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や岩手県歯科医師会が発 行した「東日本大震災と地域歯科医療」

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(1)

東日本大震災津波後の岩手県における 災害歯科保健医療の取組について

岩手県保健福祉部健康国保課/岩手県口腔保健支援センター

 じ   に

岩手県では,平成 23 年3月 11 日に発生した 東日本大震災津波によって沿岸地域の多くの歯 科診療所が被災し,地域の歯科保健医療体制に 多大な影響があった.このため,災害時歯科医 療救護協定を 結している岩手県歯科医師会と 連携し,被災地における歯科医療救護活動を実 施した.この歯科医療救護活動では,指 系統 の一本化や活動チームの撤収等を 切に実施で きたものの,初動対応や被災地の歯科保健に関 する情報不足,他職種との連携不足等の課題が 明らかとなった.これらの点については,岩手 県が作成した「東日本大震災津波における避難 者支援活動記録集」

1)

や岩手県歯科医師会が発 行した「東日本大震災と地域歯科医療」

2)

に詳 しく記載されているので,参 していただきた い.今回のシンポジウムでは,歯科医療救護活 動の終 後に岩手県で取り組んでいる被災した 歯科診療所の復旧や被災者への歯科保健活動,

地域防災計 や総合防災 による体制整備等 について示すとともに,全国の行政歯科 職,

大学歯科関係者,歯科医師会関係者等と進めて いる災害時の公 衛生歯科活動の一部について 紹介する.

被災した歯科 所の 被災地 の歯科保健活動

岩手県では,平成 23 年8月に「岩手県東日 本大震災津波復興計 」(平成 23 年度〜平成 30 年度の8か年計 )を策定し,この計 の中 で被災した歯科診療所の復旧支援と応急 設住

宅集会所等における歯科保健活動を位置付け,

被災地における歯科保健医療体制の確保に努め ている

3)

歯科診療所の復旧については,岩手県沿岸 12 市町村に開設していた 109 施設の歯科診療 所のうち 60 施設が被災(全壊:37 施設,大規 模半壊:9施設,半壊:2施設,一部損壊:12 施設)したことから,地域の歯科医療体制を確 保するため,国の 助 や基 を活用して 設 歯科診療所の整備,歯科診療所の修復・移転整 備等に かる費用を支援している.平成 28 年 10 月1日現在, 設から本院への移行が済ん でいない歯科診療所が一部あるものの,歯科診 療所の再建を 望するケースについては概 順 調に復旧が進んでいる

4)

(図表1).また,被災 地の歯科診療所に 16 の歯科巡回診療車を整 備し,訪問歯科診療にも対応できるようにして おり,被災地における地域包括ケアシステムの 構 に寄与している.このように被災地の歯科 医療体制の整備を進めているが,人口 10 万人 あたりの施設数を震災前後で比較すると,大 町と山田町において大きく低下している状況で

図表1 歯科診療所の被災状況及び再開状況

<県内> 岩手県保健福祉部医療政策室調べ(平成28年10月1日現在)改変

震災前施設数

被災状況

全壊 大規模半壊 半壊 一部損壊 合計 沿岸 109 37 9 2 12 60 内陸 504 0 0 0 81 81 総数 613 37 9 2 93 141

被災施設数

再開状況 継続・再開

再開見込 廃止

(見込含) 未定

本院 仮設

沿岸 60 47 3 0 10 0

内陸 81 81 0 0 0 0

総数 141 128 3 0 10 0

!廃止(見込含)の10施設のうち、内陸移転(大槌!遠野)が1施設

!継続・再開(本院)の47施設のうち、沿岸内移転(山田!宮古)が1施設

岩医大歯誌 42

(2)

ある(図表2).

被災地での歯科保健活動については,歯科医 療救護活動を終 した後も被災者の歯科口腔保 健の 持・ 上を支援するため,継続実施して いる.平成 23 年9月から,国の 助 や 付 を活用し,被災地口腔ケア推進事業として岩 手県歯科医師会に委 している.事業内容は,

被災地の応急 設住宅の集会所や高齢者施設に 歯科医師および歯科衛生士を派遣し,応急 設 住宅の入居者と高齢者施設の利用者を対象に歯 科健診,歯科相 ,間食指導,口腔ケア,普及 発等を行うものである(図表3).活動実 は,

平成 23 年9月から平成 28 年3月の期間に,

べ 877 箇所の応急 設住宅集会所において べ 3,741 人,また べ 195 箇所の高齢者施設にお いて べ 4,616 人に対応した.なお,高齢者施 設については平成 27 年度までの実施であり,

平成 28 年度からは応急 設住宅集会所のみへ の対応となっている.今後の活動については,

被災地の多くの歯科診療所が診療を再開してい るものの,市町村より応急 設住宅集会所にお

ける歯科保健活動への要望があるため,継続を 予定している.

の大 災 に た歯科保健 岩手県では,東日本大震災津波における歯科 保健医療活動の結果を踏まえ,平成 25 年3月,

「岩手県地域防災計 」

5)

における医療・保健計 の 目に歯科保健医療活動を位置付けたほ か,「岩手県保健医療計 」

6)

における災害時医 療体制の 目に避難所等の口腔ケア実施体制を 明記した.また同月には,岩手県議会議員の発 議により「岩手県口腔の健康 くり推進 例」

7)

を制定し,「災害発生時における口腔の衛生の 確保及び平時における災害に備えた口腔保健 サービスの提供のための体制の確立に関するこ と」を岩手県が岩手県民の口腔の健康 くりを 推進するために ずるべき基本的施策の一つと した.そして,平成 26 年7月には,同 例の実 施計 となる「イー歯トーブ8 2 プラン(岩 手県口腔の健康 くり推進計 )」

8)

を策定し,

「大規模災害時における歯科保健医療の体制」

として「大規模災害の発生時における歯科保健 医療の確保」,「東日本大震災津波の被災地域に おける歯科保健医療の確保」を推進することと した.さらに,平成 27 年3月,「岩手県地域防 災計 」

5)

の医療・保健計 の 目に歯科医療 救護活動の終 後に行う歯科相 ,口腔ケア等 の歯科保健活動を明記した(図表4).歯科的身 元確認については,平成 24 年3月,岩手県警 察本部からの意見により,「岩手県地域防災計

5)

の行方不明者等の捜索及び遺体の 理・

施設数 人口10万人当たり 震災前

H23.3.11 震災後 H28.10.1

震災前 H23.3.11

震災後 H28.10.1

宮古市 24 22 40.5 39.4

山田町 5 3 27.0 19.3

大槌町 6 3 39.4 25.8

釜石市 18 16 45.7 44.0

大船渡市 18 17 44.4 45.3 陸前高田市 9 7 38.8 35.9

図表2 岩手県沿岸南部6市町の歯科診療所数(震災前後の比較)

応急仮設住宅集会所での 活動の様子

高齢者施設での活動の様子

図表3 被災地における歯科保健活動の様子

平成25年3月 岩手県地域防災計画の見直し

!「医療・保健計画」に歯科医療救護班の編成及び活動内容を追記 平成25年3月 岩手県保健医療計画策定

!「災害時における医療体制」に避難所等の口腔ケア体制を明示 平成25年3月 岩手県口腔の健康づくり推進条例制定

! 県が県民の口腔の健康づくりを推進する基本的な施策として、

 災害時における歯科保健医療の確保と災害後の体制の整備につい  て規定

平成26年7月 イー歯トーブ8020プラン(岩手県口腔の健康づくり推進計画

)策定

! 大規模災害時における歯科保健医療の体制について、現状、課  題、目標、施策等を明示

平成27年3月 岩手県地域防災計画の見直し

!「医療・保健計画」に歯科医療救護活動の終了後に実施する歯科  保健活動を追記

図表4 条例の制定、計画の策定・見直し(災害歯科    保健医療に関わるもの)

(3)

計 の 目に位置付けられていたことから,

災害時における3つの歯科的役割(歯科保健医 療活動,歯科保健活動,歯科的身元確認)が岩 手県地域防災計 に明記できたことになる.

なお,岩手県歯科医師会においても,「大規 模災害時における岩手県歯科医師会行動計 」

9)

の策定,岩手県総合防災 における歯科的身 元確認作業と歯科医療救護活動,口腔ケア活動 への参加,岩手県民への災害時歯科保健に関す る普及 発等を行い,岩手県とともに今後の大 規模災害に備えて災害時歯科保健医療の取組を 進めている(図表5,6,7).

歯科活動の 大規模災害時において,行政(地域によって は歯科医師会)には歯科保健医療活動のコー ディネートが められる.そして,コーディネー トでは避難者,避難所等の歯科口腔保健の状況 をアセスメントして歯科保健医療ニー を把握 し,歯科医療救護活動や口腔ケア等の歯科保健 活動を 開する 要がある.しかし,避難所ア セスメントの一 目として歯科ニー が入って いる調査 や,避難者個人の歯科口腔診査 あ るいは歯科口腔記録 は 在しているが,歯科 単独の避難所等アセスメント (歯科版避難所 等アセスメント )については,見つけること ができない.このため,平成 25 年度から全国 の行政歯科 職,大学歯科関係者,歯科医師 会関係者等とともに「避難所等歯科口腔保健 標準アセスメント 」の検討を進めていくこと となった.なお,このアセスメント を検討す る際の な となっているものは,東日本大震 災津波において歯科医療救護班・口腔ケア班合 同の先遣隊が使った「避難所の口腔保健状況調 査 」(岩手県・岩手県歯科医師会作成)

10)

で ある(図表8).この調査 は,先遣隊が被災 地の避難所を視察する際の観察支援 ールとし て作成したものであったため,継続的な調査や コーディネートへの活用までは らなかった が,全国から 目され発 させることとなった.

全国の行政歯科 職,大学歯科関係者,歯

平成25年度 リーフレット「災害時の歯科保健医療」作成 講演会の開催

平成25年9月 岩手県総合防災訓練への参加

! 遺体処置訓練

平成26年3月 「大規模災害時 岩手県歯科医師会行動計画」策 定「大規模災害時 身元確認作業マニュアル」策定 平成

26

8

岩手県総合防災訓練への参加

! 救護所設置・運営訓練、遺体処置訓練

平成

27

7

岩手県総合防災訓練への参加

! 救護所設置・運営訓練、遺体処置訓練

! 避難所における口腔ケア訓練

図表5 岩手県歯科医師会における災害時歯科保健医療の取組

図表6 救護所における歯科医療救護活動の訓練

図表7 避難所における口腔ケア衛生教育・指導の訓練

図表8 避難所の口腔保健状況調査票(A4版)

(4)

科医師会関係者等と「避難所等歯科口腔保健 標準アセスメント 」の検討を行うにあたり,

「災害時の公 衛生歯科機能を考えるワーク ショップ」を2回開催(平成 25 年7月:盛岡,

同年9月: 浜)した.このワークショップでは,

災害時の歯科保健医療活動における公 衛生歯 科機能の 要性等を報告し,参加者の認 の共 有を図った上で,アセスメント について検討

した.その結果,1回目のワークショップには

23 名が参加し,3グループに分かれてアセスメ

ント の内容を検討したが,アセスメント の

作成には らなかった.2回目のワークショッ

プには 18 名が参加し,全員でアセスメント

の内容を協議した.また,終 後に電子メール

等による調整作業を行い,アセスメント を作

成した(図表9).このアセスメント は,避

(5)

難所名,避難者数,情報収集方法等の基本情報 のほか,口腔保健に関わる 目を①特に口腔衛 生に配慮が 要な対象者,②口腔清掃等の環境,

③口腔清掃用 等の確保,④口腔清掃状況,⑤ 歯や口の え・異常, 歯科保健医療の確保,

その他の問題から構成し,A4サイ 面1 に収めた.また, 目には,詳細評価に加 えて簡易評価の も設けた.そして,東日本大 震災津波において歯科医療救護班・口腔ケア班 合同の先遣隊が調査した結果をこのアセスメン ト に当てはめたところ, 避難所における歯 科口腔保健状況の一 表が 時間で容易に作成 でき,避難所別の状況について 見える化 を 図ることができた(図表 10).さらに,データ を時系列的に 積することで,災害時における 歯科保健医療対策の進行管理や事後評価の分 等にも活用できると思われた.

現在,学会, 修会等の場において,歯科関 係者,保健医療関係者等へこのアセスメント を 発しており,その時の参加者の意見も踏ま えて改定を続けている.現在は Ve .2.0 まで更 新しており,日本歯科医師会の災害対策にも採 用されている.4月の 本地震の際には,現地 の災害時歯科保健医療活動に活用された.そし て,岩 町を中心に大きな被害のあった8月の 風 10 号災害においても,岩 町,岩手県お よび岩手県歯科医師会の災害時歯科保健医療活 動において避難所のアセスメントに利用した.

このアセスメントについては,今後も, , 改定を行って行く予定である.詳細については,

日本災害時公 衛生歯科 会のホームページ

11)

を参 願いたい.

にお 歯科保健 活動のた に こと

東日本大震災津波で被災した歯科診療所の復 旧や被災者への歯科保健活動,地域防災計 や 総合防災 による体制整備,災害時の公 衛 生歯科活動について示したが,最後に災害時に おける歯科保健医療活動のために平時に取り組 むべきことをまとめたい.

 行動計 , 種マニュアル等の策定・見 直し

 コーディネーターの 任

(県レベル,地区レベル)

  歯科チームの体制整備

(班編成,初動班の人 ,機材の準備,

受援体制)

(県外への派遣体制)

 関係機関との役割分担,協力体制  関係会議, 修会への参加   ( 上,個別,総合)

このように取り組むべきことは多数あるが,

災害の種 ,規模,関係者の相違等により,

定通りに進むことはないため, 機応変に対応 することも 要になる.そのためには,普段か ら地域の関係機関と に連携して歯科保健活 動,地域包括ケア(在宅歯科医療を含む)等の 取組を進めておくことが重要である.

参 考   

1) 岩手県.東日本大震災津波における避難者支援活 動記録集.2014.

http://www.p ef.iwate.jp/shien/link/022254.html 2) 岩手県歯科医師会報告書.東日本大震災と地域歯

科医療.2012.

3) 岩 手 県. 岩 手 県 東 日 本 大 震 災 津 波 復 興 計 . 2011.

http://www.p ef.iwate.jp/fukkoukeikaku/keika- ku/inde .html

4) 岩手県.復興の状況

http://www.p ef.iwate.jp/fukkounougoki/jou- k ou/inde .html

5) 岩手県防災会議.岩手県地域防災計 .2014.

http://www2.p ef.iwate.jp/ ousai/

6) 岩手県.岩手県保健医療計 .2013.

http://www.p ef.iwate.jp/i ou/seido/keika- ku/002229.html

7) 岩 手 県. 岩 手 県 口 腔 の 健 康 く り 推 進 例.

2013.

http://www.p ef.iwate.jp/i ou/kenkou/shi- ka/016890.html

8) 岩手県.イー歯トーブ8 2 プラン(岩手県口 腔の健康 くり推進計 ).2014

http://www.p ef.iwate.jp/i ou/kenkou/shi- ka/027027.html

9) 一 社 法人岩手県歯科医師会.大規模災害時に おける岩手県歯科医師会行動計 .2014.

10) 郷 .東日本大震災における岩手県沿岸地

(6)

区避難所の口腔衛生に関わる環境と避難者の保健 行動.岩手公衛誌 2013;24(2):13-17.

11) 日本災害時公 衛生歯科 会 http://jsdphd.umin.jp/inde .html

参照

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