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(1)

潮流発電の適地選定に関連した

五島列島周辺海域における潮流観測

TIDAL CURRENT OBSERVATION AROUND THE GOTO ISLANDS

FOR TIDAL CURRENT POWER GENERATION

河野泰士

1

・落合弘志

2

・山城徹

3

・城本一義

4

経塚雄策

5

・永瀬恭一

6

Taishi KAWANO, Hiroyuki OCHIAI, Toru YAMASHIRO, Kazuyoshi JYOMOTO, Yusaku KYOZUKA and Kyoichi NAGASE

1鹿児島大学大学院 博士前期課程 理工学研究科(〒890-0065 鹿児島市郡元1丁目21-40) 2鹿児島大学工学部(同上) 3正会員 博(理)鹿児島大学大学院 理工学研究科(同上) 4正会員 鹿児島大学大学院 理工学研究科 技術部(同上) 5正会員 工博 九州大学大学院 総合理工学研究院(〒816-8580 春日市春日公園6-1) 6正会員 博(工)株式会社フジタ 技術センター エンジニアリング部(〒243-0125 厚木市小野2025-1)

Direct current measurements were carried out at the Naru-Seto Strait and the Takigawara-Seto Strait during May 5-20 in 2010 and at the Wakamatsu-Seto Strait during November 1-16 in 2010 to find suitable places for tidal current power generation around the Goto Islands of Nagasaki Prefecture. The characteristics of tidal currents at the straits were clarified from the current velocity records. Moreover, it was shown that the measured tidal currents at the Naru-Seto Strait and the Wakamatsu-Naru-Seto Strait are very strong. The strong tidal currents suggest that the two straits are the suitable places for the tidal current power generation.

Key Words : Strong tidal current, Naru-Seto Strait, Wakamatu-Seto Strait, tidal current power

generation 1.はじめに 重油を主な燃料とするディーゼル発電は,装置が 出力に対して小型軽量であり,しかも始動性がよく 熱効率が高いことから,離島の電源として用いられ ている.ところが,離島のディーゼル発電の費用は 電力料金の約2~3倍と高く,これに燃油高騰も加 わって,電力会社や地方自治体にとって,離島の電 力供給は経費面からますます負担になっている.さ らに,環境面からは,ディーゼル発電によって発生 する硫黄酸化物や窒素酸化物などが問題になってい る.離島の中には,海底ケーブルで電力を本土から 転送しているところもあるが,転送費用が高いこと や送電線切れのトラブルが生じる.したがって,離 島においては,自家発電設備であり,自然環境,例 えば海洋環境を利用する発電システムを普及させて いくことが大事であると思われる. このような状況の中で,経済産業省は2010年度に 波力や海潮流などの海洋エネルギーを利用して発電 する「海洋発電所」を実用化する方針を固め,2011 年度には日本の環境に適した発電所の立地選定を行 うことを方針とした.潮流発電の適地について, (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構は,鳴 門海峡,来島海峡,関門海峡,大畠瀬戸,明石海峡 の最大流速がそれぞれ510cm/s,460cm/s,350cm/s, 320cm/s,300cm/sであることから,潮流発電の適地 が瀬戸内海に多数存在していることを指摘した1) 経塚は2004年から長崎県の辰ノ瀬戸に架かる生月大 橋の橋脚部において潮流発電の実証実験を行ってい る.この実証実験に関連して,2007年6月には係留 式ADCPを用いた潮流観測を実施し,辰ノ瀬戸では最 大流速が大潮時に240cm/sであることを報告した2) 経塚の報告を除くと,わが国では,潮流発電の適 地選定を目的とした潮流観測が実施された例はない が,海上保安庁がさまざまな海域において航行船舶 の安全を目的とした潮流観測を実施している.これ らの観測結果を基に作成した九州沿岸水路誌3)の中 で,長崎県五島列島の田ノ浦瀬戸,奈留瀬戸,滝河 原瀬戸,若松瀬戸ではそれぞれ,257cm/s,283cm/s, 324cm/s,247cm/sの大きな流速を観測したことが報 土木学会論文集B3(海洋開発) Vol.67,No.2,2011

(2)

告されている.この大きな流速は,長崎県の五島列 島周辺海域には潮流発電の適地が多数存在する可能 性を示唆している.本論文では,九州の沿岸域,特 に離島周辺海域における潮流発電適地のマッピング をめざして,長崎県五島列島の諸水道で実施した潮 流観測の結果について報告する. 2.観測 五島列島は長崎県本土西方の中通島,若松島,奈 留島,久賀島,福江島の5つの大きな島を中心に大 小140の島から構成され,これらの島の間には田ノ 浦瀬戸,奈留瀬戸,滝河原瀬戸,若松瀬戸などの狭 い水道が存在している(図-1).これらの瀬戸では 強い潮流が発生していることが報告されているが3) 潮流の強さ,方向,卓越周期などの特性は未だ明ら かにされていない.そこで,これらの瀬戸の潮流特 性を調べるために,2010年5月5日~20日にかけて奈 留瀬戸のSt.1と滝河原瀬戸のSt.2に,2010年11月1 日~16日にかけて若松瀬戸のSt.3とSt.4に,係留式 流速計を設置して流速の直接測定を実施した(図-1, 表-1).測流点の位置は,事前の聞き取り調査に よって強い流れが発生していることが示唆されたと ころである. 水深20m付近の地点を測流点に選び,流速計を海 底直上1mの深さに設置し,10分間隔で流速を測定 した(表-1).St.2とSt.3においては,流速計を設 置してから回収するまでの15日間で有効な流速デー タを得ることができたが,St.1とSt.4においては, 流速計を海底に固定していたフレーム(写真-1)が 強い流れによって倒れ,St.1では流速計を設置して から約9日間,St.4では流速計を設置してから約4.5 日間しか有効な流速データを得ることができなかっ た.したがって,St.2とSt.3の有効データは小潮か ら大潮を過ぎて再び小潮となる期間のものであるが, St.1は小潮から大潮までのもの,St.4は長潮から大 潮直前までのものである. 本研究で観測された奈留瀬戸,滝河原瀬戸,若松 瀬戸の潮流の強さを他の海域のものと比較するため に,海上保安庁が発行した39の潮流観測報告書4) ら,九州沿岸域の主要4分潮(半日周期のM2分潮, S2分潮と1日周期のK1分潮,O1分潮)の潮流振幅を調 べた.その結果として,本研究で観測されたものを 含めて,九州沿岸域の129点で主要4分潮の潮流振幅 を知ることができた. 3.観測結果 奈留瀬戸のSt.1,滝河原瀬戸のSt.2,若松瀬戸の St.3とSt.4で測定された流速の絶対値の時系列を図 -2に示す.すべての測点で,流速の絶対値は明瞭な 半日周期の変動を示し,潮流以外の流速成分はほと んどない.したがって,これらの測点で観測された 流れは潮流によって発生していると考えられる. そこで,潮位と関連して流速の特性を調べると, 奈留瀬戸のSt.1では,流速の絶対値の平均が75cm/s で,大潮時の最大流速値は182cm/sであった.一方, 滝河原瀬戸のSt.2では,流速絶対値の平均が60cm/s で,大潮時の最大流速値は167cm/sであった.若松 瀬戸のSt.3では,流速絶対値の平均が52cm/sで,大 潮時の最大流速値は131cm/sであったが,St.3より もわずか南に位置するSt.4では,流速絶対値の平均 が99cm/sで,大潮直前の流速値は203cm/sに達して いた.したがって,これらの測点の中では,若松瀬 戸のSt.4,奈留瀬戸のSt.1,滝河原瀬戸のSt.2,若 松瀬戸のSt.3の順で強い潮流が存在していることが 表-1 測流点の位置と観測深度,有効データ期間 図-1 五島列島と測流点( )の位置 St.1 St.2 St.4 St.3 奈留瀬戸 滝河原瀬戸 若松瀬戸 田ノ浦 瀬戸 福江島 中通島 久賀島 奈留島 若松島 五島列島 九州 緯度(N) 経度(E) St.1 32°49.116′ 128°54.478′ 17.3m 16.3m 2010年5月5日~5月14日 St.2 32°52.232′ 128°57.248′ 19.4m 18.4m 2010年5月5日~5月20日 St.3 32°52.559′ 129°01.463′ 21.6m 20.6m 2010年11月1日~11月16日 St.4 32°52.154′ 129°01.465′ 21.7m 20.7m 2010年11月1日~11月6日 地点 位置 水深 測定深度 有効データ期間 写真-1 流速計設置の様子

(3)

示された. 図-2の流れの特性をさらに詳しく調べるために, 流速と流向の頻度分布を求め,それぞれを図-3と図 -4に示す.若松瀬戸のSt.4では,流速75cm/s(MCT 社製プロペラ式発電装置の始動速度)を超える流れ が観測有効期間4.5日中の3.2日(約71%)で発生し, 流速100cm/sを超える強 い流れは4.5日中の2.3日 (約52%)で発生していた[図-3(d)].奈留瀬戸 のSt.1でも,流速75cm/sを超える流れが観測有効期 間9日中の4.6日(約51%)で発生し,流速100cm/s を超える強い流れは9日中の2.4日(約27%)で発生 していた[図-3(a)].図示はしないが,第4章で求 めた主要4分潮(半日周期のM2分潮,S2分潮および1 日周期のK1分潮,O1分潮)の潮流定数を基に流速を 外挿した場合でも,流速75cm/sを超える流れが,若 松瀬戸のSt.4では15日中の9.3日(約62%),奈留 瀬戸のSt.1では15日中の7日(約47%)で発生する ことが推測されている. したがって,MCT社製プロペラ式発電装置の始動 速度(流速75cm/s)を超える流れが長い期間発生す る奈留瀬戸のSt.1と若松瀬戸のSt.4は潮流発電の適 地となりえる. 図-4 St.1~St.4における流向の頻度分布 0 100 200 300 400 500 600 700 N E S W

St.3

St.1

St.2

St.3

St.4

平均値 75cm/s 平均値 60cm/s 平均値 52cm/s 平均値 99cm/s 最大値 182cm/s 最大値 167cm/s 最大値 131cm/s 最大値 203cm/s

(a)

(b)

(c)

(d)

図-2 St.1~St.4における流速の絶対値の時系列 図-3 St.1~St.4における流速の頻度分布 0 10 20 30 40 50 60 0~ 5 5~ 1 0 1 0~ 1 5 1 5~ 2 0 2 0~ 2 5 2 5~ 3 0 3 0~ 3 5 3 5~ 4 0 4 0~ 4 5 4 5~ 5 0 5 0~ 5 5 5 5~ 6 0 6 0~ 6 5 6 5~ 7 0 7 0~ 7 5 7 5~ 8 0 8 0~ 8 5 8 5~ 9 0 9 0~ 9 5 9 5~ 1 0 0 1 0 0~ 1 0 5 1 0 5~ 1 1 0 1 1 0~ 1 1 5 1 1 5~ 1 2 0 1 2 0~ 1 2 5 1 2 5~ 1 3 0 1 3 0~ 1 3 5 1 3 5~ 1 4 0 1 4 0~ 1 4 5 1 4 5~ 1 5 0 1 5 0~ 1 5 5 1 5 5~ 1 6 0 1 6 0~ 1 6 5 1 6 5~ 1 7 0 1 7 0~ 1 7 5 1 7 5~ 1 8 0 1 8 0~ 1 8 5 1 8 5~ 1 9 0 1 9 0~ 1 9 5 1 9 5~ 2 0 0 2 0 0~ 2 0 5 75cm/s 100cm/s 0 20 40 60 80 100 120 140 160 0~ 5 5~ 1 0 1 0~ 1 5 1 5~ 2 0 2 0~ 2 5 2 5~ 3 0 3 0~ 3 5 3 5~ 4 0 4 0~ 4 5 4 5~ 5 0 5 0~ 5 5 5 5~ 6 0 6 0~ 6 5 6 5~ 7 0 7 0~ 7 5 7 5~ 8 0 8 0~ 8 5 8 5~ 9 0 9 0~ 9 5 9 5~ 1 0 0 1 0 0~ 1 0 5 1 0 5~ 1 1 0 1 1 0~ 1 1 5 1 1 5~ 1 2 0 1 2 0~ 1 2 5 1 2 5~ 1 3 0 1 3 0~ 1 3 5 75cm/s 100cm/s 0 10 20 30 40 50 60 70 80 0~ 5 5~ 1 0 1 0~ 1 5 1 5~ 2 0 2 0~ 2 5 2 5~ 3 0 3 0~ 3 5 3 5~ 4 0 4 0~ 4 5 4 5~ 5 0 5 0~ 5 5 5 5~ 6 0 6 0~ 6 5 6 5~ 7 0 7 0~ 7 5 7 5~ 8 0 8 0~ 8 5 8 5~ 9 0 9 0~ 9 5 9 5~ 1 0 0 1 0 0~ 1 0 5 1 0 5~ 1 1 0 1 1 0~ 1 1 5 1 1 5~ 1 2 0 1 2 0~ 1 2 5 1 2 5~ 1 3 0 1 3 0~ 1 3 5 1 3 5~ 1 4 0 1 4 0~ 1 4 5 1 4 5~ 1 5 0 1 5 0~ 1 5 5 1 5 5~ 1 6 0 1 6 0~ 1 6 5 1 6 5~ 1 7 0 1 7 0~ 1 7 5 1 7 5~ 1 8 0 1 8 0~ 1 8 5 75cm/s 100cm/s 0 20 40 60 80 100 120 140 0~ 5 5~ 1 0 1 0~ 1 5 1 5~ 2 0 2 0~ 2 5 2 5~ 3 0 3 0~ 3 5 3 5~ 4 0 4 0~ 4 5 4 5~ 5 0 5 0~ 5 5 5 5~ 6 0 6 0~ 6 5 6 5~ 7 0 7 0~ 7 5 7 5~ 8 0 8 0~ 8 5 8 5~ 9 0 9 0~ 9 5 9 5~ 1 0 0 1 0 0~ 1 0 5 1 0 5~ 1 1 0 1 1 0~ 1 1 5 1 1 5~ 1 2 0 1 2 0~ 1 2 5 1 2 5~ 1 3 0 1 3 0~ 1 3 5 1 3 5~ 1 4 0 1 4 0~ 1 4 5 1 4 5~ 1 5 0 1 5 0~ 1 5 5 1 5 5~ 1 6 0 1 6 0~ 1 6 5 1 6 5~ 1 7 0 75cm/s 100cm/s (a) (d) (c) (b) St.1 St.4 St.3 St.2 流速(cm/s) 流速(cm/s) 流速(cm/s) 流速(cm/s)

(4)

それに対して,滝河原瀬戸のSt.2では,75cm/s以 上の流速が発生した期間が観測期間15日中の5.1日 (約34%)であり,100cm/s以上の流速は15日中の2 日(約13%)しか観測されなかった[図-3(b)]. 若松瀬戸のSt.3でも,75cm/s以上の流速が発生した 期間は観測期間15日中の3.3日(約22%)であり, 100cm/s以上の流速は15日中の0.9日(約6%)しか 観測されなかった[図-3(c)].したがって,滝河 原瀬戸のSt.2と若松瀬戸のSt.3では,75cm/s以上の 流速が発生した期間の割合が奈留瀬戸のSt.1や若松 瀬戸のSt.4よりもずっと小さい. 流向の頻度分布を調べると,奈留瀬戸St.1の流向 は北西方向と南南東方向に集中し,滝河原瀬戸St.2 の流向は北北西~北方向と南南東方向に集中し,若 松瀬戸のSt.3の流向は北方向と南~南南西方向に集 中し,若松瀬戸のSt.4の流向は北北西方向と南南東 方向に集中している(図-4).すなわち,どの測点 の流れも瀬戸の海底地形に沿った方向に往復運動を している.このような流向の頻度分布は,ダリウス 型の全方向に対応する発電装置のみならず,プロペ ラ型の一方向にしか対応しない発電装置を設置する ことに対しても,これらの瀬戸が都合の良い海域で あることを示している. 4.調和分析 St.1~St.4で測定された絶対流速の変動が明瞭な 半日周期を示していることから(図-2),これらの 変動は明らかに潮流によって発生している.そこで, 流速データから潮流の振幅を計算するために最小自 乗法を用いて調和分析を行った.日本近海では周期 12.42時間のM2分潮流,周期12時間のS2分潮流,周 期23.93時間のK1分潮流,周期25.82時間のO1分潮流 が卓越しているので5),調和分析を行う際には,観 測された潮流をこれら4成分の和としてモデル化し た.この解析に基づいて,潮流楕円を描き,観測さ れた潮流の特徴を調べることにした.各成分の潮流 楕円を図-5に,潮流楕円の長軸の長さ(潮流の振幅) と潮流楕円の長軸の方向(潮汐の伝播方向)を表-2 に示す.表-2中の潮流楕円の長軸方向は真東を0° とし,反時計回りを正としている.St.1で観測され たM2分潮,S2分潮,K1分潮,O1分潮のすべての潮汐 成分について,潮流楕円の長軸の長さが短軸のもの より圧倒的に大きく,潮流がほぼ直線運動を示して いる.さらに,すべての潮流成分の長軸方向はほぼ 一 致 し , 4 分 潮 流 の 運 動 方 向 が 同 じ で あ る [ 図 -5(a)].このような潮流の特徴は他の測点でもみつ 図-4 St.1~St.4における流向の頻度分布 0 100 200 300 400 500 600 700 N E S W 0 50 100 150 200 250 300 350 N E S W 0 100 200 300 400 500 600 700 N E S W 0 200 400 600 800 1000 N E S W

St.1

St.4

St.3

St.2

(5)

けることができる[図-5(b)~(d)].そこで,これ ら4分潮の潮流振幅の和を求めてみると,St.1, St.2 , St.3 , St.4 の 潮 流 振 幅 の 和 は そ れ ぞ れ , 180cm/s,139cm/s,118cm/s,216cm/sであり,St.2 を除くと,これらの値は大潮時の最大流速値とほぼ 同じである.したがって,図-3で示された奈留瀬戸 のSt.1と若松瀬戸のSt.4の強い流れが主に潮流に よって発生していたと言える. もう1つの注目すべき結果は,どの測点において も,半日周期のM2分潮流,S2分潮流の振幅が1日周 期のK1分潮流,O1分潮流よりも大きく,さらに半日 周期の中でも,M2分潮流の振幅がS2分潮流よりも圧 倒的に大きいことである(表-2).この結果から, 五島列島周辺海域では,主要4分潮流の中で,M2分 潮流が卓越していることがわかった. 5.検討 本研究で観測された奈留瀬戸,滝河原瀬戸,若松 瀬戸の潮流の強さが九州周辺海域の中でどの程度の ものであるかを明らかにしておく必要がある.その ために,九州沿岸域の129点で観測された,主要4分 潮(M2分潮,S2分潮,K1分潮,O1分潮)の潮流振幅 の和を求め,これを用いて,潮流の強さを検討する ことにした.潮流振幅の和を大きい順に並べ,上位 30地点の潮流振幅の和を図-6に示す. 本研究で観測された地点(図-6中の赤字で記され た地点)の潮流振幅の和は九州沿岸域の中でも大き く,すべての地点が上位30位以内にある.特に,奈 留瀬戸のSt.1と若松瀬戸のSt.4は潮流の強い地点で あることがわかる. 長崎県五島列島以外の離島では,鹿児島県奄美大 島周辺の大島海峡,請島水道,与路水道で潮流の強 い地点をみつけることができる.また,五島列島と 奄美大島の離島以外では,長崎県本土の平戸瀬戸と 針尾瀬戸において強い潮流をみつけることができる. 特 に 平 戸 瀬 戸 牛 ケ 首 沖 で 潮 流 振 幅 の 和 が 最 大 値 (310cm/s)を示し,この地点が九州沿岸海域の中 で最も潮流の強いところであることが示されている. 表-2 主要4分潮(M2,S2,K1,O1)の潮流楕円の性質 図-5 St.1~St.4における主要4分潮の潮流楕円

(a)

(b)

(c)

(d)

M2 S2 K1 O1 M2 S2 K1 O1 M2 S2 K1 O1 M2 S2 K1 O1 長軸の長さ 長軸方向 長軸の長さ 長軸方向 長軸の長さ 長軸方向 長軸の長さ 長軸方向 (cm/s) (deg.) (cm/s) (deg.) (cm/s) (deg.) (cm/s) (deg.) St.1 103.4 121.5 41.5 123.8 18.5 122.4 16.6 125.3 St.2 85.4 105.1 32.2 105.5 11.8 104.7 9.8 105.1 St.3 75.0 89.3 22.9 86.4 11.5 84.0 8.6 80.6 St.4 137.2 112.3 37.6 113.4 21.1 112.5 19.6 112.3 K1分潮 O1分潮 地点 M2分潮 S2分潮

(6)

したがって,長崎県では五島列島の諸水道のほか に平戸瀬戸や針尾瀬戸,鹿児島県では奄美大島の諸 水道に潮流発電の適地が存在することが示唆された. 6.結論 長崎県五島列島周辺海域で潮流発電の適地をみつ けるために,2010年5月5日~5月20日に奈留瀬戸と 滝河原瀬戸で,2010年11月1日~11月16日に若松瀬 戸で潮流観測を実施した.観測結果から,これらの 海域の潮流特性を明らかにすることができた.さら に,奈留瀬戸と若松瀬戸は九州沿岸域の中でも潮流 の強い海域であり,潮流発電の適地となることを指 摘した.さらに,長崎県の平戸瀬戸,針尾瀬戸およ び鹿児島県奄美大島の諸水道にも潮流発電の適地と なる地点が存在することを示唆した. 潮流の強い地点に発電装置を設置した場合でも, 装置を迂回する流れが生じるため電力が予想よりも 小さくなることが指摘されているが,どの程度小さ くなるかは本論文では明らかにはできなかった. 今後は,ADCPを搭載した船舶を利用して,大潮時 における奈留瀬戸と若松瀬戸の水平流速分布を測定 し,これらの瀬戸において潮流発電の適地の絞込み を行う予定である. 謝辞:流速計の設置と回収にご協力を頂いた奈留漁 業協同組合,並びに神部漁業協同組合の皆様に厚く 感謝申し上げます. 参考文献 1) 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構: 海洋エネルギーの利用技術に関する現状と課題に関す る調査,140p.,2008. 2) 経塚雄策:生月大橋の橋脚を利用した潮流発電につい て,海洋開発論文集,第 24 巻,pp.13-18, 2008. 3) 海上保安庁:九州沿岸水路誌,393p.,2005. 4) 例えば,第七管区海上保安本部:平戸瀬戸潮流観測報 告書,5p.,1995.

5) Nishida ,H. : Improved tidal charts for the western part of the North Pacific Ocean , Report of Hydraulic Researches, Vol.15, pp.55-70, 1980. 図-6 九州周辺海域で観測された主要4分潮の潮流振幅の和 0 50 100 150 200 250 300 350 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 (cm/s) O1分潮 K1分潮 S2分潮 M2分潮 9 7 9 15 23 O1分潮 S2分潮 K1分潮 M2分潮 順位 観測地点 島 潮流振幅の和 順位 観測地点 島 潮流振幅の和 1 牛ヶ首沖 平戸島 310.4 16 早崎瀬戸 屋久島 133.1 2 田ノ浦瀬戸 福江島 306.2 17 来間 宮古島 131.6 3 牛ヶ首沖 平戸島 265.2 18 伊良部 宮古島 131.6 4 大島海峡 奄美大島 234.8 19 与路水道 与路島 131.4 5 南風崎沖 平戸島 223.6 20 屋久島 屋久島 122.7 6 中通島東方 中通島 216.4 21 入江 宮古島 122.3 7 若松瀬戸(St.4) 若松島 215.5 22 海士ヶ瀬戸 角島 121.5 8 魚釣崎沖 針尾島 201.0 23 若松瀬戸(St.3) 若松島 121.3 9 奈留瀬戸(St.1) 奈留島 180.0 24 早崎瀬戸 屋久島 119.5 10 早崎沖 針尾島 169.6 25 早崎瀬戸 屋久島 114.1 11 牧崎沖 角島 162.6 26 南竜崎沖 平戸島 106.9 12 請島水道 請島 158.1 27 西之表西方 種子島 101.4 13 与路水道 与路島 150.9 28 屋久島北方 屋久島 99.5 14 呼子ノ瀬戸 寺島 150.6 29 屋久島北方 屋久島 96.3 15 滝河原瀬戸(St.2) 若松島 139.2 30 猪ノ首鼻沖 針尾島 93.5

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