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ISO/IEC 17025の改訂に
ついて(
2005年)
製品評価技術基盤機構(
NITE)
認定センター
(IAJapan)
技術管理者 植松 慶生
Contents
改訂の目的 ISO/IEC 17025の歴史 改訂の経緯 改訂の方針 ISO/IEC専門業務指針 (第2部6.8.2項) 改訂のポイント 改訂の概要と対処例 改訂の結果として生じた こと まだある改訂の失敗 本当にISO/IEC 17025:2005 はISO 9001:2000の全要求 事項を満たしていないのか? 関係者の反応 ISO/IEC 17025:2005の マネジメントシステムに 関するISO-ILAC-IAF共 同声明 原因究明 将来の見通しと課題3
改訂の目的
ISO 9001:2000への整合化
– 旧規格ISO/IEC 17025:1999はISO 9001:1994対応 – ISO 9001が2000年に改訂され、要 求事項が大幅に変わったため、こ れに整合するようISO/IEC 17025を 改訂することが求められた。 – 未だに試験所にISO 9000s適合を 要求する顧客が存在することが問 題の根底にある えー? もう変わるのかよ。この間 出たばっかりじゃないか。 いい加減にしてくれよな! 紙は無駄になるし金だって かかるし・・・ 4ISO/IEC 17025の歴史
ILAC創設 1977 ISO/IEC Guide 25: 1978(Ver.1) ISO/IEC Guide 25: 1982(Ver.2) ISO/IEC 17025: 1999 - 国際ガイドから国際規格へ - ISO 9001:1994整合 - 要求事項を管理システムと技術に分 割- ISO 9002:1987整合 ISO/IEC Guide 25:
1990(Ver. 3) ISO 9000s:1987 ISO 9000s:1994 -校正機関 -品質システム ガイド原案提示 ISO/IEC 17025: 2005(Ver.2) ISO 9001:2000 - ISO 9001:2000への整合のための部分修正 - 規格第二版として発行 大幅改訂 ・ISO 9001, 9002, 9003の統合 BS 5750:1979
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改訂の経緯(
WG25第1回会議まで
)
ISO/IEC 17025:1999はISO/IEC Guide 25:1990をベースにISO
9000s:1994との整合を図り、1999年末に国際規格として制定 ISO 9000s規格は、2000年に大幅改訂 – ISO 9001, 9002, 9003の統合 – プロセスアプローチの採用による規格構造の大幅変更 – 顧客満足、継続的改善の追加etc. これによりISO 9000s規格とのLeapfrogging(イタチごっこ)問題が再燃 規格化最終段階(1999年)で、ISO 9001:2000の制定を待つべきという意 見もあったが、試験所からは早期規格制定要望多く、一旦規格を制定し、 すぐさまISO 9001:2000への整合のための修正作業を開始することを ISO/CASCO総会で合意 → 2001年12月にWG25設置 WG25において両規格のギャップ分析を行った結果、ISO 9001完全整合に は規格の大改正が必要であることが判明 → あくまで大改正を行わず、 ISO 9001の要求事項を最低限カバーするような部分修正とすることを合意
改訂の経緯(
WG25第1回∼第3回
)
2002年1月 WG25第1回会議 – 改訂方針の確認(変更は最小限、5章の変更はしない) – ギャップ分析と草案作成のための小グループの設置 2002年7月 WG25第2回会議 – WG23方針案の議論(CASCO文書とISO9000sの関係:ISO専門業務 指針に従うべきか) – ギャップ分析結果の審議 – 改訂方針の再確認 2002年12月 WG25第3回会議 – 第1次草案(WD1)が提示される。 – この会議からTC176代表が参加 ISO 専門業務指針6.8.2に従うべきか(ISO/IEC 17025はISO 9001のセ
クター規格か)については、独立した規格であることに理解を示す。
しかし、ISO/IEC 17025(WD1)がISO 9001:2000のすべての要求事項を
カバーしているわけではない(ISO 9001 7.1項 Planning of Productは規 定されているか?)
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改訂の経緯(
DAM∼発行まで
)
2003年7月 WG25第4回会議 – WD2に対するWG25メンバーコメントの審議 QMSからMSに − 本文中95%のMSはQMS。 ISO 9001適合は「原則(Principle)を満足する」まで この規格の使用意図(認証に使えるか) 「顧客」か「依頼者」か 2003年11月14日∼2004年4月14日 DAM投票 – 92%以上の賛成。ただし、コメント多数 2004年6月 WG25第5回会議 – DAMコメントの検討 → エディトリアルコメントのみの検討 – 整合化に関係しないコメント、技術的コメントは採用せず 2004年12月9日∼2005年2月9日 FDAM投票 – 96%の賛成投票で承認 2005年5月 規格第2版として発行 – WG25設置から3年半の歳月 8改訂の方針
1999年版規格への移行期間(2002年末まで)中でもあり、 試験所に過大な負荷を与えないよう配慮 – 修正は最小限に抑える → 規格の全面改訂でなく、部分修正 (amendment)とする – 技術要求事項(5章)は原則改訂しない ISO 9001:2000の要求事項(項目)は網羅するがISO 9001:2000の表現はそのまま用いない – ISO/IEC専門業務指針第2部6.8.2項(ISO 9000s以外でマネジ メントシステム要求事項を定める際の方針)は適用しない ISO/IEC 17025はISO 9001とは別の独立した適合性評価の規格 試験所としてのマネジメントシステムは品質マネジメントシステムに 限らない(ISO/IEC 17025, 1.4 NOTE1参照) 迅速な作業で早期改訂(イタチごっこの解消のため)– 審議ステップの省略(Draft Amendment: DAMから全体審議開 始)
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ISO/IEC専門業務指針
(第2部:
6.8.2項) 仮訳
-6.8.2 セクター方針 ISO又はIECの委員会が、特定の製品又は産業/経済セ クターに関する品質マネジメントシステムの要求事項又 はガイドを作成する場合には、次のルールを尊重しな ければならない a) ISO 9001:2000を文書全体に対する引用規格とするか、項又 は節ごとにISO 9001:2000の適用範囲に詳細が規定された適 用方針(applicability)に従わなければならない。あるいは、ISO 9001:2000の適用範囲に詳細が規定された適用方針に従って 項又は節をそっくりそのまま再現してもよい。 b) もしISO 9001:2000の文章をセクター文書で再現する場合、そ れはそのセクター文書の他の要素から区別しなければならな い。ISO/IEC専門業務指針
(第2部:
6.8.2項) 仮訳
-c) ISO 9001:2000に規定された用語と定義は標準として引用さ れるか又は再現されなければならない d) ISO/TC 176で承認された「品質マネジメント − 特定の製品及 び産業/経済セクターのニーズを満たすための文書の開発に 係るガイド及び基準」に示されるガイド及び基準はセクター独 自の要求事項又はガイドの必要性を決定するときだけでなく文 書の開発プロセスにおいても考慮されなければならない このセクター方針に関するガイダンス又はISO 9000: 2000の定義, ISO 9001:2000又はISO 9004:2000の 解釈に関するいかなる要求もISO/TC 176事務局に提 出されなければならない。11
改訂のポイント(内容)
用語のISO 9001:2000への整合 – 品質システム → マネジメントシステム – 依頼者(client) → 顧客(customer) – 上級経営管理者(chief executive) → トップマネジメント ISO 9001:2000に特徴的な要求事項でISO/IEC 17025 で十分にカバーされていないものを挿入・追加 – 継続的改善の導入 – 顧客志向の重視(顧客満足) – トップマネジメントに対する要求事項の明確化と強化(継続的改 善に関するものが多い) – 資源の運用管理の充実 プロセスアプローチは採用していない(要求事項でない) 削除された要求事項はない(ISO 9001:2000で削減され た文書化要求事項等) 12改訂のポイント(構成)
要求事項の修正や追加は大半が第4章で行われてい る 第5章の修正は2カ所(5.2.2項, 5.9.2項)のみ – いずれも継続的改善のための要求事項追加 – 実態としては、現行規格の下で既に認定試験所で実施されて いるもの → 実質的な要求事項の追加ではない 規格の内容は大きく変更されていないが、形式としては 規格第2版として発行され、正式改訂と同じ位置づけと なっている – 頻繁な規格改定を避けるため(これを微修正と位置づけ、改め 文のみの発行となれば、次回改訂が2005年に行われる可能 性が濃厚)13
改訂の概要(共通)
次の用語についてISO 9001:2000の用語を採用 – 品質システム(quality system)からマネジメントシステム (management system)へ 「品質マネジメントシステム」という用語はISO専門業務指針の規 定上使用不可 試験所のマネジメントシステムは品質に限定されない 明らかに品質にのみ限定するマネジメントシステムについては management system related to quality(4.1.5 i, 4.2.2 c)とする – 依頼者(client)から顧客(customer)へ ISO 9000:2000では「顧客」の概念は「依頼者」より広汎と定義さ れているが、顧客に置き換えることで解釈の混乱はないと判断 (この規格では顧客=依頼者と考えてよい) – 上級経営管理者(chief executive)からトップマネジメント(top management)へ 最高位で組織を指揮し、管理する個人又はグループ(ISO 9000:2000定義)改訂の概要と対処例(第4章)
4.1 組織
4.1.5 a) マネジメントシステムの実施、維持及び 改善を含む責務を果たし、・・・必要な権限及び経営 資源を他の責任にかかわらず持つ管理要員並びに 技術要員を持つ。 – 改訂の概要: ISO 9001 5.5.1, 7.1 b等に関連する が明確な対応項目なし。マネジメントの責任に継続 的改善を追加したもの – 対処例: 品質マニュアルの各管理要員の責任権限 に追加し、管理要員が継続的改善活動に責任権限 を持って関与する。15
改訂の概要と対処例(第4章)
4.1 組織
4.1.5 k) 組織の要員が、自らの活動のもつ意味と 重要性を認識し、品質目標の達成に向けて自らど のように貢献できるかについて認識することを確実 にする。 – 改訂概要: ISO 9001 6.2.2 [力量、認識及び教育 訓練] d)をそのまま採用。資源の運用管理に関する 要求事項を追加 – 対処例: これは個人の自覚の問題ながら現場単位 にブレークダウンした品質目標とそれに対する個人 目標等の設定が有効・・・ただし煩雑 16改訂の概要と対処例(第4章)
4.1 組織
4.1.6 トップマネジメントは、試験所・校正機関内にコ ミュニケーションのための適切なプロセスが確立さ れることを確実にすること。また、マネジメントシステ ムの有効性に関しての情報交換が行われることを 確実にすること – 改訂概要: ISO 9001 5.5.3[内部コミュニケーショ ン]をそのまま採用。トップマネジメントの責任に情報 交換のためのコミュニケーションを持つことを追加 – 対処例: トップマネジメントが試験所内のマネジメ ントシステムの実施状況をいつでも把握できるよう なコミュニケーションツール(例えば定例報告会や職 場内会議)を持つ等17
改訂の概要と対処例(第4章)
4.2 マネジメントシステム
4.2.2 試験所・校正機関における品質方針表明 を含む品質に関連したマネジメントシステムの 方針は品質マニュアルの中に規定するこ と。・・・・。品質方針表明は、トップマネジメントの 権限によって発行すること。この文書には少なく とも次の事項を含むこと。 e) この規格への適合性を守り、マネジメントシステム の有効性を継続的に改善するという試験所・校正機 関の管理主体のコミットメント – 改訂概要: ISO 9001 5.3 [品質方針] b)をそ のまま採用。品質方針の内容に関する要求。 – 対処例: 品質方針に継続的改善を盛り込む改訂の概要と対処例(第4章)
4.2 マネジメントシステム
4.2.3 トップマネジメントは、マネジメントシステム構 築及び実施、並びにその有効性を継続的に改善す ることに対するコミットメントの証拠を提供すること – 改訂概要: ISO 9001 5.1 [経営者のコミットメント] 本文を採用 – 対処例: 法令、規制要求事項、(公平性、)顧客要 求事項を組織内に周知する。品質方針を設定する。 品質目標が設定されていることを確実にする。マネ ジメントレビューを実施する。資源が利用できること を確実にする。・・・ISO 9001:2000 5.1 a) – e)19
改訂の概要と対処例(第4章)
4.2 マネジメントシステム
4.2.4 トップマネジメントは、法律・規制要求事項を満 たすことは当然のこととして、顧客要求事項を満た すことの重要性を組織内に周知すること – 改訂概要: ISO 9001 5.1 経営者のコミットメント a) をそのまま採用 – 対処例: システム文書の中で試験所・校正機関に 関係する法令(環境保全も含む)や顧客要求事項 (これはあまり強調すると公平性に弊害がある)並び に試験所としての公平性の重要性に関し、トップマ ネジメントの声明として記述する等。 20改訂の概要と対処例(第4章)
4.2 マネジメントシステム
4.2.7 トップマネジメントは、マネジメントシステムの 変更を計画し実施するときに、そのマネジメントシス テムの“完全に整っている状態(integrity)”が維持さ れることを確実にする – 改訂概要: ISO 9001 5.4.2 [品質マネジメントシス テムの計画] b)をそのまま採用 – 対処例: 関連する品質文書の改訂や、体制の変更 を行う場合のチェック体制の整備と励行。マネジメン トレビューや内部監査による適時評価等21
改訂の概要と対処例(第4章)
4.7 顧客へのサービス
4.7.2 試験所・校正機関は、肯定的なもの及び否定 的なものを含めて、その顧客からフィードバックを求 めること。フィードバックは、マネジメントシステム、試 験・校正活動及び顧客へのサービスの改善に用い、 分析すること 参考 フィードバックの種類の例として、顧客満足についての 調査及び顧客との試験報告書又は校正証明書のレビュー がある – 改訂概要: ISO 9001 7.2.3 [顧客とのコミュニケー ション] c)相当。ただし、ISO 9001:2000より詳しい。 旧ISO/IEC 17025 4.7参考の3から格上げされた。 – 対処例: これまで依頼者からフィードバックを求める 手段を持っていれば、特段の対処必要なし。ここでの 顧客は依頼者に限定してよい。改訂の概要と対処例(第4章)
4.10 改善
試験所・校正機関は、品質方針、品質目標、監査 結果、データの分析、是正処置、予防処置及びマネ ジメントレビューを通じて、マネジメントシステムの有 効性を継続的に改善すること。 – 改訂概要: ISO 9001 8.5.1 [継続的改善]をそのま ま採用。継続的に改善する体制を要求している。 – 対処例: 継続的改善のための特別な活動を行うこ とを要求されているわけではなく、品質方針の設定 −妥当性確認−試験・校正の実施−マネジメントレ ビューによるシステムの有効性の評価というプロセ スをPDCAサイクルによって継続的に改善するという 従来の方策で問題なし。ただし、品質文書にこれに23
改訂の概要と対処例(第4章)
4.12 予防処置
4.12.1 技術面及びマネジメントシステムに関して、 必要とされる改善及び不適合の潜在的原因を特定 する。改善の機会が特定された場合、又は予防処 置を取る必要がある場合には、そのような不適合が 起こる可能性を減らし改善の機会を活用するため、 行動計画を作成し、実施し、かつ、監視する。 – 改訂概要: ISO 9001 8.5.3 相当。ただし、文節は ISO 9001を採用しておらず、ISO 9001 8.5.1 [継続 的改善]の要素を盛り込んだもの – 対処例: 特段の対処必要なし。 従来より「改良 (improvement)」として規定されている。 24改訂の概要と対処例(第4章)
4.15.1 (マネジメントレビュー)
・・・。レビューは、次のことを考慮すること。−
改善のための提案 – 改訂概要: ISO 9001 5.6.2 [マネジメントレビュー へのインプット] g)をそのまま採用 – 対処例: 従来から改善の提案はマネジメントレ ビューで検討されているのでマネジメントレビューと しては特段の対策必要なし。品質文書に書き込むだ けでよい。ただし、マネジメントレビューに改善提案 を出すためには、PDCAサイクルの中で常時マネジ メントシステムの分析を行う必要がある。(4.10参照)25
改訂の概要と対処例(第5章)
5.2 要員
5.2.2 試験所・校正機関の管理主体は、試験所・校 正機関の要員の教育、訓練及び技量に関する目標 を設定すること、試験所・校正機関は、教育・訓練の ニーズを特定し、要員に教育・訓練を提供するため の方針及び手順を持つこと。教育・訓練プログラム は、試験所・校正機関の現在の業務及び予期され る業務に対して適切であること。実施された教育・訓 練の処置の有効性を評価すること。 – 改訂概要: ISO 9001 6.2.2 [力量、認識及び教 育・訓練] c)を採用 – 対処例: 従来より教育訓練の有効性の評価を行っ ていれば特段の対処必要なし。評価記録が求めら れる。改訂の概要と対処例(第5章)
5.9 試験・校正結果の品質保証
5.9.2 品質管理データを分析すること。その結果、品質管理 データが事前に規定した処置基準を外れることが判明した場 合は、問題を是正し不正確な結果が報告されることを防止す るため、規定された処置を行うこと」 – 改訂概要: ISO 9001 8.1, 8.2.4 [製品の監視及び測定], 8.4 [データの分析]に相当。改善のためのデータ分析の手段の一 つ。 – 対処例: 従来より試験・校正の有効性の監視のための品質 管理手順と位置づけられており、結果の検討に統計的手法を 用いることからも、結果の分析は行われている。個々で新しく 要求されるのは、その結果を利用して問題解決を行うことだが、 これも通常は従来から実施されている。従って特段の対処は 必要なし。27
改訂の結果として生じたこと
二つの規格の結びつきが脆弱になり、その結果、 「ISO/IEC 17025:2005要求事項への適合が自動的に ISO 9001:2000の要求事項全部を持たす」という旧規格 の論理が成り立たなくなった。 「この規格への適合性が証明されても、それは試験所・校正機関の運営に用いている 品質マネジメントシステムがISO 9001のすべての要求事項に適合していることを意 味するものでもない。」(ISO/IEC 17025:2005序文) 「試験所・校正機関がこの規格の要求事項に適合している場合、その試験・校正活動 に関してISO 9001の原則をも満たす品質マネジメントシステムを運営しているであろ う。」(適用範囲 1.6) Fully comply?×
28改訂の結果として生じたこと
おまけにこんなものまで残っているし・・・・
「試験所・校正機関の運営に用いている品質マネジメントシステムがISO 9001の要求事項に適合していることは、それ自体では試験所・校正機関 が技術的に妥当なデータ及び結果を出す能力を実証するものでない。」 (ISO/IEC 17025:2005 序文) 整合したはずが・・・・藪蛇に
一体どっち をとったらい いの? Competent?×
え? 能力の証明 にならない の?29 顧客 ISO 9001:2000適 合を要求 試験所 ISO/IEC 17025のISO 9001:2000整合化要求 試験所の負担 ISO 9001完全整合 ISO/IEC 17025:1999 の部分改訂によるISO 9001:2000への整合 ISO 9001:2000への全面 適合が表明できない(原則 を満足という表現のみ) 完全整合× ISO TC176 ISO専門業務指針 試験所に対する メリットなし ISO-ILAC-IAF 共同コミュニケ ISO 9001原則適合を強調 企業内の 他グループ
失敗の縮図
まだある改訂の失敗
要求事項が増えた → 試験所にとっての負担増 – 修正を最小限に抑えるため、ISO 9001:2000の要求事項のうちISO/IEC 17025:1999でカバーされていない要求事項を追加したのみ 改定点は、ISO/IEC 17025:1999の要求事項を修正したか又は要求事項を加えたかの どちらか – ISO 9001:2000になって削除されたマネジメントシステム要求事項(文書 化等)は削除されていない 改訂作業中の良い改善コメントが反映されなかった → 改訂作業を急ぎすぎたためにせっかくの改善のチャンス を逸した – ISO 9001:2000整合(継続的改善、顧客満足)目的以外のコメントは採 用せず プロセスアプローチに対応したコメントも多くあった 技術要求事項についても改善のコメントがあった – 今回採用されなかった改善コメントは、次回正式改訂時に検討される → 次回改訂への期待31
本当に
ISO/IEC 17025:2005は
ISO 9001:2000の全要求事項を満
たしていないのか?
ISO/IEC 17025:2005附属書AのISO 9001:2000との項目対照表 には、ISO 9001:2000のすべての項目に対応するISO/IEC 17025:2005の項目番号が記載されている → これはISO/IEC 17025:2005がISO 9001:2000を満たしていることの証拠ではない か? WG25議論の中でTC176代表がISO/IEC 17025が満たしていない といったISO 9001項目は7.1項「製品実現の計画」。これは妥当性 確認がカバーしているとILAC側が反論。最後は、細かい要求事項 を満たしていないとかプロセスアプローチを採用していないと詭弁 → プロセスアプローチは要求事項ではない。本当に満たしていな いなら具体的に項目を指摘できたはず! ISO 9001の1.2項「適用」には、「組織や製品の性質によって規格 (ISO 9001)の要求事項のいずれかが適用不可能な場合は、その 要求事項を除外してよい(ただし7項のみ)」旨記載されている → 7項以外で細かい要求事項すべてを満たしているかどうかは、規 格の対象となる適合性評価活動の性質が違うので比較は困難。 以上から、ISO/IEC 17025:2005はISO 9001:2000のすべての関 連項目をカバーしているといえるはずだが・・・・ 32関係者の反応
ISOでの規格審議後、試験所団体からこの改訂に関す る批判・不満が噴出 ISO-ILAC-IAFの3者で混乱を防ぐための共同声明を出 し、ILACがこれを受け入れた形になった(このコミュニケ を認定証に引用してよい旨の表明) – この共同声明は、混乱を防ぐことを目的にしているが、批判や 不満に対して有効な解決策を提示していない – 逆に、試験所に対しISO 9001:2000適合表明ができないという 足かせを明確にした。 – 期待される効果は、試験所の依頼者や審査登録機関がこのよ うな状況を配慮してISO 9001:2000適合と判断することである が・・・・・・???33
ISO/IEC 17025:2005のマネジメントシ
ステムに関する
ISO-ILAC-IAF共同声明
(仮訳)
「試験所がISO/IEC 17025に適合することは、その試験 所が一貫して技術的に妥当な試験結果及び校正を提 供するために必要な技術能力の要求事項とマネジメン トシステム要求事項の両方を満足していることを意味 する。ISO/IEC 17025 (第4章)は、試験所の運営に関 係する言葉で書かれ、ISO 9001:2000「品質マネジメン トシステムー要求事項」の原則を満足し、中核となる要 求事項に整合している。」 – 原文はILACホームページからダウンロード可能原因究明
もともとISO/CASCOが意図した部分改訂によるISO 9001:2000への完全整合は無理だった? – 試験所の過度な負担を配慮し部分改訂を指示 → 整合の意味が薄 れ、ISO9001に関係ない試験所まで巻き込んで負担だけが残った。 – 早急に改訂するはずが、通常の改訂と変わらない時間(3年半)が掛 かった → 全面改定でよかった。 – ISO 9001との関係やISO/IEC専門業務指針を甘く見ていた ISO/CASCOの誤算 → 分別過ぐれば愚に返る WG25での審議過程で、何が不足しているのかを TC176も明らかにしなかったし、WG25も詳細を確認し ないまま、TC176のごり押しに負けてしまった。 TC176の傲慢とWG25の弱腰、怠慢 ISO-IAF-ILACの3者共同声明は、問題の解決にならな かった。35