西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 五 巻 第 三 ・ 四 合 併 号 ( 二 〇 一 三 年 三 月 ) 三 七
英
国
に
お
け
る
非
業
務
執
行
取
締
役
の
「
独
立
性
」
の
再
考
―
金
融
危
機
以
後
の
議
論
の
経
緯
を
踏
ま
え
て
―
一
ノ
澤
直
人
一 は じ め に 二 金 融 危 機 以 後 の 議 論 の 経 緯 1 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス に 関 す る 検 証 と 規 範 の 動 向 2 金 融 危 機 へ の 対 応 と 規 範 の 見 直 し 3 い わ ゆ る 「 遵 守 あ る い は 説 明 ( co m p ly o r e xp la in ) 」 原 則 に よ る ガ バ ナ ン ス 諸 規 範 と そ の 問 題 点 三 「 独 立 性 」 を め ぐ る 議 論 の 変 化 1 非 業 務 執 行 取 締 役 の 異 議 に よ る 説 明 の 要 求 と そ の 適 格 性 の 必 要 性 2 非 業 務 執 行 取 締 役 の 「 適 格 性 ( co m p et en ce ) 」 と 「 独 立 性 」 の 要 件 四 金 融 危 機 以 後 に お け る 非 業 務 執 行 取 締 役 の 役 割英 国 に お け る 非 業 務 執 行 取 締 役 の 「 独 立 性 」 の 再 考 ― 金 融 危 機 以 後 の 議 論 の 経 緯 を 踏 ま え て ― 三 八 1 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 規 範 に お け る 非 業 務 執 行 取 締 役 2 同 規 範 に お け る 非 業 務 執 行 取 締 役 の 「 独 立 性 」 3 同 規 範 に お け る 非 業 務 執 行 取 締 役 の 選 任 4 同 規 範 に お け る 非 業 務 執 行 取 締 役 の 資 質 5 同 規 範 に お け る 非 業 務 執 行 取 締 役 の 役 割 五 む す び に 代 え て 一 は じ め に わ が 国 に お い て 、 平 成 二 三 年 十 二 月 に 、 法 制 審 議 会 会 社 法 部 会 が 、 「 会 社 法 制 の 見 直 し に 関 す る 中 間 試 案 」 を 決 定 し 、 パ ブ リ ッ ク ・ コ メ ン ト を 経 て 、 平 成 二 十 四 年 八 月 に 、 「 会 社 法 制 の 見 直 し に 関 す る 要 綱 案 」 を 決 定 し 、 九 月 七 日 開 催 の 法 制 審 議 会 第 百 六 十 七 回 会 議 で 、 採 択 さ れ 法 務 大 臣 に 答 申 さ れ て い る ︶1 ︵ 。 同 要 綱 の 「 第 一 部 第 一 2 社 外 取 締 役 及 び 社 外 監 査 役 に 関 す る 規 律 」 に 加 え 、 付 帯 決 議 に よ り 、 金 融 商 品 取 引 所 の 規 則 に お い て 、 上 場 会 社 は 取 締 役 で あ る 独 立 役 員 を 一 人 以 上 確 保 す る よ う に 努 め る 旨 の 規 律 を 設 け る 必 要 が あ る と さ れ て い る 。 そ し て 、 そ の 規 律 に つ い て は 、 「 監 査 役 会 設 置 会 社 ( 公 開 会 社 で あ り 、 か つ 、 大 会 社 で あ る も の に 限 る 。 ) の う ち 、 金 融 商 品 取 引 法 第 二 四 条 第 一 項 の 規 定 に よ り そ の 発 行 す る 株 式 に つ い て 有 価 証 券 報 告 書 を 提 出 し な け れ ば な ら な い 株 式 会 社 に お い て 、 社 外 取 締 役 が 存 し な い 場 合 に は 、 社 外 取 締 役 を 置 く こ と が
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 五 巻 第 三 ・ 四 合 併 号 ( 二 〇 一 三 年 三 月 ) 三 九 相 当 で な い 理 由 を 事 業 報 告 の 内 容 と す る も の と す る 」 と い う 形 で 、 一 定 の 会 社 で 社 外 取 締 役 が 存 在 し な い 場 合 に は 、 社 外 取 締 役 を 置 く こ と が 相 当 で な い 理 由 を 事 業 報 告 の 内 容 と す る こ と と し て い る ︶2 ︵ 。 そ し て 、 こ れ ら に よ っ て 、 英 国 の コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 規 範 の よ う な 「 co m p ly o r ex p la in( 遵 守 せ よ 、 さ も な け れ ば 説 明 せ よ ) 」 原 則 ( 以 下 、 「 遵 守 あ る い は 説 明 」 原 則 と す る 。 ) の よ う な 規 律 が 機 能 し う る と 指 摘 さ れ て ︶3 ︵ い る ︶4 ︵ 。 こ の よ う な わ が 国 の 立 法 動 向 に 関 連 し て 、 今 後 の わ が 国 の 会 社 法 制 に 一 定 の 示 唆 を 得 ら れ る の で は な い か と 考 え 、 金 融 危 機 以 後 の 英 国 に お け る 非 業 務 執 行 取 締 役 の 独 立 性 を 中 心 と し て 再 考 し 、 英 国 に お け る 規 範 ( C od e ) に 関 す る 議 論 の 経 緯 を 追 い な が ら 、 考 察 す る こ と を 本 稿 の 目 的 と し た い 。 二 金 融 危 機 以 後 の 議 論 の 経 緯 1 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス に 関 す る 検 証 と 規 範 の 動 向 英 国 の 会 社 に お け る 非 業 務 執 行 取 締 役 の 役 割 は 、 お そ ら く 一 九 世 紀 中 頃 の 非 常 勤 で 、 仕 事 の な い 、 ( 義 務 か ら ) 解 放 さ れ た 非 業 務 執 行 者 に さ か の ぼ る こ と が で き る が 、 そ の 現 代 的 な 役 割 は 一 九 九 二 年 の キ ャ ド ベ リ ー 委 員 会 の 報 告 書 が 前 面 に く る と さ ︶5 ︵ れ る ︶6 ︵ 。 キ ャ ド ベ リ ー 委 員 会 は 、 主 に 独 立 し た 非 業 務 執 行 役 で 構 成 さ れ る 取 締 役 会 構 造 を 基 礎 と す る コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 規 範 を 作 成 し た 。 そ の 独 立 し た 非 業 務 執 行 取 締 役 は 、 特 に 監 査 、 報 酬 、 指 名 委 員 会 と 関 連 し 、 い わ ゆ る 「 遵 守 あ る い は 説 明 」 の 原 則 に よ っ て 作 用 し て い る 。 そ の 後 数 年 に 渡 っ て 、 様 々 な 報 告 が な さ れ 、 そ の 結 果 、 財 務 報 告 評 議 会 (F R C ) の 権 限 で 、 キ ャ ド ベ リ ー 報 告 に よ る 最 善 慣 行 規 範 ( C o d e o f B e st P ra ct i ︶7︵ ce ) を コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 関 す る 統 合 規 範 ( C om bin ed C od e of C or p or at e G ov er n an ce , 以 下 「 統 合 規 範 」 と す る ) に 継 続 的 発 展 さ せ た ︶8 ︵ 。 二 〇 〇 七 年 か ら 二 〇 〇 八 年 に
英 国 に お け る 非 業 務 執 行 取 締 役 の 「 独 立 性 」 の 再 考 ― 金 融 危 機 以 後 の 議 論 の 経 緯 を 踏 ま え て ― 四 〇 か け て の 金 融 危 機 に 影 響 を う け て 、 F R C は 、 英 国 の 銀 行 と そ の 他 の 金 融 機 関 に お け る コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 諸 問 題 に 関 す る ウ ォ ー カ ー 報 告 の 勧 告 を 考 慮 す る こ と で ︶9 ︵ 、 統 合 規 範 の 内 容 と 全 体 的 な 効 果 を 再 検 証 し た ︶10 ︵ 。 そ し て 、 F R C は 二 〇 一 〇 年 六 月 に 、 英 国 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 規 範 ( T h e U K C or p or at e G ov er n an ce C od e, 以 下 、 「 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 規 範 」 と す る 。 ) と い う 新 し い 名 称 で 、 新 し い 規 範 を 再 発 行 し た ( 以 下 、 「 二 〇 一 〇 年 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 規 範 」 と ︶11 ︵ す る ︶12 ︵ ) 。 こ の 規 範 の 更 な る 改 定 は 、 二 〇 一 二 年 九 月 に 発 行 さ れ 、 一 〇 月 よ り 適 用 が 開 始 さ れ て い る ( 以 下 、 「 二 〇 一 二 年 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 規 範 」 と す る ︶13 ︵ 。 ) 。 2 金 融 危 機 へ の 対 応 と 規 範 の 見 直 し 二 〇 〇 八 年 以 降 世 界 経 済 を の み 込 ん だ 金 融 危 機 の 規 模 を 考 え る と 、 銀 行 シ ス テ ム に 安 定 性 を も た ら す 必 要 性 に 、 最 初 に 注 意 が 主 に 集 中 し た こ と は 、 驚 く に 足 ら な い も の で あ る 。 そ の 後 、 時 間 が 経 過 す る に つ れ 、 こ の 危 機 の 別 の 側 面 に 、 焦 点 が よ り は っ き り と あ い 、 そ し て 、 特 に そ の 注 目 に 値 す る も の は 、 多 く の 金 融 機 関 に 渡 っ た コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 失 敗 で あ る と さ ︶14 ︵ れ た ︶15 ︵ 。 ノ ー ザ ン ・ ロ ッ ク 銀 行 、 H B O S 、 ロ イ ヤ ル ス コ ッ ト ラ ン ド 銀 行 な ど の よ う な 英 国 国 内 の 銀 行 業 の 債 務 不 履 行 者 と そ の 失 敗 を み る と 、 す べ て の 銀 行 に は 、 業 務 執 行 取 締 役 と 非 業 務 執 行 取 締 役 の 義 務 的 な 混 合 物 で あ る 取 締 役 会 が あ り 、 報 酬 委 員 会 及 び 、 監 査 委 員 会 、 指 名 委 員 会 を 有 し 、 そ れ ら の 銀 行 の 年 次 報 告 で 確 認 さ れ て い る よ う に 、 そ れ ま で の コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス に 関 す る 規 範 に 従 っ て 運 営 し て い た に も か か わ ら ず 、 現 実 に は 、 大 蔵 省 が 結 論 づ け た よ う に 、 こ れ ら の 銀 行 の 取 締 役 会 に よ る コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス は 、 取 締 役 会 が 特 に 企 業 の 危 機 管 理 プ ロ セ ス を 理 解 し 徹 底 調 査 す る 際 に 、 広 範 囲 に 渡 っ て
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 五 巻 第 三 ・ 四 合 併 号 ( 二 〇 一 三 年 三 月 ) 四 一 失 敗 し て い た 。 そ し て 、 そ れ が 意 味 す る の は 、 取 締 役 会 が 「 過 度 の レ バ レ ッ ジ と リ ス ク ・ テ イ ク ( 危 険 引 受 ) 、 大 口 資 金 へ の 過 度 な 依 存 、 特 に 危 険 な プ ロ ダ ク ト ・ ス ト リ ー ム の 過 度 の 依 存 ま た は 買 収 に 関 す る 経 営 決 定 力 の 不 足 」 か ら 生 じ て い る 前 例 の な い 損 失 の 責 任 が あ る と い う こ と で あ る と さ れ た ︶16 ︵ 。 加 え て 、 欧 州 委 員 会 が 考 慮 し た の は 、 「 そ れ ら 金 融 機 関 が さ ら さ れ た 危 険 を 確 認 し 、 理 解 し て 、 最 終 的 に コ ン ト ロ ー ル す る 」 こ と へ の 取 締 役 会 の 失 敗 が 、 危 機 の 起 源 の 中 心 に あ る と い う こ と を 指 摘 し て い る ︶17 ︵ 。 金 融 危 機 の 検 証 に よ っ て 、 英 国 に お い て 展 開 さ れ て き た ガ バ ナ ン ス に 関 す る 規 範 お よ び そ の 中 心 を な す 非 業 務 執 行 取 締 役 制 度 に 対 し て 、 疑 問 が 生 じ て き た 。 例 え ば 、 金 融 サ ー ビ ス 機 構 ( F S A ) の た め 、 銀 行 危 機 を 再 検 証 す る こ と で 、 知 識 不 足 に よ る 非 業 務 執 行 取 締 役 の 貢 献 に つ い て 、 タ ー ナ ー ( T u rn er ) 卿 は 疑 い を 抱 い て い た 。 卿 に よ れ ば 、 「 ( 金 融 ) 危 機 に 隠 れ て い る の は 、 大 規 模 な 銀 行 グ ル ー プ の 極 端 な 複 雑 さ と 、 リ ス ク ・ テ イ ク の す べ て の 規 模 を 理 解 す る こ と が 、 非 業 務 執 行 取 締 役 に 一 般 的 に 求 め ら れ る 時 間 内 に す る に は 、 困 難 で あ る こ と で あ る ︶18 ︵ 」 。 加 え て 、 デ ー ヴ ィ ッ ド ・ ウ ォ ー カ ー 卿 が 、 取 締 役 会 の 失 敗 の 規 模 に つ い て 、 イ ギ リ ス 政 府 の た め に こ れ ら の 問 題 を 再 検 証 し 、 「 非 業 務 執 行 取 締 役 と い う も の が 、 真 に ガ バ ナ ン ス に 貢 献 す る と い う 長 い 間 確 立 し て き た 常 識 と 実 務 を 以 前 に 想 定 し た と 同 じ ぐ ら い 現 実 的 で あ る と し 続 け る こ と が で き る 」 か ど う か に つ い て 、 疑 義 を い た だ く ほ ど の も の で あ っ た と す る ︶19 ︵ 。 さ ら に 、 こ の ガ バ ナ ン ス の 失 敗 は 主 に 金 融 部 門 に 限 定 さ れ る も の だ が 、 こ の 議 論 は 、 公 開 会 社 一 般 に お け る コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス に つ い て 考 慮 で き る も の で あ る と 指 摘 さ れ る ︶20 ︵ 。 す な わ ち 、 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 失 敗 は 、 異 な る 外 観 で あ る け れ ど も 、 繰 り 返 さ れ る 傾 向 が あ り 、 そ し て 銀 行 と 他 の 法 人 の 間 の よ う な コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 諸 問 題 は 、
英 国 に お け る 非 業 務 執 行 取 締 役 の 「 独 立 性 」 の 再 考 ― 金 融 危 機 以 後 の 議 論 の 経 緯 を 踏 ま え て ― 四 二 O E C D が 言 及 す る よ う に ︶21 ︵ 、 銀 行 倒 産 時 に 発 生 す る 損 失 と シ ス テ ミ ッ ク リ ス ク の 規 模 の 他 に は 基 本 的 に 異 な る こ と は な い の で あ る 。 最 も 顕 著 な コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 失 敗 は 、 金 融 部 門 内 部 の も の で あ る が 、 し か し 、 過 去 一 〇 年 で は 、 米 国 で は 、 エ ン ロ ン 、 ワ ー ル ド コ ム と タ イ コ 社 、 欧 州 で は パ ル マ ラ ッ ト 社 ( P ar m ala t ) と ア ホ ー ル ド 社 ( A h old) と い う 商 業 部 門 に お け る 失 敗 が あ り 、 マ ル コ ー ニ 社 と T ra n sT ec社 の よ う な 英 国 の 会 社 に お い て は 株 主 価 値 の 破 壊 を も 伴 っ て い る 。 ︶22 ︵ 会 社 の 破 綻 の 理 由 は 、 非 常 に 多 く さ ま ざ ま で あ る 。 そ し て 、 い く つ か の 破 綻 は 、 詐 欺 的 行 為 、 あ る い は 誤 っ た 経 営 が 原 因 で あ り 、 時 と し て 不 正 会 計 あ る い は 利 己 的 な 流 用 を 伴 う が 、 し か し 、 共 通 の 特 徴 は 、 内 部 あ る い は 外 部 に か か わ ら ず 、 会 社 が 直 面 し て い る 危 険 を 予 想 し て 対 処 す る べ き 取 締 役 会 の 任 務 の 懈 怠 に あ る 。 こ れ ら の 度 重 な る 失 敗 を 抑 止 す る た め の 我 々 の 明 白 な 無 力 さ は 、 公 開 会 社 の コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 構 造 に お け る 一 般 的 な 欠 点 を 示 し て い る ︶23 ︵ 。 し た が っ て 、 こ れ ら ウ ォ ー カ ー 報 告 及 び F R C 、 欧 州 委 員 会 が 認 め た よ う に 、 銀 行 危 機 か ら 学 ば れ る コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 教 訓 に 、 幅 広 い ア プ ロ ー チ が と ら れ る こ と が 重 要 で あ る ︶24 ︵ 。 そ の 中 で も 、 金 融 危 機 か ら 生 じ た コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 問 題 を 扱 っ た ウ ォ ー カ ー 報 告 、 F R C の 検 証 及 び コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 規 範 の 改 定 、 そ れ ら の 視 点 を 踏 ま え て 、 非 業 務 執 行 役 の 役 割 に 焦 点 を 絞 っ て さ ら に 検 討 し て い く 。 3 い わ ゆ る 「 遵 守 あ る い は 説 明 ( co m ply o r e xp la in) 」 原 則 に よ る ガ バ ナ ン ス 諸 規 範 と そ の 問 題 点 制 定 法 で あ る 二 〇 〇 六 年 英 国 会 社 法 に は ︶25 ︵ 、 特 に 非 業 務 執 行 取 締 役 へ の 規 定 は 含 ま な い 。 け れ ど も 、 長 い 間 上 場 会 社 の た め の コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 構 造 に と っ て は 、 非 業 務 執 行 取 締 役 が 中 心 的 な も の で あ っ て き た 。 既 に 述 べ た と お り 、 英 国 の 会 社 で の 非 業 務 執 行 取 締 役 の 現 代 的 な 役 割 は 、 一 九 九 二 年 の キ ャ ド ベ リ ー 委 員 会 の 報 告 及 び 当 該 委 員 会 に よ っ て 勧 告 さ れ
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 五 巻 第 三 ・ 四 合 併 号 ( 二 〇 一 三 年 三 月 ) 四 三 た 最 善 慣 行 規 範 で 、 大 き く ク ロ ー ズ ア ッ プ さ れ た ︶26 ︵ 。 こ の 規 範 へ の い ろ い ろ な 検 討 と 改 良 が 続 き ︶27 ︵ 、 結 果 と し て F R C の 管 轄 下 で コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス に 関 す る 統 合 規 範 が 定 め ら れ ︶28 ︵ 、 そ こ で は 確 固 と し て 、 主 に 独 立 し た 非 業 務 執 行 取 締 役 か ら 構 成 さ れ る 、 特 に 主 要 な ( 監 査 、 報 酬 及 び 指 名 ) 委 員 会 に 関 連 し て 取 締 役 会 構 造 に ( 比 較 的 小 規 模 な 会 社 を 除 い て 、 少 な く と も 取 締 役 の 半 数 ) 基 礎 を お い た 規 範 で あ っ た し 、 そ れ が 維 持 さ れ て い る ︶29 ︵ 。 取 締 役 会 が 、 取 締 役 の 判 断 に ( 例 え ば 前 職 、 現 在 や 過 去 の 取 引 関 係 、 重 要 な 株 主 ま た は 他 の 家 族 と の 関 係 、 会 社 に 対 す る 個 人 の 利 益 の よ う な ) 多 分 に 影 響 を 及 ぼ し そ う な 、 あ る い は 影 響 を 及 ぼ し う る 関 係 ま た は 状 況 が 存 在 し て い る に も か か わ ら ず 、 非 業 務 執 行 取 締 役 が 特 質 と 判 断 に お い て 独 立 し て い る と 仮 に 決 定 し た な ら ば 、 取 締 役 会 は 、 何 故 当 該 個 人 が 独 立 し て い る と 判 断 し た か を 説 明 し な け れ ば な ら な い 。 独 立 し た 非 業 務 執 行 取 締 役 を 中 心 と し て 構 成 さ れ る 独 立 か つ 分 離 さ れ た 委 員 会 に 対 す る こ の 焦 点 は 、 自 己 取 引 に 関 連 す る ス キ ャ ン ダ ル 、 主 に 取 締 役 と 関 連 し た 政 党 が 関 係 し て い る 不 正 会 計 へ の 対 応 と し て の 統 合 規 範 の 起 源 を 反 映 し て い る ︶30 ︵ 。 こ の 規 範 は 、 い わ ゆ る 「 遵 守 ま た は 説 明 」 原 則 に 基 づ い て 運 用 さ れ る よ う に 上 場 規 則 に よ っ て 、 上 場 企 業 が そ れ を 遵 守 し て い る か ど う か を 年 次 報 告 書 に 示 す こ と 、 遵 守 し て い な い 範 囲 を 説 明 す る こ と が 必 要 と さ れ て き た ︶31 ︵ 。 ま た 、 こ の こ と は 英 国 だ け で な く 、 二 〇 〇 二 年 に 欧 州 委 員 会 が 委 託 し た 報 告 で は 、 ほ と ん ど の E U 加 盟 国 が 、 英 国 と 非 常 に 類 似 し た 「 遵 守 ま た は 説 明 」 規 範 を 有 し て い る こ と ︶32 ︵ 、 そ し て ガ バ ナ ン ス へ の こ の 一 般 的 な ア プ ロ ー チ は 、 非 業 務 執 行 取 締 役 の 役 割 に つ い て 二 〇 〇 五 年 の 勧 告 で 欧 州 委 員 会 に よ っ て 承 認 さ れ た ︶33 ︵ 。 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の O E C D 原 則 は 、 一 九 九 九 年 に 最 初 に 採 択 さ れ て い る が 、 類 似 の 効 果 が あ る と さ れ て い る ︶34 ︵ 。 こ の よ う な ア プ ロ ー チ の 十 分 な 普 遍 性 に も か か わ ら ず 、 業 務 執 行 取 締 役 お よ び 上 級 管 理 職 に 精 力 的 に 説 明 を 求 め る 独 立 し た 非 業 務 執 行 取 締 役 か ら 生 じ た 高 い 期 待 は 、 ま だ 現 実 と 決 し て マ ッ チ し て い な い し 、 こ れ は 、 今 回 の 危 機
英 国 に お け る 非 業 務 執 行 取 締 役 の 「 独 立 性 」 の 再 考 ― 金 融 危 機 以 後 の 議 論 の 経 緯 を 踏 ま え て ― 四 四 の ず っ と 前 に 、 真 実 だ っ た ︶35 ︵ 。 そ し て 、 現 実 的 な 状 況 は 、 非 業 務 執 行 取 締 役 が 、 仲 間 の 業 務 執 行 取 締 役 と と も に 居 心 地 の 良 い 志 を 同 じ く す る 非 業 務 執 行 取 締 役 か ら な る 取 締 役 会 に 、 長 く 任 用 さ れ 、 良 い 報 酬 を え る こ と で あ る と い わ れ る 。 最 初 に 、 こ の 結 果 の 理 由 と し て は 、 透 明 性 と ヘ ッ ド ハ ン タ ー と 指 名 委 員 会 の 利 用 に も か か わ ら ず 、 同 志 の 人 々 が 取 締 役 会 に 任 じ ら れ る 傾 向 が あ り 、 そ し て 、 そ の ま さ し く 好 み が 同 じ で あ る こ と が 「 集 団 思 考 」 に 屈 す る 傾 向 を 意 味 す る ︶36 ︵ 。 第 二 に 、 考 慮 す べ き は 在 職 期 間 と 報 酬 の 問 題 で あ る 。 非 業 務 執 行 取 締 役 は 、 説 明 が 必 要 と さ れ る 取 締 役 会 に お け る 継 続 的 な 関 与 と な る ま で に は 、 三 回 の 連 続 し た 三 年 任 期 ( い わ ゆ る 九 年 ル ー ル ) 就 任 す る こ と を 期 待 す る こ と が で き る 。 一 方 で 、 報 酬 は 非 業 務 執 行 取 締 役 に 関 し て 追 加 的 職 務 を も た ら し た 統 合 規 範 の 各 検 証 と し て 長 年 大 幅 に 増 大 し て き た 。 現 在 、 F T S E 1 00の 会 社 に お け る 非 業 務 執 行 取 締 役 の 平 均 的 報 酬 は 、 £ 62 ,0 00で あ り 、 委 員 会 構 成 員 と し て の 追 加 的 支 払 が あ る ︶37 ︵ 。 こ の よ う な 状 況 で は 、 九 年 間 の 契 約 は 維 持 さ れ る べ き 、 失 う べ き で な い 有 利 な パ ッ ケ ー ジ に な り 、 そ の 結 果 、 波 風 を 立 て る 誘 因 は ほ と ん ど な い と い え る ︶38 ︵ 。 こ れ ら の 要 因 、 長 い 任 期 、 お 金 、 地 位 す べ て が 、 非 業 務 執 行 取 締 役 の 主 た る 特 質 、 す な わ ち 独 立 性 と 説 明 を 要 求 す る 異 議 ( ch all en ge) へ の 意 欲 を い つ の ま に か 害 す る よ う に 実 際 に は 働 い て い る と 指 摘 さ れ て い る ︶39 ︵ 。 そ し て 、 こ の 金 融 危 機 を 踏 ま え 、 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 規 範 へ の 改 定 に つ な が っ た 。 金 融 危 機 の 要 因 と し て 取 締 役 会 の 失 敗 と い う 明 白 な 証 拠 は 、 既 に 述 べ た よ う に 、 統 合 規 範 に 関 し て 権 限 を 有 す る F R C に よ る だ け で な く ウ ォ ー カ ー 卿 に よ る も の を 含 め て 、 突 然 の 検 証 を 生 み 出 し た こ と は ︶40 ︵ 、 予 想 の 範 囲 内 で あ る 。 F R C と ウ ォ ー カ ー 報 告 の 検 証 は 互 い に 独 立 し て 進 行 し た 。 す べ て の 会 社 に 関 連 す る コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス に 関 す る よ り 幅 広 い 面 に 対 す る 責 任 を 負 っ て い る F R C と 共 に 、 一 方 で ウ ォ ー カ ー 報 告 は 銀 行 と 他 の 金 融 機 関 に 焦 点 を 合 わ せ た も の で あ る が 、 こ れ ら の 報 告 は 、 密 接 に 関 連 し て い た ︶41 ︵ 。 本 稿 の
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 五 巻 第 三 ・ 四 合 併 号 ( 二 〇 一 三 年 三 月 ) 四 五 視 点 か ら 、 こ れ ら の 検 証 に お い て 多 く 扱 わ れ た 主 要 な 問 題 の う ち 、 非 業 務 執 行 取 締 役 の 責 務 と 取 締 役 会 の バ ラ ン ス と 構 成 に 絞 っ て み る 。 最 初 に F R C は 、 二 〇 〇 九 年 三 月 に 統 合 規 範 の 内 容 、 適 用 性 及 び 全 体 的 な 効 果 に 関 し て の 検 証 を 求 め た ︶42 ︵ 。 そ の 後 、 二 〇 〇 九 年 七 月 の 経 過 報 告 が 続 い た が 、 そ こ で は 、 そ れ ま で に 生 じ て い た 他 の 問 題 の 広 い 範 囲 に つ い て 意 見 を 求 め た ︶43 ︵ 。 ま た 、 ウ ォ ー カ ー 卿 に よ る 最 初 の 諮 問 書 の 公 表 の 結 果 と し て 、 部 分 的 に 二 〇 〇 九 年 七 月 に 同 様 に 続 い た ︶44 ︵ 。 二 〇 〇 九 年 一 一 月 に ウ ォ ー カ ー 卿 は 最 終 報 告 を 行 い ︶45 ︵ 、 そ し て そ の 勧 告 の ほ と ん ど の 実 施 は 、 F R C ( 例 え ば 、 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 規 範 の 改 定 を 通 じ て ) あ る い は F S A ( 金 融 サ ー ビ ス 機 構 ) ( 監 督 手 続 と ア プ ロ ー チ の 変 更 を 通 じ て ) の 権 限 と な っ た ︶46 ︵ 。 ウ ォ ー カ ー 報 告 の 影 響 は 、 金 融 機 関 に お け る コ ー ポ レ ー ト ガ バ ナ ン ス に 関 す る 欧 州 委 員 会 の グ リ ー ン ペ ー パ ー の 中 に も ︶47 ︵ 、 あ き ら か に 見 て 取 れ 、 そ の 報 告 は 、 二 〇 一 〇 年 六 月 に 発 行 さ れ て い る 。 そ し て 、 そ の 報 告 は 、 過 度 に ウ ォ ー カ ー 報 告 に 依 拠 し 、 そ れ ゆ え に 少 な く て も ウ ォ ー カ ー 報 告 の 勧 告 の い く つ か は 、 ヨ ー ロ ッ パ の 措 置 に そ の 方 法 を 見 出 す こ と が で き る 。 F R C は 、 二 〇 〇 九 年 一 二 月 の 最 終 報 告 で 検 証 を 結 論 付 け 、 統 合 規 範 の 必 要 的 な 改 定 を 諮 問 し た ︶48 ︵ 。 二 〇 一 〇 年 六 月 に 、 F R C は 統 合 規 範 の 再 発 行 の た め の 検 証 手 続 き を 完 了 し 、 先 に 述 べ た よ う に 、 現 在 の コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 規 範 ( th e U K C or p or at e G ov er n an ce C od e ) と 名 称 を 改 め た の で あ る ︶49 ︵ 。 こ の 議 論 の 範 囲 で 、 一 連 の こ れ ら 検 証 の 結 果 採 用 さ れ た 二 〇 一 〇 年 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 規 範 に お け る 諸 原 則 ( P rin cip le s ) は 、 次 の よ う な も の で あ っ た 。 会 長 ( C h air m an) に つ い て 、 「 会 長 は 、 取 締 役 会 の 統 率 及 び 取 締 役 会 の 役 割 の す べ て の 面 に 関 し て そ の 効 果 を 確 実 に す る こ と に 責 任 を 負 う ︶50 ︵ 」 。 非 業 務 執 行 取 締 役 ( N o n -e x e c u ti v e D ir ec to r ) に つ い て 、 「 単 一 の 取 締 役 会 の 一 員 と し て の 役 割 の 一 部 と し て 、 非 業 務 執 行 取 締 役 は 、 建 設 的 な 異 議 と 戦 略 的 な