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学位論文 Doctoral Thesis Tegafur-uracil 配合剤投与による子宮頸癌の予後解析 (Effect of oral tegafur uracil adjuvant therapy for uterine cervical cancer) 坂口勲 Isao Sakaguchi

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熊本大学学術リポジトリ

Kumamoto University Repository System

Title Tegafur-uracil配合剤投与による子宮頸癌の予後解析

Author(s) 坂口, 勲

Citation

Issue date 2016-03-09

Type Thesis or Dissertation

URL http://hdl.handle.net/2298/34644

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1

学位論文

Doctoral Thesis

Tegafur-uracil配合剤投与による子宮頸癌の予後解析

(Effect of oral tegafur –uracil adjuvant therapy for uterine cervical cancer )

坂口 勲

Isao Sakaguchi

指導教員

片渕 秀隆 教授

熊本大学大学院医学教育部博士課程医学専攻産科婦人科学

2015 年度

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2

目次

(各項目のカッコ内はページを表す) 1. 目次・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2) 2. 要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3) 3. 発表論文リスト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5) 4. 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(7) 5. 略語一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(8) 第 1 章 研究の背景と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(9) 1. 子宮頸癌 2. 子宮頸癌の治療 3. 子宮頸癌に対する抗癌化学療法 4. テガフールウラシル(UFTTM) 5. テガフールウラシル(UFTTM)の臨床研究 7. 本研究の目的 第 2 章 対象と研究方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(12) 1. 対象 2. テガフールウラシル(UFTTM)の投与方法 3. 検討項目 4. 解析方法 5. 倫理的背景 第 3 章 研究結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(15)

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3 1. 症例の背景因子 2. テガフールウラシル(UFTTM)の投与状況 3. 副作用 4. 予後 第 4 章 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(23) 第 5 章 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(25) 第 6 章 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(26)

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1. 要旨

[ 目的 ] 子宮頸癌の一次治療法としては手術療法が選択されることが多く、再発防 止を目的として、多くは放射線療法が併用されてきた。子宮頸癌の抗癌化学療法は 従来、補助的治療の域をでなかったが、予後不良例に対する全身療法として経口補 助化学療法の有用性が再認識されつつある。テガフールウラシル配合剤は経口フッ 化ピリミジン系抗腫瘍剤で現在、胃癌、大腸癌をはじめとした消化器癌に加え肺癌、 乳癌などにも広く用いられている。婦人科領域においても子宮頸癌に対して以前より 投与されているが、現在まで予後不良例に対する補助化学療法としての系統的な検 討はない。今回、子宮頸癌一次治療後の維持化学療法としてのテガフールウラシル 配合剤投与の予後改善効果について後方視的に検討することを目的とした。 [ 方法 ] 1986 年 4 月より 1997 年 3 月までに当施設と関連施設で初回治療を受けた 子宮頸癌患者のうちテガフールウラシル配合剤による維持療法を行った投与群は 162 例であった。投与群ではテガフールウラシル配合剤 600mg/日を原則として 12 ヵ 月間の連日経口投与を行った。投与群の年齢、臨床進行期、組織型、一次治療の内 容およびテガフールウラシル配合剤投与後の副作用について調査した。さらにテガフ ールウラシル配合剤を投与していない 147 例をコントロール群として両群間における 予後を Log-rank test で解析した。 [ 結果 ] 年齢、臨床進行期、組織型、一次治療の内容は両群間に差はなかった。投 与期間は 103 例(63.6%)が 90 日間以上服用した。また投与量は 137 例(84.6%)が 1 日 600mg を服用し、残りは 1 日 300~400mg であった。副作用の調査が可能であった 139 例中 56 例(40.3%)に National Cancer Institute Common Toxicity Criteria(NCICTC) の grade1 以上がみられた。嘔気嘔吐が 17 例(12.2%)、食欲減退 14 例(10.1%)と消化

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5 器症状が最も多く、つづいて白血球減少症/好中球減少症が 8 例(5.8%)、肝機能異常 が 7 例(5.0%)、下痢が 7 例(5.0%)と続いた。予後の検討では投与群の 5 年生存率がコ ントロール群に比べて有意に良好で(p<0.05)、特にⅢ期で著明で、さらに扁平上皮癌 症例や一次治療として放射線治療を行った症例でも良好な傾向がみられた。投与群 のなかで 90 日間以上服用した症例は 90 日間未満服用した症例と比較して生存率、 無病生存率ともに有意に良好であった(p<0.05)。 [ 考察 ] 今回の研究により後方視的検討であるが、子宮頸癌の維持療法としてテガ フールウラシル配合剤投与が一つの治療選択になり得る可能性が示唆された。 [ 結論 ] テガフールウラシル配合剤の 1 日 600mg 連日経口服用により子宮頸癌の 特に進行した扁平上皮癌症例や放射線治療を行った症例では予後が改善する傾向 がみられた。

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6

Abstract of the Thesis

Purpose: This study was conducted to determine the efficacy and toxicity of oral administration

of tegafur–uracil (UFTTM) at a high dose, 600 mg/day, based on the tegafur dose, against uterine

cervical cancer

Methods: From April 1986 to March 1997, 309 patients with uterine cervical cancer were

registered. Oral UFTTM was administered to 162 patients for maintenance therapy after an initial

treatment (the UFTTM group). The other 147 patients were not treated with UFTTM (the control

group). Adverse events were compared between the UFTTM and control groups. The survival rate

was calculated for both groups and statistically analyzed using the log-rank test.

Results: In the UFTTM group, 103 patients (63.6%) received UFTTM for ≥90 days. The drug dose

was 600 mg/day for 137 patients (84.6%) and 300–400 mg/day for the remainder. The most

frequent side effects were nausea/vomiting (12.2%), appetite loss (10.1%), and

leukopenia/neutropenia (5.8%). The overall survival rate was significantly higher in the UFTTM

group than in the control group (p < 0.05). The prognosis was particularly favorable in stage III

cases, in cases of squamous cell carcinoma, and in cases that were treated concomitantly or

previously by radiotherapy.

Conclusions: High-dose oral UFTTM maintenance treatment might prolong the disease-free

survival and overall survival of patients with uterine cervical cancer, particularly of those with

advanced disease. UFTTM maintenance treatment should be evaluated by prospective randamized

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2. 発表論文リスト

本論文は学術雑誌に掲載された次の論文を基礎とするものである。

Isao Sakaguchi, Takeshi Motohara, Fumitaka Saito, Kiyomi Takaishi,

Yukitoshi Fukumatsu, Toshimitsu Tohya, Saburo Shibata, Hiroyuki Mimori,

Hironori Tashiro, and Hidetaka Katabuchi

High-dose oral tegafur-uracil maintenance therapy in patients with

uterine cervical cancer.

J Gynecol Oncol. 26, 193-200, 2015

その他の論文 5 編 5 冊

1. Sakaguchi I, Ohba T, Ikeda O, Yamashita Y, Katabuchi H.

Embolization for post-partum rupture of ovarian artery aneurysm: Case report and review.

J Obstet Gynaecol Res. 41, 623-7, 2015 2. Sakaguchi I, Tashiro H, Katabuchi H.

Current Approaches to Endometrial Cancer, Management of Uterin Sarcoma. Future Medicine, 126-139, 2013.

3. Tjhay F, Motohara T, Tayama S, Narantuya D, Fujimoto K, Guo J, Sakaguchi I, Honda R, Tashiro H, Katabuchi H.

CD44 variant 6 is correlated with peritoneal dissemination and poor prognosis in patients with advanced epithelial ovarian cancer.

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8

Cancer Sci. 106, 1421-8, 2015

4. 坂口 勲, 片渕秀隆.

子宮内膜症・子宮腺筋症-最近の話題-, 子宮腺筋症 子宮腺筋症の悪性化. HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY 19:363-367, 2012.

5. Motohara T, Tashiro H, Miyahara Y, Sakaguchi I, Ohtake H, Katabuchi H. Long-term oncological outcomes of ovarian serous carcinomas with psammoma bodies: a novel insight into the molecular pathogenesis of ovarian epithelial carcinoma.

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9

3. 謝辞

本研究を遂行するに当たり、数多くのご指導、ご鞭撻を賜りまし

た熊本大学大学院医学教育部博士課程医学専攻産科婦人科

学分野の片渕秀隆教授に深謝致します。さらに、熊本大学大学

院生命科学研究部産科婦人科学および熊本大学医学部附属

病院産科婦人科の皆様に感謝の意を捧げます。

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4. 略語一覧

HPV:human papillomavirus

5-FU:5-fluorouracil

FdUMP:fluorodeoxyuridine-5'-monophosphate

TS:thymidylate synthase

5-FUTP:5-fluorouridine triphosphate

DPD:dihydropyrimidine dehydrogenase

FBAL:fluoro-beta-alanine

FIGO:The International Federation of Gynecology and Obstetrics

NCICTC:National Cancer Institute Common Toxicity Criteria

DIF:dihydropyrimidine dehydrogenase inhibitory fluoropyrimidine

GBL:gamma-butyrolactone

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第 1 章 研究の背景と目的

1. 子宮頸癌

子宮頸癌は全世界で年間 53 万人の患者が新たに罹患し、年間死亡者数は 27.5 万 人 に 及 ぶ [1] 。 1983 年 に Harald zur Hausen, が 、 ヒ ト 乳 頭 腫 ウ イ ル ス ( Human Papillomavirus:HPV)の感染により子宮頸癌が発生することを報告し、30 年以上が経 過した[2,3]。現在、HPV の genotyping により約 130 種が同定されているが、特に HPV16 型および 18 型を含めたハイリスク HPV が性交渉により子宮頸部の移行帯の 粘膜上皮に持続感染することが子宮頸癌の発癌機構の契機となる。子宮頸部の基 底細胞層に HPV が持続感染すると E6 および E7 の初期遺伝子領域が増幅され、そ れぞれ癌抑制遺伝子の p53 および Rb の発現蛋白に結合しその機能を不活化し、発 癌に至ることが知られている。本邦での子宮頸癌の進行期分類は、0 期からⅣ期に 分類され、上皮内癌を 0 期、癌が子宮頸部に限局するものをⅠ期、癌が頸部を超え て広がっているが、骨盤壁または腟壁下 1/3 には達していないものをⅡ期、癌浸潤が 骨盤壁まで達しており腫瘍と骨盤壁に cancer free space がないもの、または腟壁浸 潤が下 1/3 に達するものをⅢ期、癌が小骨盤腔を越えて広がるか、膀胱や直腸に浸 潤があるものをⅣ期としている。 2. 子宮頸癌の治療 子宮頸癌の一次治療法として、手術療法が選択されることが多く、再発防止を目的と して、多くは放射線療法や同時化学放射線治療が行われてきた。本邦における子宮 頸癌治療ガイドライン 2011 年版では 0、ⅠA 期では子宮頸部円錐切除術にて診断を 確定し、ⅠB、Ⅱ期では手術療法、放射線治療単独あるいは同時化学放射線治療を 症例により選択することが示されている。さらにⅢ、ⅣA 期では同時化学放射線治療 を第一選択とし、ⅣB 期では全身化学療法またはベストサポーティブケアが推奨され

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13 3. 子宮頸癌に対する抗癌化学療法 子宮頸癌の全身化学療法は従来、補助的治療の域をでなかった。ⅠB、Ⅱ期の術後 追加治療として骨盤リンパ節転移陽性や子宮傍組織浸潤症例の再発ハイリスク群に 対して BOMP 療法(ブレオマイシン+オンコビン+マイトマイシン C+シスプラチン)、 POMP 療法(ベプロマイシン+オンコビン+マイトマイシン C+シスプラチン)およびブレ オマイシン+カルボプラチン療法が試みられたが、術後放射線治療と全身化学療法 の有意差を示すものではなかった[4-6]。また再発子宮頸癌に対する全身化学療法 ではシスプラチンに関する報告が最多で 20~30%の奏効率を示すことが知られている [7]。一方、再発子宮頸癌における 5-FU 単剤投与の報告もあり、奏効率は 4~9%とさ れている[8,9]。近年、子宮頸癌の予後不良例に対する全身療法としての補助化学療 法の有用性が再認識されつつあり、本邦においても経口 5-FU 製剤が子宮頸癌の維 持療法として投与されている現状がある。 4. テガフールウラシル(UFTTM) 5-FU はフッ化ピリミジン系の代謝拮抗剤でウラシルの 5 位水素原子がフッ素原子に 置換された構造をしている。5-FU はリン酸化されフッ化デオキシウリジン一リン酸

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14 (FdUMP)となり、還元型葉酸のもとでチミジル酸合成酵素(TS)と三元共有結合体を形 成し、DNA 合成を阻害し抗腫瘍効果を示すことが知られている。一方で 5-FU は代謝 され 5-フルオロウリジン三リン酸(5-FUTP)となり、RNA の中に取り込まれ RNA 合成 も阻害する。生体内に投与された 5-FU は異化代謝経路により約 85%が肝臓内のジヒ ドロピリミジン脱水素酵素(dihydropyrimidine dehydrogenase:DPD)により速やかに解 毒され、フルオロβアラニン(FBAL)となり、主に腎に排泄される。テガフールは肝臓の チトクローム P450 により緩徐に 5-FU に代謝される経口プロドラッグである[10-12]。 この緩徐な代謝経路によりテガフールは直接 5-FU を投与するよりも、生体内に長時 間、作用が持続する。 UFTTMはテガフールとウラシルを 1:4 の割合で配合した経口抗癌剤である。先述の如 く、5-FU は約 85%が DPD により速やかに代謝され抗腫瘍効果を発揮するのはわず かである。一方、UFTTMに配合されたウラシルには DPD 阻害作用があり、リン酸化経 路へ向かう 5-FU が増加し、抗腫瘍効果が増強される。さらに 5-FU の分解産物であ る FBAL には中枢系神経毒性や心毒性との関与が示唆されているが、結果的に UFTTM投与により FBAL 産生は抑制され副作用の軽減にもつながる可能性がある。 5. テガフールウラシル(UFTTM)の臨床的研究 術後の追加治療としての UFTTM投与による予後の改善は肺癌、胃癌、大腸癌、乳癌 などですでに多数の報告がある[13-19]。一方、子宮頸癌においては婦人科悪性腫 瘍研究機構(JGOG)が、Ⅰb-Ⅱb 期を対象に、術後経口 5-FU 投与群と非投与群のラ ンダム化比較試験を行った。その結果、手術療法+放射線治療を行いさらに骨盤リ ンパ節転移がない症例では、経口 5-FU 投与群で 5 年生存率が有意に良好であった [20]。しかし、この結果はサブグループ解析であり、以後同様な試験が行われていな い現状がある。さらにわれわれが渉猟する限りでは進行子宮頸癌における維持療法

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15 としての UFTTM投与に関する系統的な報告はない。 6. 研究の目的 現在までに予後不良な進行子宮頸癌における UFTTM投与の有用性を臨床的に検討 した報告はない。本研究の目的は、子宮頸癌一次治療後の維持化学療法としての UFTTM投与の予後改善効果について後方視的に検討することである。

(17)

16

第 2 章 対象と研究方法

1. 対象 1992 年 4 月より 1997 年 3 月までの 5 年間に熊本大学医学部附属病院と荒尾市民 病院、熊本赤十字病院、熊本労災病院、国立病院機構熊本医療センターで一次治療 を受けた子宮頸癌患者のうち、下記の条件を満たす症例を対象とした。一次治療後 に UFTTMによる維持化学療法を施行した UFTTM投与群は 162 例であり、1986 年 12 月より 1997 年 3 月までに同じ条件を満たす一次治療後、維持化学療法を施行して いない 147 例をコントロール群として両群間における予後について比較検討した(図 1)。 (1)対象患者の条件 1) 子宮頸癌Ⅰb-Ⅳ期(1988 年、FIGO)の初回治療例 2) 75 才以下の症例 3) 充分な肝・腎・骨髄機能を有する症例 ・総ビリルビン 1.5mg/dl 以下 ・AST、ALT 正常値の 2 倍以下 ・クレアチニン 2mg/dl 以下 ・BUN 30mg/dl 以下 ・白血球数 3,000/μl以上 ・血小板数 100,000/μl以上 4) 重篤な合併疾患がない症例 2. テガフールウラシル(UFTTM)の投与方法

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17 1次治療終了直後より維持化学療法として UFTTM 600mg/日を原則として 12 ヵ月間連 日経口投与した。 3. 検討項目 UFTTM投与による副作用について検討を行い、両群間における生存率、無病生存率 について比較検討した。 4. 解析方法 背景因子の偏りの検定には Mann–Whitney U test、生存率、無病率の算定には Kaplan-Meier 法を行い、さらに検定には Logrank test を用いた。

図 1

5. 倫理的背景

本研究は熊本大学大学院生命科学研究部等疫学・一般研究倫理員会の審査により 許可された研究である。

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18

第 3 章 研究結果

1. 症例の背景因子 症例の背景因子を表1に示した。両群間における背景因子の均一性について Mann– Whitney U test で検討した結果、患者背景のうち年齢、臨床進行期、組織診断、1次 治療、免疫療法の有無において両群間で偏りはみられなかった。症例の追跡期間は 一次治療後から 1-119 ヵ月の範囲であり、平均で 52 ヵ月であった。平均年齢は、 UFTTM投与群で 61.0±14.1 歳、コントロール群で 62.0±14.1 歳であり、進行期では両 群ともにⅠ期が約 4 割を占め、つづいてⅡおよびⅢ期がそれぞれ 25%であった。組織 型では扁平上皮癌が UFTTM投与群で 82%、コントロール群で 91%であったが、両群間 で統計学的な偏りはなかった。一次治療として、放射線治療単独は UFTTM投与群で 58 例(35.8%)、コントロール群で 65 例(44.2%)に施行され、さらに広汎子宮全摘出術お よび骨盤リンパ節郭清術の手術療法がそれぞれ 43 例(26.5%)、41 例(27.9%)であった。 術後に骨盤リンパ節転移、深部間質浸潤および子宮傍組織への浸潤が認められた 症例には放射線治療を追加し、UFTTM投与群では 26 例(16.0%)、コントロール群では 29 例(19.7%)に同治療を行った。

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2. テガフールウラシル(UFTTM)の投与状況

UFTTM投与群における平均投与日数は 217.2 日であり、90 日以上内服できた症例が

108 例(63.5%)であった。平均総投与量は 120.2g(1.0-544.0g)であった。

3. 副作用

薬剤の副作用は the National Cancer Institute Common Toxicity Criteria (NCICTC,

version2.0)を基に評価を行った。UFTTM投与群 162 例のうち 139 例(85.8%)に副作用調

査を行った。このうち 56 例(40.3%)に Grade 1 以上の副作用を伴っていたが、Grade3

を超える副作用は少なかった。表 2 に UFTTM内服後の副作用についてまとめた。嘔

気嘔吐が 17 例(12.2%)、食欲減退が 14 例(10.1%)、白血球減少症/好中球減少症が 8 例(5.8%)、血清トランスアミナーゼ上昇が 7 例(5.0%)、下痢が 7 例(5.0%)、さらに皮膚や

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20 爪の色素沈着が 5 例(3.6%)と続いた。本研究において Grade 4 を呈する有害事象は なかったが、8 例(5.8%)に非血液学的および 1 例(7.2%)に血液学的な Grade 3 の有害 事象を認めた。特に消化器症状の出現は頻度が高く、コントロール困難となる症例も あった。 4. 予後 表 3 に子宮頸癌症例における UFTTM投与による全生存率の予後解析を示し、さらに FIGO 分類、組織型および一次治療の内容による層別解析を行った。図 2 に Kaplan-Meier 法による生存曲線を示し、両群間の比較を Log-rank test にて行った。全生存

率は UFTTM投与群 73.8%、コントロール群 60.8%で UFTTM投与群がコントロール群に比

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21 UFTTM投与群 62.1%、コントロール群 34.9%であり、有意に UFTTM投与群で予後が良好 であった(p<0.05、表 3、図 3)。扁平上皮癌で UFTTM 群 74.1%、コントロール群 60.7%(p=0.062、表 3、図 4)、一次治療として放射線治療のみを行った症例では UFTTM 群 64.3%、コントロール群 48.7%(p=0.068、表 3、図 5)であり、放射線治療例および扁平 上皮癌例において予後が良好な傾向が認められた。

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一方、表 4 に両群間の無病生存率について検討し、図 6 に Kaplan-Meier 法による生

存曲線および Log-rank test の結果を示した。無病生存率は UFTTM投与群 68.5%、コ

ントロール群 59.8%で統計学的な有意差はなかったが、UFTTM投与群がコントロール

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の無病生存率は UFTTM投与群 62.5%、コントロール群 38.3%であり、有意に UFTTM

与群で予後が良好であった(p<0.05、表 4)。一方、扁平上皮癌症例および放射線治 療症例における無病生存率では両群間に統計学的な有意差を認めなかった。

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25 次に UFTTMの投与期間における検討を行った。投与期間が 90 日以上の内服が可能 であった症例と 90 日未満の症例に分けて、両群間における全生存率および無病生 存率について検討した。90 日以上投与群と 90 日未満投与群の全生存率はそれぞれ 81.4%、59.6%(p<0.01、表 5、図 7)と 90 日以上投与群で有意に良好であった。また 無病生存率の解析においても 90 日以上投与群と 90 日未満投与群の比較でそれぞ れ 81.4%、62.2%と有意に UFTTMを長期に投与した群で良好であった(p<0.01、表 6、 図 8)。層別解析ではⅣ期症例、扁平上皮癌症例および一次治療で放射線治療単独 症例において 90 日以上投与群の方が有意に全生存率および無病生存率が良好で あった(表 5、表 6)。

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28

第 4 章 考察

本研究は子宮頸癌症例における 600mg/日の UFTTM投与による治療効果を検討する ことを目的とした。今回、後方視的検討ではあるが 160 例を超える子宮頸癌症例を対 象とし UFTTM投与について有効性を検討した。本研究によりⅢ期症例や扁平上皮癌 症例および一次治療として放射線治療単独を選択した症例では UFTTM投与群におい て無病生存が良好である傾向がみられた。ただし、症例数が少ないことや前方視的 なランダム化試験ではないことにより、今回の検討のみでは統計学的に子宮頸癌症 例における UFTTMの有効性を完全に証明するには至らない。一方で本研究は後方視 的ではあるが、UFTTM投与群において有意に全生存率が良好であったことが示され た。このことは子宮頸癌症例における治療法の一つの手段として UFTTMが投与され る可能性を示唆している。

UFTTM は 5FU の 分 解 酵 素 で あ る DPD の 阻 害 作 用 を 有 し 、 DPD Inhibitory

Fluoropyrimidine(DIF)いうカテゴリーに分類される経口フッ化ピリミジン系薬剤である。 また UFTTMはテガフールとウラシルをモル比で 1:4 に配合することにより腫瘍内 5-FU 濃度を特異的に高め、かつ長時間持続させることにより、選択的抗腫瘍効果を発揮 する[10-12, 21]。また子宮頸癌ⅠB 期およびⅡ期の再発ハイリスク症例における術後 補助療法として全骨盤照射単独とシスプラチンおよび 5-FU による同時化学放射線療 法との比較を行ったところ、同時化学放射線療法群で全生存期間、無増悪生存期間 ともに有意に良好であったことが示された[22]。5-FU は放射線の増感作用を有するこ とが知られており、理論上は DNA 損傷の修復機構を阻害することで放射線治療の効 果を高めていると考えられる。今回の研究でも一次治療として放射線治療を選択した UFTTM投与群ではコントロール群に比べて予後が良好となる傾向があった。頭頸部癌 や肺非小細胞癌などの固形癌では UFTTMを用いた同時化学放射線療法が有効であ ったとの報告がある[23,24]。さらに直腸癌においては術前に UFTTMおよびロイコボリ

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ンを用いた同時化学放射線療法が効果的であることが知られている[25]。今回の検

討により子宮頸癌の放射線治療における UFTTMの持つ潜在的な増感効果が窺われ

た。

先述のごとく UFTTMの抗腫瘍効果は 5-FU の代謝に関わる TS や DPD の阻害による

DNA や RNA 合成阻害が中心となるが、近年、UFTTMと血管新生阻害との関係が新た

に注目されている[26-30]。UFTTMはテガフールとウラシルの合剤であり、テガフール は 5-FU とγ-ブチロラクトン(GBL)、γ-ヒドロキシ酪酸(GHB)に分解される。UFTTM 与後の子宮頸癌症例の検討により GBL が血管新生を阻害する作用を有することが 報告されている[31]。さらに肺非小細胞癌や乳癌の補助療法として UFTTMをそれぞれ 250mg/m2/日または 300-400mg/日を 2 年間という長期間連続で投与した結果、5 年 生存率が有意に改善したことが示された[6,11]。メトロノミックケモテラピーは抗癌剤を 低用量で休薬期間を設けずに長期間投与する化学療法で、重篤な有害事象の危険 性が低く、さらに血管新生の抑制効果がある。UFTTM投与もメトロノミックセラピーの概 念に結びつく薬剤の一つと言える。今回の検討でも UFTTMを 90 日以上内服した群で は 90 日未満の群に比べて全生存率および無病生存率において有意に良好であり、 子宮頸癌の補助療法としての UFTTM 投与の長期服用が予後改善につながる可能性 があることが示唆された。しかし、一方で今回の研究では UFTTM 600mg/日投与を基 本にしていたため消化器症状や骨髄抑制の副作用が続発した可能性がある。長期 服用のための良好なコンプライアンスを得るために、投与方法の検討が今後の課題 であると考えられる。現在、われわれは 300-400mg/日で 5 日連続投与後に 2 日間の 休薬期間を設ける投与方法を行い、副作用の出現に関して検討を重ねている。子宮 頸癌における補助療法としての UFTTM投与の有用性の確立には今後、大規模で前方 視的なランダム化試験が望まれる。

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第 5 章 結語

本研究により子宮頸癌の補助療法としてUFTTMの 600mg 連日経口服用が進行した 扁平上皮癌で一次治療として放射線治療を行った症例では予後を改善する可能性 が示唆された。長期服用のための良好なコンプライアンスを得るために、継続可能な 投与方法の検討が今後の課題の一つである。

(32)

31

第 6 章 参考文献

1. Ferlay J, Shin H, Bray F, Forman D, et al. GLOBOCAN 2008: cancer incidence and

mortality worldwide: Lyon, France: International Agency for Research on Cancer,

2008.

2. Dürst M, Gissmann L, Ikenberg H, zur Hausen H. A papillomavirus DNA from a

cervical carcinoma and its prevalence in cancer biopsy samples from different

geographic regions. Proc Natl Acad Sci U S A. 1983 ;80:3812-5.

3. Boshart M, Gissmann L, Ikenberg H, Kleinheinz A, Scheurlen W, zur Hausen H. A

new type of papillomavirus DNA, its presence in genital cancer biopsies and in cell

lines derived from cervical cancer. EMBO J. 1984;3:1151-7.

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参照

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