• 検索結果がありません。

医療機関と連携した軽症糖尿病患者のための健康行動システムに関する研究 [ PDF

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "医療機関と連携した軽症糖尿病患者のための健康行動システムに関する研究 [ PDF"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)医療機関と連携した軽症糖尿病患者のための健康行動システムに関する研究 キーワード:軽症糖尿病,健康支援システム,生活習慣,行動修正 所 属 行動システム専攻健康科学コース 氏 名 1. 研究の背景・目的. 井 雅代. 未治療・未介入の耐糖能異常を有する男女 192 名のう. 近年、世界各国で糖尿病の発症・進展を試みる大規模. ち、1 年後の再評価に参加した 73 名(平均年齢 50.2±. 介入研究が行われており、食事や運動といった生活習慣. 15.6)の効果評価を行った。すなわち、肥満、体力およ. の改善が軽症糖尿病、耐糖能異常に有効作用することが. び耐糖能の各指標をプログラム前後で比較検討した。. 認められている。しかし、我が国においては長期の介入 研究は極めて少ない。さらに、日本糖尿病学会教育認定 施設を対象に行われた運動療法の実施状況調査によると、 外来で処方を行っているのは全体のわずか 26%であるこ とが報告されている。このことは、病院内で行う二次予 防の限界、病院内で行う軽症糖尿病患者の治療システム の限界を示唆している。さらに、実施されたプログラム. 2).健康支援プログラムの開発 プログラムの基本理念として、高橋による2つの健康 感と健康行動モデルに基づき、 「新しい健康観」 に立脚し た健康支援プログラムを採用した。具体的には、疾病改 善が目的では無く、実施プロセスでの身体的、精神的気 付きを通して健康のランクを高めることを目的とした健 康支援プログラムを作成した。. の評価は極めて少ない。 そこで、われわれは、新規に糖尿病と診断され、か つ非薬物治療下にある糖尿病患者を対象に、医療機関と 連携のもと健康増進施設において実施するというシステ ム(健康支援システム)を構築し、食、運動行動の修正 を目的とした 6 ケ月間の行動修正プログラムを行った。 そして、さらにその後 6 ケ月間のフォローアップ調査を 施行し、モデルケースとしての医療機関と提携した院外 施設における糖尿病患者の行動修正プログラムの評価 (課題1:継続評価、課題 2:効果評価、課題 3:生活習 慣の変化について)を行うこととした。 2. 方法 課題 1:継続評価 1)対象者 1999 年 10 月までの参加者192名(未治療・未介入 の耐糖能異常者) 2)実施評価 継続評価として、本プログラムへのアクセス状況、お よび病院カルテより病院への通院状況を調査した。通院 中止者に対しては、通院中止理由を調べるため、往復は がきによるアンケート調査を実施した。アンケート内容 としては、現在、他院で治療中かどうか、通院中止の理 由は何か(複数回答可)であった。 課題 2:効果評価 1) 対象者. 3)健康支援プログラムの内容とその実施と手順 本プログラム参加 1 カ月以内に種々の検査・評価・診 断を行った。まず本プログラムの中心となる理念とそれ に基づく行動変容(修正)に関する講義を行なった。そ の後の指導は継続的に行われるが、基本的には患者自身 が決定した具体的な行動(主に、運動および食事療法が 中心)と本プログラムを参考にして日常生活を送るよう 指導をした。また、6 ヶ月間は体重、歩行、自己課題設 定などのヘルスモニターリングを行い、結果をファック ス送信してもらい概ね1年後には再度、本プログラムに 入り、面接による聞き取り調査を行い、行動修正のため のカウンセリングを実施した。 課題3:生活習慣の変化について 1)対象者 効果評価の対象者 73 名(n=82 名、男性 57 名、女性 25 名、内、薬物服用者 9 名を除く)のうち、ベースライン 時およびフォローアップ後のアンケートが揃った 36 名(平均年齢 49.6±14.1、男性 25 名、女性 11 名、耐糖 能境界型 10 名、2 型糖尿病 25 名) 。 2)アンケート内容 生活習慣に関する簡易なアンケート調査を実施した。 内容は、飲酒(飲酒量の有無、種類、量、頻度) 、喫煙(過 去・現在の喫煙の有無、本数、年数、仕事・余暇での身 体活動量、定期的な運動の習慣について(種目、主観運 動強度、時間、回数、継続年)などであった。 3. 測定項目.

(2) 肥満度指標として、BMI、WHR および体脂肪率を測定 した。 さらに、 腹部 CT 検査にて臍位での腹部脂肪面積 (皮 下脂肪面積、内臓脂肪面積)を算出した。体力指標とし て最大酸素摂取量は自転車エルゴメーターを用いて推定 した。採血は、12 時間以上の絶食後、早朝空腹時に肘静 脈より行い、その後 75g 糖負荷試験を実施した。糖代謝 指標として、空腹時血糖とインスリン濃度を分析し、イ ンスリン抵抗性スコアー(HOMA-IR)を算出した(FIRI(μ U/ml)×FPG (mmol/l)÷22.5) 。また、血糖(AUCPG)お よびインスリンの曲線下面積(AUCIRI)も算出した。脂 質代謝指標としては、総コレステロール(TC) 、中性脂肪 (TG)および高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-c)を 分析した。. 理由としては、「仕事が忙しい」「正常化したため」 「自 覚症状がない」といった個人的要因が多くあげられてい た。この「自覚症状がない」 「正常化した」というような 自己判断での通院中止は治療に対する患者のコンプライ アンスが不良であるとも考えられるが、逆に医療やプロ グラム供給者側の不十分な説明不足とも考えられる。こ のため、初回の健康教育時の講義内容に自覚症状がなく とも通院を止めない、早期の糖尿病治療には糖尿病の自 己管理の重要性を強調する内容を盛り込むなどの健康教 育の改善やフォローアップ期間の何らかの介入(TEL フ ォローなど)を行うなどのプログラムの改善の必要性が 示唆された。また、物理的要因(病院の待ち時間が長い、. 4. 結果と考察 課題 1: 継続評価. 病院が遠い)で通院中止したが、他の病院で治療を継続 している例が 37%いた。. プログラムの参加総数 192 名のうち、プログラムの継続. 本システムは 1 カ所の大学病院との連携で行われたプロ. 者は 82 名(42.7%)、 非継続者は 106 名 (55.2%) であった。. グラムであるため、転院や、受け入れ先のない軽症糖尿. なお継続の判定基準は、1・2 年後の再評価へ参加したも. 病患者を広く受け入れるような地域の医師会と連携した. のを継続者と判定した。ただし、再評価を希望したが、. システムを考えるなど、システムの改善の必要性が示唆. 都合がつかなかったものが 4 名(2.1%)いた。1 年後の. された。. 本プログラムの継続率は 42%(82/192)であり、通院率. 課題 2: 効果評価. は、プログラム参加者総数 192 名のうち 98 名(51.0%). プログラム参加者 73 名のプログラム前と行動修正プロ. が 1-2 年後も通院していた。先行研究における糖尿病へ. グラム終了後から 6 ケ月間のフォローアップ後に全ての. の長期監視型プログラムへの脱落率 50%および、監視型. 測定項目を測定し、その効果を比較した。その結果、耐. (6 週)+非監視型プログラム(1年)の脱落率 90%に比. 糖能異常者の BMI、内臓脂肪面積と BMI が肥満の範疇に. 較し、継続率は良好と判断された。また、1-2 年後の通. あるものの、肥満度が有意に減少した。また、最大酸素. 院者 98 名中、その大部分(81 名)が非薬物療法者であ. 摂取量はと有意に増加した。耐糖能に関しては、空腹時. った。我が国において、ライフスタイル修正による糖尿. 血糖の有意な変化は認められなかったが、空腹時インス. 病の改善効果についての長期介入研究は極めて少なく、. リン濃度、HOMA-IR が有意に減少し、インスリン抵抗性. この成績を比較検討し、評価することはむずかしい。し. の改善が認められた。さらに、総コレステロールに有意. かし、非薬物治療対象者が通院を中止しがちなことは経. な変化は認められなかったが、HDL コレステロールが有. 験的に知られており、糖尿病を専門とする医師の私信に. 意に増加し、中性脂肪が有意に減少したことから、脂質. よれば、 1 年後の通院率は 10%にも満たないことを指摘し. 代謝指標の改善も認められた。これらの結果より、介入. ている。本研究におけるプログラムへの非継続者に対す. プログラムによって耐糖能異常者の糖・脂質代謝指標の. る調査でもプログラム非継続者の 82.4%は通院を中止し、. 改善が認められた。. さらにその中の 61%は治療自体を中止していた。これら. 課題 3:生活習慣の変化について. のことからも、通院率 51.8%(103/199)は、本プログラム. 生活習慣要因の喫煙については、喫煙本数が減少傾向. への継続が通院率を高めた効果のひとつと考察できる。. にあるものの、喫煙者数に有意な変化は認められなかっ. 通院中止者(91 名:フォローアップ1年後の通院中止. た。飲酒については、飲酒量がエタノール換算で減少傾. 者も対象とした)に対するアンケートの結果は(回収率. 向にあるものの有意な変化は認められなかった。飲酒の. 49.5%)、他院で治療中の者が 18 名(37%)あり、治療中止. 回数は飲酒者 18 名中飲酒を止めた人はいなかったが、 毎. 者は 30 名(61%)であった。そして死亡が 1 名(2%)であっ. 日飲むが時々飲むへと移行する傾向にあった。日常の仕. た。また、他院で治療中の者が転院した理由としては、. 事および余暇における身体活動量の変化においては、余. 「待ち時間が長い」 「病院が遠い」 といった物理的要因が. 暇における身体活動量については有意な変化は認められ. 多くあげられていた。一方、治療中止者が通院を止めた. なかったが、日常の仕事における自覚的な身体活動量が 有意に増加した。運動の時間については、1 回にかける.

(3) 時間が有意に増加し、運動の頻度は運動を行っていなか. (1 年後の通院率)は良好と判断された。通院中止者の原. った者の半数は運動を行うようになり、運動を行ってい. 因が患患者の医療行動に関わるとの課題であったため、. た者も回数が有意に増え、時間、回数とも有意な変化が. これらの要因に関する対策の必要性が課題として残され. 認められ、定期的な運動習慣を持つものが有意に増加し. た。 また本プログラム参加者 73 名およびアンケートの揃. た。運動の種類はウォーキングが全体の 60%を占めてい. った 36 名の効果評価は依然として肥満の範疇にあるも. た。他にゴルフ、登山、ジャズ体操など趣味のものが多. のの、各種肥満指標(body mass index、体脂肪率、腹部. かった。. 皮下・内臓脂肪面積)の低下、全身持久力(最大酸素摂. 本研究結果の定期的運動習慣の獲得につながった要因. 取量)の増加、および耐糖能(空腹時インスリン濃度、. として、本プログラムの講義内容の影響があると考えら. インスリン抵抗性スコア−、グルコース曲線下面積、お. れる。具体的には、疾病改善が目的では無く、実施プロ. よび HbA1c の低下)の有意な改善が認められ、定期的な. セスでの身体的、精神的気付きを通して健康のランクを. 運動習慣が獲得された。食行動に関しては、解析してい. 高めることを目的とした健康増進プログラムである。そ. ないため今後の課題としたい。これらの結果から、病院. して、自己課題の設定、ヘルスモニターリングを行うよ. と連係した健康行動支援プログラムの管理下にあれば、. う指導している。そのことが、通勤時の歩行や犬との散. 少なくとも病態の改善には効果があることが示唆された。. 歩など生活の中に運動を取り入れる工夫や継続に繋がっ. また、研究デザインとしては本研究では前後比較デザイ. たと考えられる。6 ヶ月運動が継続できているものは習. ンを用いており、このデザインは内的妥当性が必ずしも. 慣化していると報告があることからも、二次予防として. 高く無いことから、無作為化比較対照研究法を採用しコ. の生活習慣の改善、行動修正が目的のプログラムに、自. ントロールを含めた代替プログラムの評価を行い内的妥. 己課題の設定、行動の継続を意図としたヘルスモニター. 当性を高めることで、本プログラムの精度の向上を目指. リングの考案と実施は、高い継続率に繋がったと考察で. したシステム構築の必要性が示唆された。. き、本研究プログラムの有効性が示唆された。 これらの結果をまとめると、本プログラムにおける食 行動の変化については不明であるものの、代謝特性の改 善には運動行動の変化が関与していることが推察された。 これらのことからも、本プログラムによって運動行動が 変化し、耐糖能異常、2 型糖尿病の改善に有効に作用し たことが示唆された。しかし、本プログラムの研究デザ インは、 コントロール群なしの前後比較デザインであり、 内的妥当性が高い研究デザインと言えないため、これだ けでの評価は難しい。また、食行動の変化の影響も大き いことは先行研究で報告されていることから、今後の課 題として、本プログラムの効果評価に与える食行動の影 響を解析するとともに、コントロール群を設けての評価 デザインの再検討など内的妥当性を高める必要性がある と考えられた。 5.要約 本研究の目的は、新規に診断された糖尿病患者を対象 に、院外の健康増進施設において健康観の認知変容に基 づく食・運動行動の変容および修正を目的とした健康行 動支援プログラムを施行し、1-2年後のフォローアップ 調査を行い、本プログラムの継続評価および肥満および 耐糖能改善に関する効果評価を行なうことであった。 本研究の結果、継続評価は、他のプログラムと比較し ていないため評価できないが、本プログラムへの継続率.

(4)

参照

関連したドキュメント

調査の概要 1.調査の目的

 複雑性・多様性を有する健康問題の解決を図り、保健師の使命を全うするに は、地域の人々や関係者・関係機関との

(問5-3)検体検査管理加算に係る機能評価係数Ⅰは検体検査を実施していない月も医療機関別係数に合算することができる か。

●健診日や健診内容の変更は、直 接ご予約された健診機関とご調 整ください。 (協会けんぽへの連

全国の宿泊旅行実施者を抽出することに加え、性・年代別の宿泊旅行実施率を知るために実施した。

在宅医療の充実②(24年診療報酬改定)

 プログラムの内容としては、①各センターからの報 告・組織のあり方 ②被害者支援の原点を考える ③事例 を通して ④最近の法律等 ⑤関係機関との連携

2 保健及び医療分野においては、ろう 者は保健及び医療に関する情報及び自己