情報サー ビス産業の問題点
一北海道 の事例 ‑
近 勝 彦
目 次 1 はじめに
2 情報サー ビス産業を取 り巻 く環境 とその変化 2‑1 情報サー ビス産業の概要
2‑ 2 市場構造の変容
3 情報サー ビス産業の実態 とその課題 4 おわ りに
1 は じめに
日本の産業社会 は絶えざる変革を繰 り返 し規模の拡大をはか って きた。そ う い う意味では 日本 は,景気循環 はあ って も,戦後50年近 く一貫 して右肩上が り の成長を志向 し,経済規模 としては大むね実現 しえた と評価 し得 る。 経済規模 では世界のGNPの15%近 くを占め,一人 当た りのGNPで も3万 ドルにまで 達 している。 目標 と していた米国を既 に抜 いているのであ り,む しろプ レゼ ン
スの大 きさが様 々な国際的経済摩擦 を生んでいるのである。
しか し, 日本の経済 ・社会 システムに問題がない とは決 していえない状況で あることは,毎 日の新聞を一見す るだけで も容易に理解で きよう.
た とえば,欧米 に比較 して生活関連の社会資本が十分でないことは論をまた ない。又,住環境及 び都市政策 (と呼べ るものがそ もそ もあったのかあや しい が)の失敗 による過密化が もた らす経済の外部不経済効果 は一段 と高 まってい ると言 わざ るを得 ない 1)。それ は経済 のみな らず間接 的効果 と して,少子化
〔205〕
現象 という社会問題を引き起 こしているのである。勿論,少子化の原因は女性 の高学歴化,晩婚化,職業意識の変化 もあるが,子供を産み育てる社会環境が 不十分であることは,多 くの識者の指摘す るところである2) 0
労働時間 1つを とって も日本 は,欧米先進国 と比較 して長時間労働を強い ら れてい る3)。 近時,いわゆ るバ ブルの崩壊 にともな う不況の影響及 び諸外国 か らの要請 もあ り,労働時間の短縮の方向に向か っているが現実にはまだ十分 ではない。
又,名 目所得では大 きくて も物価水準が高いので,実質所得 (購売所得) は 大 き くな く,それが国民の生活の豊か さを感 じえない要因 とな って いる4)0
最近の円高によって,安価な輸入品が増加 し国内物価が下が るはずであるにも かかわ らず,下方硬直性を示 している5)。その理 由 として,国内の流通 シス テムの問題や行政規制があげ られている6)0
そ こで,90年 7月 に策定 された90年代 の ビジ ョン7)の中で, 4つの視点が 示 されたのである。 1つが,国民生活の重視であ り,2つ 目が経済効率か ら経 済 ・社会効率重視 とい うこと,3つ 目が,国際的調和を 目指 した産業活動の確 立であ り,4つ 目が,長期的発展基盤の整備である。 これ らは先程言 った社会 1)人口が集中することによる外部経済 (externaleconomies)も当然に発生する。
特に情報交流 (交換)に関しては大きい。 しか し,外部不経済 (externaldisec‑
onomies)も増大する。過密問題としては交通渋滞 ・遠距離通勤,住宅問題,騒 音等の公害,一方過疎問題としては若年層の流出,人口減少,地場産業の衰退,医 療 ・福祉問題等である。
2)若林敬子 「歯止めがかからない出生率低下」『ェコノミス ト』1993年7月20日参照。
3)早見均 「日本人の労働時間は長いのか」『経済セ ミナー』日本評論社,1994年7月 1日,参照。
4)小菅伸彦 「「上昇率」は低いが 「水準」は高い日本の物価」『ェコノミス ト』,1993 年11月30日,参照。
5)勿論,一部の商品はPB(プライベー トブランド)セービング商品として低下 しは じめた。
6)江藤勝 「日本の規制緩和 :何が問題か」 『経済セ ミナー』日本評論社,1994年7 月1日,参照。
7)その後,同様なものとして,「生活大国」の実現を目ざした新経済五ヶ年計画 (92 年〜96年度)が発表された。
情報サービス産業の問題点一北海道の事例‑ 207
・経済問題の構造的変革を目指 しているのである。 1つ 目の国民生活の重視 は,産業優先主義の変更 (修正)である。画一的商品の大量生産を可能 にする 大企業中心の生産様式を改め,国民のニーズを満たす ことに主眼をおいた経済
システムを 目指す ことを意味 している。 これを実現する中核的技術がまさに情 報技術である。情報技術は様 々なユーザの細かなニーズに応えてい く技術であ るか らである8)。 又,情報化 は既存の産業の生産性 を高めると同時に,産業 間の垣根を越えて各産業を融業化 (業際化)す る機能 も果 た してい く9) 。 そ れによって,新 しいサービス (商品)や市場が創出されてい くのである。 2つ 目については,生産効率一辺倒か ら,環境や地域 にやさしい産業社会‑の移行 を冒ざ している。3つ 目は,一国の経済成長か ら国際的協調を重視 した通商政 策を目指 している。 4つ 目は,80年代の財政再建によって生活関連の社会資本 整備が遅れたことの反省 と,国際的協調の視点に立 って, 日米構造協議で10年 間で430兆円の公共投資が決定 された。その後,新社会資本の名の もとに,悼 報通信関連の投資 も活発化 している10)0
以上の4項 目とも情報通信分野に関連性があるといえよう。 しか もこの分野 は中長期的にみた場合に, 日本経済における戦略的産業であり,数す くない成 長産業であ り,新規雇用創 出の場で もある。
そこで本論稿では,情報産業の中で も特 に動向が注 目されている情報サービ ス産業の経営環境 とその課題を考えたものである。
2 情報 サー ビス産業 を取 り巻 く環境 とその変化 2‑ 1情報サー ビス産業の概要
情報サ‑ ビス産業 は,他の主要な産業 と比較 してこの10年間,大 きな伸びを 示 していた。それを示 しているのが下図である。
8)経済企画庁編 『国民生活自書』平成2年度版,P153以下,参照。
9)宮沢健一 『業際化と情報化』有斐閣,P6以下,参照。
10) 「新たなる社会基盤となるマルチメディア綱の本質」『日経コンピュータ』,1994年 6月13日,参照。
350 300 250 200 150 100 50 0
1987 1988 1989 1990 1991 1992(年) 1987年を100とした場合の相対値
図 ‑1 〔情報サー ビス産業 白書1994,P37よ り〕
GDPは1987年か ら1992年 の間に,1.31倍であったが,コンピュータ産業 (電 子計算機及 び関連機器) は1.23倍 しか成長 していないのである。 これ はパ ソ
コン市場が順調 に成長 しているのに対 して,大型機 の不振が響 いたためであ る11)。 このよ うなダウンサイ ジング化が生 じた理 由は,パ ソコンを含めた小 型機の性能が格段に向上 した ことと,それをネ ッ トワーク環境で使用で きる技 術が発展 ・普及 したためである。又,需要者側において もコス トが低 く,部門
ごとのニーズにあったシステムを構築で きるなどのメ リッ トもある12)。
これに対 しで 情報サー ビス産業 は,同期 に3.1倍 も成長 したのである. 1992 年の時点で,情報サー ビス産業の市場が‑‑ ドウェアの市場を上 まわっている のである13)0
‑‑ ドウェアとソフ トウェアを合計 した市場で は全市場の うち2.7%を 占め ll) 『日経コンピュータ』,P52,1994年4月4日,参照。
12) 「解体そして再生の道探る 情報システム部門」『日経コンピュータ』,P87以下, 1994年6月13日,参照。
13) 『日経コンピュータ』,P48,1994年4月4日,参照。
情報サー ビス産業 の問題点 ‑北海道の事例 ‑ 209 るまでに成長 している (1992年時点)。 これは自動車製造業の2.69%と同程度 であり,その成長性か らす ると日本の リーディングイ ンダス トリーの一翼を担
うのは間違いない。
しか し,1991年を境 に Lで 情報サー ビス産業の市場 はマイナスに転 じた。
とくに,1993年においては前年比‑12%も減少 したのである14)0
これはいわゆるバブルの崩壊に伴 う不況の影響が大 きな原因である。特に金 融機関の業績不振 による情報投資の抑制が響いている15)。
しか し,構造的要因による影響 は兄のがせないのである。 これについては後 述するが, この業種の不振 は急成長を遂げたことか らくる反動 (財務体質の脆 弱性や従業員数 の急拡大等) もあ り,被害 は甚大である。1992年10月 には雇 用調整助成金制度の対象業種に指定 されたこともそれを裏付けている。
次に情報サービス産業の従業員数の伸びをみてみよう。 それを示 しているの が,以下の図である。
全産業ではこの 8年間 (1985年か ら1992年)で,1.11倍 しか雇用数 は増大 していないに もかかわ らず,サー ビス産業 は1.31倍成長 しているのである。
これに対 して,情報サー ビス産業は3.01倍 も成長 しているのであるO
しか し, これ は全産業比でみると0.76%に しかす ぎないのである。規模的 にはいまだ小 さいが,製造部門においてはFAを中心 として,事務管理部門 においてはOA化が一段 と進んでいる。全産業の情幸糾ヒは労働者の情報化を 意味するのであるか ら,広い意味での情報処理者は拡大 しているといえよう16)0
次に従業者の労働条件か らみてみよう。 一般に情報サービス産業 (特にソフ トウェア業)の労働環境 は厳 しいと考え られがちである (一時期,35才定年説 がまことしやかに語 られていたの もその意識の表われ と考え られ る)。
そこでまず,‑人当た りの月間平均労働時間をみてみよう. それを示 したの
14)同上,P61,参照。
15)金融不況 もさることなが ら,都市銀行を中心に進め られた第3次オ ンライ ン開発の 終了 も需要を滅 した大 きな要因である。
16)情報化人材 も多様性を持つようになる。情報サー ビス産業協会編 『情報サービス産 業 白書1994』 コンピュータエージ社,P200,参照。
が図‑3であ る。
350 300 250 200 150 100 50
0
1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992(年) 1985年を100とした場合の相対値
図‑2 〔情報 サ ー ビス産業 白書1994,P38より〕
1983 198 4 198 5 1986 1987 1988 1989 1990 199 1 1992 (年 )
図 ‑3 〔情報 サー ビス産業 白書1994,P38より〕
情報サービス産業の問題点一北海道の事例‑ 211 情報サ‑ビス産業の一人当た りの月間平均労働時間は自動車製造業 と比較す れば,はるかに短か く,全産業平均 と比較 して もす こし多い程度であ り,決 し て一般に考え られている程,長時間労働ではない。ただ,所定外労働時間は決
して短か くはない。 これは職務の性格上 しかたのない面 もあるが,各種の開発 支援ツールを導入することによって生産性を高めてい くはかないであろう17)。
次に,一人当た りの月額平均現金給与支給額をみてみよう。 それを示 したの が以下の図である。
(円) 430,000 410,000 390,000 370,000
350,000
330,000
310,000
290,000
1983 1984 1985 1986 198 7 1988 1989 1990 19911992 (年 )
図‑4 〔情報サー ビス産業白書,P39よ り〕
情報サー ビス産業の給与水準 は図の通 り,全産業の中で も高い方に属 してい る。一般に,専門職の割には給与水準が高 くないといわれているが,実態は高 水準を示 している。ただ,情報サービス産業は比較的新 しい産業であるので, 福利厚生サービスを含めた所得額では他の産業 と比べてみお とりするケースも 17)ただ生産性 を高 め るには開発 ツールのみで はない.「ソフ ト生産性 は3倍 にな る」
『日経コンピュータ』,P66,1994年6月27日,参照。
考え られ る。
次 に情報サー ビス産業のサー ビス別売上高の推移をみてみよ う。 それを示 し ているのが下図である。
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0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100(%)
□ 受注 ソフ トウェア開発 ■ データベース ・サービス 囲 ソフ トウェア ・プロダク ト開発 国 システム等管理運営受託 日 情報処理サービス 国 キーパ ンチ等
田 その他
図 ‑5 〔情報サー ビス産業 白書,P40よ り〕
それによると,受注 ソフ トウェア開発が全体 の50%を超えている。将来大 き く期待 されてい るソフ トウェアプ ロダ ク ト開発 は, この5年 間 (1988年か ら 1992年)で売上規模で は2.73倍 に成長 して い るが,全体 で は一割 に もみたな い額であ る (660,452百万円,1992年度)。
それに対 しで 情報処理 サ‑ ビスは この5年 間に1.73倍 しか成長 していない。
全体 の シェア も19% (1988年)か ら15% (1192年)へ と減 ら してい るのであ る。
データベース産業 も産業全体の高知識化,高情幸酎ヒを支え る大 きな柱 (戦略 的経営資源ない しはツール)であるが,成長 こそ この 5年間で 2倍 に達 してい るが,全体の シェア と して は3%に しかす ぎない。 しか もその DB自体 は大 半 は米国製の ものであ り, このサー ビス分野の技術的 ・情報的蓄積が またれて
情報 サ ー ビス産業 の問題 点 一北海道 の事例 ‑ 213 いる18) 0
システム管理 はこの5年間で2.15倍であ り,全体の シェアの5%である。
一方で は, システム ・イ ンテグ レーシ ョン (SI)や,アウ トソーシングが進 展す ると同時に,他方,ダウンサイジング化やエ ン ドユーザ ・コンピューティ ング (EUC)も急速 に定着 しつつあ り, この分野が どの ぐらい延びるか不分 明であるといえよう。
全体的傾向としては,単純なデータ処理よ りもソフ トウェア開発が シェアを 伸ばすように思われ るが,その開発の対象 ・内容 (分野)が大 きく変わる節 目
にきているように思われる。
それ との関連で今度 は,契約先別売上構成の推移をみてみよう。 それを示 し たのが下図である。
300.00 250.00 200.00 150.00 100.00 50.00
( 公務
十一卸売 ・小売業 ・飲食店
卜‑ 金融 ・保険業
§ 姦姦学童書芸J:報サ ビスを除く) f\同一企業内
(1988年を100とした相対値) 1988 1989 1990 1991 1992(年)
図‑6 〔情報サー ビス産業白書1994,P41より〕
公務が不況の影響 を受 けに くい ことや行政内の情報化や公共投資の拡大 に ょって, もっとも伸びている。 しか し,売上規模 自体はさほど大 きくな く,全 体の7.9%しかない。ただ,新社会資本 として情報 ・通信が盛 りこまれた こと 18)日本情報処理開発協会編 『情報化 白書1993』,P195,参照。
より,堅調な伸びは維持 してい くと考え られる。
次に高いものは,卸売 ・小売業等である。 これは情報通信機器の活用が 自社 の生 き残 りにおいてきわめて重要な経営資源であることか ら当然であろう19)。
次に高い伸びを示すのが,金融,保険業である。 この業種 は本来,処理すべ き情報量がきわめて大 きいこと,又,金利の 自由化や規制緩和による業務範囲 の拡大に伴 う競争激化 に対応するために,サービス業 としてはもっとも情幸馴ヒ 投資が進んでいるのである20)。
それに対 して,製造業は低い伸びである。 これはすでに相当程度の情幸酎ヒ投 資が行われていた ことが大 きな原因であろ う。 それ は,売上高の割合が25.7
% (1992年度) もあることか らも分か る。 しか し, この5年間 (1988年か ら
1992年)では,製造業がその割合を落 としていることが気がか りである (29. 1%‑25.7%)。これは,経済全体のサービス化,ソフ ト化により製造業の占め
る割合が低下す るという産業構造の変化 も反映 していると考え られる0
2‑2市場構造の変容
情報サービス産業 は今回のバブル崩壊に伴 う不況で もっとも大 きな打撃を受 けた業種である21)。 しか しその原因は景気循環的要因 もさることなが ら,悼 報サー ビス産業内部の構造変化及び外部環境の変化に起因 していることも事実 である。
その急速に変化す る市場環境にすばや く適応 した企業はさらに大 きく成長を し,従来の市場認識に基づいた経営戦略 ・手法を維持 しようとする企業は衰退 を余儀な くされ ると思われる。 まさに企業間格差がより鮮明になる時期にさし かかっているといえよう。
情報サ‑ ビス産業は比較的新 しい産業であ り, これまでは一貫 して高度成長 19)宮下淳 ・江原淳 『顕売 ・流通情報 システムと診断』同友館,参考。
20)従来か らのオ ンライ ン化 (預金や為替等のいわゆる勘定系)の強化の他,情報提供 や証券情報 などの情報系の確立などその対象 は広 い。
21) 「明な きソフ ト業界」『日経 コンピュータ』 P48以下,参照。
情 報 サ ー ビス産 業 の 問題点 一北海道 の事例 ‑ 215 を続けてきた。急速に膨む市場に企業が処理 しきれない状態が続いた。 これを 解消す るために,技術能力はあまり問わず多量の若年労働者を雇用 したのであ る22)。それで も人手不足は深刻であるとして,「ソフ トウェア ・クライシス」
という言葉 も作 られたほどである23)。
それが一転 して,売上げ減,それ も前年比10%以上滅 となって問題が表面化 したのである。その問題の構造変化を図示すれば,以下の図のようになろう。
く顧客構造の変化) く企業構造の変化)
・顧客 システム部門の同業者化
・顧客ユーザ部門への市場 シフ トグの進展)(エ ン ドユーザ .コンビユ‑ティン
・親会社需要の後退(マルチベ ンダー化) 業際化 ・ユーザ .メ‑カの参入
・メーカ系企業の リス トラ
・独立系企業の2極分化
・融業化 格差拡大
・生産部門の省力化充足 競争激化 .メイ ンフレーム中心か らPC
・知識 .サ‑ ビス部門の生産 中心へ (ダウンサイジング化) 性革新 (ホワイ トカラー革新) .ハ⊥ ドウエアからソフトウエア主導へ
・公共 .家庭分野のニーズ拡大く需要構造の変化〉 ・マルチメディア化へ
・情報基盤の形成
図‑ 8 〔情報サー ビス産業白書1994より〕
その構造変化は大きく分けて4つの事象 (要因)で構成 されている。
その第一は技術構造の変化である。その中心はやはり, コンピュータシステ ムがメイ ンフレーム中心か らPC中心‑大 きく変わったことである24). これ 22)情報 サ ー ビス産業協 会編 『情報 サ ー ビス産 業 白書1993』 による と,従業員 の大半
は男女 とも30才以下であ る。
23)当時は人手不足を意味 していたが,今で は余剰の意味で使われ よ う。又,米国 との ソフ ト開発力の大 きな格差 に もあて はまる。
24) 「攻 め るパ ソコン
O
S守 るUNIX」 『日経 コンピュータ』 P50,1993年7月26日, 参照。は勿論,PC(MPU)の飛躍的な性能 向上 による。又,それを支 え る周辺機 器の低価格化が上げ られ る25)。そ して PC問をっな ぐネ ッ トワー ク技術が大 幅に進んだことが上げ られる。 これによって部門ごとの分散処理が可能 となると 同時に,エ ン ドユーザ ・コンピューティングが一層進むことになったのである0
処理対象のデータ も,かつての文字や数値 中心 (テキス トデータ中心)か ら, 画像 (動画 も含む)や音声 も扱え るマルチメデ ィア対応型 PCが普及 しは じ めた。又,三次元 グラフィ ック処理 にす ぐれたマ シー ン (workstation等)
も汎用機の地位を脅か している。
しか も,ハー ドウェア中心か らソフ トウェア中心 に付加価値の主軸が移行 し つつある26)o
そ して現在,情報イ ンフラ (情報通信基盤)の形成が叫ばれている。 これは 米国の 「情報‑イウェ一構想」那)に刺激 された ものであるが,社会 や産業 を 支える基盤 として 「情報 システム」が認知 されたことによる28) 0
第 2は,需要構造の変化が上げ られる。まず,情報 システムは事務部門より も先に,生産の現場で生産性向上のために使用 された。そのため,製造業の合 理化 ・効率化 は限界 まで達 していると言われている。
その反面, 日本 は米国に比べ,ホワイ トカラーの生産性 は大幅に遅れている と考え られてお り29),その事務 ・管理部門の生産性 向上が大 きな課題 とな っ てい る。 その解決手法 と して BPR (BusinessProcessReengineering)
とい う概念が提唱され,話題 を呼んでいる30)。 これを推進す るための具体的 25)日本情報処理開発協会編 『情事酎ヒ白書1993』 P331以下,参照。
26)ハー ドウェアの低価格化,高性能化の反面,ソフトウェアの種類及び内容の豊富さ による。
27)米クリントン大統領が 92年に提唱した構想で,全米規模の次世代通網計画のこと。
28)このような認識に近いものに,NII(Nationalinformationlnfrastructure) がある。これはネットワークだけでなく,ソフトや機器も情報基盤とする考え。
29)大野誠治 『リエンジニアリングがよくわかる本』三笠書房,参考。
M・‑マー&J・チャンピー 野中郁次郎監訳 『リエンジニアリング革命』日本経 済新聞社,参考。
30) 「トータルなシステム改革でBPRを成功させる」『日経コンピュータ』P40, 1994年4月18日,参照。
情報サー ビス産業の問題点 一北海道 の事例 ‑ 217 支援方法 として,知識 や意思決定支援 のための DBや,事務処理手続 きの見 直 しや組織の改革 も同時に行われている。
今 まで 情報サー ビス産業 は企業向けが大半であ ったが,今後 は行政の情報化 や家庭の情報化を満 たす, プロダクツやサー ビスの開発が一層進んでい くと考 え られ る31)0
第 3は,顧客構造の変化が上げ られ る。顧客企業 もひ と通 りの開発を終え, それな りに情報部門 も設置 し,情報 システム開発 のノウハ ウを蓄積 した。その 構築過程で学習 した ノウハ ウを有効活用す るために,その部門を分社化 (子会 社化) した。そ して 自分の子会社や関連企業の システム開発を手掛 けるよ うに な ったのであ る32)。 いわゆ る,顧客 システム部門の同業者化であ る。 これ ら の企業 との競合 に勝つためには勿論, これ らの企業 よ りす ぐれた専門技術 (専 門知識)を獲得す るはかない。すなわち,技術格差 を差別化要因 としなければ な らない33)。 しか し,技術の急速 な進歩 はす ぐに既存 の技術を陳腐化す るの であ り,その技術進歩 に対応す るには,高度 な技術を有す る人材を採用 し,常 に再教育 していか な くて はな らない。 そ して最新 の技術情報 を入手す るため に,同業種や異業種 との多様 なネ ッ トワー クを構築 してい かざるを得ないであ ろ う34) 。
第 4は,企業構造の変化である。先程,顧客 システム部門の同業者化 とい う ことを述べたが, メ‑カ自身 も情報サー ビス業化を強めている。 これはソフ ト ウェアが付加価値の源泉であるとい う地位 を確立 した ことによる。又,‑ ‑ ド ウェアとい って も製造 コス トに占め る知識 ・情報の割合 はきわめて高い。い う なれば‑ ‑ ドウェアは, ソフ トウェアをのせ る容器 (hardwareの本来 の意 味に近 い)にす ぎず,又,‑ ‑ ドウェア 自身 もソフ トウェアを有休化 (装置化) 31) 日本情報処理開発協会編 『情報化 白書1993』 P33以下,参照。
32) 「範囲の経済」(economiesorscope)の一種。
33)ソフ トウェア ・プロダクツ型企業の利益伸び率をみると,上位 は研究開発,教投資 率が高かい。上記 「情報サービス産業白書1994」P185,参照。
34)宮沢健一前記書 P99以下,参照。
したものにす ぎないといえよう。
又,急速に変化する技術や市場に対応するために, コンピュータ ・メーカや ソフ トウェア企業や家電メーカ及びゲームメーカなどがめま ぐるしい技術提携 や共同開発を行 っている35)。それは別の言葉で言えば,技術情報の共有 と占 有をめ ぐる競争であり,旧市場の解体 と新市場の創出をめ ぐる競争で もある36)。
以上,大 きく分けて4つの構造変化を背景 とした情報サー ビス産業の環境の 変化をみてきた。 このような多様な要因によってソフ トウェア全体の需要がど
うなるのかを示 したのが,次の図である。
図‑ 8 〔情報サー ビス事業白書1993より〕
第一世代の情報サー ビスは,90年代前半か ら急速に市場規模が縮小すると考 え られている。 この第一世代を代表す るシステムは大型汎用機を中心 として設 35)特に著 しいのはマルチメディア分野である。『コンピュー トピア』1994年 5月号P
48以下参照。
36)宮沢健一前記書 P83,参照。
情報サー ビス産業 の問題点 一北海道 の事例 ‑ 219 計 されたものである。 これが,ダウンサイジング化で,小型機をネ ッ トワーク 環境で運用す るシステム (クライア ン ト/サーバ方式 も含む)に相当程度代替
されることになる。
第二世代の情報サー ビスにはまず上記の代替需要が入 る。又,従来は市場化 されていなか った家庭や公共部門 (教育や医療 ・福祉など)の情幸酎ヒに伴い, 需要が顕在化 しは じめたのである。それ らのソフ トウェアのニーズに応えてい くには,まず高度な開発 ノウ‑ ウが必須であると同時に,業務分野 ごとの専門 的業務知識を必要 とす るのである。今後は,専門業務 ごとに特化 した情報 シス テム開発者が求め られることになろう37)0
総括すれば,第一世代の衰退 (市場縮小) と期を同 じくして,第二世代の情 報サー ビス群が急成長 しはじめた。それによって トータル としての情報サービ
ス需要 (市場)は今後 とも成長 しつづけると考え られ る。
3 情報サービス産業の実態とその課題 (北海道内の産業資料より)
前節でみた情報サー ビス産業の変化要因を総括すれば次図のようになろう。 第 1世代の衰退 ・第 2世代の隆盛
技術構造の変化 需要構造の変化 顧客構造の変化 企業構造の変化
↑ 〔 ↑ 〔
豊かな生活の実現
37)各業界 ・業種専門の システムアナ リス トの能力が要求 されている。
本節ではより具体的に情報サービス産業の実態を知 るために,北海道内の企 業を分析対象 としたい。そこでまず情報先進地である東京 (にある企業) との 比較を してみたい。
東京 北海道 全国
図‑10
〔特定サー ビス産業実態調査報告書,平成4年情報サービス業編よ り作成〕
上図は‑事業所当た りの年間売上高を示 した ものであるが,東京が‑事業所 当た り15億8千万 円余 りで全国一である。全国平均で も10億2千万円であるが, 北海道 は8億円余 りである。売上規模か らすれば北海道 は東京の半分,全国平 均 より2割 小 さい。 これか らす ると,北海道の情報サービス企業は比較的小規 模なものが多いといえよう。
次に‑事業所当たりの従業員数 も次図の通 り少ない。
ただ次図より,労働生産性 は比較的高い。
次図によると,従業員 1人当た りの年間売上高は,東京よりも低いものの全 国平均を上回 っている。ただ,1992年度の売上高の対前年度伸び率をみると, 全国平均が 6%滅であるのに対 し,北海道では10.5%減 と大 きく後退 してい
ることか らすると,北海道の事業所の経営状態が必ず しもよいとはいえない状 況である。
情報サー ビス産業の問題点 ‑北海道の事例 ‑ 1事業所当たりの従業員数
東京 北海道 全国
図‑ll 〔図‑10の資料よ り作成〕
0 10 2 0 30 40 5 0 60 7 0 80 90 100
盟 500万円未満 国 500‑1千万円未満田 1千一1億未満 盟 1億一10億未満
図‑12 〔図‑10の資料よ り作成〕
221
次に資本金の大 きさを東京 と比較 したのが上図である。
これによると,北海道より東京の方が, 1千万円未満の率が高い。割合的に は東京の方が零細企業が多い反面,1億円以上の割合 も多いことが分かる38' 。
次 に示すのは従業員規模別の事業所数の割合である。
38)中小企業判定の基準は容易ではない。清成忠男 『中小企業読本』東洋経済新報社p
lO以下,参照。
従業員規模別の事業所数割合
5050505
0
332211A B C D E F G H
‑ 北海道 一・・・東京
図‑13 〔図‑10と同一資料よ り作成〕
この図によると,北海道 と東京 も10人か ら29人が最 も多い。小規模従業員数 の事業所の割合は北海道の方が多いが,大規模従業員数の事業所の割合 は東京 の方が多い ことが分かる。
次に示す図は業態別の事業所の割合を示 したものである。
業態別の事業所数の割合
000000007654321
A B C
一 北海道 ''‑東京
A :ソフ トウェア業 B :システムハ ウス業 C:情報処理サー ビス業 D :情報提供サー ビス業
図‑14 〔図‑10と同一資料よ り作成〕
情報サー ビス産業の問題点 一北海道の事例 ‑ 223 これによると, システム‑ ウス業の割合が東京 よりも多い反面,情報提侯 サービス業の割合は東京より少ないことが分かる。 これにより情報発信機能は 東京よりも弱いことが推測できる39)0
これか らは北海道の情報サービス業の業態別の比較で道内の企業が抱える問 題を分析す ることにする40)。
次に示す4つの図は,資本金別事業所数を示 したものである。
これをみると,ソフ トウェア業では資本金 1千万円か ら2千万円未満前後が 多いことが分かる。システム‑ウス業で もほぼ同様である。
これに対 しで情報処理サービス業は前2者よりも比較的資本金が大 きい。こ れはこの業態に属 している事業所が比較的古い時期に設立されたことがまずあ げ られる41)。そ して業種の性格上,企業の安定性,信頼性が要求されている ことも理由として上げられよう。次図は業務別売上構成比を業態別に示 したも のである。
39)郵政省 『通信 自書』平成5年版P124,参照。
40)北海道通商産業局「平成5年度北海道情報処理産業実態調査」の基準を採用,P1, 参照。
41)
事業開始年度別事業所数 (情報処理サービス業)
6420864:F:日日
5
資本金別事業所 (ソフ トウェア業)
資本金別事業所 (情報処理サービス)
642086420日日日=臼
500‑1000万円未満 2000‑5000万円未満 1億円以上
5 4 3 2
0
19876543⁝10
資本金別事業所 (システムハウス業)
500‑1000万円未満 2000‑5000万円未満 1億円以上
資本金別事業所 (情報処理サー ビス業)
諾 1000
7 i l 鞍
hoooE.Tof5% 諦 視 億円未亀 。以上図‑15 〔北海道情報処理産業実態調査平成5年度調査結果の概要 よ り作成〕
卦亜聖冷却45醇湖2亜
業界別売上構成比 (4年度) (ソフ トウェア業)
000004321
A ち C D E F G H I J K 業界 別売上構成比 (4年度)
A B C D E F G H i J K 000543 oo0U九咋:
A B C D E F G H I ∫ 氏 業界別売上構成比 (4年度)
(情報提供 サー ビス業)
A B C D E F G H I ∫ 氏
図‑16 〔図‑15と同一資料より作成〕
A:受託計算 B:受注 ソフ ト
C:ソフトウェアプロダクト
D:データエントリ‑サービス
E:システム管理運営受託
F:情報提供サー ビス
Gl.ハー ド開発 ・製造
班:要員派遣
Ⅰ:機器販売 メンテ
∫ :コンサルティング K :その他
頭蓋ヰItt1.x敵淋a)PDq甑,ErjE敢闘o嚇5')‑22
5
ソフ トウェア業では受注 ソフ トが圧倒的に多 く,全体の45.2%も占めてい る。 今回の不況で最 も売上げが減少 したのが受注 ソフ トであることか らす る と,ソフ トウェア業が最 も不況の影響を受けたことになり,処理業務内容の転 換が求め られているといえよう42)。
次にシステムハウス業をみると,当然のことなが ら,‑‑ ド開発 ・L製造が47.9
%と圧倒的に比率が大 きい。
これに対 して,情報処理サービス業は受託計算が もっとも大きいものの(29.6
%),受注 ソフ トも大 きく (28.7%),他業態に比べればバランスのとれた業務 をこな しているといえよう。
情報提供サービス業は業務内容 として当然,情報提供サービスが圧倒的に多 いことが分かる。
次に示す図は顧客別売上構成比を示 したものである。
これによると, ソフ トウェア業は取引顧客 としてコンピュータメーカへの売 上げが一番多い。
しか し,今回の不況で大手 コンピュータメーカは他産業の設備投資の抑制 で,大幅に売上げが落込んだ。それに連動する形でソフ ト開発需要 も減少 した のである。このメーカの下請け的地位か ら脱却 しきれなかった企業が今,経営 の危機におちいっているのである。今後,官公庁をは じめ,新 しい顧客開拓が 強 く望まれているといえよう。
システムハウス業は当然,製造業やコンピュータメーカが重要な顧客である ことはいた しかたないことであろう。
それに対 して,情報処理サービス業は官公庁をはじめ,万遍な く様々な業種 を顧客 としていることが うかがえる。
情報提供サービス業は,金融 ・保険や官公庁 という安定的業種に情報を提供 しているが, もっと多業種に拡大させる努力が望まれている。
下図は経営課題の重点項 目を業態別に示 したものである。
42)前掲 『情報サー ビス産業 白書』 P201以下,参照。
顧客別売上構成比 (4年度) (ソフ トウェア業) 050505
0
32211 0064208642011111A B C D E F G H I ∫ K L M 顧客別売上構成比 (4年度)
(情報処理サー ビス業)
A B C D E F G 班 I ∫ K L M
50 40 30 20 10 0
5050505
0
332211顧客別売上構成比 (4年度) (システムハ ウス業)
2.440.1 14.7 15.5
8.39.2
A B t i)岳 fl G H I J K L M 顧客別売上構成比 (4年度)
(情報提供サー ビス業)
A B C D E F G H I ∫K L M
図‑17 〔図‑15と同一資料より作成〕
A:農林 ・水産業 B :鉱業 ・製造業
C:卸売 ・小売 ・飲食店業 D :建設 ・不動産業 E:金融 ・保険業
F:運輸 ・通信業 G :電気 ・ガス ・水道業 H :官公庁
Ⅰ:一般消費者
∫ :コンピュータメーカ
K:情報処理関連業種 L :同一企業内取 引 M :その他
諒碁41m.X掛湘0)Ppq甑知‑]t:蔚録0)嚇UrT 227
(ソフ トウェア業) 050
50
5032211
AB C D E F G
経営課題 (重点 目標) (情報処理サー ビス業)
A B C D E F G
(システムハウス業)
図‑18 〔図‑15と同一資料より作成〕
B:競争力の強化
C:経営体質の転換 D:需要変動への対応 E:固定費負担の圧縮 ど:経営の多角化
G:その他 謝焼叫4渦潮45鹿部2亜