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中東欧 ヨーロッパの心臓 西欧製造業の製造拠点 特に自動車産業の多くは西欧ではなく チェコ ポーランド スロバキア ハンガリーを中心とした中東欧にあり 日系企業も約 700 社進出している 本特集は 中東欧地域の現状に ついて紹介したい 中東欧のマクロ経済動向 みずほ銀行欧州資金部シニア為替ストラテ

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03

中東欧〜ヨーロッパの心臓〜

タイ東南部

今月の特集 今月の特集 2

14

第53回 WAZA〜世界に誇るニッポン企業〜

金属加工のコンビニエンスストア

株式会社アイオー精密 代表取締役専務 鬼柳 一宏氏

電子制御スロットルバルブ用モーターで

世界トップシェア

株式会社五十嵐電機製作所 代表取締役社長 五十嵐 惠一氏

18

国際人事労務リポート

海外赴任者のメンタルヘルス対策の

重要性と対応の実際

損保ジャパン日本興亜ヘルスケアサービス株式会社 取締役サービス統轄本部長 久司 敏史氏

20

グローバル インサイト

米国の裁判所が米国の外で起きた事件を

審理できるか(Daimler判決とその後)

長島・大野・常松法律事務所:ニューヨークオフィス シニア・アソシエイト 沖本 洪一氏

22

23

みずほフィナンシャルグループからのお知らせ

オランダみずほ銀行

ウィーン支店開設認可の取得について

GMのグローバルEYE

MAY

&

JUN

(2)

 西欧製造業の製造拠点、特に自動車産業の多くは西欧ではなく チェコ、ポーランド、スロバキア、ハンガリーを中心とした中東欧にあり、 日系企業も約700社進出している。本特集は、中東欧地域の現状に ついて紹介したい。  先日、当地で知り合った大手機関投 資家で調査を担当している友人が、帰任 の挨拶で「日本にいた頃はヨーロッパっ てひとつの国みたいなものだと思ってい ましたが」と切り出した。確かに、ともすれ ば米国や中国ばかりに目が向き、東南ア ジアほどの親近感もわかない欧州は、多 くの日本人にとって「ひとつの国みたいな もの」なのかもしれない。まして中東欧とも なると、観光でも訪れる機会は滅多にないのだろう。ここロンドンにいても、 為替ストラテジストとして自分が彼の地の通貨を担当することになるまでは、 「中東欧なんてひとつの国みたいなものだろう」と思っていた。中でも主 要国と言えるポーランドの通貨ズロチさえ見ておけば、周辺のチェコ・コル ナ、ハンガリー・フォリントなどの値動きは、ズロチの値動きに毛が生えたぐ らいのものだろうと考えていたのだ。ところが、実際に調べてみると、地理 的状況、経済構造、時の政治状況、果ては気候や国民気質まで、それぞ れの国の実情は大きく異なる。当たり前のことだが、詳しく知れば知るほど その違いは際立ってくるものだ。10を超える国々のそれぞれの国情を詳し く解説するには紙幅も知識も十分ではないので、ここでは、ヴィシェグラー ド4(以下:V4)と呼ばれ、中東欧の経済的中核をなす4ヵ国(ポーランド、 チェコ、スロバキア、ハンガリー)を中心に、中東欧の特徴について解説し よう。  2004年5月、ポーランド、チェコ、ハンガリーなど中東欧10ヵ国が新たに 欧州連合(EU)に加盟した。1989年11月のベルリンの壁崩壊、それに 前後して次々に民主化を果たした中東欧各国にとっては悲願であり、当 時、統合の深化・拡大を推し進めていたEUにとっても大きな前進と言え ただろう。その後、2007年1月にはルーマニアとブルガリアが、2013年7 月にはクロアチアがそれぞれEUに加わり、現在EU加盟国は28ヵ国に広 がっている。図1は2004年以降にEUに加盟した13ヵ国のうち、地中海 の島国であるマルタとキプロスを除く11ヵ国について、そのGDPを示した ものだ。経済規模だけを見るならば、11ヵ国を合算してもEU全体の7.9% にすぎない(2014年 欧州統計局)。これはEUで5番目の経済規模を持 つスペインとほぼ同じで、最大の経済大国ドイツの半分にも満たない。ま た、経済規模で7.9%を占める中東欧11ヵ国は、人口ではEU28ヵ国の 20.5%を有する。このことは、当該11ヵ国の1人あたりGDPが2004年以 前からの加盟国15ヵ国平均の34%に満たないことを意味する。  1991年2月、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリーの首脳がハンガ リー北部の都市ヴィシェグラードで首脳会議を開いた。その会合で地域 協力機構を築いた3ヵ国、1993年にチェコスロバキアがチェコとスロバキ アに分離して以降は4ヵ国はV4と呼ばれるが、当該国の協力関係の歴 史は思いのほか古く、14世紀にまでさかのぼるという。図を見れば分かると おり、V4は中東欧11ヵ国の中でも人口の62%(図2)、経済規模の68% を占め、地理的位置関係においても文字通り中東欧の中核的存在と言 える。もちろん、上述のとおり、ひと口にV4といってもそのお国柄はそれぞ れだ。ポーランドは東欧13ヵ国の中でも最大の国土面積・人口を抱え、 最大の経済規模を誇る「中東欧の領袖」とも言える大国だが、2007年

中東欧のマクロ経済動向

みずほ銀行 欧州資金部

シニア為替ストラテジスト 本多 秀俊

中東欧

〜ヨーロッパの心臓〜

本多シニア為替ストラテジスト (資料)欧州統計局 ポーランド 4,122 ハンガリー 1,033 スロバキア 752 ルーマニア 1,507 クロアチア 431 ブルガリア 420 スロベニア 372 リトアニア 363 ラトビア 241 エストニア 195 チェコ 1,549 GDP(2014年) 単位:億ユーロ ポーランド 38.5 ハンガリー 9.9 スロバキア 5.4 ルーマニア 19.9 クロアチア 4.2 ブルガリア 7.2 スロベニア 2.1 リトアニア 2.9 ラトビア 2.0 エストニア 1.3 チェコ 10.5 GDP(2014年) 単位:百万人

図1. 中東欧11ヵ国のGDP

図2. 中東欧11ヵ国の人口

(資料)欧州統計局

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の金融危機後、現在に至るまで、EU加盟国の中で唯一景気後退(2 四半期連続の前期比マイナス成長)を経験していない経済優等生で もある。共産主義時代から伝統的な工業国としての地位を確立してい たチェコは、現在、超低金利で、自国通貨コルナの上昇を中銀による「無 制限為替介入」で抑制することでデフレ脱却を目指すという、ユニークな 金融政策を実施している。ハンガリーは2010年の総選挙後誕生したフィ デス・ハンガリー市民同盟政権(現在は2期目)が、見方によっては強引と も解釈できる銀行課税強化や通信課税強化、公共料金引き下げで恒 常的な財政赤字体質、高インフレ体質から見事に脱却した。金融、通信、 電力などの大企業には巨額の外国資本が流入し、こうした基幹産業が 外資に「乗っ取られた」ような状況にあったことから、外資をたたくことで財 政再建と物価の安定を果たした現政権に対する国民の支持は極めて高 い。V4の中では小国とみなされるスロバキアだが、健全な財政運営で、他 3ヵ国に先駆け2009年にユーロを導入している。ウィーンからスロバキア の首都ブラチスラバまで、ドナウ川を下って遊覧船で1時間あまりと聞くと、 今でも「そんなに近いんだ」と不思議な気がする。  表1はV4と独仏の経済規模などを比較したものだが、避けがたく目を引 くのはV4の成長率の減速だろう。2008年の金融危機以前までは押しな べて高い成長率を誇っていたV4も、現在では「新興市場」という語感が 含む「リスクはあるが高成長」という特徴は当てはまらなくなってしまった。 ハンガリーの物価が急下降しているのは良い変化と言えるだろうが、こうし てみるとV4経済も先進国のそれに極めて均質化してきていると言うこと ができる。また、V4がEUの域内で貿易収支を改善することによって、域外 をも含む全体の貿易収支を改善している現状も読み取ることができるだ ろう。こうした変化は、EU加盟がV4にもたらした恩恵と解釈することができ るのではないか。  中東欧に進出する西側企業にとって、最大の魅力はやはり安くて質の 高い労働力にあっただろう。1人あたりGDPが今でも先進国の34%とい うことは、それだけ物価や賃金が割安であることを意味する。だが、近年、 中東欧諸国の労働コストの魅力は徐々に薄れつつある。今でも、東や南 に向かえば、賃金は低下する傾向を示すが、安価な労働力を求めて東や 南に進出すればそれで済む問題ではない。西から遠ざかるほど、人材の質 は低下する傾向があるし、大消費地であるドイツ、フランスから遠くなるから だ。しかも、鉄道や高速道路などの交通インフラの整備は、V4まではそれ なりに整っているものの、以東・以南については相当の効率低下を覚悟 しなければならない。たとえば、ルーマニア一国を北から南に縦断するだけ でもその距離は直線距離でおよそ450km、東京〜盛岡間の距離に近い が、もちろん新幹線などはない。  だが、インフラの未整備は、見方を変えれば、「インフラ整備」という巨大 な需要の存在をも意味する。それは交通インフラに限らず、電力、上下水 道、病院(医療)など多岐にわたるだろう。また、EU全体の20.5%を占める 人口が、今後ますます豊かになり、中流化が進めば、そこに大きな新規需 要が生み出される可能性も見出せる。日本の技術と経験を生かすための 土地がそこに広がっている。さらには、中東欧を足掛かりに「消費市場」を 求めるのであれば、西に構えるユーロ圏だけでなく、東にロシア、南にトル コ経由で中東、アフリカを控える立地は、大消費地へのアクセスという視 点でも大きな魅力に映るのではないか。  また、昨年来のウクライナの混乱が、同じV4でも、ポーランドとハンガ リーというふたつの旧共産国の対ロシア政策の違いを浮き彫りにしたこ とは興味深い。旧ソ連と国境を接し、常にその脅威に構えてきたポーラン ドにとって、ロシアはビジネスパートナーと言うよりは、引き続き安全保障を 脅かす存在なのだろう。一方で、なにかと言うと欧州委員会(EC)と事を構 え、独自の財政再建や物価抑制に成功してきたハンガリーの現政権は、 原子力発電所の建設資金にロシア政府からの融資をあてにしてきた経 緯などもあって、今でも親ロシア的傾向を維持している。こうした事実は、た とえばロシア市場への足掛かりとして中東欧を考えるときに、決定的に重 要な差異になり得るだろう。肝心なのは、V4といえどもひとくくりにせず、そ れぞれの国の特徴を精緻に把握することで、逆に言えば、ビジネスのさまざ まな要望に応えられるだけの多様性と懐の深さを、中東欧地域は提供し てくれるはずだということであろう。 ポーランド チェコ ハンガリー スロバキア ドイツ フランス (28ヵ国)EU 人口 (2014年/百万人) 38.5 10.5 9.9 5.4 80.8 65.9 507.4  (EU内比率) (7.6%) (2.1%) (2.0%) (1.1%) (15.9%)(13.0%)(100.0%) 国土面積 (万平方キロ) 31..3 7.9 9.3 4.9 35.7 63.3 446.3  (EU内比率) (7.0%) (1.8%) (2.1%) (1.1%) (8.0%)(14.2%)(100.0%) 首都 ワルシャワ プラハ ブタペスト ブラチスラバ ベルリン パリ

-通貨 (PLN)ズロチ (CZK)コルナ (HUF)フォリント (EUR)ユーロ (EUR)ユーロ (EUR)ユーロ -名目GDP (億ユーロ/2014年)4,121.9 1,549.4 1,033.0 752.1 29,037.9 21,420.2 139,205.4  (EU内比率) (3.0%) (1.1%) (0.7%) (0.5%) (20.1%)(15.4%)(100.0%)  実質成長率  (2007年) +7.2% +5.5% +0.5% +10.7% +3.3% +2.4% +3.1%  実質成長率  (2014年) +3.3% +2.0% +3.6% +2.4% +1.6% +0.4% +1.3% 消費者物価指数 (2007年) +2.6% +3.0% +7.9% +1.9% +2.3% +1.6% +2.4% 消費者物価指数 (2014年) +0.1% +0.4% +0.0% -0.1% +0.8% +0.6% +0.6% 貿易収支 (億ユーロ/2007年) -186.5 +31.6 -1.2 -15.3 +1,942.6 -519.9 -1,474.9  EU域内  (億ユーロ) -76.8 +75.3 +73.4 +41.7 +1,285.9 -520.6 +650.0  EU域外  (億ユーロ) -109.7 -43.7 -74.6 -57.0 +656.7 +0.8 -2,124.9 貿易収支 (億ユーロ/2013年) -23.0 +135.7 +60.2 +30.8 +1,986.5 -762.8 +1,311.7  EU域内  (億ユーロ) +78.6 +158.1 +93.7 +78.8 +446.4 -886.2 +765.3  EU域外  (億ユーロ) -101.6 -22.4 -33.5 -48.0 +1,540.1 +123.4 +546.3 *EU28ヵ国の対EU28ヵ国貿易収支は論理上ゼロになるはずだが、実際に各国の域内貿易収支 を足し上げるとゼロにはならない (資料)欧州統計局/みずほ銀行

表1. V4と独仏の比較

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 中東欧*1地域は西欧への自動車 供給地として着実に地歩を固めている (図表1、図表2)。本稿では中東欧に おける自動車産業の歩みを振り返りつ つ、隆盛の理由について考察したい。

中東欧自動車産業のあゆみ

 中東欧は東西冷戦における「東」と 「西」の境界地域であり、現代の自動車 産業におけるグローバルプレーヤーがい ずれも西側諸国に出自を持つことを勘案すると、自動車産業の歴史とは 縁遠い地域と思われがちである。しかしながら、中東欧の自動車産業の歴 史は古く、1897年、オーストリア=ハンガリー帝国の一部であったチェコに 始まる。豊富な石炭資源とドイツ資本の参入により比較的早い段階から 工業化が進展していたことを背景に、この年、後のタトラによって自動車 の製造が開始されている。これはドイツで自動車が誕生*2したわずか11年 後、日本で初めて自動車が生産されるより10年も前のことである。  続く1901年には後のシュコダが自動車の製造を開始。この2社に 1907年設立のプラガを加えて3大メーカー体制となったチェコは、第二次 世界大戦前後の自動車業界において高い存在感を発揮していた。  その後、第二次世界大戦中のドイツへの編入を経て、ソビエト連邦 の影響の下、中 東欧各国では 共産主義化が 進行。チェコの 3大メーカーはい ずれも国有化さ れ、商用車はプ ラガ、中型車は タトラ、小型車は シュコダと生産品目を切り分けられ、自動車生産は国家計画に従うこ ととなった。工業化の遅れていた各国でも西側諸国メーカーのノック ダウン生産からスタートした国営の自動車メーカーが立ち上がっていっ た。1966年にはルノーのノックダウン生産を目的としてルーマニアで 後のダチアが設立された。1951年にはポーランドに国営工場が立ち 上がり、1960年代以降はフィアットのノックダウン生産を行っていた。  しかし、資本主義経済の下でユーザーの嗜好に合わせてさまざまな 商品開発の試行を繰り返してきた西側諸国の完成車メーカーに比べ、 計画生産への従事に徹してきた中東欧国営メーカーは充分な競争力 を持つには至らなかった。1989年に発生した連鎖的な民主化(「東欧 革命」)、それに続く自由経済の下で各社は不振に陥ることになった。

民主化後に相次いだ工場進出

 民主化直後から、西側完成車メーカーは中東欧への工場進出を始 める。1991年にはスズキとアウディがハンガリーに、フィアットがポーラ ンドに、フォルクスワーゲンがスロバキアに進出を果たしている。  EUの東方拡大に伴い2004年にチェコ、スロバキア、ポーランド、ハ ンガリーがEUに加盟し、同地域から西欧に向け無関税での輸出が 可能となった。これを受け、2005年にはチェコでトヨタ自動車とPSAの 合弁工場が稼働を開始し、以降もPSAの単独進出(2006年、スロバ キア)、起亜(2007年、スロバキア)、現代自動車(2009年、チェコ)の 進出が続いた。近年では、2012年にダイムラーがハンガリーでの工 場稼働を開始している。

西側完成車メーカー進出の背景

 各社が急速に中東欧進出を進め、特に広いEU圏の中で中東欧の 比較的西部にある各国に集中して進出したのは何故か。理由として挙 げられるのは①大需要地である西欧への地理面・物流面での近接性、 ②充実したサプライヤー網と工業インフラ、③低廉な人件費である。 ①西欧への近接性  地理面ではチェコ・プラハからベルリンへの直線距離は約280km、 パリへの直線距離は約880kmにすぎず*3、物流面では発達した鉄道 網の活用により効率的な輸送が可能となっており、需要地への輸送 の他、近隣の拠点間での分業も容易である*4 ②充実したサプライヤー網と工業インフラ  サプライヤー網の観点では、各国に国有完成車メーカーが存在し、 最低限のインフラとサプライヤー網が存在した。これに加え、進出した 完成車メーカーが自社に納入実績のあるサプライヤーの誘致を進め、 分厚いサプライヤー網が形成されることとなった(図表3)。  工業インフラ面では第二次世界大戦以前から工業国であったチェ コはもとより、その他の各国も共産主義体制のもとで重工業化が進め られ、一定の工業インフラが形成されていた。 ③低廉な人件費  域内でもっとも賃金の高いハンガリーとドイツとの比較で一般工賃

中東欧の自動車産業について

みずほ銀行 産業調査部

調査役 竹田 真宣

出所:OICA(世界自動車工業会) 出所:IHS Automotive 竹田調査役

図表1. 欧州乗用車生産増加台数(過去10年)

図表2. 生産地域別欧州小型自動車

販売割合(2013年)

順位 国名 2003年生産台数2013年 増加台数 1 スロバキア 281,160 975,000 693,840 2 チェコ 436,297 1,128,473 692,176 3 ルーマニア 75,706 410,959 335,253 4 ドイツ 5,145,403 5,439,904 294,501 5 ポーランド 306,847 475,000 168,153 6 ハンガリー 122,338 220,000 97,662 7 オーストリア 118,650 146,566 27,916 8 フィンランド 19,226 20,500 1,274 トルコ 3.8% 日本 3.2% 韓国 3.0% 北米 2.0% その他 3.3% 西欧 66.8% 中東欧 17.8%

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金を見ると、進出が盛んになった2004年頃ではドイツのおよそ1/5。こ こ10年程で急速に高騰したもののそれでも依然ドイツの水準との比 較では1/4であり、人件費の面での優位性は高い(図表4)。  西欧での販売を展望する上で、これらの要件を満たす立地は限定 されている。ルノーは後述するルーマニア・ダチアの工場増設に代え て北アフリカ・モロッコ*5に生産拠点を開設し、2012年に稼働を開始 した。しかしながらその生産規模は限定的なものにとどまり、ルーマニ ア・ダチアと異なり開発機能も有していないことから、位置付けは当 面、補助的なものにとどまると見られる。

国有メーカーの民営化とその後

 各メーカーの進出形態は工場進出のみにとどまらず、旧国営企業 の買収も相次いだ。1991年にはチェコのシュコダがルノーとの2社競 合の末フォルクスワーゲンの、1999年にはルーマニアのダチアがル ノーの、それぞれ傘下に入っている。  西側資本の傘下に入ったシュコダ、ダチアはいずれも親会社グ ループにおいて戦略的な地位を占めることとなった。  シュコダは、フォルクスワーゲングループによる、価格帯別に複数のブラ ンドを使い分けるマーケティングの一翼を担い、主として「アウディ」「フォ ルクスワーゲン」ブランドより下位の価格帯に対応する車種を展開。欧州 の他、新興国を含めた世界各地に幅広い展開が行われている。  ダチアは買収と同時にルノーグループの「X90プロジェクト」を担うこ ととなった。同プロジェクトは開発・生産・販売の効率を徹底的に追求 することで、ユーザーが要求する最低限の性能・装備を確保しつつ販 売価格1台5,000ユーロの新興国戦略車を生産するというプロジェク トである。同プロジェクトは2004年に結実し、ダチアは小型セダン・ロ ガンを発売、ロガンのプラットフォームを活用した派生車種も複数展開 され、世界各地で販売されている。派生車種の中でも、小型RV・ダス ターは広く人気を集めている。

市場拡大・産業誘致策に係る自律性は限定的

 すでに見てきた通り、自由化、市場経済の導入、EU加盟という流れ の中で中東欧各国の自動車産業は振興され、賃金は急速に上昇し た。自動車普及率はすでに先進国並みの水準に到達している国も 存在する*6。一方で、中東欧各国の新車販売の伸びは限定されてお り、新車販売台数(2013年実績)は、ドイツの326万台に対し、中東 欧最大の市場であるポーランドでもわずか35万台にすぎない。  これらの事象の背景として、西欧からの中古車流入がある。多くの 新興自動車生産国は、新車・中古車の輸入に対しては高関税を課す ことで、他国生産車の自国への流入を抑制しつつ、自国への工場建 設にはさまざまな優遇策を打ち出して自動車産業の誘致を進めること で、自国自動車産業の振興を図っている。  一方、EU加盟国たる中東欧諸国においては、関税による中古車 の流入抑制措置を行うことはできず、自国の新車販売の拡大を図るこ とは難しい。  これに加えて、自動車産業誘致に向けた国家支援についても公平な 競争を阻害するものとして、EUの罰則規定の対象となり得る。結果とし て、各国が域内他国に抜きんでた産業誘致策を採ることは困難である。

まとめ

 すでに見てきた通り、中東欧は西欧をターゲットとした自動車生産 拠点として、確固たる地位を築いており、今後も存在感を発揮し続け ることが見込まれる。EU加盟による恩恵はこれを後押しし続けるだろ う。一方、進出に際しての立地検討に当たっては国境の意味はより 曖昧になり、専ら完成車メーカーの進出動向と進出エリア(完成車工 場やサプライヤー立地への地理面、物流面での近接性)を中心に据 えて検討を進めることになろう。

図表3. 各国サプライヤー集積状況比較

図表4. 中東欧各国の年平均賃金(一般工)上昇率

OEM 7社 Tier1 230社 2013年自動車生産 113万台 チェコ メキシコ タイ OEM : Tier1 1 : 32 Tier1 : Tier2/3 1 : 3.0 Tier2/3 約700社 サプライヤー合計 約930社 OEM 16社 Tier1 415社 2013年自動車生産 305万台 OEM : Tier1 1 : 26 Tier1 : Tier2/3 1 : 1.3 Tier2/3 約520社 サプライヤー合計 約930社 OEM 12社 Tier1 635社 2013年自動車生産 253万台 OEM : Tier1 1 : 53 Tier1 : Tier2/3 1 : 2.7 Tier2/3 約1,700社 サプライヤー合計 約2,300社 出所:各国自工会資料よりみずほ銀行産業調査部作成 出所:JETRO資料、世界銀行データベースよりみずほ銀行産業調査部作成 一般工賃金(米ドル/月) 賃金上昇率(年率) 2004年 2013年 名目 実質 ドイツ(デュッセルドルフ) 3,079 4,396 15.86% 13.88% ハンガリー(ブダベスト) 634 1,083 18.98% 12.82% チェコ(プラハ) 476 994 23.20% 19.35% スロバキア(ブラチスラバ) 457 943 22.93% 17.99% ポーランド(ワルシャワ) 401 841 23.30% 18.35% ルーマニア(ブカレスト) 201 454 25.10% 15.61% *1 中東欧の定義については、文献や用例によりさまざまであるが、本稿ではドイツ・オーストリ ア以東、旧ソ連以西、ギリシャ・トルコ以北(いずれも当該国は含まない)とする。 *2 カール・ベンツが完成させた、世界初の原動機付き三輪車について、ドイツ政府より特許 を受けた時点が一般的に「自動車の誕生」とされる。 *3 それぞれ、おおむね東京-新潟、東京-札幌の距離に相当する。 *4 フォルクスワーゲングループはドイツ、チェコ、スロバキアの各拠点が、現代グループと関 連サプライヤーはポーランド、チェコ、スロバキアの国境付近に立地する各拠点が、それ ぞれ緊密な連携のもとに生産を行う体制を構築している。 *5 スペインのジブラルタル海峡を挟んだ対岸に位置するタンジェ市に所在。地理的に西欧 に近接していることに加え、人件費の面では中東欧に比し優位であり、積極的な誘致策 も採られている。 *6 当部試算による千人あたり保有台数(2010年)は日本595.6台、ドイツ547.8台に対 し、ポーランド531.9台、チェコ492.5台と旧西側諸国並みの普及率に到達している国 が見られた。域内のその他の国でも、スロバキア363.3台、ハンガリー 341.3台、ルーマ ニア233.9台であり、たとえばロシア(284.4台)、ブラジル(164.5台)等と比較すると、相 応に高い水準であることがわかる。

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 ウィーンとお聞きになって、皆さまが まず思い浮かべられることと言えば、音 楽の都、芸術の都ではないかと思いま すが、今回はウィーンのビジネスの側 面をご紹介したいと思います。  ウィーンはオーストリア・ハンガリー帝 国の都として、数百年前から繁栄する 歴史ある中欧の都市です。同帝国を 支配していたハプスブルク家は20ヵ 国語に堪能だったとも言われ、ヨーロッパ諸国の王室との婚姻など を通じて領土を拡大していきました。同帝国の領土が拡大するにつ れ、中東欧の各国から大都市ウィーンに流入する人が増え、19世 紀の終わりには人口が200万人に達したと言われています。  中東欧の都市は、ウィーンの建築様式に倣った建物が数多く建 てられているためか、どことなくウィーンに似た雰囲気が漂っていま す。業務柄、私は中東欧や南東欧の都市に出張する機会がありま すが、出向先ライファイゼンの同僚から「美しいだろう」と同意を求め られる建物には、ウィーンで見覚えのある装飾が施されていることに いつも感心しています。  上記のような背景を踏まえると、オーストリア・ハンガリー帝国が繁 栄し始めたときから、中東欧諸国とウィーンとは数多くの人が行き来 する関係にあり、交易が盛んであったと言えます。  2度の大戦の間に中東欧諸国からウィーンに流入する人が減少 し、ウィーンの人口は170万人にいったん減りましたが、現在では永 世中立国でありながらもEUに加盟したこともあり、ロシアや中東欧 諸国から流入する人が再び増加しています。私が勤務するライファ イゼンバンクインターナショナルのウィーン本店では約60ヵ国出身 の行員が勤務しており、職場環境は極めて国際色豊かです。  少し目先を変えて、ウィーンでのビジネス環境に目を向けますと、① 国を挙げて中東欧諸国をサポートする政策を採っていること、②ロシ アや中東欧諸国の要人が往来し、各国の客観的な情報を入手でき ること、③空路・陸路による中東欧諸国へのアクセスがよいことなど から、欧米の大手企業がウィーンに統括会社を数多く設置していま す。  賃金水準が比較的安価ながら良質の労働力を確保できる中東 欧諸国や、賃金水準でさらに競争力のあるバルカン半島のブルガリ ア・ルーマニア・旧ユーゴスラビア諸国のいわゆる南東欧で事業を行 う製造業などについては、オーストリアに統括会社を設置して中東 欧・南東欧の事業を統括する企業が散見されます。  ライファイゼンバンクインターナショナルもウィーンのビジネス環境 を活用してビジネスを行っており、中東欧へのアクセスのよいウィー ンに本店を構え、中東欧・CIS諸国に展開する銀行子会社につい て、自立性を尊重した経営を行っています。  また、オーストリア・ハンガリー帝国からの歴史も踏まえて、機械や 製鉄、石油化学などのオーストリア企業も中東欧諸国でのビジネス を拡大しています。  みずほ銀行は、オーストリア金融当局からオランダみずほ銀行の 支店をウィーンに開設する認可を2015年1月に取得し、オランダみ ずほ銀行ウィーン支店開設に向けて準備を進めております。オースト リアや中東欧で事業を展開される企業の皆さまについて、ライファイ ゼンバンクインターナショナルのネットワークを活用した銀行サービス に加えて、オランダみずほ銀行によるサービスをご提供してまいります ので、引き続きご愛顧いただきますよう、よろしくお願い申しあげます。

中東欧の中のウィーン

〜ビジネスの側面〜

ライファイゼンバンクインターナショナル

みずほデスク 参事役 荒木 俊輔

オペラ座 ライファイゼンバンクインターナショナル本店 荒木参事役 【荒木 俊輔 プロフィール】 ライファイゼンバンクインターナショナル みずほデスク 荒木 俊輔 Tel:+43-1-71707-1375 shunsuke.araki@rbinternational.com

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ヴィシェグラード4(V4)

 1989年に共産党体制が崩壊し、そ の後2004年には足並みを揃えてEU 加盟を果たした中東欧4ヵ国、チェコ、 ポーランド、ハンガリー、スロバキア。こ れらを総称してヴィシェグラード4 (V4) と呼ぶ。当時、EU東方拡大、拡大欧 州の象徴的存在ともてはやされ、事 実、高い経済成長率を記録し、新興経 済圏として脚光を浴びることになった。この10年間の経済指標を鳥 瞰するに、確かにこれらの国々はその経済規模を着実に拡大させてき たといえる。  欧州を一括りにできないのと同様、中東欧4ヵ国をまとめて議論する ことは少々乱暴ではあるが、多くの共通点が存在するのもまた事実で ある。  チェコ、ポーランド、ハンガリー、スロバキアは、近年に社会体制の変 革を経験してきた境遇からして近しい関係にある。ただ、人種、言語、 宗教、風土、歴史的背景は、似て非なるものであり、人口規模、人口 に占める移民の割合といった人口構成にも違いがみられる(表1)。  これらの国々は、社会体制の転換からまだ歴史が浅く、旧共産圏、 新興経済圏であることにともなう不安定さが随所に見受けられる。たと えば、行政手続きが複雑で時間を要する、提出書類の分量が多いと いった点や、度重なる法改正、地域や窓口担当によって回答や対応 が異なったりするといった点が特徴的である。

投資対象国としての中東欧

 中東欧地域は、欧州市場にとって重要な生産拠点の一つに数え られる。国家規模の取り組みとして、EU規定との調和を図り、西欧に 比べて安価であるも良質な労働力を提供、EU市場へのアクセス面で の地理的優位性、投資優遇措置制度の存在といった多くの共通項 を有する。   日本とのつながりで言えば、2013年6月に、安倍首相がポーランド のワルシャワで、V4諸国の首脳と会合を持ち、特にエネルギー分野で の連携強化、安全保障面での協力に関する共同声明を発表した。  日系企業は、2000年初頭から、特に自動車、電機業界を中心に中 東欧諸国に進出してきており、欧州域内の生産拠点として、相対的 に安価な労働コストメリットを生かした製造活動を行っている。  ただし、最近はグリーンフィールドとしての新規拠点や工場設立の 流れは一段落している。  V4共通の課題としては、これまでの割安な生産拠点を前面に押し 出した誘致策から、今後はどう差別化を図りつつ方向転換していける かであろう。また、社会インフラの問題も挙げられよう。高速道路、幹線 道路、鉄道網の整備など、まだまだ改善の余地を残しており、発展途 上の段階にある。

進出時の留意点

労働コストの優位性  日系企業が当地域に投資を決定してきた重要な要因の一つが、 安価で良質な労働力市場の存在であった。近年、労働コストは着実 に上昇してきているものの、依然として、西欧諸国に比べ優位性はある (表2)。  欧州地域に進出済みの企業も、コスト競争力をさらに増強するた め、西欧から中東欧へ製造拠点をシフト・集約するケースも見られた。 中には、欧州地域の統括拠点そのものを移転する再編もあった。更 に、近時では、シェアードサービスセンターやテクノロジーセンターといっ た知識集約型の機能を、中東欧に配置する欧米企業も散見される。 税務等コンプライアンス  中東欧諸国の法人税率は、比較的低く抑えら れているものの、付加価値税率は総じて高い。加 えて、中東欧諸国の社会保険料負担は重く、社会 保障協定を締結している国であれば(チェコ、ハンガ リー)、日本人駐在員を派遣する際には、協定によ る免除を申請するなど、コスト節減を図るスキームを 模索し実行する必要がある。  EU加盟国としてのV4諸国は、EU規則へ準拠 するために国内法の改定、微調整が頻繁に行わ れている。改正案の承認から発効までの期間が短 く、承認直後に施行されるということも珍しくない。 出所:CIA Factbook 2013年度

表1. V4諸国の経済指標比較

中東欧主要4ヵ国進出時の留意点

PricewaterhouseCoopers Ceská republika s.r.o.

山崎 俊幸 シニア・マネージャー

山崎シニア・マネージャー

チェコ ポーランド ハンガリー スロバキア

GDP (購買力平価) USD 285.6 bn USD 814.0 bn USD 196.6 bn USD 133.4 bn

実質GDP成長率 -0.9% 1.3% 0.2% 0.8%

1人あたりGDP USD 26,300 USD 21,100 USD 19,800 USD 24,700

人口 (百万人) 10.6 38.3 9.9 5.4

労働人口 (百万人) 5.3 18.2 4.3 2.7

失業率 7.1% 10.3% 10.5% 14.4%

物価上昇率 (消費者物価) 1.4% 1.0% 1.9% 1.7%

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実務手続きを調整するための十分な期間が確保されないこともあり、 不都合が生じている。全般的に、税務・法務リスクに対するコンプライ アンス対応に相当程度の事務的手間、時間・コストがかかる点が進 出企業の間で問題視されている。  また、近年では、いずれの中東欧諸国でも、国外の関連者との移転 価格問題が取りざたされ、文書化や移転価格設定の見直しなどの対 応に追われている。財政健全化の流れの中で、各国政府は徴税活動 を強化する傾向にあり、欧州債務危機以降、税務調査の頻度・件数 は増加している。  移転価格問題は、投資優遇措置制度(免税)との関係において、 対応が複雑化する場合があるため、慎重に対策を講じることが期待さ れる。 優遇措置制度  中東欧各国は、外資誘致の政策をとり、投資優遇措置制度などを 利用して、少しでも他国よりも投資魅力度を高めることを企図してい る。この点、近隣諸国と競争状態にあるといっても過言ではない。  国内法に基づく法人税免税や補助金支給制度のみならず、EU基 金から補助金が付与される枠組みもある。中東欧の各国政府はいず れも、一定のEU予算(予算期間2014年から2020年)の割り当てを 受けている。  実際に、この優遇制度を活用して、ドイツ、イギリス、アメリカ、日本等 の外資がこぞって製造拠点を新規に立ち上げたり、西欧の既存工場 を中東欧へ移転したケースも、数年前まではよく見られた。  注意点として、投資優遇措置申請時に、各種条件や前提情報を しっかりと確認しておくことが肝要である。投資後も、一定期間、相当 程度の投資金額や雇用者数を維持しなければならないといった条件 が付されており、投資時および投資後のオペレーションが制約を受け る可能性もある。 現地人材の活用  現地の日本人マネジメントからは、現地 人材に対する批評として、資本主義体制 下の経験不足から管理職人材の機敏さ が足りない、プロジェクトマネジメント力が 相対的に弱いといった意見をよく聞く。  都市部ではあまり目立たないが、工場周 辺地域では、特に有能なエンジニアや管 理職が採用しづらい、定着しないといった 問題も抱えている。  病欠等の欠勤管理も問題となることが 多い。生産効率に直結する論点だけに、 欠勤率の効果的な管理手法を検討する 必要がある。  有能な人材を組織につなぎとめるための魅力的な施策(研修制度 など)、現地人材のモチベーション改善に資する報酬・ベネフィット体 系の構築、組織目標への関与度向上や、組織的一体感の醸成のた めのプログラムなど、日常的取り組みが欠かせない。  現地人材の勤務態度に関しては、日本とは異なる生活習慣への 理解を示し、歴史的背景に配慮しつつ、一方で事業目的達成のため に、組織文化を融合させる努力が不可欠といえよう。

まとめ

 投資検討の初期段階において、周到なフィージビリティスタディを 行い、欧州市場における自社の事業戦略に照らして、どの国に拠点を 構えれば、戦略達成上、最も効果的なのかを、しっかりと検討しておく ことが肝要である。投資先国の事業環境の見定めが、投資後のオペ レーションに良くも悪くも影響を及ぼすのは間違いない。  これまで多くの日系企業が進出を成し遂げているが、現地で独立 採算を達成するのは容易ではなく、新たな収益構造の構築など、現地 事情に精通する専門家を交えて、投資計画の策定や検証を行うこと が求められる。

表2. EU諸国 - 人件費比較 (時間あたり労働コスト 2014、EUR)

出所:ユーロスタット - 時間あたりの見積もり労働コスト 2014(ユーロ) ※EU28とはEU加盟諸国28ヵ国の平均値、EA18とはユーロ圏18ヵ国の平均 ア︵ EA -18︶ E U 28 50

Other labour costs Wages and salaries

40 30 20 10 0 【山崎 俊幸氏 プロフィール】 チェコ共和国プラハ在住。 日系多国籍企業の会計監査や内部統制監査、IFRS含む各種アカウン ティング関係のプロジェクトに長年従事。ニューヨーク駐在時には米国企 業の監査業務なども担当。 2009年に活動拠点をポーランドへ移し、当地に進出する日系企業向け に、会計分野のみならず、税務、人事労務、各種アドバイザリーサービスを 幅広く提供する。 2012年からはチェコのプラハを拠点に、日本人マネジメントが直面する制 度面、経営管理面での問題解決に向けた支援活動を引き続き展開してい る。 公認会計士、US CPA (ニューハンプシャー州)。

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 ヨーロッパ竹中は、1973年、ドイ ツ・デュッセルドルフを拠点とするド イツ法人として設立されました。その 後、ベルリンの壁崩壊やEU統合に いち早く対応し、現在は、ヨーロッパ 12ヵ国、総勢360名(日本人駐在員 38名、ローカルスタッフ322名)の体 制で活動しております。  中東欧では、1993年にポーラン ドクラコフ美術館、1994年に在ハンガリー日本大使館、そして 1996年にチェコパナソニックTV工場、東レチェコ工場を手掛け、 その後本格化する日系製造業の中東欧進出のお手伝いをさせて いただいてきました。さらに、2000年代に入ると、お客さまとともに、 スロバキア、ルーマニアにも進出し、日系のみならず、現代・KIAグ ループ等の韓国系企業やドナルドソン、エレクトロラックスといった 非日系企業までお取引いただき、高い評価を得ております。現在ま で、中東欧5ヵ国での当社のお客さまは120社以上にのぼり、日系 だけでなく、非日系企業まで活動を広げられたことは、安全、品質、 工期に加え、適正なコスト競争力があるがゆえと自負しております。

中東欧への進出を検討するにあたり

(1)中東欧の魅力  1990年代以降、安価で質の高い労働力の確保を目指し、多 くの日系企業が中東欧へ進出しました。その後も中東欧各国は、 EU加盟を契機としてインフラ整備が急速に進み、欧州市場全域 に向けた生産拠点の位置づけを確固たるものとしました。昨今で は、現地所得水準の向上とともに消費市場として開拓する動き や、技術開発部門の整備、IT市場への参入など、進出企業の業 態や投資内容にも変化が現れてきています。このように継続的に 投資が進む背景には、安定した投資インフラのみならず、現地ス タッフの勤勉さや、知識、技術習得への真摯かつ意欲的な取り組 み等、永続的な事業運営に不可欠な要素が充実している点が挙 げられます。当社も中東欧諸国で採用し、技術、経験を積んだ現 地スタッフを欧州全体の統括部門に登用しており、お客さまにとっ ても優秀な人材を採用できる市場であると思われます。また、各国 政府の積極的な投資誘致も特筆すべき魅力のひとつです。中東 欧各国ではEU開発助成金を主軸とした投資インセンティブととも に各国独自の投資優遇策を整備し、投資の促進を進めています。 対象は製造業のみならず、研究開発やITサービス業など多岐にわ たり、進出を検討する企業の投資意欲を創出しています。 (2)当社のサポート体制  中東欧に進出して20年余り。初めての進出国ではお客さまとと もに苦労もしました。たとえば、お客さまが市のバイパス道路建設 計画を前提に増築分も含めて用地を取得し、工場を新築したもの の、道路建設は一向になされませんでした。そのため、増築計画を 実行する際、予想される製品運搬車両の増加による騒音などの 環境面から、工事の許認可が下りないという状況となりました。当 社はお客さまとともに増築に伴う製品運搬車両台数の計画を綿 密に立て、市や関係省庁にも掛け合い、非常に時間が掛かりまし たが許認可取得を実現するに至りました。その他にも確約されて いたインフラが整っていない、規定通りに申請するもなかなか許認 可が取得できない等の問題が発生するケースもあり、これらをひと つひとつ解決してきた経験こそが当社のノウハウであり、敷地候補 地の選定・調査・購入やインフラの引き込み、建物基本計画、許認 可(環境・計画・建築)の取得、建物詳細設計、施工時の安全計 画、建設工事、生産機器据え付けと操業準備、また、操業開始後 のメンテナンスに至るまで、あらゆるステージにおいてさまざまなサ ポートができる体制を整えてきました。さらに自然エネルギー利用や 環境負荷の低減技術、エネルギーの有効利用を目指した高効率 化技術、資源削減技術といった環境に配慮した提案力も当社の 強みのひとつです。

中東欧の発展とともに

 「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」これは竹中工務店 の経営理念です。当社は、これからも、時代のニーズとお客さまの 期待に的確に応える建築が社会の資産となり、文化の象徴として 遺されるものと考え、お客さまとともに、あらゆるソリューションを提供 してまいります。

お客さまの「想いをかたちに」

ヨーロッパ竹中 チェコ支店

(日本本社:株式会社竹中工務店)

支店長 三田 義政氏

三田支店長 東レ テキスタイルズ セントラルヨーロッパ社(チェコ) 欧州市場での安定供給と需要増に伴い、2013年に水なし平版製造工場を既存工場敷地内に新築した。

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全体感

 永らく中東欧は当行の「拠点空白地 帯」であった。しかし2015年度にはオラ ンダみずほ銀行ウィーン支店が開設と なり、中東欧をカバーする体制が確立 する。「中東欧」とはどのようなところな のか紹介したい。  実は「中東欧」という概念には明 確な定義がない。外務省はドイツや スイス、ギリシャなども入れているが、一方で英語圏ではCentral & Eastern Europe(CEE)と表記し、中欧のうち過去に共産圏に組み込 まれていた地域でかつ2004年以降に欧州連合(EU)に加盟した国 のみを指すことが多い。  ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーの4ヵ国は同地域の中核 を成しており、「ヴィシェグラード・フォー」と呼ばれる。いずれも第二次世 界大戦後、旧ソ連の影響を強く受けて共産党一党独裁体制を確立。 西欧社会とは永らく隔絶されてきたが、1989年のベルリンの壁崩壊 に始まった社会主義体制の解体により状況は一変した。  西欧との地理的近接性と労働コストの安さ、そして勤勉性が大きな 魅力となり、西欧先進国の多くはその製造拠点を中東欧地域にシフ ト。特に独、仏の自動車産業の製造拠点が人件費の安いチェコ、ス ロバキア、ハンガリーに移管されたことを受け、そのサプライヤーも追 随。その傾向はヴィシェグラード・フォーのEU加盟(2004年)を境にさら に顕著になる。現在同地域の日系企業進出数は約700社と言われ る。  日系企業として初めて進出したのはハンガリーに現地市場向け生 産拠点を設立したスズキ自動車(マジャールスズキ-1991年)であ る。同社は体制変更前から進出を検討してきたものであり、現在国内 シェア1位を誇る。続いて大きな転換点であったのは、トヨタ自動車に よる仏PSAとの合弁チェコ生産拠点(TPCA-2002年)設立である。 この時期にチェコのオストラヴァ、ポーランドのカトヴィツェ、同ヴロツワ フには自動車サプライヤーを中心とした日系企業が多く進出した。  中東欧の問題点として一般的に挙げられるのは、交通インフラの 未整備である。2012年のサッカー欧州選手権のポーランド・ウクライ ナ共催時に高速道路網の整備計画があったが結局間に合わず、課 題は残されたままである。高速鉄道も一部開通したが、在来線の線路 をそのまま利用しているため、西欧諸国との比較感ではまだまだ劣ると 言わざるを得ない。

ポーランド

 中東欧では最大の国土と突出した人口規模(約3,800万人)を誇 る国であり、市場としてのポテンシャルは最も高い。リーマンショックや 欧州債務危機を通じて、欧州で唯一GDPマイナス成長を経験してい ない。最大のEU補助金予算を有する国としても魅力。日系企業の進 出数も300社弱と最多。今後ポテンシャルとして高いと思われるのは、 ①老朽化した石炭火力発電所の更新需要対応、②食品、③ゴミ処理 施設などか。首都ワルシャワはショパンやキュリー夫人の生誕地。

チェコ

 人口約1,000万人程度の小国でありながら、ドイツと隣接した地理 条件や高い技術を持った労働力を背景に、日系企業進出数は200 社以上を数える。最近では日系商社が上下水道案件に参入する動き が見られる。1人あたりのビール消費量は世界一。

スロバキア

 ヴィシェグラード4ヵ国のなかでは唯一ユーロ通貨を採用。チェコから 分離後、独フォルクスワーゲンや起亜自動車など低価格車の製造拠 点としての発展を遂げ、人口千人あたりの自動車生産台数(181台) は世界一。

ハンガリー

 中東欧では南西部に位置。スロバキアが低価格自動車の生産国 なら、ハンガリーはアウディなど高級車の生産拠点。近年JSR、タカタ やブリヂストンなどの大規模投資あり。中東欧の中では最も高速道路 網が整備されていると言われる。ルービック・キューブはハンガリーの発 明品。

オーストリア

 オーストリアは中東欧ではなく、最東端の西欧と分類することが多 い。冷戦中もNATOに非加盟であったその中立性と、西欧スタンダー ドのインフラ、ハイ・スペックの人材が確保できるというメリット、そしてア クセスの利便性から同国を中東欧マーケットの統括拠点としてきた企 業が多数あり。モーツアルトとザッハートルテが有名。

あとがき

 当行の強みとして挙げられるのは当該5ヵ国投資庁との連携体制 である。今日までにポーランド、スロバキア、ハンガリー、オーストリア、 4ヵ国の投資庁と業務協力提携を交わしており、投資インセンティブ、 進出に必要なインフラやパートナーの紹介など各種情報提供におい て協働関係を築いている。中東欧進出に関するご相談はぜひ直投 支援部にご連絡いただきたい。 小関参事役

中東欧諸国について

みずほ銀行 直投支援部

参事役 小関 健一郎

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みずほ銀行が業務協力関係を構築している各国投資促進機関とみずほ銀行コンサルティング子会社のご紹介

中東欧各国投資促進機関紹介

チェコ共和国ビジネス・投資開発庁(CzechInvest) CEO Mr.Karel Kucera

 チェコ共和国は1990年代から日本企業にとって人気の高い投資先でした。チェコの経済は製造業に特徴 があり、GDPの25%は自動車産業、機械産業、電機産業によるものです。  日系企業による投資の多くはファイナンス面、情報面、用地選定、ビジネスパートナー選定や労働ビザの取 得において、CzechInvestのサポートを受けています。中でも鍵となる産業は自動車であり、トヨタ自動車、デン ソー、アイシン精機、日立オートモーティブシステムズ、パナソニックオートモーティブシステムズ、東レなどの企業 が進出しています。  アンケート結果やマクロ経済的比較によれば、チェコ共和国の魅力とは、①地理的ロケーション、②信頼性 の高いインフラ、③サプライヤーの存在、④生活水準の高さなどです。学生のうち、技術系のスキルを持つ割 合が25%を超えることは、伝統的に技術立国であることを示しています。

オーストリア経済振興会社(ABA) Managing Director Dr.Rene Siegl

ハンガリー投資促進公社(HIPA) President Mr.Esik Robert

 オーストリアには300社以上の著名なマルチナショナル企業が国際的なビジネス統括拠点を置いていま す。それらの企業の業種は多岐にわたり、安定した経済基盤、R&Dインフラ、高い能力の人材および素晴らし い生活水準を享受しています。  またオーストリアはその歴史的背景と、中東欧への良好なアクセスを提供する空港の存在により、東欧およ び欧州東南部への足がかりとしても重要な役割を果たしています。  ABA-オーストリア経済振興会社は外国の投資家に対して、投資補助金、市場調査、税務、法務など幅広 い分野に関して迅速かつ「お役所的でない」サポートとサービスを提供いたします。   ハンガリーは欧州の中央に位置するビジネス・ハブであり、製造、サービス、物流のいずれにおいても最高の 立地です。過去25年間に多くの多国籍企業が欧州統括拠点やR&Dセンターをハンガリーに置いており、世 界の多国籍企業の売り上げ上位50社のうち実に45社が何らかの拠点を構えています。外資による累計投 資額はEUR780億にもなります。  立地以外の魅力は、労働力のコストの低さと質です。ハンガリーの平均賃金はEU平均の約6割である一方 で、労働人口の約2/3が高等教育か何らかの技術的な訓練を受け、また大卒の約9割が英語に堪能です。  ハンガリーのもう一つの強みは、政府による、進出企業の競争力を高めるためのコミットメントです。具体的に は、進出企業に対する税制優遇や、幅広い補助金、低利融資や有利な価格による不動産の提供などです。 HIPAはハンガリーの投資環境から資金調達まで、ワンストップかつ無料で情報提供をする機関です。企業の 希望に従ってサプライヤーの選定や進出先の不動産情報など、テイラーメードなご提案をいたします。 CEO Mr.Karel Kucera Managing Director Dr.Rene Siegl President Mr.Esik Robert

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ポーランド情報・外国投資庁(PAIiIZ) President of the Board Mr. Slawomir Majman

 「ポーランド情報・外国投資庁は、外国投資家の進出について、意思決定、用地選定、経済的支援からアフ ターケアまでお手伝いいたします」  〜欧州の「明るい部分」にようこそ〜  ポーランドは中東欧の経済規模、人口構成の4割を占める国です。2014年にはGDP成長率3.3%を記録 し、同地域経済をけん引していることを再び示しました。  ポーランドが中東欧で最も好まれる投資先である理由は、その安定性、危機に強い経済基盤、多くの投資イ ンセンティブ、そして外資への開かれた扉、の4点です。外国からの直接投資累計額は2,210億米ドルにもなり ました。  アジア諸国については日本からの投資規模が最大であり、また日本はポーランド民主化以降、アジアから 初の投資を行った国でもあります。日本からの過去25年間の累計投資額は14億米ドルになりました。現在の ポーランドの新しい工業化の流れの中で、日本からの投資は大歓迎です。

スロバキア投資・貿易開発庁(SARIO) CEO Mr. Robert Simoncic

Mizuho Bank - BA Investment Consulting GmbH 副社長 Dr. Friedrich Edlinger

 スロバキアはその地理的優位性、輸出へのポテンシャル、安定した政治経済環境および2009年のユーロ 通貨導入を背景に、ユーロ地域において過去10年間で最も経済成長を遂げた国です。さらには国民の資質 自体が「宝」であるとの自負があります。複数言語を操り、生産性が高く、よく訓練された労働力はEUの統計上 も高い評価を得ています。  SARIOは国営の投資促進機関であり、進出を検討されている企業に対して初期段階から成功まで幅広く ご支援いたします。具体的には、ビジネス環境、産業別の投資機会、事業立ち上げに必要な情報や、立地選 定の助言、不動産関連コンサルティングから、既進出企業の複雑なニーズに至るまで、深い知見をご提供いた します。我々のサービスは無償です!

 Mizuho Bank-BA Investment Consulting GmbHは、1991年に中東欧に進出する日系企業をサポート する目的でベルリンの壁が崩壊したわずか9ヵ月後、東西ドイツ統合よりも前にウィーンにて設立されました。  ウィーンが当社の立地として選ばれたのは、西欧の最東端に位置し、同市を中心とした半径500㎞の円の 中にて中東欧諸国のほとんどがカバーされるという理由からです。冷戦の間にもウィーンは共産圏への玄関口 として多くの日系商社が中東欧統括拠点を置いていました。現在日系の直接投資はチェコ、ポーランド、ハンガ リー、スロバキアおよびルーマニアに集中していますが、その他中東欧諸国も日本からの投資を呼び込む努力 をしています。   当社の主な機能としては①最適な進出ロケーションの選定、②市場調査・リサーチ、③スキルの高い人材 の雇用や、④その処遇設定に係るコンサルティングです。また工業団地の見学や(特にポーランドの場合)経 済特区の視察も企画した実績がございます。最近の日系企業の傾向としては、日系企業が中間管理職を現 地化するニーズが散見され、そのような人材をリクルートするご相談もいただいております。

President of the Board Mr. Slawomir Majman

CEO

Mr. Robert Simoncic

副社長

参照

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