序 文
わが国における志賀毒素産生性大腸菌(shiga toxin-producing Escherichia coli;STEC)感 染 症 は,1984 年の小林らの血清型 O157:H7 の分離報 告 に 始 ま り,1984 年 の 東 京 都 内 小 学 校 で の O145:NM による集団事例,1986 年の松山市乳児 院での O111:NM による集団事例を経て
1),1990 年には埼玉県浦和市の幼稚園で,わが国で最初の
O157:H7 による集団事例が発生
2)し,園児 2 名が 死亡した.その後 1996 年には,学校給食を主な原 因とした患者数 5,727 名,死亡者 3 名の大阪府堺 市の事件を初め全国で大流行をみた.STEC 感染 による病態はしばしば非常に重篤となり,特にベ ロ毒素が微細血管内皮細胞を障害することにより 溶 血 性 尿 毒 症 症 候 群(hemolytic uremic syn- drome;HUS) を引き起こした場合には死に至る,
あるいは後遺症を残す例が少なくない
3).1996 年 以降,診断,検査,治療の技術が飛躍的に進歩し,
感染症法が整備され,集団発生事例は減少した.
しかし,散発患者,あるいは 2001 年の和風キムチ
第78
回日本感染症学会総会学術講演会座長推薦論文下痢症患者から分離された cefotaxime 耐性 志賀毒素産生性大腸菌 O26:H11 について
1)埼玉県衛生研究所臨床微生物担当,2)杏林大学保健学部臨床微生物学教室,3)東京都健康安全研究センター多摩支所
近 真理奈
1)倉園 貴至
1)大島まり子
1)山口 正則
1)森田 耕司
2)渡辺 登
2)金森 政人
2)松下 秀
3)(平成 16 年 9 月 9 日受付)
(平成 17 年 1 月 11 日受理)
下痢症患者の便から第三世代セフェム系薬剤 cefotaxime(CTX)耐性の志賀毒素産生性大腸菌(STEC)
O26:H11(stx1 産生)がわが国で初めて分離された.本患者は 17 歳女性で,2003 年 9 月水様性下痢,
発熱,腹痛を呈し,検便にて STEC O26:H11(EC03059 株)が分離され,FOM 5 日間服用後に再び同 一菌と考えられる STEC O26:H11(EC03060 株)が分離された.しかし,EC03059 株は SM,TC,ABPC 3 剤耐性であったが,EC03060 株はそれら 3 剤に加え,CTX,KM,FOM の計 6 剤に耐性であった.
EC03060 株については,CTX 耐性機序を検討した結果,クラス A に由来する extended-spectrum
β
- lactamase 産生菌の表現型の特徴を示した.さらに,PCR による遺伝子検出及び塩基配列解析の結果,CTX-M-3 型遺伝子を保有していた.プラスミドプロファイルでは,EC03060 株は EC03059 株に約 85kbp のプラスミド 1 本が付加されていた.接合伝達試験の結果,EC03060 株のこの R プラスミド上に CTX- M-3 型遺伝子が存在し,レシピエントに用いた大腸菌に接合伝達されることが証明された.
〔感染症誌 79:161〜168,2005〕
要 旨
別刷請求先:(〒338―0824)埼玉県さいたま市桜区上大 久保 639―1
埼玉県衛生研究所臨床微生物担当 近 真理奈
Key words: Shiga toxin-producing
Escherichia coli(STEC)
, extended-spectrumβ
-lactamase(ESBL), R plasmid, cefotaxime, drug resistance事例
4)のように, 一見散発あるいは家族内発生に見 えるが,実際には汚染された共通食品が広域に流 通することによって引き起こされている diffuse outbreak 事例の発生も散見され,STEC 感染症は 依然として年間感染者数(患者および無症状病原 体保有者)3,000〜4,000 名前後で推移している
5). なお,STEC 血清型 O26 は,患者や保菌者から,
O157 に次いで多く分離される STEC の代表的な 血清型の一つである
6).
埼玉県衛生研究所では,県内の STEC 感染症の 発生動向を把握するため,患者及び保菌者からの 分離菌株を収集,その血清型分布及び毒素型別,
pulsed-field gel electrophoresis(PFGE)に よ る DNA 切断パターンの解析,薬剤感受性試験等を 継続して実施し,その実態把握に努めている.今 回, 患者 1 例からわが国で初めて, 第三世代セフェ ム系薬剤 cefotaxime(CTX)に耐性を示す STEC O26:H11(stx1 産生)が分離された.その分離株 の薬剤耐性機序の解析結果について報告する.
材料と方法
1.症例の概要及び供試菌株
2003 年 9 月,水様性下痢(4 回 ! 日),発熱(37.2
℃) ,腹痛を呈して医療機関を受診した埼玉県内 在 住 の 17 歳 女 性 の 便 か ら STEC O26:H11
(stx1)が分離され,医師より保健所に 3 類感染症 の届け出があった.患者は,医師の処方により fos- fomycin 3g ! 日を 5 日間服用した.服薬終了から 3 日後,当所において除菌確認のため行政検便を 行ったところ,再び同一菌と考えられる STEC O26:H11(stx1)が分離された.
この同一患者から分離された初診時の分離株
(EC03059 株)及び服薬後の分離株(EC03060 株)
を供試して今回の検討を行った.
2.薬剤感受性試験
米国臨床検査標準委員会(NCCLS)の抗菌薬 ディスク感受性試験実施基準に基づき
7),市販の 感受性ディスク(センシディスク;BBL)を用い て行った.
供試薬剤は,通常疫学マーカーとして STEC 菌 株 に 使 用 し て い る chloramphenicol(CP;30 µg),streptomycin(SM; 10µg), tetracycline
(TC;30 µ g),kanamycin(KM;30 µ g),ampicil- lin(ABPC;10 µ g),nalidixic acid(NA;30 µ g),
cefotaxime ( 30 µ g ), ciprofloxacin ( CPFX ; 5 µ g),norfloxacin(NFLX; 10 µ g), gentamicin
( GM ; 10 µg ), fosfomycin ( FOM ; 50 µg ),
sulfamethoxazole-trimethoprim 合 剤(ST;sul- famethoxazole 23.75 µ g,trimethoprim 1.25 µ g)の 12 薬剤である.また,今回は第一,三,四世代の セフェム系薬剤,及びカルバペネム系の β −ラク タ ム 薬 剤 に 対 す る 感 受 性 を 確 認 す る た め,
cephalexin(CEX;30 µ g),cefazolin(CEZ;30 µ g),cefaclor (CCL;30 µ g),ceftizoxime (CZX;
30 µ g ), cefpirome ( CPR ; 30 µ g ), imipenem
(IPM;10µg)の 6 剤についても検討した.
3.ESBL 産生菌のスクリーニング及び確認法 extended-spectrum β -lactamase(ESBL)産生菌 のスクリーニングは,NCCLS の提唱するディス ク 拡 散 法
7)に 基 づ き cefpodoxime(CPDX) ,cef- tazidime(CAZ),aztreonam(AZT),CTX の 4 種薬剤を用いて行った.
確 認 法(phenotypic confirmatory test)に は CPDX,CAZ,CTX の 3 種 薬 剤 と,cefpodox- ime! clavulanic acid (CPDX;10µg! CVA;10µg),
cefotaxime ! clavulanic acid(CTX;30 µ g ! CVA;
10 µ g) ,ceftazidime ! clavulanic acid (CAZ;30 µ g ! CVA;10 µ g)の 3 種の合剤を用いて行った.
4.Twin test による ESBL genotype の鑑別 既報
8)の方法に基づき,CTX;30 µ g,CAZ;30 µ g,ampicillin ! sulbactam(ABPC ! SBT;10 µ g ! 10 µ g),amoxicillin ! clavulanic acid(AMPC ! CVA;
20 µ g ! 10 µ g) ,CPR;30 µ g,cefoperazone ! sulbac- tam ( CPZ ! SBT ; 75 µg ! 30 µg ), latamoxef
(LMOX;30 µ g),cefminox(CMNX;30 µ g)の 8 種薬剤を用いて行った.
5.PCR 法による β −ラクタマーゼ遺伝子の検 出及び塩基配列の決定
TEM,SHV,MEN-1(CTX-M1),Toho-1,及 び Toho-2 の各遺伝子 5 種類
8)に対する特異的な プライマーを用いて,PCR 法により, β −ラクタ マーゼ遺伝子を検出した.
また,関口ら
9)による bla CTX-M (CTX-M 型 β−
Table 1 Antimicrobial susceptibility of STEC strain EC03059 and EC03060 EC03060 EC03059
Antimicrobial agent
S chloramphenicol;30µg S
R streptomycin;10µg R
R tetracycline;30µg R
R kanamycin;30µg S
R ampicillin;10µg R
S nalidixic acid;30µg S
R cefotaxime;30µg S
S S
ciprofloxacin;5µg
S S
norfloxacin;10µg
S S
gentamicin;10µg
R S
fosfomycin;50µg
S S
sulfamethoxazole-trimethoprim;23.75µg/1.25µg
R R
cephalexin;30µg
R S
cefazolin;30µg
R S
cefaclor;30µg
S S
ceftizoxime;30µg
I S
cefpirome;30µg
S S
imipenem;10µg
S, sensitive;I, intermediate;R, resistance.
ラクタマーゼ遺伝子)をターゲットとした PCR 法,すなわちプライマー(Primer 1 BLCTX-M-3 CAL:5 ‐GGT TAA AAA ATC ACT GCG-3 , Primer 2 BLCTX-M-3CB:5 ‐TTA CAA ACC GTC GGT GA-3 ) を用いて,95℃2 分の後に,95
℃30 秒−55℃30 秒−72℃90 秒 を 30 サ イ ク ル 行った後,72℃5 分の条件で増幅した PCR 産物の 塩基配列をダイレクトシークエンス法により決定 した.
6.PFGE 法による DNA 切断パターン解析 制限酵素 XbaI を用い常法
10)により行った.
7.プラスミドプロファイル
供試菌株のプラスミド DNA を Kado&Liu の変 法
11)により抽出,0.7% アガロースゲルで電気泳動 し保有するプラスミドのプロファイルを行った.
8.プラスミド接合伝達試験及び MIC の測定 プラスミド接合伝達試験は,液体混合培養法
12)により実施した.選択平板に形成されたコロニー から菌を純培養し,プラスミドの検出,PCR 法に よる β −ラクタマーゼ遺伝子の確認を行った.
また, NCCLS による微量液体希釈法
7)により,
親株と transconjugant に対する抗菌薬の最小発 育 阻 止 濃 度(MIC)を 測 定 し た.供 試 薬 剤 は
ABPC,ABPC ! SBT,ticarcillin(TIPC),ticarcil- lin ! clavulanic acid ( TIPC ! CVA ), piperacillin
( PIPC ), cefaloridine ( CER ), cefuroxime
(CXM),CTX,cefozopran(CZOP),cefoxitin
(CFX),LMOX,IPM,AZT,KM, amikacin
(AMK)の 15 薬剤である.
成 績
1.薬剤感受性
Table 1 に デ ィ ス ク 法 に よ る EC03059 株 及 び EC03060 株の薬剤感受性試験成績を示した.
EC03059 株 は,通 常 の 12 薬 剤 の う ち SM,
TC,ABPC の 3 剤に耐性を示した.EC03060 株 は SM,TC,ABPC に 加 え て,CTX,FOM,
KM の,合わせて 6 剤に耐性を示した.追加検討し たセフェム系,カルバペネム系の 6 種薬剤につい ては,EC03059 株では CEX のみに耐性を示し,
EC03060 株では,CEX に加え,CEZ,CCL に耐 性,CPR には中間であった.
2.ESBL 産生の確認
NCCLS による ESBL 産生菌のスクリーニング
及び確認法の結果,EC03059 株はスクリーニング
法で供試した 4 剤に対しいずれの薬剤にも感受性
であった.Table 2 に EC03060 株の成績を示した.
Table 2 Screening and phenotypic confirmatory tests for β-lactamase of EC03060
susceptibility Initial screen test
Antimicrobial agent EC03060(zone diameter:mm)
Resistance 0
cefpodoxime;10µg,
Sensitive 24
ceftazidime;30µg
Resistance 14
cefotaxime;30µg
Intermediate 20
aztreonam;30µg
ESBL phenotypic confirmatory test
Antimicrobial agent EC03060(zone diameter:mm)
positive 24
cefpodoxime 10µg + clavulanic acid 10µg
negative 28
ceftazidime 30µg + clavulanic acid 10µg
positive 29
cefotaxime 30µg + clavulanic acid 10µg
EC03060 株では,4 剤のうち CPDX,CTX の 2 剤 に耐性,AZT には中間,CAZ には感受性であっ た.阻止円径は,CPDX が最も小さ く,次 い で CTX,AZT の順であった.
確認法(phenotypic confirmatory test)を実施し た結果, それぞれ単剤と CPDX ! CVA ディスク,
CTX ! CVA ディスクで,阻止円径が 5mm 以上拡 大し,クラブラン酸の強い阻害活性が認められた ことから,EC03060 株は ESBL 産生株であること が示された.
3.Twin test による ESBL genotype の鑑別 EC03060 株 の 表 現 型 の 特 徴 か ら ESBLgeno- type を鑑別するために Twin test を行い,供試し た 8 薬 剤 の 阻 止 円 径 を 測 定 し た.そ の 結 果,
EC03060 株 は,CAZ に は 感 受 性 CTX に は 耐 性 で,CTX と β −ラクタマーゼ阻害剤 CVA では阻 止円径の拡大が見られたが,SBT では見られな かった.また,CPR には中間,CMNX,LMOX,
及び CPZ の SBT 合 剤 に は,い ず れ も 感 受 性 で あった.以上の結果から EC03060 株は,MEN-1
(CTX-M1)型の β −ラクタマーゼ産生菌であると 考えられた.
4.PCR 法による β −ラクタマーゼ遺伝子の検 出及び塩基配列の決定
EC03059 株 で TEM の み,ま た EC03060 株 で は, TEM 及び MEN-1 (CTX-M1) で,DNA の増幅 が確認された.SHV,Toho-1,Toho-2 については,
いずれも増幅は見られなかった.また,EC03060
株の塩基配列データの解析の結果,1998 年にポー ラ ン ド の Gniadkowski ら
13)に よ り 報 告 さ れ た Citrobacter freundii 2526 ! 96 株 由 来 の CTX-M-3 型 β −ラクタマーゼ遺伝子と同一であることが明ら かになった.
5.PFGE 法による DNA 切断パターン解析と プラスミドプロファイル
PFGE の DNA 切断パターンを,Fig. 1 に示し た. EC03059 株と EC03060 株のパターンは非常に 類似していた.
また,Fig. 2 にプラスミドプロファイルを示し た.EC03060 株では,EC03059 株に約 85kbp のプ ラスミド 1 本が付加されているのが確認された.
ま た,2003 年 に 分 離 さ れ た 他 の 9 株 の STEC O26:H11(stx1 産生)とは,プラスミドプロファ イルがいずれも異なっていた.
6.プラスミド接合伝達試験及び MIC の測定 プラスミド接合伝達試験により,EC03060 株が 保有する 約 85 kbp の R プ ラ ス ミ ド が 大 腸 菌 W 1895 に接合伝達することが確認された.伝達頻度 は約 2.6×10
-7であった.な お PCR に よ り trans- conjugant に お い て も CTX-M-3 型 β −ラ ク タ マーゼ遺伝子の保有が確認された.
Table 3 に EC03059 株,EC03060 株,レシピエ ン ト W1895 株 及 び transconjugant の 供 試 15 薬 剤の MIC 値を示した.
ドナーである EC03060 株では,CFX 以外は供
試したペニシリン系(ABPC,TIPC,PIPC)及び
第一から第四世代セフェム系薬(CER,CXM,
CTX,CZOP) に全て高度耐性,アミノグリコシド
系の KM も高い MIC 値を示し,AZT も 32 µ g ! ml とやや高い MIC 値を示した.オキサセフェム,カ ルバペネム系(LMOX,IPM)の MIC 値は低く,
これらの結果はディスク法による成績とよく一致 していた.transconjugant では,ドナーと同一薬 剤で MIC 値の上昇が見られ,レシピエントへの耐 性の伝達が認められた.
考 察
著者らは,1996 年から 2003 年までの 8 年間に 埼玉県内でヒトから分離された 749 株の STEC に つ い て,CP,SM,TC,KM,ABPC,NA,
CTX,CPFX,NFLX,GM,FOM,ST の 12 薬 剤の薬剤感受性試験を実施している.12 薬剤のう ち,少なくとも 1 種類以上の薬剤に耐性を示した 株は,STEC 全体で 137 ! 749 株(18.3%),そのう ち O157 は 97 ! 633 株(15.3%)であり,O26 は 37 ! 100 株(37%)であった.
これまで STEC の主要な薬剤耐性パターンは,
CP,SM,TC,ABPC のいずれか単剤,あるいは これらの組み合わせによるものが多いとされてい る
14).山 本 ら
15)は,1996 年 に 日 本 で 分 離 さ れ た STEC 192 株について,41 の抗菌薬に対する感受 性を調査した.その結果 FOM,KM,SP,TC,
ABPC,NA,CP,sulfamethoxazole で耐性菌 の
Fig. 1 Pulsed-field gel electrophoresis(PFGE)pat-terns of DNA ofE. coliof EC03059 and EC03060 di- gested with Xba I(lanes 1and 2).
Lane M , molecular size marker ( lamda ladder marker);lane 1, EC03059;lane 2, EC03060.
Fig. 2 Plasmid profiles ofE. coliEC03059, EC03060, and other nine STEC O26:H11 strains isolated from human sources in Saitama in 2003. Lane 6, EC03059;Lane 7, EC03060;Lanes M1 and M2,S. Enteritidis Sa03173 andS. sonnei Sh0311 for size markers.
Table 3 Antimicrobial susceptibilities of E. coli EC03059, E. coli EC03060, E. coli W1895, and E. coli EC03060―E. coli W1895 transconjugant MIC(µg/ml) AMKKMAZTIPMLMOXCFXCZOPCTXCXMCERPIPCTIPC/ CVATIPCABPC /SBTABPCStrain 0.5210.25<0.254<0.25<0.258256>512<0.25>5120.25>512E. coli EC03059 16>128320.250.58>512>512>512>512>51264>51264>512E. coli EC03060 <0.250.50.50.13<0.252<0.25<0.252424444E. coli W1895* 32>128320.250.254512>512>512>512>51264>51232>512E. coli EC03060-W1895 transconjugant ABCP:ampicillin, ABPC/SBT:ampicillin/sulbactam, TIPC:ticarcillin, TIPC/CVA:ticarcillin/clavulanic acid, PIPC:piperacillin, CER:cephaloridin CXM:cefuroxime, CTX:cefotaxime, CZOP:cefozopran, CFX:cefoxitin, LMOX:latamoxef, IPM:imipenem, AZT:aztreonam, KM:kanamycin, AMK:amikacin *E. coli W1895:recipient of transconjugation.
存在を確認したが,ニューキノロン系,第三世代 を含むセフェム系薬剤には,全ての株が高度感受 性であったと報告している.これまでのところい わゆる第三世代セフェム系薬剤である CTX に耐 性を示す STEC の分離報告はない.しかし STEC 以外では,1980 年代中頃から,海外や国内の医療 施設で,CTX や CAZ 等の第三世代セフェム系薬 剤,セファマイシン,カルバペネムなどに耐性を 獲得した肺炎桿菌,大腸菌,セラチア,緑膿菌な どのグラム陰性桿菌が報告され,現在では,ESBL のみならず,CMY 型 β −ラクタマーゼ,IMP 型,
VIM 型などのメタロ− β −ラクタマーゼ等様々な β −ラクタマーゼ産生菌が出現し問題となってい る
16).
国内の ESBL 産生株については,欧米に多いと さ れ て い る TEM−由 来 及 び SHV−由 来 ESBL の 分 離 報 告 は 現 在 で も ま れ で あ り,CTX や CTRX を効率よく分解するが CAZ はほとんど分 解できない特徴をもつ,CTX-M 型や Toho 型 β − ラクタマーゼの報告
17)〜20)が主流である.今回分離 された CTX 耐性 STEC O26(EC03060 株)も,検 討 の 結 果,国 内 に 報 告 の 多 い ク ラ ス A 由 来 の CTX-M 型 β−ラクタマーゼ産生菌の表現型の特 徴を有し,その耐性遺伝子の塩基配列はポーラン ド で 分 離 さ れ た CTX-M-3 型 遺 伝 子
13)と 同 一 で あった.また,この CTX 耐性遺伝子は,EC03060 株の R プラスミド上に存在し,大腸菌に接合伝達 されることが明らかになった.
CTX-M 型 β −ラクタマーゼには,既に少なくと も CTX-M-1 から CTX-M-31 までのバリアント型 が確認されており,国内では CTX-M-2 や,今回と 同じ CTX-M-3, さらに CTX-M-9 産生株が多く分 離される傾向が見られる
16)17).
小松ら
18)は,下痢症が疑われた患者糞便 366 件 のうち 2 件(0.5%)からプラスミド伝達性 Toho-1
(CTX-M-2)型 ESBL 産 生 の 大 腸 菌 及 び Proteus
mirabilis 各 1 株 を 検 出 し,松 本 ら
19)は,全 国 10
医療施設から提供された CTX 耐性グラム陰性桿
菌 25 株 か ら CTX-M-2(Toho-1)型 3 株,CTX-
M-3 型 2 株 の β −ラ ク タ マ ー ゼ 産 生 Klebsiella を
検出した.川上ら
20)は,大学 病 院 で 分 離 さ れ た
CTX 高 度 耐 性 の 大 腸 菌 11 株,K. pneumoniae22 株 計 33 株 全 て に CTX-M-2 型 ESBL 遺 伝 子 の 存 在を認めた.
プラスミド接合伝達試験の結果を含むこれら多 くの解析報告の中で,患者体内における ESBL 遺伝子等の β −ラクタマーゼ遺伝子の水平伝達 は,多種多様な菌種が濃密に接触する尿路や腸管 内において同菌種または異菌種間でプラスミドを 介して高頻度に起きていることが推察されてい る.今回初診時と抗菌剤投与後の分離株で,耐性 パターンが 3 剤から 6 剤に変化した.しかし,検 体が分離株としての搬入であり,初回検便の糞便 材料の入手が不可能であったため,これまでに報 告のある E. coli,P. mirabilis,K. pneumoniae 等当 該菌以外の CTX 耐性菌の存在を確認することは できなかった.
初診時と投薬後の 2 株は,DNA 切断パターン が非常に類似しており,またプラスミドプロファ イルでも,投薬後の分離株では,初診時株と同じ バンドパターンに約 85kbp のプラスミド 1 本の みが付加されていること,さらにこのプラスミド は,接合伝達されることが明らかになり,疫学的 にこの 2 株は同一クローンと考えられた.また PFGE パターン,プラスミドプロファイルとも,
2003 年分離の他の散発事例由来 STEC O26:H11
(stx1)株とは異なっており,いずれも本事例の 2 株に特異的なパターンであることが示された.
一方, β −ラクタマーゼ遺伝子の接合伝達株は,
高い比率で同時に TC や,アミノ配糖体などの薬 剤にも耐性化することが知られている
18).今回分 離された EC03060 株も,CTX と同時にアミノ配 糖体(Ag)である KM,及び FOM にも耐性を獲 得しており,接合伝達株においても,CTX やその 他のセフェム系薬耐性と同時に KM の MIC 値も 高かったことから,伝達されたプラスミド上に KM 耐性に関与する Ag 修飾酵素遺伝子
21)が存在 する可能性が考えられた.近年,このように複数 の薬剤耐性遺伝子を 1 つのプラスミドに獲得させ る多剤耐性化の重要な因子として,トランスポゾ ンやインテグロン
22)などの特定の遺伝子構造によ る 転 移 や 挿 入 が あ る こ と が 明 ら か に な っ て き
た
23).今回分離された EC03060 株の R プラスミ ド上に,このようなインテグロンあるいはトラン スポゾンが存在するか否かについては,今後さら に解析を進めて明らかにしたい.
文 献
1)竹 田 美 文:腸 管 出 血 性 大 腸 菌 と そ の 感 染 症―
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7)The National Committee for Clinical Laboratory Standard:Performance Standard for Antimicro- bial Disk Susceptibility Tests ; Approved Stan- dard-7thEd. 2000;vol. 20, No. 1. NCCLS.
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11)木藤伸夫:Kado の変法による巨大プラスミド抽 出法.日本細菌学会教育委員会編,新しい遺伝子 操作技術の基礎,菜根出版,東京,1989;p. 28―
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Cefotaxime-Resistant Shiga Toxin-Producing Escherichia coli O26:H11 Isolated from a Patient with Diarrhea
Marina KON, Takayuki KURAZONO, Mariko OHSHIMA, Masanori YAMAGUCHI, Koji MORITA, Noboru WATANABE, Masato KANAMORI & Shigeru MATSUSHITA
1)Division of Clinical Microbiology, Saitama Institute of Public Health
2)Department of Microbiology, Kyorin University School of Health Sciences
3)Tama Branch Institute, Tokyo Metropolitan Institute of Public Health