固体の温度伝導率測定法(第1報)
機械工学教室 宮 部 喜代二
九州歯科大学豊田静夫 九州歯科大学坪根晧二
AMeasurement of Thermal Diffusivity of Solid(1st Rept.)
Kiyoji MIYABE.
Sizuo TOYODA
K6ji TSUBONE.
Amethod for a measurement of thermal diffusivity of solids is reported.
In this method, it is applied the well・known relation between temperature change and Fourier number in the case of transient conduction heat transfer with negligible thermal resistivity.
It is used a bakelite cylinder with 30 mm in dia and 100 mm in length for test piece,
and the thermal diffusivity of bakelite is measured about(6.2±0.3)×10−4m2/h.
1.はしがき するとき,固体表面では熱伝達係数α=・。すなわ
多くの物質で良く知られてい礁的性質は,比 ち固体表面温度が投入直後(時間τ=°)流体温 熱および熱鱒率で湿度伝導率はこれらの値お 度と等しくなるとみなされれば・つぎのような解
よび比重を用いて算出されるのがほとんどであ 析結果がえられる。1)
る。ところで_般に熱伝導の問題を取扱うのに, a・無限平面壁
定常状態の例が多いが渓用上の点から蜘弍・ 基麟分耀式・爵コ露 (・)
嶽麓鷲㌫㌫灘㌶元三鵬件・θ三隠(一定)}・一・,・44
くるのはよく知られているところである。 表面条件:θ=0,κ=0およびκ=ムτ>0
しかしながら,温度伝導率の値は上述のよう τ(X,τ):温度,4:試料の厚さ,τ:時間,θに,多くの場合,他の値を用いて算出されたもの = 一τ、,ち:周囲流体温度,α=λ/(6・γ),α:
を用いるのがほとんどであり,その算出に際して 温度伝導率,λ:熱伝導率, ε:比熱,γ:比量
必要な物性値も有効数字二桁程度のものが多く, 温度τは,表面κ=0およびκ=4でτ=0
げんみつな非定常状態の解析を行なうには不十分 において∫、に等しくなり以後同一温度のまま継 のように思われる。 続するものとする。導嶽㌶簑≧竺巖麟‡量解・T一差寺慧土一字
度伝導率を求めようとするものである。 π=1・3・5 (2)
ここにFはフーリエ数(=4ατ/X2)である。
2・ 基礎解析 b.無限円柱
高襟灘隠緯當欝:㌫基醐灘式・票一α(謬+場(3)
20
表面条件:θ=0,γ=γ、,τ>0。
τ(γ、τ):温度,γ:試料の中心からの距離,τ:
ω
時間,γ=γ、でτニ0において温度オはτ、とな .8
り一定温度で継続するとする。θ=Z一τ1,≠、:周 山
囲流体温度,αは無限平板と同様温度伝導率。 .4 γ初期条件:θ:鱈i}・一…≦・≦・・
解:Tr
本実験はべ一クライト丸齢用いて行なったの C・08
で,無限円柱の場合の解について多少の検討を行 .06 なう。 .04 (4)式において,γ=0すなわち円柱の中心にお
ける温度変化を知るためには,つぎのような式が .02 えられる。
−2{M、J畏M、)・一一+M、J畏M、)・一・+}(6)第1図理論解析解≧『:二変化と
F≧0.2の範囲では(6)式第2項以下は無視す フーリエ数との関係
ることができて・次式となる・ 実験に際して1まこれらの前提条件を縦している T≒2M、J…(M、)・一 力否かを+分検討した上で・雌実験に入る必要
=1.6ε一5・7831F (7) があることはいう迄もない。
第1図は(6)および(7)式を図示したもので,横軸 3.実験装置,実験方法その他
にフーリエ数・たて軸にTをとった図である。図 実験装置は第2図に示す。内容積104の断熱容
中の直線が(7)式を示す。この図からわかるように 器中に入れられた高温(約70。C)の水は小形モF≧0・2になると(7)式で表わされるとみて良いか _タ_に取付けられた撹拝機で常に全体が一定温 ら・実験結果からえられるTとτとの関係線図 度を保つように撹拝される。試料は第3図に示す
(後述第5図)との対応によって・温度伝導率α ように,直径30mm,長さ100mmのべ_クライ
を次式より求めることができる。 ト丸棒を用い,中心温度測定用の熱電対は,円筒 α=F/(τ/γ・2) (8) 中心に直径約1mm深さ50mmの小孔をあけて F≦0・2の範囲でも同様の方法で求めうるわけ 挿入し,接着剤で固定される。表面温度測定用のであるが,曲線の傾向がゆるいため,よみとり精 熱電対は表面の長さ方向の中点に接点が固定され
度上問題があるのと,単純な(7)式での算出の方が るように接着される。接点の表面は,接着剤を注
より求めやすいという利点がある。 意してはぎとり,かつ試料表面とは十分接着し,
以上述べた基礎解析と実験測定との対応から, すき間のないことをたしかめている。なお,熱電
温度伝導率αを求めるためには,解析の前提条 対素線としては,0.3mm径の銅一コンスタンタ 件である,初期条件および,表面条件を満足し, ンを用いた。
かつ,試料を投入するとと同時にτ=0で試料表 実験の手順はつぎのとおりである。断熱容器中
面温度が流体温度と一致することが必要である。 にまず約70℃の水を入れておき,大気中に放置
モーター 》鞭
断熱容器
三
⇔献料
三∵ 三・
@… … 口
三 三
三
熱電対
c
100
》緬誉㌫竺蠕㌶:三三:㌶:
度と一致せず,多少のおくれがあることがわか
る。撹拝した場合はτ=0で直ちにほぼ流体温度 と一致し,理論解析の周辺条件とおおよそ一致することが知られる。
第5図は上の実験結果を整理して,横軸に時間
τ(分),たて軸にT=(τ一 、)/ぱ一τ、)をとった
20
ZO
・8
・6
・4
第2図実験装置 心心.2
羅
紹)∵1
第3図 実験試料(べ一クライト)
,02
した試料全体が同一温度であることをたしかめた
後,試料を水の中に投入し,水温,試料中心温度 00ヱ
および麺雌蝿子獣記録計に記鍵せる。 02468/0 μ!6 820
τ、{
4・実験結果と考察 第,図実繍果の無次元温度と時間との関係
実験結果を第4図に示す。横軸は時間(分),
たて軸は各部の測定温度を示す。図中表面温度を もので,理論解析の結果がえられている線図第1
図と対応するものである。
τ 一一一 一亘一≡二 拝 臼3, いま,第5図で,任意のτの値に対するTの
p ° 《捌」・・劉 値をよみとり,第1図で同じTの値に対するFの 亘 値をよみとると,つぎの式から温度伝導率αを ぺ 算出することができる。(ちは試料の半径)
梗 α=F/(τ/γ12)
試拳ぽ度任, 4種類の適当な時間τに対するTおよびFの τ, よみから,温度伝導率αの平均値はつぎの値が
0 / 2 3 4 5 えられた。跨向て,}・. α≒(6.2±0.3)×10−4m2/h
第4図 実験結果の温度と時間との関係 伝熱工学資料(2) によれば,べ一クライトは
α=4×10−4m2/h となっているが,同種の材料 示したもので,中心温度測定用熱電対を同図のよ でも物性値にはかなりの相異を示す場合があるも うに挿入固定すると,流体からの熱流のため,よ
のと考えられる。 り高温の値を示すことになる。また,表面温度測
ところで,前述のように試料を流体中に投入直 定用熱電対を接着固定する場合,接着剤をある厚 後τ=0で,試料表面温度はほば流体温度に等し みで被覆したまま用いると,その厚みの影響が表くなるが,、げんみつには0.5°C程度の差があり われて良い測定結果が得られないことを示してい また,第1図および第5図の直線部分の延長が る。これらの例から,熱電対の設置位置および固 τ=0と交わる点はT=1.6に一致すべきであるの 定方法は十分注意すべきことが知られる。
に,実験結果の第5図の交点は1.6よりも小さい 時間測定もこの種の実験では十分注意を払うべ 値となっている。これらの点を考えれば,実験条 きで,記録紙の送り速度はストップウオッチで検 件は理論解析の条件と完全に一致しているとはい 定し,特に実験開始点を定めるには相当の注意を えない。すなわち,実験においては熱伝達係数α 要する。
はかなり大きな値となるが,理論解析の仮定のよ 以上述べたように,本実験方法は,未解決の
うにα=。。とはなりえないことで,この実験方法 二,三の問題点を含んではいるが,温度伝導率を の一つの限界を示すものである。 直接的に求めるのに比較的容易な方法であり,か この点に関する影響が第5図の直線部分の延長 つその割に精度の良い方法であると考える。特にとτ=0との交点のTの値が1.6より小さな値に 今回の実験で用いたような熱的不良導体を試料と 利いているのか,あるいは他の理由にするのかと するとき,温度の時間的変化がゆるやかであるた いう問題は今後検討するつもりである。他の理由 め,適当な測定方法ということができるであろ
の一つとして考えられるのは中心温度測定用熱電 う。
糠線への周囲流体からの熱淋竺て真の雌 5.むすび
より高め(あるいは低め)の値を示すことであり
この点については,熱電対素線の径0.05mmの 固体の温度伝導率を直接的方法で求める実験に
ものを用いた実験を準備中である。 ついて述べたが・本報告は・比較的物性値の知ら なお,周囲流体温度は実験経過中,補助ヒータ れているべ一クライト丸棒を試料として用い(直を用いることなくほぼ一定温度(0.2°C以下)に 径30mm・長さ100mm)・理論解析と実験結果の
保たれていることを確認しているが,更に検討す 対応がどの程度一致するかを知るための予備実験 るつもりである。 的性格のもので・えられた結論はつぎのとおりで 第6図は,同図中に示しているように,試料へ ある。の熱電対素線の固定方法が悪い場合の測定結果を (i)理論解析の前提条件が・この実験方法で 大略実現できることをたしかめた。
e
⇔
¶9 オ
Zo
60 50
朝
30 0液温 (ii)試料中心温度の時間的変化についての理 論と実験との対応から求めた温度伝導率の値は,
∫ 幽L 任意時間τの4種類に対して求められ,ベーク
試.中,蛎 } ライトの温度伝導率としてα=(6.2土0.3)×10−4
. m2/hの値がえられた。⊇t分ξ:禦巖竃購讃撒⊆
方法,挿入方向等に十分配慮すべきこと,および
0 / 2 3 4 5 実験開始点τ=0点の設定に相当の注意をすべき 時向て.一 ことを知った。
第6図 熱電対飯付方法不良の場合の実験例 (iV)二,三の未解決の問題は残しているが,
熱的不良導体を試料として,本方法で温度伝導率 を直接的に求めることは,適当な方法であると考
えられる。
なお本実験は,本学学生荒牧繁隆,池田邦泰両 君の協力によって行なわれたものであることを附