないと指摘する ( 本文後述Ⅳ 22

)のは,その限

りにおいて正当である。

8)

なお,概念上は合意を要件としていない

E

Uの

concertedpractice

も,事業者の将来 の事業の不確実性を減少又は除去することによる意識的な調整 ・協同を違法として お り,実体的な要件の点ではわが国の不当な取引制限とちがわないようにみえる。

しかし,昇降機保守料金カルテル事件審決などを見る限り,立証の点では

E

U法の

方が,より柔軟 ( 立証要件がゆるやか)であるように思われる。

(6)

150

商 学 討 究 第

47

巻 第

2・3

新 聞販路協 定東京高裁判決

9)

であろ う

この判決 は,旧

4

条の共 同行為 を,戟 争 関係 にある事業者が相互 に,事業活動 に対 し共通 の制限 を課す行為である と みな し,競争関係 にないあるいは共通 に事業活動の制限 を受けない事業者 を, 単 なる加巧者 ・暫助者 として,不 当な取引制限の当事者か ら除外す る解釈 を示 した ことで有名である。 旧 4 条 はその後削除 されたため, この判決 は不 当な取 引制限の解釈 に影響 を与 えた。 この判決 によ り,実務的には,わが国の不 当な 取引制限の禁止 は,競争事業者が,相互 に,その競争行動 を直音制限す る行為

に適用 され るとい う,筆者の 目か ら見 れば,限定的な運用 がなされることにな り

10)

, これは学説 に も影響 を及ぼ した。

しか し,相互拘束の当事者 を競争事業者 に限定す る考 え方 には学説か らの批 判がある

競争 関係 にない事業者で も,事業活動 に制限を受 け,それが共通の 競争制限的 目的に貢献 している場合 には,相互拘束が成立す る とい う見解 であ る

私見 によれば, さらに,事業活動への明 白な制 限を引 き受 けていない事業 者であって も競争制限的 な共同行為 に積極 的 に参画 してそれを支 え,あるいは その事業者がいなければ共同行為 自体 が成 り立たない ような指導的な役割 を果 た している場合 には ‑そ うであるか否かは個 々の事実関係 による ‑不 当な取引 制 限の当事者 に含 め るべ きであ る

11)

。 したが って,相互拘束 の意味 は,新 聞 販路協 定事件判決 の解釈 よ りも広 く,競争制限的な共 同行為 ( 合意)に参画 し,

9)

昭和

28

3

9

日判決。解説としてジュリス ト別冊独禁法審決 ・判例百選 〔 第四版〕

15

事件 ( 和田健夫) 。

10)

審決の 「 法令の適用」欄では,価格の決定,生産量の制限あるいは取引先 ・販路の 制限等,相互拘束の内容が示されるのが通常である。昭和

28

年以前の審決では,公 正取引委員会が共同遂行 も独立の行為類型と考えていたこともあって,その点は明 示 していないものが多い。また,この時期は独禁法の運用に連合軍総司令部が係わっ ていたようであるが ( 公取委事務局編 ・独占禁止政策三十年史

(1977)489

頁 ( 浅 沼判事の回想) ) ,それを通 じてシャーマン法 1 条 ( 共謀)の解釈が影響を及ぼした

とも考えられる。ただ,東京高裁の判決によって,私的独占の行為類型との区別 ( 辛 業活動抑圧行為 と競争回避行為)が明確になったという利点がある。

ll)

私見によれば,新聞販路協定事件判決が,「 単なる加巧者 ・暫助者」 とする事業者

でも共同行為の当事者となることがありうる。指名業者でないために形式上は受注

をめぐる競争関係にはない事業者を談合の当事者として認めたシール談合刑事事件

東京高裁判決 ( 平成

5

12

1

4日)は,問題の事業者の同意なしには入札談合が成

(7)

不当な取引制限の成立と立証 ( 下)

151

その 日的に反す る行動 を相互 に自制す る関係 と理解すべ きである。その ように 考 えれば,相互拘束 の対象 になる事業活動 は,必ず しも価格 ,数量 あるいは取 引先の制限な ど競争 に直接 かかわる行動 である必要 はない

12)

0

2.

寡占 と不 当な取引制限

1

.問題状況

集中化が進行 して企業の数が少 な く,各企業の生産規模が相対 的に大 きい寡 占市場 では,個 々の企業の価格 ・生産 に関す る行動が,必然 的に他 の企業 の行 動 に影響 を与 えるこ とになる。各企業 は 自己の行動 を決定す るに当 り, ライバ ル企業 の行動 を考慮 に入れ なければな らない ( いわゆる寡 占的相互依存 関係) 0

しか し寡 占市場では常 に競争が停滞 し,弊害 を生み出 しているわけではない。

寡 占市場 といって も,極めて多様 な形態 を もち,完全競争市場や独 占 とは異 な り,企業 ははるかに複雑 な経済環境 にさ らされている。企業が,ライバ ルの シェ ア‑を奪取す るべ く積極 的な競争行動 をとるのか,それ とも相互 に協調路線 を 歩 むのかは,その時 々の市場 の状況 に左右 され る

寡 占市場 における競争 は利益 の直接的 な奪 い合 いであるか ら,競争 に破 れた 場合 の損失 は計 り知れない。寡 占企業が,その ような危険 をもた らす可能性 の 高い価格競争 を回避す る選択 を し,それ を何度か繰 り返す ことに よって学習効 果が働 くようになる と,特別 な接触や連絡 を もたな くて も協調 を維持す ること

立 しない関係にあったとして,その者 も実質的には他社 と競争関係にあると述べて いる。

12)

独禁法

26

項の定義規定には,「 対価を決定し,‑等」と規定 し,相互拘束の内 容を例示の行為に限定していない。ただ,このように述べると,相互拘束の内容が 拡大 して,結局,共同遂行を独立の行為類型と考える場合と変 らないのではないか という疑問が生 じよう。筆者は,もちろん相互拘束の内容を不必要に拡大するつも

りはない。ただ,従来のように競争行動を直接制限する行為に限定するべ きではな

く,もう少し抽象化 して,競争制限的な目的をもった共通の計画 ( もちろんその中

核には価格や数量制限の行為が含まれている)に参加する場合 も相互拘束と観念す

べ きである ( 経済法学会編 ・独占禁止法講座 Ⅲ‑カルテル 〔 上

(1981)13

頁 ( 実

方謙二) ) 。したがって,課徴金との関係では 「 当該商品 ・役務」の売上げがないた

め課徴金が課せられない事業者も出現 しうる。なお,この解釈は反 トラス ト法の共

謀概念にも影響を受けている。

(8)

152 47 約2・3i]

がで きるようになる。

い うまでまな く, カルテル規制の関心 は寡 占企業の同調的行動 に向け られて きた。そ して,価格 について一致 した行動 をとっていて も,協定や合意 を欠 く 場合 には,寡 占企業の関係 はいわゆる

consciousparallelism

であ り, カルテル

として規制することは不可能あるいは困難であるとい うのが従来の認識であっ た

13)0

しか し, この問題 はそれほ ど単純 ではない。それは寡 占市場 の形態やそ こで の企業行動が単純でないの と同様である

た とえば次の ような疑問が考 え られ よう

企業が同調的な価格行動 をとっているとして も,それが 自然発生 した と 考 えるのは非現実的であ り,最初 は企業間でなん らかの働 きかけがあったので はないか。 また,協調 関係が一旦で きあがると,特別な連絡がな くともそれが 長期 間持続す る と結論す るの も性急す ぎるのではないか。

consciousparallel ism

といって も,経済的 な与件が変化する寡 占市場では, ライバルが どの よう

な行動 をとるかについて各企業 は確実 には予測で きないのであって,相互の行 動 について透明性 を高めるためのなん らかの制度や慣行 に支え られているので はないか。 もし協調 をもた らす システムを各事業者が意識的に維持 している場 令, これをどの ように考 えるか。

以下では,カルテル規制 において避けることので きない寡 占市場 における事 業者の同調的行動 とカルテル規制の関係 についての学説 を検討す る。

2

.寡 占企業の同調的行動 をめ ぐる議論

(a)

基本的な立場の相違

この間題 に関する古典的な文献 として有名 なのが ターナー

(Turner,D.)

とポ ズナ

‑(Posner

, R. )のそれである。 わが国では根岸菅教授が この間題 を取 り上

13)1977

年改正で新たに設けられた「 価格の同調的引上げに対する理由報告

」(18

条の

2)

や 「 独占的状態の規制

」 (2

7

項,

8

条の

4)

は,このような認識にもとづいた

立法的対応であった。前者に関する産業組織論からの研究として,増田辰良 「 独占

禁止政策と産業組織一独占禁止法

18

条の

2

をめぐって

」経済研究 ( 北海道大学)

37 巻 2号82頁。

(9)

不当な取引制限の成立と立証 ( 下)

153

げている。

(i ) ターナーは

14)

,寡 占企業が ライバル企業の反応 を考慮 しなが ら,つ ま り彼 らも同様の行動 をとることを期待 して行動することは,それ以上のこと がない限 り,違法な共謀 として とらえるべ きでない との立場にたつ。 ターナー によれば,純然たることばの定義上は,寡占企業の相互依存関係 に合意の成立 を認めることも可能である。 しか し,彼 にとって, より重要なことは,寡占企 業の行動は,競争的 ( 完全競争的)な市場構造における合理的な売 り手 と全 く

同 じだ とい うことである

両者 とも,利潤 を極大化 し,あるいは損失がで きる 限 り少な くなるように, 自己の価格 ・生産量 を決定 しているといえるか らであ る。ただ し,寡占企業の場合 は,価格決定の際に,競争者の反応 とい う,競争 的な市場ではみ られない要素 を考慮 に入れるにす ぎない。 この ように,寡占企 業の価格設定行動 は,共謀 とみなす ことがで きると同時に,企業の合理的な行 動の結果 ともみることがで きるのである。 したがって,合意の意味論 は,寡 占 企業の相互依存的な行動 をシャーマ ン法

1

条の共謀 として規制す ることの妥当 性 を判断す る適切 な根拠 とはな りえない。

ターナーが寡 占的な相互依存 関係 を共謀 として禁止す ることに反対す るの は,主 として政策的な立場か らである

決定的な根拠は,寡占的な相互依存関 係 に対す る適切 な措置

(remedy)

がない とい うことである。 自己の価格決定 の際にライバル企業の反応 を考慮することを禁止するのは,現実に遵守不可能 なことが らを命ず ることを意味する。排除措置が効果的であるためには,価格 を 限 界 費 用 に等 し くな る まで 引 下 げ る よ う命 ず る 内 容 の 差 止 め 命 令

(injunction)

を出す必要があるが,それは裁判所 を公益事業規制委貞会 に代 えることになる

根本 の原因が市場構造 にあるとして も, シャーマ ン法

1

条の 適用 において構造的な措置をとることは困難である。 シャーマ ン法

1

条は行為

14)Turner,TheDefinitionofAgreementUndertheShermanAct:ConsciousPara 1lelism andRefusalstoDeal,75H.

L

R.655(1962).

なお,ターナー以下のアメ

リカの学説 については,すでに田村次朗 「 同調的並行行為 と反 トラス ト法 (

‑)

法学研究 ( 慶応義塾大学)6

0

8

1

頁による比較検討がなされている

(19

頁)0

(10)

154 47 2・3

規制が中心 であって,構造の変革のための規定ではないか らである。要するに, 寡 占企業 による非競争的な価格行動 は,シャーマ ン法 1 条の適用 に関 しては, 特殊 な問題であって,新 たな理論やアプローチで もとられない限 り対応するこ

とは困難である

15)

0

以上のような見解 は,わが国にも共通す るこの間題 に関す る通説であると思 われる

( i i) ポズナ

‑ 16)

は,

1969

年 に発表 した論文で ターナー に代表 され る通説 的見解 を批判 した。彼 は,相互依存 関係 に起 因す る純粋 の

consciousparallel ism

で も, シャーマ ン法

1

条 によって規制が可能であ り,条文の解釈や 目的に

なん ら反す るものでな く,また立証 と排除措置の問題 も克服可能であるとい う

ポズナ‑の出発点は,相互依存 関係 とい う公式だけでは,寡 占企業 による非競 争的な価格設定 ( 競争が行 なわれた場合 に形成 されるであろう価格 を上 回る価 格設定) を説明す ることはで きない とい うことにある

多数の売 り手によって 構成 される競争的な市場 の場合 と同 じように,寡 占市場 において も,企業 には 非競争的な価格 を成立 させ維持するためのコス ト ( ポズナ‑はこれを 「 共謀の コス ト」 とよぶ)がかか るのであ り,現実の寡占市場では,ほ とん どの場合, 寡 占企業の 自発的な働 きかけがなければ,非競争的な価格行動は持続 しない。

ポズナ一にとって も,共謀の概念論争はあ ま り意味がない。寡 占企業の同調 的な価格設定を,一種の暗黙の共謀 とみることはシャーマ ン法 1条の解釈 とし て可能である。む しろ立証が最大の問題であ り, この点に関 しては,企業の人 為的な行動 を手がか りに共謀 を立証 しようとす る伝統的な手法 ( 彼 はこれを「 お 巡 りと泥棒 アプローチ

(copsandrobbersapproach)

と呼ぶ) を批判 し,い

15)

ターナーの見解は,競争者の間に

consciousparallelism

以上のものがない場合には 共謀として親制すべきではないとするものであって,裁判所が従来採用 してきた

consciousparallelismに付加的要素を加味して合意を認定することを否定している

わけではない。また,彼の結論は,不確実性を減少させることによって,不完全な 寡占企業の行動パターンを完全なそれに変えることを企図した合意や了解には及ば

ないとされている

(Id.at482‑483)

0

16)Posner,01igopolyandtheAntitrustLaws:ASuggestedApproach,21STAN.

L

R.1574 (1969).

(11)

不当な取t 川 別 根の

成:

: / 二 と

T;(.;:ijl:.(下) 155

わゆる経済分析 を と りいれた証拠 ( 経済的証拠 :

economicevidence)

による 立証 を提唱す る。 その ような共謀の存在 を示唆す る証拠 として,( ∋組織 的,持 続的 な価格差別の存在,( 参長期 にわたる過剰生産能力,( 3 )市場価格 の変更の回 数が少 ない こと,④長期 の超過利潤,( 9プライス リーダー シップの存在,( む長 期 にわたる市場 占拠率 の固定,⑦標準化 されていない商品 についての同一の入 礼,( 参実施 のかな り以前 の段 階での値上げの公表,あるいは産業全体が維持す べ き適正 な価格 についての見解 の公表等 を挙 げている

17)。

違法行為 に対す る措置の問題 に関 しては,ポズナ‑は,暗黙の共謀 に関す る ルールを担保す る措置 として,む しろ違反行為者 に利潤や損失 を上 回る金銭 の 賦課 を命 じるサ ンクシ ョン ( 罰金,制裁金) の重要性 を指摘す る

シャーマ ン 法 1 条は,企業が非競争 的な価格 を形成 し維持す るための コス トを増大 させ る しくみの一つ として位置づ け られる

暗黙の共謀 に対 しては,明白な協定 よ り もその探知が困難であるか ら, よ り厳格 に処罰すべ きであ る

そ してポズナ‑

は,違反の反復 を伝統的な手段 で防止す ることが困難 な場合 には,構造的な措 置 ( 企業分割) を行 ない得 ることを認 めてい る。

ポズナ‑は, ターナーが碇起 した排 除措置の遵守可能性 の問題,す なわち現 実 には実行す ることがで きない非合理的な行動 を企業 に強制す ることにな らな いか とい う問題 に対 しては次の ように述べ ている。寡 占企業が共謀 しない こと を決めるのは全 く合理的である

それは投資者の利潤が,寡 占企業が他 の活動 で得 ることがで きる もの とほぼ同 じになるまで生産 を拡大す る決定 にはかな ら ず, これは競争的市場 において売 り手が 日常的に行 なっていることと同 じであ

る。 もちろん,寡 占企業 は,法的なペ ナルテ ィーがない場合で も,生産制限 を

17)

ポズナ一によれば,認められる証拠は無制限であってほならないし,操作不可能で あってもならない。経済的な知識や法的な事実発見のプロセスには限界があるとい う前提のもとで,上記のような証拠から暗黙の共謀を推測することが可能であるか どうかが問題 となる。 しかし,このような証拠はシャーマン法の手続において全 く 異質であるというわけではなく,裁判所の記録は,経済的証拠を扱うその能力に疑 いを抱かせるものではないという。また,カルテルと寡占の理論の分野での理論的, 実証的研究の努力が一層なされるようになれば,上記の証拠の能力 も高まるであろ

うとされる

(Id.at1582‑1583)

(12)

1 5 6 商 学 討 究 第47巻 第 2・3 号

しない決定 をする十分 な理由がある。暗黙の共謀 を罰することは,非競争的な 価格行動 を放棄す る理由をさらに追加することになるであろう

このことは, 価格 と限界費用が同 じであることが シャーマ ン法

1

条が遵守 されるための基準 であるとい う意味ではない。 ここで主張 しているのは,競争企業による意図的 な生産制限は,それに十分なコス トがかかることになれば,合理的な経済主体 であれば回避で きる行動だ とい うことである。

( i i i )わが国では,根岸菅教授が,

1973

年 に発表 した論文

18)

のなかで この 間題 を自覚的に論 じている

基本的にはポズナ‑ と同様 に通説的な見解 を批判 している。教授の批判 は,まず c o ns c i o uspa r a l l e l i s m と共同行為 を区別する従 来の考え方に向け られる

す なわち,共同行為は,複数の事業者がそれぞれ相 互に, 最低限「 他の事業者の行動 を予測 ・認識 し,これ と歩調 をそろえる意思 ( 意 思の連絡

)

を共通 して もっ ことによ り同一の行動 に出る場合 に成立す る。そ

うであるとすれば,それはまさに寡 占企業行動の典型例である c o ns c i o uspa ‑ r a l l e l i s m にもとづ くプライス ・リーダー シップその ものであ り,意思の連絡 の存在 によって不当な取引制限 と c o ns c i o uspa r a l l e l i s m を区別 してきた多数説 の前撞その ものが崩壊す る。 なぜな ら 「 多数説が依拠 してきた不 当な取引制限 の共同行為 に関す る従来の審 ・判決 に従 う ( 意思の連絡の実体要件 とそれに対 する立証 とを明確 に区別 して)ならば,意識的並行行為 にもとづ くプライス ・

リーダーシップそれ自体で,不当な取引制限の構成要件 に該当 しうることを示 しているか らである

」。

しか し, 教授 によれば ,c o ns c i o uspa r a l l e l i s m にもとづ くプライス ・リーダー シップを,不当な取引制限の構成要件 に該当 し違法であると判断すべ きか否か の問題は,単なる意思の連絡 とは何か とい う概念論争のみによって解決するべ きではな く ( かつ解決で きない),独 占禁止法の公正かつ 自由な競争の促進 と い う立法 目的に適合するか,あるいは立法 目的か らみて合理的かつ効果的であ るか とい う政策的判断によって解決 されるべ きものである。そ して教授 はこの

18)

根岸前掲論文 ( 注

6)

(13)

不当な取引制限の成立 と立証 ( 下)

157

問題に関する反対論者,批判論者 に対 しては次のような反論 を展開する。

‑寡 占企業の相互依存的行動がすべて c o ns c i ouspa r a l l e l i s m として成立する とい う考え方は経済実体 に反す る。寡 占市場構造 において,協調的なゲー ムによる共同利潤の最大化行動,すなわち c o ns c i o uspa r a l l e l i s m にもとづ くプライス ・リーダーシップが成立す ることは,理論的にも,現実にもむ しろまれである

‑c o ns c i o uspa r a l l e l i s m にもとづ くプライス ・リーダーシップは,寡占的市 場構造それ 自体か ら形成 されるとしても,そこには寡占企業が相互に同一 価格の設定 を行 なうことが経済的に望 ましい とす る自らの自由な判断が介 在 しているのが通常でないか と思われる

また,た とえそれが企業にとっ て経済的に ( 利潤追及 を前提 とするか ぎり)回避不可能であって も,その 回避不可能性 は,刑事責任や民事責任の免除理由にはな りうるが,行政 目 的を追及す る排除措置 を命ず る場合 には免除理由 とはな らない。

したがって,根岸教授 によれば,独禁法違反違反行為 に対 していかなる排除 措置を命ずることがで きるか とい うことが最大の問題 となる。 この点について 教授は次のように述べ る。

‑c o ns c i o uspa r a l l e l i s m にもとづ くプライス ・リーダーシップは,寡占的市 場構造それ 自体か ら形成 されるものであるとして も,企業間の意思の連絡 を伴 う価格設定行動であることには変 りがな く,それを違法 としても,行 為規制主義 を採用する独 占禁止法の立場 と矛盾 しない し,そ もそ も同法が 行為規制 しか しえない という意味での行為規制主義 をとっていることは決

して自明のことではない。

一排 除措置の実効性 に関 しては, c o ns c i o uspa r a l l e l i s m に もとづ くプライ ス ・リーダーシップは,寡 占的市場構造その ものを根本的な原因 として形 成 されるのであるか ら,寡占的市場構造の解体 を典型 とす る構造的な規制 が可能であれば,それが最 も効果的かつ合理的な排除措置 となる

19)

0

19)

根岸教授が構造的措置の可能性を根拠づける理由は次のようなものである ( 前掲論

63‑64

頁) 0

(14)

158 47 2・3

( b) 区別す る基準

積 極 的 な競 争 は ライバ ル企 業 か らの報復 を招 き泥沼 的 な競 争 に陥 る危 険性 が あ る こ とか ら,寡 占企業 間 に,相 互 に他 を出 し抜 か ない こ とが合 理 的 だ とい う 共存 共 栄 の関係 が成 立す る とい う単純 な理論 に従 うか ぎ り, これ に カル テル規 制 の側 か ら接 近 しよ うとす る と,政 策 的 なデ イ レンマ に突 きあ た る

上 記 の各 学説 が 共通 して指摘 す る よ うに,合 意 の概 念 をい くら検 討 して も明確 な結 論 は 出 ないか らで あ る。 あ とは,立証 の問題 に委 ね るか ,独 禁法 の趣 旨 ・目的 に立 ち返 った政 策 的 な判 断が必 要 にな る

他 方 , ポズ ナ‑や根 岸教 授 が い うよ うに寡 占企 業 の 同調 的 な行動 は,単 な る 相 互依 存 関係 だ けで は説 明 で きない こ と もあ ろ う。現 実 の市 場 で は規樵 , 費用 条件 ,製 品 の品質等 の点 で事業者 には差 が存 在 す る し,外 的 な市場 環境 も変化 す るか らで あ る。 そ こで次 に,寡 占市場 の相 互依存 関係 だ けが原 因 で非競 争 的 なパ フ ォーマ ンス を発 生 させ る こ とは まれで あ って,実 際 に寡 占企 業 が協 調 関

( ∋従来は,公正かつ 自由な競争の促進 という立法 目的を実現す るには,企業の反 競争的な行為 を規制すれば必要にして十分であったというにす ぎず,寡占的市場構 造が高度化 し,かつ長期的に固定化することによって,市場構造そのものを違法 と

してそれに規制を加えるのでなければ,法 目的を実現で きない場合にまで,構造的 規制を許 さないものではない。

②反競争的な市場構造 という経済状態その ものを違法 としている場合が,現行独 占禁止法において も存在 している。すなわち株式保有や役員兼任の場合は,行為の 時点では適法であったとして も,その後 自らのコン トロールすることの不可能な条 件の変化によって反競争的な市場構造が形成 されることとなる場合 も違法 とされ, 株式の処分や役員兼任の解除 とい う構造的な排除措置が とられることになってお

り,この場合には行為ではな く状態その ものが違法 とされている。

この根岸論文が書かれたのは1

973

年であった。周知のように,その後1

977

年の独 禁法改正 により,高度寡占に対する措置 として 「 独 占的状態の規制

」 (8

条の

4)

が導入 された。現在で も①のような理由は成 り立つのであろうか。また,株式保有, 役員兼任の規制では,排除措置の対象は,反競争的な市場構造 ( 状態)をもたらし た行為 に向けられているのであって,市場構造その ものに規制 を加えているといえ るのか どうか疑問である。

なお,共同遂行 を独立の行為類型 とみる正田教授によると,「 共同の認識」 にも

とづ く事業活動が違法 となるか ら,排除措置 もそのような事業活動 を行 うこと ( た

とえば一致 した価格 を設定すること)を禁止する ( た とえば価格の原状回復命令)

ことが可能 となる ( 全訂独占禁止法

Ⅰ (1980)240,544

頁) 0

(15)

不当な取引制限の成立 と立証 ( 下)

159

係 を維持す るためには,それ を目的 としたなん らかの方策が企業の側 で行 なわ れ ることが必要 である との前提 に立 ち,寡 占企業 の同調的行動 を規制す る基準 を示 す アメ リカのブ レックマ ン

(Blechman,M.D.)

とヘ イ

(Ha

y , G. ) の学説 を紹 介す る

20)0

(i

) ブ レックマ ン

21)

は,違 法 な合 意 ・協 定 と

consciousparallelism

を区 別す ることは意味があ り,可能であ るとして,合意の形成す る要素 とその立証 要件 を検討す る。彼 の結論 は,現実の寡 占市場 における非競争的な価格行動が, 単 なる並行行為 や偶然 の結果ではな く,なん らかの形での連絡交渉 を通 じて明 示又 は暗黙の合意 を達成す るための周到 な努力 に裏付 け られた ものである ‑こ の ことは,経験 的,実証的 も確認 される ‑とい う事実 に基づいてい る。

まず,彼 は,合意の特徴 として次 の二つ を挙 げる

一基本 的 な特徴 として,当事者 の心理 のなか に約束

(commitment)

の意故 があること

一関連 す る特 徴 と して, 当事 者 が 相 互 の行 動 につ い て な ん らか の保 証

(assurance)

を与 えていること

合意 とい うこ とばは, 基本的になん らかの行動計画の存在 を前提 に してお り, さ らに計画の存在 は当事者の問での将来の行動の保証 を意味 してい る。 この二 つの特徴 が,合意 を単 なる

cousciousparallelism

か ら区別す る操作可能 な基準 とな りうる とい う ( 以下, これ を合意の 「 要素」 とい う)。合意 を認定す るた めにはこの二つ の合意要素 を証明す ることになるが,ブ レックマ ンは, ここで は従来の判例 で採用 されて きた

plusfactor

だけで な く関連す るすべ ての証拠 の総合 的考慮が必要であるとす る

第一の要素である約束の意識 は,当事者 の 自制 あるいは一般 に合意 を連想 さ

20)

このような試みをするその他の論文 として,Not

e,ConsciousParallelism and ShermanAct:AnAnalysisandProposal,30VANP.

R

.L.1227 (1977),Note,

ConsciousParallelism andPriceFixing:DefiningtheBoundary,52

U

.CH

I

.

LR

. 508(1985).

21)Blechman,ConsciousParallelism,SignallingandFacilitatingDevices:TheProb‑

1em ofTacitCollusonundertheAntitrustLaws,24N.Y.LScH.

L

R.881(1979).

(16)

160

商 学 討 究 第

47

巻 第

2・3

せ る義務の意識 を意味 している

これは事業者の具体的な言動のなかか ら推認 によって証明されなければな らない。プ レックマ ンは,その例 として, 事業者が, 多 くの利潤が期待 で きる特定の事業分野 に進 出することを自己抑制 している場 令,わずかな値引 きで も拒否す る場合,割 り引 きを した ときに自己に制裁 を加 える場合, ライバ ルに自己の営業 に関す る詳細 な情報 を提供す る場合 な どを挙 げている。

第二の合意要素 は,保証 を与 え合 う具体的な行為 ( 直接 の伝達,価格 を維持 することあるいは値引を しない ことを公表す る) によって直接証明 される場合 と,その他の諸状況 を考慮す ることによって保証行為 と評価 される場合がある。

ブ レックマ ンは, この理論 を価格の事前公表行為 と協調容易化行為 に応用 し ている。 ここでは,前者 に関す る見解 を紹介す る ( 後者 に関す る問題は後述。

とくに

(C)

参照)。彼 によれば,価格の公表行為 はすべて,顧客だけでな く競争 者 に対す るコミュニケー シ ョンとして作用す る

この間題 を解 く鍵 は,公表 さ れている価格情報の内容である。現行 の価格 リス トを配付す る行為 自体 は合意 の認定には結びつかないか もしれないが,将来の価格引 き上げの事前公表,値 引 きを止めることの公表 な どは, 事情 によっては約束又 は保証 と解釈 され うる

さらに,経営上顧客 に伝達 しなければな らない情報のみの公表 なのか,明 らか にそれを超 えて,境争者 と意思疎通 をす るために行 われた ものかが判断 されな ければな らない。要す るに問題 は,当事者が公表行為 を 「シグナル」,す なわ ち将来の価格行動 の保証又 は約束 である と意図 ・理解 しているか どうかであ る。 これは,事業者の意識 に関す る直接証拠お よび状況証拠 に照 して評価 され るべ きである

(i i)へ イ

22)

は,寡 占企業が非競争的 な価格 を達成す るため には,果 さな ければな らない二つの課題

(oligopolytask)

があるとい う

すなわち,

一妥当な価格 と生産量 の配分 に関す る了解又 は総意 (

consensus)

の形成,

‑この鎗 意 を遵 守 す る こ とにつ い ての相 互 の保 証

(mutual assuarance)

,

22)Hay,01igopoly,SharedMonopoly,andAntitrustLaw,67CoRNELLLR.439 (1982).

(17)

不 当な取引制限の成立 と立証 ( 下)

161

の維持である。両者 とも寡 占企業間での一定の心理状態 を意味 している。ヘイ のアプローチの特徴 は,ブレックマ ンと異な り,この二つの心理状態 ( 彼 はこ れを 「 代替的寡占モデル」 とよぶ) を合意の構成要素 とするのではな く,む し ろシャーマ ン法

1

条の違法性要件 と位置付 けることにある。彼 もまた,合意の 意味論 によって寡占企業の同調的行動に反 トラス ト法か ら接近することの限界

を指摘する

この ような課題の遂行の成否は,種 々の要因 一産業構造,商品の性質,販売 の性質 一に規定 されている

たとえば,産業構造的な要因では,、 集中度あるい は規模 ・コス トの差の程度が総意の達成や稔意を遵守する確信性 に影響 を及ぼ す。商品の性質に関 しては,製品の規格 ・種類の多様性の程度あるいは製品差 別化の程度が強いほど稔意の形成は困難 になる。逆に製品差別化の強い商品の 場合 には,価格引下げを行 なうインセンティブが低 くなる。 また固有の価格構 造 をもつ注文品や技術革新 にさらされやすい商品ほど稔意の形成 ・遵守が困難 である.その他,全 コス トに占める固定費用の都合が高い商品ほど,商品の価 格構造に差がな くな り総意の形成が容易 になる。販売の性質では,取引の継続 性,一回の取引量の多 さ ( l umpi ne s s ) ,取引の内容の秘匿度等が課題の達成に 影響 を与 える。継続的でな く一回の取引量が大 きい取引の場合 には,売 り手に 値引 きのインセ ンティブが働 き,またそれに対する他の売 り手の報復 も有効で ない。 また, ライバルが買い手に捷示 している実際の価格 を知ることがで きな い場合 には,秘密の値引が行 なわれやす くなる。 これ らのことは同様 に非競争 的な価格の形成,維持の妨げにな りうる。

寡 占企業 は,課題 の達成 を困難 にす る以上の ような要因を克服す るために 種 々の方法 を用 いている

ヘ イは, これを正式 の共謀 ( f o r ma lc o l l us i o n) と 間接 的 な共 謀 ( i ndi r e c tc o l l us i n) とに分 け る。 前 者 は直 接 的 な連 絡 交 渉

( c o mmuni c a t i o n) によって価格等の競争 を回避する共謀であ り,当事者間の

合意に支 えられている。後者 は,直接的な連絡交渉はないが,協調 を容易 にす

る行為 ( f a c i l i t a t i ngpr a c t i c e ) を通 じて非競争的な結果が達成 される琴合 であ

る。ヘイによれば, これは,正式の共謀ではないが,同様 に,明 らかに回避す

(18)

162 47 2・3

ることので きる特定の行為 を含 んいる点 において正式の共謀 に類似 してお り, 純粋 の寡 占モデルで想定 されている行動 とは異 なっている。そ して彼 は,合意 を意思の合致

(meetingofminds)

と理解す るな らば,間接 的な共謀 において も合意の存在 を認めることがで きる とす る

そ して,寡 占的な市場 において, 企業が非競争的 な価格 を具体 的に実現す るためには,上記の ような二つの心理 状態 を形成す ることが肝要 なのであって,合意 はその具体 的形態の一つ にす ぎ

ない とい うのであ る。

したが って, シャーマ ン法 1条が成立す るためには,総意の形成 とその遵守 についての相互の保証が要件 であ り,立証 もこの点 をめ ぐって行 われ ることに なる

実際 に最 も問題 となるケース は,以下の ( C) で も述べ る ような,協調 を 容易 にす る慣行 ( 基準地 による配達価格制, 価格 の事前公表,最恵待遇条項 など)

を並行 して採用 しているが,明確 な合意が存在 しない場合 である

この場合 , へイのアプローチでは,合意 ( 明示であれ暗黙であれ) の存在 を問 う一伝統 的 なアプローチ ーことは必要 はな く,上記の二つの要件 を証明す ることによって 並行 的な採用行為 その ものを攻撃す ることが可能 になる。

(C)

アメ リカにおける協調容易化行為の規制

協調容易化行為 の規制 については,すでに言及 した ところであるが, ここで は,アメ リカ司法省反 トラス ト部が

1970

年代 に共有独 占

(sharedmonopoly)23)

を攻撃す る手段 として打 ち出 した協調容易化行為

(facilitatingdevices)の理

論 を とりあげる

。1978

5

月に公表 された司法省反 トラス ト部の覚書

24)

に従 っ

23)

へイによれば,「 共有独占

(sharedmonopoly)

」という用語はいくつかの異なった 文脈で用いられている。この言葉は,ケイゼンとターナーが

,1959

年に彼らの有名 な著書において (

C.Kaysen&D

.

Turner,ANTITRUSTPoLICY,1959at111‑118)

, 行為規制の限界を指摘 し,独占利潤を生みだす寡占市場に対する方策として純粋的 構造措置を提案したことを契機に生まれた。次に共有独占が議論されたのは,寡占 産業による新規参入阻止行動に対 しシャーマン法

2

条を適用する場面においてであ る

。FTC

はシリアル産業に対する攻撃の根拠 として共有独占の理論を用いた ( たと えば,菊地元一 「 反 トラス ト法における共有独占の法理」季刊青山法学論集

23

1

23

頁参照) 。そして,今度はシャーマン法

1

条の側面から寡占企業の協調容易化 行為を規制する際の標語として用いられたのである

(Id.at472note125)

24)U.S.DepartmentofJustice,Memorandum‑ASection1ApproachtoShared MonopolyProsecution:FacilitationDevices,May26,1978.

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