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免疫を使ったがん治療法の検討約 150 年前 免疫ががん治療に活かせるのではないかと考えた医師ががん患者に細菌を感染させて免疫を刺激し がんに対する免疫治療効果を確認する実験を行いました この時には十分な治療効果は現れませんでした 当時は免疫に対する研究が今ほど進んでおらず 免疫の仕組みを理解しない

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Academic year: 2021

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1 《子供たちに聞かせてあげたいノーベル賞 2018》 2018 年ノーベル生理学・医学賞

免疫機構のブレーキを解除することによる

新たながん治療方法の発見

2018 年のノーベル生理学・医学賞は、免疫機構のブ レーキを解除することによる新たながん治療方法の発見 に対し、ジェームズ・P・アリソン テキサス大学教授、本庶 佑(ほんじょ たすく)京都大学特別教授に授与されま す。 目には見えませんが、私たちはおびただしい量の雑菌や カビ、ウイルスに囲まれて生活しています。そして、大量の それらが私たちの体内に侵入して感染しています。しかし、 健康な人は感染症等を発症することなく過ごすことができ ます。また、体内で活発に行われる細胞分裂ではある確 率で遺伝子複製時にエラーが発生し、毎日大量にがん 細胞が発生しているとされています。しかし、そのほとんど は発病に至らず、気づかないうちに駆逐されてしまいます。 これらは私たちが持っている感染防御機構や感染監視 機構によるもので、これらの仕組みを免疫と呼びます。 図1.免疫とは︖ 免疫機構を阻害することによるがん治療方法の発見 免疫機構を阻害することによるがん治療方法の発見 ジェームズ・アリソン 教授 1948 年米国テキサス州出身 テキサス大学・パーカー腫瘍免疫研究センター 本庶 佑 特別教授 1942 年京都府出身 京都大学

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2 免疫を使ったがん治療法の検討 約 150 年前、免疫ががん治療に活かせるのではない かと考えた医師ががん患者に細菌を感染させて免疫を刺 激し、がんに対する免疫治療効果を確認する実験を行 いました。この時には十分な治療効果は現れませんでし た。当時は免疫に対する研究が今ほど進んでおらず、免 疫の仕組みを理解しないまま医療に応用した点に問題 があったのです。その後、生命科学の研究手法の進展に 伴い、免疫学や腫瘍生物学の分野で多くの基礎研究が 進展し、免疫のメカニズムに対する科学者の理解は大き く深まりました。 今回の授賞研究においては、1996 年、ジェームズ・ア リソン博士は共同研究者と共に、T 細胞 1の表面にある 分子「CTLA-4」に対する抗体2が、免疫機構のブレーキ の役をしていることに着目し、がんを発症したマウスにおい て免疫機構のブレーキを解除することによって免疫機構 が動き始め、がん治療効果が発揮されることを実証しまし た。 図1.CTLA-4 の構造模式図 1 免疫系はあらゆる異物(=抗原)に対応する多様 性と、異物のほんのわずかな違いをも認識する正確 な特異性を併せ持っています。このような異物を見 分ける能力を持っている免疫細胞がT 細胞です。T 細胞は細胞表面にあるT 細胞受容体と呼ばれるタン パク質によって抗原を認識し、抗原特異的に反応し ます。 これに先立ち、本庶佑博士の研究室では、同じく T 細 胞の表面に「PD-1」という新しい分子を発見しました。 PD-1 も CTLA-4 と同様に、免疫機構のブレーキとして 機能しており、PD-1 のがん治療効果は CTLA-4 を超え るものであることを明らかにしました。 図2.PD-1 の構造模式図 病状が進行した悪性黒色腫 3 患者のための抗 CTLA-4 抗体、つまり CTLA-4 に結合して働きを無効 化する分子を用いた臨床試験を実施し、ヒトにおいてが ん治療効果があることを実証しました。一方、PD-1 ある いは、PD-1 が結合するがん細胞表面分子 PD-L1 に対 する抗体の抗がん剤としての応用はすでに実用化されて おり、抗 CTLA-4 抗体よりもさらに強力な治療効果が確 認されています。抗 CTLA-4 抗体と抗 PD-1 抗体の併 用は治療効果をさらに高め、これらの抗体は免疫チェック ポイント阻害剤と総称され、二人の受賞者による研究は、 全く新しいがん治療方法の発見として結実しました。 がんについて がんは、増殖が暴走した細胞が体内で転移していく疾 2 抗体とは体内に侵入した雑菌などの異物に対して 免疫を獲得した体内でつくりだされ、異物を認識し て結合し、異物を排除するような役目を持つタンパ ク質です。 3 悪性黒色腫はメラノーマともいい、色素細胞(メ ラノサイト)に由来する悪性腫瘍で主に皮膚に発生 します。

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3 患です。がんは、最初に臓器内に腫瘍塊が異常増殖し た後、隣接組織に拡散(浸潤)します。最終的に、血 液またはリンパ液を介して遠隔臓器に移動、腫瘍塊を形 成(転移)し、患者を死に至らしめます。年齢とともにが んのリスクが高まり、長寿社会ががんの増加に関係してい ますが、生活習慣も大きく関係し、中でも喫煙が最も重 要な要素です。 世界保健機関(WHO)の統計では 2018 年 1 年 間で 1800 万人以上があらたにがんと診断されると推定 されています。がん患者はこの 50 年間増加を続けていま すが、治癒率も年々高まり、5 年生存率を指標とした治 療の成功率は 3 分の 2 以上に達しています。ただしこれ は平均値であり、臓器により、あるいは発見した時期によ り生存率には大きな違いがあります。特に、転移が発見 された場合、完治させることは著しく困難になるため、引 き続き有効性の高いがん治療方法を研究する必要があ ります。 がんが発症する原因は複雑ですが、がん細胞に共通 する特徴として遺伝子変異があります。それによって本来 の臓器細胞としての機能は不全となり体調が不良となり ます。また、遺伝子変異は生殖系細胞でも発生すること があり、その場合は DNA を介して親から子へ遺伝します。 ノーベル賞授賞研究以前のがん免疫療法 感染症によって引き起こされる免疫反応とがんの関係 については、これらの研究以前より感染症をきっかけに腫 瘍が消えたという報告がなされていました。免疫細胞が腫 瘍細胞を外来異物ととらえて排除しようとする行動をがん 治療方法として活用できないかと考えるようになったのは 19 世紀後半のことです。 生きた細菌をがん患者に投与することによって患者の 免疫機能の刺激を試みる研究が米国やドイツで実施さ れましたが、これらは期待したほどの効果は出ませんでし た。その後の類似の研究においても明確な治療効果は 出ず、医学界においてがん免疫療法の不信を引き起こ すに至りました。 当時の研究がうまくいかなかったのは、免疫が腫瘍細 胞に与える影響はもちろん、免疫そのものについても科学 的な理解がほとんどなかったことが原因の一つとして挙げら れます。免疫機構を知るにあたってもっとも重要な、免疫 がどのようにして自己(私たちの体の細胞)と非自己 (侵入した病原菌など)を識別しているのか、そのメカニ ズムを分子レベルで解明することは、免疫をがん治療に 応用するにあたって、絶対に解明しなければならない大き な謎でした。これについては、1980 年のノーベル賞授賞 研究においてジョージ・スネル博士がマウスを使った実験 で、がん転移における組織適合性に関する遺伝子を発 見しました。この画期的な発見は、免疫細胞であるリンパ 球が自己と非自己をどのようにして識別し、感染性侵入 者を特定し排除しているのかを研究する道を開きました。 その後、例えば正常細胞にはなく腫瘍細胞表面にのみ 存在する特徴的な分子(抗原)の発見、細胞傷害性 T 細胞による腫瘍細胞の殺傷の観察成功、腫瘍にリン パ球が侵入することの発見などが報告されました。 がんに関連するノーベル賞授賞研究 1966 年 前立腺がんのホルモン治療 1975 年 ウイルス性遺伝子情報の DNA への組 み込み 1988 年 核酸の代謝に影響を及ぼす細胞分裂 停止薬に至る新規な原理 1989 年 ウイルス性がん遺伝子の細胞性 1990 年 骨髄移植に関する発見 1996 年 腫瘍誘導ウイルス 2008 年 子宮頸がんの原因としてのヒトパピロー マウイルス 多くの動物実験も行われ、腫瘍増殖に対して免疫機 構の活性化が増殖抑制作用を表すという考え方は正し いことも示されました。ところが、これらの発見をヒトの腫瘍 に対して治療的に応用する研究は、骨髄移植による白 血病治療などごく一部を除いて、ことごとく失敗しました。

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4 T 細胞活性化 1980 年代までは T 細胞に存在するどのような分子が 自己と非自己の認識に関与しているのかよくわかっていま せんでしたが、同じく免疫細胞の仲間、B 細胞 4の研究 が先行して進展したことに伴い、T 細胞の性質も次第に 明らかになっていきました。今回の研究では T 細胞の活 性化を医薬品で起こすことができるようにした点がポイント です。 当時の研究で T 細胞に特徴的な受容体(TCR)が 発見されました。さらに、免疫を調節する細胞(抗原提 示細胞)が分子(MHC)を使って、T 細胞の活性化 スイッチを ON にしていることも確認され、T 細胞の活性 化機構の中心は TCR と MHC の結合であることが明ら かになりました。 また、TCR とは別に、CD28 という T 細胞表面の T 細 胞活性化分子が発見されました。TCR と CD28 は相乗 的に T 細胞を活性化しており、これらのメカニズムは、免 疫系によるがん治療にも関係していることが示されました。 (図3) 免疫反応にブレーキをかける CTLA-4 1987 年に CD28 と同様の機能を持ち、今回のノー ベル賞のきっかけとなる CTLA-4 の遺伝子配列が特定さ れました。 CTLA-4 の機能はまだ不明でしたが、遺伝子 的に CD28 に似ていることから、CTLA-4 も T 細胞の制 御に関係がある分子であることが推定されました。現在で は CTLA-4 は、活性化していない T 細胞では、細胞内 部に引っ込んだ状態で存在し、T 細胞が活性化すると急 速に細胞膜に移行し、活性を調節することが知られてい ます。 1991 年、抗原提示細胞の表面にある B7 というタン パク質が CD28 と CTLA-4 のいずれにも結合することが でき、B7 と CD28 または CTLA-4 の結合が T 細胞の 4 B 細胞は顕微鏡観察では T 細胞と区別のつかない 免疫細胞です。T 細胞との違いは B 細胞の役目は抗 機能調整に関わっていることがわかりました。 1995 年、アリソン博士らはついに、CTLA-4 が T 細 胞活性化のブレーキとして機能していることを発見しまし た。そのことを確認するために、マウスで CTLA-4 の遺伝 子を破壊したところ、そのマウスは T 細胞の働き過ぎによ る非常に重度の自己免疫疾患を発症することが確認さ れ、CTLA-4 が無くなると T 細胞が暴走する、つまり、 CTLA-4 は T 細胞のブレーキであることが立証されました。 図3.CTLA-4 のブレーキの仕組み。抗 CTLA-4 抗体を CTLA-4 に結合させて機能を失わせ、ブレーキを解除する。 体を作る点です。B 細胞の作った抗体は体液中に拡 散して全身に広がり、侵入した非自己に結合するこ とによって、攻撃性免疫細胞の標的となります。

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5 動物における CTLA-4 抗体による腫瘍増殖阻害 この発見以降、多くの研究者は自己免疫疾患を治療 するためにこの発見を応用しようと研究に取り組みました が、アリソン博士は別の道を歩みました。当時、依然とし てほぼ否定されていたがんの免疫治療に取り組んだので す。アリソン博士は、CTLA-4 のブレーキを解除する方法 を試みました。 カリフォルニア大学バークレー校で 1994 年に行われた 最初の実験では、腫瘍を移植したマウスに抗 CTLA-4 抗体(CTLA-4 に対する抗体)、つまり、CTLA-4 に結 合して無効化する分子を投与しました。その結果は絶大 で(図4)、この免疫治療法によって、がん発症マウス の治療が可能であることが明確になりました。この研究は がんの免疫療法のまったく新しい手法の誕生をもたらし、 免疫のブレーキ機能を「免疫チェックポイント」と呼ぶことか ら、それらをブロックする抗体は「免疫チェックポイント阻害 剤(ICI)」と呼ばれることになりました。 アリソン博士は前立腺がん、乳腺がんおよび黒色腫な どの動物腫瘍モデルで研究を続け、これらの異なる種類 のがんに対して、同じ治療方法が適用できることも示しま した。 図4.CTLA-4 の免疫ブレーキを解除する抗体をがん発 症マウスに投与した結果、比較対象と比べ、明らかに腫瘍 細胞の増殖を抑制した。縦軸は腫瘍塊の面積、横軸は投 与後の経過時間。CTLA-4 抗体を投与すると腫瘍面積が ほぼゼロまで減少していることがわかります。 臨床的免疫チェックポイント阻害剤療法の開発 マウスでの発見をヒトの臨床試験に応用することがアリ ソン博士の次の目標となりました。臨床試験を行うには 抗体を大量生産してくれる製薬メーカーとの共同研究が 必須でしたが、CTLA-4 の遺伝子を破壊したマウスが重 度の自己免疫疾患を発症した実験結果を見た製薬メー カーはいずれも強い副作用が出ると考え、このメカニズム の抗がん剤の開発を敬遠しました。けれど、アリソン博士 は粘り強く説得を進め、小さなバイオテクノロジー企業メダ レックス社のアラン・コルマン博士との共同研究を開始する ことができました。メダレックス社はヒトの遺伝子を組み込 んだマウスをベースにした技術によって医薬品として使用 可能なレベルにある CTLA-4 ヒトモノクローナル抗体を作 製する技術を確立しました。後にイピリムマブと命名され るがん免疫療法医薬品の誕生の瞬間でした。なお、その 後、巨大製薬メーカーのブリストルマイヤーズ・スクイブ社 がメダレックス社を買収し、臨床開発を継続しました。 ヒトに実際に薬剤を投与する臨床試験は第一相から 第三相までの三段階で徐々に規模を拡大しながら実施 されるのが一般的です。イピリムマブは、第一相臨床試 験で難治療黒色腫患者で腫瘍が完全に消失した報告 や、外科切除不能な状態まで転移した、転移性悪性黒 色腫患者への投与で生存期間が明らかに延長した報告 などがなされ、2011 年の米国 FDA と欧州 EMA(いず れも日本の厚生労働省に相当する医薬品承認を行う 官庁)による抗 CTLA-4 抗体承認へとつながりました。 PD-1 受容体の発見とその免疫応答における役割 2018 年ノーベル生理学・医学賞の 2 つ目の発見、 本庶博士による研究はがん治療を目的とした研究では なく、純然とした基礎研究が出発点でした。 授賞対象となった PD-1 は、1990 年代初め、アリソ ン博士による CTLA-4 阻害の発見の前に、本庶博士が 率いる京都大学の研究グループによって発見されました。 PD-1 はアポトーシス(細胞自殺)したマウス細胞で遺 伝子(mRNA)が過剰発現している分子として発見さ

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6 れたため、アポトーシスに関与する分子であると仮定され ました。PD はプログラムされた細胞死(Programmed Cell Death)の略です。活性化した T 細胞に PD-1 が 存在することがわかったのは後のことです。 PD-1 の機能はその後、何年もの間、解明できずにい ました。本庶博士は PD-1 が無いマウスにはどのような異 常が発生するかを調べればその機能がわかると考え、関 連する遺伝子を破壊した「ノックアウト」マウスを作り、10 年をかけて研究をつづけました。その結果、PD-1 を失っ たマウスは脾臓に腫瘍が発生したり、T 細胞に似た機能 を持つ免疫細胞である B 細胞の増殖が増強されたりす ることがわかりました。また、破壊した遺伝子の種類によっ てはアリソン博士の CTLA-4 ノックアウトマウスに似た T 細 胞性の自己免疫疾患が現れることもありました。遺伝子 的にも CD28/CTLA-4 と共通点があることから本庶博 士は、CTLA-4 と同様に PD-1 が免疫応答のブレーキを 解除することに関係していると結論づけました。CTLA-4 は抗原提示細胞の B7 と結合する性質を持っていました が、本庶博士は抗原提示細胞には PD-1 と結合する性 質のあるタンパク質(リガンド)があることを発見し、発見 した分子に PD-1 リガンド(PD-L1)と命名しました。 図5.PD-1 ブレーキの仕組みとその解除 がんの治療としての PD-1 遮断 PD-1 と PD-L1 の結合が腫瘍に対する免疫応答に 関与する可能性があるという考え方は、2002 年に発表 されました。この時、腫瘍細胞上にも抗原提示細胞と同 じ PD-L1 分子が存在し、それによって腫瘍細胞が免疫 攻撃から逃れていること、PD-L1 に別の分子(抗体) を結合させることによってこれを回避させることができること が示されました。また、同時に PD-1 および CTLA-4 の 併用療法は相乗効果をもたらし、より強く腫瘍細胞を抑 制することが報告され、腫瘍免疫学における PD-1/PD-L1 の有効性が確立されました。 2005 年に発表された、がんを発症させたマウスの治 療実験結果では、PD-1 のブレーキを解除する抗体を投 与した治療において、治療効果は少なくとも CTLA-4 療 法と同程度で多くのケースで CTLA-4 を上回りました。ま た、自己免疫副作用は CTLA-4 よりも軽度で、さらには PD-L1 のない腫瘍に対しても治療効果があることがわか りました。(図6)

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7 図6.未治療転移性悪性黒色腫マウスに対する抗 PD-1 治療の効果(黒い腫瘍細胞の消失)。 PD-1 阻害の臨床試験は小野薬品の主導で行われ ました。小野薬品は研究初期段階で PD-1 抗体ニボル マブの開発に協力した製薬メーカーです。ニボルマブのヒト での臨床試験では高い安全性の確認、異なる種類の腫 瘍が進行した疾患において、広く顕著な治療効果がある ことが示されました(図7)。 図7.抗 PD-1 抗体で処置した肺がんにおける免疫チェッ クポイント療法。 4 ヶ月後には腫瘍の大きさが見えないくら いにまで縮小しています。ただし、2 ヶ月後は腫瘍塊の中に T 細胞が侵入した結果、逆に腫瘍面積が大きくなって偽陽 性という状態になっている点は、悪化ではないということに注 意が必要です。 チェックポイント阻害を用いたがん治療 免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は、がんの治療環 境を劇的に変え、完治する患者の増加、また治療不能 の末期患者の延命に寄与しています。ICI 以外の治療 方法では進行した黒色腫および非小細胞肺がんなどの 特定の腫瘍を有する患者の間では長期生存は極めてま れです。 CTLA-4 および PD-1 の両方のブレーキを解除する併 用療法はさらに強力な抗腫瘍効果を示します。これはお そらく両者が異なる作用機序を持つためであろうと考えら れています。ただし、この治療方法は免疫系が制御でき なくなるために、抗 CTLA-4 抗体により、下垂体-副腎 系に影響を与える重症大腸炎または内分泌機能不全 が。抗 CTLA-4 抗体または抗 PD-1/PD-L1 抗体で甲 状腺炎などの自己免疫疾患の副作用が重篤に現れま す。免疫関連有害事象が高率で起きます。多くのがん治 療と同様に、免疫チェックポイント療法に関連する有害反 応も、場合によっては死に至る可能性もあり、たとえば肺 炎であれば免疫調節処置を行うなど、副作用に対する 対処も重要です。

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8 新たながん治療方法の誕生 チェックポイント治療機能はT細胞の免疫ブレーキを解 除することによって腫瘍に対するより強力でより持続的な 免疫応答を導くことがメカニズムであることははっきりしてい ます。がん患者の腫瘍組織を摘出して検査を行ったとこ ろ、腫瘍塊の中に T 細胞が侵入しているなど、それを示 す結果が確認されています。 今後の課題は、ブレーキが解除されるとき、T 細胞の内 部で何が起きているのか、ならびに副作用が発生するメカ ニズムについて理解を向上させることです。CTLA-4 およ び PD1/PD-L1 に作用する薬剤は、現在もさらに効果 が高く副作用の低い新たな薬剤が既に研究されています。 また、治療の前にこの免疫療法が効果がある患者かど うかを判定する方法も見つかっていません。あらかじめ効 果を予測できれば無用な副作用で苦しめられるだけの患 者を救うことができるため、その研究も重要です。 図7..がん治療の 3 つの柱、①外科手術、②放射線治 療、③抗がん剤、に加えて④免疫チェックポイント療法が新 たな治療方法として誕生しました。

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