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医師向け臨床研修プログラムの開発

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厚生労働科学研究費補助金  免疫・アレルギー疾患政策研究事業 

(分担)研究報告書 

 

医師向け臨床研修プログラムの開発 

研究分担者  大矢幸弘 

国立成育医療研究センター  アレルギーセンター長  斎藤博久 

国立成育医療研究センター研究所副所長   

研究協力者 

石川  史    国立成育医療研究センターアレルギーセンター総合アレルギーセンター  福家辰樹    国立成育医療研究センターアレルギーセンター総合アレルギーセンター  山本貴和子  国立成育医療研究センターアレルギーセンター総合アレルギーセンター   

研究要旨   

【研究の概要】 2019 年度、アレルギー疾患対策基本法の基本理念を実現するため、プログラ ム名を「小児アレルギー診療短期重点型教育研修プログラム」とし新たな研修目標を加えて実施 された医師向け教育研修プログラムの評価を行った。さらに、教育研修プログラム改訂後の医師 の学習目標到達度、行動変容の変化についての評価を実施した。【研究の方法】研修の対象者は (a) 各都道府県拠点病院からの研修参加希望者  および(b)一般小児科臨床の十分な経験を有し,

自施設でのアレルギー診療を向上させる意志のある卒後 5〜20 年の医師のうち,研修プログラ ム全日程に参加可能で、研修成果について開始から修了半年後までの報告に協力できる者。研修 日数は 2018年度までの教育研修プログラムと同様に 10 日間とし、国立成育医療研究センター アレルギーセンター外来・病棟で実施した。2019 年度からのプログラム改訂に伴い、アトピー 性皮膚炎の診断基準や重症度評価、気管支喘息の診断および評価、アレルギー性鼻炎に対する舌 下免疫療法の実施などの内容を盛り込んで新たにspecific  behavioral  objectives(SBOs)を設定 し、これに対応するテキスト・指導要項を作成した。研修中は各参加者の相談役となるメンター を個別に配置しガイダンスを行ったほか、研修プログラム管理者により 2 回のヒアリングを行 って支援した。プログラム評価としてKirkpatrick 4 段階の評価概念に基づいたプログラムの 満足度評価を行い、学習(知識スキル)評価、行動(実際の行動変容)評価を参加者自身によっ て行った。終了6カ月後の行動評価は現在実施中である。これらの結果をもとに、次年度に向け たプログラム改善点を抽出し対策を考案した。【結果】新たな医師向け教育研修プログラムの参 加者は、15 名とこれまでの医師向け研修プログラムの参加人数から大幅に増加していた。卒後 年数10年前後の医師が多くを占め、勤務地域は全国に分布していた。約半数が都道府県拠点病 院に所属する医師であったものの、プログラム評価の結果からは研修内容について概ね高い満足 度が得られた。研修前後での学習到達度は全ての設問項目において向上しており、新しい研修プ ログラムにおいて新たに設定された学習目標についても概ね高い到達度が得られた。また、6

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月後の行動変容に関しては 4 名より回答が得られており、殆ど全ての項目で前後での向上が認 められた。【結語】改訂された当センターの教育研修プログラムは研修目標が増加したにも関わ らず学習到達度は高く、行動変容という点においても評価された。到達度の低かった項目に対し、

実診療上で検査が実施されない場合の研修効果を補完するため、学習動画を作成した。このよう な対策によるする学習効果の改善を図りながら、今後も、改訂された教育研修プログラムの継続 的な実施とその効果測定および調査研究を進める。

 

A.研究目的

 

本研究は、医師や医療スタッフへの教育を通じたアレルギー疾患診療水準の向上と患者満足度の改善を目 的とし、アレルギーマーチの起点となるアトピー性皮膚炎と社会的問題の多い食物アレルギーの診療を中心 に、新たな知見の浸透が望まれる気管支喘息やアレルギー性鼻炎、消化管アレルギーの診断と治療に関する 基本的知識と治療技法も加えた総合アレルギー診療の水準を向上させ均てん化を推進するための医師および 医療スタッフの教育と診療支援および効果測定を目的とするプログラムを開発する。 

これまで、本研究における研修プログラム開発の目的はプライマリケアにおける地域内での診療レベル向 上、さらには都道府県拠点病院を中心とした病診連携・病病連携を核としたアレルギー疾患診療ネットワー クを構築することであり、この目的を達成するためのプログラムを開発提供することを目指してきた。今年 度、アレルギー疾患におけるさらなる標準治療の普及と均てん化を目的に、食物アレルギー、アトピー性皮 膚炎の2疾患を中心としたこれまでのプログラムに気管支喘息、アレルギー性鼻炎(アレルゲン免疫療法を 含む)を加えた教育研修プログラムを開発したので、今回そのプラグラム評価を行う。 

研修実施前後で、Kirkpatrickの4 段階の評価概念に基づき、反応(満足度)評価、学習(知識スキル)評価、

行動(実際の行動変容)評価に対する効果測定を行い、プログラムの改訂に反映させる。さらに参加者に個々 の施設における行動目標を策定してもらい、その実施率も確認することで今後の課題も明らかにする。 

   

B.研究方法 

A) プログラムの策定 

2019年度の本研究においては、2013年から国立成育医療研究センターアレルギーセンターで全国の小児 科医を対象に行ってきた医師向けの教育研修プログラム「食物アレルギー研修」を、「小児アレルギー診療短 期重点型教育研修プログラム」として改訂し、アトピー性皮膚炎の診断基準や重症度評価、気管支喘息の診 断および評価、アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法の実施などの内容を盛り込んで新たに specific 

behavioral  objectives(SBOs)を設定し、これに対応するテキスト・指導要項を作成した。

研修期間は10 日間(2週間)とし、主な研修内容として以下を示し参加者を募集した。直接の指導は国 立成育医療研究センターアレルギーセンター外来・病棟にてアレルギーセンター所属医師が行った。研修中 は各参加者の相談役となるメンターを個別に配置し、研修開始時に研修プログラムや電子カルテの使い方な どについてガイダンスを行い、研修開始後1週間と、2週間の時点で研修プログラム管理者により2回のヒ アリングを行って支援した。研修参加者のアレルギー診療の経験の差や、研修に求める要望の差を補うため、

プログラム1週目終了時のヒアリングで個別に要望を聴取し2週目の研修内容に反映させることにした。

【主な研修内容**(図 1)】 

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・  食物経口負荷試験 

・  皮膚テスト(プリックテスト) 

・  食物アレルギーの初診外来・患者教育 

・  アトピー性皮膚炎の初診外来・患者教育 

・  アトピー性皮膚炎患者へのスキンケア指導 

・  アドレナリン自己注射の患者指導 

・  肺機能検査、気道可逆性試験、気道過敏性試験、呼気一酸化窒素測定 

・  カンファレンス・回診・抄読会参加   

**日本アレルギー学会専門医制度規定の専門医育成のための教育研修第 32 条(3)「指導医」または

「専門医」の外来見学実習を 10 時間以上受講する」の項目を、全日程参加をもって認める   

                                                 

1. 「小児アレルギー診療短期重点型教育研修プログラム」の研修スケジュール

   

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4 1. 研修到達目標

 

   

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5 1. 研修到達目標(つづき)

                                                         

B) 参加対象者

参加対象者は(a)都道府県の拠点病院で小児科診療に携わり、研修参加を希望する医師、および(b)

以下の条件を満たし研修参加を希望する医師とした。

・  食物アレルギーの診断法を研修することで、自施設での食物アレルギー診療の質を向上させる意志 の方

・  アトピー性皮膚炎に対して適切なスキンケア指導や患者教育などの診療技術を向上させる意志のあ る方

・  気管支喘息における肺機能検査や鑑別診断、免疫療法などの診療技術を向上させる意思のある方

・  医学部卒後5年目以降20年以内の、小児を診療する機会のある医師(小児科専門医相当の一般臨床 能力を有すること)

・  研修プログラム全日程への参加が可能であること

・  研修プログラム開始から修了半年後まで、研修成果についての調査に協力可能であること

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6 C) 評価項目・評価方法 

 

教育研修プログラムの評価方法として、Kirkpatrickの4段階の評価概念に基づき,反応(満足度)評価、

学習(知識スキル)評価、行動(実際の行動変容)評価を参加者による評価を通して行った。反応評価は,

研修プログラムの内容・量・教育方略・支援体制について研修終了時に4段階リッカートスケールで行い、

学習評価は研修開始時と終了時に4段階リッカートスケールの自己評価により行った。本年度の評価項目 である行動評価(自己評価)は、診療行動に関して研修開始時と終了後約半年における、可否二区分の自 己評価により行った。 

 

2. 評価項目:満足度調査・プログラム評価

1. 到達目標の項目数は、研修日数に対して適切であった。 

2. 到達目標の項目は、自分のニーズに対して適切であった 

3. 研修各日のスケジュールの量(忙しさ・暇さ)はおしなべて平均化すると適切であった  4. 患者向けの教室見学は有用であった 

5. 看護指導(患者向け教室での看護指導を含む)の見学は有用であった  6. 食物負荷試験実習の症例数は十分であった 

7. 食物負荷試験実習への参加の程度(予診・摂取介助・即時反応への治療・指示書作成)は 十分であった 

8. 本教育プログラム用に作成された教材の内容・量は適切であった  9. ワークシートの使用は有用であった 

10. 模擬症例を使っての実演学習は有用であった     

11. 到達目標の項目毎に担当指導医がつく制度は有用であった      12. メンターの機能は有用であった   

13. ヒアリングの機能は有用であった 

14. 研修参加中の医療スタッフの態度は友好的で質問しやすい雰囲気であった     15. 参加に関する事務サポートは適切であった 

     

3. 評価項目:学習評価(アンダーラインは2018年度、2019年度から加わった学習項目)

1. 食物アレルギー患者の問診を行い、経口摂取による即時型反応と、それ以外を区別して記録 することができる 

2. 特異的IgE・皮膚テスト・食物負荷試験の検査の精度の違いについて説明できる  3. 皮膚プリックテストを実施し、制限解除が可能な食品の選択ができる 

4. アレルゲンコンポーネントに基づいた診断ができる 

5. 食物経口負荷試験(模擬)を行う患者へ、指示書での説明と同意書取得ができる 

6. 食物経口負荷試験患者への給食オーダー、入院指示簿、処置、投薬準備を行うことができる  7. 病棟で負荷試験担当看護師が準備している物品と補助業務内容を認識する 

8. 1日2〜3例の負荷試験症例の予診・食品準備・カルテ記載・病室の物品確認ができる  9. 1日2〜3例の負荷試験症例の観察、チャート記載、即時反応への対応を行うことができる 

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10. 二重盲検法による食物経口負荷試験の実施を補助することができる 

11. 即時型反応の可能性が低い食品の摂取継続や制限解除をする場合の、患者への注意事項を挙 げることができる 

12. 即時型反応の可能性が残る食品の摂取継続や制限解除をする場合の、患者への注意事項を挙 げることができる 

13. 食物経口負荷試験の結果が陰性であった場合の制限食品の解除について、方針を提案するこ とができる 

14. 即時型反応を疑う症状・緊急時薬剤・受診目安を患者・家族に指導できる 

15. エピペン® の、適応、適切な規格選択、一般的な使用のタイミングについて説明できる  16. エピペン®について、同意文書取得・処方医登録の規定と、保険診療上のコストを理解する  17. エピペン®  の使用法の説明ができる 

18. アトピー性皮膚炎の診断基準を説明できる 

19. アトピー性皮膚炎のバリア機能障害について説明できる  20. アトピー性皮膚炎の重症度評価ができる 

21. アトピー性皮膚炎のスキンケア法(石鹸洗浄、軟膏塗布)の指導ができる 

22. アトピー性皮膚炎の薬物療法と、起こりうる副作用、副作用を回避する使用方法を説明でき る 

23. プロアクティブ・寛解維持療法の概念について説明できる  24. アトピー性皮膚炎の悪化因子とその対策について説明できる  25. アレルゲン二重曝露仮説の理論を説明することができる  26. 気管支喘息の定義・診断基準・鑑別疾患について説明できる  27. 気管支喘息の重症度とコントロール状態を評価できる  28. 気管支喘息の悪化因子を挙げられる 

29. フローボリューム曲線の測定を正しく行い、呼吸機能検査の結果について患者(保護者)に 説明ができる 

30. 呼気NO測定を正しく行い、結果を患者(保護者)に説明できる  31. 気道過敏性検査を行うことができる 

32. 重症度に応じた気管支喘息の長期管理薬を選択できる 

33. (気管支喘息の急性増悪予防のための)環境整備について指導できる 

34. 患者の年齢に応じた吸入デバイスの選択と、気管支喘息の吸入療法について、患者(保護者)

に指導ができる 

35. 気管支喘息における急性増悪時の対応を患者(保護者)に指導できる  36. 舌下免疫療法について、効果、副作用、服用法の説明ができる   

 

   

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4. 評価項目:行動評価(アンダーラインは2019年度から加わった評価項目)

1. 食物特異的 IgE 陽性のために除去食治療を行っている患者の診療機会があったとき、5 割以 上の患者(保護者)に対して、「血液検査のみでは正確な診断ができない」ことを説明して いる 

2. アトピー性皮膚炎の治療として除去食治療が行われている患者の診療機会があったとき、5 割以上の患者(保護者)に対して、「石鹸洗浄と軟膏塗布のスキンケアが重要である」と説 明している 

3. 食物アレルギーのために受診した除去食治療中の患者が、特異的IgE陽性でも最近のア ナフィラキシー・著明な即時反応が無い場合、半年以内に 5 割以上の患者に対して、解除を 進めるための皮膚テストまたは食物負荷試験を実施している 

4. 食物アレルギーのために受診した  アトピー性皮膚炎・湿疹合併の患者(保護者)8 割以上 に対して、初診から 3 カ月以内に、具体的な石鹸洗浄法と軟膏塗布法についての指導をして いる 

5. 過去の即時型反応や感作の既往をもとに、現在では不要と考えられる除去食療法を行って いる患者の診療機会があったとき、介入によって半年以内に 5 割以上の患者で制限の緩和 を確認している 

6. 食物アレルギーのために受診し、湿疹掻痒のために食物制限解除が進みにくい患者(保護者)

に対し、皮膚治療の介入から 3 カ月以内に 5 割以上で、症状の緩和を確認している  7. 食物アレルギーのために受診し、最近のアナフィラキシーや少量の抗原摂取で即時型反応

を生じた患者の 8 割以上に対して、エピペン®  処方(適応外の場合は存在の説明のみで可)

を含めた対応法の指示を行っている 

8. アトピー性皮膚炎の診断、重症度について、5 割以上の患者(保護者)に診断基準や重症度 評価をもとに説明している 

9. アトピー性皮膚炎のために受診した患者の診療機会があったとき、5 割以上の患者(保護者)

に対して、ケアプランを立案しプロアクティブ・寛解維持療法についての指導をしている  10. アトピー性皮膚炎の治療中に、5 割以上の患者(保護者)に対して、個々の患者についての

増悪因子を評価し、生活指導や環境整備指導をしている 

11. 気管支喘息の重症度とコントロール状態を評価するため、5 割以上の患者(保護者)に対し て、セルフモニタリングツールや質問紙を活用している 

12. 気管支喘息の重症度とコントロール状態を評価するため、5 割以上の患者(保護者)に対し て、呼吸機能検査、呼気 NO 検査、気道過敏性試験のなどの生理検査を実施している  13. 気管支喘息患者に対して吸入療法を導入後に、吸入手技を確認し指導をしている 

14. アレルギー性鼻炎の治療で舌下免疫療法の適応を検討し、効果、副作用、服用法の説明をし ている 

 

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9 C.結果

A) 参加者とその背景

2019年度の研修プログラム参加者数は1年間で計15名であった。都道府県拠点病院からの参加者が8名、

一般小児科病院や診療所からの参加者が7名であり(図2-a)、関東地方、中部地方、近畿地方からの参加者 が多数を占めたが、東北地方、四国地方、海外勤務者からの応募参加もあった(図2-b)。男性は8名、女性 7名で、年齢は40歳以下の参加者が4分の3以上を占め(図2-c)、小児科専門医が15名中12名(海外 の小児科専門医資格を含む)、アレルギー専門医が15名中1名であった。

2-a. 参加者の所属施設

2-b. 参加者の勤務先(地域)

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10 2-c. 参加者の年齢

B) 参加者のプログラム満足度

  参加者のプログラム満足度評価は参加者15人中13人から得られた。<表1>に示した15の評価項目に対 し、4=そのとおり、(3=ややそのとおり、2=ややそうではない、)1=そうではないの4段階による回答の結 果を図3に示す。いずれの項目に対しても概ね満足度は高かったが、評価項目9(ワークシートの使用は有 用であった)、評価項目10(模擬症例を使っての実演学習は有用であった)の評価が低かった。

評価項目4(患者向けの教室見学は有用であった)、5(看護指導(患者向け教室での看護指導を含む)の

見学は有用であった)、11(到達目標の項目毎に担当指導医がつく制度は有用であった)、12(メンターの機 能は有用であった)、13(ヒアリングの機能は有用であった)、14(研修参加中の医療スタッフの態度は友好 的で質問しやすい雰囲気であった)、15(参加に関する事務サポートは適切であった)の評価は高かった。

本評価項目には反映されていないが、輪読会やジャーナルクラブなど学習機会の重要性、カンファレンス 参加の重要性についての感想もあった。また、プログラムには取り上げられていない好酸球性消化管疾患、

新生児・乳児消化管アレルギーに関する症例検討、論文抄読などは普段経験されることが少なく、これらの 疾患についての知識が研修により得られたとの感想もあった。

時間配分については適切であったとの意見が多かったが、やや時間が余ったとの意見もあった。また研修 宿泊施設の拡充などハード面の拡充を求めるものもあった。

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3. プログラム満足度評価

C) 参加者の学習(知識スキル)の変化

<表2> に示した36の評価項目に対し、4=できる、1=できない、の4段階評価による回答を得た。研修 前後の回答の平均値を図4に示す。

回答は15人の参加者全員から得られ、すべての項目で評点の上昇がみられた。

2019年度の新しいプログラムにおける新たな評価項目(SBOs)のうち、18(アトピー性皮膚炎の診断基準 を説明できる)、19(アトピー性皮膚炎のバリア機能障害について説明できる)、20(アトピー性皮膚炎の重 症度評価ができる)、23(プロアクティブ・寛解維持療法の概念について説明できる)、26(気管支喘息の定 義・診断基準・鑑別疾患について説明できる)27(気管支喘息の重症度とコントロール状態を評価できる) 28(気管支喘息の悪化因子を挙げられる)29(フローボリューム曲線の測定を正しく行い、呼吸機能検査の 結果について患者(保護者)に説明ができる)、30(呼気NO測定を正しく行い、結果を患者(保護者)に説 明できる)、31(気道過敏性検査を行うことができる)、32(重症度に応じた気管支喘息の長期管理薬を選択 できる)33((気管支喘息の急性増悪予防のための)環境整備について指導できる)34(患者の年齢に応じ た吸入デバイスの選択と、気管支喘息の吸入療法について、患者(保護者)に指導ができる)35(気管支喘 息における急性増悪時の対応を患者(保護者)に指導できる)、36(舌下免疫療法について、効果、副作用、

服用法の説明ができる)についても評点の上昇がみられ、ほぼ「できる(4)」に近い評点であった。これに対 し、10(二重盲検法による食物経口負荷試験の実施を補助することができる)30(呼気NO測定を正しく行 い、結果を患者(保護者)に説明できる)、31(気道過敏性検査を行うことができる)で達成率が低かった。

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12 4. 学習(知識スキル)評価

D) 参加者の行動変容

<表3> に示した14の評価項目に対し、はい、いいえの2段階評価による回答を得た。評価は研修開始 時と研修終了後6か月時点の2回実施した。

研修開始時の回答は15人の参加者すべてから得られているが、研修終了後6か月時点での回答は現在5 名の研修参加者から郵送で届いている。結果を図5-a(研修開始時)、図5-b(研修終了後6か月)に示す。

6か月後の行動評価では殆ど全ての項目で評点の上昇がみられ、とくに評価項目1(食物特異的IgE陽性 のために除去食治療を行っている患者の診療機会があったとき、5割以上の患者(保護者)に対して、「血液 検査のみでは正確な診断ができない」ことを説明している)、2(アトピー性皮膚炎の治療として除去食治療 が行われている患者の診療機会があったとき、5割以上の患者(保護者)に対して、「石鹸洗浄と軟膏塗布の スキンケアが重要である」と説明している)、4(食物アレルギーのために受診したアトピー性皮膚炎・湿疹 合併の患者(保護者)8割以上に対して、初診から3カ月以内に、具体的な石鹸洗浄法と軟膏塗布法につい ての指導をしている)、5(過去の即時型反応や感作の既往をもとに、現在では不要と考えられる除去食療法 を行っている患者の診療機会があったとき、介入によって半年以内に5割以上の患者で制限の緩和を確認し ている)の達成率は100%であった。

また、2019年度新規に設定した行動目標(8-14)のうち、評価項目8(アトピー性皮膚炎の診断、重症度に ついて、5割以上の患者(保護者)に診断基準や重症度評価をもとに説明している、9(アトピー性皮膚炎の ために受診した患者の診療機会があったとき、5 割以上の患者(保護者)に対して、ケアプランを立案しプ ロアクティブ・寛解維持療法についての指導をしている)11(気管支喘息の重症度とコントロール状態を評 価するため、5割以上の患者(保護者)に対して、セルフモニタリングツールや質問紙を活用している)13

(気管支喘息患者に対して吸入療法を導入後に、吸入手技を確認し指導をしている)、については 80%の達

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成率が得られており、新しいプログラムも参加者の行動変容に効果的であると考えられた。一方、10(アト ピー性皮膚炎の治療中に、5 割以上の患者(保護者)に対して、個々の患者についての増悪因子を評価し、

生活指導や環境整備指導をしている)、12(気管支喘息の重症度とコントロール状態を評価するため、5割以 上の患者(保護者)に対して、呼吸機能検査、呼気NO検査、気道過敏性試験のなどの生理検査を実施して

いる)は60%、14(アレルギー性鼻炎の治療で舌下免疫療法の適応を検討し、効果、副作用、服用法の説明

をしている)については20%の達成率であった。

6(食物アレルギーのために受診し、湿疹掻痒のために食物制限解除が進みにくい患者(保護者)に対し、

皮膚治療の介入から3カ月以内に5割以上で、症状の緩和を確認している)についても評点の上昇率が低か った。

 

   

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14 D. 考察

2019年度より開始された新しい「小児アレルギー疾患短期重点型教育研修プログラム」の内容およびその 評価結果を示した。最終年度である令和元年度では、15名の参加のうち約半数が都道府県アレルギー疾患医 療拠点病院に既に在籍する医師であり、前年度までと比較し基礎的知識を有していることも想定されたが、

本研修の参加者によるプログラム評価において概ね高い評点がみられ、知識スキルの上昇、研修終了半年後 の診療現場における行動の変容が認められ、本研修が都道府県拠点病院医師においても、その後の診療に影 響力を与え得ることが改めて示唆された。

研修者によるプログラム評価は有用かつ効果的であったとの回答が多くを占めたが、問題点としてワーク シート、模擬症例の検討が有効に活用されていないことが指摘された。これは、プログラムの中でワークシ ート(記録用紙)を用いた実習や模擬症例を使っての実演学習が実施されていないことが多かったためと思 われ、プログラム内での位置づけや意義について再検討が必要と考えられた。またワークシートが邪魔にな ったとの意見もあり、今後の研修における活用法を再検討する必要があると考えられた。全体の時間配分は 適切であったとの回答が多かった一方、時間が余ったとの回答もあり、自由時間に学習に用いることができ るツールを検討する必要があると考えた。

知識、技能面の参加者自身の評価でも多くの評価項目に上昇がみられたが、食物アレルギーにおける二重 盲検法による食物経口負荷試験の実施、気管支喘息における気道過敏性試験の実施に関する評点の上昇率が 低かった。この理由として、研修実施時期により病棟や外来でダブルブラインド法による食物経口負荷試験 や気道過敏性試験が実施されない場合があり、これを補うツールが不足しているためと考えられた。そこで 今年度、医師が医師と患者、保護者役を務め、これらの検査のデモンストレーションを行いこれに解説を加 え、10分程度の動画ツールとして編集した。今年度の研修には間に合わなかったものの、次年度は実際の診 療でこれらの検査が実施されず研修機会が得られない場合、また研修の空き時間の活用法として、この動画 を活用する予定である。

研修者の行動変容についても、新規の評価項目を含め殆どの項目で達成率の上昇がみられている。前述し た学習項目の到達率の上昇は、行動変容評価のアンケートにおいて参加者自身が設定した目標とその達成率 を評価した自由記述において、食物経口負荷試験、呼吸機能検査の実施、アトピー性皮膚炎のスキンケア、

外用療法の指導(プロアクティブ療法を含む)の実践や、患者教育などの結果として現れたと考えられた。

行動変容の評価項目のうち、達成率の低かった評価項目12(呼気NO検査、スパイロメーター)に関して は、参加者の所属施設における呼気一酸化窒素(NO)の測定器やスパイロメーターなどの設備に差がある可 能性があり、行動の変化だけで測定することが難しい評価項目であった。また14(舌下免疫療法)について は参加者一人ひとり行動の変化だけでなく実際に所属施設において診療を開始する必要があることから、地 域における個々の医療機関の役割等の事情を考慮する必要があると考えられた。またまだ研修終了後6か月 が経過しておらず回答の回収率が低いため、今後の回答も待ち、個別に再評価する必要があると考える。

以上のように、2019年度にはこれまでの食物アレルギー診療を中心とした内容に加え、気管支喘息やアレ ルギー性鼻炎におけるガイドラインに基づいた標準的診療についての内容がプログラムに追加されたが、新 規の内容についての学習評価、行動変容も得られていることが確認できた。気管支喘息は小児科医が診療所、

一般病院で診療することの多い疾患であり、診断および治療における知識は広く必要とされていると考えら れるが、今回の研修の参加者からは研修終了後の行動目標として「あらためて小児気管支喘息診療・管理ガ イドラインを読む」「呼吸機能検査を実施する」など知識の確認や更新に関する意欲的な感想、意見が寄せら れ、食物アレルギー診療に劣らない反響があった。また、一般病院に患者さんが多い疾患に関しては目標の

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実施率も高くなることが考えられた。これらのアレルギー疾患の標準的治療への理解を深めることにより、

標準治療の普及と医療資源の地域格差の解消に貢献し、診療水準・診療効率の向上が期待される。

一方で、本研修プログラムにおいては参加者ごとにアレルギーセンター医師(病棟医)1名がメンターとし て担当し、実際の入院負荷試験患者を担当することによる処方・手技の獲得のみならず、さらに最重症アレル ギー患者に対する診療の実際、患者教育や信頼関係の構築のコツなども体験することが出来る。研修評価項目 には載らないものの、重症患者に対する治療ニーズを認知出来ることは、これまでも本研修プログラムの重要 な評価点の1つであった( 超重症ADがこんなに良くなるとは知らなかった 等)。重症患者への適切な診療 連携は、都道府県拠点病院の重要な責務であり、国民の診療満足度向上にも繋がる課題であることから、本研 修プログラムが診療連携に貢献することも期待された。

E.結論

2019年度当センターで実施された新たな研修プログラム「小児アレルギー診療短期重点型教育研修プログ ラム」は研修参加者の知識・スキルの向上に概ね効果的であったと考えられ、研修前後における研修参加者の 行動変容に寄与していた。食物アレルギー診療に加え、アトピー性皮膚炎、気管支喘息やアレルギー性鼻炎に おけるガイドラインに基づいた標準的診療についての内容がプログラムに追加されたが、新規の内容につい ての学習評価、行動変容も得られていることが確認できた。今後も、改訂された教育研修プログラムの継続的 な実施とその効果測定および調査研究を進めたい。

F.  研究発表

1. 石川史、福家辰樹、犬塚祐介、豊國賢治、西村幸士、苛原誠、佐藤未織、齋藤麻耶子、稲垣真一郎、宮地 裕美子、野村伊知郎、山本貴和子、成田雅美、大矢幸弘  小児科医を対象とした食物アレルギー診療教育研 修プログラムの有用性. 123回日本小児科学会学術集会、20204月、神戸(20208月に延期

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