原
著
静 止片 脚起 立 時 に お け る足 底 面圧 分 布 に関 す る研 究
宮 本
雅 史
日本医科大学整形外科学教室(主 任:白 井康正教授)
A study
on the
distribution
of the
footsole
pressure
with
standing
on one
leg
Masabumi
Miyamoto
Department of Orthopedics (Director : Prof. Yasumasa Shirai), Nippon Medical School
Much has been reported
about the quantitative
analysis of the footsole pressure in normal
persons, but no definite conclusions have been obtained from these studies. This is also particularly
true in the study of deformed feet.
In order to analyse the extent and degree of deformities,
distribution maps of footsole pressure
were made to compare normal and deformed feet.
One hundred feet in 50 normal persons and 172 feet in 96 patients with RA with flat foot,
hallux valgus or spread foot deformity were tested. Footsole pressure maps were made from the
high sensitive film "Prescale", made by Fuji film. Each person was asked to stand on one leg on
the film for 5 seconds.
Bony anatomical observations of the foot were done with two views of
X-ray film. In this study, distribution maps and the X-ray film were analyzed only in the forefoot.
Results :
1) In normal persons, the highest pressure was observed in the Ist metatarsal
head, 1.74%
per cm2 of the body weight, and the mean value of II, III, N and V metatarsal head decreased
in order.
2)
The medial
longitudinal arch was higher in cases with a higher value in I metatarsal
head than in the others.
3)
Footsole pressure in RA showed an increasing weight bearing area on the V metatarsal
head and V tarso-metatarsal
joint.
4)
In cases of flat feet, when C/OY, N/OY and L/OY had a lower value than 0.25, 0.22
and 0.17 respectively, the weight bearing
area showed up on I TMT joint initially,
and with
progress of deformity, pressure increased on the area.
5)
In hallux valgus, pressure
was higher on the III MTH
with an increasing
degree of
deformity.
6)
There were no changes of the footsole pressure maps in spread foot deformity compared
with a normal foot.
Key words : prescale film, rheumatoid
arthritis, footsole pressure, quantitative
analysis, foot
deformity
緒 言 足 底 面 圧 の解 析 の歴 史 は古 く,1882年Elftman の論 文 中 にBeelyが 行 っ た立 位 時 の足 痕 を ギ プス で 写 し とる方 法 が紹 介 され て い るの を み る こ と が で き る.定 量 的 解 析 を最 初 に行 っ た の は1Vlortonで あ り, 以 来Jones,Burger,Dickson and Divelly,ラ ン ッ ら に よ って 正 常者 の立 位 足 底 面 圧 分 布 につ い て 報 告 が な され て き た が,統 一 した結 論 は得 られ て い ない .今 回 著者 は,従 来 のPedobarogramやStrain gauge を用 い た 煩 雑 な方 法 に変 えて,新 し く開 発 され た 感圧 Present address : Department of Orthopedics, NipponMedical School, 1-1-5, ,Sendagi, Bunkyo-ku, Tokyo, 113 Japan
フ ィル ム 「プ レス ケー ル 」 を用 い る こ とに よ り,簡 便 で容 易 な操 作 に よ り足 底 面 圧 の定 量 的 解 析 を行 い, さ らにX線 計 測 値 か ら足 部 の骨 格 構 造 を評 価 し,そ の 両 者 の結 果 を対 比 させ る こ とに よ り新 た な観 点 か ら正 常 者 の立 位 足 底 面 圧 分 布 に つ い て検 討 を加 え た.ま た, 正 常 足 との 比較 検 討 に お い て代 表的 な足 部 変 形 で あ る 扁 平 足,外 反 母 趾,開 張 足 等 の足 底 面 圧 分 布 を計 測 し, そ れ ぞれ の変 形 の過 程 が足 底 面 圧 に及 ぼ す影 響 に つ い て 検 討 した, 研 究 対 象 お よ び 方 法 (1)対 象 正 常 例 と して,足 部 の疼 痛 お よ び 変形 の な い健 康 人 を選 び,18∼58歳 の成 人 男 女50名,100足 を 正 常 足 と した. 異 常 例 と して,日 本 医 科 大学 付 属 病 院 整 形 外 科 お よ び 関 連 病 院 にて 治 療 中 の 年 齢29∼89歳 に お よ ぶ96 名 の リウ マチ 患 者 の172足 を リウ マ チ足 と した.リ ウ マ チ足 は 変 形,異 常 を呈 す る確 率 が 高 い の で,本 研 究 で は変 形 足 の代 表 と して リウ マチ 足 を選 ん だ.ま た, そ の変 形 は種 々 あ るが,そ の 中で 今 回 は 扁 平 足,外 反 母 趾 お よび 開 張 足 変 形 のみ につ い て の検 討 を行 っ た. (2)方 法 各 対 象 足 は足 底 面 圧 計 測 の た め のFoot Printを 採 取 し,足 部X線 像 と照 合 し,足 底 各 部 の 単 位面 積 にお け る足 底 面 圧 を計 測 した.ま た足 部 変 形 の評 価 は,X 線 像 を下 記 の方 法 にて 計 測 して 行 っ た. 1)Foot Printの 採 取 足 底 面 圧 を計 測 す る手 段 と して 富 士 フ イル ム社 製 超 低 圧 用 感 圧 フ ィル ム 「プ レス ケー ル」 を使 用 し た. こ の感 圧 フ ィル ム の測 定 域 は5∼25kg/cm2で あ り, 直 接足 底 面 圧 を測 定 す る の は 困難 で あ る の で,増 感 度 装 置10)として高 さ2.2mm,底 辺5mm径 の 円錐 状 突 起4134個 を 片面 に しき つ め た合 成 ゴ ム マ ッ トを使 用 した.こ れ に よ り測 定域 は0.1∼10kg/cm2と な り足 底 面圧 の 計 測 が 可能 とな っ た. Foot Printの 採 取 は ゴム マ ッ トの 突起 面 とア ク リル 板 の 間 に感圧 フ ィル ム を 置 き,マ ッ トの上 に片 足 を の せ て5秒 間 片 脚 起 立位 を保 持 させ る方 法 を とっ た.足 底 面 圧 測 定 時 に剪 力 を働 か せ な い よ うに可 及 的 正 確 に 垂 直 方 向 の 力 のみ を か け る 必 要 が あ り,片 脚起 立 時 の ぐ らつ き を予 防 し足 底 面圧 分 布 の 再 現性 を確 保 す る 目 的 でFig.1に 示 す 支持 器 を考 案 した.採 取 に先 立 ち 被 験 者 に十 分 説 明 し練 習 して か ら施 行 した.
2)X線 撮影 正 面 像 は 西 野 式 下 肢 像 消 去 法 に準 じて 撮 影 した. こ の方 法 は足 関 節 底 屈 位 と背 屈 位 を同 一 フ ィル ム に重 複 撮 影 す る こ と に よ り,下 腿 像 を 消 去 し足 の全 骨 格 の 背 底 像 を写 し出 す こ とが で き る。 側 面 像 は 足 長 軸 に直 交 し焦 点 を 舟 状 骨 にあ わ せ て フ ロア ー と平 行 な 角 度 よ り撮 影 した. 3)X線 像 の 計 測 (i)正 面X線 像 第1足 指 基 節 骨,第1,第2お よび 第5中 足 骨 にそ れ ぞ れ 中線 を 引 き骨 軸 とな し,第1足 指 基 節 骨 骨 軸 と 第1中 足 骨 骨 軸 との な す 角 度,第1中 足 骨 骨 軸 と第2 中足 骨骨 軸 の な す 角 度 お よ び 第1中 足 骨骨 軸 と第5中 足 骨 骨 軸 との な す 角 度 をそれ ぞれ 求 め た. (ii)側 面X線 像 横 倉 法 に 準 じて,踵 骨 隆 起 の最 下点 をo点,第 1中 足骨 種 子 骨 最 下 点 をy点,距 骨 舟 状骨 関 節 の 中 央 点 をc点,第1楔 状 骨 舟 状 骨 関 節 の中 央 点 をn点, 第1中 足 骨 楔 状 骨 関 節 の 中央 点 を1点 と した.直 線oy か らc,n,1点 ま で の 距 離 をC,N,Lと し,直 線oy の 長 さOYで 除 した値C/OY,N/OY,L/OYの 値 を 求 め た.o点 よ り踵 骨 底 面 の接 線 をひ き,そ れ とoy との な す 角 度(calcanealpitch)と,o点 よ りひ い た 踵 骨 底 面 の接 線 と第1中 足 骨 骨 軸 との な す 角 度(hibbus
Fig. 2 Anatomical bony landmarks
angle)を そ れ ぞ れ 求 め た(Fig.2). 4)足 底 面 圧 の 計 測
Foot printと 正 面X線 像 を照 合 し,第1∼5中 足 骨 骨 頭 部(1MTH∼5MTH),第1足 根 中足 骨 関 節 部(1TMTJ),第5足 根 中 足 骨 関 節部(5TMTJ)お
よび 踵 骨 隆 起 部(Heel)の7カ 所 につ い てFoot Load Calibration Markを 用 いて1cm2に お け る荷 重 Pkgを 計 測 した(Fig.3).さ ら に体 重Wkgで そ の値 を除 し,足 底1cm2に 及 ぼ す 体 重 の 割 合P/Wを %値 と して 計 算 した. 5)足 部 変 形 の 評 価 X線 計 測 値 よ り扁 平 足,外 反 母 趾,開 張 足 の 変 形 の 有 無 を 検 討 し た.判 定 基 準 は 扁 平 足 に つ い て は 横 倉 法 に準 じてC/OYが0.30以 下 か っN/OYが0.26以 下 の も の と した.外 反 母 趾 は 第1足 指 基 節 骨骨 軸 と第 1中 足 骨 骨 軸 の な す 角 度 が20。 よ り大 きい もの と し, 開 張 足 は 第1中 足 骨 骨 軸 と 第5中 足 骨 骨 軸 の な す角 度 が30。 よ り大 き い もの と した.
Table 1 Mean value and its standard deviation of P/W in each region of foot-sole in normal feet
(n=100)
Table 2 Mean value and its standard deviation of P/W in each region of footsole in Type 1 and 2 (Type 1 n=38, Type 2 n=24) 結 果 1.正 常 足 に つ い て (1)正 常 足 の足 底 面 圧 分 布 につ い て 正 常足100足 の足 底 各部 のP/Wの 平 均 値 お よ び標 準 偏 差 値 をTable1で 示 した.P/Wの 平 均 値 は Heelで 最 も大 き く3.08%で あ り,前 足 部 で は 内側 ほ ど大 きな値 を示 し1MTHで は1.74%と5MTH の約2.5倍 で あ っ た. しか し,個 々 のFoot printで は,す べ て が 同一 型足 底 面圧 分 布 を示 したわ けで はな い. 特 に前 足 部 に注 目す る とい く つ か の型 に分 類 さ れ た17・鋤.こ れ ら の型 の 中 で,特 に多 くみ られ た の は, 第1中 足 骨 骨 頭 部 に 集 中 し て高 い 足 底 面 圧 を 示 す 型 と,第2お よび 第3中 足 骨 骨 頭 部 に集 中 して 高 い 足 底 面 圧 を示 す 型 で あ っ た.前 者 を1型,後 者 をII型 とす る と,1型38足,II型24足 で あ り,両 群 を合 わ せ る と正 常 足 の62%を 占め,と も に正 常 足 を代 表 す る 足 底 面 圧 分 布 の型 とい え る(Fig.4).1型 お よびII 型 のP/Wの 平 均値 と標 準 偏 差 値 をTable 2に 示 し た. (2)正 常足 のX線 計 測 値 につ い て 正 常足100足 につ い て上 記X線 計 測 を行 っ たが,扁 平 足,外 反 母趾,,開 張 足 の判 定 基 準 を満 た す 例 は な か っ た(Table 3). 足 底面 圧 分 布 上1型 お よびII型 に属 す る足 が骨 格 構 造 上 な ん らか の特 徴 を有.するか 否 か につ い て 検討 す る た め に,前 記10項 目のX線 計 測 値 で 比較 した. 1型38足 と1型 以 外 の62足 との 間 で有 意差 検 定
Fig. 4 The footsole pressure in normal person In Type 1, load pressure shifted toward the 1st metatarsal head in the fore foot, and Type 2, the
2nd and 3rd metatarsal heads.
Table 3 C/OY, N/OY, M.I.P.I. angles and Int. m. 1-5 angles of normal persons
Table 4 Mean value and its standard deviation of P/W in each region of footsole in 172 deformed feet in rheumatoid arthritis
(n=172) を行 うと,L/OYと 第1足 指 基 節骨 骨 軸 と第1中 足 骨 骨 軸 との なす 角 度 の2項 目 につ い て5%の 危 険 率 で有 意 差 を認 め た. II型24足 とII型 以 外 の76足 との 間 で有 意 差 検 定 を 行 う と,C/OY,N/OY,L/OY,Hibbus angleの4 項 目につ いて は5%の 危 険 率 で 有 意差 を認 め た. 2.リ ウ マ チ足 に つ い て (1)リ ウ マ チ足 の足 底 面 圧 分布 につ い て リ ウマ チ足172足 の足 底 各 部 のP/Wの 平 均 値 お よ び標 準 偏 差 値 をTable 4に 示 した.P/Wの 平 均 値 で み る とHeelで 最 も大 き く3.30で あ り,前 足 部 で は1MTHが1.3696と 最:も大 き く,4MTHが
Fig. 5 Classification of deformed feet in rheumatoid arthritis
Table 5 Obtained values in the flat foot, hallux valgus, and spread foot group 0.86%と 最 も小 さい が各MTH間 の 差 は顕 著 で な い. (2)リ ウマ チ足 の変 形 につ い て リ ウマ チ足172足 に つ いてX線 計 測 を行 い 扁平 足, 外 反 母 趾,開 張 足 を 対 象 にそ の変 形 の 有 無 を 検 討 し た.各 変 形 の 内 訳 をFig.5に 示 した.172足 中 な ん らか の変 形 を呈 した もの は130足75%で あ り,そ の 半数 の64足 が二 つ以 上 の変 形 を重 複 して い た. これ らの変 形 に よ る骨 格 的 変 化 が足 底 面 圧分 布 に与 え る影 響 につ い て検 討 す る 目的 で,変 形 の重 複 して い る足 は除 外 し,扁 平 足 変 形 の み を呈 す る28足 を扁 平 足 群,開 張足 変 形 の み を呈 す る33足 を開 張 足 郡 と し て 分 類 した.外 反 母 趾 変 形 は第1中 足 骨 の内反 を伴 う た め に 開張 角 度 の増 加 が起 こ り,開 張 足 変 形 を 重複 し て い る こ とが 多 い.こ の理 由 か ら,外 反 母 趾 変 形 の み を 呈 す る5足 と外 反 母 趾変 形 と開張 足 変 形 を重 複 して い る27足 とを合 わせ た32足 を外 反 母 趾 群 と した.以 上 の3群 にお け るX線 計測 値 はTable 5に 示 した, (3)正 常 足 と リウマ チ足 の足 底 面 圧 分 布 にお ける 比較 正 常足 と リウマ チ 足 の 足 底 各部 にお け るPlwの 平 均 値 を グ ラ フ に表 した(Fig.6).グ ラフ の横 軸 は左 か ら見 る と,Heel-1 TMTJ-1 MTHは 内側 縦 ア ー チ 上 の3点 を 示 し,1MTH∼5MTHは 横 軸 ア ー チ上 の5 点 を 示 し,5MTH-5TMTJ-Heelは 外 側 縦 ア ー チ上 の3点 を 示 して い る.各 部 のP/W値 に つ いて 両 群 間 の有 意 差 検 定 を行 う と,1TMTJ,5MTH,5TMTJ の3点 にお い て危 険 率1%で 有 意 差 を認 め た. (4)各 変 形 に よ る足 底 面 圧分 布 の変 化 につ いて 1)扁 平足 群 扁 平 足 群28足 にお け るP/Wの 平 均 値 を正 常 足 の もの と比較 して グ ラ フ に表 した(Fig.7).両 群 問 に お け る P/W値 の有 意 差 検 定 で は,1TMTJ, 5TMTJの2点 にお い て1%の 危 険 率 で 有 意 差 を認 め た.1TMTJは 土 ふ まず の領 域 内 に あり,内 側 縦 ア ー チ に保 護 され て い るた め に正 常足 で は圧
Fig. 6 P/W value in rheumatoid foot and normal foot There were significant difference statisticaly bet-ween P/W in the 1st TMT joint, the 5th metatar-sal head and the 5th TMT joint.
負 荷 のか か らな い部 分 で あ り,こ の部 分 にお け るP/W 値 の高 値 は,内 側縦 ア ー チ の破 綻 を示 す もの で あ る. 扁 平 足 変形 によ る内 側 縦 アー チ の骨 格 的 変 化 と圧 負荷 と の関 係 を み る た め に,C/OY,N/OY,L/OYと1 TMTJに お け るP/W値 と の相 関 を とる と,Fig.8∼ 10に 示 す ご と く高 い相 関が 得 られ た.い ずれ の場 合 で も,ア ー チ の低 下 が軽 度 な範 囲 で は圧 負荷 が み られ な い もの が多 く,横 倉 法 の 判 定基 準 を超 え る 扁平 足 で も同 部 位 に圧 負荷 は起 こ って い な い も のが 多 い.ア ー チ の低 下 が進 行 し, 1TMTJに 圧 負荷 が 始 ま る境 界 はC/OYが 0.25,N/OYが0。22,L/OYが0.17の 時 で あ り,こ れ を超 え る扁 平 足 で はア ー チ の低 下 に伴 ってP/W値 の増 加 が 起 こ って い た. 2)外 反 母 趾 群 外 反 母 趾 群33足 に お け るP/Wの 平 均 値 を正 常足 の もの と比 較 して グ ラ フ に表 し た(Fig.11).両 群 間 に お け るP/W値 の 有 意差 検定 で は,3MTH,4MTH,5
Fig. 7 P/W value in flat foot and normal foot There were significant difference statistically
bet-ween P/W value in the 1st TMT joint and the 5th TMT joint. MTH,5TMTJの4点 に お い て1%の 危 険 率 で 有 意 差 を認 め た.以 上 のP/W値 と外 反母 趾 変形 の指 標 で あ る第1足 指 基 節 骨 骨 軸 と第1中 足 骨 骨軸 との な す 角 度 との相 関 を と る と,両 者 の 間 に高 い相 関 が得 られ た(Fig.12),す なわ ち変 形 の増大 に伴 い,3MTH に お け る圧 負 荷 の増 大 が み られ た.特 に40° を超 え る
Fig. 8 The correlation between P/W values of the 1st TMT joint and C/OY
Fig. 9 The correlation between P/W values of the 1st TMT joint and N/OY
Fig. 10 The correlation between P/W values of the 1st TMT joint and L/OY
変 形 が高 度 な例 で は,こ れ らの 関係 は よ り顕 著 で あ っ た. 3)開 張 足 群 開 張 足 群32足 にお け るP/Wの 平 均 値 を正 常 足 の も の と比 較 して グ ラ フ に表 わ した(Fig.13).両 群 問 にお け るP/W値 の有 意差 検 定 で は,5MTH,5TM TJお よびHeelの3点 にお い て1%の 危 険 率 で有 意 差 を認 め た.し か し,こ れ ら のP/W値 と開 張足 変 形 の指 標 で あ る第1中 足 骨 骨 軸 と第5中 足 骨 骨 軸 との な す 角 度 との問 に有 意 な 相 関 は認 め られ な か っ た. 考 察 1.正 常 足 に つ い て (1) .正 常 足 の足 底 面 圧 分 布 につ い て Mortonは 立 位 足 底 面 圧 分 布 につ い て 前 足部 と後
Fig. 11 P/W value in the hallux valgus and nor-mal foot
There were significant difference stati-stically between P/W value in the 3rd metatarsal head, the 5th metatarsal head
and the 5th TMT joint.
Fig. 12 The correlation between P/W values in the 3rd metatarsal head and metatarsal 1-phalangeal 1 angle
Fig. 13 P/W value in the spread foot group and normal foot
There were significant difference between P/W value in the 3rd metatarsal head, the 5th meta-tarsal head, the 5th MTM joint and calcaneal tuberosity.
足 部 に ほ ぼ半 々 に荷 重 し,前足 部 では そ の1/3が 第1中 足 骨骨 頭 部 に,残 りの2/3が 他 の 四 つ の 中 足 骨骨 頭 部
に 均等 に荷 重 す る と述 べ た.前 足 部 にお け る荷 重 の分 布 につ い て はBurgerは よ り均 等 に分 散 して い る こ とを,Dickson and Divellyは 第1中 足骨 骨頭 部 と第 5中 足 骨 骨 頭 部 に集 中 し,踵 骨 部 と合 わ せ て 三点 支 持 に な っ て い る こ とを,ラ ン ツ は,第1中 足 骨骨 頭 部 に集 中 し,外 側 にい くほ ど荷 重 は 低 い こ とを 述べ て い る.今 回,正 常 足100足 の 足 底 面圧 を 計測 した結 果 で は,平 均 値 で み る と ラン ツ の述 べ る ご と く第1中 足 骨 骨 頭 部 に集 中 し,外 側 にい くほ ど荷 重 は低 くな る圧 分 布 を示 した.し か し,個 々 のFoot Printを み る とす べ て が 同 じ足 底 面 圧 分 布 を示 して い るわ け で は な く,特 に 前足 部 に注 目す る とい くつ かの 型 に分 類 され, 前 述 した1型 とII型 が特 に多 く認 め られ た.こ の よ う に 正常 足 が必 ず しも同 一 の 足 底 面圧 分 布 を示 さな い こ とは,有 富,津 山 ら も指 摘 して い る が,正 常 足 の 足 底面 圧 分 布 を い くつ か に分 類 して 検 討 を加 え る試 み は い ま だ な され て い な い.著 者 は,1型 とII型 を とも に正 常者 の代 表 的 な足 底 面 圧 分 布 の型 と考 え,こ れ ら の相 違 の 起 こ る原 因 を追 求 す るた め に,前 記10項 目 のX線 計 測値 よ り両 型 の足 部 の骨 格構 造 上 の相 違 を検 討 した. 1型38足 と1型 以 外 の62足 と の比 較 にお い てL/ OYと 第1足 指 基 節 骨 と第1中 足 骨 骨 軸 との なす 角 度 の2項 目に つ い て5%の 危 険 率 で 有意 差 を認 め,い ず れ の値 も1型 に お いて 高 い 数 値 を とる傾 向 を示 した. す な わ ち,1型 の足 底 面圧 分 布 を示 す群 の足 部 の骨 格 に つ い て,内 側 縦 ア ー チが 高 く,ま た正 常 範 囲 で はあ る が母 趾 が若 干 外 反 傾 向 にあ る とい え る. II型24足 とII型 以 外 の76足 との 比較 にお いて, C/OY,N/OY,L/OY,Hibbusangleの4項 目 につ い て5%の 危 険 率 で有 意 差 を認 め た,こ れ ら4項 目はす べ て 内側 縦 ア ー チ に関 係 を もつ もの で あ り,い ず れ の 結 果 も一 致 してII型 の足 底 面圧 分 布 を示 す群 は内 側 縦 ア ー チ が低 い傾 向 を もつ こ とを示 して い る. 2.リ ウ マ チ足 に つ いて (1)正 常 足 と リウ マチ 足 の足 底 面 圧 分 布 にお け る 比較 正 常 足 と リウ マチ 足 を足 底 各部 に お け るP/Wの 平 均 値 で比 較 す る と,両 群 と もHeelに お い て 最 も高 い 値 を示 し,P/W値 もほ ぼ同程 度 で あ るが,前 足 部 にお い て は,正 常 足 は1MTHで 最 高 値 を と り外 側 ほ ど低 い値 を示 す の に対 し,リ ウマ チ足 で は1∼5MTHの 問 で顕 著 な差 を認 めな かっ た。 次 に足 底 各 部 のP/W値 につ い て正 常 足 群 と リウマ チ足 群 との間 で有 意 差 検定 を 行 う と リウ マ チ足 群 で は 正 常 足 群 に比 べ て,1TMTJ,5MTH,5TMTJに お い て有 意 に高 い値 を示 した.し か し,1TMTJに つ い て は リウ マ チ足172足 中147足 でP/W値 はonoを 示 して い る こ とか ら,リ ウマ チ足 全 体 に あて は ま る傾 向 とは い い が た い.5MTHに お いて リウ マチ足 が よ り高 い圧 負荷 を示 す こ と につ い て は,Collisら は第 5MTP関 節 が早 期 に リ ウマ チ性 変 化 を こ うむ りや す い こ とを指 摘 して い る.5TMTJに お け る圧 負荷 の増 加 につ いて は,外 側縦 ア ー チ は元 来 靱 帯 や 長 腓骨 筋 腱 に よ り支 え られ て低 い ア ー チ構 造 を保 って お り,リ ゥ マ チ性 変 化 が こ の支 持 機構 に 起 これ ば外 側 縦 ア ー チ の 直 下 に あ る5TMTJに お い て圧 負 荷 が 増 加 す る こ と は容 易 に想 像 され る.し た が っ て リ ウマ チ足 の 足底 面 圧 分 布 に お け る特 徴 は,第5中 足 骨 骨 頭 部 お よび 第5
TMT関 節 部 に圧 負 荷 の増 大 が み られ る こ とで あ り, これ らは リウマ チ の病 態 に直 接 起 因 す る変化 で あ る と 考 え た. (2)各 変形 によ る足 底 面 圧 分布 の 変化 に つ い て 1)扁 平 足 郡 扁 平 足 群 の 足 底面 圧 分 布 で は正 常 足 郡 に 比べ て1 TMTJと5TMTJに お い て有 意 に高 い圧 を示 して い るが,5TMTJに つ い て は前 述 の ご と く リ ウマ チ足 全 体 に認 め られ る特 徴 で あ る.1TMTJは 内 側縦 ア ー チ に保護 され 正 常 で は圧 負 荷 の起 こ らな い部 分 で あ る が,ア ー チ構 造 の破 綻 に よ り沈 下 が 起 こる と,同 部 に 圧 負荷 が始 ま る こ とは 明 らか で あ り,そ のP/W値 は 変 形 の程 度 と直 接 的 な 関係 に あ る と考 え られ る,し か し,扁 平 足 の評 価 はX線 計 測 に よ りア ー チ の低 下 度 を 求 め る横 倉 法 が一 般 に行 わ れ,足 底 面 圧 との 関係 を論 じた報 告 は 見 当 た らない.そ こでC/OY,N/OY, L/OYを 骨 格 的変 形 を表 す 指 標 と し,こ れ ら が 第1 TMT関 節 部 にお け る足 底 面 圧 に及 ぼ す影 響 を明 らか に す る 目的 で,P/W値 との 間 の相 関 を求 め た.結 果 と してC/OY,N/OY,L/OYと1TMTJに お け るP/ W値 は,い ずれ の問 に も高 い 相 関 を示 した.そ して さ らに 明 らか に な っ た こ とに は,横 倉 法 の判 定 基 準 を超 え る 扁平 足 で あ って も,内 側 縦 ア ー チ の低 下 が軽 度 な 範 囲 で は 同部 に圧 負 荷 が生 じて い な い もの が ほ と ん ど で あ り,ア ー チ の低 下 が進 行 し,C/OYが0.25,N/ OYが0.22,L/OYが0.17以 下 に な る と圧 負 荷 が 始 ま り,さ らに変 形 が 高 度 にな る に伴 って 圧 の増 加 が 起 こ っ て い た. リ ウマ チ足 に お け る外 反 扁 平 足 の発 生 は以 前 か ら知 られ て お り,そ の機 序 につ い て喜 多 ら は,ま ずCho-part関 節 の弛 緩 が起 こ り,舟 状骨 が距 骨 頭 部 軸 を 中心 と して の回 内 しつつ 下 方 に沈 下 し,こ れ に伴 いCho-part関 節 よ り末 梢 の前 足部 が一 塊 と し て 回 内 して荷 重 の 中心 が内 側 に移 動 す るた め,さ ら に距 骨 の内方 移 動 が増 強 され,踵 骨 の 外反 を き た し扁 平 足 を増 悪 させ る と述 べ て い る.著 者 の 症例 におい て も前 述 の境 界値 を超 え た扁 平 足 では,境 界値 に まで 至 って い な い 扁平 足 に 比べ て 舟 状 骨 の 沈 下 を示 す例 が きわ め て 多 く認 め られ,足 底 面 圧 か ら見 たC/OYが0.25,N/OYが 0.22,L/OYが0.17と い う境 界 値 は,外 反 扁 平足 の 発 現 機 序 に お け る舟 状 骨 の沈 下 とい う過 程 に強 い 関連 を示 す も の と考 える. 2)外 反 母 趾 群 に つ いて 外 反 母 趾 郡 の 足底 面 圧 分 布 で は正 常足 群 と比 較 して 3MTH,4MTH,5MTH,5TMTJに お い て 有 意 に 高 い圧 負荷 を示 して い る が,5MTHと5TMTJに つ い て は リ ウマ チ足 全 体 で認 め られ る傾 向 で あ る こ と は前 に も述 べ た.3MTHに お け るPIW値 に は 異 常 に高 い値 を示 す もの が あ り,最 高 は5.8%で あ っ た. こ の前 足部 に お け る足 底 面 圧 分 布 の 変 化 と外 反母 趾 変 形 との 関 係 を 検 索す る 目的 で,3MTHに お け るP/W 値 と外 反 母趾 の 変形 度 の指 標 で あ る第1足 指 基 節 骨 骨 軸 と第1中 足 骨 骨軸 との なす 角 度 と の相 関 を 求 め た. 結 果 と して,両 者 の間 に は高 い 相 関 を認 め,変 形 が 高 度 に な る に伴 い第3中 足 骨 骨 頭 部 にお け る圧 負荷 の増 加 が起 こる傾 向 が あ る こ とが 明 らか にな っ た.こ れ ら の原 因 と して,外 反 母 趾 の発 生 機 序 で あ る第1中 足 骨 の 内反 内旋 変 形 の た め に,屈 筋 腱 の走 行 が 変 わ り本 来 の機 能 を失 っ て い る こ とや,外 反母 趾 変形 に伴 っ て Clow toe変 形 が 生 じ,屈 曲 したMTP関 節 に お いて 中足 骨 骨 頭 が足 底 に突 出 し た状 態 とな り高 い圧 負 荷 を 生 ず る こ とが考 え られ る. 3)開 張 足 群 につ い て 開張 足 群 の足 底 面 圧 分 布 で は正 常足 群 と比 較 して, 5MTH,5TMTJ,Heelに お い て有 意 に高 い圧 負 荷 が 認 め られ る が,開 張 足 変 形 と強 い 関連 を示 す も の は な か っ た. 開 張 足 の発 生 機 序 は,横 足 弓 を支 え る関 節 包,靱 帯 お よび 筋 肉 の弛 緩 に よ る もの で あ り,ラ ン ツ は 横 足 弓 が 失 わ れ る こ と に よ り前足 部 の足 底 面 圧 分 布 にお い て,第2,3中 足 骨 骨頭 部 に圧 負 荷 の増 加 を もた らす と述 べ て い る が,著 者 の 症例 で は そ の よ うな傾 向 は 認 め られ ず リウ マ チ足全 体 と して み られ る よ うな 変 化 以 外,本 変 形 に関 連 を示 す よ うな足 底 面 圧 分 布 の変化 は み られ な か っ た. 結 論 健 康成 人50名100足 と リウ マチ 患 者96名172 足 の 足底 面 圧 を 計測 し,正 常 足 にお け る足 底 面 圧 分 布 お よ び リ ウマ チ足 に お け る扁 平 足,外 反 母 趾,開 張 足 の変 形 に伴 う足 底 面 圧 分 布 の変 化 につ い て定 量 的 に解 析 し,次 の結 論 を得 た. 1)正 常 足 の 片 脚起 立 時 に お け る足 底面 圧 は平 均 値 で み る と踵 骨 隆 起 部 で最 も高 く,1cm2当 た り体 重 の 約3%が 負荷 して お り,前 足 部 で は第1中 足 骨 骨 頭 部 が1.74%と 最 も高 い値 を示 し外 側 ほ ど低 くな って い る. 2)正 常 足 の足 底 面 圧 分 布 を前足 部 に注 目 して 分 類
す る と,第1中 足 骨 骨 頭 部 に圧 負 荷 が集 中 す る1型 と 第2,3中 足 骨 骨 頭 部 に圧 負荷 が集 中 す るII型 が多 く み られ,こ の両 者 が 代 表 的 足底 面 圧 分 布 とい え る.さ らに,1型 で は内 側 縦 ア ー チ が高 く,第1足 指 基 節 骨 骨 軸 と第1中 足 骨骨 軸 の な す角 度 が大 き い とい う骨 格 的 特 徴 を有 し,II型 で は 内側 縦 ア ー チが 低 い とい う特 徴 を有 して い る. 3)リ ウマ チ足 に お け る足 底 面 圧 分 布 で は,第5中 足 骨 骨 頭部 お よび 第5TMT関 節 部 に圧:負荷 の 増加 が み られ た. 4)扁 平 足 群 で は,C/OYが0.25,N/OYが0.22, L/0Yが0.17を 境 界 と して第1TMT関 節部 に圧 負 荷 が始 ま り,変 形 が さ ら に高 度 に進 行 す る に伴 って 圧 の増 加 がみ られ た. 5)外 反 母 趾 群 で は,変 形 が高 度 に な る に伴 い 第3 中足 骨 骨 頭 部 に圧 負荷 の増 加 がみ られ た. 6)開 張 足 群 で は,変 形 に起 因 す る と思 われ る よ う な足 底 面 圧分 布 の変 化 は み られ な か った. 本論文の要旨は第7∼9回 足の外科研究会(1982∼1984), 第57回 目本整形外科学会総会(1984)に おいて発表 した.
文 献
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