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赤門マネジメント・レビュー 11(9),

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赤門マネジメント・レビュー 11 巻 9 号 (2012 年 9 月) 〔研 究 会 報 告〕コンピュータ産業研究会 2011 年 7 月 14 日1

ニコニコ動画の動向に見るネットサービス進化論

杉本 誠司

株式会社ニワンゴ 代表取締役社長 E-mail: [email protected] 要約:ニコニコ動画は単なる動画サービスではなく、コメント等を通じたソーシャ ルサービスであるといえる。ニコニコ動画はユーザーの相互作用を引き出すような サービスを整備・提供しコンテンツを増加させてきた。また、ニコニコ大会議や nicofarre により、リアルとネットの融合を図っている。そして、既存メディアとの コラボレーションも行ってきており、東日本大震災では社会的に大きなインパクト を与えた。今後のネット世界ではユーザーが求めている情報を提供できる仕組みが 重要であり、その点をニコニコ動画も重視して取り組んでいく。 キーワード:インターネット、動画共有サイト、VOCALOID 1 はじめに 本報告においては、ニコニコ動画の運営2 (以下運営) がどのように、ニコニコ動画を 発展させてきたのかということについて述べていく。そして、運営のサービスの目的、将 来のサービス像、ユーザー認識などについて論じていく。最終的には、どのようにすれば ネットサービスの世界の中で成功者になれるのかという点について報告者の考えを述べて いく。 1 本稿は 2011 年 7 月 14 日開催のコンピュータ産業研究会での報告を秋池篤 (東京大学大学院)、 氷熊大輝 (東京大学大学院) が記録し、本稿掲載のために報告者の加筆訂正を経て、GBRC 編集 部が整理したものである。文責は GBRC に、著作権は報告者にある。 2 ニコニコ動画において「運営」といえばニコニコの中の人。ニコニコ動画を企画したり、開発し たり、苦情を受け付けたり、判子を押したりする人たちのことである。ニコニコ動画のサービス 提 供 側 に い る 人 た ち が 運 営 と 呼 ば れ て い る ( ニ コ ニ コ 大 百 科 http://dic.nicovideo.jp/a/%E9%81%8B%E5%96%B6 より引用)。

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2 ニコニコ動画の基礎理解 2.1 ニコニコ動画とは まず本章においては、ニコニコ動画の基本的な情報について紹介する。多くの人がニコ ニコ動画についてある程度の知識をもっていると思うが、ここでは、運営の視点からニコ ニコ動画について紹介を行う。 まずはニコニコ動画というサービスについてである。多くの人がニコニコ動画を動画 サービスであると考えていると思うが、運営は、ニコニコ動画は動画サービスではないと 考えている。確かに、ビューワーを使ってサービスを提供してはいるが、それはサービス のプロセスの一部である。つまり、動画を見るという体験を他者と共有することがサービ スとして重要なのである。YouTube のようなサービスであれば、動画は共有ファイルとし て保存される。しかしながら、その動画はあくまでも、コンテンツ提供者と視聴者の 1 対 1 の関係で成り立っているものである。 それに対して、ニコニコ動画では、動画に表示されるコメントを通じて、半強制的に他 人とひとつの動画を共有する。そして、ひとつの動画に対して多くの人が多様な意見を もっているという状況を共有してもらう。その点が非常に重要である。そのため、コメン トを消すという行為は、ニコニコ動画の意味をほとんどなくしてしまう。 このように動画の共有が重要であるため、様々なコメントや視聴人数というものが非常 に重要となる。現在のニコニコ生放送というサービスでは現在の視聴人数というものが表 示されそれにより臨場感が増している。様々なコメントや視聴人数を見る際には、視聴者 は動画の内容は見ていないといえる。というのも、動画の内容は、事前にある程度認識し たうえで動画を視聴しているからである。その上で、何度も動画を視聴し、コメントを書 き込んだり、他者のコメントを見て楽しんだりするのがニコニコ動画というサービスであ る。つまり、動画という共通の話題を共有して、他者とコミュニケーションを行ったり、 ソーシャルな体験を行ったりするのがニコニコ動画であるといえる。 ニコニコ動画は元々「動画」によるサービスから始まった。それは動画が情報量として 非常に大きく、ユーザーによる多様なコンテンツの提供が可能であったためである。しか しながら、どちらかといえば、「ニコニコ」という部分に意味がある。現在では「ニコニ コ静画」(ユーザーがスライドショーを作成・アップロードし、ニコニコ動画のように視 聴・コメントを書き込めるサービス) や「ニコニコ市場」(ユーザーがあるニコニコ動画

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のコンテンツに関連する商品を自由に貼り付けることができるサービス) などのサービス を行ってきており、動画にはこだわっていない。「ニコニコ」という言葉には、現在でい うソーシャルな意味や他者とのコミュニケーションを取るという意味があり、運営側は他 者とのコミュニケーションを重視している。このような考え方からすると、ユーザーイン タフェースは異なるが、行っていることはツイッターと近いといえるのではないか。従っ て、YouTube や Gyao などのような動画サイトとは競合関係には全くないといえる。 2.2 ニコニコ動画の基礎データ 次に、ニコニコ動画のデータについて大まかに紹介を行っていく。ニコニコ動画のユー ザー数は ID 登録で 2,253 万人である。また、このような動画サービスには珍しく有料課 金会員が 132 万人おり、月額 500 円を払っている。そして、モバイル用にも配信を行って おり、モバイル会員は 663 万人である。しかしながら、依然としてニコニコ動画のコアと なっているサービスはパソコンであるといえる。何故ならば、多くのモバイル会員はモバ イルではサービスを使用せず、ニコニコ動画の有料会員となるための決済システムとして 使用しているからである (モバイル会員は、同時にパソコン版のニコニコ動画の有料会員 にもなる)。このことから、日本の携帯電話の決済システムは非常に優秀であるというこ とがわかる。現在においても、携帯電話での視聴を行っている人々もいる。しかしながら、 i モードなどで「ニコニコ生放送」(ライブ中継などをリアルタイムで視聴するサービス) などを視聴すると非常に見づらい。しかしながら、最近はスマートフォンが普及してきて おり、モバイルの使用が増加するのではないかと予測している。 ユーザーのセグメントについては、半分が 20 代である。そして、10 代と 30 代は同じ くらいの割合で存在している。当初から比べると 10 代の割合は増加しており、モバイル の影響の大きさというものがわかるであろう。しかしながら、40 代になるとその割合は 急激に低下する。40–50 代のユーザーと話してみて考えられる原因のひとつとしては、携 帯電話との接点が少なかったという点である。この世代のユーザーはそもそも携帯電話を 持っていないような人も多く、ソーシャル的なサービスに慣れていないという点が影響し ていると考えられる。 20 代が非常に増えているのは、携帯電話がなくてはならない存在になっており、ソー シャル的なサービスに慣れているということが考えられる。このように考えると、人とつ ながるということが、顔を合わせると考えている人は、いつになってもニコニコ動画の魅

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力は理解できないであろう。現在の放送業界に属している人の中でも、このような魅力を 理解出来ない人も多い。一方でこのような魅力に対して理解を示す人もおり、そのような 人とコラボレーションを行っている。 このような事情もあり、現在の 40–50 代の方へのアプローチはあまり行なわない。年月 をへることで、現在のユーザーがシフトし、ユーザーの層を均一化しながらユーザー数を 増やしていくという戦略を考えている。 男女比率について見ると、男性は 68%、女性は 32%となっており、女性の比率が低い ように見える。しかしながら、他のウェブサービスとあまり変わらない男女比の構成と なっていると考えられる。よって、ニコニコ動画が飛び抜けて男性比率が高いというわけ ではない。 このようにニコニコ動画の基礎データを見てきたが、日本においては、自己申告型の世 代と性別の情報はあまり役にたたない。それよりも、ID としてユーザーを捉え、ログ データを解析することで、ユーザーをグルーピングすることのほうが収益性に強く反映さ れるため重要である。その際には、ログデータを解析することで、ユーザーがどのように 判断してくれるのかということを考えてコンテンツを提供していくことが重要である。そ の際には、ビューワー回数で判断することにはあまり意味はないといえる。 2.3 ニコニコ動画のユーザーとエコサイクル ここで、ニコニコ動画のユーザーを分解して見ると、大きく三つに分けることができる。 ①コンテンツを投稿するユーザー ②コメントを書きこむユーザー (コンテンツの盛り上がりに貢献しているため、コンテ ンツの制作者と言っても良いかもしれない) ③見ているだけのユーザー (再生数などで、コンテンツに貢献している) これらのユーザーは、再生数やコメントなどでお互いを意識しあっているといえる。こ の状態はソーシャルネットワークの本質である。つまり、日常の生活で生じていることを ネット上で再現したということである。例えば、友人と会話するときに、友人の反応が気 になるということが、ニコニコ動画上で生じていると考えてみると理解しやすいであろう。 このように日常をネットにどのように移行させるかということが重要である。ニコニコ動 画は、それぞれのユーザーが持つ他者と対話し、自分を認められたいという欲求を表出さ

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せ、そしてその欲求を満たす場を最終的な目的としている。そのような場を作ることで、 サービスの勢いが拡大していく。 その際には、ユーザーがアップロードしやすい環境を整えたり、多様な種類のコメント を投稿できたりする仕組みを提供する。そうすることで、このような仕組みを導入するこ とでユーザーが作成したコンテンツというのはどんどん増えていく。そして、そのコンテ ンツにコメントがなされることで付加価値が向上していく。また、クリエーターやアー ティストなどの人材も育成される。さらにいえば、初音ミクのようなキャラクターの育成 についても、ユーザーが行ってくれる。 したがって、ユーザー同士がコンテンツに貢献できる仕組みをつくることが重要である といえる。そして、このような相互作用によって、ユーザーやコンテンツを成長させてい くことができるのである。 このように場の整備 (エコシステムの整備) を行うことが運営の役割であり、常にユー ザーが主役である (運営は奴隷) という視点を持つことが非常に重要である。上から目線 のサービスを行ってはならない。このような仕組みが整備されることでコンテンツは増加 していく。 これまでの話をまとめると、ニコニコ動画は究極的には、日常の再現を行うことを目標 としている。その目標を達成するためには、継続的に刺激的なコンテンツを全ての人々に 提供し続ける必要がある。そして、刺激的なコンテンツを提供し続けるためには、場の必 要性の認識 (エコサイクルの提供) とサービスのバージョンアップを 2–3 ヶ月という短い スパンで行うことが重要なのである。 2.4 ニコニコ生放送について 今までの動画配信形態はアーカイブと呼ばれ、配信と視聴までには時間的な隔たりが あった。そこで、よりリアルなコミュニケーションを行えるように「ニコニコ生放送」と いうサービスを始めた。このサービスはアーカイブと異なる。動画を放送する時間を決め、 ライブ中継などの動画の配信を行うことで、生放送による時間的な同期というものを試み たサービスである。コメントは完全にリアルタイムのもので、完全に生きているものであ るといえる。そのため、コメントの臨場感が非常に大きくなり、ニコニコ動画はイベント をみんなで楽しむという形に変化した。このようなサービスは、最近では Ustream なども 行っている。動画配信とコミュニケーションが時間的に同期することでリアリティが加速

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し、ニコニコ動画におけるコミュニケーションの濃度は飛躍的に高まったのである。 ニコニコ生放送のコンテンツの提供については、ユーザーが勝手に行なっている状態が 一番よい。しかし現在は、生放送の動画のお手本として、運営がコンテンツの企画・提供 を行っている。例としては小沢一郎氏の会見や相撲放送などである。その際には、皆の共 通認識話題となっているコンテンツを提供することで、ニコニコ生放送を盛り上げている。 ニコニコ動画の視聴者層を考えたときに、アニメなどサブカルに興味のある人が多いが、 日常の再現を行おうとした場合、やはり一般層を取り込む必要がある。そのため、アニメ に興味のない人が視聴できる政治やスポーツなどの話題を提供している。 このような形で運営は、月に 600 本ほどの公式コンテンツを作成している。しかしなが ら、ユーザーの作成した生放送のコンテンツは月に数百万本にも及ぶ。このことからも、 ユーザーがコンテンツを生み出す力は計り知れないものがあることがわかるであろう。や はり運営自らがコンテンツを提供することには限界があり、ユーザーがコンテンツを作成 しやすいような環境を整え、コンテンツを作成してもらうことが重要である。そのため、 ニコニコ動画はマスメディア化するという考えはなく、現在のコンテンツ作成はユーザー の誰かにやってもらうためのきっかけとして行っている。 2.5 著作権問題によって多角化を遂げたコンテンツサイクル こ こ で は 、 ニ コ ニ コ 動 画 が リ ア ル 社 会 に イ ン パ ク ト を 与 え る き っ か け と な っ た VOCALOID3 について紹介を行う。初音ミクを代表とする VOCALOID の発売をきっかけ にニコニコ動画のコンテンツ群の創作活動とコミュニケーションは飛躍的に拡大した。そ のような VOCALOID の発展には権利問題が影響していると考えている。 ニコニコ動画のサービス開始当初は著作権侵害動画が多かったが、運営は権利元と協力 して著作権侵害動画を削除していった。このような権利問題が生じることで、ユーザーは 権利侵害動画をアップするのではなく、自ら一次創作を行う様になった。そこで目に留 まったのが VOCALOID であり、ボカロ P (VOCALOID 曲の提供者) 達は、初音ミクをつ かった動画を作成するようになった。その中で、流行する楽曲などが生まれてきた。そし て、ボカロ P 達は、自らの楽曲についての権利を主張するのではなく、ユーザーが楽曲 を共有することを選択した。そのため、彼らの楽曲に対する二次創作文化が花開くことと 3 VOCALOID (ボーカロイド) とは、ヤマハ株式会社が開発したデスクトップミュージック (DTM) 製作を目的とした音声合成技術、及びその応用製品の総称である (ニコニコ大百科 http://dic.nicovideo.jp/a/vocaloidより引用)。

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なった。例えば、ボカロ P が作曲した楽曲にあわせて踊ったり、自らその楽曲を歌った りというコンテンツが創作されるようになった。これにより、コンテンツ数は非常に増加 した。また、同時にコンテンツを創作するアーティスト達の成長というものも促した。こ のように権利問題が VOCALOID を発展させたといえる。 2.6 エコサイクルが生み出した多様性の社会的影響 このような背景を経て発展してきた VOCALOID であるが、現在ではオリコンウィーク リーのランキングで上位に入る VOCALOID 曲も非常に増加してきた。また、カラオケの JOYSOUND で VOCALOID の曲が多く歌われるようになってきている。現在、カラオケ のランキングにおいては、アニメや VOCALOID の曲が上位を占め J-POP の曲が無くなっ てきている。このようにニコニコ動画発のコンテンツやアーティストがリアル社会に影響 を与えるようになってきているのである。 2.7 多様性は増幅・連鎖し拡大する (著名アーティストの誕生) このような VOCALOID の影響により、歌い手、絵師、コンポーザ演奏者などのプロの 人たちと遜色のないスキルを持ったユーザーがニコニコ動画の中で続々と誕生した。そし て、彼らはプロに負けずとも劣らない人気を得ている。中でも、supercell のようなアー ティストはソニー・ミュージックよりメジャーデビューを果たしている。 このような事実はある人達に対して社会的インパクトを与えているにも関わらず、マス コミはこのような事実を理解できない。そのため、マスコミではあまりこのような事実は 報道されない。 2.8 ニコニコ大会議 ニコニコ動画においては、ニコニコ大会議と呼ばれる、ユーザー達の会議及び感謝祭の ようなサービスを行っている。ここでは成功したケースを紹介する。2010 年度の夏と秋 の 2 回、C.C.レモンホールにおいてイベントを行い (それぞれ 1,500–2,000 人のホール)、 6,000 円のチケットが完売した。同時にニコニコ動画上で動画を放送し、多くの視聴者を 集めた。 その際に、ライブ中継についてチケットで販売しそのかわりに落ちない回線をユーザー に提供した。その際には 2,000 円ほどのチケットを 10,000 枚ほど売りあげ、成功を収めた。

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これは、ライブをネットにおいて視聴するという新たなサービスの可能性が開けたといえ る。 2.9 新たなリアリティの創造 このようなサービスの成功を受け、運営は 2011 年に nicofarre という、リアル世界でラ イブパフォーマンスを日常的に行う場の提供を始めた。サービスの内容は、実際に六本木 のライブハウスでライブパフォーマンスを行い、ネットにも配信し、ユーザー同士の相互 作用を促すというものである。バーチャルとリアリティとの融合とそのメッセージ性によ り成功を収めるのではないかと考えている。 nicofarre 内部には液晶パネルが置かれており、空間的な表示を行うことができる。その パネルを通じて映像空間を楽しむことができる。また、AR 技術などを使用することでイ ンターネット上で見た際に様々なエフェクトを施した映像を提供することができる。 このように、運営は nicofarre をリアルのライブにおいては臨場感や迫力を楽しみつつ、 ネット上で様々な映像空間を楽しむことができるという、二面性を有した場にする狙いが ある。 2.10 まとめ ここで、エコサイクルが生み出す多様性のポイントについてまとめていく。ネット空間 でのコミュニケーションが進んでいくと、ユーザーはリアリティを追求し始める。そのた め、リアルな接触の実現とネットとの融合こそがユーザー達をネット空間での接触へと回 帰させる。そして、ユーザー達のより一層の活性、拡大を促す。そして、サービスの機能 性の整備が活性、拡大化を促す存在であるといえる。このポイントはソーシャル的なサー ビス全てに当てはめることができると考えている。 3 メディアとの融合から生まれた構造変化 3.1 テレビ編 フジテレビ「新・週刊フジテレビ批評」について ニコニコ動画は現在既存メディアとの融合を行ってきている。このような融合からいく つか構造変化というものが生じてきた。

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フジテレビ「新・週間フジテレビ批評」とのコラボレーションでは、本放送前に同スタ ジオから事前打ち合わせ番組をニコニコ生放送で流すということを行った。この番組は、 情報番組ワイドショーで、視聴者からの便りやクレームに対して、コメントを行うという ものである。ゲストにはメディアジャーナリストや大学教員などを呼んでいて、その特色 あるゲストが好評となっている。そのため、土曜 5 時という時間帯において 2%という高 い視聴率を獲得している。 コラボレーションでは、実際のオンエアが 5 時からだということで 4 時半から 5 時のテ レビ放送までニコニコ生放送の放送を行った。内容は、5 時からの放送内容の紹介などで、 ニコニコ生放送が終わるときに、テレビを見てくれと伝えた。すると、それまで見ていた ユーザーが 5 時以降のテレビを見るようになった。ちなみに、ニコニコ生放送における放 送は終了してもコメントは書き込めるままにし、番組の内容に対して多様な書き込みがな されていた。 これはテレビ番組とネットの融合であるといえる。この試みには 4 万人くらいが参加し、 成功を収めた。このような試みはテレビ側にも番組の宣伝になるのでコラボレーションを 行いやすく、現在まで継続的にコラボレーションを行っている。 NHK「クローズアップ現代」 ニコニコ動画は NHK の「クローズアップ現代」ともコラボレーションを行った。この コラボレーションにおいては、7 時半からの番組の前に 7 時からニコニコ動画のスタジオ で行なわれた。そして、ニコニコ動画のスタジオと NHK のスタジオとつなぎ、今日の番 組をどんな趣旨でやるかの番組の宣伝を行った。そして、生放送終了後ユーザーは 7 時半 からはテレビを視聴するという形態をとった。ここまでは、フジテレビのケースと同じで あるがこの試みにおいては、番組終了後に反省会を行うこととした。 反省会の内容は、まず、ディレクターと出演者にニコニコ生放送のスタジオに来てもら う。そして、ユーザーの前で何を伝えたくてそれが伝わったのかといったことなどについ て、ユーザーとともに議論を行うというものであった。 テレビの人たちはネットの世界から見るとかなり遠い存在である。しかしながら、この 試みにおいてはテレビの方たちが非常に紳士的に対応してくれたため、成功につながった と考えられる。 当初はネットユーザーから、威嚇や抵抗があったものの、NHK の人たちが、顔を出し

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て何をいいたかったのかといったことをしっかりと伝えることによって、全体的にコメン トがポジティブになっていった。ネットの世界でも顔をだして、しっかりと説明を行うと いうことが重要なポイントであるといえる。 この試みにおいては 3 時間弱で 20 万人弱が集まった。一般的に見ても誰も知らないよ うなラインナップでこれだけの人が集まったのは快挙であり、できる範囲においてはかな り高いレベルのものができたのではないかと考えている。このような二つのケースから、 テレビの人もネットを危機と感じており、ネットと融合して何ができるかということを考 えていることがわかる。 東日本大震災 ここまで述べてきた二つのケースが結実したのが東日本大震災である。東日本大震災の 際には、特別対応として NHK、フジテレビ、TBS (ニュースバード、茨城、東北) のネッ ト上同時配信が実現した。この試みに関してはテレビ局の人に依頼し、すぐに承諾を出し てもらえた。 NHK については 3 月 11 日から 3 月 25 日までの 15 日間で 1,100 万人が視聴した。フジ テレビに関しても、3 月 11 日から 3 月 14 日までの 4 日間で 226 万人が視聴を行った。こ のように非常に大きなインパクトを与えることとなった。 また、コメントの書き込みに関しても承諾を出してもらえた。これは今までのコラボ レーションがあった結果である。 このようなコラボレーションを行って、わかったことは二つある。まずひとつ目は、有 事の際には、オフィスにテレビがないなどの理由で、全ての人がテレビを見ることができ るわけではないという点である。そのため、インターネットにテレビコンテンツがあるこ とによって救われたという声も聞かれた。 二つ目は、ネット上においてはこのほかにも様々な情報を UP されているという点であ る。テレビだと情報がゆるぎないもので、他のものは見なくていいとして情報が伝えられ る。しかしながら、ネット上だとその情報に疑問を持った際に、他の情報にアタックする ことができる。そして、ネット上では、ノーカット放送を行うことができる。さらには原 発などに関してのまとめの番組や、どの地域の人で、どういう立場の人かといったことを 考慮した解説を行うなど様々なソースの提供を行うことができた。 このように、ネットにはテレビなどが見られない状況下でも、多面的な情報を得ること

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ができるというメリットが存在するのである。 3.2 ソーシャル (ネット) によるメディア構造の変革 3 層構造 ネットのメディア構造を考えたときに、以下のような 3 層構造となっていることがわか る。 ・contents (情報、コンテンツ) ・platform (メディア情報、コミュニティ) ・infrastructure (流通経路、手段) このようなネットのメディア構造に対して、マスメディアはこのメディアの構造を一社で 完結させるため、この 3 層構造を分解することができない。この点がマスメディアの弱み となっている。 ネットの 3 層構造においては、プラットフォーマーとして、より多くの人を巻き込むた めにはどうすれば良いかという点が重要である。また、それらの人々により多くの情報を 提供できるようにすることが重要である。 このようなプラットフォームが重視される状況で、テレビ局が独自の URL を作ること に意味がない。なぜならユーザーは現在の時点で、YouTube や Google などの一定のドメ インに集まっているからである。その一方で、テレビ局にはコンテンツを作る能力はかな り高い人がいる。よって、テレビ局はコンテンツを作ることに注力したほうがよいといえ る。 メディア情報とソーシャル機能の連携 メディア情報とソーシャル機能の連携について考える。まず、メディア情報について考 えると以下の四つの情報に分けることができる。 ・マスメディア情報 ・会見等の情報 ・独自 (番組) 情報 ・投稿情報

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このようなメディア情報にソーシャル機能 (ニコニコ動画の本質的機能) による情報共 有プロセスをつけることによって、新たな知見や提案などが生まれることになる。このよ うな状況に適した場がニコニコ動画である。この二つの機能の連携によって、自分にとっ て一番マッチングする情報を入手することができる。そして、その情報を見ることで自分 が明日何をすればいいのかがわかるのである。 ソーシャルの機能性の理解 本節では、ソーシャルの機能性の理解について述べていく。ニコニコ動画には現在 2,000 万人のユーザーがいる。しかしながら、それはマスではなく、カテゴライズされた グルーピングの集まりであるといえる。こういった各グループにおいては完全に嗜好がセ グメント化されており、それぞれのセグメントに対応したコンテンツや情報を提供してい かなければならない。そのために必要なものがコメントや広告であったりする。特にニコ ニコ動画のような匿名性の高い場合は情報とのマッチングが非常に重要なポイントである。 ニコニコ動画のような匿名性の高いソーシャルサービスにおいては、メディアリテラ シーの教育を行う必要がある。たとえば、twitter においてのデマ情報の例などをとってみ ても、メディアリテラシーの欠如が見て取れる。「今の tweet はデマである」といった tweet を行った人も多数存在した。それにも関わらず、社会不安などから実際には多くの retweet が行なわれ、デマが拡散された。 このようなデマの問題はあるものの、メディアリテラシーの向上などを行い、世の中が 勇気をもってソーシャルというものを取り込んでいかなればならない。 3.3 まとめ これからの時代は、情報量の増加に対応できるようなメディア構造と情報受動者の資質 (メディアリテラシー) が問われることとなる。 4 ネット 4.1 ネットの世界は拡大し限定される方向へ ネットの現状については現在その規模を拡大させているが、情報が集まる場所というも のは、Google、YouTube、Facebook などに限定されている。このようにコンテンツが集中

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した場所は非常に強い競争力を有することができる。特に Google は、検索サイトを通じ て情報とユーザーをつなげることで大きな競争力を有することができた。今後のサービス を考えるにあたっては独自のドメインに固執するのではなく、如何に人を集めていくのか が重要である。このようにプラットフォーム型のネットサービスが求められるであろう。 4.2 優位性を保つために必要な要素 現在のネットの世界では、ユーザーにとっては、自らが必要とする情報をどのように見 つけるかということが大事である。その際のポイントとしては 4 点考えられる。 First Close:素早く情報を入手できる。 Best Match:ほしい情報が見つけられる。 More Sort:情報を整理してくれる。 Nice Recommend:欲しい情報を欲しいという前に与えてくれる。 この四つのポイントを、Web サービスを行う際には考慮する必要がある。このような ポインを全て満たしているような Web サービスは未だ存在していない。このようにユー ザーが欲しいと思っている情報を与えられる仕組みを作ることができたサービスが競争力 を有することができる。 4.3 まとめ 以上のようなポイントを考慮した上で、ユーザーが欲しいと思っている情報を提供でき るサービスを構築していくことが重要であるといえる。それによって、人が集まってきて、 成功がもたらされる。また同時に、直感的に理解しやすいサービスというものを構築する 必要があるといえる。例えば、Apple の製品などは、説明書などを見なくても使っている うちに使い方が理解できるようになっている。ニコニコ動画においても、ボタンの配置や Web デザインを工夫したり、スピードを向上させたりすることで直感的なサービスを提 供できるように努力している。 5 最後に ここまで述べてきたことを最後にまとめていく。まずは、コンテンツのエコサイクルが

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サービスのコアとなる。このエコサイクルがサービスの勢いを向上させる。このように サービスが活性化すると、リアルとの融合の欲求が生じてくる。そのため、そのニーズを 満たせるようなサービスを提供することが必要となる。これにより、さらにサービスの勢 いが増し、コンテンツ量・情報量が非常に増加する。そのため、ユーザーが欲しいと思っ ている情報を直感的に提供できるサービスの仕組みを構築する必要がある。 ニコニコ動画については、前半部分までは達成できているが、未だ後半部分、つまり、 情報の整理・提供という点は達成できていないので、今後は、ユーザーが欲しいと思って いる情報を直感的に提供できるようなサービスを提供できるように努力を行っていきたい。

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