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腹部大動脈瘤の進展・破裂と食生活の関わり

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腹部大動脈瘤の進展・破裂と食生活の関わり

宮本智絵a)・久後裕菜a)・星野健斗a)・財満信宏a),b)・森山達哉a),b)

a)近畿大学大学院農学研究科応用生命化学専攻 b)近畿大学アグリ技術革新研究所

The relationship between progression and rupture of abdominal aortic aneurysms and diets.

Chie Miyamoto a), Hirona Kugo a), Kiyoto Hoshino a), Nobuhiro Zaima a,b) and Tatsuya Moriyama a,b)

a) Department of Applied Biological Chemistry, Graduate School of Agriculture, Kindai University, 3327-204 Nakamachi, Nara 631-8505, Japan

b) Agricultural Technology and Innovation Research Institute, Kindai University, 3327-204 Nakamachi, Nara 631-8505, Japan

Synopsis

Abdominal aortic aneurysm (AAA) is a vascular disease that involves progressive dilation of the abdominal aorta followed by its rupture. It is important to prevent AAA rupture since it has a high mortality rate. However, AAA development and rupture cannot be prevented medically. Studies have reported that AAA is closely associated with inflammation-induced vascular wall weakening. Recent studies have suggested that hypoperfusion of the vascular wall because of obstruction of the adventitial vasa vasorum affects AAA development. Furthermore, the abnormal appearance of adipocytes in the vascular wall could be closely associated with AAA rupture. These studies have also suggested that efficient regulation of adipocytes in the vascular wall might be an important strategy to prevent AAA rupture, and further studies might lead to the development of methods to prevent AAA rupture using therapeutic drugs or functional foods. In this review, we summarized the relationship between AAA development and diet.

Keywords: abdominal aortic aneurysm, rupture, adipocyte, fish oil, hypoperfusion-induced AAA animal model

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1.はじめに

大動脈瘤とは、血管壁の脆弱化によって 大動脈の一部が「こぶ」のように拡張し、瘤 を形成する疾患である。『大動脈瘤・大動脈 解離診療ガイドライン(2011 年改訂)』にお いては大動脈直径が正常径の 1.5 倍を超え て拡大した場合と定義されている。特に男 性、中でも喫煙者や高齢者に多い疾患で、こ の大動脈瘤を含む「大動脈瘤及び解離」は日 本人の死因第 9 位に位置する(2016 年厚生 労働省統計)。ほとんどの場合が無自覚・無 症状で進行するため、人間ドックの CT 診 断等で偶発的に発見されることが多い。拡 大した瘤は最終的には、強い痛みとともに 突然破裂し、大量出血によって半数以上が 死に至る。たとえ緊急手術を受けたとして

も50%前後の致死率であり、自覚症状の少

なさと突然死のリスクからサイレントキラ ーとも称される。

現在、確立されている治療法は人工血管 置換術とステントグラフト内挿術である1)。 人工血管置換術は瘤化した大動脈を切除し、

人工血管に置き換える開胸または開腹手術 であり、破裂を予防することができる。ステ ントグラフト内挿術は人工血管にステント と呼ばれるバネ状の金属を取り付けた人工

血管を、4~5cm切開した脚の付け根からカ

テーテルによって瘤部まで運び、装着する ため人工血管置換術よりも低侵襲であり、

血管を内側から補強することで血管の拡大 を防止することができる。これらの手術は 瘤径が50mmを超えた場合、および1cm/年 以上の拡大が観察される場合に対象となり、

この基準に満たない瘤径の患者は経過観察 となる2,3)

大動脈瘤治療の問題点は外科手術以外に 治療法が確立されていない事である。患者 の多くが高齢者であるため呼吸器・循環器 系疾患を合併している場合が多く、手術対 象であってもリスクが高く実施が難しいケ ースや、経過観察中の小径瘤でも破裂する ケースが存在する 4)。したがって、瘤の進 展・破裂に対して有効な薬物療法および食 事療法の確立が急務とされている。

本稿では大動脈瘤の中でも、横隔膜以下 の腹部大動脈において発症する腹部大動脈 瘤(Abdominal Aortic Aneurysm; AAA)の 進 展・破裂メカニズムと、AAAと食生活の関 係性についての最近の知見を紹介する。

2.血管はなぜ拡張するのか

AAA 進展の分子機構は完全には解明さ れていないが、血管壁における炎症に起因 する線維成分の脆弱化と密接に関係してい ることが報告されている 5)。大動脈の血管 壁は内腔側から順に内膜、中膜、外膜の三層 構造からなり、中膜には血管にしなやかさ を与える弾性線維が、中膜と外膜には血管 に力学的強度を与える膠原線維が存在する。

血管壁に浸潤した単球およびマクロファー ジなどの免疫細胞がマトリックスメタロプ ロテアーゼ(Matrix metalloproteinase; MMP) を産生することで、血管壁の線維成分が破 壊され、血管壁が脆弱化しているところに 血圧がかかることで瘤が進展する。特に

MMP-2 やMMP-9は AAA進展に関連して

いることが知られており、これらの発現は 瘤径の増加と相関することが報告されてい る5)。MMPはAAA治療標的として注目さ れているが、MMP阻害だけでは炎症を抑制

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することができないと報告されており、拡 張領域において発現が減少する組織プロテ ア ー ゼ 阻 害 因 子 (Tissue inhibitors of metalloproteinases; TIMP)とのバランスによ って血管壁の強度が調節されていると考え られている。

我々は AAA 進展メカニズムをより詳細 に知るべく、組織切片中の分子種の局在を 視覚化することができるマトリックス支援 レーザー脱離イオン化法-質量分析イメー ジング(MALDI-MSI)を用いてヒト AAA 組 織の病理解析を行ったところ、正常径領域 (Neck)と比較して拡張領域(Sac)の血管壁に は血流量の指標である heme B がほとんど 検出されないことを見出した 6)。大動脈の 血管壁には分厚い組織の隅々に酸素と栄養 を供給する小さな血管(=栄養血管)が張り 巡らされている。栄養血管の病理解析を行 った結果、Sac部の栄養血管の血管壁は肥厚 し閉塞性動脈硬化を生じていた。興味深い ことに、この栄養血管の動脈硬化は一般的 なアテローム性動脈硬化ではなく、コレス テロールの蓄積を伴わない動脈硬化であっ

6)(図1)。我々はAAA血管壁で観察され

た血流量の低下は、栄養血管の閉塞による 血管壁の循環不全によるものだと推測した。

そこで血管壁の循環不全が AAA 発症に関 与するかどうかを動物モデルの作成によっ て検証した。

ラットの大動脈にカテーテルを挿入し、

カテーテルの上から糸で結紮することで血 管壁にのみ循環不全を誘導する腹部大動脈 結紮処置7)を行った。すると、カテーテルを 挿入しただけのコントロール群では瘤は形 成されなかったのに対し、血管壁に循環不 全を誘導したラット群では瘤が形成され、

中には自然破裂を生じるものも存在した 8) (図2)。さらに、血管壁病理解析を行ったと ころ、循環不全によって免疫細胞の浸潤や MMPs 発現の上昇、それにともなう線維成 分の破壊など、ヒトAAAと同様の病理所見 が観察された。この血管壁循環不全誘導 AAA モ デ ル(Hypoperfusion-induced AAA animal model)の作出によって、血管壁の循 環不全は免疫細胞の遊走やMMPs産生を誘 導し、AAA形成の原因となりうることが示 唆された。我々は何らかの原因で栄養血管 が閉塞することで血管壁に循環不全が生じ、

異常な状態になった血管壁に浸潤した免疫 細胞がMMPsを分泌することで血管壁線維 成分が破壊され血管が拡張するという進展 機序を提唱した(図3)。

図1 ヒトAAA栄養血管の病理解析

(a) MSIによるHeme Bの分布 (b) 外膜中の栄養血管 (c) 栄養血管の内腔面積と内中膜面積

スケールバー200µm(a) 100µm(b) *P<0.001文献6の図を一部改変

(4)

3.瘤はなぜ破裂するのか

我々は MALDI-MSI による解析によって 血 管 壁 の 外 膜 に お い て の み 、 中 性 脂 肪 (Triglyceride; TG)が異常局在することを発 見し、その後の病理解析で TG の局在は血 管壁に異所出現した脂肪細胞によるもので あったことを報告した9)。さらに、ヒトAAA において外膜の TG 量は瘤径と正の相関を

示すことを明らかにした 10)。先述の血管壁 循環不全誘導 AAA モデルはこの異所性を もった脂肪細胞の出現と自然破裂が観察さ れる唯一のモデルであるため、我々はこの モデルを用いて脂肪細胞と破裂の関係を検 証した。

破裂したラットでは瘤径の増加と血管壁 中の脂肪細胞の数の増加が観察され、異所 出現した脂肪細胞の周辺では線維成分の破 図3 本研究室が推測するAAA進展機序

図2 血管壁循環不全誘導AAAモデル作出方法

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壊や慢性炎症が促進していた10)。さらに、

破裂部では断裂した血管壁の縁に沿うよう に脂肪細胞が多く分布していることが観察 された11)。このことから、血管壁に異所出 現した脂肪細胞と AAA 破裂が関連するこ とが示唆された。Dodererらは、破裂するこ と が ほ と ん ど な い 膝 窩 動 脈 瘤(Popliteal Artery Aneurysms; PAA)とAAA の比較を行 い、AAAでのみ血管壁において脂肪細胞の 出現が観察されたことを報告した12)。また、

Kruegerらは、ヒトAAAにおいて外膜脂肪

細胞周辺において炎症関連因子の発現が増 加していることを報告している13)。近年の これらの報告は“脂肪細胞がAAA破裂に関 与する”という我々の仮説を支持している。

図4に我々が推測する AAA 破裂メカニ ズムを示した。肥大化した脂肪細胞は単球 走 化 因 子(Monocyte Chemotactic Protein-1;

MCP-1)などのアディポサイトカインを分 泌し組織に慢性炎症を引き起こすことが知

られている。血管壁に異所出現した脂肪細 胞が肥大化することによって、マクロファ ージなどの免疫細胞が脂肪細胞周辺の組織 に集積し、これらの免疫細胞が線維成分を 破壊するMMPsを分泌することで、脂肪細 胞周辺の組織は脆弱化すると考えられる。

このように、肥大化した脂肪細胞を中心に 血管壁線維成分の破壊が進行するため、血 管壁に脂肪細胞が増加するほどに破裂リス クが上昇していくと推測される。脂肪細胞 が血管壁に異所出現するメカニズムは明ら かにはなっていないが、栄養血管の閉塞に より誘導されると推測される。血管壁循環 不全誘導 AAA モデルは脂肪細胞の異所出 現が観察される唯一のモデルであるため、

このモデルを用いることで今後、脂肪細胞 出現のメカニズムを明らかにすることが期 待できる。

図4 本研究室が推測するAAA破裂機序

(6)

4.AAAと食生活

AAA患者は経過観察の間、破裂を避けな がら瘤とうまく付き合っていくことが求め られる。手術適応の瘤径に至るまでには、数 年から十数年の年月がかかるとされ、この 間の食生活が AAA に及ぼす影響を評価す ることは、瘤の進展・破裂を予防するために 重要である。しかし、AAAと食生活の関係 性についてはほとんど明らかになっていな い。我々は血管壁循環不全誘導AAAモデル ラットを用いて食生活が AAA へ与える影 響を評価した。また、AAA患者の多くが有 する喫煙歴にも着目し、たばこの成分であ るニコチンが血管壁に与える影響と食品成 分の関連性についても調査した。

4-1 AAAと食生活の関わり

脂肪はその構成脂肪酸の種類によって生 化学的な役割が異なってくるのはよく知ら れた話である。脂肪酸は炭素間の二重結合 の数によって飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪 酸、多価不飽和脂肪酸に分類され、多価不飽 和脂肪酸は二重結合の位置によってさらに n-3系脂肪酸と n-6系脂肪酸に分けられる。

飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸は過剰摂取 によって動脈硬化性疾患や冠動脈性心疾患 を引き起こすリスクがあるとされ、摂取量 に注意が必要であるとされている。一方で、

多価不飽和脂肪酸は体内では合成すること のできない必須脂肪酸であり、特に n-3 系 脂肪酸は抗炎症作用や抗酸化能を有し、炎 症性疾患に有効であると多数報告されてい るほか、冠動脈疾患に対して予防効果があ ると期待されている。

血管壁循環不全誘導 AAA モデルを通常

食で飼育した場合、破裂率は10~15%であ るが、グリセロールと 3つの一価不飽和脂 肪酸(オレイン酸)から構成されるトリオレ インを投与すると、破裂率は46%にまで上 昇し、血管壁に蓄積した脂肪細胞の数も増 大することが我々の研究で明らかになった

10))。また、飽和脂肪酸を多く含む高脂肪食

(ラード 31.5%含有)を摂取させた場合には、

血管壁に蓄積される脂肪細胞の数・大きさ がともに増大することで、破裂率が対照食 群(ラード 1.9%含有)の約4 倍(46%)まで上 昇し、さらに高脂肪食群は早期に破裂する ことを我々は発見した14)。これらの結果は、

過剰な脂肪分の摂取が AAA 破裂を促進す る可能性があることを示唆している。高脂 肪食と同様に TG 代謝異常を引き起こす高 シュークロース食(シュークロース 66%含 有)を摂取させた場合は、肝臓における TG 異常蓄積などの代謝異常は観察されたもの の、興味深いことに血管壁における脂肪細 胞は対照食群(シュークロース0%含有)と同 程度であり、破裂に影響することは無かっ た 15)。また、ラットの高脂肪食と高シュー クロース食それぞれの平均摂取カロリーは 同程度であり、血管壁における脂肪細胞の 蓄積にとっては、カロリー摂取量よりも食 事の内容が重要であると考えられた。

血管壁中における脂肪細胞の蓄積は脂肪 分の過剰摂取の影響を受けることが明らか になったため、AAA破裂は食事で予防する ことも可能であると我々は推測し、n-3系脂 肪酸に着目した。n-3系脂肪酸には先述の機 能のほかに、肝臓X受容体αのアンタゴニ ストとして TG 合成を抑制することが報告 されている16,17)。血管壁循環不全誘導AAA モデルに、n-3系脂肪酸であるエイコサペン

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タエン酸(Eicosapentaenoic acid; EPA)やドコ サヘキサエン酸(Docosahexaenoic acid; DHA) を多く含む魚油を投与すると破裂率は11%

まで低下した10)。さらに、トリオレインを 投与した時と比較して脂肪細胞の数・大き さが低下し、脂肪細胞周辺の組織では免疫 細胞の浸潤や線維成分の破壊が抑制されて い た(図 5)。 脂 肪 細 胞 の 数 と 大 き さ は

Control群と魚油投与群で有意差はなかった。

また、循環不全誘導前から魚油を投与する

と、酸化ストレス抑制・線維破壊抑制の結果 として、血管径の増加が抑制されることも 明らかになった18)。これらの結果は魚油の 摂取が抗炎症・抗酸化、血管壁の脂肪細胞蓄 積の低下を通してAAA進展・破裂を予防す る可能性があることを示唆している。

我々の報告のほかに、既存のAAAモデル を用いて EPA やDHA がAAA 抑制に効果 的であることを明らかにした報告がいくつ かある。例えばWang らはCaCl誘発AAA

図5 血管壁中の脂肪細胞の定量

(a-f) 脂肪細胞が観察された血管壁Sac部の写真。四角で囲ったエリアの拡大写真を下

段に示した。(g) 脂肪細胞数 (h) 脂肪細胞面積 スケールバー500µm(a,c,e) 100µm(b,d,f) 異なるアルファベット間に有意差(P<0.05)あり(g,f) 文献10の図を一部改変

(8)

モデルマウスにおいてEPAの投与がマクロ ファージに作用し、MMP-9の発現を抑制す ることで AAA の発症を抑制することを報 告している19)。また、Yoshihara らはアポリ ポタンパク質(ApoE)欠損マウスにおいて EPA と DHA の摂取が大動脈組織およびマ クロファージが仲介する炎症を阻害してア ンジオテンシンⅡ誘導のAAA進展を抑制す ることを報告した 20)。ヒト AAA において

は、Aikawa らが瘤径及び瘤の成長速度と血

清中のEPA濃度が負の相関を示すことを報 告している21)ほか、Yamagishi らは月1~2 回しか魚を食べなかった大動脈瘤患者の死 亡率が高かったことを報告している22)。こ れらの報告は我々の報告と同様に、魚油に 含まれる EPA などの n-3 系脂肪酸が AAA 予防および進展抑制に活用できる可能性を 支持している。

4-2 ニコチンによる血管障害と食品成分 AAA進展の危険因子としては性別、年齢、

高血圧などが挙げられるが、特に関連が強 いとされるのが喫煙である。AAA患者のほ とんどが喫煙歴を有するとされ、喫煙者の AAA 破裂リスクは非喫煙者や禁煙者より も高いとされている。Wang らの研究によ って、たばこの主成分の1つであるニコチ ンはApoE欠損マウスにおいてAAAを誘発 することが明らかになった23)。また、彼ら はニコチンを負荷した血管平滑筋細胞にお い て 、AMP 依 存 性 プ ロテ イ ン キ ナー ゼ

(AMPK)-α2 活性とともに MMP-2 活性およ

び発現が上昇することを発見した。これは ニコチンによって増加した細胞内酸化スト レ ス お よ び サ イ ト カ イ ン が 活 性 化 し た

AMPK-α2 の核内移行を促進することで、

AP-2α のリン酸化が生じ MMP-2 が誘導さ

れたためであると報告されている 23)。我々 は SD ラットにおいてニコチンの経口摂取 が血管壁中の酸化ストレスや MMP 活性、

それに伴う血管線維成分の破壊を促進する ことを報告した24)。これらの研究はニコチ ンと AAA 関連因子が直接的に関与するこ とを示唆している。また、喫煙に加えて注意 すべきは、噛みたばこやニコチンパッチな どの禁煙補助剤である。これらの使用は肺 がんのリスクとなるタールの摂取を抑える ことは可能であるが、AAAのリスクと考え られるニコチンの吸収は避けられないため、

潜在的なAAA発症・進展のリスクが指摘さ れている 25)。AAAの予防・治療において、

禁煙によってニコチン摂取を避けることが 最も重要な手段の一つであるが、ニコチン には依存性があり、すぐに禁煙することは 難しい。したがって喫煙している場合でも、

機能性食品成分によって AAA を予防でき る選択肢を提示することには意味があると 考えられる。我々はニコチン投与マウスを 用いて、ニコチンによって脆弱化した血管 壁に有効な食品成分を探索した。

ニコチン投与マウスにEPAが豊富な魚油 を含む食餌を与えると、血管壁における酸 化ストレスおよびMMP-12発現が抑制され、

弾性線維の破壊が抑えられることを報告し た 26)。 ま た 、 デ オ キ シ リ ボ 核 酸 (Deoxyribonucleic acid; DNA)を含む食事を 与えると血管壁における MMP-2 発現が抑 制され、弾性線維の破壊が抑制されたこと を報告した 27)。血管壁に対するこれらの食 品成分の機能は、喫煙中ならびに禁煙補助 剤を使用する AAA 患者に有効な食生活の 確立に活用できるかもしれない。

(9)

5.おわりに

本稿では、詳細が明らかになっていなか った AAA 進展や破裂のメカニズムに焦点 を当て、AAA進展に血管壁循環不全が関与 することや血管壁における脂肪細胞の蓄積 が瘤の破裂に関与することについて論じた。

栄養血管の閉塞がなぜ生じるのか、血管壁 に異所出現する脂肪細胞はどこからやって くるのかなど未解明の部分は今後の研究課 題である。さらなるAAA研究の発展によっ て、治療薬の開発や食事療法が確立され、内 科的治療の選択肢を待つ AAA 患者に貢献 できることを期待する。

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