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愛 知 県 知多 市 日長 地 区 に お け る ペ コ ロス 産 地 の 形 成 過 程 と現 況

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愛 知 県 知多 市 日長 地 区 に お け る ペ コ ロス 産 地 の 形 成 過 程 と現 況

1.は じ め に

H.日 長 地 区 に お け る ペ コ ロ ス 産 地 の 歴 史 皿.ペ コ ロ ス の 栽 培 方 法 と特 色

IV,ペ コ ロ ス の 出 荷 形 態

V.ペ コ ロ ス 栽 培 農 家 の 経 営 内 容 VI,考

孤.お わ りに

浅 野 真 希

1.は じ め に (1)研 究 目的 と方 法

ペ コ ロ ス は一 口大 の 小 球 タマ ネ ギで あ り、 普 通 の タマ ネギ を密 植 栽 培 し て 生 長 を抑 えて 育 て た もの で あ る。 特 徴 は甘 味 が 強 い こ とで 、 高 級 食材 と して 料 理 の 付 け合 わ せ の ほか 、 シチ ュ ーや カ レ ー に 丸 ご と使 われ る。 呼 称 の 由来 は 、西 欧 諸 国 の 植 民 地 で 「ペ コ ラ ス」 と呼 ば れ て い た 小 球 タマ ネ ギ:

0 が 日本 へ 入 り、ペ コ ロ ス」と称 され る よ う に な っ たPと の 説 が 有 力 で あ る。T ペ コ ロ ス は特 定 地 域 で 栽 培 され る作 物 の1つ で あ り、 全 国 生 産 量 の7〜8 割 が 愛 知 県 知 多 市 日長 地 区2>で 生 産 され て い る。

独 占的 な野 菜 産 地 の 形 成 過 程 と存 立 基 盤 に関 す る 事 例 研 究 に は 、 次 の よ

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うな もの が あ る 。

松 山智 洋3)は 、 静 岡 県 西 遠 地 方 の ヘ チ マ 栽 培 を 研 究 し、仲 買 業 者 を統 制 す る輸 出 販 業 者 の 存 在 と産 地 形 成 後 の ヘ チ マ の 需 要 の 限 界 が 、 産 地 を維 持 す る要 因 だ と記 述 して い る 。

松 井 貞 雄4)は 局 地 的 特 殊 温 室 園芸 地 域 につ い て 研 究 し、そ の存 立 要 因 は 、 消 費 が 著 し く少量 の 高 級 特 産物 生 産 で あ り、 地域 独 特 の栽 培 技 術 と、 特 殊 販 売 ルー トの形 成 、強 い 共 同 出荷 体 制 の 下 で 出 荷 調 整 す る生 産 者 の組 織 化 、 特 産 地 が あ る程 度 形 成 され た段 階 で は栽 培 技 術 が 秘 伝 的 で あ り、 新 産 地 形 成 が 困 難 な こ と を あ げ て い る 。

小 原 規 宏5)は 特 殊 作 物 で あ る ク ワ イ の栽 培 地 が 維 持 され る要 因 と して 、 ク ワ イ栽 培 に 適 した 土壌 で あ る こ と、 需 要期 と出 荷 期 が 限 られ る こ と、 共 販 で 対 応 して きた こ と、 同 族 的 結 合 の 強 さ を挙 げ て い る。

溝 口晃 之6)は 局 地 的 に栽 培 さ れ て い る銀 杏 に つ い て 研 究 し、 当初 は 備 蓄 用 だ っ たが 、粒 の 大 きい もの が 嗜 好 品 と して 首 尾 よ く市 場 性 を もつ よ う に な っ た こ と を明 らか に した 。

伊 藤 貴 啓7)は 愛 知 県 豊 橋 市 の つ ま物 栽 培 を事 例 に、 施 設 園芸 地 域 の 動 向 を工 業 的 農 業 の 視 点 か ら研 究 を行 い 、 市 街 地 隣接 とい う立 地 を生 か した 女 性 労 働 力 の 雇 用 と専 門 農協 に よ る農 家 の 強 力 な 組 織 化 が 産地 形 成 の基 盤 で あ る と した。 ま た 、 独 占的 地 位 を もた ら した の は 、 市 場 の要 求 に合 致 した こ とで あ る と記 述 して い る 。

以 上 の 諸 業 績 が 記 述 す る 要 因 を ま とめ る と、① 需 要 量 が 小 さい 、② 栽 培 技 術 の 特 殊 性 、 ③ 土壌 な ど 自然 的 条 件 、④ 出荷 体 制 や 市 場 との結 びつ きの 強 さ に よ っ て 、 特 定 地 域 で 特 定 の作 物 の栽 培 が 行 わ れ て 、圧 倒 的 な シ ェ ア を持 つ 産 地 が 形 成 され 、 存 続 す る こ とが わ か る 。

しか し、 ペ コ ロ ス 栽 培 は 、 一 般 的 な タマ ネ ギ の 種 子 で 栽 培 が 可 能 で あ る こ とや 、 全 国 的 に 広 が る タマ ネギ 産 地 で も生 産 が 可 能 で あ る こ とか ら、②

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と③ の 条 件 に 当 て は ま らず 、知 多市 の ペ コロ ス 産 地 が 圧 倒 的 な全 国 シ ェ ア を 占 め て い る こ と を説 明 で きな い。

そ こで 本 稿 で は 、知 多 市 日長 地 区 の ペ コ ロ ス産 地 の 形 成 過 程 と栽培 方 法 、 現 況 を明 らか に し、 ペ コ ロ ス 産 地 が形 成 され た 要 因 と、 今 日 ま で 産 地 を維 持 して きた 要 因 を探 る 。

研 究 方 法 は、主 に ペ コ ロス 農 家 と関 係 機 関 に対 す る 聞 き取 り調 査 で あ り、

出 荷 形 態 や 栽 培 方 法 、 現 状 の把 握 を 行 う。 また 、 各 種 統 計 資 料 や 関 係 資 料 を比 較 し、 歴 史 的経 過 と 産 地 の 実態 を明 らか に す る。

(2)地 域 概 観

知 多 市 は知 多 半 島 北 西 部 に立 地 し、 日長 地 区 は 知 多市 南 西 部 の伊 勢 湾 側 に位 置 す る(図1)。 知 多 市 の 人 口 は 約8万6000人 、 日長 地 区 の 人 口 は 約

図1研 究 対 象 地域

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4200人(2012年4月 現 在)8)で あ る。 気 候 は 愛 知 県 下 で は 比 較 的 温 暖 で 、 2011年 の 平 均 気 温 は16.2℃ 、 降 水 量 は1516.5mm9}で あ る 。 土壌 は砂 壌 土 が 多 く、 早 くか ら タマ ネ ギ 栽 培 が 導 入 され るi°)など、 ペ コ ロ ス 栽 培 に 適 す る条 件 を持 っ て い る。 知 多市 の 沿 岸部 は 臨 海 工 業 地 帯 で あ るが 、 水 稲 や 花 き施 設 園 芸 、 施 設 野 菜 な ど、 名古 屋 市 近 郊 の 特 性 を生 か した農 業11)も 営 まれ て い る。 農 作 物 の特 産物 に は ペ コロ ス の 他 に フ キ が あ る。 知 多 市 の 主 要 作 物 は時 代 に よ っ て著 し く変化 し、 よ り利 益 の あが る もの を求 め 作付 作 物 の 選 択 が 行 わ れ て きた(前 掲10)679頁)。 ま た 、 日長 地 区 で は慣 習 の ひ とつ に後 継 者 の 結 婚 に伴 う経 営 主 夫婦 の 隠 居 と生 計 の 分離 が あ り、 自活 の 必 要 性 か ら常 に 高 収 益 作 物 を積 極 的 に 求 め る 姿 勢 が あ っ た と され て い る (前掲1)11頁)。

知 多 半 島 は 大 きな 河 川 が な い 水不 足 に悩 ま され る場 所 で あ っ た 。 低 地 は 少 な く、大 面 積 を 占 め る丘 陵 は水 利 に恵 まれ な い た め 、農 業 開発 は遅 れ た。

灌 概 施 設 に 力 を注 い だ が 、 水不 足 に よる被 害 が 大 き く、生 産 の安 定 や水 田 の 拡 大 は 困 難 で あ っ た12)。そ の た め1945年 頃 知 多 市 の 久 野 庄 太 郎 な どが 、 木 曽 川 の水 を導 水 す る 運 動 を起 こ し、1955年 に は愛 知 用 水 公 団が 設 立 し事 業 が 開 始 され 、1961年 に 愛 知 用水 が 通水 を 始 め た(前 掲12)729‑736頁)。

1960年 代 以 降 、 知 多市 と東 海 市 の 沿 岸 部 に 臨 海 工 業 地 帯 が 形 成 され て 、 工 場 誘 致 が 漁 業 を壊 滅 させ た 。そ れ まで の 知 多 市 の 生 業 は半 農 半 漁 中心 で 、 沿 岸 部 に は 海 苔 養 殖 を中心 とす る 漁村 が あ っ た 。 一 戸 当 りの耕 地 面 積 は 小 さ く、 農 業 収 入 が 少 な か っ た た め 、 海 苔 養 殖 は 農 家 に とっ て不 可 欠 の 副業 で あ っ た(前 掲10)691頁)。 海 苔 養 殖 は 一 戸 当 り1シ ー ズ ン平 均100万 円 の 収 入(前 掲10)692頁)を 得 る ほ どで あ っ た が 、 臨 海 部 工 業 地帯 の 形 成 に よ り漁 場 を失 っ た 。 反対 運 動 が起 こ っ た もの の 、1959年 の 伊 勢 湾 台 風 に よる 被 害 や サ ン ドポ ンプ船 が 泥水 被 害 を受 け た こ と もあ って 、1962年 に条 件 付 き で 妥 結 し た(前 掲10)695‑696頁)。 日長 地 区 周 辺 の 旭 漁 協 組 合 員

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416人 の 一 人 平 均 補 償 額 は847万 円、 漁 協 全 体 の 補 償 額 は4859人 に約250億 円(前 掲10)655頁)で あ っ た 。 また 、 漁業 離 職 者 の約 半 数 が 農 林 水 産業 、 進 出 企 業 や そ の 下 請 け 会 社 に約40%(前 掲10)698頁)就 職 した。 当 時 の 産 業 分 類 別 就 業 者 数(図2)を 見 る と、 第1次 、 第2次 産 業 が 半 々で あ る が 、 そ の 後 は第2次 、 第3次 産 業 の 割 合 が 増 え て い っ た こ とが わ か る。

この よ う に 、知 多 市 は20世 紀 後 半 に 用水 と工 業 用 地 の 大 規 模 開 発 が な さ れ た 結 果 、 半 農 半 漁 の 地 か ら工 業 都 市 お よび 名古 屋 の ベ ッ ドタ ウ ンへ 変 貌

した 。 しか し、 農 業 は一 定 の生 産力 を持 ち続 け 、 現 在 に 至 って い る。

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■第3次 産 業 懸第2次 産 業

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図2知 多 市 に お け る 産 業 分 類 別 就 業 者 数 の 推 移 r知 多 市誌 資 料 編 四』 とr市 政概要 平成12年 度 版」

「市 政 概要平 成21年 度 絢 「市政概 要平 成24年 度版 」 より作成

II.日 長 地 区 に お け る ペ コ ロ ス 産 地 の 歴 史

知 多 市 のペ コ ロス 産 地 の 発展 過 程 につ い て は 、 『知 多 の ペ コ ロ ス』(前 掲 1)11‑24、41‑43頁)に 経 緯 が 記 述 さ れ て い る。 こ こ で は こ の 冊 子 と筆 者 の 聞 き取 り調 査 の 情 報 を も とに 、 日長 地 区 にお け る ペ コロ ス 産 地 の 歴 史 を 記 述 す る。

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(1)導 入 期

1919年 頃 、 この 地 域 の 土 地 条 件 に 適 し、 か つ 高 収 入 の あ が る作 物 を探 し て い た精 農 家 が 、 名 古 屋 の 伏 見 に あ る八 百幸 商 店 の 貝 沼 幸 三 郎 か ら"ペ コ ロ ス"を 紹 介 され た の が 、 日長 地 区へ の ペ コ ロ ス 導 入 の端 緒 で あ る。 同 商 店 で は西 洋 料 理 に 使 う高 級 野 菜 と して北 海 道 か らペ コ ロ ス を 入 荷 し て お り、将 来 、 有望 な作 物 に な る の で は な い か と考 え て い た 。 なお 、八 百 幸 商 店 の 貝 沼 は 、 佐 野 爲 左 ヱ 門13)に もペ コ ロ ス を紹 介 して お り、 佐 野 は す で に栽 培 を行 っ て い た 。 栽培 技 術 が 分 か らな か った た め 全 て 手 探 りで あ っ た が 、佐 野 が 約2年 間 試 作 を した結 果 、 次 第 に 規 格 に合 っ た もの が で きる よ うに な っ た。 日長 地 区 で は佐 野 か ら種 子 の分 譲 と 栽 培 技 術 の 指 導 を 請 い 、 試 作 を行 っ た 。

日長 地 区 で は す で に タマ ネギ の 栽培 が 行 わ れ て い た が 、 普 通 の タマ ネ ギ と違 い 、 ペ コ ロ ス 栽培 は う ま くい か な か っ た 。 佐 野 の指 導 に 従 って 作 付 し たが 、土 壌 条 件 や 気 象 な どの微 妙 な 違 い か ら規 格 に合 っ た 適 切 な大 き さ の ペ コロ ス が で きず 、 試 行 錯 誤 が 続 い た 。

1924年 頃 に八 百 幸 商 店 に 出荷 で きる ペ コ ロ ス が 収 穫 さ れ る よ う に な り、

名 古 屋 で の 消 費 量 が 少 な か っ た た め 、京 浜 や 阪神 方 面 へ も出荷 した と ころ 、 予 想 以上 の 高 値 が つ い た 。

また 、1932年 頃 に 高 収 益 作 物 を求 め て 精 農 家 が 名 古 屋 中央 市 場 へ 勉 強 に 行 き、 有 望 作 物 と して レ タス や パ セ リな どの 西 洋 野 菜 を紹 介 され た 。 試 作 して 出 荷 した と こ ろ 、思 わ ぬ 収 入 を得 た た め 、 次 第 に 作 付 面 積 が 増 加 し、

1933年 に は 出荷 組 織 で あ る 「日長 洋菜 組 合 」 が 設 立 さ れ た。 この 頃 、 ペ コ ロ ス の生 産 者 は8名 まで 増 え た が 、 ペ コロ ス は ま だ い くつ か の西 洋 野 菜 の 一 品 目で しか な か っ た 。

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(2)拡 大 期

こ れ らの 西 洋 野 菜 は 基 幹 作 物 と して栽 培 され て 、 ペ コ ロ ス も1955年 頃 に な る と生 産 者 は20余 名 に な っ た 。 ペ コロ ス は 、 ニ ン ジ ンや サ ヤ イ ンゲ ン と と もに 、 輪 作 体 系 の 中で 栽 培 され る よ うに な った 。 一 方 で 稲 作 と養 蚕 な ど との 複 合 経 営 も次 第 に変 化 し、1940年 後 半 に な る と、 冬 期 の 農 閑期 を利 用 した 海 苔 養 殖 が 盛 ん に な っ た 。 しか し、 臨 海 部 工 業 地 帯 用 地 埋 め立 て に よ り1960年 前 半 に は 漁 業 を続 け る こ とが で きな くな り、 漁 業 離 職 者 の ほ ぼ半 数 は 農 業 専 業 へ 移 っ た。 こ れ を契機 に ペ コ ロス を栽 培 す る 農 家 に転 業 した 人 も多 い。 また 、 愛 知 用 水 が1961年 に 通 水 して 、 干 害 問 題 が 解 消 した こ と

も産 地 の発 展 に 寄 与 した。

ペ コ ロ ス の栽 培 面 積 は拡 大 し、 そ れ まで 個 人 を 中 心 に行 わ れ て い た 出荷 は旭 農 業 協 同組 合 を通 した 共 同 化 へ 移 行 した 。 個 人 出 荷 に比 べ て 、 共 同 出 荷 の 方 が 独 自の 販 売 ル ー トや 量 的 な 有 利性 で 販 売 が 順 調 に 展 開 で きた か ら で あ る。1964年 に は東 京 市場 との 間 で 周 年 出 荷 の 契 約 が な され て 本格 的 な

出荷 が 始 ま り、 出 荷 容 器 も専 用 の5kgダ ン ボ ー ル を使 用 し始 め た 。 他 方 、 日長 地 区 で こ の 時 期 に 行 わ れ て い た 他 の 西 洋 野 菜 栽 培 は 、 産 地 間 競 争 が 激 化 した こ と、小 面 積 で栽 培 して い た の で 出 荷 量 が 少 なか っ た こ と、

需 要 が拡 大 しなか っ た こ とが 重 な り、 衰 退 して い っ た 。

この 時 期 は、 日長 地 区 が ペ コ ロス 栽 培 に 特 化 した 時 期 と言 え る。

(3)安 定 期

出荷 体 制 の 整 備 に よっ て 、 ペ コ ロス の 栽 培 面 積 は拡 大 した が 、 青 果 だ け で は 季 節 に よ っ て供 給 過 多 と な る危 険 が 生 じ、 冷 蔵 に よ る 出 荷 期 間 の 長 期 化 が 必 要 とな っ た。 こ の た め 、 冷 蔵 して 主 な 消 費 地 で あ る京 浜 、 京 阪 神 、 名 古 屋 へ 需 要 に応 じて 出 荷 す る体 制 を作 っ た 。 しか し、 当 地 区 の 農 業 冷 蔵 庫 は ペ コ ロ ス 専 用 冷 蔵 庫 と して 導 入 した も の で は な か っ た の で 、 貯 蔵 に

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使 って い た ダ ンボ ー ルが 吸 水 して 、ペ コ ロ ス が 腐 敗 す る 品 質低 下 が み ら れ 、 しば ら く販 売 は順 調 で は な か っ た 。

1970年 に は 当 地 区 にペ コ ロス専 用 の 選 果 機 が 導 入 され た 。 選 別 が 省 力 化 した こ と に よ り栽 培 面 積 が増 え 、生 産 者 が 増 加 す る きっ か け と な っ た。 翌 年 に は 、 生 産 量 増 大 と 品 質 向上 の推 進 に よる 産 地 拡 大 を 検 討 す る 「ペ コロ ス 生 産 者 大 会 」 が 開 催 され 、生 産者 の 意 欲 啓 発 が 計 られ た 。1974年 に西 知 多 農業 協 同 組 合 が 設 立 し、翌 年 に は周 年 出荷 をめ ざ して ペ コ ロス 用 の 予 冷 貯 蔵 庫 が 完 成 した 。 産 地 貯 蔵 や コ ンテ ナ を利 用 した 貯 蔵 、 全 量 再 選 果 出 荷 の体 制 が 整 え ら れ た 結 果 、周 年 出荷 の 実 現 と品 質 向 上 が 図 られ 、 農 家 の 意 識 も腐 敗 に よ る損 失 の 発 生 を容 認 せ ず 、 良 品生 産 を心 が け る栽 培 へ と変 化

して い っ た 。

この 頃 、 ペ コ ロ ス の 消 費 動 向 が 規 格 の 小 型 化 へ 移 行 した た め 、栽 培 密 度 は 次 第 に 密 に な り、1975年 頃 に は一 口大 に な っ た 。 密 植 栽 培 で 同 じ面 積 を 栽 培 す る に は 、 苗 の 育 成 本 数 を増 や す 必 要 が あ る が 、 早 生 系 の 品種 を 使 用 す る た め 、採 種 は 不 安 定 で あ っ た。 そ の ため タマ ネギ の 産 地 で あ る東 海 市 養 父 か らの 種 子 と苗 の 供 給 に 頼 っ て い た が 、 栽 培 面 積 の 制 約 と経 費 が 高 か っ た た め に 、 自家 採 種 に よ る種 子 の 安 定 確 保 が 、 産 地 を維 持 す る た め に 必 要 に な っ た 。 種 子 の 確 保 、 品 質 向 上 と統 一 を図 る た め に 、 地 方 振 興 補 助 事 業 を活 用 した 共 同採 種 事 業 が1979年 に 始 ま り、 計 画生 産 が 前 進 した。 採 種 用 の 母 球 は 、 当 初 は 普 通 の 大 玉 タマ ネギ を使 用 して い た が 、1983年 頃 か らペ コ ロス の2L級14iを 使 用 す る よ うに な っ た。 これ に よっ て 良 い形 質 を もっ た 球 が 選 抜 され る た め 、 品 質 向上 に 大 い に 役 立 っ た。 交 配 に は ミツバ チ を使 用 す る か 、 ハ タキ の よ うな器 具 で受 粉 させ て い た 。

また 、 集 出荷 場 が 完 成 し、1979年 に は 出荷 組 織 を改 め て 「西 知 多 ペ コ ロ ス 生 産 組 合 」 と改 名 し、 組 合 員123名 に よ っ て 発 足 した 。 同年 に は 商 品価 値 が低 い2L級 と2S級15)の 出 荷 を中 止 した 。

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こ の 時 期 は、 当 地 区 の 設 備 や 出 荷 体 制 が 整 い 、 ペ コ ロ ス生 産 に特 化 した 産 地 と して 完 成 した 時 期 と言 え る 。

(4)維 持 期

ペ コ ロ ス の連 作 栽 培 は 次 第 に 病 原 菌 の 密 度 を高 め 、1982年 の 冷 蔵 ペ コロ ス は 市 場 の 信 用 を下 げ か ね な い状 態 に な った た め 、 原 因 究 明 と徹 底 した管 理 を行 い 、 次 第 に改 善 さ れ て い っ た 。 また 、 生 産者 の増 加 に よる 作付 面積 拡 大 や 出荷 量 増 加 に伴 っ て 、1980年 に予 冷 貯 蔵 庫 を増 設 し、 周 年 計 画 販 売 が 可 能 とな っ た 。 さ ら に1986年 に1時 間 当 り3.3ト ンの ペ コ ロ ス を処 理 で き る 大 型 選 果 機 を 導 入 した。 大 型 選 果 機 は 共 同 で 年 間215時 間 使 用 され 、 ま た予 冷 貯 蔵 庫 は約350ト ンの 貯 蔵 が 可 能 で 、 年 間 約8カ 月 使 用 さ れ て い た 。

消 費地 拡 大 の た め 、1979年 には ク ッキ ン グ カ ー ドを作 成 し一 般 消 費 者へ 配 布 し、市 場 で ペ コ ロ ス 宣 伝 試 食 会 を開 催 す る動 き もみ られ た 。 また 、 役 員 が テ レ ビや ラ ジ オ に 出 演 し、 雑 誌 や 新 聞 の 取 材 も受 け て い る。 これ らの 広 報 活 動 に よ り、 買 い付 け に訪 れ る人 の 数 や 電 話 で の 問 い 合 わ せ は 増 えた が 、消 費 地 を拡 大 で きた か は 定 か で は ない 。

皿.ペ コ ロ ス の 栽 培 方 法 と 特 色 (1)作 業 手 順

ペ コ ロス は 密 植 と少 肥 に よ って 作 られ るが 、 栽 培 方 法 は 秋 蒔 きの 普 通 タ マ ネ ギ と基 本 的 に は 同 じで あ る。 しか し、 栽 培 方 法 の 特 殊性 の 是 非 を検 討 す る た め 、 こ こで 栽 培 の 手 順 を記 述 す る。 図3は 日長 地 区 に お け るペ コ ロ

ス の 栽培 暦 で あ る 。 a.種 作 り

ペ コ ロ ス の種 は30aほ どあ る共 同 の採 種 用 の 畑 、 ま た は個 人 の畑 で 自家

0[9]

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品種の早晩性 8月 9月 10月 判 月 12月 1月2月 3月 4月 5月

上 中 上A下 上 中 rr.叩 卯 下t中i r.甲 上 中}

極早生種 ⊂)一 ●◎ D 0

早生種 0 ●◎ ◎ ・ U////,

中生租 J ・o‑一 一 ・◎ ・△ 一 △

晩生橿 ,.v ● ◎ ・… △ … …◎ 一 △

O櫃 ●.元 ◎ ・…◎ 定 植 期 間 一 ・青 苗期 間 〜'栽 培 期 間

図3ペ コ ロ スの 栽 培 暦

追肥///////i.収 闘き取 り震董1二xり作硫

採 種 され て い る 。 ペ コ ロ ス の 収 穫 時 に 規 格 がL級 ま た は2L級 の 形 の 良 い もの を母 球 と し て残 して お く。 そ れ ら を適 当 な数 で 縛 り、横 木 や 竹 竿 に か け て 、 直 射 日光 の 当 た らな い風 通 しの よい 小 屋 な どで保 存 して お く。10 月 中 旬 頃 、 保 存 して い た母 球 を植 え る作 業 を行 う。 シ ー ト張 り用 の ハ ウ ス を利 用 し、 播 種 の 約1週 間前 に土 壌 改 良剤 や 元 肥 を散 布 し、耕 転 機 で 起 耕 す る。 幅 約120cmの 畦 を切 っ た後 、除 草剤 を散 布 して 、後 黒 マ ルチ を張 る 。 黒 マ ル チ に 穴 を 開 け 、 約20cm間 隔 で 母 球 の 頭 を 出 して 植 え る。 この 時 、 母 球 へ 殺 菌 剤(灰 色 か び病 や 白色 疫 病 予 防)を 添 加 す る。 翌 年 の4月 中 旬 か ら下 旬 の 葱 坊 主 出芽 前 に 、葱 坊 主 が 倒 れ るの を防 ぐた め の ネ ッ トを張 る。

6月 下 旬 の 葱 坊 主 に 花 が 付 く頃 に、 降 雨 防 止 用 の シ ー トを ハ ウ ス に 張 る。

7月 中 旬 に、 葱 坊 主 の 頭 を切 り取 り、 ハ ウス 内 や 家 の 天 井 裏 で 干 す 。9月 上 旬 頃 、干 した 葱 坊 主 を砕 き筋 にか け て 種 取 り作 業 は 完 了 す る。

品種 は種 蒔 き や 出 荷 の 時 期 をず らす た め に変 え て い る 。 主 な 品 種 は極 早 生 の養 父早 生 、 早 生 の 黄 金 、 中生 の つ ば め 、 晩 生 の 貝塚 早 生 で あ る。 自家 採 種 を行 う よ う に な った こ とで 品 種 改 良 が 可 能 に な り、 母球 の 厳 選 や 独 自 の交 配 の積 み 重 ね で 、ピ ンポ ン玉 状 の丸 いペ コ ロ ス が 作 れ る よ う に な っ た 。 丸 い普 通 の タマ ネギ を密 植 して も規 格 に 合 った 丸 い ペ コ ロ ス が で き る と は

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限 らず 、甘 味 も違 う と い う。

b。 播 種

ペ コ ロ ス の 播 種 は9月 上 旬 か ら末 日 に か け て 行 う。8月 中旬 か ら苗 場 の み 随 時 苗 立 枯 病 防 止 の 土壌 消 毒 をす る。 要 領 は 、 母 球 植 えの 時 と同 じよ う に 、 土 壌 改 良 剤 を 散 布 し た 後 、 起 耕 し、 幅 約120cmの 畦 を切 る 。 この 時 肥 料 を 施 用 す る 人 もい れ ば 、 芽 出 し1週 間 後 に 施 肥 す る 人 もい る。 種 は 10aあ た り5Qほ ど準 備 し、10〜15cm間 隔 で 幅 に 対 して8行 ほ ど種 蒔 き 機 で 種 を蒔 く。 そ の 後 、 藁 を5cmほ ど に 切 っ た ス サ と呼 ば れ る もの を散 布 す る 。 スサ の飛 散 防 止 の ため 寒 冷 紗(藁 の 代 用 の 白い 布)を ひ く。乾 燥

しな い よ う に3日 間 は 散 水 し、 徐 々 に 減 ら して い く。10日 ほ どで3cmく らい の 芽 が 出 る の で 、 寒 冷 紗 を取 り除 く。 苗 が25〜30cm以 上 に な る と倒 れ て 病 気 が 出 や す くな る た め 、草 刈 り機 や カマ で 苗 の 頭 を10cmほ ど切 る。

これ に よ っ て 日光 が 入 りや す くな り、 一 時 的 に 生 長 を止 め る効 果 が あ る。

苗 取 りまで に 降 雨 が ない 場 合 は 、1週 間 に一 度 は 散 水 す る。

c.苗 取 り

10月 中旬 頃 、 茎 が5mmく らい に な っ た もの を抜 き取 り、 同 じ太 さの も の を揃 え て150本 く らい を一 束 に す る。 大 き く育 っ た 苗 か ら順 番 に 間 引 き

し、 そ の 後 は ほ と ん どの苗 が生 長 す る の で 、 選 ば ず に抜 き取 る。

d.定 植

定 植 用 の畑 も母 球 植 え の 時 と同 じ よ うに 土 壌 改 良 剤 を散 布 して か ら、 起 耕 し、 幅 約120cm高 さ約10cmの 畦 切 りを 行 う。 元 肥 は 定植1週 間 前 に施 肥 す る 人 もい れ ば定 植2〜3週 間 後 に 施 肥 す る人 もい る。 苗 は1列 に条 間 約5cmで16〜17本 、 株 間約5cm間 隔 で 植 えて い く(図4)。 株 間 は、 手 製 の物 指 を使 うか 、等 間 隔 で 浅 く穴 を開 け て か ら植 え るか 、勘 を頼 りに植 え る 。風 向 き を考 え て苗 の 向 き を一 定 に して 、 少 し寝 か せ た状 態 で定 植 す る 人 もい る。 苗 を植 え る深 さは1cmほ どで あ るが 、 勘 が 頼 りで 難 しい。

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図4ペ コ ロス の 定 植 の 例

1

1株 ず つ 丁 寧 に植 え付 け る た め 、1日 の植 栽 面 積 は 小 さ く、 根 気 の い る 作 業 で あ る。 苗 取 り した 当 日 また は 翌 日に 定 植 を行 い 、午 前 に 苗 採 り、午 後 は定 植 作 業 をす る場 合 もあ る 。ペ コ ロス を23a栽 培 して い る農 家 の場 合 、 苗 は約40万 本 あ り、2人 で1日4000本 の 苗 採 り と定 植 か ら始 め て 、徐 々 に 量 を増 や して い く。 午 前 中 は苗 取 り、 午 後 は 土 作 り と定 植 を す るの で 、1 日に幅1m長 さ10mほ どの1畦 しか で き ない 。 苗 は量 が 多 く、1ヶ 月 で す べ て 抜 き取 る こ とは で きな い が 、植 え た ま まで もそ れ ほ ど大 き くな ら ない とい う。

栽 植 本 数 は10aあ た り27万 本 ほ ど に な る。 定 植 作 業 は10月 中 旬 か ら翌 年 2月 中 旬 頃 まで 続 く。 植 え た 後 、 直 ち に 除 草 剤 を散 布 し、 葉 が25cmか 30cm以 上 生 長 し て 倒 れ そ う に な っ た ら 、 苗 作 り と 同 様 に 葉 の 上 部10cm を切 る 。 病 気 を予 防 す る効 果 が あ る ほ か 、大 き さの 調 整 が 多 少 で きる。 葉 の 色 の 具 合 を見 て 追 肥 は2回 行 うが 、多 す ぎ る と大 き くな っ て し ま うた め 、 量 の 加 減 が 重 要 で あ る。 定 植 後 の消 毒 は2月 下 旬 か ら4月 頃 まで 続 き、14

〜15日 間 隔 で 行 う。 た だ し、温 暖 な 日や 雨 天 が 続 い た 時 は10日 目 く らい に 散布 す る 。

e.収 穫

3月 下 旬 〜5月 上 旬 に 、値 段 が 一番 よ いM級 に 近 い もの を 間引 き収 穫 し、

(13)

次 に全 体 を抜 く。 腐 敗 しない よ う に 、葉 が 枯 れ る まで 畑 に並 べ て7〜10日 ほ ど十 分 に乾 燥 させ る 。 そ の 後 、 握 れ る ほ どの 量 を縛 って 横 木 や 竹 竿 に 掛 け 、 直 射 日光 が 当 た ら ない 風 通 しの よい 小 屋 で 保 存 す るか 、 ネ ッ トに つ め て ハ ウ ス 内 で 保 管 す る。 吊 る す 方 が 保 存 は き くた め16i、母 球 を保 存 す る に は よい とい う。5年 程 前 に 、 ペ コ ロ ス の 冷 蔵 保 管 用 に 使 用 して い た ザ ル 状 の 約15kg入 る コ ン テ ナ が 農 家 に 無 料 配 布 さ れ て 、 作 業 が 楽 な こ とか ら、

コ ン テ ナ を 併 用 して 使 用 す る 農 家 もい る。

f.出 荷

出荷 の1週 間 ほ ど前 に 、 茎 と葉 と根 を切 り取 り、 乾 燥 した外 皮 を取 り除 く。 自動 選 別 機 や 等 級 の大 き さ ご と に穴 を く り抜 い た板 を使 っ て 、選 別 を 行 う。1回 の 出荷 量 を80ケ ー ス とす る と、1ケ ー ス約250個 の ペ コロ スが 入 る の で 、約2万 個 の ペ コ ロス を出荷 す る こ とに な る 。 これ を出荷2日 前 か ら5kgが 入 る ダ ン ボ ー ル に詰 め 、4月 下 旬 〜8月 中 旬 頃 の 水 曜 日 に、 あ い ち 知 多 農 業 協 同組 合(以 下 、 農協 と記 述 す る)か ら出荷 す る。

(2)ペ コ ロ ス栽 培 の 特 色

ペ コ ロス 栽 培 は苗 を植 え る深 さや 消 毒 、肥 料 の 量 の加 減 は難 しい が 、高 度 な技 術 は必 要 な い 。 しか し、総 所 要 労 働 力 は10a当 り939時 間(前 掲1) 33頁)と 多 く、そ の9割 が 定 植 や 収 穫 、出 荷 調 整 に 費 や さ れ る。 その た め 、 作 業 の 省 力 化 を 図 り、上 に 述べ た 方 法 以 外 に シ ー ドテ ー プ を利 用 す る な ど、

定 植 の 手 間 を 省 く直 播 を行 う農 家 もい た。 シ ー ドテ ー プ は農 協 か ら依 頼 さ れ 数 戸 が 作 付 け し、1年 目 は う ま く実 っ た。 しか し、 原 因 は 不 明 だ が 、2 年 目以 降 は う ま く実 ら なか っ た。 ま た 、種 を シ ー トに埋 め 込 む作 業 は業 者 が 行 っ た た め 、 手 間 賃 が か か り、 シ ー ドテ ー プ専 用 の 機 械 も必 要 で あ っ た た め 、 農 家 の負 担 が 大 き く、使 用 を断 念 した。 他 に も精 農 家 が 直 播 方 法 を 考 え 、 実 際 に 行 っ て い た。 約120cm幅 の 畦 に 定 植 の 場 合 、 種 は8行 ほ ど

13

(14)

[14

蒔 くが 、5行 と荒 く蒔 く。種 蒔 き機 も通 常 は直 径0.8cmの ベ ル トを用 い るが 、 1か 所 に蒔 く種 の 量 を減 らす た め0.5cmの もの に 変 え る 。 そ の 後M級 の 大

き さの もの を見 定 め て抜 き、 出 荷 して い く。 定 植 作 業 が ない た め非 常 に 楽 で あ るが 、熟 練 の 勘 が 必 要 な た め 非 常 に 難 し く、熟 練 者 で も う ま く育 た ず 、 考 案 した 人 しか で き な か っ た 。 この 直 蒔 法 は 画 期 的 で あ るが 、 難 し さゆ え 広 ま らず 、 定 植 の 省 力 化 は で きな か った と言 え よ う。

N.ペ コ ロ ス の 出 荷 形 態 (1)出 荷 組 織 の 推 移

日長 地 区 で の ペ コ ロス 産 地 の 特 徴 は 、共 同 の 出荷 組 織 で あ る。 『知 多 の ペ コロ ス』 に よる と 、 日長 地 区 に お い て 大 正 時 代 か ら昭 和 初 期 にペ コ ロ ス が 導 入 さ れ た 主 な 要 因 は、 販 売 ル ー トの 確 保 で あ っ た(前 掲1)36頁)。

当時 、 共 同 出荷 を取 りま とめ て い た 八 百幸 商 店 と 日長 洋 菜 組 合 に は 当 初 か ら独 自の 販 売 先 が あ り、共 同 出荷 の メ リ ッ トもあ っ た た め 、需 要 が 小 さ い ペ コ ロス の 出荷 先 が 確 保 され 、 栽培 に 着 手 す る こ とが で きた(前 掲1)36 頁)。

この よ う に 当 初 か ら販 売 先 の 開拓 と確 保 が で きて い た こ とが 、ペ コ ロ ス 栽 培 の 存 立 基 盤 と な っ た。1964年 の旭 農業 協 同 組 合 の 設 立 に よ り、 出荷 の 一 元 化、 規 格 と品 質 の 統 一 、栽 培 技 術 指 導 が で きる よ うに な っ た。1979年 には 生 産 安 定 、 品 質 向 上 、安 定 供給 な どの役 割 を 担 う強 力 な生 産 組 織 を 目 指 し、 西 知 多 ペ コ ロ ス生 産 組 合 が 発足 した(前 掲1)36‑37頁)。

しか し、 西 知 多 ペ コ ロ ス生 産組 合 は5年 ほ ど前 に 農 家 の 後 継 者 不 足 に よ る組 合 員 の 減 少 に 伴 っ て 自然 消 滅 し、現 在 で は 「日長 ペ コ ロ ス 生 産 組 合 」 と して 活動 して い る。 主 な活 動 は役 員 会 、 目揃 会 、 反 省 会 及 び 懇 談 会 、総 会 の 開催 で あ る 。技 術 向 上 の た め の勉 強 会 な どは な い が 、目揃 会 で 規 格(形 、 大 き さ、 品 質)の 確 認 や 、 ペ コ ロ スの 出 来 具 合 、 販売 状 況 な どの 話 合 い を

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行 って い る。 現 在 も共 同 出荷 が 主 流 で あ り、 品 質 の 安 定 の ため 集 出 荷 時 に 役 員 は抜 き打 ち の 開 封 検 査 を行 い 、 規 格 に合 っ た も の か を確 認 して い る。

(2)出 荷 量 と生 産 者 数 の変 化

図5は1970年 か ら1988年 まで の 西 知 多 ペ コ ロ ス 生 産組 合 の 出荷 量 の 推 移 で あ る 。1970年 と比 べ る と1988年 に は 出荷 量 が4倍 に増 え た こ とが わ か る。

ま た 、 冷 蔵 出 荷 が 半 数 以上 を 占め て お り、冷 蔵 貯 蔵 の 依 存 度 が高 い と思 わ れ る 。 図6は1970年 か ら1987年 まで の 東 京 都 中 央 卸 売 市 場 に お け るペ コロ ス の 入 荷 量 を示 した もの で 、西 知 多 産 の ペ コ ロ スが50%以 上 を 占め て い る。

しか し、 こ こ5年 間 は 出 荷 量 、 出 荷 金 額 と もに 減 少 傾 向 に あ り(図7)、

2012年 の 出荷 量 は約67ト ン と、1984年 の約730ト ンの10分 の1以 下 で あ る。

西 知 多 ペ コ ロ ス 生 産 組 合 は1988年 に 第18回 日 本 農 業 賞 の 県 代 表 に選 ば れ 、 全 国 シ ェ ア の80%を 占め て い た(前 掲1)44‑45頁)。 しか し、現 在 は 東 京 の 市 場 だ け で 見 る と取 引 量 は北 海 道 産 の 方 が 多 い とい う17)。

1979年 の ペ コ ロ ス 農 家 は123戸 、 栽 培 面 積 は2288a、 生 産 者 平 均 年 齢 は

(単 位:t) 800

600千

400

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図5西 知 多ペ コロス生産 組合の 年度 別 出荷 量の 推 移

知多のペ コロスJよn作成

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(16)

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(単 位:t) 800

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図6東 京 都 中央卸 売市 場 におけるペ コロス総 入荷数 量

r知多のペコロス」より作成

55.9歳 で あ っ た(前 掲1)49頁)。 そ の 後 生 産 者 は 減 少 し て い き 、1988年 は91戸 、栽 培 面 積 は1819a、 生 産 者 平 均 年 齢 は62.7歳(前 掲1)49頁)と な っ た 。2011年 に は20戸 を 切 り 、2012年 は17戸(表1)、 栽 培 面 積230a、 生 産 者 平 均 年 齢71.1歳 と 高 齢 化 が 進 ん で お り 、 ま た 各 農 家 に 後 継 者 は い な い 状

(17)

表1日 長 地 区 にお け るペ コ ロ ス 生 産 者 数 と栽 培 面 積 の推 移

生 産者(戸) 栽 培 面 積(a)

2012 17 230

2011 18 250

2010 20 300

2009 21 310

11: 22 330

2007

2006 27

2005 28 575

2004 31 660

2003 33 800

2002 37 900

2001 42 1100

2000

1999 45 1100

1998

1997 50

1996

1995 54

注)一:不

知 多 営 農 セ ン タ ー 提 供 資 料 お よ び 『あ ぐ り っ 子 』(No51・2004、

No74・2006)、 中 日 新 聞(1997年5月10日 朝 刊 知 多 総 合 版 、2001年5 月8日 朝 刊 知 多 総 合 版 、2002年4月24日 朝 刊 知 多 版 、2003年5月8 日 朝 刊 知 多 版 、2005年4月21日 朝 刊 知 多 版)、 毎 日 新 聞(1995年5月 1日 地 方 版 愛 知 、1999年5月21日 地 方 版 愛 知)よ り作 成 。

況 で あ る18)。 農 協 と して は 、 新 規 就 農 者 は 歓 迎 で あ る が 、 ペ コ ロ ス 栽 培 は 手 間 が か か る こ とか ら、 積 極 的 に勧 め て い な い とい う。

[17]

生 産 者 の減 少 や 高 齢 化 に よ って 出 荷 量 が 減 少 し、 選 果 機 の維 持 管 理 費 や 予 冷 貯 蔵 庫 の 冷 蔵 賃 や 、 運 賃 な どの 費 用 が か さん で 採 算 が 合 わ な くな り始 め た。 そ れ に よ り、 共 同 選 果 機 の 稼 働 は2007年 、 冷 蔵 出荷 は2002年 頃 に終

(18)

18 u

了 し た 。 ま た 、1979年 に 出 荷 停 止 し た2L級 と2S級 は 、 当 地 区 で の 出 荷 量 の 減 少 に よ り 、10年 ほ ど前 か ら2L級 とSA級 と して 市 場 に 出 荷 す る よ う に な っ た 。 大 き く な り す ぎ た2L級 は 、バ ー ベ キ ュ ー 用 に 販 売 し て い る 。

こ の よ う に 、 近 年 は 縮 小 傾 向 に あ る が 、 そ の 要 因 はVi章 で 検 討 す る 。

(3)現 在 の 出 荷 状 況

出荷 先 は 関 東60%、 関 西25%、 中 京10%、 甲 信 越5%19)で あ る 。 全 国 に 出荷 し、 地元 で あ る 中 京 圏 に は1割 しか 出荷 して い な い。 大 正 時 代 か ら 京 浜 地 方へ 出荷 し、1964年に東 京 市 場 と周 年 出荷 の 契 約 が 交 わ され る な ど、

関東 との 関 わ りが 深 い こ とが 理 由 で あ る と考 え られ る。 また 、 全 国 の 中 で も特 に関 東 地 方 の 需 要 が 大 きい と思 わ れ る。

2012年 のM級 の 出 荷 価 格 は5kg(1ケ ー ス)で 約3800円 、L級 とS級 は 約3300〜3200円 、2L級 は 約900円 、SA級 は ほ と ん ど 出 荷 し な い が 約 2000円 で あ る 。 出 荷 価 格 は1kg約700円 で あ り、 タ マ ネ ギ の 卸 売 価 格 lkg97円2°1と 比 べ る と、 約7倍 の 価 格 で あ る。 過 去20年 間 、 ペ コ ロ スの 需 要 の大 幅 な減 少 や 出 荷 価 格 の 下 落 は 見 られ ず 、 安 定 して い る とい う2D。 出 荷 は4、5月 が ピ ー クで 、 気 温 が 高 くな る と価 格 が 下 が っ て い き、M級 3600円 ほ どに な る 。7、8月 に 再 び上 が り、 よい 時 はM級 が4000円 近 い 値 段 に な る。2L級 はバ ー ベ キ ュ ー用 で 夏 場 の み 需 要 が あ る た め 、1戸 当 り

限 られ た 分 しか 出荷 で きな い 。

出 荷 量 は個 人 に 割 り当 て られ て 、 事 前 に生 産 者 か らいつ 、何 ケ ー ス くら い 出 荷 で きる か 農協 が 調 査 し出 荷 予 定 を組 ん で い る。

品 質 や形 状 の 指 導 は4月 初 旬 の 目揃 会 で 行 う。 ピ ンポ ン玉 の形 の物 が よ く、 ラ ッキ ョ ウ型 や 長 玉 製 品 、 軟 弱 な物 は 品 質 と して 悪 い た め 、混 入 し な い よ うに選 別 す る 必 要 が あ る。 日長 の ペ コ ロス は 種 作 りか ら出荷 まで手 作 業 で あ る た め 大 量 に 生 産 す る こ と はで き ない 。 しか し、 各 取 引市 場 で は 高

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品 質 の 「日長 の ペ コ ロ ス 」 で 名前 が 通 っ て お り、 信 頼 も厚 い 。 そ の た め 、 一 人 が 品 質 の 悪 い もの を出荷 す る と 日長 の ペ コ ロ ス 全 体 の信 頼 を落 とす た め 、 十 分 な注 意 を払 っ て い る 。

V.ペ コ ロ ス 栽 培 農 家 の 経 営 内 容 (1)ペ コ ロ ス 栽 培 農 家 へ の 聞 き取 り

こ こで は 、 農 家 の 事 例 を も と に 当地 区 に お け るペ コ ロ ス産 地 の現 状 を明 らか した い。 調 査 方 法 は聞 き取 りで あ り、2012年8月2日 か ら同 年11月25 日ま で の10回 行 った 。 調 査 対 象 者 は 日長 ペ コ ロ ス生 産 組 合 の 組 合 長 か ら紹 介 され た 、組 合 員17戸 の う ち の6戸(そ の う ち の1戸 は 、新 規 就 農 者 の た め未 出荷)と 、個 人 出 荷 を行 って い る1戸 の 、計7戸 で あ る(表2、3、4)。

調 査 内 容 は 、農 業 従 事 者 、経 営 耕 地 面 積 、栽 培 開 始 年 、出 荷量 、売 上 金 額 、 平 均 労 働 時 間 ・日数 、営 農 の志 向 、 後 継 者 の 有無 、 栽 培 に苦 労 す る点 な ど

で あ る。

a.A農

A農 家 は 父(84歳)、 母(83歳)、 世 帯 主(52歳)が 農 業 に 従 事 す る 専 業 農 家 で 、種 作 りは 父 、選 別 は 母 と世 帯 主 な ど、3人 で あ る程 度 分 担 を し なが ら農作 業 を 行 っ て い る 。 また 、 収 穫 や 出荷 作 業 の 時 期 は 人手 が 足 りな い た め姉(56歳)を 臨 時 で 雇 って い る。 世 帯 主 は8年 ほ ど前 に諸 事 情 で 会 社 員 を辞 め 、 両 親 が や って い る こ とや 、幼 い こ ろか らペ コ ロス を作 る 手 伝 い を して い た の で 、 ペ コ ロス 栽 培 を引 き継 い だ 。

ペ コ ロ ス の 栽 培 面 積 は25〜30aで 、 他 に 自給 用 の 米 と野 菜 類 を作 っ て い る。 世 帯 主 の 平 均 労 働 時 間 は1日 約8時 間 、 多 い 時 は 約12時 間 で あ り、 年 間 労 働 日数 は 約300日 で あ る。2012年 度 は1800ケ ー ス(1ケ ー ス5kg分) 出荷 し、 日長 地 区 の ペ コ ロ ス農 家 の 中 で は 出 荷 量 が も っ と も多 い 。 売 上 金 額 は540万 円 で あ る。 種 は 共 同 の 圃 場 で 作 っ て い る 。 ペ コ ロ ス栽 培 で 苦 労

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(20)

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表2日 長 地 区 ペ コ ロ ス 栽 培 農 家 の 農 業 経 営 農家 栽培 地区 経 営 耕 地 面積(a)

栽培開始年 出 荷 量

(ケ ー ス/5kg)

売 上 金 額

(P1) 採種方法 出荷形態

ペ コ ロ ス 水稲 その 他(自 給 的作 物)

A 日長 25‑‑30 不明 不明 2004 :11 540万 共同 共同

B 日長 23 23 15 1970年 代 後 半 1500 450万 共同 共同

C 日長 20 不明 3 1960年 代 X11 420万 個人 共同

D 日長 23 不明 不明 1996 1300 390万 個 人 共同

E 大興寺 10 6 20(荒 地) 2011 440 130万 購入 共同

F 日長 10 不明 不明 1960年 200 60万 購入 個 人

G 日長 10 20 2012 不明

注1)採 種 方 法 二共 同 …共 同採 種 圃 場 利 用 個人…個人採種

表3日 長 地 区 ペ コ ロ ス栽 培 農 家 の 労 働 力

聞 き取 り調 査 よ り作 成 。

農家 農業従事労働力 平均

労働 時間

年 間

労働 口数 営 農の志 向 後継者

常時 臨時

A 主 ■(52)父(84)母(83) 姉(56):収 穫 、 出 荷 時 の 週1回 8 300 縮 小 N

B 主 ■(79)配 偶 者 口(76) 息 子(49と48):収 穫 、 出 荷 時 の 土 日 6 365 現状維持 N

C 主 ■(82)配 偶 者 口(73) 息 子(47):日 曜 日(不 定 期) 8 300 縮 小 N

D 主 ■(76)配 偶 者 口(68) 息 子(45)嫁(43):収 穫 、 出 荷 時

孫(17、15、10) 10 300 現状維 持 N

E 主 ■(59)配 偶 者 口(54) い と こ(43)友 人(59):収 穫 、 出 荷 時 4‑4.5 300 拡大 N

F 主 口(79) 息 子(54)孫(30代):収 穫 、 出 荷 時 8 365 縮 小 N

G 主 ■(24) 拡大 N

注1)■:男 口:女 性

注2)後 継 者:Y… い るN… い な い 聞 き取 り調 査 よ り作 成 。

参照

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