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Japanese Journal of Acute Care Surgery 2017; 7: 258~264 原著特集 1:Surgical Critical Care を要する感染症への対応 当院で手術を実施した壊死性軟部組織感染症例の検討 起炎菌で分類した特徴 1) 2) 1) 1) 下澤信彦

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(1)

当院で手術を実施した壊死性軟部組織感染症例の検討

─起炎菌で分類した特徴─

はじめに

壊 死 性 軟 部 組 織 感 染 症(necrotizing soft-tissue infection;NSTI)は,体表に近い部位の感染症でありな がら,早期の診断と適切な治療が行われなければ死に至る 疾患である。 NSTI のすべてが劇症の経過をたどるわけではない1)〜 4) が,この起炎菌のなかで A 群β溶血性レンサ球菌によ る 壊 死 性 筋 膜 炎 は Streptococcal toxic shock syndrome (STSS)と呼ばれる致死率の高い疾患を起こし得ることが 知られている。 STSS は劇症型溶血性レンサ球菌感染症として 1999 年 から感染症法に基づき全例届出義務を要する疾患とされた が,A 群以外の B 群,C 群,G 群による STSS 様病態の 報告が増加したのを鑑みて,2006 年からは A 群以外のβ 溶血を示すレンサ球菌による劇症型溶血性レンサ球菌感染

下澤 信彦

1)

,小林 哲士

2)

,津久田純平

1)

,尾崎 将之

1)

森澤健一郎

1)

,藤谷 茂樹

1)

,平  泰彦

1)

〔要旨〕【背景と目的】β溶血性レンサ球菌(溶連菌)による necrotizing soft-tissue infection (NSTI)は致死的な疾患である。 NSTI 症例を,起炎菌をβ溶連菌群(β群)とそれ以外の菌種(非β群)に分けて比較検討し,診断および治療に関する知 見を得る。 【方法】2016 年までの 3 年間に当院で手術を実施した NSTI 症例 22 例をβ群 11 例,非β群 11 例に分け,その臨床的特徴 を比較検討した。調査項目は年齢,性別,創培養結果,血液培養結果,発症から受診までの日数,受診から手術までの時間, リスクファクター,LRINEC score,ショックの有無,感染部位,菌侵入門戸の有無,CT 上ガス像の有無,転帰などとした。 【結果】有意差は LRINEC score,感染部位,CT での皮下ガス像で認めた。 【考察】CT でガス像がなく,四肢に発生したものはβ溶連菌による NSTI の可能性が高い。CT でガス像があり,体幹に発 生したものは非β溶連菌による NSTI の可能性が高い。どちらも時期を逸せず手術が望ましく,広域スペクトラムをもつ抗 菌薬の使用が適切である。 〔キーワード〕壊死性軟部組織感染症,β溶血性レンサ球菌 症もすべて届出の対象となった。 このようにβ溶血性レンサ球菌(以下,β溶連菌)は急 速に生命を奪う感染症の起炎菌となり得ることが認知され てきたが,β溶連菌による NSTI は,他の菌種によるそれ と,転帰を含め臨床的に異なる特徴をもつのだろうか。わ れわれが検索した限りでは,NSTI 症例の臨床的特徴をβ 溶連菌とそれ以外の菌種で比較した報告はなかった。 今回,われわれは当院で 2013 年 4 月から 2016 年 3 月ま での 3 年間に当院救命救急センターを受診し予定外手術を 実施した NSTI 症例を調査し,その起炎菌をβ溶連菌とそ れ以外の菌種に分けてその臨床的特徴を比較検討し,早期 診断および適切な治療に結びつけられる新たな知見を得る ことを目的とした。

対象と方法

2013 年 4 月から 2016 年 3 月までの 3 年間に当院救命救 急センターを受診した症例から,「蜂窩識炎」と「壊死性 筋膜炎」をキーワードに抽出した。そのなかから入院を要 した症例,予定外手術を実施した症例をさらに抽出した。 入院して予定外手術を実施した症例はすべて「壊死性筋 膜炎」と診断されており,3 年間で 22 例であった。これ らを対象とした。 所属:聖マリアンナ医科大学 救急医学1) 同 整形外科2) 著者連絡先:〒 216-8511 神奈川県川崎市宮前区菅生 2-16-1 聖 マリアンナ医科大学 救急医学 受付日:2017 年 5 月 16 日/採用日:2017 年 11 月 9 日

(2)

手術適応を記載する。皮膚面の観察で紫斑・水泡・皮膚 壊死・皮下からの膿の漏出が認められるもの,握雪感があ るもの,皮膚所見と比較し異常に高度な激痛があるものは NSTI を強く疑い手術の方針とした。所見がそこまで高度 でない症例での手術適応は,当院受診時に SIRS のクライ テリアを満たし,感染が疑われ,皮膚面からの観察で発赤・ 腫脹・圧痛・熱感を認める症例に対して皮膚異常所見の境 界部分にマーキングを行い,血液検査・CT の結果が出る までの 1 〜 3 時間という比較的短時間に病変の拡大を認め て画像所見でも軟部組織に炎症が疑われるかガス像が認め られる症例とした。また受診時に NSTI と診断できなくて も,入院中に所見の拡大を認め,血液検査データでは炎症 所見が高度で改善傾向に乏しく,CT で軟部組織に炎症が 疑われるかガス像が認められる症例ではその時点で手術適 応とした。 調査項目は年齢,性別,創培養結果,血液培養結果,当 院受診前の抗菌薬投与の有無,発症から当院受診までの日 数,受診から手術実施までの時間,免疫抑制のリスクファ クター(糖尿病,肝硬変,ステロイド・免疫抑制剤ユー ザー,悪性腫瘍),LRINEC(laboratory risk indicator for necrotizing fasciitis) score5) 註 )(Table 1), 当 院 受 診 時

ショックの有無,感染部位(四肢:体幹),菌侵入門戸(を 疑う皮膚損傷)の有無,CT での皮下ガス像の有無,転帰(生 存 / 死亡)とした。これらを創培養から検出された起炎菌 によりβ溶連菌群(以下,β群)とそれ以外の菌種群(以下, 非β群)に分け,2 群間で比較検討した。なお,レンサ球 菌には A 群,B 群,C 群,G 群以外にもβ溶血を示すも のはあるが,STSS を起こし得る臨床的に重要な菌という 観点から,A 群,B 群,C 群,G 群のみをβ群と分類した。 註: LRINEC score: CRP, WBC, Hb, Na, Cr, Glu の血液検査

結果を数値化して合計することにより壊死性筋膜炎と蜂窩 識炎を鑑別するための補助診断ツール。最大 13 点とし,6 点以上で壊死性筋膜炎疑い,8 点以上で壊死性筋膜炎の可 能性が非常に高いとされる。

統 計

β群と非β群の 2 群間で,年齢,発症から受診までの日 数,受診から手術までの時間,および LRINEC score を Mann-Whitney 検定により比較し,その他は Fischer の正 確検定法により比較した。有意水準をp< 0.05 とした。 この結果から両群の特徴の違いを検討し,診断および治 療に役立つと考えられる知見を考察した。 すべての統計処理には JMPⓇ Pro 12.2.0 を用いた。

結 果

3 年間で救急外来を受診し「蜂窩識炎」または「壊死性 筋膜炎」と病名がついた症例は 434 例,うち入院となった のは 97 例(22.4%),予定外手術を実施したのは 22 例(5.1%) であった。この 22 例の手術診断はすべて「壊死性筋膜炎」 であった。入院となり手術を実施しなかった症例は 75 例 あったが,そのうち壊死性筋膜炎と診断されたのは 2 例で あった。1 例は他院で敗血症性ショックによると思われる 心肺停止からの蘇生後に搬送され,翌日死亡(血液培養実 施せず,創培養陰性)。もう 1 例は寝たきりの高齢者で医 療機関受診を拒否した末に心肺停止直前の状態で家族より 救急要請された。病院到着時には血圧測定不能で侵襲的 処置を希望せず best supportive care の方針となり,同日

中に死亡した症例であった(血液培養,創培養でE. coli,

Enterococcus faecalisを検出)。

22 例の内訳は,β群 11 例,非β群 11 例であった。β 群症例 No. 11 の 1 例のみが下肢切断されているが,ほか はすべてデブリドマン手術が実施されていた。

症 例 の 詳 細 を Table 2 の Cases of β-hemolytic

streptococcus group(β群)と Table 3 の Cases of non β- hemolytic streptococcus group(非β群)に分けて示す。

Table 4 では比較した項目の検定結果としてp値を示し た。なお,LRINEC score は,手術までの時間経過が長時 間であった例では受診時と手術を決定した時点の 2 回分を 記載した。例数の後の括弧中にその群中(多くは 11 例) におけるパーセンテージを示した。 1)年 齢 Median[IQR]は,β群 56[44-71],非β群 73[59-86] であった。有意差は認めなかった(p= 0.09)(Table 4)。 2)性 別 男性がβ群で 8 例(72.7%),非β群で 6 例(54.5%)。 有意差は認めなかった(p= 0.659)(Table 4)。 3)創培養から推測された起炎菌

β群では group A streptococcus(以下,GAS)が 8 例 (72.7 %) を 占 め,group B streptococcus( 以 下,GBS)

が 2 例(18.2 %),group G streptococcus( 以 下,GGS) が 1 例(9.1%)であった。混合感染は 1 例の GBS 症例 Table 1  Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis

(3)

で認めたが,それ以外の 10 例(90.9%)は他の菌が創 培養で検出されず,単独感染と考えられた。非β群では Table 3 に示すようにグラム陽性球菌・グラム陰性桿菌な ど多彩な菌が検出された。MSSA が 5 例ともっとも多い が,うち 2 例は混合感染であった。11 例のうち単独感染 6 (54.5%):混合感染 5(45.5%)であり,単独感染 vs. 混合 感染に関するβ群との比較における有意差は認めなかった (p= 0.149)(Table 4)。 4)血液培養の陽性率(創と同じ菌が検出されたもの) β群 4 例(36.4%),非β群 4 例(40%)(1 例は検査なし) であり,有意差は認めなかった(p= 1.000)。前医で抗菌 薬を投与されている症例はどちらも 4 例ずつの合計 8 例認 め,当院で血液培養を実施した 6 例のうち MRSA が検出 された 1 例を除く 5 例では陰性であった。その他の 1 例は 血液培養未実施,別の 1 例は前医で実施した血液培養が陽 性であった(Table 省略)。 5)発症から受診までの日数 Median[IQR]は,β群 3[1-6],非β群 2[1-4]であり, 有意差は認めなかった(p= 0.89)。

Table 2 Cases with β- hemolytic streptococcus infection

On 〜 Hv: duration from onset to hospital visit (Days), Hv 〜 Op: duration from hospital visit to operation (Hours), RF: Risk fator, LRINEC: LRINEC(Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis)score,

Infec. Site: Site of infection, Entry site: Site of entry, Gas: subcutaneous Gas on CT, Ca:Cancer, D: days, h: hours, UL: Upper Limb, LL: Lower Limb

Table 3 Cases with non β- hemolytic streptococcus infection

On 〜 Hv: duration from onset to hospital visit(Days), Hv 〜 Op: duration from hospital visit to operation (Hours), RF: Risk fator, LRINEC: LRINEC(Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis)score, Infec. Site: Site of infection, Entry site: Site of entry, Gas: subcutaneous Gas on CT, Ca: Cancer, D: days, h: hours, UL: Upper Limb, LL: Lower Limb

(4)

6)病院受診から手術までに要した時間 ばらつきが大きく,とくにβ群では 4.5 時間以内に 6 例, 17 〜 57 時間に 5 例と二極化していた。Median[IQR]は, β群 4.5[3-36],非β群 4[3-5.5]で有意差は認めなかった(p = 0.36)(Table 4)。 7)リスクファクターの有無 β群では 5 例(45.5%)がリスクファクターあり(糖尿 病 3 名,肝硬変 1 名,悪性腫瘍 1 名),非β群では 7 名(63.6%) がリスクファクターあり(糖尿病 5 名。ステロイド使用の 3 名はいずれも関節リウマチで,うち 1 名は免疫抑制薬を 併用。糖尿病と関節リウマチを合併した症例が 1 名)で, 有意差を認めなかった(p= 0.670)(Table 4)。 8)LRINEC score 手術を決定した時点のデータで比較すると,median [IQR]は,β群 6[5-7],非β群 10[7.5-10]であり,有 意差を認めた(p< 0.01)(Table 4)。 9)来院時ショックを認めた症例 β群 3 例(27.3%),非β群 6 例(54.5%)であり,有意 差を認めなかった(p= 0.387)(Table 4)。 10)感染部位 全体で四肢が 14 例(上肢 4 例,下肢 10 例)であり,四 肢以外の体幹は頸部〜全胸部,鎖骨部,肩部,腋窩部, 側腹部,背部,殿部,会陰が 1 名ずつと多彩であった。 上肢はすべてβ群であり,しかも A 群溶連菌であった (Table 2)。四肢全体としてはβ群で 10 名(90.9%),非 β群で 4 名(36.3%)であり,有意差を認めた(p< 0.01) (Table 4)。 11)皮膚に侵入門戸と考えられる損傷が認められたもの β群で 3 例(27.3%),非β群で 6 例(54.5%)であった。 有意差を認めなかった(p= 0.387)(Table 4)。皮膚に明 らかな潰瘍を認めていたのはβ群 1 例(9.1%),非β群 5 例(45.4%)であり,これも有意差を認めなかった(p= 0.149)。 12)CT 検査におけるガス像の有無 CT 検査は全例に行われていた。全体で CT にて皮下に ガス像を認めたのは 11 例(50%)であった。β群では 2 例(18.2%),非β群では 9 例(81.8%)に認め,有意差を 認めた(p< 0.01)(Table 4)。β群でガス像を認めたう ちの 1 例は GBS と緑膿菌との混合感染であった(Table 2)。 13)転 帰 全体で生存が 20 例,死亡は 2 例であり死亡率は 9.1%で あった。生存例はβ群では 11 名全員(100%)で,非β群 では 9 名(81.8%)であり,有意差を認めなかった(p= 0.476)(Table 4)。死亡した 2 例はいずれも非β群に属し, 関節リウマチでステロイドを投与されており,うち 1 例は メトトレキサートも併用していた。両者ともに受診時に ショックを認め,LRINEC score は 10 と高く,術後数時 間で死亡した(Table 3)。劇症といえる経過であった。

考 察

結果をもとに,手術を要した NSTI 症例において主にβ 溶連菌と非β溶連菌との鑑別に役立つ項目につき考察し た。 す べ て の 項 目 の な か で, 手 術 に 踏 み 切 っ た と き の LRINEC score,感染部位(四肢 vs. 体幹),CT でのガス 像の有無の 3 項目に有意差を認めた。 年齢はβ群で低い傾向はあったが,有意差はなかった(p = 0.09)。またこれまでの報告でみられる,リスクファク ターが少ない(健常者にもみられる)6)〜 10),侵入門戸(と 考えられる皮膚損傷)が明らかでないことが多い11),とい

β: β- hemolytic streptococcus group, Non β: Non β- hemolytic streptococcus group, M-W test: Mann-Whitney test, F-E test: Fischer's exact test Table 4  Comparison between β- hemolytic streptococcus group

(5)

う項目に関しても有意差を認めなかった。 β群では手術を決定したときの LRINEC score が有意 に低値であった。LRINEC score は壊死性筋膜炎の鑑別に 迷った場合に臨床症状・画像所見に加えて考慮すると有用 であるとされる5)12)一方,低リスク群とされる 5 点以下の 壊死性筋膜炎症例も多く,死亡例も少なくないため除外に 用いるにも不十分という報告13)もみられる。われわれの 症例ではβ群では 4 例,非β群では 1 例が LRINEC score が 5 以下で手術していた。当院では,LRINEC score が低 値でも,NSTI を疑う場合には積極的に手術を実施する傾 向が認められた。 四肢の感染はβ群で有意に多かった。なかでも上肢への 感染 4 例はすべてβ溶連菌であった。自験例では四肢とく に上肢の感染ではβ溶連菌の可能性が非常に高かったとい える。大澤ら14)も,9 例の壊死性筋膜炎症例の報告で,β 群 4 例中 2 例(50%)が上肢の感染で,非β群で上肢の感 染は 5 例中 1 例(20%)であったことを報告している。た だ,3 例の上肢感染例のうち 2 例がβ群で 1 例が非β群で あったため,上肢感染であるからβ溶連菌であるといえる ほどの精度の高さはなかった。一方,下肢への感染は非β 群でも 4 例(β群では 6 例)に認めたため,β溶連菌が起 炎菌ではない可能性も考慮しなければならない。 今回検討した全症例のうち 11 例(50%)に CT でガス 像を認め,β群で有意に少なかった。報告では,CT にお ける皮下のガス像は 13 〜 29%にみられ1)6),NSTI に特異 度は高いが感度は低いとされている6)15)。またβ溶連菌に よる NSTI ではガス像は通常みられない16)17)とされており, われわれの結果(β群でガス像陽性 2 例:陰性 9 例)とほ ぼ合致していた。自験例のβ群でガス像陽性であった 2 例 のうち 1 例は,混合感染だったことが陽性の原因である可 能性がある。もう 1 例は,創培養では単独感染であった。 ガス像陽性の理由は不明であるが,培養で検出できないが 混合感染であった可能性,またはまれな,ガスを産生する 菌株であった可能性を考えた。 ガス像を認めれば NSTI の診断は容易であるが,CT を 撮影してもガス像を認めないことで NSTI を否定してし まっては意味がない。NSTI の可能性を考えて CT を撮影 する場合,ガス像を認めないときは NSTI を否定するより も,β溶連菌による NSTI を疑うべきであると考えた。 β溶連菌は単独感染が 10 例と比較的多かったが,われ われは GBS で緑膿菌との混合感染を 1 例認めた。また盛 山らは GAS の混合感染症例を報告している2)。こうした ことからβ溶連菌であることが強く疑われた場合にも培養 結果が出るまでは広域スペクトラムの抗菌薬の使用または 抗菌薬の併用を支持する文献は多い1)2)4)6)13)18)19)。培養検査 の結果が出るまでは広域抗菌薬の使用が推奨される。 非β群では受診から手術までの時間が極端に長い症例は なかったが,β群では 4.5 時間以内の手術が 6 例,17 時間 以上の長時間経過後に手術した症例が 5 例と二極化してい た。死亡例がなかったため手術までの時間と予後は一見無 関係にみえる。他施設の報告も含めて検討した。 わが国における複数症例の報告で,受診から手術までの 時間が記載されている報告例と自験例を比較した2)13)18)20) (Table 5)。Wong らは 24 時間以上の手術の遅れが死亡率 上昇に関与すると報告している21)ため,手術までの時間 を 24 時間以内と以降で分類した。一部の報告で菌種が異 なるため参考ではあるが,他施設では,24 時間以内に手 術をした割合が上昇するにつれて生存率も上昇していた。 一方,自施設のβ群では 24 時間以内に手術をした割合は 高くないが,生存率はもっとも高かった。自施設の非β群 では,全例が 24 時間以内に手術されており,生存率は 2 番目に高かった。 盛山らの報告ではわが国のβ溶連菌による NSTI の死亡 率は 25.8%と高値であった2)が,われわれはこの期間にβ 溶連菌による NSTI の死亡症例を経験しなかった。この理 由を考察した。 β溶連菌感染の経過の分類を劇症型,急性型,緩徐型と 提唱する報告がある1)3)。これを踏まえて考察すると,受 診から手術までに長時間を要した症例は,大きく分けて 2 通りあると考えられる。すなわち,①初診時に NSTI の所 Table 5 Reports of surgical outcomes of necrotizing soft-tissue infection

(6)

見があるが,何らかの理由で早期に手術ができなかったも の,②初診時に NSTI と断定できる所見がなかったが,そ の後の入院経過中に進行し,NSTI と判断したものである。 ①は劇症型・急性型・緩徐型すべての型が含まれるが,そ のなかで劇症型であれば手術時機を逸することにより予後 が左右されると考えられるため,手術が遅れた劇症型を含 む報告では,早期手術例のほうが予後良好という結果にな ると考えられる。一方,②は主に急性型または緩徐型であ り,受診から手術までの時間が長くても,手術時機を逸し さえしなければ予後は悪化しない可能性がある。多くの報 告で①と②は厳密に区別されていない。他施設からの報告 で 24 時間以内に手術した場合の生存率が 24 時間以降の手 術例よりも高いものと低いものがあることは,①②が混在 していることの現れと考える(Table 5)。 自験例ではβ群のうち 4 例は 24 時間以降の手術であっ たがいずれも生存している。これらの症例のタイプは②で あったと考えられ,少なくとも劇症型ではないと考えられ た。これが自験例のβ群で 24 時間以内の手術率が低いに もかかわらず生存率が良好な理由と考えた。 Table 5 では 4 つの報告で 24 時間以内の手術実施率が 高いほど生存率が高い傾向がみられたため,NSTI と判断 すれば遅滞なく手術することは重要と考える。しかし自験 例のβ群でみられたように,急性型・緩徐型と考えられる 症例では,受診から 24 時間を過ぎていても NSTI と判断 した時点で手術すれば救命可能であると考えられた。 一方,自験例の非β群でもみられるように,早期に手 術を実施しても救命できない症例は存在する。非β群の ショック例数,死亡数は自験例ではむしろβ群より多い傾 向があり,とくに免疫抑制状態では劇症の経過をとって死 亡する症例もみられた。 われわれの検討では,NSTI が疑われた場合に,CT で ガス像がなく,四肢とくに上肢に発生したものはβ溶連菌 による NSTI の可能性が高い。混合感染の可能性も低いな がらあるため,菌種が判明するまでは広域スペクトラムを もつ抗菌薬が適切であると考えられた。β溶連菌感染でも 劇症型でない症例も多く,初診時に NSTI と診断できなく ても,慎重な経過観察をし,NSTI と判断した時点で手術 に踏み切ることで救命できた症例がみられた。 上記に当てはまらない場合,すなわち CT でガス像を認 め,体幹に発生した NSTI は非β溶連菌による NSTI の可 能性が高い。ショックなどの重症例は少なくなく,とくに 免疫抑制状態であれば劇症の経過をとって死亡する場合も みられた。β群に比較して軽症ということはなく,時機を 逸しない手術が望ましいと考えた。この群も広域スペクト ラムをもつ抗菌薬が適切であると考えられた。

結 語

手術を実施した NSTI 症例をβ群と非β群に分けて比較 検討した結果,有意差を認めたのは,β群による NSTI は 四肢に多いこと,CT でガス像を認めない例が多いことで あり,ある程度菌種は推定できる可能性はある。われわれ の治療した NSTI 症例の死亡率は比較的低かった。劇症型 が少なかったことと時機を逸せず手術をした症例が多かっ たことが好成績の理由と考えた。NSTI は菌種が推定でき ても,培養結果が判明するまでは広域スペクトラムをもつ 抗菌薬の投与が必要と考えられた。 利益相反はない。 文献 1)山崎修,久山陽子,岩月啓氏,他:壊死性筋膜炎;起炎菌・ 進行度・予後の関係について.臨皮 2007;61:37-41. 2)盛山吉弘,荒木祐一,関谷芳明,他:β溶血性レンサ球 菌による壊死性筋膜炎 2011 年から 2015 年における自験 例 9 例と本邦報告例のまとめ.日皮会誌 2016;126:1929-1938.

3)Jarrett P, Rademaker M, Duffill M: The clinical spectrum of necrotizing fasciitis. A review of 15 cases. Aust N Z J Med 1997; 27: 29-34.

4)Giuliano A, Lewis F, Hadley K, et al: Bacteriology of necrotizing fasciitis. Am J Surg 1977; 134: 52-57.

5)Wong CH, Khin LW, Heng KS, et al: The LRINEC (Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis) score:

A tool for distinguishing necrotizing fasciitis from other soft tissue infections. Crit Care Med 2004; 32: 1535-1541.

6)Lancerotto L, Tocco I, Salmaso R, et al: Necrotizing fasciitis: Classification, diagnosis, and management. J Trauma Acute Care Surg 2012; 72: 560-566.

7)峯田一秀,庄野佳孝,橋本一郎,他:G 群連鎖球菌によ り toxic shock-like syndrome 様症状を呈した 1 例.形成外科 2008;51:1477-1481.

8)安河内由美,江崎由佳,千葉貴人,他:溶連菌性壊死性 筋膜炎の 4 例;試験切開の有用性.日皮会誌 2013;123: 1497-1503.

9)山根一和,川出尚史,木村文彦,他:Toxic shock like syndrome 症状を呈した G 群連鎖球菌による敗血症性ショッ クの 1 例.日臨救医誌 2002;5:319-323.

10)荒木正,板谷英毅,山本雅人,他:劇症型 C 群溶連菌感染 症による toxic shock-like syndrome(TSLS)の 1 例.内科 2009;103:798-802. 11)中村茂樹,柳原克紀,金子幸弘,他:リネゾリドが有効 で救命し得た劇症型 A 群β溶連菌感染症の 1 例 . 感染症誌  2004;78:446-450. 12)石川耕資,南本俊之,一村公人,他:壊死性筋膜炎と重症 蜂窩織炎の鑑別診断における LRINEC score の有用性の検 討.創傷 2014;5:22-26. 13)萩谷英大,黒江泰利,野島宏悦,他:当院における壊死 性軟部組織感染症の治療状況と今後の展望.津山中病医誌  2013;27:21-32. 14)大澤郁介,伊藤英人,天野貴文,他:壊死性筋膜炎の治療 法の検討.中部整形誌 2012; 55:169-170.

15)Anaya DA, Dellinger EP: Necrotizing soft-tissue infection: diagnosis and management. Clin Infect Dis 2007; 44: 705-710.

(7)

Classification of surgically treated necrotizing soft-tissue

infection in terms of causative bacteria at

a single university hospital

Nobuhiko Shimozawa

1)

, Tetsuo Kobayashi

2)

, Jumpei Tsukuda

1)

, Masayuki Ozaki

1)

,

Kenichirou Morisawa

1)

, Shigeki Fujitani

1)

, Yasuhiko Taira

1)

St. Marianna University School of Medicine, Department of Emergency and Critical Care Medicine1)

St. Marianna University School of Medicine, Department of Orthopaedic Surgery2)

Introduction:Necrotizing soft-tissue infections(NSTI)are life-threatening infections. We hypothesized that clinical

presentations of Beta-hemolytic streptococcus induced NSTI are different from those of NSTI caused by other microbes.

Methods:Twenty-two cases of NSTI were treated surgically during a period of 2013-2016 at our department. These

cases were divided into two groups in terms of causative agents; Beta-hemolytic streptococcus group(HS group) and non-HS group. Age, sex, wound culture, blood culture, days from symptom to hospital visit, time from hospital visit to operation, risk factors, LRINEC score, shock status, site of infection, site of entry, presence of subcutaneous gas on CT, outcome were investigated and each factor was compared between the two groups. Differences in groups were compared with Mann–Whitney U test and Fisher’s exact test.

Results:LRINEC score was significantly lower in HS group. In HS group, sites of infection tend to be in limbs. Rate

of subcutaneous gas was significantly lower in HS group.

Discussion:Site of infection and presence or absence of gas can be a clue to estimate the causative microbiological

organism in a patient with NSTI. Both HS and non-HS group need surgical treatment in appropriate timing and administration of broad-spectrum antibiotics in early stage.

KeyWords:necrotizing soft-tissue infection, beta-hemolytic streptococcus

16)Urschel JD: Necrotizing soft tissue infections. Postgrad Med J 1999; 75: 645-649.

17)Stevens DL, Aldape MJ, Bryant AE: Necrotizing fasciitis, gas gangrene, myositis and myonecrosis. In: Cohen J, Powderly WG, Opal SM, eds. Infectious Diseases. Fourth edition. Elsevier, 2017: 95-103e1.

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Table 4 では比較した項目の検定結果として p 値を示し た。なお,LRINEC score は,手術までの時間経過が長時 間であった例では受診時と手術を決定した時点の 2 回分を 記載した。例数の後の括弧中にその群中(多くは 11 例) におけるパーセンテージを示した。 1)年 齢 Median[IQR]は,β群 56[44-71],非β群 73[59-86] であった。有意差は認めなかった( p = 0.09)(Table 4)。 2)性 別 男性がβ群で 8 例(72.7%),非β群で 6 例(
Table 3 Cases with non β- hemolytic  streptococcus  infection

参照

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