平成24年4月
メキシコ合衆国の投資環境調査
2012年
はじめに
本報告書は、JOGMEC メキシコ事務所が現地コンサルタントの協力を得て、メキシコ 合衆国を取り巻く投資環境を明確化する目的で作成したものである。 全体は 5 つの章で構成され、第 1 章「一般事情」では地理、歴史、文化等を、第 2 章 「政治制度」では行政組織、地方行政、最近の政治動向等を、第 3 章「経済」では経済 情勢や貿易・投資状況を、第 4 章「鉱業概要」では地質鉱床、探鉱状況、生産動向等を、 第 5 章「鉱業関連法規」では鉱業法に加え、外国投資法、環境関連、労働関連、税関連 の一般情報をとりまとめた。 本報告書がメキシコ合衆国で探鉱活動に携わる者及び今後の投資を検討する関係各 位の参考になれば幸甚である。 平成 24 年 4 月 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 金属資源開発本部 金属企画調査部目 次
1．一般事情 ··· 1
（1）地理 ··· 1
（2）気候及び気象 ··· 1
（3）言語 ··· 3
（4）歴史 ··· 3
（5）文化 ··· 4
2．政治制度 ··· 4
（1）政治制度の概要 ··· 4
（2）行政組織 ··· 5
（3）司法 ··· 5
（4）地方行政 ··· 6
（5）外交 ··· 7
（6）最近の政治動向 ··· 7
3．経済 ··· 7
（1）現在の経済情勢 ··· 7
（2）貿易・投資状況 ··· 8
4．鉱業概要 ··· 10
（1）鉱業の現状と動向の概要 ··· 10
①金属鉱石生産量 ··· 10
②金属地金生産量 ··· 13
（2）地質鉱床 ··· 14
①地質 ··· 14
②鉱床 ··· 15
（3）鉱業の当該国経済における位置付け ··· 20
（4）鉱業行政機関 ··· 20
①経済省（Secretaría de Economía) ··· 20
②メキシコ鉱業センター(SGM：Servicio Geológico Mexicano) ···· 21
③鉱業振興信託(FIFOMI:Fideicomiso de Fomento Minero)
Secretaría de Medio
Ambiente y Recursos Naturales)··· 23
④州政府 ··· 23
（5）鉱業政策・鉱業公社 ··· 26
（6）探鉱状況・探鉱・開発プロジェクト ··· 27
（7）鉱業生産状況 ··· 30
（8）鉱業を取り巻く社会事情 ··· 44
5．鉱業関連法制 ··· 46
（1）鉱業関連法制の全体像・概要 ··· 46
①鉱業関連構成の全体像 ··· 46
②憲法第 27 条 ··· 47
③鉱業法 ··· 48
（2）鉱業法制の詳説 ··· 49
①鉱業活動への規制 ··· 49
(a)外国直接投資への規制 ··· 49
(b)鉱種に対する規制 ··· 49
(c)地域に対する規制 ··· 50
(d)鉱種取得に係る要件の有無 ··· 50
②探鉱段階での権利義務 ··· 50
(a)最大面積、最小面積、形状、鉱区数の制限 ··· 50
(b)権利の排他性の内容 ··· 51
(c)付与期間 ··· 51
(d)鉱区面積削減規定 ··· 51
(e)権利譲渡の可否 ··· 52
(f)最低探鉱支出義務 ··· 52
(g)権利維持料金 ··· 53
(h)その他費用 ··· 54
③留保期間 ··· 54
④権限の保障 ··· 54
⑤採掘段階での権利義務 ··· 55
（注）(a)～(e)は②の(a)～(e)と同様
(f)権利維持料金 ··· 55
(g)ロイヤルティ ··· 55
(h)最低生産義務 ··· 55
(i)収用時の補償規定の有無 ··· 56
(j)担保権設定の可否 ··· 56
(k)その他費用 ··· 56
⑥鉱業権登録簿の閲覧場所 ··· 57
⑦先住民関係 ··· 57
(a)鉱業に関連する先住民法 ··· 57
(b)立入許可及びロイヤルティ、その他規定 ··· 57
⑧環境関連 ··· 57
(a)鉱業に関連する環境法 ··· 57
(b)鉱業関連の環境行政機関 ··· 60
(c)検査とモニタリング機関 ··· 61
(d)EIA/EIS ··· 61
(e)環境保全基金又は保証金の積立義務 ··· 63
(f)環境関連義務に係る税法上優遇措置の有無 ··· 63
(g)その他環境関連での留意事項 ··· 63
⑨鉱山保安法 ··· 63
(a)鉱山保安行政の内容 ··· 63
(b)鉱業権者の保安義務 ··· 63
⑩閉山法 ··· 65
⑪税制 ··· 65
(a)所得税率 ··· 65
(b)法人税率 ··· 65
(c)配当税率 ··· 66
(d)ロイヤルティ ··· 66
(e)利子支払い ··· 66
(f)輸入関税 ··· 66
(g)輸出関税 ··· 66
(h)付加価値税 ··· 66
(i)その他の主要税 ··· 67
(j)固定資産の減価償却、課税猶予、減耗控除制度、欠損金繰
越制度、加速度償却制度、繰越償却制度及びその他各種優
遇制度 ··· 67
(k)税制の安定性 ··· 69
(l)探鉱への優遇税制 ··· 69
(m)その他各種優遇措置 ··· 70
⑫外国投資法 ··· 70
(a)鉱業セクターへの投資制限の有無 ··· 70
(b)投資許認可に係る所轄官庁 ··· 70
(c)投資形態の内容 ··· 71
(d)外国投資プロジェクトの最長操業可能年限 ··· 71
(e)外国投資に対する保護規定 ··· 71
(f)海外への利益送金 ··· 72
(g)海外口座設置の可否 ··· 72
(h)政府の持分要求 ··· 72
(i)外為規制 ··· 72
(j)その他外国投資法上の規制 ··· 72
⑬労働法制 ··· 73
(a)内国人や先住民の雇用義務の有無 ··· 73
(b)外国人の雇用に係る規制の有無 ··· 73
(c)役員報酬に対する上下限の有無 ··· 73
(d)雇用者賃金に対する上下限の有無 ··· 73
(e)鉱業に関係する雇用関連の留意事項 ··· 73
⑭鉱業法におけるその他の規定 ··· 75
引用・参考文献 ··· 76
参考 1 メキシコ鉱業法（LEY MINERA）仮訳
参考 2 メキシコ鉱業法（LEY MINERA）原文
参考 3 メキシコの地質及び鉱床生成区について
参考 4 メキシコ外国投資法（LEY DE INVERSIÓN EXTRANJERA）仮訳
参考 5 メキシコ外国投資法（LEY DE INVERSIÓN EXTRANJERA）原文
参考 6 生態系均衡環境保護一般法（LEY GENERAL DEL EQUILIBRIO
INVERSIÓN EXTRANJERA ECOLÓGICO Y LA PROTECCIÓN AL AMBIENTE）
第 5 章 環境影響評価（Evaluación del Impacto Ambiental）仮訳
参考 7 生態系均衡環境保護一般法（LEY GENERAL DEL EQUILIBRIO
INVERSIÓN EXTRANJERA ECOLÓGICO Y LA PROTECCIÓN AL AMBIENTE）
第 5 章 環境影響評価（Evaluación del Impacto Ambiental）原文
図表リスト
図 1 メキシコの 31 州と連邦自治区 ··· 6
図 2 メキシコの金鉱石の生産量の推移 ··· 10
図 3 メキシコの銀鉱石の生産量の推移 ··· 11
図 4 メキシコの鉛鉱石の生産量の推移 ··· 11
図 5 メキシコの亜鉛鉱石の生産量の推移 ··· 12
図 6 メキシコの銅鉱石の生産量の推移 ··· 13
図 7 メキシコの地質の構造単元の区分 ··· 18
図 8 メキシコの主要な鉱床 ··· 19
図 9 メキシコ北西部の鉱山・鉱業プロジェクト位置図 ··· 37
図 10 ソノラ州の鉱山・鉱業プロジェクト位置図 ··· 38
図 11 チワワ州の鉱山・鉱業プロジェクト位置図 ··· 39
図 12 ドゥランゴ州の鉱山・鉱業プロジェクト位置図 ··· 40
図 13 サカテカス州の鉱山・鉱業プロジェクト位置図 ··· 41
図 14 メキシコ北東部の鉱山・鉱業プロジェクト位置図 ··· 42
図 15 メキシコ中央部の鉱山・鉱業プロジェクト位置図 ··· 42
図 16 メキシコ南部の鉱山・鉱業プロジェクト位置図 ··· 43
図 17 鉱業の活動段階別の関連法令、諸規定 ··· 46
図 18 現地法人設立手続きフローチャートと所要時間 ··· 69
表 1 メキシコシティ（中央高原(北緯 19.5 度、海抜 2,240m)）の気温、降
水量 ··· 2
表 2 サカテカス（中央高原（北緯 23 度、海抜 2,250m）
）の気温、降水量 ·· 2
表 3 クエルナバカ（中央高原（北緯 19 度、海抜 1,500m）の気温、降水量 · 2
表 4 エルモシージョ（ソノラ州、北緯 29 度、海抜 400m）の気温、降水量 · 2
表 5 ベラクルス（北緯 19 度、メキシコ湾に面した都市）の気温、降水量 ·· 2
表 6 カンクン（北緯 21 度、ユカタン半島）の気温、降水量 ··· 3
表 7 メキシコの GDP 成長率（前年比） ··· 7
表 8 メキシコの GDP 成長率（四半期毎・前年同期比） ··· 7
表 9 品目別輸出額 ··· 8
表 10 品目別輸入額 ··· 8
表 11 貿易収支 ··· 8
表 12 対内直接投資額の推移 ··· 9
表 13 メキシコの金属地金の生産量 ··· 13
表 14 主要進展探鉱・開発プロジェクト一覧 ··· 27
表 15 メキシコの鉱山の生産状況 ··· 30
表 16 製錬・精錬所生産状況 ··· 35
表 17 最低探鉱支出額 ··· 53
表 18 鉱区面積毎の最低生産義務額 ··· 56
表 19 所得別の所得税 ··· 65
1．一般事情
（1）地理
メキシコは、北米大陸の南部に位置し、約 196.4 万 km2の面積（日本の約 5 倍）を持 ち、海岸延長線は 9,330km に達する。人口は、1 億 760 万人で、人口密度は、54.8 人/km2 となっている。 メキシコの地形は多岐に富んでいる。メキシコの東部のメキシコ湾岸、ユカタン半島、 南部の太平洋沿岸の一部等は、低地である。メキシコの西部から中央部にかけては、北 米のロッキー山脈から南米のアンデス山脈に至るコルディレラ山系に位置する。この山 系はメキシコにおいて 2～3 列の山脈が高原をはさむ形で南北に連なっている。その一 番西側がシエラネバダ山脈で、バハカリフォルニア半島を形成している。更に西側から 順に西シエラマドレ山脈、東シエラマドレ山脈が南北に連なっている。その東西シエラ マドレ山脈に挟まれた地域が海抜 1,500～2,400m 程度の中央高原となっている。また、 これらの山脈には 5,000m 級の山が連なっている。首都のメキシコシティは、中央高原 の標高 2,240m のところに位置している。（2）気候及び気象
気候も地形同様多岐に富んでおり、地域によって大きく異なる。メキシコ北西部のソ ノラ州やバハカリフォルニア半島は、米国アリゾナ州から続くソノラ砂漠に位置してお り、高温小雨で乾燥した気候であるが、7～9 月に狭い地域に短時間のゲリラ豪雨が降 ることがある。 メキシコシティを初めとする中央高原は、一年を通じ乾燥しており、雨期の夏は涼し く、乾期の冬は暖かい一方、一日の寒暖差が大きいという高山気候の特徴を持っている が、緯度及び海抜により気温及び降水量は異なる。例えば、表 2 のサカテカスは、海抜 はメキシコシティ（表 1）と概ね同じであるが、緯度が高い分、気温も低く、降水量も 少なくなっている。一方、クエルナバカは、メキシコシティと緯度は概ね同じであるが、 海抜が低い分、気温も高く、降水量も多くなっている。 メキシコ湾岸北部は温暖湿潤気候で、ユカタン半島等の南部のメキシコ湾岸及び南部 の太平洋沿岸の低地は熱帯雨林気候で 6 月から 10 月にかけての雨期はスコールが多く、 特に湿度が高い。また、これらの地域ではハリケーンの影響を受けることが多々ある。表 1 メキシコシティ（中央高原(北緯 19.5 度、海抜 2,240m)）の気温、降水量 月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 年間 最高気温 16 17 19 21 21 20 19 19 19 18 17 16 18.5 最低気温 11 12 14 16 16 14 15 15 15 11 12 11 13.5 降水量 16 4 12 24 57 138 180 162 142 63 16 7 821 （注）単位：℃、mm、年間は、最高気温及び最低気温は年平均、降水量は年間。 表 2 サカテカス（中央高原（北緯 23 度、海抜 2,250m））の気温、降水量 月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 年間 最高気温 13 15 17 19 21 20 18 18 18 17 16 14 17.2 最低気温 7 8 9 12 13 13 12 12 11 11 9 8 10.4 降水量 9 4 1 1 4 17 45 23 23 10 2 2 141 （注）単位：℃、mm、年間は、最高気温及び最低気温は年平均、降水量は年間。 表 3 クエルナバカ（中央高原（北緯 19 度、海抜 1,500m）の気温、降水量 月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 年間 最高気温 25 26 29 30 30 27 26 26 25 26 26 26 26.8 最低気温 12 13 15 17 18 17 16 16 16 15 14 13 15.2 降水量 13 4 6 16 59 250 261 267 256 110 17 7 1266 （注）単位：℃、mm、年間は、最高気温及び最低気温は年平均、降水量は年間。 表 4 エルモシージョ（ソノラ州、北緯 29 度、海抜 400m）の気温、降水量 月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 年間 最高気温 24 26 27 30 32 35 35 35 35 33 28 24 30.3 最低気温 10 12 12 16 19 23 26 26 25 20 14 11 17.8 降水量 1 4 2 0 0 2 15 7 16 9 2 1 59 （注）単位：℃、mm、年間は、最高気温及び最低気温は年平均、降水量は年間。 表 5 ベラクルス（北緯 19 度、メキシコ湾に面した都市）の気温、降水量 月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 年間 最高気温 25 25 27 29 31 31 31 31 31 30 28 26 28.8 最低気温 18 19 21 23 25 25 24 24 24 23 21 20 22.3 降水量 27 8 11 10 30 132 223 225 184 103 38 11 1002 （注）単位：℃、mm、年間は、最高気温及び最低気温は年平均、降水量は年間。
表 6 カンクン（北緯 21 度、ユカタン半島）の気温、降水量 月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 年間 最高気温 28 29 30 32 33 33 33 34 32 31 29 28 31.0 最低気温 18 17 19 21 23 23 23 23 23 21 20 18 20.8 降水量 74 40 25 25 55 117 142 95 143 190 174 108 1241
（3）言語
公用語はスペイン語である。 また、先住民族の 65 言語（マヤ語、ナワトル語等）も政府が認めている。こうした 言語を話す先住民族は、オアハカ州、チアパス州等のメキシコ南部に多く住んでいる。（4）歴史
メキシコの中央高原においては、紀元前 2～6 世紀にテオティワカン文明が栄え、7 ～12 世紀のトルテカ帝国等を経て、15 世紀前半からアステカ帝国が栄えていた。1492 年のコロンブスによるアメリカ大陸発見後、エルナン・コルテス率いるスペイン軍は、 アステカ帝国に敵対する国の力を借り、1521 年にアステカ帝国を滅亡させた。スペイ ン人は、アステカ帝国の首都の上にメキシコシティを築き、「ヌエバ（新）・エスパーニ ャ副王領」を創設した。この時、スペインはアステカ帝国が保有していた大量の金を入 手している。 一方、メキシコ南部においては、紀元前 1300 年頃にメキシコ湾を中心にオルメカ文 明が興った。その後、マヤ文明が興り、300～900 年頃に開花期を迎えた。マヤ文明は、 メキシコ南部からベリーズ、グアテマラ、ホンジュラス北部、エルサルバドル北部にか けて広がり、ティカル、カラクムル、ウシュマル、チチェンイツァといった都市国家が 合従連衡と興亡を繰り返していった。マヤ文明が全盛期を過ぎた 16 世紀にスペイン人 の侵入を迎え、17 世紀にマヤ圏全域がスペイン領に併合された。 スペイン植民地時代の 16 世紀には、サカテカス、パチューカ、グアナファト、タス コ等で銀鉱山が開発され、水銀アマルガム法の製錬技術の実用化によって、大量の銀が 生産されるようになった。メキシコを初めとする新大陸から産出された銀によって、ヨ ーロッパがインフレになったとも言われている。 1810 年 9 月 16 日（独立記念日）に独立戦争が始まり、1821 年にスペインからの独立 が実現した。 1910 年にはポルフィリオ・ディアス大統領の非民主的な独裁体制に対しメキシコ革 命 が 始 ま っ た 。 各 地 で 民 衆 が 蜂 起 し た が 、 こ の 時 に は ソ ノ ラ 州 の Cananea （ 現 Buenavista）銅鉱山の労働者も蜂起している。1917 年に革命憲法が公布されたことで 革命は終息した。メキシコ革命後は、しばらく混乱状態が続いたが、1929 年に発足し た革命をリードしたメンバーらによる制度的革命党（PRI)がその後長年に亘り政権を支 配した。しかしながら、PRI は次第にばらまき型の腐敗政党と呼ばれるようになり、2000 年からは中道右派の国民行動党（PAN）に政権が変わった。また、メキシコ革命は、ナショナリズムの台頭を招いた。国民芸術が振興され、壁画 運動によって独立戦争やメキシコ革命の様子が公共建築物の壁に描かれた。こうした活 動は、植民地時代に搾取されたことへの反発を庶民に植え付けることにもなり、ナショ ナリズムの動きに繋がった。1938 年には石油産業が国有化されたが、米国を初めとす る国際的な反発により 1974 年まで輸出が出来ず、その間石油の減産を余儀なくされた。 1960 年代には外資規制が強化され、産業の国有化が進むが、1982 年以降の石油価格の 低迷に伴う債務危機により、外資規制は緩和され、1992 年までに石油産業等一部を除 き概ね撤廃された。
（5）文化
メキシコの文化は、一般的にアステカ、マヤ等の先住民の文化とカトリックとイスラ ムの影響を受けるスペインの文化の融合である。国民の約 90％がカトリック信者と言 われており、教会は布教するのに当たりカトリックを先住民に身近なものとするため、 顔の色の黒いマリア様（グアダルーペ）信仰や色の黒い顔が教会の壁に埋め込まれたメ キシカン・バロック様式等を取り入れた。また、ヨーロッパ風の建設の中にも原色を取 り入れたメキシコらしさが随所に見られ、死者の日といったメキシコ独自の文化も存在 している。 一方、地方には先住民の文化が未だに残っており、特にオアハカ州、チアパス州等の メキシコ南部の山岳地帯では、未だにマヤ時代の文化が色強く残っている。 食文化も新大陸とヨーロッパの融合であり、先住民時代から食していたとうもろこし、 トマト、とうがらし、アボカド等がヨーロッパに広がり、ヨーロッパからは牛肉、豚肉、 チーズ、タマネギ等が持ち込まれ、メキシコの代表的な食べ物であるタコスが現在のよ うなものとなった。また、ヨーロッパから醸造技術が持ち込まれたことで、原産の竜舌 蘭を原料としたテキーラが生まれた。2．政治制度
（1）政治制度の概要
メキシコ憲法は米国憲法をモデルに作成されており、代議制・民主制・連邦制の共和 国となっている。元首は大統領であり、三権分立・連邦制でありながらも特に強い権限 を持っている。大統領の任期は 6 年で、再選禁止となっている。議会は、両院制で、上 院は、全 128 議席で、そのうち 96 議席は 31 州と連邦区（メキシコシティ）の計 32 地 区からそれぞれ 3 名ずつが比例代表制で選出され、残りの 32 議席は全国区の比例代表 制で選出される。上院議員の任期は 6 年である。下院は、全 500 議席で、300 議席は小 選挙区制、200 議席は全国 5 つの選挙区での比例代表制となっている。下院議員の任期 は 3 年で、大統領選挙の 3 年後に中間選挙が行われる。両院とも連続再選は禁止されて いる。 主要政党は、メキシコ革命のリーダー等により発足し、1929 年から 2000 年まで長期 に亘り政権の座についていた中道左派の制度的革命党（PRI）、2000 年の大統領選挙で 政権の座に就いた中道右派の国民行動党（PAN）及び中道左派から極左までの小政党の合併により生まれた民主革命党（PRD)の 3 政党である。
（2）行政組織
メキシコにおいては、大統領を行政の長として、以下のような行政組織が存在してい る。 （政治関係） 内務省 (SEGOB:Secretaría de Gobernación)外務省 (SRE:Secretaría de Relaciones Exteriores) 公共行政省(SFP:Secretaría de la Función Pública) （治安関係）
公共治安省 (SSP:Secretaría de Seguridad Pública) 国防省 (SEDENA:Secretaría de Defensa Nacional) 海軍省 (SEMAR:Secretaría de Marina)
連邦検察庁 (PGR:Procuraduría General de la República) （経済関係）
大蔵公債省 (SHCP:Secretaría de Hacienda y Crédito Público) エネルギー省 (SENER:Secretaría de Energía)
経済省 (SE:Secretaría de Economía)
通信運輸省 (SCT:Secretaría de Comunicaciones y Transportes) 労働社会保障省(STPS:Secretaría del Trabajo y Previsión Social) 観光省 (SECTUR:Secretaría de Turismo)
（社会開発関係）
農牧省 (SAGARPA:Secretaría de Agricultura, Ganadería, Desarrollo Rural,Pesca y Alimentación)
環境天然資源省 (SEMARNAT:Secretaría de Medio Ambiente y Recursos Naturales)
農地改革省 (SRA:Secretaría de Reforma Agraria) 教育省 (SEP:Secretaría de Educación Pública) 厚生省 (SALUD:Secretaría de Salud)
（3）司法
メキシコの司法制度の特色は、①連邦制をとるため、連邦裁判所と州裁判所が存在す ること、②基本的に 2 審制であること、③最高裁判所は憲法争議及び違憲の訴訟を行う 機関であること及び④アンパーロ（Amparo）という保護請求の訴えの制度が存在するこ とである。 同一の州内に限定した事案については、州の裁判所、複数の州にまたがる事案や連邦 が関係する事案については、連邦裁判所が担当する。 メキシコの司法の最大の特色であるアンパーロという制度は、行政、司法及び立法の 行為によって人権が侵害された場合の救済制度である。メキシコでは基本的に 2 審制であるが、アンパーロの制度によって、裁判所の判決が人権を侵害した、あるいは判決の 基となった法律が憲法違反であり、これによって人権が侵害されたといった場合には、 アンパーロ裁判に訴えることができ、4 回まで審議を受けることができる。また、アン パーロ裁判は、連邦司法裁判所で第 1 審が行われ、連邦高等裁判所又は最高裁判所で第 2 審が行われる。なお、後者は、憲法に関係する場合である。
（4）地方行政
メキシコは、連邦制をとっているものの、州政府の権限は小さい。連邦と州の権限分 割は、連邦権を明記し、州は残余権を有するという方法をとっている（憲法 124 条）。 連邦権は、連邦議会権限（同 73 条）、下院専管権限（同 74 条）、上院専管権限（同 76 条）、大統領権限（同 89 条）と明記されており、広範な分野が連邦政府の管轄となって いる。 残余権である州権は、制限されており、課税権も連邦政府がほぼ独占しているため、 実際には連邦制度をとりながらも、メキシコの政治は中央集権的に行われてきたとの指 摘がなされている。 また、州政府の下にムニシピオ（Municipio）と称する市・町・村に相当する行政組 織が存在している。 図 1 メキシコの 31 州と連邦自治区（5）外交
19 世紀にアメリカ合衆国にテキサス、カリフォルニア等を奪われる戦争を行ったも のの、その後は多元外交を行っている。冷戦時代にもアメリカ合衆国との深い関係を保 ちつつもソビエト連邦やキューバ等の東側諸国との外交関係を維持してきた。日本とは 1888 年に日墨修好通商条約を締結したが、これは日本にとって初めての平等条約であ った。 近年は、1992 年にチリと FTA を締結後、1994 年には米国、カナダとの NAFTA に加盟 し、2000 年には EU との FTA を締結する等、積極的な通商外交を展開している。現在、 世界の GDP の 60％に相当する 43 か国と FTA/EPA を締結している。なお、日本とも 2005 年に EPA を締結している。（6）最近の政治動向
長年の制度的革命党（PRI）政権が続いたが、2000 年の大統領選挙で国民行動党（PAN） のフォックス大統領が勝利し、政権交代が実現した。2006 年の大統領選挙においては、 民主革命党（PAN）のカルデロン候補が PRD のオブラドール候補を僅差で破り、2 期連 続でＰＡＮが政権を担っている。しかしながら、2009 年の下院選挙で PRI が第一党と なり、「ねじれ国会」の状態が生じている。 2012 年 8 月には大統領選挙があるが、最近の州知事選挙、州議会選挙等において、 PAN は苦戦する状況が続いている。3．経済
（1）現在の経済情勢
表 7 メキシコの GDP 成長率（前年比） 2004 年 2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 4.1 3.2 5.2 3.3 1.2 －6.1 5.4 （出典）INEGI 表 8 メキシコの GDP 成長率（四半期毎・前年同期比） 2009 年 2010 年 2011 年 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ －7.4 －9.6 －5.5 －2.0 4.5 7.6 5.1 4.4 4.5 3.2 4.5 （出典）INEGI メキシコ経済は、米国経済への依存度が高く、脆弱な歳入構造のため内需拡大政策が 取れないこともあり、2009 年は米国発の金融危機の影響を受け、米国経済より大きな マイナスとなった。2010 年は、米国向けの自動車輸出が好調だったこともあり、反動 で大きな伸びを示したが、2011 年に入り、米国経済の陰りから再び前年同期比での GDP成長率の伸びが低下していたにもかかわらず､2011 年 Q3 は輸送用機械産業の好調等に より、予想を上回る成長であった。
（2）貿易・投資状況
表 9、表 10 及び表 11 に 2011 年 1～11 月のメキシコの品目別輸出額、輸入額及び貿易 収支を、表 12 に対内直接投資額を記す。 輸出は原油価格の上昇による原油、金属価格及び生産量の増大から鉱産物が特に高い 伸びを示している。輸入はガソリン等の石油製品が高い伸びを示している。 表 9 品目別輸出額 （単位：百万 US$) 2010 年 1～10 月 2011 年 1～10 月 前年同期比（％） 輸出額計 243,358 289,517 ＋19 石油 33,224 46,570 ＋40 原油 28,405 40,803 ＋44 その他 4,820 5,766 ＋20 非石油 210,134 242,948 ＋16 農牧産品 6,944 8,709 ＋25 鉱産物 1,967 3,253 ＋65 製造業 201,223 230,986 ＋15 自動車産業 53,170 65,339 ＋23 その他 148,053 165,647 ＋12 （出典）INEGI 表 10 品目別輸入額 （単位：百万 US$） 2010 年 1～10 月 2011 年 1～10 月 前年同期比(%) 輸入額計 246,108 290,458 ＋18 消費財 33,324 43,152 ＋29 石油製品 10,336 16,597 ＋61 その他 22,988 26,555 ＋16 中間財 188,494 218,940 ＋16 資本財 24,291 28,367 ＋17 （出典）INEGI 表 11 貿易収支 (単位：百万 US$) 2010 年 1～10 月 2011 年 1～10 月 前年同期比（％） 貿易収支 －2,750 －941 －66 石油輸出を除く貿易収支 －33,975 －47,511 ＋32 （出典）INEGI表 12 対内直接投資額の推移（単位：百万 US$) 対内直接額 うち新規投資額 2008 年 Q1 6,566 1,287 Q2 7,291 1,154 Q3 3,804 2,316 Q4 6,637 4,232 2009 年 Q1 4,089 1,013 Q2 5,499 1,916 Q3 1,852 562 Q4 2,538 2,264 2010 年 Q1 4,876 1,867 Q2 7,364 6,054 （出典）経済省
4．鉱業概要
（1）鉱業の現状と動向の概要
①金属鉱石生産量 メキシコの金属鉱石生産量は、カナダ企業を初めとする外国企業による積極的な投 資もあり、大幅に増加してきている。銅についても、2007 年から 2010 年 6 月まで続 いたメキシコ最大の銅鉱山である Cananea（現 Buenavista）鉱山のストライキが終結 したことで 2011 年は大幅に増加している。 金については、2004 年から 2010 年の 7 年間に 4 倍近く生産量が増加しており（図 2 参照）、世界 13 位の生産量であった。2011 年 1～9 月（INEGI 速報値）も前年同期 比で 12％増となっている。 図 2 メキシコの金鉱石の生産量の推移（単位：ｔ）（出典：INEGI） 銀については、2004 年から 2010 年の 7 年間に生産量が 72％増加しており（図 3 参 照）、2010 年にはペルーを抜いて世界一の生産量となった。なかでも 2010 年は対前 年 24％増と大きく増加しているが、メキシコ最大級の Peñasquito 多金属鉱山が 2010 年 9 月に商業生産を開始したことによるものである。2011 年 1～9 月（INEGI 速報値） も前年同期比で 14％増となっている。0.0
10.0
20.0
30.0
40.0
50.0
60.0
70.0
80.0
04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 21.8 30.3 39.0 43.7 50.8 62.4 79.4図 3 メキシコの銀鉱石の生産量の推移（単位：ｔ）（出典：INEGI） 鉛については、2004 年から 2010 年の 7 年間に生産量が 62％増加しており（図 4 参 照）、世界第 5 位の生産量となっている。なかでも 2010 年は対前年 34％増と大きく 増加しているが、メキシコ最大級の Peñasquito 多金属鉱山が 2010 年 9 月に商業生産 を開始したことによるものである。2011 年 1 月～9 月（INEGI 速報値）も前年同期比 15％の増となっている。 図 4 メキシコの鉛鉱石の生産量の推移（単位：千ｔ）（出典：INEGI）
2,000
2,500
3,000
3,500
4,000
4,500
04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年2,569
2,894 2,970
3,135
3,236
3,554
4,410
100.0
110.0
120.0
130.0
140.0
150.0
160.0
170.0
180.0
190.0
200.0
04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年118.5
134.4 135.0 137.1
141.2 143.8
192.0
亜鉛については、2004 年から 2010 年の 7 年間に生産量が 34％増加しており（図 5 参照）、世界第 8 位の生産量となっている。なかでも 2010 年は対前年 16％増と大き く増加しているが、メキシコ最大級の Peñasquito 多金属鉱山が 2010 年 9 月に商業生 産を開始したことによるものである。2011 年 1 月～9 月（INEGI 速報値）も前年同期 比 8％の増となっている。 図 5 メキシコの亜鉛鉱石の生産量の推移（単位：千ｔ）（出典：INEGI） 銅については、2004 年から 2010 年の 7 年間に生産量が 27％減少しており（図 6 参 照）、世界第 14 位の生産量となっている。これは、2007 年から 2010 年 9 月までメキ シコ最大の銅鉱山である Cananea（現 Buenavista）鉱山がストライキで生産を停止し ていたことが原因である。2010 年の生産量は世界 14 位であった。同鉱山は、2010 年 9 月に Sx-Ew の生産を再開し、2011 年 6 月にはフル生産を再開している。2011 年 1 ～9 月の生産量（INEGI 速報値）は、前年同期比 66％増となっており、2011 年は過去 最大の生産量となる見通しである。
350
400
450
500
550
600
04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年426.4
476.3 478.4
452
453.6
489.8
570.0
図 6 メキシコの銅鉱石の生産量の推移（単位：千ｔ）（出典：INEGI） メキシコにおいては、金属価格が高騰した 2007 年に多くの鉱山でストライキが多 発したが、Cananea 鉱山のストライキを巡る攻防のなかで労働組合「メキシコ鉱山冶 金労働組合（STMMRM）が 4 つに分裂したこともあり、金属価格が再び高騰したにもか かわらず、2010 年以降は鉱山におけるストライキがほとんど発生していない。 ②金属地金生産量 メキシコの 2009 年及び 2010 年の金属地金の生産量は、表 13 のとおり。 表 13 メキシコの金属地金の生産量 2010 年 2009 年 前年比（％） 金 （ｔ） 72.6 51.4 +41 銀 （ｔ） 3,499 2,693 +30 鉛 (千ｔ) 158.2 100.4 +58 銅 (千ｔ) 237.6 227.8 +4 亜鉛 (千ｔ) 518.4 384.5 +35 アンチモン（ｔ） 71 74 -4 ビスマス（ｔ） 982 854 +15 モリブデン（ｔ） 10,849 10,167 +7 マンガン（千ｔ） 174.8 118.6 +47 （出典：INEGI）
0
50
100
150
200
250
300
350
400
04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年368.6
390.9
312.1
337.5
246.6 240.6
270.1
鉛、亜鉛等で 2009 年に比べ 2010 年で生産量が増加しているのは、2009 年 2 月か ら 4 月にかけて Met-Mex Peñoles 精錬所がストライキによって 66 日間にわたって操 業が停止したためである。
（2）地質鉱床
① 地質 メキシコの地質は、図 7 に示すように、次の 4 つの構造単元に区分される。 （a）Sierra Madre Occidental 地域（b）Trans Mexican Volcanic Belt 地域 （c）Sierra Madre del Sur 地域
（d）Eastern Provinces 地域 ・Mesa Central 地域
・Sierra Madre Oriental 地域 ・Gulf Coastal Plain 地域
Sierra Madre Occidental 地域は、メキシコ本土北西地域に位置し、太平洋岸に沿 って北西－南東に 1,200 km にわたって延びる。本地域の主要部は、標高 3,000 m ま での火山台地をなし、主軸部の幅が 200～300 km を有する。本地域の地質は、次の 4 単元から構成される。 イ．古生界（主として古生代中期の堆積岩・変成岩類からなる） ロ．下部火山岩類層（白亜紀後期～始新世、層厚1.0～1.5 km） ハ．上部火山岩類層（主として漸新世の酸性凝灰岩からなる） ニ．新期溶岩（中新世後期以後の主として玄武岩溶岩） 火成活動は、ジュラ紀～白亜紀に太平洋岸において始まった太平洋プレートの北米 大陸の下への沈み込みによるものである。火山岩類は、カルクアルカリ質の溶岩－イ グニンブライトを主体とする。本地域の大規模火成岩としては、メキシコ本土北西部 に花崗岩バソリスを産出する。
Trans Mexican Volcanic Belt 地域（Eje Neovolcanico Trans-Mexicano）は、18 ～20°N に沿って太平洋岸からメキシコ湾岸までメキシコ中部を東西に横断する延 長 1,000 km の火山地帯である。本地域は、成層火山（標高最高 5,400 m）が集中的 に分布する地形的特徴を有する。また本地域は、Sierra Madre Occidental 及び Eastern Provinces 地域の南限となり、これらを切っている。本地域は、中新世後期 に始まる火山弧に相当し、先新第三系の基盤上に発達する主として中新世後期以降の カルクアルカリ質中性～酸性火山岩類からなる。本地域の火成岩としては、Julisco 州西部の白亜紀後期～暁新世の深成岩帯、Michoacan 州中部の漸新世のバソリスなど が主要なものである。
Sierra Madre del Sur 地域は、Trans Mexican Volcanic Belt 地域の南側に太平 洋岸に沿って分布する。本地域の地質構造は複雑で、先カンブリア界～下部中生界の 変成岩よりなる地層を基盤として、上部中生界～古第三系の火山岩類、更にそれを覆
う新第三系～第四系火山岩層から構成される。本地域には白亜紀中期及び第三紀の迸 入岩が太平洋岸に沿って分布している。
Eastern Provinces 地域は、メキシコ本土東部のメキシコ湾岸に沿う地域である。 この地域の地質は、主としてジュラ紀～白亜紀中期の堆積岩類と、それを覆う新生界 からなる。新生界にはアルカリ質火山岩層を挟む。火成活動は全般に弱く、局所的に 小規模な第三紀の貫入岩を産するのみである。Eastern Provinces 地域は、更に Mesa Central（Altiplano）地域、Sierra Madre Oriental 地域及び Gulf Coastal Plain 地 域に分けられる。
Mesa Central 地域は、東西の山脈によって挟まれた山間の高原地帯で、ジュラ紀 以前の基盤、ジュラ系～白亜系、及びそれらを覆う新生界から構成される。Sierra Madre Oriental 地域は、主として中生代の砕屑岩、石灰岩類からなる。Gulf Coastal Plain 地域は、メキシコ湾に沿う主として中生界～新生界の堆積ベーズンである。 なお、詳細なメキシコの地質図は、メキシコ鉱業センター(SGM)のホームページ (http://www.sgm.gob.me/)で閲覧することが出来る。 ② 鉱床 メキシコ合衆国の主要貴金属・非鉄金属鉱床は、鉱種、鉱床タイプ、関係するプレ ート構造により次のような鉱床生成区に区分されている（Clark et al.,1979）。な お主要な鉱床分布を図 8 に示す。 （a）北部メキシコ イ．ポーフィリー・カッパー/モリブデン鉱床帯 ロ．接触交代鉱床帯（銅、鉛・亜鉛、銀） ハ．鉱脈鉱床帯（金・銀、鉛・亜鉛） ニ．マント鉱床帯（鉛・亜鉛、銀） （b）南部メキシコ イ．スカルン、接触交代鉱床帯（主として鉄） ロ．ポーフィリー・カッパー/モリブデン鉱床帯（鉛・亜鉛随伴） ハ．火山性塊状硫化物鉱床帯（金・銀、銅、亜鉛） ニ．鉱脈鉱床帯（金・銀、鉛・亜鉛） ホ．鉱染～交代鉱床帯（Santa Fe に代表される銅、鉛・亜鉛、金・銀鉱床） Trans Mexican Volcanic Belt 地域より北側では、ほぼ太平洋岸に平行にアメリカ 合衆国西部から連続する鉱床帯が配列する。これらは、Baja California 半島を除く メキシコ本土では、太平洋岸から東方に向かって、銅・モリブデン、金・銀、銀・鉛・ 亜鉛の順に並ぶ。これらを、鉱床タイプで分けると次のようになる。最も西側にはポ ーフィリー・カッパー/モリブデン鉱床帯が分布する。それらの形成時代はジュラ紀 である。この帯にほぼ重なるように、銅、鉛・亜鉛、銀の接触交代鉱床帯が発達する。 この帯は 80～40 Ma に生成したものである。ポーフィリー・カッパー/モリブデン鉱 床帯中には、タングステン鉱床を産する地域もある（Sonora、Sinaloa、Chihauhau、 Durango の各州）。
Sierra Madre Occidental 地域の鉱脈鉱床は、金・銀鉱脈帯と金・銀を含む鉛・亜 鉛鉱脈帯に区分できるが、山脈の西側と東側にそれぞれ分かれて産する。これらの生 成年代は、49～28 Ma である。銀を含む鉛・亜鉛鉱床はより広範に分布し、Chihuahua 州東部、San Luis Potosi 州、Guanajuato 州、Hidalgo 州などに認められる。鉛・ 亜鉛、銀のマント鉱床帯は、山脈の東側にあたる Chihuahua、Durango、Zacatecas の 各州に分布し、46～27 Ma に形成されたものである。その他、火山性ウラン鉱床が Chihuahua 州の酸性火山岩に伴い、錫鉱床が Sierra Madre Occidental の東縁部 （Durango～Guanajuato 州）の酸性火山岩中に知られている。
Sierra Madre Del Sur 地域では、太平洋岸に主として鉄スカルン鉱床帯が発達す る。その東側（Michoacan、Guerrero 州）にはそれと平行に、ポーフィリー・カッパ ー/モリブデン鉱床帯（鉛・亜鉛を随伴する）が発達する。これらは、暁新世～漸新 世に島弧－海溝系で生成したものである。この帯の北部には、火山性塊状硫化物鉱床 帯（金、銀。銅、鉛、亜鉛）を産する。本鉱床は、ジュラ紀～白亜紀の火山弧環境で 生成したものである。更にこれらの東側に産する金・銀、鉛・亜鉛、水銀、アンチモ ン鉱脈鉱床帯は、Trans Mexican Volcanic Belt 地域で切られているが、メキシコ北 部の同種の鉱床帯の延長部と考えられる。Santa Fe 鉱床に代表される銅、鉛・亜鉛、 金・銀の鉱染～交代鉱床帯は、鮮新世の花崗閃緑岩体に伴うものである。
主要な鉱床は以下のとおりである（以下の鉱床の一部は図 8 にも記載）。 （a）銅
イ．ポーフィリー・カッパー鉱床
(ⅰ)Baja California Province（白亜紀） El Arco
(ⅱ)Sierra Madre Occidental Province（白亜紀～始新世、特に暁新世～始 新世が多い）
(ⅱ)-1 Sonora 州北部
Cananea, La Caridad, Maria, Mariquita, Batamote, Los Pilares， Milpillas，Florida-Barrigon，El Pilar，El Batamote，Transvaal， Washington，Cumobabi，La Verde
(ⅱ)-2 Sonora 州中部
Suaqui Verde，Cerro Verde，Cuatro Hermanos，Luz del Cobre，El Realito， Lucia，San Antonio de la Huerta，Buenavista
(ⅱ)-3 Sonora 州南部～Sinaloa 州
Piedras Verdes，Santo Tomas，Tahonas，Satevo，Tampeapa，La Reyna， Malpica，Azulita
(ⅲ)Sierra Madre del Sur Province（白亜紀～鮮新世） (ⅲ)-1 Huacana 地区
Morena，La Vista，La Joya，San Juan，La Reyna，San Patricio，La Verde， Manga，San Isidro，Inguaran
(ⅲ)-2 Chiapas 州南部 Toliman
ロ．接触交代鉱床（スカルン）
(ⅰ)Sierra Madre Oriental Province Rio Tinto
(ⅱ)Sierra Madre Occidental
（b）金・銀
イ．浅熱水金・銀鉱床（第三紀、主として始新世～漸新世） (ⅰ)Sierra Madre Occidental Province
Lluvia de Oro，La Herradura，Magistral，Santa Juliana，San Dimas， La Cienega，Mulatos/Salamandra，Alamo Dorado，El Sauzal，Dolores (ⅱ)Sierra Madre Oriental Province
Peñasquito
(ⅲ)Sierra Madre Occidental Province－Mesa Central Province 漸移部 Real de Angeles，Torres
ロ．接触交代鉱床（スカルン鉱床、主として白亜紀～古第三紀） (ⅰ)Sierra Madre del Sur Province
Nukay, Los Filos
（c）鉛・亜鉛
イ．塊状硫化物鉱床（火山性塊状硫化物鉱床／SEDEX鉱床、ジュラ紀～白亜紀） (ⅰ)Sierra Madre Occidental Province－Mesa Central Province 漸移部
Francisco I. Madero，San Nicolas (ⅱ)Sierra Madre del Sur Province
Tizapa，Rey de Plata，Campo Morado，
ロ．接触交代鉱床（スカルン鉱床、主として白亜紀～古第三紀） (ⅰ)Sierra Madre Occidental Province
Nuestra Señora
(ⅱ)Sierra Madre Oriental Province
Bismark, Terrazas, Santa Eularia, Naica, Charcas, Zimapan (ⅲ)Sierra Madre Occidental Province－Mesa Centra
図
7
メキシコの地質
図
8
メキシコの主要
なお、参考として、JOGMEC バンクーバー事務所アドバイザーLu, Kuang Ine 著の「メ キシコの地質及び鉱床生成区について」を参考 3 として巻末に添付する。
（3）鉱業の当該国経済における位置付け
メキシコの鉱業部門（精錬等を含む）の GDP は、19,635 億ペソ（2010 年）にのぼり、 これはメキシコの全産業の 3.8％にあたる。また、メキシコの鉱業部門の労働者数（労 働保険加入）は、284 千人（2010 年）にのぼり、メキシコの労働者（インフォーマル及 び自営業者を含む）の 0.6％、給与労働者（労働保険加入）の 1.0％にあたる。（4）鉱業行政機関
①経済省（Secretaría de Economía)①－1 鉱業総調整官（Coodonación General de Minería）
経済省の商工担当次官（Subsecretaría de Industria y Comercío）の下の次官級 ポスト（調整官は省内に 4 人）であり、内局として鉱山振興総局及び鉱山総局、関係 機関（日本の独立行政法人のような存在）としてメキシコ鉱業センター及び鉱業振興 信託を所掌している。
Acueducto No.4, Esq.Calle14 Bis Col.Reforma Social, C.P, México,D.F. Tel:+52-55-5202-7339/7345
http://www.edigital.economia.gob.mx/
①－2 鉱山振興総局(Dirección General de Promoción Minera)
鉱業政策全般、州政府の鉱山振興部門との連携、鉱業関係の国際会議等を所掌して いる。
Puente de Tecamachalco Naucalpan, Estado de México,C.P.53950 Tel:+52-572-994-992
①－3 鉱山総局(Dirección General de Minas)
鉱業権の管理等の鉱業法の運用全般を所掌している。国内に 8 つの事務所を持ち、 全国に 8 つの鉱山事務局と 23 の地方事務所（受付事務所）を持つ。
（本部）
Acueducto No.4, Esq.Calle14 Bis Col.Reforma Social, C.P, México,D.F. Tel:+52-55-5202-8331
http://www.economia-dgm.gob.mx/
（ソノラ鉱山事務局）
Periférico Pte, No.310-A Edificio Ocutillo, Col.Las Quintas, C.P.83200, Hermosillo, Estado de Sonora
TEL:+52-662-218-3176
（チワワ鉱山事務局）
Calle Antonio de Montes No.1103,Col.San Felipe, C.P.31240, Chihuahua, Estado de Chihuahua
Tel:+52-662-210-8278
（コアウイラ鉱山事務局）
Av.del Rosario No.142, Tracc, El Rosario, C.P.25297, Saltillo, Estado de Coahuila
Tel:+52-844-431-3241
（ドゥランゴ鉱山事務局）
Nanuel A Normal y de.Circunvalación No.99, Edifi.Plaza Guadiana, C.P.34070, Durango, Estado de Durango
Tel:+52-618-128-0617
（ハリスコ鉱山事務局）
Av.16 de Septiembre No.564, Col Centro, C.P.44100, Guadalajara, Estado de Jalisco
Tel:+52-36-13-5885
（ケレタロ鉱山事務局）
Wenclao S. de la Barquera No.13, Col.Villas del Sur, C.P.76040, Santiago de Querétaro, Estado de Querétaro
Tel:+52-442-214-3656
（プエブラ鉱山事務局）
Priv.3-A Sur 3710, Gabriel Pastor, C.P.72400, Puebla, Estado de Puebla Tel:+52-222-237-9377
②メキシコ鉱業センター(SGM：Servicio Geológico Mexicano)
国有鉱区（Asignación）の登録とその探鉱、鉱業地図（地質図、地化学探査図、物 理探査図等）の作成、鉱物資源の埋蔵量鑑定証明書の発行、地球科学に関する調査、 小規模鉱区所有者の支援、分析センターによる鉱物の分析等の業務を行っている。収 入は、連邦政府の拠出金、売却した国有鉱区からのロイヤルティ、各種サービスの対 価等によっている。 （注）SGM は直訳すると「メキシコ地質サービス」になる。また、「メキシコ地質調査所」と 訳した資料も存在するが、当事務所では、活動内容がより広範であることから「メキシコ鉱
業センター」と訳している。
（本部）
Blvd.Felipe Ángeles, km93.5 Carretera México Pachuca, Col Venta, C.P.42080, Pachuca, Estado de Hidalgo
Tel:+52-771-771-4016 http://www.sgm.gob.mx/
（北西部（エルモシージョ）事務所）
López del Castillo No.14, Col.Olivares, C.P.83180, Hermosillo, Estado de Sonora
Tel:+52-662-216-5046
（北部（チワワ）事務所）
Calle Industrial 6, lote 6 interior 2, Zona Industrial Robinson. C.P.31074, Chihuahua, Estado de Chihuahua
Tel:+52-614-459-0814
（北・中央部（ドゥランゴ）事務所）
Esquina Radio y selenio, Ciudad Industrial, C.P.34208, Durango, Estado de Durango
Tel:+52-618-814-1812
（西部（クリアカン）事務所）
Av. El Dorado No.1496, Col. Las Quintas, C.P.80060, Culiacán, Estado de Sinaloa
Tel:+52-667-716-6050
（中央部（サン・ルイス・ポトシ）事務所）
Av. Mariano Jiménez No.465, Col. Alamitos, C.P.78280, San Luis Potosi, Estado de San Luis Potosi
Tel:+52-444-812-7968
（西・中央部（グアダラハラ）事務所）
Av. España No.1331, Col. Miderna, C.P.44190, Guadalajara, Estado de Jalisco
（南部（オアハカ）事務所）
San Lorenzo Cacaotepec, San Pablo Etla, C.P.68258, Oaxaca, Estado de Oaxaca
Tel:+52-951-518-7628
（チワワ分析センター）
Calle industrial 6, lote 6 interior 1, Zona industrial Robinson, C.P.31074, Chihuahua, Estado de Chihuahua
Tel:+52-614-420-1798
（オアハカ分析センター）
Cacaotepec km0.5, C.P.68258, San Pablo Etla, Estado de Oaxaca Tel:+52-951-518-7590
（サルティージョ情報センター）
Quintana Roo No.900, Col.República Oriente, C.P.25280, Saltillo, Estado de Coahuila
Tel:+52-844-416-9723
（メキシコシティ情報センター）
Puente de Tecamachalco No.26, Col. Lomas de Chapultec, Delegación Miguel Hidalgo, C.P.11000, México,D.F.
Tel:+52-55-5578-6023
（サカテカス情報センター）
Santa Martha No.30, Col. Lomas del Convento, C.P.98600, Guadalupe, Estado de Zacatecas
Tel:+52-492-925-2535
③ 鉱 業 振 興 信 託 (FIFOMI:Fideicomiso de Fomento Minero)Secretar
ía
de Medio Ambiente y Recursos Naturales)中小鉱山の振興を目的とした融資事業及び付帯する技術指導を行う機関。 Puente de Tecamachalco No.26, Col. Lomas de Chapultec, Delegación Miguel Hidalgo, C.P.11000, México,D.F.
Tel:+52-800-823-6017
http://www.fifomi.gob.mx/web/
④州政府
Edificio Sonora a la Sur 3er Nivel,Comonport y Paseo del Canal, C.P.83280, Hermosillo, Estado de Sonora
Tel:+52-662-259-6114
④－2 チワワ州経済省鉱業部（Dirección de Minería）
Don Quijote de la Mancha No.1, Complejo Industrial Chihuahua, C.P.31109, Chihuahua, Estado de Chihuahua
Tel:+52-614-442-3300
④－3 コアウイラ州経済振興省（Secretataría de Fomento Económico） Blvd. Luis Echeverría No.1560, Piso 12, Torre Saltillo, Col.Guanajuato Ote, C.P.25286, Saltillo, Estado de Coahuila
Tel:+52-844-416-5274
④－4 バハカリフォルニア州経済開発省(Secretaría de Desarrollo Económico) Calzada Independencia No.94, Centro Cívico, 4to Piso, C.P.21000,
Mexicali, Estado de Baja California Tel:+52-686-558-1048
④－5 バハカリフォルニアスル州経済開発計画庁（Subsecretaría de Planeación y Desarrollo Económico)
Isabel la Catolica Esq. con Ocampo, Centro, C.P.23000, La Paz, Estado de Baja California Sur
Tel:+52-612-122-9995
④－6 シナロア州経済開発省鉱業振興部（Dirección de Fomento Minero）
Palacio de Gobierno 2do.Piso, Av. Insurgentes, Centro Sinaloa, C.P.80129, Culiacan, Estado de Sinaloa
Tel:+52-667-758-5200
④－7 ドゥランゴ州経済開発省鉱業部（Dirección de Minería）
Calle 5 de febrero 913 pte, Zona Centro, C.P.34000, Durango, Estado de Durango
Tel:+52-618-811-3563
④－8 サカテカス州経済開発省鉱山部（Dirección de Minas）
Av. Universidad No.226, Col. La Lamo, C.P.98060, Zacatecas, Estado de Zacatecas
④－9 アグアスカリエンテ州鉱業部（Dirección de Minería）
Av.Tecnológico No.106, Exhacienda Ojo Caliente 4, Centenario, C.P.20190, Aguascalientes, Estado de Aguascalientes
Tel:+52-449-970-2501
④－10 サン・ルイス・ポトシ州鉱業開発振興局（Dirección General de Desarrollo y Promoción Minera）
Blvd. Antonio Rocha Cordero No.125. 3er Piso, Col.Desarrollo del Pedregal, C.P.78295, San Luis Potosi, Estado de San Luis Potosi Tel:+52-444-825-6671
④－11 ナヤリット州経済開発省（Secretaría de Desarrollo Económico） Av. Insurgentes Pte. No.854, Col.El Rodeo, C.P.63060, Tepic, Estado de Nayarit
Tel:+52-311-258-0929
④－12 ハリスコ州経済振興省生産担当部（Dirección de Área Sectores y Cadenas Productivas）
Lópe Cotilla No.1505, Col.Americana, Guadalajara, Estado de Jalisco Tel:+52-33-3678-2000
④－13 グアナファト州持続的経済開発省鉱山部（Dirección de Minas） Calarza No.88, 3er Piso, Col.Centro, C.P.36000, Guanajuato, Estado de Guanajuato
Tel:+52-473-732-7415
④－14 ケレタロ州持続的開発省（Secretaría de Desarrollo Sustentable） Boulevard Bernardo Quintana No.204, Col.Carretas, C.P.76050, Santiago de Querétaro, Estado de Querétaro
Tel:+52-442-221-6800
④－15 イダルゴ州経済省（Secretaría de Económia）
Calle Ignacio Allende No.603, Entre A.Barrientos y Arizpe, Col.Centro, C.P.42000, Pachuca, Estado de Hidalgo
Tel:+52-771-715-2281
④－16 コリマ州経済振興省（Secretaría de Fomento Económico）
3er Anillo Periférico, Esq.Ejército Mexicano. El Diezmo, C.P.28010, Colima, Estado de Colima
Tel:+52-312-316-2028
④－17 ミチョアカン州経済開発省産業開発部（Dirección de Desarrollo Industrial）
Av.Lázanas No.1677, 1er Piso, Col.Chapultepec Norte, C.P.58260, Morelía, Estado de Michoacán
Tel:+52-443-113-4500
④－18 プエブラ州競争力・労働・経済開発省戦略的分野部（Dirección de Sectores Estratégicos）
Callejón de la 10 Norte No.806, Paseo de San Francisco, Barrio El Alto, C.P.72000, Puebla, Estado de Puebla
Tel:+52-222-777-5036
④－19 ゲレロ州経済開発・労働省農業加工産業・鉱業振興局（Dirección General de Promoción Industrial Agroindustrial y Minera）
Palacio de Gobierno, Edificio Acapulco, 1er Piso, Cd. de Los Servicios, C.P.39090, Chilpancingo de Los Bravo, Estado de Guerrero
Tel:+52-747-471-9923
④－20 オアハカ州観光・経済開発省産業・鉱業部（Dirección de Industría y minería）
Edif.5, Profidio Díaz, Pisol, Cd. Administrativa Benemérito de las Américas, Carretera Oaxaca – Istmo km11.5, C.P.68270, Tlalixtac de Cabera, Estado de Oaxaca
Tel:+52-951-501-5000
（5）鉱業政策・鉱業公社
メキシコにおいては、資源ナショナリズムの動きの中で 1960 年代に外資規制の強化 が始まり、1961 年鉱業法において鉱業分野でのメキシコ資本の多数化（50％超）が義 務付けられ、1973 年外資法においては外資比率を 49％以下に規制された。 しかしながら、こうした政策は投資の衰退を招き、1982 年の逆オイルショックによ る経済危機以降政策の転換を迫られた。 外資法については、1984 年から弾力的運用が始まり、1989 年には施行規則の改正に より一部出資制限が自由化され、1993 年には新外資法により、石油産業等一部規制業 種を除き、出資制限が自由化され、100％外資による鉱山開発プロジェクトへの参加が 可能となった。 鉱業法については、1992 年に休眠鉱区の自由化促進が行われ、1993 年には国内・外 の民間資本の大幅な導入促進を目的とした新鉱業法が公布され、同施行規則により、鉱区申請手続きの簡素化、規制緩和、鉱山会社の権利保護のための規定が施行された。1999 年の鉱業法施行規則においては、政府の手続き処理期間を定めるとともに、生態系均衡 環境保護法、メキシコ公式規格等の条項の遵守を盛り込んだ。 こうした解放政策により、2000 年以降、カナダ企業をはじめとする外国企業の投資 が急増している。 鉱業公社については、石油・天然ガス関係については国営石油公社（ＰＥＭＥＸ）が 存在するが、金属鉱物資源関係については存在しない。
（6）探鉱状況・探鉱・開発プロジェクト
メキシコにおいては、メキシコ湾側の石油・天然ガスのポテンシャルを有するも金属 鉱物資源のポテンシャルの小さな地域、先住民問題から開発が困難な南部のチアパス州、 都市部のメキシコシティ等を除く各州において、数百件の探鉱開発プロジェクトが行わ れている。最大手のメキシコ資本の Grupo Mexico は、メキシコ内に探鉱鉱区として 368,182ha を保有し、2010 年に 20.6 百万 US$を投資しているほか、銅プロジェクト（現行鉱山の 拡張も含む）だけで 2014 年までの 5 か年に 3,805 百万 US$の投資を発表している。メ キシコ資本第 2 位の Industria Peñoles は、2010 年に 125.5 百万 US$の探鉱投資を行っ ている。 探鉱・開発プロジェクトの件数としては、カナダ企業によるものが過半であり、中に は 1 社で 20 件以上の探鉱プロジェクトを持つカナダ・ジュニアカンパニーも存在して いる。 その他、国内資本第 3 位の Minera Frisco をはじめとするメキシコ企業、米国、オース トラリア等の外国資本による探鉱活動も活発である。 表 14 に州毎に開発段階及び探鉱が進捗した主要な探鉱・開発プロジェクトを記す。 表 14 主要進展探鉱・開発プロジェクト一覧 プロジェクト名 保有会社（100%以外の 場合は、権益：％） 鉱 種 備 考 （バハ・カリフォルニア州）
El Arco Grupo Mexico 銅、金 2015 年操業開始予定。概測資源量 銅
6.2 百万ｔ、金 130t（含有量） （バハ・カリフォルニア・スル州）
El Boleo 加 Baja Mining、
韓国企業団 銅、ｺﾊﾞﾙﾄ、 亜鉛、 ﾏﾝｶﾞﾝ 2013 年操業開始予定。確定・推定埋蔵 量 85 百万 t、銅 1.33％、ｺﾊﾞﾙﾄ 0.08 ％、亜鉛 0.55％、ﾏﾝｶﾞﾝ 2.92％
San Antonio 加 Argonaut Gold 金 開発段階。精測・概測資源量 金 34t
Concordía 米 Vista Gold 金 開発段階。概測・精測資源量 金 19t、
（シナロア州） San José de Gracia 加 Goldgroup(50) 金、銀 予測鉱物資源量 金 19t、銀 34t El Gallo 加 US Gold 金、銀 2012 年半ば操業開始予定。概測・精測 資源量 金 17t、銀 1,238t Guadalupe de los Reyes 加 Vista Gold 金、銀 精測・概測資源量 金 15t （ソノラ州）
Luz de Cobre Zaruma Resources 銅 開発段階。概測・精測資源量 銅 46
千 t
Noche Buena Peñoles(43.2)、
米 Newmont(44)
金 2010 年に買収。2012 年操業開始予定。
概測資源量 金 18t。
Buenavista Grupo México 亜鉛、銅、
銀
同社の Buenavista 銅鉱山に隣接する
多金属ﾌﾟﾛｼﾞｪｸﾄ。概測資源量 13 百万 t、
亜鉛 3.3％、銅 0.97％、銀 29g/t
Mercedes 加 Yamana Gold 金、銀 2011 年末操業開始予定。確定・推定埋
蔵量 金 25t、銀 261t
Pilares Grupo México 銅 開発段階。10km 離れた同社の La
Caridad 銅鉱山の選鉱ﾌﾟﾗﾝﾄに高品位 硫化鉱を供給する予定。
El Creston 加 Mercator Minerals ﾓﾘﾌﾞﾃﾞﾝ、
銅
2013 年操業開始予定。概測・精測資源 量 ﾓﾘﾌﾞﾃﾞﾝ 152 千 t、銅 129 千 t
La Colorada 加 Argonaut Gold 金、銀 精測・概測資源量 金 19t、銀 160t
El Pilar 加 Mercator Minerals 銅、金 2012 年操業開始予定。確定・推定埋蔵
量 152 千 t、銅 0.31％ （チワワ州）
Los Jarros 加 Aurico Gold 金、銀 概測資源量 金換算 401t
Concheño Minera Frisco 金、銀 2011 年末操業開始予定。
Orisyvo Fresnillo
（Peñoles(77.1)）
金、銀 推定埋蔵量 金 155.5t。
Monterde 加 Kimber Resources 金、銀 概測鉱物資源量 金 22t、銀 1,150t
San Miguel 米 Paramount Gold 金、銀 概測鉱物資源量 金 22t、銀 1,100t
Bahuerachi 金川集団 銅、亜鉛 概測資源量 5.25 百万 t、亜鉛 0.55％、
銅 0.4％
Tres Marias 加 War Eagle Mining 亜鉛、銅、
ｹﾞﾙﾏﾆｳﾑ
概測・精測資源量 24.6 百万 t、亜鉛 2.97％、銅 0.28％
（ドゥランゴ州）
鉛、亜鉛 t、金 2.1g/t、銀 35g/t、銅 0.28％、 鉛 1.06％、亜鉛 2.01％
Verardeña Peñoles 亜鉛 2013 年操業開始予定。埋蔵量 83 百万 t、
亜鉛含有量 4.2 百万 t
San Agustin 加 Silver Standard
Resources
金、銀、亜 鉛、鉛
概測・精測資源量 121 百万 t、金 0.41 g/t、銀 12.3g/t、亜鉛 0.49％、鉛 0.06％
La Pleciosa Orko Silver(50)、
Pan American Silver (50)
銀、金 開発段階。概測資源量 24.8 百万 t、銀
142g/t、金 0.28g/t
（サカテカス州）
Miguel Auza 加 Ecellon Resources 金、銀、亜
鉛、鉛
2007 年～2008 年に多金属鉱山として 操業。2009 年に買収し、操業再開に向 け資源量調査中。
Del Toro 加 First Majestic
Silver
金、銀 2012 年 Q2 に操業開始予定。概測・精
測資源量 銀換算 1,773t
Noche Buena 加 Goldcorp 金、銀 開発段階。5km 離れた Peñasquito 鉱山
の衛星鉱山。概測資源量 71.25 百万 t、 金 0.42g/t、銀 14.1g/t
Camino Rojo 加 Goldcorp 金、銀、鉛、
亜鉛
開発段階で 2014 年操業開始予定。50
km 離れた Peñasquito 鉱山の衛星鉱山。
概測資源量 163.4 百万 t、金 0.65g/t 、銀 11.6g/t、鉛 0.19％、亜鉛 0.37％
San Nicolas 加 Teck Resources 亜鉛、銅 概測資源量 78.1 百万 t、亜鉛 1.8％、
銅 1.34％ （ナヤリット州）
Orion 加 AuRico Gold 金、銀 推定埋蔵量 金換算 622t
Nuevo Milenio 加 Cream Minerals 金、銀 予測資源量 金 8t、銀 1,300t
（アグアスカリエンテ州）
Porvenir Minera Frisco 金、銀 2012 年操業開始予定。
（グアナファト州）
Cerro del Gallo 豪 Cerro Resources 金、銀、銅 概測・精測資源量 461 百万 t、金 0.27
g/t、銀 11g/t、銅 0.11％ （モレロス州）
Cerro Jumil 加 Esperanza Resour
ces
金、銀 概測・精測資源量 金 23t、銀 51t
（ゲレロ州）
Capire 加 Impact Silver 金、銀、鉛、
亜鉛
2012 年操業開始予定。概測・精測資源 量 1.22 百万 t、銀 52g/t、金 0.2g/t、
銅 0.08％、鉛 0.46％、亜鉛 0.92％
（7）鉱業生産状況
表 15 にメキシコの州別の鉱山名と 2010 年の生産状況をまとめた。 表 15 メキシコの鉱山の生産状況 鉱山名 所有会社 （ 100% 以 外 の 場 合 は権益：％） 鉱 種 2010 年 生産量 (千ｔ) 備 考 （バハ・カリフォルニア州）San Felipe Mienra Frisco 金(t) 0.45 2010 年生産開始
銀(t) 18.2 （シナロア州） Nuestra Señora 加 Scorpio Mining Corp. 鉛 2.80 2009 年 2 月商業生産開始 銅 0.76 亜鉛 6.40 銀(t) 28.3 （ソノラ州） Buneavista （旧 Cananea） Grupo México (80) 銅 20.7 2010 年 9 月までストにより操 業停止。9 月から Sx-Ew が再開、 11 年 6 月にフル操業 金(t) － 銀(t) －
La Caridad Grupo México (80) 銅 123.4 Sx-Ew を含む。
ﾓﾘﾌﾞﾃﾞﾝ 10.4 金(t) 0.17 銀(t) 57.4 La Herradura Peñoles(43.2) 米 Newmont（44） 金(t) 9.0
Milpollas Peñoles 銅 21.77 Sx-Ew
Soledad- Dipoles
Peñoles 金(t) 1.91 2010 年 1 月商業生産開始
Minera María Minera Frisco 銅 8.83 Sx-Ew
El Chanate 加 Aurico Gold 金(t) 1.9 2011 年 4 月買収
Cerro Colorado
加 Goldgroup Minin g
金(t) 0.78
Lluvia de Oro 加 MWM Mining 金(t) － 2011 年下半期操業開始
San Francisco 加 Timmins Gold Co
rp. 金(t)
2.6
2010 年 4 月商業生産開始（2010 年 4 月～2011 年 3 月の数字）
Santa Elena 加 Silver Crest Mi ne Inc.
金(t) 0.07 2010 年 9 月金銀ドーレの生産
開始
銀(t) 1.7
Mulatos 加 Alamos Gold In
c.
金(t) 4.85
Piedras Verdes
Invecture Group 銅
Alamos Dolado 加 Pan American Si lver Corp. 銀(t) 209.1 金(t) 0.52 銅 0.09 El Volcan ﾙｸｾﾝﾌﾞﾙｸ Arcelor M ital 鉄 （チワワ州） Bismark Peñoles 亜鉛 48.42 銅 1.87 鉛 3.11 銀(t) 18.3 Naica Peñoles 鉛 15.13 亜鉛 11.12 銅 0.54 金(t) 0.02 銀(t) 59.2
Santa Eulalia Grupo México 亜鉛 7.0
鉛 3.1
Santa Bárbara Grupo México 亜鉛 34.4
鉛 13.7 San Francisco del Oro Minera Frisco 金(t) 0.06 銀(t) 37.2 亜鉛 19.01 鉛 6.68 銅 0.74
Dolores 加 Minefinders Cor
p.
銀(t) 37.9 2009 年 5 月商業生産開始
金(t) 1.74
Pinos Altos 加 Agnico-Eagle Mines Ltd.
金(t) 4.06
銀(t) 36.9
Ocampo 加 AuRico Gold In
c.
金(t) 3.21 2011 年 5 月に Gammon Gold か
ら社名変更
銀(t) 137.4
Moris 英 Hochschild Mini
ng Plc.
銀(t) 2.7
Palmarejo 米 Coeur d’Alene Mines Corp.
金(t) 0.78
Cieneguita 加 Pan American Goldfiels
金(t) － 2011 年操業開始
Bolivar 加 Dia Bras Exolor
ation Inc. 亜鉛 7.97 銅 1.32 El Sauzal 加 Goldcorp 金(t) 4.73 （ドゥランゴ州） La Cienega Peñoles(77.1) 金(t) 3.53 銀(t) 37 鉛 6.5 亜鉛 11.5
Guanacevi 加 Endeavour Silve r Corp.
銀(t) 76.2
金(t) 0.19
Topia 加 Great Panther
Silver Ltd.
銀(t) 16.0
金(t) 0.02
鉛 1.09
亜鉛 1.36
San Dimas 加 Primero Mining
Corp.
金(t) 2.66 2010 年 7 月に Goldcorp から買
収、Mala Noche から名称変更
銀(t) 140.0
El Castillo 加 Argonaut Gold Inc.
金(t) 1.60
La Platosa 加 Excellon Resour ces Inc.
銀(t) 41.0
鉛 2.64
亜鉛 3.67
Verardeña 米 Golden Minerals 金(t) － 2011 年操業開始
銀(t) －
亜鉛 －
鉛 －
La Parrilla 加 First Majestic Silver Corp. 銀(t) 48.2 金(t) 0.01 鉛 1.94 亜鉛 0.16 （サカテカス州） Sabinas Peñoles 亜鉛 25.22 鉛 7.28 銅 8.62 銀(t) 110.2
Fresnillo Peñoles(77.1) 銀(t) 1,117 金(t) 0.78 鉛 12.2 亜鉛 11.5 Francisco I. Madero Peñoles 亜鉛 42.60 鉛 11.38 銅 1.70 銀(t) 31.7 Saucito Peñoles 金(t) － 2011 年 4 月商業生産開始 銀(t) － 鉛 － 亜鉛 －
San Martin Grupo México － 休山中
La Colorada 加 Pan American Silver Corp.
銀(t) 115.1
金(t) 0.13
鉛 1.37
亜鉛 2.94
Cozamin 加 Capstone Mining
Corp.
銅 16.14
亜鉛 7.88
鉛 4.15
銀(t) 43.6
San José Alian Silver 銀(t) 0.29 2010 年 Q4 商業生産開始
El Coronel Minera Frisco 金(t) 5.44
銀(t) 0.5
Tayahua Minera Frisco(51) 金(t) 0.16 数字要確認
銀(t) 56.7 亜鉛 34.93 鉛 4.92 銅 6.72 Peñasquito 加 Goldcorp 金(t) 5.23 2010 年 9 月商業生産開始 銀(t) 434.0 鉛 44.2 亜鉛 70.1
Aranzazu 加 Aura Minerals 銅 － 2011 年 2 月商業生産開始
金(t) －
銀(t) －
