茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)41号(1992)87−106 87
家庭における親と子のかかわりについて
一とくに父子のかかわりとそれぞれが描く父親像を中心に一
大谷 尚子*・石塚 成子榊
(1991年9月13日受理)
AStudy of the Parent−Child Relation:
with Special Reference to the Fathe卜Child Relation and their Father一lmage
Hisako OTANI and Sigeko IsHlzuKA
(Received September 13,1991)
一 は じ め に
現代における家族の構成は,子どもとその親によって成り立つ核家族の占める割合が多い。かつ ては子どものおじやおば,あるいは祖父母が一緒に同居するという家族構成であり,子どもは家族 のなかのいろいろな人との関わりによって,育てられていた。ところが,今日のような核家族にあ っては,親子関係がそのまま家庭環境となり,親子の結びつきがよくも悪くも強い影響を及ぼし合 う。もし,その関わり方にゆがみがあるとすれば,それはもろに子どもの成長に影響することにな ろう。子どもの不登校や思春期挫折症侯群1)などは,家庭における親と子の関係の問題が背後にあ る場合も多い。
親子の関係については,母原病2)という言葉が表すように,今までは母親と子どもとの関係がい ろいろ取り沙汰されていた。しかし,家庭が子どもの健全な発達を促す重要な場として言われるな らば,母親だけではなく父親の存在も無視するわけにはいかない。
グスタフ・フォスが日本の近年における家庭教育のあり方への提言として「日本の父へ」3)を著 したのは10余年前のことである。当時,父親は 働きバチ として職場に仕え,実質的に家庭に滞 在する時間は少なく,多くの家庭において父親不在が余儀なくされていた。時代は変化し,今日で は父親たちが家庭を省みる兆しも表われている。グスタフ・フォスによれば,父親の不在といって も特に,父親の家庭における 精神的な不在 が家庭教育へ悪影響を及ぼしていることである。そ こで,父親が家庭においてどのように 精神的な存在 として家庭のなかに位置するかが,今,父 親に問われていることになる。
わが国の労働条件は「時短」の流れに反して,いまなお遠距離通勤や残業が加わり, 過労死
*茨城大学教育学部教育保健研究室(〒310茨城県水戸市文京2丁目H).
** 腰a町立小堤小学校(〒306 茨城県猿島郡総和町小堤1815).
が取り沙汰されるような厳しいものである。そして,家庭における父親の役割が重要であると気づ いたとしても,かっての家父長制家族の時代における父親像をそのまま引き継いでいいものか迷い つつ,新しい父親像を探しあぐねているのが今日の父親の姿ではなかろうか。
このように現在の父親のなかには,子育てを生涯教育の自身の成長につなげて, 父親 として のアイデンティティーを持っている父親がいる4)一方,あるべき父親像を捉えかねて, 父親 と
しての役割を事実上放棄しているような父親もいると思われる。また,そのような様々な父親と接 する子ども達は,それぞれの父親像を描き,また父親に対する期待や要望をもっているであろう。
そこで本研究は,家庭におけるよりよい親子関係を探るために,現代の父親の,家庭に対する考 、 え方や家庭でのあり方に関する意見,また父親と子どもとの関わり状況を見ていきたい。そして,
そのような状況下において子どもが父親をどう捉えているのか,その実態を明らかにしてみたい。
これらの知見が子どもの成長・発育にとっての家庭の教育機能を考えていく一資料になれば幸い である。
研究対象と方法
1 調査対象
茨城県の南西部M町に所在する小・中学校の児童生徒(小学4年生〜中学3年生)とその保護者
(父親)を対象とする。M町は,近年東京のベットタウンとして開発が進み,急速な人口増加がみ られる地域である。新しく都会から移り住んできた家族と,古くから地元に住んでいた家族がおり,
生活形態や意識の面で両者には差が認められる。
表1 対象者の内訳
回 収 数
回収率(%)有効 回 答 数
地 域 学校 配布数 一 致
子 保護者 子 保護者 子回答 父回答 父 子
A小 226組
258 258 97.0 97.0258 191 191 B小 289組
286 269 99.0 93.1286 194 183 新地区
C中 234組
220 209 94.0 89.3220 161 159 D小 311組 275 289
88.4 92.9275 243 111 旧地区
E中 246組
226 201 91.9 81.7226 153 153
計
1,346組1,265人 1,226人
94.0 91.11,265人 942人 797組
大谷・石塚:家庭における親と子のかかわり(父子関係を中心に) 89
A小学校は,開校12年目で新旧住民の混在する地域をかかえる学校である。B小学校とC中学校 は,新設された学校で,その学区の住民のほとんどが東京近辺からの移入者であり,首都圏へ通勤 する父親が多い。D小学校とE中学校は,古くからM町にある学校で,転入者もみられるがまだ 地元住民が多数を占めている。今回の調査では,B小学校とC中学校を新地区D小学校とE中学 校を旧地区とした。
2 調査方法
質問紙調査法。対象となる児童生徒には学校で質問紙を配布し,記入してもらった。また,その 保護者に対しては,質問紙を子どもを通じて家庭に配布して,封筒に入れて学校を介して回収した。
なおあらかじめ,子どもに質問紙を配布する時に,子ども用質問紙と保護者用質問紙をセットにし ておき同一番号を付しておいたので,両者を回収後,つきあわせることができた(D小学校では,
番号を付さないで配布した学級があるため,分析数が少なくなっている)。
対象者の内訳は表1の通りである。本研究の分析にあたっては,保護者のうちで父親以外の回答 であったものは除外して,父親の回答のみを有効回答とした。対象者の概況は表2の通りである。
表2 調査対象の概況
小学生の父 中学生の父 計
(n=628) (n=314) (n=942)
% % %
30 代
190(30.3) 37(11.8) 227(24.1)父親の年齢 40代 前 半
314(50.0) 155(49.4) 469(49.8)40代後半以上
122(19.4) 121(38.5) 243(25.8)12時間未満
187(29.8) 88(28.0) 275 (29.2) ・父親の労働時間 12〜14時間
217(34.6) 100(31.8) 317(33.3)14時間以上
179(28.5) 109(34.7) 288(30.6)核 家 族
598(73.0) 309(69.3) 907(71.7)家 族形態
三 世 代
209(25.5) 128(28.7) 337(26.6)共 働 き
339(54.0) 154(4.0) 483(51.3)両親の就労
そ れ以 外
287(45.7) 156(49.7) 443(47.0)2 人 以 下
390(62.1) 215(68.5) 605(64.2)子どもの人数
3 人 以 上
226(36.0) 89(28.3) 315(33.4)(注)表中にはNA(無回答.以下同)は記載していない。
3 調査内容
(1)子ども対象調査
①家族との関係(子どもにとっての父親の存在・意味)
・あなたにやさしく親切にしてくれる人は?(やさしい〉
・あなたの気持ちをわかってくれる人は?(理解してくれている)
・あなたが困った時,頼りにしたい人は?(頼りになる)
・あなたが失敗した時,はげましてくれる人は?(励ましてくれる)
・あなたが悪いことをしたら、悲しむ人は?(親子の絆がある)
・あなたの心がきりりとひきしまる人は?(権威がある)
・あなたがびくびくするようなこわい人は?(こわい)
・あなたがすごいな,みならいたいなと思う人は?(尊敬している)
・あなたが好きな人は?(好きだ)
・家族のなかで一番えらいと思う人は?(家族の中心:大黒柱)
注;上記の()内は子ども対象調査に対応する保護者対象調査の質問用語
②一日の生活の中での家族とのかかわり状況;朝食,夕食,遊びについて
③家族との会話
話の内容:勉強・成績,将来,友達・遊び,仕事(職業)の話 話すことが多い人,もっと話したい人
④叱られることについて
叱られる内容:服装・髪型,言葉づかい,勉強,悪いことをした時,自分のことで他人 に甘えて頼った時
(2)保護者(父親)対象調査
①家庭観・家庭での役割分担状況
家庭の機能について,性別役割分業観,家庭での子どもに対する役割分担(しつけ,勉 強,叱責,進路,問題をおこした時,遊びについて),家事分担の有無
②子どもとの関わり状況
子どもとの会話について(会話時間,会話の満足度,会話の支障),学校行事の参加状 況(なお,これらの関わり状況は,個々の子ども〈○○さん,○○くん〉との関わりに ついて回答してもらった)
③理想とする父親像
やさしさ・厳しさについて,子どもにとっての父親の存在について
④ 自己の捉える父親像
子ども対象調査の①の項目と同じ項目(質問に用いた言葉は前述)で,子どもにどうみ られていると思うかを回答してもらう
4 調査期間
1990年11月下旬〜12月上旬
大谷・石塚:家庭における親と子のかかわり(父子関係を中心に) 91
結果 と 考察
1 父親の家庭観と家庭における役割分担状況 1)「家庭の機能」に対する意識
家庭の機能を4つあげ,「現在のあなたにとって『家庭』とはどのようなものだと感じますか」
と質問したところ,表3のような結果となった。「休息・いこいの場」と考える父親が最も多く,
「子を生み育てる場」は約1割であった。父親にとっては,家庭は疲労からの解放・回復の場であ って,子育て(子への教育)を意識し子どもとの緊張関係を含む積極的な関わりは望んでいないよ うである。
2)性別役割分業に対する意見
「男は仕事・女は家事」という意見についてどう思うか,という質問に対する回答結果は表4−1)
の通りである。約7割の父親が,男女の役割分担に賛成であった。共働きでない家庭の場合は,共 働き家庭より性別役割分業を肯定する意見が有意に多かった。働く女性が専業主婦の数を上回って いる現在においても,「男は仕事・女は家事」という意識が根強いようである。なお,年代別にみ てみると,40代後半以上においては,そのような意識が強く(危険率0.5%〉なっているが,若い年 代になると,性別による役割分担にこだわりがなくなってきていることが窺える。
3)家事の分担状況
「家事の分担で(父親が)受け持っていることはどんなことか」と質問した。その結果は,表4−2)
の通りである。家事分担が「ある」と答えた父親は3割であった。家事は他の家族に任せて,父親 は家庭でくつろぎ休息している姿が推察される。性別役割分業に対して「反対」とした率と,ほぼ 同率である。小・中学生のいる家庭では,その1/3弱が両親(夫婦)が協力しあい連絡をとって家庭 を運営していると言える。それ以外の家庭においては,家事をほとんどしない父親の姿を子どもた ちの前に示していることになる。
なお,父親の年代別でみると,30代は最も分担率が高く,その次に高率であったのは40代後半以
表3 父親の家庭観 表4 父親の性別役割分業観と家事分担状況
(n=942) (n=942)
%
x息・いこいの場 63.0 1)「男は仕事・女は家事」に対する意見 2)家事分担の有無
藩鵬霧;;:: ㌦_潜臨}一% % ネい 69.0
夫婦の愛情交換の場 3.4
@ 麦ちらかといえば反雛:1}25遵 ある 27.6
わからない, NA 5.2 NA 3.4
上であった。40代前半という時期は働き盛りで,仕事中心の生活を余儀なくされ,家庭のことまで 関わってはいられないというのであろうか。
また,共働き家庭では父親の家事分担率が32%となって,そうでない家庭(23%)と比べて,父 親の家事参加率は高くなっていた(危険率0.5%で有意差あり)。しかし,共働きでありながらも,
家事分担のない家庭がかなり多いことに注目すべきであろう。
地区別にみた場合では,家事分担があると回答した父親の率は,新地区では33%,旧地区では25
%となって,新地区の父親の方が家事を分担していることになる(危険率5%)。
4)学校行事への参加状況
父親が子どものことで学校に出向いた場面を質問したところ,運動会や父親参観日は,多くの父 親が参加した行事であった(79%,63%〉。一方,一度も参加したことがないという父親は5%で あった。数値としては少ない値ではあるが,子どもが小学校に入学してから少なくとも3年以上も たった段階で,一度も子どもの学校にでかけていない父親もいることで注目される。
学校行事に不参加の理由の中で圧倒的に多いものは, 「仕事の都合がつかない」 (小学生:73%,
中学生:59%)であった。運動会や父親参観日以外の行事はおおむね平常日に行われることによる ためであろう。特にこの回答は,父親の労働時間(労働に関わる通勤時間も含む。以下同〉が長い
(14時間以上)場合ほど,明らかに多い回答率(78%)になっていた。なお,「仕事の都合」をあ げた父親の中には,子どものことを母親に一任して,「仕事の都合」を大義名分にした回答も含ま れていると思われる。
父親の労働時間が短い場合には(12時間未満),図1に示すように,父親がPTAの会合や奉仕 活動に,より多く参加していることも明らかとなった。
また,父親として学校行事に参加したいと思っていても,周囲が母親ばかりであるために出席そ びれたり,子どもが親(特に父親)の参加を敬遠する結果,欠席せざるをえない父親も少なからず いた。とくに,「子どもが嫌がる」ということで参加できないでいる父親は,40代後半以上で,子
どもが中学生の女子の場合に多くみられた(図2)。
%
@ 一
a ①PTA活動 ②奉仕作業 15
女子 ば中学生の父親 10
20
@ 5
男子小学生の父親
0 14 迄 亭 〜 12 〜 1 0 14 14
小 小 小 中 中 中
4 5 6 1 2 3鱒聞
図1 父親の学校行事の参加状況 図2 父親の不参加の理由
(労働時間別) 「子どもが嫌がるから」の回答率
大谷・石塚1家庭における親と子のかかわり(父子関係を中心に) 93
5)子どもに対しての役割分担
表5は, 「お子さん〈○○さん・○○くん〉のことで,ご家庭では主にどなたがあたられていま すか」という質問に対する回答結果である。
日常のしつけや勉強をみることについては,半数以上の家庭で,父親がほとんどかかわらずに母 親のみでかかわっている状況であった。しかし「叱ること」については,母親のみで関わる家庭と 同じ程度の割合で父母両方が関わるという家庭があり(約4割),ここでは父親の出番が多くなっ ていることを示す。さらに,「進路の助言」や「子どもが問題をおこした時」になると,父母両方 でという家庭が最も多いことではあるカ㍉母親と父親の関わる度合いが逆転して,父親の方が母親 より子どもに関わる家庭が増加している。
このように,子どもへの関わりは,父母の両方が関わっているが内容に応じて母親が中心にな る関わりと父親が出て関わる内容に分けられる。父親が出ていく場面は特別なことが発生したとい うことであり,日常的に子どもに関わるのは母親ということになる。
表5 子どもに対する父母等の役割(担当者)
n=942()内は%
父 母 父母両方 祖父母・他
日常のしつけ 53 (5.6) 573 (60.8) 279 (29.6) 21 (2.2)
勉 強 を み る 170 (18.0) 488 (51.8) 178 (18.9) 32 (3.4)
、 叱 責 180 (19.1) 390 (41.4) 344 (36.5) 6 (0.6)
進路 の 助 言 240 (25.5) 193 (20.5) 395 (41.9) 4 (0.4)
子に問題が起きた時 300 (31.8) 182 (19.3) 395 (41.9) 2 (0.2)
遊 び 相 手 232 (24.6) 221 (23.5) 222 (23.6) 108 (11.5)
叱責 遊び相手 勉強をみる
% 中 % %
20
小 翼 20小輔/ノ/x
@ ・・
中
ャ
0 0 0
30 40 40 30 40 40 〜 12 14(時閥)
代 壽 嚢 代 島 袋 。一・小学生の父鏡 12 姦 〜
蟹r一翼申学生の父親
1)父親の年代別比較 2)労働時間別比較
図3 父親の役割分担(年代別比較,労働時間別比較)
なお,父親の年代別比較をしてみたところ,中学生への「叱責」や小学生の「遊び相手」には,
30代の若い父親の出番となる家庭が多くなっていた(図3−1))。また,父親の労働時間別比較に よると,全般的に労働時間の増加とともに父親の出る割合が減っている状況の中で,中学生の「勉 強をみる」についてだけは,労働時間の多い場合の方力㍉父親が直接子どもに関わっている率が高 くなっていて注目される。労働時間の長い父親力㍉中学生の勉強に関しては直接子どもの相手をし ているということであり,父親の受験生に対する期待が大きいためなのであろうか。
2 家庭における父親と子どもの蘭わり状況 1)生活場面(食事と遊び)について
「今日の朝食は(昨日の夕食は),誰と食べましたか」「昨日は家族の中の誰と遊びましたか」
と子どもに質問したところ,夕食において「一人で」という回答は,小学生3%,中学生11%であ った。図4は,「父親と一緒」と回答した者について示したものである。
朝食を父親と一緒にとった者は28%と少なかった。朝食に比べ夕食の方に家族の揃う割合が多く,
夕食だけでも家族揃おうとする努力が窺える。しかしそれでも,父親と一緒に食事したのは,小学 生で5割,中学生では4割となって,決して多いとは言えない。
父親の属性別に比較してみたところ,小学生の父親あるいは若い父親の方が朝食・夕食・遊び のすべてにおいて,子どもとの関わりが多い結果となった(有意差あり)。小学生というものは,
父親とのふれあいを求める気持ちが強いこと,父親の方でもそれに応えようとする気持ちがみられ たり,家庭を重視してそれを実行することにこだわりが少ないこと等が背景にあるのであろう。
また,労働時間が14時間未満の父親は,14時間以上の父親に比べて子どもと一緒に朝食や夕食を とったという割合が有意に多くなっていた。父親の労働時間が14時間以上になると,朝食で8割,
夕食で7割の家庭は,父親は子どもと一緒に食事をとっていないということになる。家族と一緒の 時間を確保するためには,労働時間が14時間未満であることが望まれる。
「父親と一緒だった」とする回答率 小中別
@比較
父の年齢
ハ比較
労働時間
ハ比較
(参考H母と一緒) 小 中 3040代
縺@以上 「満以上 14 14
朝 食 28 31>22 37>29 38>19
※※※
※※※※
夕 食 46 49>40 54>46 57>28
※※※
※※※巌
遊 び
912>5 15>8
※※※ ※※※
0 20 40 60 80% (数値は%)
注)危険率 ※5% 嶽※1% ※※※0.1%(以下同)
図4 父親と一緒に食事・遊びをしている状況(子ども回答)
一
大谷・石塚:家庭における親と子のかかわり(父子関係を中心に) 95
2)会話について
①会話の内容と相手(子ども側の回答)
話の内容を4項目あ}尤子どもに対して「それは家族の人のなかで,誰と話すことが多いですか」
と質問したところ,「いない」という回答は,『仕事について』が最も多くなっていた(小学生:
23%,中学生:32%)。 『勉強について』は「いない」とする者は少なく(小学生:5%,中学生
:7%),家族内で勉強に関する話し合いはよくなされていることが窺える。
図5は,「父親と話す」と回答した者について示したものである。小・中学生共通して,「仕事 のこと」については他の内容に比べて父親を話し相手として多くあげていた。なお,父親との会話 状況を小・中学生間で比較してみると,「仕事のこと」以外は小学生の方が有意に多く話していた。
また,男女間の比較をしてみると,「将来のこと」については女子は8割の者が母親と話してい ても,父親には4割弱と少ない関わりになっていた。一方,男子の場合には,父親に話す者と母親 に話す者の割合が同じ5割ずつという結果であった。将来のことについては,男子・女子ともに同 性の親の方が話しやすい傾向にあると推察できる。
そしてこのような現実から,「もっと話したい人」として父親を選択した割合が小学生で5割,
中学生で3割にのぼった。父親と「もっと話したい」と思っている子どもが多いことに注目したい。
なお,話し相手になっている(子どもからそう思われている)父親は,若くて,労働時間の少な い(14時間未満)父親であった。そして,父親が長い労働時間(14時間以上)である場合には, 「も っと話をしたい人」に父親をあげる回答が有意に多くなっていた。父親の労働時間の長さは,父と 子の会話に大きな支障を与えていると言えよう。長時間労働にある父親に対しては,子どもも話し たいのにがまんしている状況が窺える。子どもが父親ともっと話したいとする意見は,重要で傾聴 すべきであろう。
誕す相手が「父親」とする回答率
小中別 男女別
父の年齢 労働時閥比 較 比 較
別比較 別比較
(参考●一鴫母親が相手)
小 中 男 女 前40後ネ下以上
1 12 4
P2 蚤 5@14
1.仕事について 58 53〈64
話 嶺崇蟻
し a勉強について
46 50>39 49>41
の
崇楽巌 豪
3.将来について
4448>37 53>35
内 楽楽豪 崇鞭豪
容 4.友達・遊びについて
2429>14
豪豪豪
一 , o ・ ・ o ・o−・g o・儒 一〇駒
●●●■o● ●●o,o● ●卿一〇一一一一一●・.一● o − oo ●
・ − o ■ ● oo■ 一●嘔■レo ■ 一 ●● ■ o −o −■b
O話すことが多い人
3237>23 35>29 35>27 37>25
楽楽叢
豪楽崇崇 豪豪娠
Oもっと話したい人
41 48>26 45>32 36< <45
楽豪 蝦 豪
0 20 40 60 80% (数値は%)
図5 子どもが父親と話す状況
②会話時間と父親の満足度
父親からみた平日の会話は,15分以内(「話さない」を含む),16〜30分,31分以上,という三 群に回答が分れた。これらの会話時間を「十分」と満足している父親は3割にも満たなかった。父 親の多くは,現在の状況に満足しておらず,できればもっと子どもと話したいと思っていた(図6)。
なお,父親の労働時間別にみると,長い(14時間以上)ほど会話が少なくなっていた。そしてま た,親子間の会話に対する満足度は少なくなっていた。前述の子ども側の要望だけではなく,労働 時間が長い場合には,父親自身も子どもとの会話に満足していないことが明らかになった。親子関 係のためには,なんとしても,父親の労働時間の改善が必要である。
NA
3.4 065 72
全体氏≠X42 31.5 30』5 二.: 34.1二・: 25.6 66。5
子ど
?o議 縣崇
…間 o響間 _ 1竪コ
繊{灘 楽
0 50 % 0 50 100
■話・ない閣一15分 1■+分 ロわからない・NA
口16−3・分回31分〜 国1できればも・と瓢たい
図6 会話の時間と満足度(父親の回答)
③会話の支障
「子どもと話をする上で,支障となっていること」については,「仕事が忙しくて時間がとれな い」という父親側の事情が最も多くあげられた(小学生:48%,中学生:38%)。特に労働時間の 長い(12時間以上)父親の方が,短い(12時間未満)父親より,有意に多い回答であった(危険率 0.5%)。労働時間の長い父親は自分自身でも,子どもとの触れ合いの支障は「仕事」にあると感じ ていることがわかる。そのほか中学生を相手にするようになると,子どもの側の忙しさ(22%。小 は8%)や「子どもがあまり話さない」 (21%。小は5%)も理由にあがってくる。また父親の側 が「疲れていて話せない」は5%にみられた。
なお,新地区の家庭では,子どもの忙しさが会話の支障になっていると捉える父親力㍉旧地区よ り有意に多くなっていた(新:17%,旧:10%)。
3)叱責について
子どもを対象に,子どもが叱られそうな内容を5項目あげ,誰に叱られることが多いかを質問し
た。身なりについては6割以上が叱られないという回答であった。その他の4項目については(図
大谷・石塚:家庭における親と子のかかわり(父子関係を中心に) 97
7)「父親に叱られる」という回答より「母親に叱られる」という回答の方が多かった。そのよう な状況のなかで「悪いことをした時」「言葉使いが悪い時」は,父親に叱られるとする回答が各々 約半数を占めた。また,中学生よりは小学生の方が,あるいは,女子よりは男子の方がそれぞれ 父親に叱られていると受け止めている。男子が叱られる機会はいたずらなどで女子より多いと推察
されるがそのほか,父親は男の子には厳しくしつけようとする意識があるので,男子への対応で 叱ることも多いようである。さらに地域別にみると,新地区の家庭の方が父親による叱責が多い
と言える。これは,新地区では,核家族がほとんどであり,親子関係が密接なことから,親の干渉 も多くなる上,「子育て」「しつけ」「教育」に関する意識が旧地区よりも強いためと思われる。
なお,叱責に関連して「あなたが素直に反省する気持ちになれるのは,誰に注意された時です か」という質問も加えてみたがこの質問に対する子ども達の回答の結果は, 「父親」が最も多く なっていた。
子どもたちは,普段叱られているのは母親の方が多いが,叱られて反省する気持ちになれるのは 父親という者と母親という者がほぼ同じ割合になっていた。とくに男子の場合,母親の48%に対し て父親をあげた者は58%におよ0㍉男子にとっては父親の叱責の方が肯定的に受け止められるとい
うことになる。親子関係のあり方として注目すべきことである。また,中学生になると,小学生時 代と異なり,「叱られて素直に反省できる相手」に「いない」という回答が3割も占めるようにな
り,思春期時代における親子関係の難しさをあらわしている。
「父親に叱られる」の回答率
小中別 男女別 地域別
父の無齢比 較 比 較 比 較
別比較
(参考一驚貌る)
小 中 男 女 新 旧3・代4・代雛
1.悪いことをした時 55
59>51 60>50
凝際楽 楽
a言葉づかいが悪い時
4852>44
蟻
a他人を頼った時
3035>25 36>28
崇娠嵌 遙
4勉強をしなかった時
2932>24 33>25 32>24
崇蟻蝦 崇崇崇 崇崇楽
●go ■ o ●■ 〇− o■ 一 一一 〇 一 o−一●〇一一〇囎一●●−oo■● の■隣 一 ● o●■レ
■9 − − o 「■9 ■■9一一 ■■9■■■一●●
一 〇 , 一●−oo■9o叱られて素直に
5562>43 58>52 62>46
反省できる人
嶽崇崇 崇
娠楽崇0 20 40 60% (数値は%)
図7 子どもが父親に叱られる状況
3 父親がもつ父親像と子どもの捉える父親像 1) 父親がもつ父親像
①理想とする父親像
「父親はやさしい方がよいと思うか,厳しい方がよいと思うか」という質問に対して,表6のよ うな回答結果であった。全体的には「やさしさと厳しさどちらもあった方がよい」という意見が最 も多かった(7割強)。「厳しい父親」志向の父親は17%であった。昔の父母のように,「父は厳 しく(母はやさしく)」というよりは,「普段はやさしく,必要な時には厳しく」ということであ る。これらの意見分布を,父親の年齢別に比較してみたが,ほとんど差はみられなかった。
「厳しい父親がよい」とする理由は,「しつけとして」が5割を占め,「父親としての権威」に 関連する意見は2割であった。一方,「やさしい父親がよい」と思う理由は,「子どもが伸び伸び
と育つ」という内容が主であった。なお,なかには,「母親に厳しさは任せた。母親が厳しいので,
父親はやさしい方がよい」というような母親との対比による意見もあった。子どもに対しては,誰 かが厳しい親かやさしい親の役割を担うものとして捉えていることになる。やさしい父親の存在は,
厳しい母親の増加によって,今後益々増えていくことになろう。なぜなら,子どもへの対応に直面 している母親が父親に厳しさを期待できないと思えば,母親自身が一人で子どもへ対応せざるを えなくなり,やさしい母親よりも厳しい母親になっていくことが予想される。そして,そのことが 益々父親をやさしくし,母親を厳しくむけていくことになるであろう。
表7は,「子どもにとってどのような存在でありたいか」と質問した結果である。「人間として の強さ」を子どもに見せ伝えたいとする父親が5割と最も多かった。特にこの意見は,中学生の 父親の方力㍉小学生の父親より有意に多い回答であった(52%−43%。危険率5%)。次に多い内 容は「何でも話し合える存在」であった。友達関係のような父子関係を志向するこのような意見は,
自分の子が女の子である場合には,特に多くみられた。
表6 父親のやさしさ・厳しさに対する意見 表7父親としてどのような存在でありたいカ・
意見(n=942)
n=942その理由(選択式)
%
竄ウしさ厳しさどち@ 682(72.4)らもあった方がよい
%
d事の熱意・人間とし 46.2
トの強さをみせる存在
厳しい方がよい 33(3.5)しつけとして必要 81(49・4) 何でも話し合える友達
n 36.2
どちらかといえば 1 甘やかしはよくない54(32.9) のような存在
131(13.9)
164厳しい方がよい 権威は必要 33(20・1) 社会の厳しさを教える
10.7
やさしい方がよい31(3.3) 子が伸び伸び育つ 42(50.0) 存在 どちらかといえば
@ 53(5.6)
鷺84
父親はやさしい方がよい 27(32・1) そ の 他 8.8 やさしい方がよい
よい親子関係が保てる 9(10.7)NA 12(1.3)
大谷・石塚:家庭における親と子のかかわり(父子関係を中心に) 99
なお,自由記述式で「子どもにみせる姿として,また,子どもを育てていく上で,心掛けている こと・思うこと」をあげてもらったところ,64%の父親が記入してくれた。
この記述の中で特に多かったものは,「話しを多くする。一緒の時間を多くもつ」というような 子どもとの触れ合い(時間)面のことで,全体の25%の回答であった。そのほか,「仕事をがんば
る」「自分(父親)としての生き方をみせる」「始めたら最後までやり通す,何事も一生懸命行う 他人を思いやる,などの手本である行動を心掛ける」「家族をいたわる」などがみられた。
②父親の自己像(子どもからどうみられていると思うか)
図8は,「あなたのお子さん(○○さん,△△くん)は,あなたのことをどうみていると思いま すか」という質問に対する回答結果である。
7割以上の父親が子どもから「そう思われている」と自己像を描いた内容は,「家族の中心的 存在」 (小・中学生とも)「子どもから頼りにされる存在」「子どもから好かれている」「子ども
との問に絆がある」 (以上3項目は小学生の父親のみ)であった。
反対に5割未満の父親しか自己像として描けなかった項目は「子どもから尊敬されている」「子 どもを理解していると思われる」(小・中学生とも)「子どもにとってこわい存在」「権威がある とみられている」(以上2項目は中学生のみ)であった。尊敬されているかどうかについては,判 断しかねたようで「わからない・無記入」が5〜6割を占あた。
なお,小学生と中学生を比較してみると,父親は小学生を相手にするより中学生を相手にする方
小学生の父親n=628
家 族 の 中 心 一 竃陽 1乳5 3.8
頼 り に な る 圃 20遵 2.7
好 き 囮 25.6 4.0きずながある 〜 囮 26.9 7.9
励ましてくれる 囲 33.7 45 一
や さ し い 甕ヨ醒国 24£ 17β
権威が あ る 囲 39。7 ε8 こ わ い ..一 一圃 28.3 20.7 わかってくれる L −r 43.5 &6
尊敬している 1巴 52、3 . 一内
申学生の父親n=314
家 族 の 中 心 78.0 17.9 4.1 きずながある 69.7 23.9 6.5 頼 り に な る 66.9 27.0 6.1 好 き 54.1 38.6 乳3
や さ し い 53.5 2&0 18,5
励ましてくれる 51.0 40.4 8.6 わかってくれる 43。3 46.5 9.2権威が あ る 443 39.8 瓢9
こ わ い 43.9 26.2 29.9 尊敬している 33.8 57.0 9.70 50 100
■そう患われていると思う 口わからない・NA ■そ偲わない
図8 父親自身の父親像(子どもからどうみられているか)
が自己に対する評価が厳しくなっている。子どもが中学生にもなると,父親に対して厳しく捉え たり,父親と子どもとの距離が離れているという感触をもっているのであろう。小学生と中学生の 間に有意差がみられた項目は,「頼りになる存在」「励ましてくれる存在」「子どもから好かれる」
(以上危険率0.5%)「権威がある」 (危険率1%)「こわい存在」 「尊敬されている」(以上危険 率5%)であった。
また,子どもが男の子か女の子かによっても,父親は異なる自己像を描いていた。それは,子ど もから「こわい」と思われていると思っているのは,男の子の父親であり,「やさしい」と思われ ていると思っているのは女の子の父親であった。父親は,男の子に対しては厳しく,女の子にはや さしく甘い姿で,子どもの前に立っていることが窺われる。
2) 子どもの捉える父親像
①家族の中の父親の存在
子どもを対象に,「あなたにやさしく親切にしてくれる人は誰ですか」(複数選択)など 「家 族の大人の人との関係について」10項目について家族名をあげてもらった。概して, 「父母両方」
という回答が多いのであるが 「(そういう人は家族の中に)いない」という回答も多くみられた
(図9参照)。「こわい人」はいないという回答は7割を超えていた。家族の中にこわい存在はな いというのが今日の子どもの家庭における人間関係の姿を表している。そのほか「[♪がひきしま る人」もいないという回答も多い。さらに中学生においては「すごい,見習いたい人」 「自分のこ とをわかってくれる人」「好きな人」が家族の中にいないと回答する者もそれぞれ3割ほどみられ る。思春期である中学生は,自分を理解してくれる人や自分から尊敬したい人を求める年代である
%8060
£
一§
口小学生回答肝819
。中学生回答匝一446
40
喉 等
c噛 oり o
n興 蕗 q
20
爲 婁
§寮
鵠 哩
@ 斜
の σ…
N
0 ζ 心 す 励 わ 悪 好 頼 や 家 わ が ご ま か い き り さ 族 い 引 い し つ こ な に し の 人 き 。 て て と 人 し い 申 締 見 く く 悲を た 人 で ま 習 れ れ しし い る る い る る むた 人 り 人 た 人 人 人ら い
父 人
図9 子どもにとっての家族(大人)
一該当者は「いない」とする回答率一
大谷・石塚:家庭における親と子のかかわり(父子関係を中心に) 101
ので,かえって大人をみる目も厳しくなっていることであろう。しかし,それでも周囲にそのよう な人がいないと思っている中学生が多いことは気に留める必要があろう。
「父親」が他の家族に比べて多く選択されていた項目は,ら〔♪がひきしまる」「こわい」「すご い・見習いたい」および「家族で一番えらい」であった。これらの項目は,「家族で一番…」を除 いて,みな選択率が低かったものである。すなわち,家族の中では誰もいないか,いるとすれば父 親が該当するということになる。かっては,多くの家庭において「父親」がその位置を占めていた のであろうが今日では,父親の存在が子どもの目には見えにくくなり,しかも,その父親の代り
となる家族もいないことになる。
図10−1)は,子どもにとっての父親像を,回答率の高い項目から順に並べて示したものである。
「家族で一番えらい人」「もし自分が悪いことをしたら悲しむ人」「やさしくしてくれる人」「自 分が好きな人」などが上位にあがった。一方「こわい人」は最下位で17%の回答率であった。
また,図中には,父親の自己像の回答結果も参考として挿入してある。父親の方では,子どもか ら「そう思われている」と思っているのに,子どもからの回答率は低いという項目が多い。特に両
1)
2) 3)
それは「父親である」
子ども側の要因 父親・家族側の要因 項 目(子どもの鱗口) 小中別
艨@ 較男女別
艨@ 較
父の年齢
ハ比較 地域別
艨@ 較家族形態
ハ比較
子ども帰宅時の 鼾ン宅 一 n魯1265
小 中
男 女30代40前40後 新 旧
核 その他 いるいないn躍 肚
(参考:父の評価)
819446 650615 185 402 267 506501 907 337 763 5421.家抜の中で一番えらい 81
84>7679〈84
79<86 85>7185>78
叢豪楽 崇
崇楽 豪娠豪
Z悪いζとをしたら悲しむ 66
60<73
77>59 70>58 69>63叢楽豪 楽崇盗 張巌楽 蟻
3.やさしい
6469葺>53 61〈67
64<74 68>59 67>57 70>55豪楽楽 崇 崇楽楽 楽楽楽 娠楽豪 崇鰻楽
4好 き 62 71>47 59く66 65>56
64>58
66>58楽肇楽 楽 豪娠頚 崇 崇楽
5.すごい・見習いたい 55
60>44 58>4858>50
楽楽崇 豪豪崇 豪豪
6.励ましてくれる 51
53>4748<56
57>45 54>45 59>26楽 肇蝦叢 崇娠豪 楽豪顛 楽娠楽
乳頼りになる 44 49>36 51>37 53>37
47>36
楽票 楽 豪豪巌 崇楽豪
8.心が引き締まる
40 44>3343>37 44>36
娠豪蝦 楽 蟻娠
9.わかってくれる
39 42>3142>35 41>34 41>34
45>31楽蝦 巌 崇 楽 豪楽蝦
1αこ わ い
17
20>15楽
0 20 40 60% (数値は%)
図10 子どもにとっての父親像
者の差が顕著であった項目は,「頼りになる人」「こわい人」である。父親が思っているほど,子 どもは父親をそう認識していないようだ。なお,「子どもは父親を尊敬している」という項目に対 一 しては父親は遠慮がちに「わからない」と回答していたが,子どもの側の回答(「すごい・見習い
たい」)は,父親の推測よりは高い回答率となり,父親を安心させる結果となった。
②学年別・男女別にみた父親像
図11は,10項目の質問に対して, 「父親(父母両方を含む)」と回答した率を,男女別に学年を 追って推移を示した。また,図10−2)は,回答率を学年・性別比較をして有意差があるものを示
している。
学年を追って「父親」選択率が,減少する項目が多い。「やさしい」 「わかってくれる」 「頼り になる」は顕著な差を示す(小学生と中学生間では0.5%の危険率で有意差)。そのほか「好き」「励 ましてくれる」「心がひきしまる」「すごい・見習いたい」「家族で一番えらい」も,学年差が認 められた。子どもの年齢が高くなるにつれ,親に対する観察力も鋭くなり,また思春期特有の親に 対する厳しい反発も加わるために,このような差が生じていると思われる。しかし,そのような状 況の中で,「悪いことをしたら悲しむ」は,学年差はみられない。このことは,中学生であっても,
小学生時代と変らずに,父親が常に自分を見守ってくれているという思いをもっていることを示す。
親子の心の絆は,反抗期であってもくずれていないと言えるのではなかろうか。
また,子どもの回答には,男女差もみられた。特に注目したいことは,男の子と父親との関係で 州 ある。男の子は概して,父親を「こわい」「心がひきしまる」というような父子間の緊張関係を指 し示すような父親像をもつ一方,「自分のことをわかってくれる」「頼りになる」と同じ性をもつ 者としての近づきやすさや信頼感をもっていることが窺われる父親像を示す。この場合,女の子は 中学生になると,父親は「頼りになる存在」でなくなり,代りに母親に対して頼りがいを感じるよ
うになっていた。
③家族の状況別にみた父親像
図10−3>は,子どもの父親像に対する家族の状況による影響をみようとしたもので,有意差が みられたものを示している。
例えぽ父親の年齢別に比較したところ,「家族で一番えらい人」という回答は,父親の年齢が 40代以上の場合は30代以下の場合より,子どもからそう捉えられていることを示す。
核家族の場合には,それ以外の家族形態(三世代家族など)と比べて,父親を「悪いことをした ら悲しむ」「やさしい」「励ましてくれる」 「頼りになる」などの回答が有意に多くなっていた。
核家族では,一つの家族単位での結びつきが強く,父子関係を含む親子関係の強さが父親を子ども に近づけ,その結果,父親に対する子どもの評価が高くなるのではなかろうか。
なお核家族は,本調査ではおおむね新地域の住民に該当することになり,図の3)でも地域別比較 と家族形態別比較の結果はほぼ対応している。
近年は,母親が常に家にいて子どもの世話をしている状況ではない。母親は働いていたり,ある
いは種々の活動で昼間家を空けていることもあり,子どもが学校から帰宅した時に不在のことも多
い。そのような母親の状況の違いが子どもの父親像にどう影響するのかをみてみると,多くの項目
において,母親が在宅している家庭の子どもほど父親に対して評価が高くなっていた。種々の家庭
状況別比較では差がなくても,この母親在宅の有無別に比較した場合により一層父親像に差が生じ
大谷・石塚:家庭における親と子のかかわり(父子関係を中心に) 103
や さ し い わかってくれる 頼りになる
%
% %
x、x
50
淑 \\蟹 50
50
̲貿一 泌\翼\
@ x\ x
、 \㌦ \κ』寵
0 0 0
小 小 小 中 中 中 小 小 小 中 中 中 小 小 小 中 中 中
4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3
励ましてくれる 悪いことをしたら悲しむ 心が引き締まる %
?̲〆\翼:峨\x 5。
/\x %
Y \,貿
@ 50
鑓\x
枝
0 0 0
小 小 小 中 中 中4 5 6 1 2 3
小 小 小 申 中 中 小 小 小 申 中 中4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3
%
こ わ い すごい・見習いたい 好 き %
彩
翼」一潔
メ、 ノκ
@ \
50 50
、、 5° @ \x x、x
跡\ @ 翼/駅 x
0 0 0
小 小 小 中 中 中 小 小 小 中 中 中 小 小 小 中 中 中
4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3
家族で一番えらい
%
、 Y蓋\x ひ→男
H女
50
0
小 小 小 中 中 中 4 5 6 1 2 3
図11子どもの捉える父親像
(性別・学年推移)
た項目に注目してみると,それは「家族の中で一番えらい」「心がひきしまる人」であった。この 父親像は,母親が在宅している家庭では父親と母親の間に役割の違いが明確にみられることによる 結果と言えるのではないだろうか。
3)父親の自己像と子どもの父親像の一致状況
図12は,父親と子どもの回答をつきあわせることができた797組の一致状況の結果である。図の1)
は,一致率の高いものから順に項目をあげている。その家庭の父親と子どもが同じ思いに一致して いるものは,「父親は家族の中の中心的存在,一番えらい」というものであった。逆に,一致して いる率より,不一致率の方が高かったものは「こわい人」 「わかってくれる人」 「心が引き締まる,
権威がある人」などである。全般的に,父親の自己像を描いたときの選択率の方が子どもの回答率 より高くなっていたので,両者の一致率が高くなる項目は,概して子どもの回答率が高くなると両 者の一致率も上昇することになる。そのため,中学生より小学生の方がまた男子よりは女子の方 が一致率が高くなっている(ただし「頼りになる存在」 「こわい存在」は,男子の回答の方が高率 であったので,一致率も男子の方が高い)。
一 致 状 況
不一致状況*小中別 男女別
項 目
比 較 比 較
一致率 不一致率
小 中 男 女
1.家族で一番えらい 67 70>62 63<71
13※巌濠 ※
2.悪いことをしたら悲しむ人
5144<55 26
一 ※※濠
3.好 き 46
54>33 40<52 28
張※嵌 選巌※
4 やさ しい
4140>35 35<48 22
※濠※ 楽※張
5.頼りになる
37 42>30 41>33 46
張巌※
濠
6.励ましてくれる
35 31<39 38
×
7.すごい・見習いたい
2630>18 33
※※娠
8.心が引き締まる(権威) 22
26>17 44
※※楽
9.わかってくれる
2148
1α こ わ い 11
0 40 % 0 40 %
*注)不一致状況:子どもがそう思っていないのに,父がそう思うと回答した不一致
(全体 n属797組)
図12 父親の自己像と子どもの父親像の一致状況
大谷・石塚:家庭における親と子のかかわり(父子関係を中心に) 105
不一致率の高い項目については,親が思うほど子どもはそう受け止めていない項目ということで あり,親の心が子どもの心にまで伝わりにくい項目と言える。これらは,今後,親子とりわけ父子 関係を豊かなものにするために,意識的に子どもに関わっていくべき課題を示しているのではなか
ろうか。
ま と め
家庭における父親と子どもの関わりについて,東京近郊の1県M町に居住する小・中学生とその 保護者(父親)を対象に質問紙により調査を行い,次のような知見を得た。
1)父親の家庭観をみてみると,家庭に対して「休息・いこいの場」として捉えている者が最も 多く6割を占めた。また,性役割分業を肯定している割合は約7割,反対の意見をもつ者は3割弱 を占めた。そして,実際に家事を分担している父親(夫)は,3割弱であった。このような父親の 姿を子どもたちは見ることになる。
2)父親が子どもに対してどのように関わっているかをみると,運動会などの休日行事への参加 率は6〜8割みられるが,平常時における学校行事への参加は「仕事の都合」を理由に非常に少な
くなっている。なお,父親の労働に関わる時間が少ない場合(12時間未満)には,PTA行事に参 加する率は高くなっていた。
家庭においては,日常的なしつけや勉強の相手は母親に任せる方針にあるが,進路のことや子ど もが問題をおこした時などは父親の出番となっている。
3)父親が子どもに関わっている状況は,平常時の食事や遊びの場面でみると,小学生では5割,
中学生では4割程度である。父親の労働に関わる時間が14時間以上になると,子どもに関わる時間 が非常に少なくなる。父親と子どもの会話は,全般的に小学生時代の方が中学生時代より多い。ま た,内容によっては(例えば「将来のこと」)父親が男の子と話す度合いが増えるなど,父親と男 の子の関係が密になることも窺える。父親の労働に関わる時間が14時間以上になると,会話時間が 少なくなり,また父親の不満足に思う割合も増加している。子どもとの会話の支障になっていると 父親が思っていることは,父親の労働に関わる時間の多さであった。
4)父親が子どもに対して叱る状況は多くはないが,男の子に対しては,女の子以上に叱ってい る。また,男の子からは「叱られて,素直に反省する気持ちになれる」相手として,父親が母親よ り選択される傾向にある。
5)父親がもつ父親像は,「やさしさと厳しさを両方そなえた人」が最も多かった。また,子ど もに対する姿勢としては「人間としての強さ」を子どもに見せる存在を志向する父親と,「友達の ように何でも話し合える存在」を志向する父親に分れた。
6)父親は自分の子どもからは「家族の中心的存在」「頼られる存在」と思われ,「好かれて」
おり,「子どもとの問には絆がある」と思っている者が多かった。一方,「子どもから尊敬される 存在」「こわい存在」などとはみられていないだろうと父親は自己像を描いていた。子どもの年齢 や性別によっても,父親の感じ方には違いがみられた。
7)家族の中に「こわい存在」 「尊敬できる人(見習いたい人)」 「自分を理解してくれている
人」は「いない」と回答する子どもが多かった。そのような状況の中では,子ども達は,父親に対 しては家族の中で「こわい」「尊敬できる」「権威のある(心がひきしまる)」「えらい」存在と して位置づけていた。
これらの子どもの回答は,全般的に高年齢になるほど減少する傾向があるが,「自分が悪いこと をしたら父親は悲しむ」と思う子どもの率は減少しなかった。また,男の子は父親に対して女の子 が感じる以上に「こわい」「権威を感じる(心が引き締まる)」や「自分のことをわかってくれる」
「頼りになる」と捉えていた。なお,家族形態の違いや母親の家庭外での活動参加(勤務を含む)
の有無によっても,子どもの捉える父親像は異なっていた。
8)各親子間でそれぞれの父親像をつきあわせてみると,「こわい存在」「わかっている人」「権 威ある存在(心が引き締まる)」は,親が思っているほど子どもはそう捉えていなかった。
最後に本調査にご協力下さいました1県M町の小学校と中学校の児童生徒とその保護者の皆様,
ならびに仲介の労を取ってくださいました校長・学級担任・養護教諭の先生方に,お礼を申しあげ
ます。
注
1)稲村博『思春期挫折症侯群』(新曜社,1983).
2)久徳重盛『母原病』(教育研究社,1979).