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(1)

博士論文

     

   オフィスの総合的室内環境評価及び

建築と設備を融合した空調システムに関する研究

三浦 寿幸

     概   要

(2)

  

      

 本研究は、オフィスを対象に室内環境の総合的調査と評価を実施し、その結果を踏まえて快適性の向上と空調のあり方に ついて論じたものである。  調査は、5件のオフィスについて所定の時間帯における複数の環境要素の物理量と執務者の体感・心理量、及びその時 の快適性(快適∼不快)をほぼ同時に測定する方法で行った。 調査結果の分析により、実際の使用状態にあるオフィス空 間の温熱、空気質、音、光、空間に関する物理的環境と執務者の体感・心理量との関係を提示した。 次に、統計的手法 を用いて室内環境の快・不快感申告への影響因子を明らかにするとともに、室内環境の快適率及び不快率、快・不快感平 均申告値を定義し、それらを実測した物理量を説明要因として良好な決定係数で重回帰できることを示した。  以上の検討を通して、温熱環境が総合評価の不快側に影響を及ぼす因子となっていることが明らかとなり、その向上 を図る観点から、温熱環境調整を空調設備のみに依存するのではなく建物の断熱や建築構成部材である床、天井の熱 的な働きを積極的に生かすシステムを提案し、実験及び数値解析によりそれらの有用性を明らかにした。

Research on the general indoor environment evaluation and the air-conditioning system

combined with the architecture of an office building

Toshiyuki MIURA

*1

This paper deals with a general indoor environment evaluation and the concept of an air-conditioning

system which can improve the indoor comfort of an office building. Investigations were conducted at five

office buildings and the physical quantities, office worker's sensations of several indoor environment factors

and the general indoor comfort/discomfort sensations were measured at the same time approximately.

By the analysis of the obtained results, we acquired the correlation between the physical quantities and the

office worker's sensations related with thermal environment, indoor air quality, acoustic environment, lighting

and space environment in the actual condition in use. Next, the influential factors to the sensation of indoor

comfort/discomfort by the statistical method were made clear. Percentages of comfort ( comfort and slightly

comfort) , discomfort ( discomfort and slightly discomfort ) and average sensation level were defined. They

were each employed as objective variables of the multiple regression analysis and the measured physical

quantities were used as explanation variables. The analysis having enough decision coefficient was shown.

It became clear that the thermal environment had an influence on discomfort of the general indoor evaluation

through out the study.

From the viewpoint to improve the thermal environment, the systems which actively utilized the thermal

performance of building thermal insulation, the floor and ceiling without depending only on the

air-condition-ing device were proposed. Their effectiveness was shown by the experiment and the numerical analysis.

   三浦 寿幸

*1

*1  技術研究所

*1  Technical Reasearch Institute

  

オフィスの総合的室内環境評価及び建築と設備を融合した空調システムに関する研究

博士論文概要

(3)

1.はじめに     室内環境の側面から我が国のオフィスビルの変遷を 辿ってみると、1950 年以降に蛍光灯照明が普及し、1960 年代になってからは空調設備が急速に普及している。そ れ以前は窓を開放しての通風や直接暖房、光庭による自 然採光を基本とした室内環境調整が一般的であった。空 調設備や照明が普及した背景にはビルの大規模化と土地 利用効率の向上、平面計画の自由度の拡大といった要求 の他に、都市化の進展に伴って顕在化した自動車交通騒 音の問題がある。通風を期待して窓を開けたままではオ フィスの執務に支障をきたすといった理由から窓を閉鎖 し、空調や換気設備、照明によってビルの外とは切り離 された人工的な室内環境をつくりだす方向へと向かった。 オフィスビルの室内環境は、1970 年に成立した「建築 物の衛生的環境の確保に関する法律」(ビル管理法)に よって室温、相対湿度、気流速度、粉塵濃度、一酸化炭 素ガス濃度、二酸化炭素ガス濃度の定期的な測定と チェックが義務付けられた。この施行は、外部と切り離 された人工的なオフィスの室内環境について、執務者に 対する健康安全の側面からなされてきたものである。そ の後、1 9 8 0 年代の後半にオフィスのOA化やインテリ ジェント化が進展し、それとともに顕在化したテクノス トレスの問題も相まって、執務者の能力が最大限に発揮 できるような執務環境の充実と室内環境の快適化がオ フィスに求められるようになった。さらに、脱工業化や 情報化の流れの中で、ますますオフィスで働く人々が増 え、オフィスは単に労働するだけの場所から1日のおよ そ1/3、あるいはそれ以上の時間を長期にわたって過 ごす「生活の場」として認識されるようになった。 ビル管理法はオフィスの室内環境水準の維持に一定の 役割を果たしてきた。しかしながら、室内環境の快適性 の評価という側面では光環境や音環境に関しての物理量 は測定対象となっておらず、執務者が室内環境をどのよ うに感じ、受け止めているか、といった体感や心理的な 側面も扱っていない。オフィスの室内環境の快適性を評 価するためには、執務者の反応及び光や音も含めた環境 要因を総合的に扱うスタンスが必要であり、その評価結 果を建築計画や空調計画に生かすには快適性と環境諸要 因との関係を明らかにしておくことが望まれる。 また、室内環境を向上させるためには、その実現技術 が重要になる。温熱環境は室内環境の快・不快感へ大き な影響を与える因子であるが、建物を熱負荷算定対象の 単なる器として捉えるのではなく、空調設備と共に働く 環境調整器であるとする立場に立って建物と空調システ ムの関係を考えるべきである。室内を取り囲む床や天井 の壁面は、室内空気だけでなく執務者の体表面と熱授受 があり、執務者の温冷感に影響を及ぼしている。それ故、   オフィスワーカーの快適性 (総合評価) 室内環境 温熱環境 音環境 光環境 空気質 オフィスの「総合的室内環境評価」 オフィスの「建築と設備を融合した空調システム」 建 築 設 備 融 合 システム ( 空調 ) 図 1 . 1  オフィスの「総合的室内環境評価」と 「建築と設備を融合した空調システム」 建物自体の熱負荷を小さくしたうえで、床や天井の熱的 作用を最大限に生かす工夫が求められる。ここではこう した考えに立脚する空調システムを「建築と設備を融合 した空調システム」と呼ぶことにする。 本研究は上述の観点から、オフィスを対象とし、1)快 適性を室内環境構成要因の総合的、複合的指標とするオ フィスの室内環境評価、2)建築と設備を融合した空調 システム について実践的なアプローチから検討を行い、 今後の室内環境の評価や建築計画及び空調計画に寄与す る知見を得ることを目的とする。

  

オフィスの総合的室内環境評価及び建築と設備を融合した空調システムに関する研究

   三浦 寿幸

*1 *1  技術研究所  本論文は4章より構成され、各章の内容は以下の通りであ る。  第1章では、序論として本研究の背景と目的を述べ、 関連する既往研究を概説して本研究の位置付けを行った。  第2章では、本研究で用いる室内環境調査手法を検討 し、その方法に従って実施した5件のオフィスの総合的 室内環境調査結果を解析対象とした。室内の複数の環境 要素について執務者の体感・心理量と測定された物理量 との相関分析を行うとともに、「快適性」への影響因子を 数量化手法により検討し、快適側と中立及び不快側と中 立のそれぞれの判別要因分析結果について述べた。さらに、 室内環境の快適率及び不快率、快・不快感平均申告値を定義 し、それらを目的変数、測定した物理量を説明要因とする重 回帰分析結果について述べた。  第3章では、温熱環境が室内環境の快・不快感の影響 因子であるという第2章の結果を踏まえ、温熱環境を向 上させる手法について検討した。建築躯体を設備の一部 として利用する外断熱建築の空調方式の有用性を明らか にすることを目的とし、関東地方に建つ外断熱事務所建築を

(4)

対象に空調運転時間の長さや設定室温を変えて 躯体に夜間蓄熱を行い、室内環境とエネルギー 消費量を通常の運転方法の場合と比較した実験 結果について述べた。さらに、夜間躯体蓄熱時の 空調空気吹き出し方式と経路が室内環境及び負 荷特性に及ぼす影響を把握をするために行った 非定常室温・熱負荷変動解析の結果について述 べた。また、天井を設備の一部として利用する方 式の有用性を明らかにする目的で、システム天 井を利用した輻射併用型の空気熱媒天井輻射空 調の実験を行い、実際の事務室及び会議室に採 用して室内環境を実測、評価した結果について述 べた。以上の検討を踏まえ、こうしたシステムを 建築構成部位毎に分類し、「建築と設備を融合し た空調システム」として包括的に捉え、その特徴 を整理した。  第4章は総括であり、本研究で得られた検討 結果及び新たな知見をとりまとめた。さらに今 後の研究によって解決すべき課題を整理し、展 望を述べた。  以下、概要を述べる。 2. オフィスの総合的室内環境評価 2.1 調査概要 2.1.1 調査対象建物及び調査方法  調査対象とした建物の概要を表2.1に示す。 A∼Cビルの調査 は著者らが検討した方法を用いて POEM-O [1] の開発過程で予 備的に実施したものであり、D、Eビルの調査はその後開発され た POEM-O を参考にして新築ビルの入居後の室内環境性状を 確認するために実施したものである。 2.1.2  A∼Cビルの調査概要  A∼Cビルの調査は1989年の冬と夏に行った。調査時点でAビ ルは竣工後28年、Bビルは2年、Cビルは11年経過しており、所 在はA、Bビルが関東地方の東京、横浜であるのに対し、Cビルは 東北地方の仙台市である。アンケート対象者のプロフィールを 表2 . 1  調査対象建物の概要 表2 . 2  アンケート対象者のプロフィール 表2 . 3  物理量測定概要 図 2.1 体感アンケート調査実施日の測定タイムスケジュール        (A ∼ C ビル)   A  ビ ル   B  ビ ル   C  ビ ル   D ビ ル   E ビ ル  所 在 地  竣 工 年  構   造  階   数  延べ床面積  建築 面積   東京都 1961 年(1968 年増築)   SRC 地下4階、地上9階 30,790m2    2,542m2   横浜市 1987 年   SRC 地下2階、地上 18 階  43,224m2  1,730m2   仙台市 1978 年   SRC 地下2階、地上9階  11,323m2   1,130m2   神奈川県 1990 年    RC   地上 4 階   8,492m2  2,445m2   高知県   1997 年    SRC 地下1階、地上7階   8,624m2  2,329m2  調査対象階  調査対象者数  人当床面積  人当占有床面積  天 井 高    7 階   105 人  5.81m2/人  4.57m2/人   2.55m    15 階   140 人  6.65m2/人  4.67m2/人   2.50m    9 階   101 人  6.00m2/人  4.90m2/人   2.45m    4 階   118 人  11.4 m2/人   8.4 m2/人   2.70m 5階、 6階 35 人、 44 人 13.8m2/人,13.5m2/ 人 10.1m2/人, 9.8m2/ 人 2.65 m, 2.65m  執務内容   事  務   事務・設計   事務・設計    技術職  事務、 技術職  熱源設備 空調方式  換気回数 ボイラー、冷凍機 単一ダクト方式及び 二重ダクト方式   6.7回/h 空気熱源ヒートポンプ 各階ユニット方式 ファンコイルユニット   7.0回/h ボイラー、冷凍機 単一ダクト方式 ファンコイルユニット   7.0回/h ボイラー、冷凍機 床吹き出し空調 ファンコイルユニット   9.6回/h 空気熱源ヒートポンプ 床吹き出し空調 空気流通窓   9.6回/h  調査期間      冬季            夏季 1989年 1月25日∼31日 1989年 7月5日∼11日 1989年 2月9日∼14日 1989年 8月24日∼30日 1989年 2月22日∼28日 1989年 7月19日∼25日 1992年 2月20日∼26日 1991年 7月25日∼31日 1998年 2月16日∼20日 1998年 9月14日∼18日     測 定 ポ イ ン ト 数  連続測定     移動(分布)測定 Eビル 測定項目 測定機器等 A∼D ビル Eビル5F, 6F AビルBビル Cビル Dビル 5F 6F 備   考 熱 温度 湿度 放射 気流 PMV Cu-Co熱電対 静電容量式湿度計 グローブ球、B&K1213 熱線風速計 B&K1212 2 2 2 − 2 1 1 1 − 1 20 − 10 16 − 26 − 14 24 − 25 − 12 13 − 68 − 68 28 30 32 − 32 21 36 45 − 45 25 40 温度の1ポイント当たりの測定点数 分布5点( 床表面、床上 0.1, 0. 6, 1.1, 1.7m) 連続7点(上記+天井下 0.1m+天井 表面、吹き出し口温度) 放射の分布測定機器 A∼Cビル:B&K1213 D,Eビル:高速応答グローブ球 空 気 粉塵 CO2 CO デジタル粉塵計 炭酸ガス測定器 一酸化炭素ガス測定器 2 2 2 1 1 − 3/7 3/7 3/7 5/7 5/7 5/7 9 9 9 10 10 10 4 4 4 4 4 4 光散乱式、 冬/夏 赤外線式 定電位電解式 音 Leq,A 10 minute 積分騒音計 1 − 6 6 6 4 1 1 連続測定は∼Cビル)レベルレコーダー併用(A 光 照度 照度計 − − 44 76 135 39 42 42 机上面、日没後測定(A∼Cビル) 執務時間測定(D、Eビル) 連続測定はアンケート調査日を含めて5∼6日間実施。 連続測定時間間隔は、アンケート調査日が10分。その他は60分。(ただし音を除く) LAeq, 温熱環境   温度分布 A 温度分布 B 放射温度   気流速度 空気質   粉塵濃度   二酸化炭素濃度   一酸化炭素濃度   におい 音環境   等価騒音レベル 光環境   照度分布 アンケート調査   9   10   11  12   13  14   15  16  17  18 時 配布 回収 記入 日没後 建  物  Aビル  Bビル  Cビル  Dビル Eビル 5F/6F   回 答者数  83  100   96  103 31 / 40 性別  男性  女性 72.3%27.7% 74.7%25.3% 77.1%22.9% 95.1% 4.9% 90.3/95.0 9.7/ 5.0 年齢 10∼19才20∼29才 30∼39才 40∼49才 50才以上  0.0% 40.2% 19.6% 26.8% 13.4%  0.0% 23.2% 29.4% 33.3% 14.1%  0.0% 17.7% 28.1% 39.6% 14.6%  0.0% 41.6% 40.6% 16.8%  1.0% 0.0/ 2.5 25.8/27.5 48.4/30.0 6.5/27.5 19.4/12.5 たばこ 喫煙しない 1∼20本/日 20本以上/日 59.3% 29.6% 11.1% 57.1% 24.5% 14.1% 53.2% 20.8% 26.0% 平均clo値 冬季 (標準偏差)        夏季 0. 94 ( 0.21 ) 0. 71 ( 0.14 ) 0. 98 ( 0.25 ) 0. 66 (0.13) 1. 10 ( 0.18 ) 0. 70 (0.13) 0. 78 ( 0.14 )  0.60 ( 0.06 ) 0.81/0.79 0.63/0.60 執 務 室 内 禁     煙 同  左 表2.2 アンケート対象者のプロフィール

(5)

表2.2に示す。 A∼Cビルの女性の割合はいずれの建物でも25% 前後であり、年齢構成ではAビルの20才代が他に比べて多い。各 建物の喫煙習慣のある執務者の割合は、おおよそ40∼50%程度 である。また、冬のclo値は、仙台のCビルが他よりやや大きめ の傾向となっている。  物理量の測定概要を表2.3に示す。A∼Cビルの測定は、執務 空間の代表点2カ所で調査期間中の経時変化を記録する連続測 定と、アンケート記入時間帯に合わせて計器を持ち運びながら 測定する移動(分布)測定の2通りを併用した。A∼Cビルで用 いたアンケート票の概要を表2.4 に示す。アンケート票は執務 者の性別や年齢、喫煙習慣等、及び執務空間の広さに関する事 項等をたずねる基本事項アンケート票と着衣票、アンケート記 入時の体感や心理の状態をたずねる体感アンケート票を用意し た。体感アンケート票は主として温熱、空気質、音、光環境に 関連する設問及びこれらの複数の環境要素などと関連する室内 環境の総合的な快適性に関する設問で構成されている。調査日 数は各建物共、冬季・夏季それぞれ約1週間であり、体感アン ケートはそのうち2日間(1日3回)行った。さらに、物理量 との対応をみるため、指定した時間に記入してもらうように事 前にお願いをしておき、アンケート票の冒頭にもその旨を記し た。ただし、実際には執務中の在室者すべてが指定時間に記入 することは困難なため、指定時間15分前よりおよそ1時間以内 に記入されたものを有効とした。図2.1はA∼Cビルの体感アン ケート調査日における移動測定及びアンケート配布・回収の概 略のタイムスケジュールを示したものである。 2.1.3  D、E ビルの調査概要  D、E ビルの調査はそれぞれ竣工後1∼2年経過した1992 年、1998 年の冬と夏にPOEM-O 精密版を参考にして行った。所 在は、D ビルが神奈川県、E ビルが高知県である。E ビルは 5階と6階の2フロアを調査対象としており、各フロア毎 にデータを整理した。なお両ビル共、床吹き出し空調が採 用されている。A ∼C ビルとの比較では、D、E ビルは女性の 割合が少なく、執務者の着衣が冬季・夏季共に相対的に薄 着である(表2.2)。また、A ∼C ビルは喫煙が許されている のに対し、D、E ビルは禁煙となっている。物理量の測定方 法はA ∼C ビルの場合と基本的に同じだが、D、E ビルでは放 射温度の移動測定時間を短縮するために高速応答グローブ 球を用いて室温分布と同時に測定している点、照度測定を アンケート記入時間帯に行っている点などが異なる。体感 アンケートはA ∼D ビルで冬季、夏季それぞれ2日間行った のに対してE ビルでは各1日とし、1日の体感アンケート実 施回数はA ∼C ビルの3回に対してD、E ビルは2回とした。 D、E ビルの体感アンケート票の内容の基本的な考え方はA ∼ C ビルと同じだが、例えばA ∼C ビルの温冷感評定尺度が9 段階であるのに対し、D、E ビルでは7段階としているなど、 評定尺度上の違いは少しある。 2.2  室内環境要素の物理量と執務者のアンケート申告 との対応  アンケート回収数を表2.5、表 2.6 に示す。各アンケート調 査時間帯に測定した執務空間の物理量の平均値とアンケート申 告平均値を算出し、その相関を調べた。調査対象とした各建物の 所在地域が異なるため、執務者の温熱感などにも地域差が全く 表2 . 4  アンケート票の概要(A∼Cビル) 種 類 内 容( 質問数 ) 申 告 回 数 基本事項 回答者の属性(10)、OA 器機に関する事項(5) 執務空間の広さ(3)、室内環境の気になる点(フリー アンサー) 冬季、夏季 各1回 体 感 体調・勤務状態(2)、温熱環境(7)、空気質(5) 音環境(3)、光環境(3)、快適性に関する事項(5) 冬季、夏季 各6回 (3回/日×2日) 10 時、13 時 30 分、16 時 *着衣調査票は 10 時の体感アンケート票とともに配布・回収した。   体感アンケート回収数(回収率%) 季節 建 物 月/日 (曜日) 10:00 13:30 16:00  合 計 Aビル 1/27(金) 1/30(月) 79 (75.2) 76 (72.3) 75 (71.4) 70 (66.7) 58 (55.2) 50 (47.3) 212 (67.3) 196 (62.2) Bビル 2/10(金) 2/13(月) 89 (63.5) 89 (63.5) 92 (65.7) 88 (62.8) 72 (51.4) 72 (51.4) 253 (60.2) 249 (59.2) 冬季 Cビル 2/23(木) 2/27(月) 85 (84.2) 81 (80.1) 63 (62.3) 74 (73.3) 73 (72.2) 65 (64.3) 221 (72.3) 220 (72.3) Aビル 7/ 7(金) 7/10(月) 77 (68.8) 66 (58.8) 64 (57.1) 65 (58.0) 70 (62.5) 62 (55.4) 211 (62.8) 193 (57.4) Bビル 8/25(金) 8/28(月) 66 (47.1) 80 (57.1) 52 (37.1) 69 (49.3) 64 (45.7) 65 (46.4) 182 (43.3) 214 (51.0) 夏季 Cビル 7/21(金) 7/24(月) 79 (68.7) 73 (63.5) 72 (62.6) 71 (61.7) 67 (58.3) 78 (67.8) 218 (63.2) 222 (64.3) 表2.5 体感アンケート票の回収数(A∼Cビル)   体感アンケート回収数(回収率%) 季節 建 物 月/日 (曜日) 10:00 13:30 16:00  合 計 Aビル 1/27(金) 1/30(月) 79 (75.2) 76 (72.3) 75 (71.4) 70 (66.7) 58 (55.2) 50 (47.3) 212 (67.3) 196 (62.2) Bビル 2/10(金) 2/13(月) 89 (63.5) 89 (63.5) 92 (65.7) 88 (62.8) 72 (51.4) 72 (51.4) 253 (60.2) 249 (59.2) 冬季 Cビル 2/23(木) 2/27(月) 85 (84.2) 81 (80.1) 63 (62.3) 74 (73.3) 73 (72.2) 65 (64.3) 221 (72.3) 220 (72.3) Aビル 7/ 7(金) 7/10(月) 77 (68.8) 66 (58.8) 64 (57.1) 65 (58.0) 70 (62.5) 62 (55.4) 211 (62.8) 193 (57.4) Bビル 8/25(金) 8/28(月) 66 (47.1) 80 (57.1) 52 (37.1) 69 (49.3) 64 (45.7) 65 (46.4) 182 (43.3) 214 (51.0) 夏季 Cビル 7/21(金) 7/24(月) 79 (68.7) 73 (63.5) 72 (62.6) 71 (61.7) 67 (58.3) 78 (67.8) 218 (63.2) 222 (64.3) 表2.5 体感アンケート票の回収数(A∼Cビル) 図2.2 室内相対湿度と乾湿感平均申告との関係 注)縦軸( )内はD,Eビルの評定尺度、データ群の上下の直線は  「申告平均値±標準偏差」の回帰直線を示す 1 2 3 4 5 2 0 3 0 4 0 50 60 70 8 0 室内平均相対湿度(%) r r r r r     = 0.800= 0.800= 0.800= 0.800= 0.800 y y y y y = 0.029 = 0.029 = 0.029 = 0.029 = 0.029X+X+X+X+X+1.5631.5631.5631.5631.563 湿っている 少し(やや) 湿っている ふ つ う 少し(やや) 乾いている 乾いている (どちらでもない) ビル管理法 1 2 3 4 5 0 0.5 1 1.5 2 A∼Eビル夏季 A∼Eビル冬季 湿っている 少し(やや) 湿っている ふ つ う 少し(やや) 乾いている 乾いている (どちらでもない) 申告標準偏差 注)縦軸( )内はD,Eビルの評定尺度 図2.3 乾湿感申告平均値と標準偏差の関係 Aビル Bビル Cビル Dビル Eビル 冬季 夏季

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無いとはいえないが、本研究ではいずれも日中の大半を主とし てオフィスで執務する人を対象としていることから地域の異な る建物をまとめて分析する方針とした。 なお、 本論文では A∼ Cビルと D、 Eビルで用いた体感アンケートの質問項目及びその 評定尺度が同一またはほぼ同一とみなせると考えられるものを 中心に整理している。 2.2.1  温熱環境 2.2.1.1 相対湿度と乾湿感の関係 図2.2 に、代表点2カ所(連続測定点)の平均相対湿度と乾 湿感平均申告との関係を示す。評定尺度の関係から回帰直線は A∼Cビルのみのデータから求めたものを示しているが、D、Eビ ルを含めた回帰の結果もそれほど差はなかった。データ群の上 下の直線は「申告平均値±標準偏差」の値から回帰したもので ある。冬季の相対湿度は、A、C、Eビルで40%を下回っているが、 夏季はいずれの建物でもビル管理法(40%∼70%)の範囲内にあ る。相対湿度50%前後で乾湿感申告が「ふつう」、 40%以下では 相対的に乾いている側の申告となる傾向が確認できる。夏季の Cビルの乾湿感申告は他のビルより相対湿度が低めであったにも かかわらず「少し湿っている」側にシフトしている。この理由 は、坊垣による実験室実験の結果 [2] でも類似の傾向が示され ているが、 Cビルの室温が高めであった(図2.4)ことが影響し たものと考えられる。 図2.3に乾湿感申告平均値と標準偏差と の関係を示す。平均申告が「ふつう」前後で標準偏差は小さく なり、「乾いている」または「湿っている」側ほど大きくなって 申告がばらつく傾向が認められる。換言すれば、相対湿度に起 因する物理的刺激が小さい状態ではその感じ方の個人差が小さ く、刺激が大きくなるにつれて個人差も大きくなる傾向がある。 2.2.1.2 室温及びPMV と全身温冷感の関係 図2.4 に、A ∼C ビルの分布測定によって得られた平均室 温(床上1.1m)と全身温冷感平均申告との関係を示す。夏 季と冬季のデータの傾向が異なるのは執務者の着衣量などが影 響していると考えられるが、季節別に求めた回帰式の相関係数 は夏季の方が高い。これは夏季の方が各オフィス間の平均着衣 量(表2.2)の差が小さかったためと思われる。  図2.5 は、A ∼C ビルの代表点2カ所(連続測定点)で得 られた物理量と着衣の調査結果をもとに代謝量を1.2met と 仮定してそれぞれのPMV を算出し、その平均と全身温冷感平 均申告との関係を調べたものである。平均室温で整理した 図 2 . 4 と比較すると夏季と冬季のデータが1群となってお り、この代表点2カ所の平均PMV で夏季及び冬季の全身温冷 感平均申告を比較的良く説明できることがわかる。次に、室 温として分布測定で得られた平均室温(床上1.1m)を用い、MRT は代表点2カ所のMRTと室温の差の平均を平均室温に加算したも のを平均 MRTとみなして計算したPMVとの関係を図2.6 に示す (他の条件は代表点2カ所の平均値を用いた)。 これより、平均 室温を用いることで特に夏季の「少し涼しい」∼「少し暖かい」 の範囲のデータが直線にのる傾向となって相関係数も改善され、 室温等の分布の考慮が有効であると考えられた。また、これら の図では用いた日本語の9段階評定尺度とFangerの用いた尺度 との関係が示される結果を得ており、概ね日本語の尺度の中立 (「ふつう」)は英語のNeutralと、「暖かい」はSlightly warm と 注)各ビルの凡例は図−6∼7で共通 図2 . 4  平均室温と全身温冷感申告との関係( A ∼C ビル) 図2 . 5  代表点平均P M V と全身温冷感申告との関係( A ∼C ビル) 注)データ群の上下の直線は「申告平均値±標準偏差」の季節別回帰直線 を示す 図2.6 平均室温を用いたP M Vと全身温冷感申告との関係(A ∼Cビル) 注)デ ー タ 群 の 上 下 の 直 線 は 「 申告 平 均 値 ± 標 準 偏 差 」 の 季 節 別 回 帰 直 線 を示す 図2.7  平均温冷感申告と熱環境不快率の関係( A∼C ビル) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 2 2 2 3 2 4 2 5 2 6 2 7 2 8 2 9 暑   い 少 し 暑い 暖 か い 少し暖かい ふ つ う 少し涼しい 涼 し い 少 し 寒い 寒   い 平均室温(℃) Aビル Bビル Cビル 冬季 夏季    冬季 r = 0.849 y = 0.459X-5.455    夏季 r = 0.938 y = 0.696X-12.000 1 2 3 4 5 6 7 8 9 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5

Slightly Neutral Slightly cool warm 暑   い 少 し 暑い 暖 か い 少し暖かい ふ つ う 少し涼しい 涼 し い 少 し 寒い 寒   い 夏&冬  夏&冬 夏&冬  夏&冬  夏&冬 r = 0.901r = 0.901r = 0.901r = 0.901r = 0.901                         y = 1.881xy = 1.881xy = 1.881xy = 1.881xy = 1.881x+++++4.8984.8984.8984.8984.898 夏季 r = 0.901 y = 1.888X + 4.914 冬季 r = 0.872 y = 1.931X + 4.850 1 2 3 4 5 6 7 8 9 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5

Slightly Neutral Slightly cool warm 夏&冬 夏&冬 夏&冬 夏&冬 夏&冬 r = 0.930r = 0.930r = 0.930r = 0.930r = 0.930     yyyyy ===== 2.283x  2.283x2.283x+2.283x2.283x++++4.8124.8124.8124.8124.812 暑   い 少 し 暑い 暖 か い 少し暖かい ふ つ う 少し涼しい 涼 し い 少 し 寒い 寒   い    冬季 r = 0.867 y = 2.371x + 4.709              夏季夏季夏季夏季夏季 r = 0.942 y = 2.337x + 4.851 0 0 .1 0 .2 0 .3 0 .4 0 .5 0 .6 0 .7 0 .8 0 .9 1 熱 環 境 不 快 率 寒い 少し 涼しい  少し  ふつう  少し 暖かい 少し  暑い    寒い     涼しい    暖かい     暑い     Aビル Bビル Cビル 冬季 夏季

Slightly Neutral Slightly cool warm

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がそれぞれ対応している。 熱環境の快・不快感申告(快適、少し快適、ふつう、少し不 快、不快の5段階評価)における「少し不快」と「不快」の全 体に占める割合を熱環境不快率と定義し、A∼Cビルの熱環境不 快率と全身温冷感平均申告との関係を図2.7 に示す。用いた温 冷感評定尺度の”暖かい”、”涼しい”の持つ季節的な意味合いが 反映されたためか、データのばらつきはあるものの冬季は「少 し暖かい」前後で熱環境不快率がやや小さくなる傾向がみられ る。しかし建物別にみると調査時点での築年数の浅い建物の方 が熱環境不快率が小さくなるようでもあり、用いた尺度の季節 的な傾向は必ずしも明確とはいえない。ただし、図2.5、2.6で は夏のデータが中立から暑い側でS字型に分布する傾向がみら れる。これは”暖かい”という言葉が夏にあまり使われないこ とが反映されたと考えられるが、このような季節的な影響を避 けるには久野 [3] が指摘するように寒暑・涼暖が混在する尺度 ではなくそれらを区別した尺度の適用を検討する必要がある。  図2.8に7段階の温冷感評定尺度を用いたD、Eビルの平均室温 (床上0.6m)と全身温冷感平均申告との関係を示す。冬と夏の傾 向の違いは主に着衣量などの差によるものと考えられる。図2.9 に着衣量の調査結果と分布測定によって得られた室温、MRT、気 流速度の各平均値及び代表点での平均相対湿度を用いて計算し たPMVと全身温冷感平均申告との関係を示す。これより、夏季の 回帰式は冬季のそれに比べて同じ平均申告でも相対的にPMVが大 きめに評価される傾向にあることがわかる。この理由のひとつ にPMVの計算に用いた気流速度が挙げられ、その体感効果が過小 評価されているのではないかと思われる。すなわち、これらの 建物の空調は床吹き出し方式による風量制御を行っていること から夏と冬とでは負荷(冷房)の大きな夏の方が相対的に気流 の影響が大きく、夏は薄着となることもあってより気流を感じ やすい状態にあると考えられる。さらに、採用されている床吹 出口は空調空気の吹き出し方向を執務者が自由に変えられるこ とから吹き出し気流の影響が執務者に及んでいる可能性がある が、吹出し気流の直接的な影響を避けて測定を行う方針とした ため、実測値が執務者の体感と結びつく実際の値よりも小さ かったと考えられる。 2.2.2  空気質 2.2.2.1 粉塵濃度及び二酸化炭酸濃度と空気の汚れ感 の関係 粉塵濃度と空気の汚れ感との関係を図2.10、二酸化炭酸 濃度と空気の汚れ感との関係を図2.11 に示す。横軸の粉塵 濃度と二酸化炭素濃度は分布測定で得られたデータの平均 値である。まず図2.10 より、D、E ビルの粉塵濃度が小さい ことがわかるが、これは執務空間が禁煙であるためである。 これらの禁煙となっている室内では空気の汚れを「感じな い」側に評価されているのに対し、喫煙が許されているA ∼ C ビルでは粉塵濃度がビル管理法基準値(0.15mg/m3以下)を 満足しているものの、相対的に「少し感じる」側に評価さ れている。全体的にはこれら2つのグループにデータが層 別されるが、 A∼Cビルだけに着目するとオフィス毎に異なった 傾向を示しており、粉塵濃度との明確な相関は認められない。こ れらのオフィスは建物の新しさや内装の汚れの程度が異なって おり、竣工年の古い建物の方が空気の汚れを「感じる」側に評 注)データ群の上下の直線は「申告平均値±標準偏差」の季節別回帰直線を示す 価される傾向にある。これに対し、二酸化炭酸濃度は空気の汚 れ感と間に明確な関係がないことが図2.11より確認できる。ま た、冬と夏の対比という観点からみると、特に粉塵濃度との関 係において全体的に冬の方が汚れを感じる側に評価される傾向 にある。  図2.12に喫煙が許されているA∼Cビルの相対湿度と空気の 汚れ感との関係を示す。相対湿度が低い建物の方が空気の汚れ を感じる側に評価される傾向となっており、空気の汚れ感は粉 塵濃度や二酸化炭酸濃度よりも相対湿度の影響が大きいといえ る。また、図2.10の冬と夏の違いも相対湿度が影響していると 考えられる。図2.12のA、Cビルの冬のデータにばらつきがみ られるが、特にAビルは全体の回帰直線と異なる傾きとなって おり、これは室温の影響と考えられる。A∼Cビルの空気汚れ 感と室温との相関は夏は小さいが冬は比較的高く(r=0.67)、 室温が高いほど汚れを感じる傾向であった。 2.2.2.2 粉塵濃度及び二酸化炭酸濃度とにおいの感じ の関係 粉塵濃度とにおいの感じとの関係を図2.13、二酸化炭酸濃度 とにおいの感じとの関係を図2.14に示す。全体的に、空気の汚 れに比べてにおいは相対的に「感じない」側にシフトしており、 オフィス間の差も小さなものとなっている。粉塵濃度の小さな D、Eビルは、A∼Cビルに比べてにおいを感じる割合が少ない傾 向となっているのに対し、二酸化炭酸濃度との関係では明確な 傾向が認められない。においの元についてもアンケートで調査 しており、A∼Cビルでは回答者のほとんどがたばこのにおいと 答えている。冬と夏の対比では、空気の汚れ感の場合と同様で 1 2 3 4 5 6 7 2 2 2 3 2 4 2 5 2 6 2 7 2 8 2 9 Dビル Eビル 冬季 夏季 暑   い 暖 か い やや暖かい どちらでもない やや涼しい 涼 し い 寒   い  平均室温(℃)    冬季 r = 0.926 y = 0.669x - 11.794    夏季 r = 0.610 y = 0.340x - 5.655  図2.8 平均室温と全身温冷感申告との関係             ((((( D、Eビル) 1 2 3 4 5 6 7 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5

Slightly Neutral Slightly cool warm 暑   い 暖 か い やや暖かい どちらでもない やや涼しい 涼 し い 寒   い    夏季 r= 0.682 y= 1.666x + 3.383    冬季 r = 0.818 y = 2.234x + 3.635 図2.9 平均室温を用いたPMVと全身温冷感申告との関係           (((((D、Eビル)

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特に粉塵濃度との関係において全体的に冬の方がにおいを感じる側にシ フトしている。  図2.15に喫煙が許されているA∼Cビルの相対湿度とにおいの感じと の関係を示す。空気の汚れ感の場合と同様に相関が認められ、相対湿度 の低い建物の方がにおいを感じる側に評価される傾向にある。この相対 湿度の影響については、木村ら [4] が大学の教室で行なった臭気感覚に 関する実測の結果と同様の傾向である。実使用状態でのオフィスで相対 湿度と臭気強度の関係を調べた他のデータはほとんど見当たらないが、A ∼Cビルの執務者によるにおい感の申告は、粉塵濃度や二酸化炭酸濃度 よりも相対湿度や建物の新しさの違い、冬と夏の季節差などの影響が大 きいと考えられる。 2.2.3 音環境  図2.16に、各オフィスの代表測定点における騒音周波数特性を示 す。図中のデータの測定時刻はいずれのオフィスも午前10 時前後 のものであり、この時間帯の測定結果は1日の平均的な値に近かっ た。等価騒音レベル(以降、LAeq,10min)の値は A ビルが最も大き く、以下 C、B、D、E ビルの順となっている。いずれのオフィスで も、話し声や電話の呼び出し音、歩行音、ドアの開閉音などが主た る騒音源であった。  室内のLAeq,10minと「しずか−うるさい」平均申告との関係を図 2.17に示す。回帰式の相関係数は夏冬共に0.85以上であるが、そ の傾きは冬の方が大きくなっており、騒音に対する人体側の感度が 冬は高く、夏は鈍いという見方ができる。この理由として執務者 のオフィス以外での騒音暴露量の季節差が挙げられるが、これに 類似した傾向が堀江ら[5] の実験室で行われた被験者実験結果にも 示されている。また、回帰式によるしずかな側とうるさい側の分岐 点は冬がおよそ55.6dB、夏が57.0dBとなっている。「気にならない −気になる」に関する平均申告との関係を図2.18に示す。「しずか −うるさい」の場合と比較すると冬と夏の回帰式の傾きの関係は同 様であるがy切片に違いがみられる。このことは多少うるさい側に 評価されても気にならない側に評価される範囲が存在することを示 している。また、60dB以上のデータは少ないが回帰式による気にな る側と気にならない側の分岐点は冬がおよそ58.3dB、夏が61.4dB前 後である。図 2.19 に「しずか−うるさい」の申告平均値と標準偏 差との関係を示す。申告のばらつきは、うるさい側よりもしずかな 側で相対的に大きくなる傾向が認められる。これは室内騒音の場合 には物理的刺激の少ない側で感じ方の個人差が大きくなるためと考 えられる。 30 40 50 60 70 63 1 2 5 2 50 50 0 1 0 00 2 00 0 40 0 0 dB 中 心 周 波 数 (Hz) 音   圧   レ   ベ   ル   ( dB ) Aビル Bビル Cビル Dビル Eビル 冬季 夏季 図2.16 室内騒音周波数特性 等価騒音レベル(dB) 1 2 3 0 0.05 0.1 0.15 図2.10 粉塵濃度と空気の汚れ感との関係 感 じ る 少し(やや) 感 じ る 感 じ な  い 粉塵濃度(mg/m3  注)図−11∼12 縦軸( )内はD,Eビルの評定尺度 Aビル Bビル Cビル Dビル Eビル 冬季 夏季 図2.11 CO2濃度と空気の汚れ感との関係 1 2 3 5 0 0 60 0 7 00 80 0 9 00 10 0 0 11 00 12 00 CO2濃度(PPM) 感 じ る 少し(やや) 感 じ る 1 2 3 20 30 40 50 60 70 感 じ る 少 し 感 じ る 感 じ な  い 相対湿度(%) r = 0.711 y =-0.023x + 2.70 図2.12 相対湿度と空気の汚れ感との関係 Aビル Bビル Cビル 冬季 夏季 1 2 3 0 0.05 0.1 0.15 図2.13 粉塵濃度とにおいの感じとの関係 感 じ る 少し(やや) 感 じ る 感 じ な  い 粉塵濃度(mg/m3    注)図−14∼15 縦軸( )内はD,Eビルの評定尺度 㧭ࡆ࡞ 㧮ࡆ࡞ 㧯ࡆ࡞ 㧰ࡆ࡞ 㧱ࡆ࡞ ౻ቄ ᄐቄ 1 2 3 500 600 700 800 900 1000 1100 1200 図2.14 CO2濃度とにおいの感じとの関係 感 じ る 少し(やや) 感 じ る 感 じ な  い CO2濃度(PPM) 1 2 3 20 30 40 50 60 70 図2.15 相対湿度とにおいの感じとの関係 感 じ る 少 し 感 じ る 感 じ な  い r = 0.684 y =-0.011x + 1.992 相対湿度(%) 㧭ࡆ࡞ 㧮ࡆ࡞ 㧯ࡆ࡞ ౻ቄ ᄐቄ

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等価騒音レベル(dB ) 2.2.4 光環境  図2.20にD、Eビルの平均机上面照度と室内の明るさ感との 関係を示す。平均机上面照度の値はおよそ800∼1700lxに分布し ているが、明るさ感の平均申告はそれほど変わっていないこと がわかる。オフィス空間における机上面照度と執務者の心理量 を詳細に調べて公表している例は少ないが、山田ら [6] による 調査ではおよそ400lx∼2000lxの照度範囲で心理量との明確な 関係は得られなかったと報告されている。 2.2.5 空間(執務空間の広さ)  人当床面積、人当占有床面積と執務空間の広さの感じ及び広さ の満足度との関係を図2.21、2.22に示す。参考として人当床面 積の回帰式を図中に示す。人当床面積とは、壁や間仕切り壁で明 確に区画された会議室や集中OA室などを除外した執務室面積を 在籍者数で除した面積で、人当占有床面積とは先の執務面積から 執務空間と比較的一体になった打ち合わせコーナーやOAコー ナー、低い収納で部分的に区画された主要通路等を除外した面積 を在籍者数で除して算定した面積である。両面積とも心理量との 相関が認められるが、人当床面積6∼7m2/人前後のA∼Cビルは 「やや狭い」、「やや不満」の評価となっているのに対し、13m2/人 を超えるEビルでは「やや広い」、「やや満足」以上の評価を得て いる。7∼11m2/人の空間のデータがないが、回帰式からみて平均 的に不満のなくなる人当床面積はおおよそ9∼10m2/人前後と推察 される。 図2 . 1 9  「しずか−うるさい」の申告平均値と標準偏差との関係 図2.18 LAeq,10minと「気にならない−気になる」との関係 注)データ群の上下の直線は「申告平均値±標準偏差」の季節別回帰直線を示す 図2.17 LAeq,10min と「しずか−うるさい」との関係 注)データ群の上下の直線は「申告平均値±標準偏差」の季節別回帰直線を示す 2.3 快適性に寄与する要因の分析とその重回帰予測 2.3.1 分析方法  体感アンケート票における快適性についての質問は表2.7の ようにし、アンケート記入時の室内環境について快適∼不快を 5段階で申告させた。 室内環境は、その捉え方として温湿度、 1 2 3 4 5 45 50 55 60 65 等価騒音レベル(dB ) う る さ い ややうるさい ふ   つ   う や や し ず か し ず か    冬季 r = 0.885 y = 0.111x - 3.167    夏季 r = 0.851 y = 0.056x - 0.202 Aビル Bビル Cビル Dビル Eビル 冬季 夏季 1 2 3 4 5 0 0.5 1 1.5 2   夏 季   冬 季 う る さ い ややうるさい ふ   つ   う や や し ず か し ず か 申告標準偏差 1 2 3 4 5 45 50 55 60 65 気 に な る や   や 気 に な る ふ   つ   う あ ま り 気にならない 気にならない    冬季 r = 0.851 y = 0.115x - 3.699     夏季 r = 0.862 y = 0.071x - 1.348 1 2 3 4 5 6 7 500 750 1000 1250 1500 1750 室内机上面高さ平均照度(lx) 非 常 に 暗 い か な り 暗 い や や 暗 い どちらとも  いえない やや明るい かなり明るい 非常に明るい 図2.20 平均机上面照度と室内の明るさ感との関係 Dビル Eビル 冬季 夏季 図2.22 各床面積と執務空間の広さの満足度との関係 1 2 3 4 5 0 5 10 15 20 満    満 や や 満足 ふ つ う や や 不満 不   満   人当床面積 人当占有床面積 r = 0.989 y = 0.316x + 0.108 (m2/人) 図2.21 各床面積と執務空間の広さの感じとの関係 1 2 3 4 5 0 5 10 15 20 広    い や や 広い ふ つ う や や 狭い 狭    い (m2/人) r = 0.994 y = 0.309x + 0.131 人当床面積 人当占有床面積 㧭ࡆ࡞ 㧮ࡆ࡞ 㧯ࡆ࡞ 㧰ࡆ࡞ 㧱ࡆ࡞ ੱᒰභ᦭ᐥ㕙Ⓧ ੱ ᒰ ᐥ 㕙 Ⓧ

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空気の清浄さ、音のうるささ、明るさなどの状態との説明を付 記し、それらの総合的な感じとして快適性を評価させた。すな わち室内の複数の環境要因について、快適性を尺度とした総合 的・複合的な評価を求めた。  本論文で用いた快適性の評価尺度は中立のカテゴリーを含む 両側尺度である。堀江・松原ら [7] の研究では快適側を含まな い片側尺度を用いており、その理由は「快」は過渡的なもので あるのに対して「不快」は持続的で安定した状態であるためと している。また、久野ら [8] 、坊垣ら [9] は、「快適」という 言葉には「快(pleasantness)」と「適(neutral)」、つまり積 極的な快適と消極的な快適の2つの側面があると述べている。 室内環境の時間的変化の少ない通常のオフィス空間において過 渡的で個人差が大きいといわれる「快(pleasantness)」の状態 が存在するのかどうか、存在するとしても積極的な快適と消極 的な快適の区別をどうするかといった問題があるが、ここでは このような「快適」の解釈をアンケートを回答する執務者に委 ね、執務者が捉える快適性をそのままに評価しようとした。  分析の方針として、まず執務者個々の申告に基づき、快適性 と関連の強い室内環境要因が何であるかを検討する。次に、数 量化Ⅱ類により快適性を外的基準、関連が強いと考えられた個 別の環境因子についての申告を説明要因とする分析を行い、相 関比やカテゴリー数量の傾向をもとにそれらの要因で快適性を どの程度説明できているか、そして中立と快適側及び不快側と のそれぞれの判別に寄与する環境要因は何かについて比較検討 する。続いて、快適性と各環境要因の物理量との関係を調べる。 それには個々人の申告とその感度に対応する詳細な物理量との 関係を扱うのが望ましいが、こうした規模の調査では執務空間 全体の快適性の度合いとアンケート記入時間帯に測定可能な物 理量との関係として捉える方が実際的であると考えられる。そ こで、各調査回毎の各物理量測定値を説明変数、それに対応す る快適性(快適率、不快率、申告平均値として扱う)を目的変 数とした重回帰分析を行い、執務空間の快適性の度合いを測定 物理量でどの程度説明できるか、そしてどの物理要因の影響が 大きいかを検討する。  調査は冬と夏に曜日や時刻を変えて各建物で複数回実施 しているが、建物相互の比較を容易にするため建物毎に全 データをまとめて整理し、図2.23、2.24にアンケート調査 による快適性申告の平均値及び標準偏差を、図2 . 2 5 にアン ケート調査に関連して測定された物理データの平均値及び 標準偏差を示す。物理データで、D、Eビルの粉塵濃度が 他のビルよりも小さいのは室内が禁煙であるためである。 また、A∼Cビルの机上面照度はアンケート記入時間帯に 分布測定を行っていないため、日没後に測定した分布デー タの平均値を参考に示している。    2.3.2  執務者個々の申告に基づく快適性と各環境要 因との関係  調査に用いたアンケートアイテムのカテゴリーの制約か ら、本節ではA∼CビルとD、Eビルとを分けて扱う。 2.3.2.1 A∼Cビル (1)クラメールの関連係数による影響要因の検討  アンケートの質問項目や執務者の属性等から、快適性と 関係があると考えられる要因を抽出し、そのアイテムとカテゴ リーをA∼Cビルについて表2.8に示す。アイテム ①∼④は快適 性についてのアンケート票の質問文によって執務者の注意が向 いていると思われるが、それ以外に「室内の広さ感」や「体 調」、「性別」なども加えて検討した。なお、分析に際しては 1カ所でも未記入項目のあるアンケート票は除外した。  A∼Cビル全体のデータのクロス表をもとに、表2.8のアイ テムの相互及びそれらと快適性との関係をクラメールの関連係 数で整理し、結果を表2.9、表 2.10に示す。分析に用いたサン プル数は、冬季 1,115、夏季 1,002である。クラメールの関連 係数 r は次式で与えられる。      ここで χ2:カイ自乗、 n:サンプル数、      k :2つのアイテムのうち、小さい方のカテゴリー数  これより快適性との関連が相対的に強い要因として、 冬季では「騒音の感じ」、「においの感じ」、「建物(の違 い)」が挙げられ、夏季では「においの感じ」、「全身温冷 感」が挙げられる。それに続く要因として両季節共に「明 るさ感」や「体調」が挙げられており、室内環境の物理 因子に関連する要因だけでなく体の調子の違いが快適性 の評価に影響していることも確認できる。「においの感じ」に 「執務をするうえで、現在の室内環境(温湿度、空気の清浄さ、音のうるささ、明 るさのなどの状態)は、総合的な感じとしてあなたにとっていかがですか?」   1.快適 2.少し快適 3.ふ つ う   4.少し不快 5.不快   1.快適 2.やや快適 3.どちらでもない 4.やや不快 5.不快        上段:A ∼ C ビル、 下段:D、E ビル 表2.7 アンケート票の快適性の質問 1 2 3 4 5 快適    少し快適       ふつう     少し不快     不快       (やや)      (どちらでもない) (やや) Aビル Bビル Cビル Dビル Eビル 申告平均値 標準偏差  図2.23 冬季の快適性申告の各ビル毎平均値及び標準偏差 ( )内はD、Eビルの尺度 1 2 3 4 5 快適    少し快適       ふつう     少し不快     不快       (やや)       (どちらでもない) (やや) Aビル Bビル Cビル Dビル Eビル 図2.24 夏季の快適性申告の各ビル毎平均値及び標準偏差 ( )内はD、Eビルの尺度     n(k−1)χ        r = 2

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関してはA∼Cビルでは喫煙が許されており、においの元は ほとんどがタバコと回答しているため、その影響があらわれ たと考えられる。また、これらの要因の関連係数の有意性の 検定を行った結果、いずれも有意水準1%で有意であること を確認した。快適性以外の要因相互の関係では、冬季は「性 別」と「においの感じ」「広さ感」「年齢」との間、「広さ感」 と「建物」との間で、夏季は「性別」と「年齢」との間、そ して「建物」と「全身温冷感」と間で相対的に関連が強いと いえる。  各建物毎に快適性と各環境要因等との関連係数を算出した 結果を、3ビル全体の結果と併せて図2.26、図2.27に示す。 各建物毎の分析でも冬季は「騒音の感じ」、「においの感じ」と の関連が強いことがわかる。また、夏季はAビルの傾向が他 と異なっており、B、Cビルで「におい感」、「全身温冷感」と の関連が強いが、Aビルではこれら以外にも「騒音の感じ」や 「明るさ感」との関連が強くなっている。また、全体的に快適 性と「室内の広さ感」の関連係数はそれほど大きくなってい ない。これは快適性の質問文で室内環境の捉え方を示唆した ことや、3ビルの人員密度にそれほど差がない(図2.25)こ と、「室内の広さ感」の調査を快適性や温冷感などとは別の調 査用紙(各季節1回実施した基本事項アンケート)で行った ことなどが影響したと考えられる。  図2.25の物理データとの関係からは、冬季のAビルの「全 身温冷感」の関連係数が他のビルよりも大きいのは、Aビル の平均室温が他ビルよりも高く、冬としては高めの温度で標 準偏差も大きかったことが影響していると考えられる。同様 のことが夏季のCビルでもいえるようであり、他ビルよりも 室温の平均値が高くて標準偏差も大きかった。しかし、夏季 のAビルの「騒音の感じ」や「明るさ感」との関連が強くなっ ていることについては、このように整理された物理データだ けでは説明が難しい。   (2) 数量化 Ⅱ類の相関比とカテゴリー数量による考察  数量化 Ⅱ類により、快適性を外的基準、「全身温冷感」、「に おいの感じ」、「騒音の感じ」、「明るさ感」、「体調」、「建物」を 説明要因とする分析を行った。説明要因は表2.9、表2.10よ り快適性との関連係数が相対的に大きなものを選定した。  表2.11にその分析ケースを示す。分析上、外的基準は「快 適」と「少し快適」、「不快」と「少し不快」を統合し、「快適 側」と「不快側」及び中立(「ふつう」)の3カテゴリーとし て扱った。 ケース1はこの3カテゴリーの判別に寄与する要 因の分析を目的とするもので、ケース2、3はそれぞれ「快 適側」及び「不快側」のデータを除外し、「不快側」と中立の 判別及び「快適側」と中立の判別に寄与する要因の分析を目 的としている。また、説明要因のサンプル数の少ないカテゴ リーは隣接するカテゴリーに統合した。  ケース1のカテゴリーレンジ及び偏相関係数、相関比を表 2.12 に示す。 外的基準のカテゴリーが3つの場合解が2つ 求められるが、第2の解は相関比が小さかった(冬季 0.150、 夏季0.114)ので無視し、相関比が大きいものを主要解とみな した。用いた説明要因でどの程度外的基準を説明し得たかは、 相関比に示される。相関比は分散の次元であるので、その平 方根が相関係数の次元に対応しており、冬季は0.663、夏季は 0.625である。 各説明要因の偏相関係数はクラメールの関連 図2 . 2 5  各建物の物理データ(全測定データの平均、標準偏差) 表2 . 8  A∼Cビルの分析に用いたアイテムとそのカテゴリー 係数に比べて夏季の「全身温冷感」の寄与が相対的にやや大 きめだが、概ね同様の傾向となっている。  ケース1のカテゴリー数量を図2.28 に示す。プラス側の 数値が大きいカテゴリーほど快適側に、マイナス側の数値が 大きいカテゴリーほど不快側に影響することになる。 実際の オフィスの執務空間での調査データであるため各アイテムの カテゴリーのサンプル数は均等ではないが、これらのカテゴ リー数量の傾向は概ね妥当と思われる。先の相関分析では、 等価騒音レベル(以後、LAeq,10minと記述)と騒音の心理量 との関係において冬は夏よりも心理量の感度が高い傾向にあ ることが示されたが、その様子がこの図からも把握できる。 0 5 10 15 ( m2/人 ) 人 当 床 面 積 0 5 10 15 ( m2/人 ) 人 当 床 面 積 人 当 床面積 (m2/人) -0.50 0.00 0.50 1.00 -0.50 0.00 0.50 1.00 P MV Aビル Bビル Cビル Dビル Eビル Cビル 平均値 標準偏差 Aビル Bビル Dビル Eビル 0 0.05 0.1 0.15 0.2(mg/m 3 ) 0 0.05 0.1 0.15 0.2(mg /m 3) 粉 塵 濃 度 (mg/m3 20 30 40 50 60 70 20 30 40 50 60 70 (%) 相 対 湿 度 ( % ) 45 50 55 60 65 (dB) 45 50 55 60 65 (dB) A特性 等 価 音 圧 レベル (dB) 40 0 50 0 60 0 70 0 80 0 90 0 100 0 110 0 1200 400 500 600 700 800 900 1000 1100 1200 (ppm) CO2 濃度 (ppm) 500 1000 1500 2000( lx ) 500 1000 1500 2000( lx ) 机上面 照 度 ( lx ) 冬 冬冬 冬冬 季季季季季 夏夏 夏夏夏 季季季季季 騒 音 騒 音騒 音 騒 音 騒 音 アイテム カ テ ゴ リ ー ① 全身温冷感 1. 暑 い 2. 少し暑い 3. 暖かい 4. 少し暖かい 5. ふつう 6. 少し涼しい 7. 涼しい 8. 少し寒い 9. 寒 い ② においの感じ 1. 感じない 2. 少し感じる 3. 感じる ③ 騒音の感じ 1. うるさい 2. ややうるさい 3. ふつう 4.ややしずか 5. しずか ④ 明るさ感 1. 明るい 2. 比較的明るい 3. ふつう 4. 比較的暗い 5. 暗い ⑤ 室内の広さ感 1. 広 い 2. やや広い 3. ふつう 4. やや狭い 5. 狭 い ⑥ 性 別 1. 男 性 2. 女 性 ⑦ 年 齢 1. 10 代 2. 20 代 3. 30 代 4. 40 代 5. 50 代 6. 60 代 ⑧ 体 調 1. 良 い 2. やや良い 3. ふつう 4.やや悪い 5. 悪 い ⑨ 曜 日 1. 金曜日(週 末) 2. 月曜日(週明け) ⑩ 建 物 1. A ビ ル 2. B ビ ル 3. C ビ ル

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すなわち、冬の「騒音の感じ」のレンジは夏のそれに比べて 相対的に大きく、しずかな側で快適側への寄与がより大きく なっていることがカテゴリー数量より確認できる。また、「建 物」に関しては調査時点での竣工後経過年数の最も少ないB ビルの物理量測定結果は他と比べて特別良好であったわけで はないにもかかわらず、冬季、夏季共に他のビルに比べて快 適側にシフトした評価となっていることが読みとれる。これ は、例えばオフィスの新しさに関連する何らかの要因、例え ば内装の視覚的印象などが執務者の快適性の評価に影響を及 ぼしているのではないかと考えられる。 表2 . 9  冬季におけるクラメールの関連係数(A∼Cビル全体) n=1 , 1 1 5 表2 . 1 0  夏季におけるクラメールの関連係数(A∼Cビル全体) n=1 , 0 0 2 図2 . 2 7  各建物のクラメールの関連係数の比較 図2 . 2 6  各建物のクラメールの関連係数の比較 表2 . 1 1  数量化Ⅱ類による分析ケース 図2 . 2 8  ケース1のカテゴリー数量(A∼Cビル全体) (冬季) (夏季) 温冷感 におい 騒音 明るさ 広さ 性別 年齢 体調 曜日 建物 温冷感 におい 0.125 騒音 0.106 0.143 明るさ 0.125 0.137 0.162 広さ 0.098 0.096 0.135 0.083 性別 0.189 0.290 0.152 0.072 0.277 年齢 0.095 0.218 0.098 0.090 0.094 0.668 体調 0.115 0.144 0.111 0.148 0.101 0.143 0.171 曜日 0.191 0.088 0.074 0.026 0.063 0.000 0.049 0.102 建物 0.190 0.099 0.169 0.132 0.262 0.044 0.202 0.113 0.049 快適性 0.186 0.306 0.339 0.207 0.187 0.100 0.149 0.205 0.149 0.287 温冷感 におい 騒音 明るさ 広さ 性別 年齢 体調 曜日 建物 温冷感 におい 0.109 騒音 0.095 0.236 明るさ 0.146 0.109 0.145 広さ 0.130 0.096 0.117 0.158 性別 0.167 0.241 0.182 0.121 0.104 年齢 0.124 0.177 0.113 0.112 0.217 0.724 体調 0.146 0.188 0.113 0.166 0.127 0.212 0.167 曜日 0.122 0.059 0.103 0.089 0.029 0.013 0.059 0.086 建物 0.402 0.091 0.128 0.139 0.202 0.078 0.234 0.078 0.023 快適性 0.263 0.285 0.196 0.217 0.127 0.174 0.136 0.227 0.077 0.234 分析ケース 外的基準のカテゴリー ケース1 「 快適側 」、「 不快側 」、「 中立 」の3カテゴリー ケース2 「 不快側 」、「 中立 」の2カテゴリー *「 快適側 」のデータを除外 ケース3 「 快適側 」、「 中立 」の2カテゴリー *「 不快側 」のデータを除外 表2.12 ケース1の分析結果(A∼Cビル全体) 分析ケース 冬 季 夏 季 項 目 カテゴリー レンジ 偏相関 係 数 カテゴリー レンジ 偏相関 係 数 ① 全身温冷感 1.34 0.219 2.12 0.409 ② においの感じ 1.09 0.284 1.40 0.306 ③ 騒音の感じ 2.06 0.333 1.07 0.193 ④ 明 る さ 感 1.19 0.203 0.99 0.207 ⑤ 体 調 0.57 0.150 0.61 0.136 ⑥ 建 物 0.86 0.265 0.64 0.216 相関比 η2 ( η ) 0.401 ( 0.633 ) 0.390 ( 0.625 ) サンプル数 1,115 1,002 0.000 0.050 0.100 0.150 0.200 0.250 0.300 0.350 0.400 0.450 全身 温冷 感 にお いの 感じ 騒音 の感 じ 明る さ感 体   調 冬季Aビル 冬季Bビル 冬季Cビル 冬季3ビル全体 0.000 0.050 0.100 0.150 0.200 0.250 0.300 0.350 0.400 0.450 全身 温冷 感 にお いの 感じ 騒音 の感 じ 明る さ感 体    調 夏季Aビル 夏季Bビル 夏季Cビル 夏季3ビル全体     サンプル  数     サンプル  数     夏季 カテゴリー数量     冬季 カテゴリー数量     -1.5 -1.0 -0.5 0 0.5 -1.0 -0.5 0 0.5 1.0 全 身 の 温 冷 感 暑 い 少し暑い 暖かい 少し暖かい ふつう 少し涼しい/涼しい 少し寒い/寒い 39 134 177 230 425 100 10 71 178 42 118 357 201 35 に お い 感 じ 感じない 少し感じる 感じる 650 308 157 692 217 93 騒 音 の 感 じ しずか ややしずか ふつう ややうるさい うるさい 53 119 637 271 3 5 67 99 559 259 18 明 る さ 感 明るい 比較的明るい ふつう 比較的暗い/暗い 60 134 767 154 58 125 671 148 体 調 良 いやや良い ふつう やや悪い/悪い 180 86 610 239 149 61 599 193 建 物 AビルBビル Cビル 342 387 386 319 307 376    アイテム カテゴリー

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 図2.29にケース1∼3の分析における各説明 要因の偏相関係数を比較して示す。ケース2の 「不快側」と中立を判別する説明要因の偏相関係 数の傾向はケース1と類似しており、カテゴ リー数量も同様の傾向であった。これに対し、相 関比は相対的に小さいが、ケース3の「快適側」 と中立を判別する説明要因の偏相関係数は他の ケースと異なった傾向を示しており、「全身温冷 感」と「においの感じ」の偏相関係数が小さく、 相対的に「明るさ感」などの他の要因の偏相関係 数が大きいことがわかる。換言すれば、A∼Cビ ルでの「全身温冷感」や「においの感じ」は「不 快側」と中立の判別には影響を及ぼしているも のの、「快適側」と中立との判別では関係が薄く、 「快適側」の評価には「騒音の感じ」や「明るさ 感」、「体調」の影響が相対的に大きくなる傾向に ある。 2.3.2.2 D、Eビル  D、EビルはA∼Cビルに比べて快適側の申 告割合が高く(図2.23、図 2.24)、両ビル共に 冬季は冷房側の空調運転であった。D、Eビルで 用いたアンケートの快適性以外のアイテムとカ テゴリーを表2.13、A∼Cビルと同様の手続き で行った数量化 Ⅱ類による分析結果の偏相関係 数を図2.30 に示す。これより、「全身温冷感」は 「不快側」と中立(「どちらでもない」)の判別に 寄与しているが「快適側」と中立の判別にはそれ ほどでもないこと、「快適側」と中立の判別には 「騒音の感じ」や「明るさ感」の影響が相対的に 大きいことがわかる。これらの傾向はA∼Cビ ルと類似している。また、「においの感じ」の偏 相関係数がA∼Cビルの場合に比べて低いが、 これはA∼Cビルでは喫煙が許されているのに 対し、D、Eビルでは禁煙であったためと考えら れる。  以上、「快適側申告と中立申告の判別要因」と「不快側申告 と中立申告の判別要因」を対比させ、それぞれのグループの 違いを検討した結果、中立ではなく不快側の評価となるのは 温冷感やにおい(タバコ)が関連し、中立ではなく快適側の 評価を得るのは静けさや明るさなどの要因が関連していると 考えられた。 2.3.3 執務空間の快適率及び不快率と物理量との関係 2.3.3.1 分析方法  各建物での各アンケート調査回毎に快適率(「快適」又は 「少し快適」と答えた人の割合)及び不快率(「不快」又は「少 し不快」と答えた人の割合)、快適性申告平均値を算出し、そ れらを目的変数、そのアンケートに対応する物理量平均値を 説明変数とした重回帰分析を行った。快適性のカテゴリーは 表2.7 に示すようにA∼CビルとD、Eビルとで少し異なる が、ここでは「少し快適(不快)」と「やや快適(不快)」、そ して「ふつう」と「どちらでもない」とが対応するとみなし た。説明変数の測定物理量は、温冷感に関連するものとして PMVを、におい感にはCO2濃度及び粉塵濃度、相対湿度 を、騒音の心理量に関連するものとしてはLAeq,10minを用い た。明るさ感に関連する照度は、A∼Cビルでアンケート記 入時の分布測定がなされていないため、扱っていない。相対 湿度を用いた理由はこれまでの検討で喫煙が許されている A∼Cビルの相対湿度とにおい感に関連が認められているた めである。また、PMVは正負の値で定義されているため絶 対値として扱った。 2.3.3.2 分析結果   表2.14にA∼Eビルのデータに基づく快適性と物理量と の単相関係数を示す。また、表2.15、表2.16 に物理量相 互の単相関係数、表2.17、表2.18 に冬季及び夏季の標準偏 回帰係数と決定係数R2を示す。 斜線の欄は多重共線性が生 じたために落とした変数である。冬季の不快率を除いて決定 図2 . 2 9  各分析ケースの説明要因偏相関係数の比較                    表2 . 1 3  D、Eビルの分析に用いたアイテムとそのカテゴリー 図2 . 3 0  各分析ケースの説明要因偏相関係数の比較 (A∼Cビル全体)           (D、Eビル全体) 0.000 0.050 0.100 0.150 0.200 0.250 0.300 0.350 0.400 0.450 0.500 全身 温冷 感 にお いの 感じ 騒音 の感 じ 明る さ感 体    調 建    物 相 関 比 ケース1: 3カテゴリ-の判別   N = 1115 ケース2: 「不快側」と中立の判別   N = 983 ケース3: 「快適側」と中立の判別  N = 767 冬季 0.000 0.050 0.100 0.150 0.200 0.250 0.300 0.350 0.400 0.450 0.500 全身 温冷 感 にお いの 感じ 騒音 の感 じ 明る さ感 体    調 建    物 相 関 比 ケース1: 3カテゴリ-の判別   N = 1002 ケース2: 「不快側」と中立の判別   N = 880 ケース3: 「快適側」と中立の判別  N = 695 夏季 アイテム カ テ ゴ リ ー ① 全身温冷感 1. 暑 い 2. 少し暑い 3. 暖かい 4. どちらでもない 5.少し涼しい 6. 涼しい 7. 寒 い ② においの感じ 1. 感じない 2. やや感じる 3. 感じる ③ 騒音の感じ 1. うるさい 2. ややうるさい 3. ふつう 4.ややしずか 5. しずか ④ 明るさ感 1. 非常に明るい 2. かなり明るい 3. やや明るい 4. どちらともいえない 5. やや暗い 6. かなり暗い 7. 非常に暗い ⑤ 体 調 1. 良 い 2. やや良い 3. ふつう 4.やや悪い 5. 悪 い ⑥ 建 物 1. D ビ ル 2. E ビ ル 0.000 0.050 0.100 0.150 0.200 0.250 0.300 0.350 0.400 0.450 0.500 全身 温冷 感 にお いの 感じ 騒音 の感 じ 明る さ感 体   調 建    物 相 関 比 ケース1: 3カテゴリ-の 判別   N = 377 ケース2: 「不快側 」と中 立の判 別   N = 157 ケース3: 「快適側 」と中 立の判 別  N = 313 冬季 0.000 0.050 0.100 0.150 0.200 0.250 0.300 0.350 0.400 0.450 0.500 全身 温冷 感 にお いの 感じ 騒音 の感 じ 明る さ感 体    調 建    物 相 関 比 ケース1: 3カテゴリ-の判別   N = 393 ケース2: 「不快側」と中立の判別   N = 142 ケース3: 「快適側」と中立の判別  N = 343 夏季

図 3.20 解析ケース A(M O D E - I N T)の温度の経時変化 C ASE-A(MO DE-ST1) 202122232425262728 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 HO UR℃

参照

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