数列の極限
収束する数列
項がどこまでも限りなく続く数列を無限数列という。たとえば、無限数列 1, 1 2, 1 3, 1 4,· · · , 1 n,· · · においては、nを限りなく大きくすると、第n項は限りなく ア に近づく。 一般に、無限数列{an}において、nを限りなく大きくするとき、anがある値αに 限りなく近づくならば、 ←以上のことを、記号で、 lim n→∞an= α または、 n→ ∞ のとき an→ α のように書く。 {an}はαに イ または {an} の ウ はαである という。また、αを数列{an}の エ という。収束しない数列
数 列 {an} が 収 束 し な い 、つ ま り 一 定 の 数 に 近 づ い て い か な い と き 、{an} は オ するという。 オ する数列には次の3つの場合がある。 1. たとえば、一般項がan= 2nである数列{an}では、 2, 4, 8, 16, 32,· · · となり、nを限りなく大きくすると、anの値は限りなく大きくなる。 このような場合、 以上のことを、記号で、 lim n→∞an=∞ または、 n→ ∞ のとき an→ ∞ のように書く。 {an}は正の無限大に カ する または {an}の キ は正の無限大である という。 2. たとえば、一般項がan=−10n + 1である数列{an}では、 −9, −19, −29, −39, −49, · · · となり、nを限りなく大きくすると、anの値は負で、絶対値は限りなく大き くなる。このような場合、 以上のことを、記号で、 lim n→∞an=−∞ または、 n→ ∞ のとき an→ ∞ のように書く。 {an}は負の無限大に カ する または {an}の キ は負の無限大である ア:0 イ:収束する ウ:極限 エ:極限値 オ:発散 カ:発散 キ:極限という。 3. たとえば、一般項がan= (−2) n である数列{an}では、 −2, 4, −8, −16, 32, −64, · · · となり、nを限りなく大きくすると、anの値は 収束せず、しかも正の無限大にも 負の無限大にも発散しない。このような場合、 anは ク する という。 bababababababababababababababab 記号∞の取り扱いについて ∞は数ではなくて、 「記号limと同時に使って限りなく大きくなっていく状態を指す」 記号であり、単独で用いることはない。 数列の収束、発散についてまとめると、次のようになる。 bababababababababababababab 収束 値αに収束· · · · 極限はα 発散 正の無限大に発散 · · · · 極限は∞ 負の無限大に発散 · · · · 極限は− ∞ 振動 · · · · 極限はない
数列の極限の性質(I)
数列{an} , {bn}が ともに収束するとき、次のことが成り立つ。 ← 両 方 が 収 束 す る と き に 限 り ま す!! これは大変重要なことです。 ←この定理の厳密な証明は、大学 数学の範囲です。 収束する数列の極限 α, βを定数とする。 lim n→∞an = α, limn→∞bn= βのとき、 1. lim n→∞kan= kα (kは定数) 2. lim n→∞(an± bn) = α± β (複合同順) 3. lim n→∞anbn = αβ 4. β̸= 0のとき、lim n→∞ an bn = α β ク:振動 2高位の無限大
←無限大にも序列があるというこ とですね。 高位の無限大 2つの数列{an} , {bn}がいずれも、無限大に発散する(正負は問わない)と する。このとき、lim n→∞ bn an = 0 のとき、 anはbnより高位の無限大であ る、という。 また、lim n→∞ bn an = α(αは0でない定数)のとき、anとbnは同位の無限大で ある、という。 たとえば、an= n2+ n, bn= nのとき、 lim n→∞an=∞, limn→∞bn =∞ で あ り 、 bn an = n n2+ n = 1 n + 1 に よ り 、 lim n→∞ bn an = 0 が成り立つから、 ケ は コ よりも高位の無限大である。極限の問題を見通しよく解くために…
← lim n→∞an= +0は、数列{an}の 項が、常に正の値をとりながら0 (ゼロ)に近づくことを表します。 同 様 に 、lim n→∞an=−0 は 、数 列 {an} の項が、常に負の値をとり ながら0(ゼロ)に近づくことを 表します。 ←つまり、次数が高いほど高位! ←つまり、lim n→∞ bn an = α(ただし α ̸= 0)となる定数 αが存在し ます。 定理 (1) lim n→∞an=∞のとき、nlim→∞ 1 an = 0 (2) lim n→∞an= +0のとき、nlim→∞ 1 an =∞ (3) lim n→∞an=−0のとき、nlim→∞ 1 an =−∞ (4) 数列{an} , {bn}の一般項がそれぞれnの多項式で、 (anの次数) > (bnの次数)≧ 1ならば、 lim n→∞ bn an = 0 つまり anはbnよりも高位の無限大 (5) 数列{an} , {bn}の一般項がそれぞれnの多項式で、 (anの次数) = (bnの次数)ならば、 anとbnは同位の無限大 (6) lim n→∞r n = ∞ (1 < rのとき) 1 (r = 1のとき) 0 (−1 < r < 1のとき) 振動する (r≦ −1のとき) ケ:an コ:bn【問題1】 次の数列の極限を調べよ。 (1) an= 1 n + 3 (2) an = n 2− n (3) a n= 2n + 1 3n− 1 (4) an= n2+ 1 n3− 1 (5) an = n− 1 n2 (6) an= n2− 3n + 1 n2+ 2n− 2 (7) an= n− n3 n2+ 1 (8) an = √ n + 1−√n− 1 (9) an= 3 n−√n2+ 2n (1)0 (2)∞ (3)2 3 (4)0 (5)∞ (6)1 (7)0 (8)−3 4
【問題2】 次の数列の極限を調べよ。 (1) an= 2n √ 3n (2) an= 4 1−n (3) a n= 2n 3n− 1 (4) an = 3n+ (−2)n−1 3n− 2n+1 (1)∞
【問題3】 次の事柄は正しいか。正しくないものはその反例をあげよ。 (1) lim n→∞an =∞, limn→∞bn =∞ ならば nlim→∞ an bn = 1 (2) lim n→∞an =∞, limn→∞bn =∞ ならば nlim→∞(an− bn) = 0 (3) lim n→∞an = α, limn→∞(an− bn) = 0 ならば nlim→∞bn= α (4) lim n→∞an =∞, limn→∞bn = 0 ならば nlim→∞anbn = 0 (1) 偽 an= n, bn= n2のとき lim n→∞ an bn = 0 (2) 偽 an=√n + 1, bn=√n のとき、 lim n→∞(an− bn) = 0 (3) 真 (4) 偽 an= n2, bn= 1 n2+ n− 1 のとき limn→∞anbn= 1 6
第2回配信 数列の極限(2)
<復習1>
r
nの極限
一般項anがan = rnである数列{an}の極限は、 ← r を n に関係ない定数とする。 lim n→∞r n= ∞ (1 < rのとき) 1 (r = 1のとき) 0 (−1 < r < 1のとき) 振動する (r≦ −1のとき) となる。<復習2> 高位の無限大
数列{an} , {bn}がいずれも正または負の無限大に発散し、かつ、lim n→∞ bn an = 0が 成り立つとき、 ←たとえば… lim n→∞3 n=∞, lim n→∞5 n=∞ で 、 lim n→∞ 3n 5n = limn→∞ ( 3 5 )n = 0 で あ る から、 5nは 3nよりも高位の無限大である。 「anはbnよりも高位の無限大である」 という。また、lim n→∞ bn an = α(αは0でない定数)となるαがあるとき、 「anとbnは同位の無限大である」 という。<復習3> 次数が大きい方が高位の無限大
数列{an} , {bn}の一般項がいずれもnの多項式で、 ←このとき、an, bnの極限は必ず、 正または負の無限大 になります。 (anの次数) > (bnの次数) であるとき、 lim n→∞ bn an = 0【問題4】 次の数列の極限を求めよ。 (1) 2n n + 3 (2) n 2− n (3) √n + 1−√n (4) 3 n 3n+ 2n (5) √ n n2+ 1−√n (6) log3(n + 2) log3n (1)2 (2)∞ (3)0 (4)1 (5)1 (6)1 8
【問題5】 次の数列の極限を求めよ。 (1) lim n→∞ 1 + r2n 1− r2n (r̸= ±1) (2) nlim→∞ 1− rn+ rn+1 1− rn+ rn+2 (r̸= −1) (1) 0 (−1 < r < 1) ∞ (r < −1, 1 < r) 1 (r =±1) (2) { 1 r+1 (r <−1, 1 < r) 1 (−1 < r ≦ 1)
上に有界な増加列は収束する
(1) 上に有界、下に有界 Aを実数の部分集合とするとき、 ■(上に有界) Aの任意の元xに対して、x≦ aとなる実数aがあるとき、Aは 上に有界であるという。 ←たとえば an= 1 n とするとき、n に関 係なく an≦ 1 が成り立つ。したがって、 数列{an} は上に有界である。 ■(下に有界) Aの任意の元xに対して、a≦ xとなる実数aがあるとき、Aは 下に有界であるという。 ← た と え ば an = n + 1 n と す る と き 、 an= 1 + 1 nだから、n に関係なく an≧ 1 が成り立つ。したがって、数列{an} は下 に有界である。 (2) 上に有界な単調増加列は収束する 定理 数列{an}が上に有界で、かつ、増加数列であるとき、anは収束する。 同様に、数列{an}が下に有界で、かつ、減少数列であるとき、an は収束 する。 ←数列{an} が増加数列であるとは、 a1≦ a2≦ a3≦ · · · ≦ an≦ · · · が成り立つことをいう。 ※注:この定理の証明は、大学で学びます。しかし、実数が数直線で 表される連続な数(実はこのことの証明が難しい)であるとしたら、 この定理の成立は十分理解できると思います。はさみうちの原理
2つの数列{an} , {bn}が収束する数列で、lim n→∞an= α, limn→∞bn= β(α, βは定 数)とする。nに関係なく an≦ bn が成り立つとき、 α≦ β が成り立つ。 同様にして、次の定理が成り立つ。 ←入試数学の極限の問題の半数以上は、は さみうち(もしくは次に述べる追い出し) の原理の問題である。大変重要!! はさみうちの原理 αをnに関係ない定数とする。3つの数列{an} , {bn} , {cn}について、 nに関係なくbn≦ an≦ cnが成り立つ。 lim n→∞bn= limn→∞cn= α が成り立つとき、 lim n→∞an= α が成り立つ。 10追い出しの原理
次の定理が成り立つ。 ←同様にして、 an ≦ bn で lim n→∞bn=−∞ な ら ば lim n→∞an=−∞ も成り立つ。 追い出しの原理 数列{an} , {bn}が次の条件を満たすとする。 nに関係なくan ≧ bn lim n→∞bn=∞ このとき、 lim n→∞an=∞ が成り立つ。【問題6】 次の条件を満たす数列の例を一つずつ挙げよ。 (1) すべてのnについてan < 0であるが、lim n→∞an = 0 (2) すべてのnについてan > 1であるが、lim n→∞an = 1 (1)an=−1 n (2)an= n + 1 n (一例なので他にも無数にある) 12
【問題7】 次の数列の極限を求めよ。 (1) an= sin n n (2) an= 1 + cos n n (3) an= (−1)n n (4) an= 1 nsin nπ 2 (1)0 (2)0 (3)0 (4)0
【問題8】 (1) nを正の整数とするとき、3n> n2が成り立つことを示せ。 (2) lim n→∞ n 3n を求めよ。 (1) 略(ヒント:数学的帰納法を用いよ) (2)0 14
【問題9】 r > 1とするとき、次の問いに答えよ。 (1) h > 0として、 (1 + h)n ≧ 1 + nh が成り立つことを示せ。 (2) (1)を利用して、 lim n→∞r n=∞ が成り立つことを示せ。 (1) 略(ヒント:二項定理で左辺を展開せよ) (2) 略
無限級数とその和
無限数列{an}の各項を和の記号+で形式的に結んだもの ←形式的に結んだだけで、この足し算は実 行できません。いくら足しても終わらない からね。だから、形式だけのハナシよ。 a1+ a2+ a3+· · · + an+· · · を無限級数という。無限級数は、記号 ∞ ∑ n=1 an を用いて、 ∞ ∑ n=1 an= a1+ a2+ a3+· · · + an+· · · のようにも表す。また、無限級数において初項から第n項までの和 Sn= a1+ a2+ a3+· · · + an を部分和という。 もし、 lim n→∞Sn = α(αは定数)のとき、つまり、数列{Sn}が定数αに収束する とき、この無限級数の和はαである、という。 ←つまり、無限個の項の足し算は実行不可 能なので、数列{Sn} の極限で和を定義す るわけだね。 bababababababababababababababab無限級数の和は、その部分和の極限と定める
たとえば、 無限級数 1 1· 2+ 1 2· 3+ 1 3· 4+· · · + 1 n (n + 1)+· · · に対して、部分和をSnとすると、 Sn= 1 1· 2+ 1 2· 3+ 1 3· 4+· · · + 1 n (n + 1) = n ∑ k=1 1 k (k + 1) であり、kの値に関係なく、 1 k (k + 1) = 1 k − 1 k + 1 が成り立つので、 Sn= ( 1 1− 1 2 ) + ( 1 2− 1 3 ) + ( 1 3− 1 4 ) +· · · + ( 1 n− 1 n + 1 ) = 1− 1 n + 1 となる。いま、 lim n→∞Sn= limn→∞ ( 1− 1 n + 1 ) = 1 だから、 この無限級数の和は1である となります。 ここで、1つ注意事項があります。 ←交換法則とは、足し算は順序を問わない こと。たとえば a + b = b + a ←結合法則とは、足し算はどこから計算し てもよいこと。たとえば a + b + c = (a + b) + c = a + (b + c) 1無限個の足し算と有限個の足し算は違うのだ 無限級数の和においては、有限個の場合と異なり、 交換法則 結合法則 が成り立つとは限りません。 これについては、問題2で確認します。
【問題1】 次の各無限級数の和を求めよ。 (1) 1 1· 3 + 1 3· 5+· · · + 1 (2n− 1)(2n + 1)+· · · · (2) ∞ ∑ n=1 1 √ n + 1 +√n (3) ∞ ∑ k=1 k (k + 1)! 3
【問題2】 次の各無限級数の和を求めよ。 (1) 1 + (−1) + 1 + (−1) + · · · · (2) 1−1 2 + 1 2− 1 3 + 1 3 − 1 4+· · · · (3) 1−1 2 + 1 2− 2 3 + 2 3 − 3 4+· · · · (4) ( 1−1 2 ) + ( 1 2− 2 3 ) + ( 2 3 − 3 4 ) +· · · ·
無限等比級数とその和
無限数列{an} : a1, a2, a3, · · · , an,· · · が等比数列であるとき、初項をa1 = a、 ←数学Bの教科書参照!! 公比をrとして、部分和Snは、 Sn= na (r = 1のとき) a·1− r n 1− r (r̸= 1のとき) であることは、すでに学んだ。 さらに、無限等比数列{rn} : r, r2, r3,· · · , rn,· · · が、−1 < r < 1のときには0 (ゼロ)に収束することもすでに学んだ。 これらのことから、次のことが分かる。 ←公比 r の条件に注意!! また、この公式は、 無限等比級数であること 公比が −1 < r < 1 を満たすこと が確認できれば、部分和 Snを求めること なく和の計算ができる、と主張している、 いわゆるズル公式(試験のための時間節約 公式)である。 bababababababababababababababab 初項a, 公比rの無限等比数列{an}で生成される無限級数(無限等比級 数という) a1+ a2+ a3+· · · + an+· · · は、−1 < r < 1の場合には、 a 1− r ( = (初項) 1− (公比) ) に収束 する。無限等比級数の収束条件
無限等比級数 a + ar + ar2+ ar3+· · · + arn−1+· · · が収束するための条件は、 a = 0 または − 1 < r < 1 である。 5【問題3】 次の各無限等比級数の和を求めよ。 (1) 2 + 4 + 8 + 16 + 32 +· · · (2) 3− 3 2 + 3 4 − 38 +· · · (3) ∞ ∑ n=1 5 3n (4) ∞ ∑ n=1 (−3)n 22n+1 (5) ∞ ∑ n=1 a−n+1(aはnによらない数)
【問題4】 次の関数の定義域を求め、グラフを描け。 f (x) = (1− x2) + x(1− x2) + x2(1− x2) +· · · + xn−1(1− x2) 7