博士 ( 獣医 学 )イ ス マイ ル . ハイ ダ ー・イブ ラヒム
学位 論 文題 名
Immunohistochemlcal Study on Local Immune System of the Mammary Gland in Mice and Goats
(マウスおよびヤギにおける乳腺の局所免疫系に関する免疫組織化学的研究)
゛ 学 位 論 文 内 容の 要 旨
マ ウス お よび ヤ ギの乳腺に おける局所 免疫系を明 らかにすべ く、形質細 胞と Tリ ンバ球の分 布および妊 娠期から後 離乳期まで の生殖周期 中の細胞動態につ いて免疫 組織化学的 研究を行い 、以下の成 績を得た。
マウ ス 乳腺 で は 、免 疫 グロ ブ リン(IgA、IgGおよ びIgM)を含 有 する 形 質細 胞 は妊 娠 期に は ほ とん ど みら れ ず、 泌 乳期 か ら泌 乳 休止 後2日 目 に かけ て 漸増 し、 そ の後 急速に減少 した。免疫 グロブリン のサブクラ ス別にみる と、IgA細 胞が 最 も多 く 、IgGおよ びIgM細 胞は そ れよりも かなり少な かった。離 乳後の 乳腺に形 質細胞が豊 富に存在す るとぃうこ とは、形質 細胞の機能が新生子への 受動免疫 の賦与より もむしろ、 乳腺の防御 にあること を示唆するものと考えら れた 。 乳腺 の組織中にIgG含有 細胞が少な いとぃう本 研究の結果 は、乳腺局 所 にお け るIgGの産生 が低いこと を意味する 。また、生 殖周期にお ける免疫グ ロ ブリン含 有細胞の動 態が、乳腺 の発達と概 ね一致して いることから、乳腺の形 質 細 胞 が ホ ル モ ン に よ っ て 調 節 さ れ て い る こ と が 推 察 さ れ た 。 マウス乳 腺において 最も優勢なりンバ球サブセットであるCD8゛細胞は腺房お よび 導 管の 上 皮 内に 分 布し 、CD4+細 胞 は主に 結合組織内 に分布して いた。こ れらTリ ンハ球は 形質細胞と 対照的に、 妊娠後期か ら泌乳初期 に細胞数が 最高
値に達し 、その後は 減少に転じ た。両細胞の出現頻度の時間的ずれは、乳腺の 局所免疫を理解する上で重要である。
ヤギ 乳 腺 では 、 生殖 周 期の 全 ステ ー ジを 通 じて 、 マウ スの 場合と同様 にIgA 含有形質 細胞が優勢 であった。IgA細胞は 妊娠期に増 加を続け、 初乳期に最高 値に 達 し た。 一 方、IgGおよびIgM含有細胞 は全ステー ジを通じて 非常に少数 であった 。この結果 から、乳腺 で産生され たIgAが新 生子への受 動免疫の賦与 に貢献しているものと考えられた。
さら に 、 ヤギ の 血清 お よび乳汁中 の免疫グロ ブリン濃度 を測定した 結果、両 者ともにIgGの濃度 が最も高か った。乳腺組織中のIgG含有細胞がきわめて少数 であった ことから、 乳汁中のIg GcDほとんどは血清由来であると考えられた。
ヤギ 乳 腺 では 、CD4゛細 胞が最も 優勢なTリンバ球 サブセット であり、主 に結 合組織内 に分布して いた。CD2゛細胞は結 合組織内に はほとんど 観察されなか った た め 、CD4゛ 細 胞の 多 くはCD2ー で ある こ とが 示 され た。Y6Tリ ンバ球、
CD2゛細 胞およびCD8゛細胞は 、全ステージを通じて主に上皮内に認められた。
それ ゆ え 、ヤ ギ 乳腺 に 分布するY6Tリンバ球 のほとんど は、CD2十 およびCD8+
であると 推察された 。これらの りンパ球サブセットは、おおむぬ妊娠後期に増 加し、分 娩後に減少 した。Y6Tリンバ球の 一部を認識 するとされ るTcRI一N6抗 体は、ヤ ギの乳腺で は結合組織 内に分布す るY6Tリン パ球とだけ 反応するが、
このサブ セットは妊 娠期に増加 した後、泌乳鯛に著しく減少した。このことか ら、TcRl・Nゲ細胞は妊娠期・に機能を発揮するものと考えられた。末梢血中のY6 Tリン バ 球はWCl分 子を 発 現す る こ とが 知 られ て いる が 、乳腺ではWCl゛細胞 は妊娠中 に結合組織 内にわずか に存在するものの、それらは分娩後は全くみら れなかっ た。このこ とから、ヤ ギ乳腺に分 布するY6Tリンバ球の ほとんどは、
CDr、CD8゛お よ びWClーであ り、末梢血 中のY6T1Jン バ球とは異 なるサブセ ッ トであることが示された。
学位論文審査の要旨 主査 教 授 岩永敏 彦 副査 教 授 板倉智 敏 副査 教 授 小沼 操 副査 助教授 橋本善春
学 位 論 文 題 名
Immunohistochemlcal Study on Local Immune System of theMammary Gland inMice and Goats
( マウス およ びヤ ギに おけ る乳 腺の 局所 免疫 系に 関す る免 疫組織化学的研究)
申請者は、マウスおよびヤキの乳腺における局所免疫系を明らかにする目的で、形質細胞と Tリンパ球の分布および細胞動態について免疫組織化学的研究を行い、以下の成績を得た。
1.マウス乳腺では、免疫グロブリン(IgA、IgGおよびIgM)を含有する形質細胞は妊娠期に はほとんどみられす、泌乳期から離乳後2日目にかけて漸増し、その後急速に減少した。免疫 グロブリンのクラス別にみると、IgA細胞が最も多かった。離乳後の乳腺にも形質細胞が豊富 に存在することから、形質細胞の機能は新生子への受動免疫の賦与よりもむしろ、乳腺の防御 にあると考えられた。
マウス乳腺におぃて最も優勢なりンバ球サブセットはCD8゛細胞であり、それらは上皮内に 分布していた。Tリンバ球は形質細胞と対照的に、妊娠後期から泌乳初期に細胞数が最高値に 達し、その後は減少に転じた。両細胞の出現頻度の時間的ずれは、乳腺の局所免疫を理解する 上で重要である。
2.ヤギ乳腺でも、IgA含有形貿細胞が優勢であった。ところが、ヤギのIgA細胞は妊娠期に増 加を続け、初乳期に最高に達した.従って、ヤキでは乳腺で産生されたIgAは新生子への受動 免疫の賦与に貫献しているものと考えられた。血清および乳汁中のlgGの濃度が高いのに対 し、乳腺組織中のIgG含有細胞が少数であったことから、乳汁中IgGのほとんどは血清由来であ ると考えられた。
ヤギ乳腺では、CD4゛細胞が最も優勢なTリンバ球サブセットであり、主に結合組織内に分 布していた。CD2゛細胞、CD8゛細胞およびy6Tリンバ球は、全ステージを通じて主に上皮内に 認められた。これらのりンバ球サブセットは、おおむね妊娠後期に増加し、分娩後に減少し た。反芻動物ではY6Tリンバ球が豊富であることが知られているが、ヤキの乳腺でもこのタイ ブのりンバ球が多かった。
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以上のように、申請者はマウスとヤキの乳腺組織における形貿細胞とりンバ球の局在および 生殖周期での動態を明らかにし、乳腺の局所免疫を理解する上で重要な知見を提供した。乳腺 の病態ばかりでなく、新生子への受動免疫の解明にも大きく貫献するものである。よって審査 員一同は、イスマイル・ハイダ一・イブラヒム氏が博士(獣医学)の学位を受けるに十分な資 格を有するものと認めた。
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