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社会的上昇移動論の問題と分析視角

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(1)

社会的上昇移動論の問題と分析視角

その他のタイトル Problems and Analysis of Upward Mobility

著者 中道 実

雑誌名 関西大学社会学部紀要

巻 3

号 2

ページ 81‑97

発行年 1972‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/10112/00023224

(2)

中 道 実

「全ゆる人に開かれた栄光への階段・アメリカの夢」が

1930

年代の不況時代に形成されたムー ドを反映して,「神話」から「現実」の域に引き戻されて検討しはじめられた時,「アメリカ社会 の階級的固定化」を主張する人々と,これとは反対に「依然として固定していない」と主張する 人々の間に,所謂階級構造固定化論争が生まれ,人々の特別な興味を呼び起こしたが,それは P

・ソローキンによって始めて体系化,組織化された,成立間もない社会的移動論に肥沃な土壌を 提供することとなった。

P ・ソローキンにおける社会的移動の概念内容と今日の諸学者におけるそれとの問に,著しい 見解の相違がみられるのは,社会的移動研究の現象への適用範囲が階級構造固定化論争を通じて 著しく変容されてきたものと考えることができる。例えば, P ・ソローキンの定義「社会的移動

. . . . .  

とは個人(集団を含む)ないし社会的事物ないし価値(人間活動によって創造され,変容された .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  . 

もの)が一つの社会的位置から他の社会的位置へ(水平的もしくは垂直的に)変化することを意 味する

1)

」と今日の諸学者たちの間のほぼ一致した概念内容を最も近似的に代弁しているといわ . . .  

れる,非固定化論者,

B

・バーバーの定義「社会的移動とは(個人の)上・下社会階級間の上昇

・下降移動,もっと厳密にいえば,上下に評価される相対的に専従的な機能的に意義のある役割 間の移動であるい」との間には,対象論的に極めて明瞭な差異が認められるのである(傍点部分は 筆者が挿入)。具体的には第一に分析の単位に関してであり,第二に移動の方向に関してである。

階級構造固定化論争が社会的移動研究に発展的影響を及ぽしたのは,概念論的側面ばかりでは ない。その中心論争点である「アメリカの社会が固定化されつつあるか,あるいは相対的に開放 されているままであるか」が,事実的には「アメリカ社会における社会的移動が減少しているか,

同じであるか,または増加しているか」によって論じられたことの必然の結果は測定論的に社会 的移動研究を限定・精密化することになったからである。それは一方では下降移動を閑却視し,

上昇移動を重視しながらある一定の社会におけるその移動率測定の必要を生み出し,他方ではそ の上昇移動がいかなる原因によって説明されるか,の考察を要求してきた。

1) P. A. Sorokin, Social and Cultural Mobility,  1959, p. 133.  2) B. Barber, Social Stratification, 1957, p. 356. 

(3)

関西大学「社会学部紀要」第

3

巻第

2

かくて, 「平等主義」と「業績主義」のアメリカニ大価値原理を基盤にして生まれた階級構造 固定化論争が社会的移動研究の土俵上で争われることにより,・社会的移動論はイデオロギー化さ れた「平等主義・業絞主義」による色づけを施されながら,概念論的,測定論的に変化,精密化 され,これと並行して台頭してきた計量的方法による実証的分析の発達と相まって,経験主義的 実証主義の色彩を色濃く帯びるにいたったのである。

以下,本稿では1

926

年にはじめて体系的,組織的研究の端緒が開かれてから,

1950

年代に頂点 に達した階級構造固定化論争を経て,今日既に記述的研究から証明的研究への移行過程にある社 会的移動論,そのなかでも特に上昇移動論に脚する若干の問題を検討するなかで,それの概念内 容を整理し,それへの接近の仕方並びに理論化への方向づけを提示してみたい。

P ・ソローキンの社会的移動概念は,冒頭にかかげたその定義からも明らかなように,個人は 勿論,「商品流通などの経済現象,政党加入などの政治的現象, 宗派替え, マス・コミュニケー ション,流行,主義,思想の伝耀などの文化的諸現象

1)

」,更には,ある新しい集団の形成や現存 する集団の分解,集団全体としての上昇・下降現象をも分析対象に含めようという包括的総括的 な内容をもつものであり,それだけに使用範囲が広く便利な反面,科学的な説明の道具として果し てどれだけ有効たり得るかどうか疑わしいものであった。それ故,過去40 年あまり,アプローチ 的にも質的にも非常に多様な移動研究が共通して追求してきた方法的精密化と実証的裏づけの試 みによって,今日それは概ね個人の変動を実証的に捉えようとする方向に限定されつつある。

確かに,個人,家族はもちろん階屈,地域社会,全体社会などおよそ人間のカテゴリーの全て

を分析対象に含めようとする K ・ヤング, R•W ・マックのような立場もある 2) し,また,今日

の大部分の移動論者に共通した,個人移動(世代内移動,世代間移動)と集団移動の両者を扱お うとする

H

・ゴールドハマーに代表される立場もある

a)

。しかしながら,実際に彼らの著作の中 で論じられたのは,いずれも個人を分析対象にしたものであった。それは明らかに集団それ自体 の移動研究の未発達を反映するものであるが,この背後に「ある集団の成員である個人は成層 構造において,その集団の成員であるという事実によって,社会的移動を経験することができ るヽ)」といった,集団ないし階脳などの移動を論じるなかで,その実,個人の移動に焦点を合わ

1)福武直編,「現代人の社会学」,河出書房新社,昭和3

:a,169

頁 。

2) K• ヤングと R•W ・マックは社会的移動を定義して「社会的移動とは個人,集団,あるいはカテゴ

リーの地位に生ずる変化である」としている。

K. Young and 

R .  W. Mack, S

ociolagy and Social Life, 1959, p. 213. 

3) H ・ゴールドハマーは社会的移動を定義して「社会的移動は個人•家族•集団のある社会的位置から

他の社会的位置への移行である」としている。

H. Goldhamer, "Social Mobilityt in D. L. Sills(ed.), International Encyclopedia of the Social  Science, 1968, p. 429. 

4) K. Young and R. W. Mack, op.  cit., p. 214. 

(4)

せようとする,一般的な傾向が存在することは疑いない。これは階級構造がどの程度固定化して いるか,または流動的であるかを明証する重要な指標としての移動率が測定論的に個人を単位と することを要求するといった技術的な要請と相まって,現代産業社会では個人的な移動がいまや 支配的なクイプになったとし,個人をもって社会的移動の単位に代えようという暗黙的な了解

15)

とが相乗的に作用した産物と考えられる。

しかしながら,個人の移動をもって社会的移動研究に代えようとする根強い傾向は,ややもす れば,その結論を社会的文脈から裂かれたバラバラの事実によって基礎づけ, しかもこれらの事 実の選択が偶然のものではなく,ある偏見ないしイデオロギーに沿ったものにされる危険性を招 来しがちである。およそ「いかなる具体的状況においても,個人の社会的移動は社会一経済的構 造の変動を含めた社会的変動の特定の文脈内部で問題にされる」べきであり,社会的移動の十分 な理論は個人と集団と全体社会のレベル相互の関連によって表現されることを要求するものだと

いう C•F ・ウェストフ等の主張8) は,社会的移動論者への説得力ある警告となっている。ここ

に,現代産業社会の機構を理解するのに基本的に重要であるとされる社会的移動研究の意義が付 与されるのである。

1 [  

多様な社会的移動に関する定義に一貫して貫ぬかれている本質的規定は,それが社会的空間内 で生起する空間現象であるということである。社会的空間とは P ・ソローキンによれば「自然現 象が配置される一種の宇宙」としての幾何学的空間と述って「地球上の人間ポビュレーションか ら構成される一種の宇宙」であり,分析的には

(1)

複数の人間の存在と

(2)

それらの人々の間の直接

5) 社会的移動をもって「相対的に専従的で機能的に意義的な役割相互間の移動」と規定した B•

パーバ

フル●イム

ーは「現代社会ではほとんど全ての相対的に専従的で機能的に意義のある役割は,仕事の役割,即ち 職務 と定義づけられる傾向があ」り, 「現代世界における典型的な職務は労働組織の効果的な機 能遂行に対する責任を保有するための個人の知識ないし能力に基づいて,個人的に開かれている」と 主張した。

B. Barber, op. cit,.  p.  371. 

また「社会的移動に関する最高の業績」と賞讃された,優れた業績を著わした S•M ・リプセット,

R・ペンディクスも社会的移動という用語が一般的合意に基づいて一定の上下的な評価が与えられて

いる位置と位置との間を個人が動く過程を指しているものと理解し, 「社会的移動を研究する場合,

われわれは諸個人がその社会体系の中で一定の格づけをもっているある位置から,より高いまたは低 い位置へと動く過程を分析する」ものであると述ぺている。

S• M•

リプセット,

R

・ベンディクス著,鈴木広訳,『産業社会の構造」,サイマル出版会,昭和

44

年 , 2頁 。

6) C. F.  Westoff, M. Bressler and P. C. Sagi, "The Concept of Social Mobility,‑Amer. Socio/.  Rev., Vol. 25 (1960),  p.  375. 

(5)

関西大学『社会学部紀要」第3巻第2

的・間接的な社会的つながり,を要件として成立する空間である

1)

。社会的空間が幾何学的空間 とは全く異質なものであるならば,それからの派生物である社会的位置や社会的距離も同様に自 然的位置,自然的距離と全く異なったものとして把握されるだろう。社会的空間における人間な いし社会的事象の位置は,「準拠点として選ばれた他の人間ないし他の社会的事象との関係の規 定」によって得られるわけであるが,その位置づけの準拠点には幾何学的空間内の物理的事象を 位置づける際に用いられる絶対的基準の性格をもつ自然的準拠点(例えば,月,太陽,極地,グ リニッチ等)のようなものがなく, いきおいそれは各研究者個人の選択にまかされることにな る。しかし,地球上には何十億の人々が存在し,それに応じて無数の集団が形成されるのである からこれらの人々ないし集団との関係を記述する方法は非常に複雑であり困難であると共に,準 拠点として選ばれた人々ないし集団が特殊性を明示するものでない時にはその記述はほとんど意 味をなさないことになる。そこで, P ・ソローキンは社会的位置づけの単純化,統一化のために 次の三段階を設定するのである。

(1)

測定対象たる個人の特定諸集団に対する関係の記述

(2)

ある一 定のポヒ゜ュレーション内部にあるこれら諸集団の相互関係の記述

(3)

このポビュレーションと人間 の宇宙に含まれる他のポビュレーションとの関係の記述である。つまり,ある個人の社会的位置 は ( 1 ) まず彼がいかなる家族を有し,いかなる民族に婦属するかが知られ, ( 2 ) 次いで同一集団の中 にも全く異なった多様の位四が存在するのであるから,一定のポヒ°ュレーションのこれら基本的 集団のそれぞれの内で彼がいかなる位置を占めるかが明きらかにされ,

(3)

そして最後にそのボヒ°

ュレーションが人間宇宙の中でいかなる位置を占めるかが記述された時,はじめて確定されるの である

2)

。ここに,ある人の社会的位置を知るための基本的な三つの観点を見ることができる。

そのーは彼がいかなる社会的集団に所屈しているかであり,その二は彼がそれらの諸集団にあっ ていかなる機能を果しているかであり,その三は従って彼が人間宇宙の中でいかなる社会的位置 を占めているかという観点である。

位骰がひとたび確定されるや二者の間の空間をさすものとして距離の観念が生まれてくる。元 来距離は線的二次元的現象であるから,社会的距離は「社会的空間に位置づけられた社会的位置相 互間の二次元的空間」と定義することができるだろう。前述の社会的位置づけの規定からすれば,

同一の社会集団の成員であり,この集団の内部で同一の機能を遂行している人々は同一の社会的

1) P•

ソローキンは社会的空間成立の条件として

(1), (2)

を示唆しえたにもかかわらず,

(1)

条件の充足を もって

(2)

条件の充足を直ちに帰結しているのであって,若干論理的あいまいさを残している。これに 対して,人々の間に取り交わされる相互作用という媒介変数をもって独自の空間論を提示したのが長 谷川昭彦氏である。氏は「相互に孤立して居住する人の間には充たされざる空間一無が存在するだけ であ」り,この二者が相互作用を行なう時にはじめて「空間は充たされ,生きたものとなる」と考え て,前者を「自然的空間」,後者を「社会的空間」と名づけた。本稿では, 氏のいう「相互交渉」を 盤的側面ではなく,質的形式的側面から規定している。

P.  A. Sorokin, op.  cit . .p. 4. 

長谷川昭彦,「社会的空間の中心と周辺」,ソシオロジ

35• 3

経汁併号 昭和

39

年 。

2) P.  A. Sorokin, op.cit., pp. 56. 

(6)

位置にあり,逆にこれらの点において相異なる人々は相異なる社会的位置を有することになる が,人々の社会的位置が類似すればするほど社会的空間において彼らはますます近接し,逆に人 々の社会的位置が相違すればするほど社会的空間において彼らはますます隔遠していると表現さ れうる

s)

。この場合,二者の間の距離が単に水平的レベルで測定されるのみならず垂直的レベル でも扱われるぺきであることはいうまでもない。

このように,社会的距離の観念は社会的位置そのものの規定だけではなく,それが社会空間内 において他の社会的位置といかなる関係によって結ばれているかを明らかにすることを前提と しているのである。そして社会的空間内である社会的位置を占める個人を他の社会的位置を占め る個人とある社会集団の中であるいは全体社会の中で関連づける方法は,それらを垂直的・水平 的次元に沿って配置することである。これをわれわれは社会的位置の「ヒエラルヒーにおける相 対的位置」側面という。

ヒエラルヒーとは E•B ・スミュリヤンによれば,「諸個人がどの程度

社会的に是認された,あるいは一般的に望まれる態度ないし特徴を所有あるいは体現するかの比 較に関しての優等ー劣等スケールに序列化されたもの

4)

」をさす。それ故, 「ヒエラルヒーにお ける相対的位置」とはある共通な特徴の所有ないし体現に関し,人々を同一視するがその共通な 特徴を彼らがどの程度所有あるいは体現するかを尺度的に表現する位置を意味する。これは言葉 を変えていえば,全体社会内部でのフォークウェイズやモーレス等の社会的諸規範並びに社会的 威信・社会的評価基準に基礎づけられ,序列化された地位としての社会的地位をさしているもの

に他ならない。

とすれば,われわれは今までの論議からして「社会的移動は社会的空間における個人の社会的 地位の移動である」と解することが可能なのであり,それは論理的には三つの方向,即ち低い地

3)社会的距離観念に,類似した概念として心理的距離観念があるが,両者はしばしば混同して用いられ

ることがある。「社会的距離とは個人間あるいは集団間において相互作用を行ない,親密な社会関係 を維持しうる可能性の程度を表現するものである。個人の間における 何となくけむたい 敬遠す

る”といった気持•態度などは社会的距離の存在することを物語っている」といった表現はこの一つ

の例であるし,また最も代表的な社会的距離尺度の原型として社会的距離を科学的・数量的に測定し ようとした社会心理学者ボガーダスになるポガーダス尺度も心理学的な態度尺度にほかならない。こ

れに対して P•

ソローキンはボガーダスやパーク等によって提示された社会的距離観念が心理学的,

主観的であるとして社会的距離と心理的距離とを区別する見解に立つ。即ち,共感や反感に関する心 理学的研究が価値あるものであることは認めながらも, これが心理学的であり主観的(社会的距離を 主観的な好悪の感情によって測定する限り)であるという点で,客観的(諸集団は客観的に存在する)

であり,社会学的である社会的空間,社会的距離概念と区別するのである。親近感ないし理解に基づ

<距離としての心理的距離は社会的位置の類似・相違に基づく社会的距離とは厳に区別さるぺきであ るが,両者には緊密な関係があることも無視されてはならない。「諸個人の社会的位置の類似は通常

それが彼らの所属する類似の社会的集団によって彼らに内面化された習慣•関心•慣習•モーレス・

伝統の類似を意味するが故 IC•

同類志向性 を生み出す。同類志向的であれば彼らは異なった社会集 団に所属する人々に対するよりも,より連帯的になるだろう」からである。このように,社会的距離 は心理的距離を規定する面を有するが,同時にそれはまた前提条件ともいえるのである。

福武直編,前掲書,

48

頁 。

P.  A. Sorokin, op.  cit.,  p.  10. 

4) E. B. Smullyan,  Status, Status  Types,  and Status Interrelations• Amer.  Socio/. Rev.,  Vol. 9 (1944) p.  151. 

(7)

関西大学『社会学部紀要」第

3

巻第

2

位から高い地位へ,高い地位から低い地位へ,あるいは同一水準の二つの地位間のいずれにおい ても起こり得るだろう。移動のこれらの三つのタイプは,それぞれ上昇・下降,水平移動と名づ けられているが,これは既に P ・ソローキンにあって明確に規定されていたもので,今日までほ とんど修正をうけておらず,ウェストフ等がいうように社会学概念の中にあって最も安定したも のの一つとされている

5)

このように社会的移動は,本来方向的には無限定であるべきなのであるが,今日「社会的移動 とは社会階級間の上昇ないし下降である

o)

」と定義した

B

・バーバーにみられるように,それを 方向的に上下に指定することが通説となっている。かかる立場は既に P ・ソローキン自身によっ て開かれていたものであり,彼は現実に社会的空問内に存在している現象は垂直的次元と水平的 次元に二大別され得るとしながらも,その関心はもっぱら垂直的次元における社会的現象を究明 することに向けられていたのである

7)

。そしてそれ故にこそ

1930

年代以降のアメリカの階級構造 に関する神話を科学的に反省する為の有効な用具となり得,それを契機にますます発展せしめら れてきたのである

s)

ただ社会的移動を「個人の垂直移動」と捉えてみたところで,階級構造の固定化ないし流動化 がもっぱら上昇移動率の増加ないし減少によって論じられてきたので,焦点が上昇移動に合わせ られてきたことは疑いのない事実である。確かに, このことは A・L ・ストラウスがいうよう に,アメリカは他の国とは違って平等で機会に満ちた新世界だというイメージが移動に関する社 会学的研究を限界づけ,「下陪社会に関する有名なものを除いて下降移動にはほとんど注意を払 わなくなる」結果を招来したと解することもできるだろう

o)

。しかしながら,社会学者としての そうした反省とは別に,われわれの本稿での関心がアメリカの階級構造固定化論争の中で方向づ けられ展開された社会的移動研究の中に何らかの分析視角を探ろうとするところにある以上,ゎ れわれの視野も同じ上昇移動論の土俵へと誘われていかなければならない。

5) C.  F.  Westoff, 

M. 

Bressler and P.  C. Sagi, op.  cit., p. 377. 

6) われわれの定義と B•

バーバーの定義は本質的には一致するものである。一般にアメリカ社会学にあ っては

W.L.

ウォーナーの規定にみられるように階級なる概念によって「社会的に上位の地位ある いは下位の地位にあると,社会の全員によって信ぜられ,格づけられた個々人の序列」が意味されて おり,階層従って社会的地位の概念と階級の概念とはしばしば互換的に用いられる。「社会的地位

(階層)一階級というのはアメリカ社会学の用語法では常識的」なのである。

綿貰談治,「階層」,平凡社大百科辞典,

3738

頁 。

安田三郎,「社会的移動論への統計的序説」,東京教育大学文学部紀要第

9

号,昭和

37

年 ,

7

頁 。

7) P. A

.  S

orokin, op.  cit., pp. 89. 

8)

わが国の社会学会が国際的な比較を前提として全国的な規模で階層構造調査を実施した時の社会的移 動の定義は次の通りであった。「社会的成層とはその成員の社会的地位の差異に基づくー全体社会の 段階的,あるいは階層的構造をさし・・・,社会的移動とはこのような一社会の階層的構造の変化の根底 にある,各成員の生涯における,また各成員家族の世代間における社会的地位の推移を意味する。」

日本社会学会調査委員会編『日本社会の階層的構造」有斐閣,昭和

33

年 ,

1

頁 。

9) A

.  L

.  Strauss, The Contexts of Social MobilityIdeology and Theory—, 1971. pp. 24. 

(8)

][ 

上昇移動率が増加してきたか,減少してきたかを明きらかにしようとする場合,社会的地位の 序列化を何によって確定するかがまず問題となる。社会的移動研究者は通常彼らの注意を職業的 ヒエラルヒーにおける移動に集中してきた。およそ,ある指標が科学的研究によって有効である かどうかは,それに必要な次の条件を充足する程度によって評定されるといわれる

1)

。 ( 1 ) 科学は 標準化された,即ち指示すると思われる全てのものに対して厳密に同じやり方,測定で適応され うる指標を求める。 ( 2 ) 科学は信頼できる,即ちたとえどんなに多くの人々が指針ないし測定用具 としてそれを用いたとしても同じ結果を導き出す指標を追い求める。 ( 3 ) 科学は尺度指標,即ち真 の尺度範囲に沿って,所与の現象を量的,質的に整序することを可能ならしめるものを求める。

( 4 ) 科学は経済的・即ち最少の費用と努力によって最上の結果を与え, しかも容易に用いられる指 標を求める。

つまり,従来の社会的移動研究に社会的地位の十分な単一の指標として,職業を扱う傾向があ り,ややもすれば職業移動と社会的移動とを相互交換的に用いる傾向さえ生じているのは,所得 源,所得額,生活様式,権力等々といった多様な階級基準の中にあって,それが上の四条件を最 もよく満たしているとの判断があるからに他ならない。実際,純粋に実践的レベルで社会的移動 研究の効果をあげようとすれば,現段階ではまず第一に単一の指標を用いることであり,第二に 子と父の両方に関する,子によって供給されうる指標を用いることであり,第三に通世代的,比 較社会的に相対的に安定した指標を用いることが必要なのであって,職業はこれらの要件をほぼ 満たしてくれる利点を備えているといえる。かくて,ほとんど全ての研究者は,社会的地位を職 業的地位に代えて用いているのであるが,逆にいえばこのことはこれからの移動研究に大きな制 約を課していることにもなる。その第ーは社会的移動研究が時代間比較を要求されるものとすれ ば,その比較は職業を指標とすることによって保証されるということであり,その第二は社会的 移動が社会的地位の変化を意味するというわれわれの見解からすれば,社会的移動が職業移動と して表現される以上,社会的地位も職業によって代弁される方がより科学的,経済的であるとい うことになる。

確かに社会的移動の単一の指標として職業を用いることに疑義を説える人はいる。例えば,ゥ ェストフ等は単一の指標として職業を用いる時に,社会階級理論家によって暗黙に便宜上認めら れる合理化は ( 1 ) 社会階級を代表すると伝統的に想定されたいくつかの指標の間に高い相関関係が 存在するという静的分析的仮定と ( 2 ) 階級諸指標におけるいずれの変化も他の全ての指標における

1) B. Barber, op. cit . .pp. 168169. 

2)

社会的地位に占める職業の意義に関する詳細は筆者の京都大学における修士論文(昭和

46

年)の中で

取り上げておいた。

(9)

関西大学「社会学部紀要」第3巻第2

かなりの重要な変化によって伴なわれるだろうという動的分析的仮定に基づくものであり,成層 体系の静的分析の基礎となる諸指標の相関関係の想定が,直接社会的移動の動的過程研究に適応 できるとは,決して明きらかでないと主張している。そこで彼らは職業移動は考えられ得る変化 の一領域即ちプレスティージ・ヒエラルヒーにおける移動のみにかかわるものであるが故に,社 会的移動と職業移動とをほぼ同義とみなし得るようになるまでに重要な付加的次元が検証されね ばならないという批判の上に立ち,実際に2

2

の移動測度を用いて,それを職業移動,所得変化,

地域移動,移動知覚と願望のレベルに分類して移動の多様な側面に適合したデータを集め,その 相関を分析した結果,社会的移動は複数の構成要素から構成される複合的な多次元概念であると 結論したのである

8)

このような有力な批判があるにもかかわらず,社会的移動研究に職業を指標とする傾向が弱ま るどころか定着した感さえあるのは,経験主義的実証主義が先行してきた移動研究にあって,上 にのべたような諸々の条件を満たす指標を職業以外に求めることは現段階では不可能であると共

に, W• L

・ウォーナー等の古典的研究

4)

に始まって多くの有効な実証が多様な階級基準相互間 の影轡をみるとき,職業は他の変数によって影響される以上に,他の変数に影響を及ぽす公算の 大きいための十分な保証を与えている

ti)

と考えるからである。ことに「現代社会ではほとんど全 ての相対的に専従的で機能的に意義のある役割は汀職務、と定義づけられる傾向がある

e)

」とい う

B

・バーバーの卓見にみられるごとく,現代社会はますます「職業社会」化しつつあるのであ り,社会的地位に占める職業の位置はますます大きくなってくるものと思われる。

I V  

社会的移動の分析には大きく分けて二つの形態が,アメリカでは採られてきた。その一つは推 論的分析とよばれるもので,主として移動率に影響を及ぽすだろうアメリカ社会の諸変化に注意 を集中し, 「制度的・構造的, 人口統計学的変化」の事実からの推論によって結論を芍き出そ うとするものである。 J 

0 ・ハーツラー, C・W・  ミルズ, E ・シプレー, V ・パッカー

1)

等に代表されるアメリカ社会の漸次的固定化を主張する根拠は主として諸種の社会変化から

3) C.  F.  Westoff, M. Bressler and P.  C. Sagi, op.  cit., pp. 379385.  4) I.  S.  C.  (the Index of Status Characteristics

法 )

W. L.  Warner, M. Meeker and K. Eells, Social Class in  America, 1960, pp. 121227.  5) E. Chinoy, •Social Mobility Trends in  the  United. States:  Amer.  Socio/.  Rev.,  Vol.  20 

1955. p. 181. 

6) B. Barber, op.  cit., p. 371. 

(10)

の推論に存している。社会的移動分析の第二の形態は移動の瀕度ないし移動率を確定し全ゆる変 化ないし傾向を発見するために種々の時期の各階級を構成する成員の社会的出身や経歴パターン を直接に比較しようとするものである。 G ・ジョパーグのように推論的分析に訴える人もいる

が,アメリカ社会は依然として固定化していないと主張する, W ・ビータースン, S•M ・リプ

セット, N ・ロゴフ, B ・バーバー等に代表される人々は通常直接データに依存する直接的分析 を採る。

アメリカ社会が「機会の国」であり,大なる量の上昇移動が存在するというイデオロギーの有 効性についての強い疑問が

1930

年代から現代に至るまで提出されつづけてきているのは

1930

年代 の末までにアメリカに固定化社会を生み出すように思われる一連の社会的変動が起ったからであ る。階級構造の漸次的固定化を推論する人々の説く諸種の社会変化を要約すれば次のようにな る 。

(1) フロンティアの消滅 かって F.

J

・ターナーとその学派が説いたような「自由な土 地の存在と西部への転住はアメリカの発展を説明するものであり,フロンティアの仮説はアメリ カ史の独特な特質を説明する最も魅力ある単一のものである

a)

」という命題は,

1890

年のセンサ スによって「フロンティアは最早センサス・リポートの中でいかなる位置をも占めることはない」

という事実によって根底的にくつがえされてしまった。それ以降最早西部で容易に土地を獲得で きないということはアメリカ歴史の平凡事となったのである。

(2)

移入民の縮少 第一次大戦以前までのかなり自由で大趾の移入民は階級ヒ゜ラミッドの 底辺に送り込まれたので,その効果は古くから下流レベルにあった人々を上昇させることになっ た。しかし,

1924

年の法的制限によって移入民は激減し, 今では移入は農民ではなく熟練労働 者,技術者,専門職業者に限る高度に選択的な性質をもつものになっている。このことは従来の 移動の大きな一要因が失なわれたことを意味する。

(3)

出生率の相違の漸減 数世紀にわたって上流階級の家庭では自らの階級を満たすに足

1) J. 0. Hertzler, "Toward Closed Class System in  the United States,"  Social Forces, Vol. 30,  1952. pp. 313323. 

C•W•

ミルズ著,杉政孝訳,『ホワイト・カラー』,東京創元社,昭和

32

年 ,

255

頁 。

E.  Sibley, "Some Demographic Clues to Stratification•, Amer. Socio!.  Rev.,  Vol. 7.  1942.  pp. 322330. 

V•

バッカード著,野田一夫,小林薫訳,『地位を求める人々』,ダイヤモンド社,昭和

35

年 ,

270288

2) G. Sjoberg, "Are Social Classes in America  Becoming More Rigid?", Amer.  Socio!.  R

Vol. 16,  1951, pp. 775783. 

W. Petersen, "Is America Still  the  Land of Opportunity?",  Commentary, Vol. 16,  1953,  pp. 477486. 

S. M. Lipset and N. Rogoff,  "Class and Opportunity in Europe and the U. s.•, Commentary, 

Vol. 17.  1954, pp. 562568.  B.  Barber, op.  cit.,  pp. 422477.  3) W. Petersen, op.  cit.,  p. 480. 

(11)

関西大学「社会学部紀要」第3巻第2

るだけの子供たちを生んでおらず,そのために生じた空席を多産の家庭をもつ下流階級の出身者 が埋める傾向にあった。しかしながら,第二次大戦後,この出生率における階級的差異はますま す小さくなる傾向にある。

(4)

アメリカ資本主義の成熟 これは経済的成長が1

930

年代に事実上の停止状態となった 時,多くの研究者たちが経済は「成熟」したということを確信し,国家の経済的発展に伴なって きた個人的上昇のための豊富な機会が最早存在しえないだろうと結論したことによるものであ る 。

(5)企業の大規模化と官僚制化

企業の大規模化に伴なって,これまで最下級の労働者が 熟練労働者,職長,そして管理者へと一段ずつ上がれるように組織されていたものが,機械の操 作する半熟練労働者府と訓練と教育を受けた技師・研究者,経営者層とに分断されることによ り,底辺から経営者のトップにまで上昇できる人は少なくなり,労働者は横に移動できるのみと なった。

以上のうち,「フロンティアの消滅」と「アメリカ資本主義の成熟」はその妥当性が全く否定 されているものである。例えば,階級構造固定化論争の中にあって中立的立場をとった

E

・チノ イによれば「フロンティアの消滅」は

1930

年よりずっと以前からのものであり,それは1

930

年代 以降の都市労働者の移動率における,いかなる実質的な衰退とも無関係であるし,また「資本主 義の成熟」も経済的成長が本来連続的あるいはますます増大的な移動との関連があるとの確たる 実証はないというものである。何故なら,非常に生産性の高い,拡大しつつある経済においてさ えも数百万の人々に上昇を妨げるだろう永続的失業の可能性がまだ存在するわけだし,更に組織 の大規模化と官僚制化によって支配される移動の機会と型は根本的に過去のものと異なるという 事実があるからであるヽ)。

「固定化」論者が挙げた上昇移勁に及ぽす諸種の社会的変化に関する反省は「固定化」論者内 部でもみられるのであり,

E

・シプレーは一世代前よりも上昇することが難しいという,一般的 に保持されている考え方の基盤になるものとして「出生率の相逃の漸減」と「移入民の縮少」と いう二つの人口動態条件をあげ,

1914

年までは出生率の差異と大址の入国移住が高率の上昇移動 に貢献したが,

1914

年以降,これら基礎的な人口統計学的特質のいずれもが著しく変わったと主 張しているのである。

以上に対して,「アメリカ社会は固定化していない」と主張する人々は主として直接的デーク に基づ<匝接的分析に依っているが,その中にあって N ・ロゴフと S・M ・リプセット, R ・ ベ

ンディクスの研究はその最も大きい実証説的支柱になったものであった。

N

・ロゴフは

1905 1912

年と

19381941

年とについてインディアナポリスにおける男子結婚許可申請書の

2

種類の標

4) E. Chinoy, op.  cit., p. 182.  5) E. Sibley, op.  cit., pp. 322326. 

(12)

本から申請者とその父の職業を調べた。彼女の研究は「ある社会的移動は社会階級即ち機会構造 そのものにおける変動により,またある社会的移動は相対的に一定の構造内部で作用する他のプ ロセスによるものである」ことを認め,この期間に生じた職業移動は職業構造の変化によって説 明されうる以上に多いか少ないかに答えようとしたものであり,そのファインディングズはおよ そ次の通りである。 ( 1 ) 全ゆる子供の最も指向しやすい職業は彼らの父親の職業である。 ( 2 ) 彼らの 父親の戦業とは迩った職業へ息子が移動したその多くはおおざっぱに同一社会階級レベルであ る 。 ( 3 ) 仮りに職業構造の変化を一定としても,データは移動率の低下を示していない。アメリカ における社会的移動は二つの時期において高く, しかも後の時期についてのデータが絶対値にお いてより高い

6)

S・M

・リプセットと

R

・ベンディクスは

1949

年から

50

年にかけてカルフォルニア大学の産業 関係研究所がオークランド市で実施した労働力移動調査の結果に二次分析を加えて報告している

(サンプル数は

935)

。彼らは移動の凪を測定するのに肉体的職業と非肉体的職業との二大カテゴ リーに分け,その間の移動のケースだけを考惑したが,この定義による世代間上昇移動は

47

彩に も達し,その移動の大部分は小企業あるいはセールスマンヘの上昇であったことを明きらかにし た

7)

この調査の大きな特色は普通の社会的移動研究では集められないようなデータ,つまり全ての 調査対象者について最初の就戦から現在の職業にいたる完全な経歴が明きらかにされたことであ り,従って社会的移動研究の二つの異なった方法,即ち世代間の社会的移動と世代内のそれとの 解明が可能になったことである。そして世代内移動に関するファインディングズはほぼ次のよう に要約される。即ち,肉体労働者の約半数はかって非肉体的労働に従事していたことがあり,逆 に非肉体的労働者の 6 2 $ l るが少くとも一時期肉体労働に就いていたことがわかった。この一時的移 動はアメリカ人が全く固定した職歴をもつよりはむしろ広範囲の職歴をもつことの方が一般的で あることを示しているものであり,それはまたアメリカ社会の階級的流動性をも物語っていると いうものである

8)

この二つの研究が非固定論者たちにいかに大きな影響を与えたものであったかは例えばW ・ビ ータースンがこれら二つの研究ファインディングズをもって「アメリカの夢」が全く神話になっ たという意見とは逆に人々はアメリカでは彼らがかつてもっていたよりも多くの上昇チャンスを もっており,それはヨーロッパ以上であると結論したことによってもうかがわれる

o)

。 もっと

6) N. Rogoff, Recent Trends in  Occupational Mobility,  1953. 

7)

職業階層が肉体的職業層と非肉体的職業層の最も広い職業的指標でカテゴリー化されているため,両 者間の移動極がそのまま上昇・下降率となって表われることはない。例えば,小さな商店の事務員が 職人より社会的に大なる評価を受けるとは限らないからである。

8) S•M•

リプセット,

R.

ペンディクス著,鈴木広訳,前掲書,

143189

頁 。

9) W. Petersen, op. cit., pp. 478480. 

(13)

関西大学『社会学部紀要」第3巻第2

も , W ・ビータースンの論証はアメリカの方が他の国より流動的社会であるという伝統的・普逼 的な仮定が正当化されうるものであるか否かを検証することなく,暗黙的に仮定してしまったと ころに欠陥があった。この点については,その後 N ・ロゴフと S・M ・リプセット自身によって,

ヨーロッパ諸国とアメリカの移動率には実質的に差異はなく, 存在するのは「機会構造」の差 異,つまり「アメリカの都市経済はヨーロッパ以上に多くの機会を提供し,大多数の人々を腹村 から都市へ引き出したので,その結果アメリカで農業に従事している人々の数はヨーロッパにお けるよりもはるかに大なる比率で減退したもの」であり,これに基づく社会的移動率の差異がそ のままヨーロッパ社会の固定性を反映するものではない, と反証されている

10)

。彼らによれば アメリカにおける上昇移動率が商いのは社会的開放性によるのではなく,アメリカ社会の急激な 構成変動に起因する「機会」比率の増大によるのであり,しかも彼らの実証の中で最も重要なフ ァインディングズはかかる上昇移動率が第一次大戦以前からほとんど変化を受けていないという 事実であった。

こうして非固定化論者と固定化論者が期せずしてほぼ同時期にでたことは,われわれにいろい ろな意味で興味深い教訓を与える。

1930

年代以降に起った様々の社会変化の上昇移動チャンスに 及ぼす作用に関しての全く対比的な見解は上昇移動論の重要な視角を提供するものである。

W

ビータースンが

E

・シプレーの「移入民の縮少」と「出生率の相述の漸減」を基盤にした固定化 の予測に反論する時,その根拠が ( 1 ) 経済の発展は上昇移動を促進しつづける ( 2 ) 移民法通過以来,

西半球からの補完的移住が増加した ( 3 ) 都市一股村問の移住は国際間移住と同一の機能を果たす ( 4 ) 婦人の労働市場への進出が男子の上昇を促した,に求められたことからもわかるように,彼は上 昇移動の要因として「移入民の存在」「出生率の相迩」を認めた上で, それらの縮少化をカバー するにあまりある「経済的発展」を強調しているのである

11)

。確かに「経済的発展」は「組織 の大規模化と官僚制化」という側面からみれば,上昇チャンスを阻害するものと固定化論者から

は考えられていたものであった。しかし,この点についても E ・チノイをはじめ S• M

・リプセ ット,

N

・ロゴフ等,中立論者ならびに非固定化論者から固定化論者の気づくことのなかった側 面を指摘されることによって批判されている。例えば,

E

・チノイによれば大規模組織内部での 組織的複雑化と精密な機械化は確かに肉体労働から管理への移動の縮少をもたらすものであった が , それはホワイトカラー屈内部での移動の増加によって相殺されうるものであるという

12)

それにもまして童要な意味をもつのは産業や行政における組織の大規模化と巨大官僚制の発展 は,第三次産業の発展と共に職業構成の変化をもたらし,強制的に上昇移動機会を拡大したとい

10)  S. M. Lipset and N. Rogoff, op.  cit.,  11)  W. Petersen, op.  cit.,  pp. 481482.  12)  E. Chinoy, op. cit.,  p.  183. 

2 ‑

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